真空採血管
【課題】PET真空採血管の真空劣化を防止し、有効期限の長期化を図ったPET真空採血管を提供するとともに、採血管の有効期限管理を簡素化し、採血管各々の識別情報、有効期限情報、被採血者情報及び採血管を使用する医療機関情報等の一元管理を容易に行うことができる前記真空採血管を提供することを目的とする。
【解決手段】真空採血管の管本体1の外周に、少なくとも管本体1の外周面を包被する透光性のフィルム被膜6を形成する。また、前記フィルム被膜6には、あらかじめバーコード等の情報記録部7を印刷等により形成し、前記管本体1とフィルム被膜6の間に前記情報記録部7が介在するように、フィルム被膜6を前記管本体1に形成する。
【解決手段】真空採血管の管本体1の外周に、少なくとも管本体1の外周面を包被する透光性のフィルム被膜6を形成する。また、前記フィルム被膜6には、あらかじめバーコード等の情報記録部7を印刷等により形成し、前記管本体1とフィルム被膜6の間に前記情報記録部7が介在するように、フィルム被膜6を前記管本体1に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部の真空を利用して血液を採取する真空採血方式に使用される真空採血管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空採血管を使用して採血する真空採血方式では、被採血者の血管に採血針の先端を挿入した状態で、採血針の反対側端部が真空採血管の栓体を刺通して管本体に挿入されると、真空採血管内が減圧されていることから、被採血者の血管内の圧力と真空採血管内の圧力差によって血液が真空採血管内に流入して採血が行われる。
【0003】
このとき、血沈検査用や凝固機能検査用の真空採血管では、採取した血液の凝固を防止するために、予め管本体内にはヘパリン、クエン酸塩水溶液などの血液抗凝固剤が収納されたり、生化学検査用の真空採血管では、逆に血液の凝固を促進するために、シリカ、カオリン、珪藻土といったシリカ系鉱物などの血液凝固促進剤が収納されている(特許文献1参照)。
【0004】
そして、この種の真空採血管を用いて血液検査を行う場合、行うべき検査内容を記載した検査依頼書が真空採血管とともに、院内の検査部門または院外の検査センターなどの検査機関に送られ、検査機関では送られてきた真空採血管と検査依頼書とを照合し、その真空採血管内の血液について検査依頼書で指示されている所定の血液検査を行い、その検査結果を病院側に報告するようにしている。
【0005】
このとき、患者と真空採血管と検査依頼書とが確実に対応付けられている必要があり、これらの間での対応に一部でも誤りがあると、採血のやり直しが必要となって患者の負担を増大したり、最悪の場合には患者の誤診を招いてしまうこととなるため、従来では、検査機関において採血に先立ち、少なくとも容器種類及び管理番号などをコード化したバーコードを透明体により形成したラベルをラベルプリンタにより印刷して真空採血管及び検査依頼書に貼り付け、両者のバーコードを読み取ることによって真空採血管と検査依頼書とを対応付ける(特許文献2参照)などが行われている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−253538号公報(段落0002〜0003、図9)
【特許文献2】特開平9−34361号公報(段落0016,0020)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の真空採血管の場合、管本体内が減圧されて内部が真空状態にされているため、ある程度時間が経過すると管本体内の真空劣化が徐々に進み、内部の血液抗凝固剤などが次第に空気に晒されて劣化し、このように血液抗凝固剤等が劣化した真空採血管を使用した場合には、検査結果に大きな誤差が生じるという問題があった。
【0008】
そこで、真空採血管には有効期限が設定されて有効期限を経過した真空採血管は廃棄処分されるようになっているが、真空採血管の有効期限の管理には多大な手間と時間を要し、厳密に期限管理をすることが困難であるため、多くの真空採血管が無駄に廃棄されるというのが現状である。通常、ガラス製の真空採血管の有効期限は3ヶ月であり、近年、製造コストの低さや取り扱い易さの点からPET(ポリエチレンテレフタレート)製の真空採血管が多用されるようになってきているが、PET製の真空採血管はガラス製よりも真空劣化が激しく有効期限が短い。
【0009】
さらに、特許文献2に記載のように、バーコードを印刷したラベルを真空採血管及び検査依頼書に貼り付ける場合、真空採血管と同一のバーコードを検査依頼書にも付する必要があるため、作業工程が多くなり、特に大病院では作業件数が膨大なものになるため、ラベルの貼り違えなどの人為的なミスが生じ易く、このような検査機関の作業者の錯誤による人為的なミスが原因で、採血のやり直しを患者に強いたり、患者の取り違えによる誤診を招くおそれもある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、真空採血管の有効期限の長期化を図るとともに真空採血管の期限管理を簡素化し、廃棄される真空採血管の数を低減して無駄を削減することを目的とする。さらに、採血を行う検査機関における真空採血管及び検査依頼書へのラベル貼付などの作業を不要にしてラベルの貼り違えなどの人為的なミスの発生を未然に防止することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明における真空採血管は、一端が開口され他端が閉塞された透光性の管本体と、採血針を刺通可能な材質により形成され前記管本体の一端を閉塞して該管本体に取り付けられた栓体と、少なくとも前記管本体の外周面を包被して形成された透光性のフィルム被膜と、前記管本体と前フィルム被膜との間に介在され少なくとも採血管有効期限を表わす期限情報を含む採血管情報が記録された情報記録部とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
また、本発明における真空採血管は、前記フィルム被膜が、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面を包被して形成され、前記フィルム被膜の形成後に前記管本体内部が減圧状態とされることを特徴としている(請求項2)。
【0013】
また、本発明における真空採血管は、前記フィルム被膜が、前記管本体内部が減圧状態とされた後に、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面及び前記栓体の外周面の一部を包被して形成されることを特徴としている(請求項3)。
【0014】
また、本発明における真空採血管は、前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に、印刷により形成されて成ることを特徴としている(請求項4)。
【0015】
また、本発明における真空採血管は、前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に貼付されたICタグから成ることを特徴としている(請求項5)。
【0016】
また、本発明における真空採血管は、前記フィルム被膜が、0.001〜1.0mmの膜厚のポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂から成ることを特徴としている(請求項6)。
【0017】
また、本発明における真空採血管は、前記情報記録部に記録される情報には、採血管各々を相互に識別するための識別情報と、採血管使用先である医療機関を相互に識別するための医療機関情報とが含まれ、当該情報記録部の記録情報が読取手段により外部から読み取られることを特徴としている(請求項7)。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、管本体の外周面を透光性のフィルム被膜によりコーティングするため、管本体内の収容物を目視できる状態のまま真空採血管の有効期限を、コーティングをしない場合の有効期限の3倍以上に延ばすことができる。また、管本体とフィルム被膜との間に情報記録部を備えているため、情報記録部を剥離又は破損等から保護することができるとともに、製造工程において情報記録部に採血管有効期限を表わす期限情報を記録することが可能であり、透光性のフィルム被膜を通して情報記録部に記録された期限情報を読取手段により外部から読み取ることができ、コンピュータなどにより真空採血管の有効期限を簡単に把握、管理することが可能になり、従来のように無駄に廃棄していた真空採血管の数を減らすことができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、管本体外周面にフィルム被膜を形成した後に管本体内部を減圧状態とするため、例えば流動浸漬法や静電塗装法、シュリンク加工法などの周知の手法によりフィルム被膜を容易に形成することができ、その後管本体内部を滅菌し減圧状態して栓体により閉栓すれば、従来よりも有効期限の長い真空採血管を得ることができる。ここで、流動浸漬法とは、樹脂粉体槽に圧縮空気を下方から送り込んで粉体を槽内に流動させ、加熱処理したワーク(管本体)を一定時間浸漬し、ワーク(管本体)熱によりワーク(管本体)の外周面に樹脂粉体を融解させることによってフィルム被膜を形成する手法である。また、静電塗装法とは、ワーク(管本体)を陽極、塗装霧化装置を陰極として両極間に直流高圧を与えて静電界を作り、霧化した塗料を負に帯電させて反対極性のワーク(管本体)の外周面に塗装してフィルム被膜を形成する手法である。さらに、シュリンク加工法とは、ワーク(管本体)を専用フィルムで覆い、これを加熱収縮させてワーク(管本体)の外周面にフィルム被膜を形成する手法である。
【0020】
請求項3の発明によれば、管本体内部が減圧状態とされた後に、管本体の外周面及び栓体の外周面の一部をフィルム被膜により包被して形成されるため、管本体と栓体との境界部分もフィルム被膜により包被できることから、より真空劣化の少ない真空採血管を提供することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、情報記録部は、フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に直接印刷して形成されるため、従来のように検査機関など医療現場において情報を記録したラベルを貼付するといった作業が不要となって医療作業者の負担を軽減することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、情報記録部はICタグから成るため、少なくとも読取手段により、外部から当該情報記録部の記録情報を簡単に読み取ることができる。なお、ICタグは接触式、非接触式のいずれであってもよい。
【0023】
請求項6の発明によれば、フィルム被膜を0.001〜1.0mmの膜厚のポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂製とするため、真空採血管の真空劣化をより効果的に防止することが可能であり、かつ真空採血管の透明度も保持されることにより、真空採血管内部を目視により確認することができる。なお、フィルム被膜の膜厚は0.01〜0.02mmであることが最も好適である。
【0024】
請求項7の発明によれば、情報記録部に記録される情報には少なくとも採血管の識別情報、有効期限情報、及び使用先の医療機関情報等が含まれ、読取手段により当該情報記録部の記録情報を外部から読み取られるため、病院などの検査機関において採血を行なう際に、真空採血管各々の情報記録部から読み取った識別管理、有効期限管理及び医療機関情報等の採血管情報と、被採血者の性別や氏名、年齢、性別といった固有の被採血者情報と、必要な検査項目からなる検査依頼情報とを対応付けてコンピュータにデータ入力することによって、真空採血管と被採血者情報と検査依頼情報とを対応付けて一元管理することが可能になり、従来のように真空採血管及び検査依頼書へのラベル貼付などの作業を不要にして、ラベルの貼り違えなどの人為的なミスの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態について図1ないし図12を参照して説明する。なお、図1は完成された真空採血管の斜視図、図2は製造途中における真空採血管の斜視図、図3および図4はフィルム被膜の形成に使用されるフィルム材を示す図、図5および図6は真空採血管のそれぞれ異なる製造工程を示すフローチャートである。
【0026】
真空採血方式に使用される本発明にかかる真空採血管は、図1に示すように構成されている。すなわち、一端が開口され他端が閉塞された試験管状の例えばガラス製の管本体1の開口側に、例えばゴム製の栓体2が嵌着されて開口が閉塞でされている。このとき、図2に示すように、管本体1内には検査種類に応じた検査試薬4が予め収納され、例えば血沈検査用や凝固機能検査用の真空採血管の場合には、採取した血液の凝固を防止するためのヘパリン、クエン酸塩水溶液などの血液抗凝固剤が予め収納され、生化学検査用の真空採血管の場合には、逆に血液の凝固を促進するためのシリカ、カオリン、珪藻土といったシリカ系鉱物などの血液凝固促進剤が収納される。
【0027】
そして、後に詳述するが、内部が滅菌、減圧状態にされて栓体2により閉塞された管本体1の外周部がフィルム被膜6により包被され、管本体1内の真空劣化の抑制が図られ、真空採血管の有効期限の長期化が図られている。このとき、管本体1の外周部をフィルム被膜6により包被しない場合に比べてフィルム被膜6により包被することで、真空採血管の有効期限が約3倍に延びることを実験により確認している。
【0028】
なお、管本体1には、上記したガラスのほか、取り扱い及び加工の容易さ並びに製造コストの低さから近年ではPET(ポリエチレンテレフタレート)が用いられるようになってきており、その他にもポリエチレン等が使用される。また、栓体2には、採血時に採血針の先端が刺通し易いようにするため、天然ゴム、合成ゴムのほか軟質の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどを使用するのが好ましい。さらに、栓体2はスクリューキャップのゴム製中栓であってもよい。
【0029】
また、フィルム被膜6には、ポリアミド系樹脂又は塩化ビニル樹脂等を用いるのが望ましく、耐久性、安全性の観点から米国食品医薬品局試験に合格しているナイロン11(登録商標)を用いるのが最も望ましい。また、フィルム被膜6の素材として、このような透光性を備えた材質を用いることにより内容物の状態を確認することができてより安全であり、フィルム被膜6の膜厚として、0.001〜1.0mmとするのが好ましく、特に透光性を維持しつつ取り扱いやすい膜厚として、0.01〜0.02mmとすることが最も好ましい。
【0030】
ところで、フィルム被膜6の管本体1に巻き付ける内面側には採血管有効期限を表わす期限情報を含む採血管情報が記録された情報記録部7が形成され、管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被したときに、情報記録部7が管本体1とフィルム被膜6との間に介在されて情報記録部7の記録情報を外部から読み取れるようになっている。
【0031】
このとき、例えばシュリンク加工法によりフィルム被膜6を形成する場合、図3に示すように、ロール状に巻回された長尺のフィルム材10の内面側に、各管本体1ごとの間隔をあけてバーコード9を印刷形成しておき、フィルム材10をロールから繰り出して各管本体1の外周面に順次巻き付けて管本体1をフィルム材10により覆い、これを加熱収縮させることによって管本体1の外周面にフィルム被膜6が形成される。
【0032】
図1に示すように、情報記録部7の採血管情報8は、例えばEAN−128規格のバーコードで表されており、上記した採血管有効期限を表わす期限情報81のほか、真空採血管の配布先である各医療機関を相互に識別するための医療機関情報82と、各々の真空採血管を相互に識別するための固有の識別情報83と、当該真空採血管の種別を表す種別情報84とが含まれている。
【0033】
また、EAN−128規格のバーコードで表される情報記録部7を、管本体1の外周面に予め印刷しておいてもよく、外周面に情報記録部7のバーコードが印刷された管本体1に、シュリンク加工法のほか流動浸漬法や静電塗装法によりフィルム被膜6を形成するようにしてもよい。さらに、EAN−128規格のバーコードに代えて、図4に示すように、非接触式のICタグ12をフィルム材10の内面側に各管本体1ごとの間隔をあけて貼り付け、或いは、管本体1の外周面にICタグ12を貼り付けておき、その後にフィルム被膜6を形成するようにしてもよい。
【0034】
ここで、上記したように、シュリンク加工法とは、ワーク(管本体)を専用フィルムで覆い、これを加熱収縮させてワーク(管本体)の外周面にフィルム被膜を形成する手法であり、流動浸漬法とは、樹脂粉体槽に圧縮空気を下方から送り込んで粉体を槽内に流動させ、加熱処理したワーク(管本体)を一定時間浸漬し、ワーク(管本体)熱によりワーク(管本体)の外周面に樹脂粉体を融解させることによってフィルム被膜を形成する手法であり、静電塗装法とは、ワーク(管本体)を陽極、塗装霧化装置を陰極として両極間に直流高圧を与えて静電界を作り、霧化した塗料を負に帯電させて反対極性のワーク(管本体)の外周面に塗装してフィルム被膜を形成する手法である。
【0035】
そして、フィルム被膜6の形成には、図5及び図6に示す2通りの方法がある。図5に示すように、例えば管本体1にガラスを用いる場合、通常のガラス加工法により管本体1を量産する(ステップS1)。一方、図3に示すようにフィルム被膜6となるフィルム材10にバーコード9を印刷して各真空採血管ごとに内容の異なる採血管情報を含む情報記録部7を形成しておく(ステップS2)。そして、管本体1に情報記録部7が印刷されて形成されたフィルム材10を巻き付け、例えばシュリンク加工法によりフィルム被膜6を形成(コーティング)して管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被し(ステップS3)、その後管本体1内部を滅菌して減圧処理し、栓体2により管本体1の開口を閉塞封止する(ステップS4)。この場合、管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被した後で栓体2により管本体1を封止するため、管本体1と栓体2との境界部分までフィルム被膜6により包被することはできない。
【0036】
また、もうひとつのやり方として、図6に示すように、通常のガラス加工法により管本体1を量産し(ステップS11)、管本体1内部を滅菌して減圧処理し、栓体2により管本体1の開口を閉塞封止しておく(ステップS12)。そして、図3に示すようにフィルム被膜6となるフィルム材10にバーコード9を印刷して各真空採血管ごとに内容の異なる採血管情報を含む情報記録部7を形成しておき(ステップS13)、管本体1に情報記録部7が印刷されて形成されたフィルム材10を巻き付けてシュリンク加工法によりフィルム被膜6を形成(コーティング)して管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被してもよい(ステップS14)。なお、図6に示すように、シュリンク加工法による加熱収縮によりフィルム被膜6を形成するのに先立ち、管本体1内部を滅菌、減圧状態として栓体2を装着する場合には、管本体1と栓体2との境界部分もフィルム被膜6により包被するのが望ましく、こうすると管本体1と栓体2との境界部分をフィルム被膜6により密封できるため、より真空劣化の少ない真空採血管を提供することができる。
【0037】
次に、上記した構成の真空採血管を使用して採血する場合における採血管情報及び患者情報の一元管理を行う電子カルテシステムの構成と、その管理処理について図7、図8を参照して説明する。図7は電子カルテシステムを示すブロック図、図8は患者カードの模式図である。この図7は、病院の電子カルテシステム14を示しており、外来患者の受付を行う受付カウンタに設けられた受付部20と、診療科に対応して患者の診察を行う診察室に設けられた診察部30と、患者から採血を行う採血室に設けられた採血部40と、血液検査を行う検査部60と、システム全体を統括する病院サーバ装置50とを備えている。受付部20、診察部30、採血部40、検査部60と、病院サーバ装置50とは、互いに無線または有線のネットワークNTを介して接続されている。
【0038】
なお、診察部30は診療科に対応して設けられるもので、図7では1つの診察部30のみを図示しているが、1つに限られず、例えば内科や外科などの複数の診療科がある場合には、各診療科に対応してそれぞれ設けられるものである。また、図7では1つの受付部20のみを図示しているが、これも同様であり、例えば受付カウンタに複数の受付部20を設けるようにしてもよい。また、検査部60の詳細については後述する。
【0039】
病院サーバ装置50は、電子カルテシステム14の各部の制御を行うCPU51と、種々のデータを保存するためのハードディスク(HD)装置52と、CPU51の動作を制御する制御プログラムが格納されたROM53とを備えている。CPU51の機能については後述する。
【0040】
受付部20は、初診や再診の外来患者の受付を行うためのものである。受付担当者は、外来患者が初診の場合には、モニタ21を見ながらキーボード22を操作して、当該初診の外来患者の氏名、性別、住所、生年月日などを含む患者特定情報を作成するとともに、患者の希望する診療科を入力し、その患者特定情報が記録された患者カード16を作成する。この患者特定情報は、本発明の「被採血者情報」に相当するものであり、以下「被採血者情報」という。患者カード16は、この実施形態では例えば図8に示すようにICチップ17が組み込まれたメモリカードで、ICカードリーダライタ23により被採血者情報をICチップ17に書き込むことで、その外来患者専用の患者カード16が作成される。また、受付担当者は、外来患者が再診の場合には、その外来患者が所持する患者カード16の被採血者情報をICカードリーダライタ23により読み取って当該患者の電子カルテをモニタ21に表示し、キーボード22を操作して、当該患者が希望する診療科を電子カルテに記入することによって、再診の外来患者の受付を行う。この電子カルテシステム14では、病院内を移動する患者は常に患者カード16を携帯するようになっている。
【0041】
そして、病院サーバ装置50のCPU51は、受付部20において受付が行われた患者の被採血者情報に基づき、初診の外来患者の電子カルテを作成してHD装置52に保存する。また、病院サーバ装置50のCPU51は、受付部20において受付が行われた初診または再診の外来患者の電子カルテを、当該患者が希望する診療科に対応する診察部(ここでは診察部30とする)に送る。
【0042】
診察部30では、担当医師が、モニタ31を見ながらキーボード32を操作し、順番に患者の電子カルテをモニタ31に表示させて患者の氏名を呼び出す。呼ばれて入室した患者の患者カード16がICカードリーダ33により読み取られ、同姓同名の異なる患者ではないことが確認される。担当医師は、患者の診察を行い、血液検査が必要と判断したときは、キーボード32を操作して必要な検査項目(例えば脂質検査や肝機能検査など)からなる検査依頼情報を電子カルテに書き込む。これによって、検査依頼情報が、被採血者情報と対応付けられて設定されることとなる。そして、病院サーバ装置50のCPU51は、検査依頼情報が書き込まれた電子カルテをHD装置52に保存する。血液検査が指示された患者は、診察部30が設けられた診察室から採血部40が設けられた採血室に移動する。
【0043】
患者が採血室に到着すると、まず、その患者の携帯する患者カード16が採血部40のICカードリーダ41により読み取られて当該患者の被採血者情報が取得され、病院サーバ装置50のCPU51は、その被採血者情報に対応付けて設定されている検査依頼情報をモニタ42に表示する。採血作業者は、その検査依頼情報を見て必要な種別の前記真空採血管を必要な個数だけ選択する。
【0044】
医療機関情報82は、前記真空採血管の配布先である各医療機関を相互に識別するためのもので、この実施形態では、上記検査機関が取引のある病院や診療所その他の医療機関ごとに特定のコードを予め設定している。識別情報83は、各々の前記真空採血管を相互に識別するためのもので、この実施形態では、医療機関情報82ごとに通し番号で設定している。なお、識別情報83に用いる通し番号が最大値に達したときは、再び“1”から繰り返して用いればよい。このため、通し番号の最大値は、識別情報83として通し番号が重複して使用されるおそれがないような大きい値に設定しておく必要がある。
【0045】
種別情報84は、当該真空採血管の種別を表すものである。すなわち、真空採血管には血液検査項目によって様々な種別があり、この実施形態では、上記検査機関がそれらの種別ごとに特定のコードを予め設定している。この種別情報84を表示しておくことにより、使用する当該真空採血管の種別の誤認を未然に防止できる。期限情報81は、当該真空採血管の有効期限を表すものである。すなわち、特定の血液検査項目に用いる真空採血管には薬剤が封入されているため、その薬剤の有効期限が設定されている。また、薬剤が封入されていなくても、あまりに古い採血管を用いるのは好ましくない。そこで、この期限情報81を表示しておくことにより、期限切れの真空採血管を使用するのを未然に防止できる。
【0046】
そして、採血作業者は、バーコードリーダ43によって、選択した真空採血管の採血管情報8を読み取らせる。病院サーバ装置50のCPU51は、バーコードリーダ43により読み取られた採血管情報8を取得し、現在の日時と期限情報81の有効期限とを比較して、その真空採血管が有効期限内か否かを判定し、その判定結果をモニタ42に表示する。すなわち有効期限内であれば例えば「○」マークの有効表示を行うとともに、その採血管情報8をHD装置52に保存し、期限切れであれば例えば「×」マークの警告表示を行う。警告表示が行われると、採血作業者は、その真空採血管と同一種別の異なる真空採血管を改めて選択し、バーコードリーダ43によって、その改めて選択した真空採血管の採血管情報8を読み取らせる。そして、全ての真空採血管が例えば「○」マークの有効表示が行われると患者から採血を行い、採血が無事終了して、その旨をキーボード44から入力すると、病院サーバ装置50のCPU51は、例えば図9に示すように、採血管情報8に対応付けて、被採血者情報および検査依頼情報をHD装置52に記憶する。
【0047】
図9はHD装置52に記憶される情報記憶内容の一例を示す図である。図9の例では、被採血者情報B1の患者に対して、1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C1と、2本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C2との2種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A1〜A3を有する合計3本の真空採血管が用いられる。また、被採血者情報B2の患者に対して、それぞれ1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C1,C3の2種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A4、A5を有する2本の真空採血管が用いられる。
【0048】
また、被採血者情報B3の患者に対して、1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C1の1種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A6を有する1本の真空採血管が用いられる。また、被採血者情報B4の患者に対して、1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C3の1種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A7を有する1本の真空採血管が用いられる。そして、図9に示すように、HD装置52には、採血管情報A1に被採血者情報B1および検査依頼情報C1が対応付けられて記憶され、採血管情報A2,A3に、それぞれ被採血者情報B1および検査依頼情報C2が対応付けられて記憶される。
【0049】
また、採血管情報A4に被採血者情報B2および検査依頼情報C1が対応付けられて記憶され、採血管情報A5に被採血者情報B2および検査依頼情報C3が対応付けられて記憶される。また、採血管情報A6に被採血者情報B3および検査依頼情報C1が対応付けられて記憶され、採血管情報A7に被採血者情報B4および検査依頼情報C3が対応付けられて記憶される。
【0050】
続いて、外来患者の受付処理から診察処理、採血処理までの手順について図10ないし図12を参照して説明する。ここで、図10は受付処理の手順の一例を示すフローチャート、図11は診察処理の手順の一例を示すフローチャート、図12は採血処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0051】
図10に示すように、受付カウンタにおける受付処理では、まず、外来患者が初診の場合には(ステップS20でYES)、被採血者情報が作成され(ステップS21)、さらに患者の希望する診療科が入力されて(ステップS22)、電子カルテが作成されてHD装置52に記憶される(ステップS23)。また、ICカードリーダライタ23により被採血者情報がICチップ17に書き込まれて患者カード16が作成される(ステップS24)。そして、患者が希望する診療科の診察部30に向けて病院サーバ装置50のCPU51により電子カルテが送信される(ステップS25)。
【0052】
一方、外来患者が再診の場合には(ステップS20でNO)、その外来患者が所持する患者カード16の被採血者情報をICカードリーダライタ23により読み取り(ステップS26)、当該患者が希望する診療科が電子カルテに記入され(ステップS27)、その診療科の診察部30に向けて病院サーバ装置50のCPU51により電子カルテが送信される(ステップS25)。
【0053】
図11に示すように、診察室における診察処理では、まず、担当医師によりモニタ31に順番に患者の電子カルテが表示されて患者の氏名が呼び出され(ステップS30)、入室した患者の患者カード16がICカードリーダ33により読み取られて同姓同名の異なる患者ではないことが確認されて(ステップS31)、患者の診察が開始される(ステップS32)。そして、血液検査が必要と判断したときは検査依頼情報が電子カルテに書き込まれて(ステップS33)、その患者の診察が終了する。
【0054】
図12に示すように、採血室における採血処理では、まず、採血室に到着した患者の携帯する患者カード16が採血部40のICカードリーダ41により読み取られ、その読み取られた当該患者の被採血者情報をCPU51が取得する(ステップS40)。そして、その被採血者情報に対応する電子カルテをCPU41がモニタ42に表示することにより、設定されている検査依頼情報が表示される(ステップS41)。そして、採血作業者は、その検査依頼情報を見て必要な種別の真空採血管を必要な個数だけ選択し(ステップS42)、それらの真空採血管の採血管情報8をバーコードリーダ43によってそれぞれ読み取らせる(ステップS43)。次いで、読み取った採血管情報8に基づき、その真空採血管が有効期限内か否かが判定され(ステップS44)、期限切れのものがあれば(ステップS44でNO)、その真空採血管に対してモニタ42に警告表示が行われる(ステップS45)。
【0055】
そして、ステップS42に戻り、採血作業者によりその期限切れの真空採血管と同一種別の異なる真空採血管が改めて選択され、バーコードリーダ43により、その改めて選択された真空採血管の採血管情報8が読み取られる(ステップS43)。そして、真空採血管が有効期限内であれば(ステップS44でYES)、その真空採血管に対して患者から採血が行われ(ステップS46)、採血が終了した旨が採血作業者によりキーボード44から入力されると(ステップS47)、病院サーバ装置50のCPU51により、採血管情報8に対応付けられて、被採血者情報および検査依頼情報がHD装置52に記憶される(ステップS48)。
【0056】
このようにすれば、採血管情報8がバーコード表示された情報記録部7を備える真空採血管を用いて採血を行い、その採血管情報8に対応付けて被採血者情報および検査依頼情報をHD装置52に記憶し、採血管情報8を基に被採血者情報および検査依頼情報を一元管理することができる。これによって、電子カルテシステム14における採血に関する情報管理を簡素化することができる。
【0057】
したがって、上記した実施形態によれば、管本体1の外周面を透光性のフィルム被膜6により包被するため、管本体1内部の収容物を目視できる状態のまま真空採血管の有効期限を、包被しない場合の有効期限の3倍以上に延ばすことができる。
【0058】
また、管本体1とフィルム被膜6との間に情報記録部7を備えているため、情報記録部7を剥離又は破損等から保護することができるとともに、製造工程において情報記録部7に採血管有効期限を表わす期限情報を記録することが可能であり、透光性のフィルム被膜6を通して情報記録部7に記録された期限情報を読取手段により外部から読み取ることができ、コンピュータなどにより真空採血管の有効期限を簡単に把握、管理することが可能になり、従来のように無駄に廃棄していた真空採血管の数を減らすことができる。
【0059】
また、管本体1外周面にフィルム被膜6を形成した後に管本体1内部を減圧状態とするため、周知の手法によりフィルム被膜6を容易に形成することができ、従来よりも有効期限の長い真空採血管を得ることができる。さらに、管本体1内部が減圧状態とされた後に、管本体1の外周面及び栓体2の外周面の一部をフィルム被膜6により包被して形成されるため、管本体1と栓体2との境界部分もフィルム被膜6により包被できることから、より真空劣化の少ない真空採血管を提供することができる。
【0060】
また、情報記録部7は、フィルム被膜6の内面側または前記管本体1の外周面に直接形成されるため、検査機関など医療現場において情報を記録したラベルを貼付するといった作業が不要となり、ラベルの貼り違え等の人為的なミスの発生を防止することができる。さらに、情報記録部7がICタグ12から成るときは、読取手段により、外部から当該情報記録部7の記録情報を簡単に読み取るだけでなく、記録を書き込むこともできる。
【0061】
また、情報記録部7に記録された真空採血管の識別情報83、有効期限情報81、及び使用先の医療機関情報82等の採血管情報8を、読取手段により当該外部から読み取り、病院などの検査機関において採血を行なう際に、採血管情報8と、被採血者の氏名等の被採血者情報と、検査依頼情報とを対応付けてコンピュータにデータ入力することによって、真空採血管と被採血者情報と検査依頼情報とを対応付けて一元管理することができる。
【0062】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0063】
例えば、上記した実施形態では、採血管情報8をEAN−128規格によるバーコード9により表示した例を示したが、他の規格のバーコードでもよい。また、ICタグを備える場合は接触式、非接触式のいずれであってもよい。
【0064】
また、上記した実施形態では、フィルム被膜6の形成方法として流動浸漬法、静電塗装法、シュリンク加工法を用いた例を示したが、これらに限られるものではなく、上記以外の可能な加工法を採用してもよい。
【0065】
また、上記した実施形態では、フィルム被膜6はポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂製としているが、他の透光性材料によりフィルム被膜6を形成するとしてもよい。
【0066】
また、上記した実施形態では、フィルム被膜6上にバーコード9を印刷により形成していたが、バーコード9を含む一定領域の色を赤、黄、緑など種々の色に変更して印刷するとしてもよい。この形態によれば、例えば特定の患者等には、黄色等に着色した情報記録部7を備えた真空採血管を用いることにより、採血担当者の注意を促すことができる。
【0067】
さらに、上記した実施形態では、病院内の真空採血管に関して有効期限等の一括管理を行っていたが、病院外の検査部等の真空採血管に関しても、その有効期限管理を病院内で合わせて行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態における真空採血管の斜視図である。
【図2】一実施形態における真空採血管のフィルム被膜形成前の斜視図である。
【図3】一実施形態におけるバーコードを印刷したフィルム材を示す図である。
【図4】一実施形態におけるICタグを貼付したフィルム材を示す図である。
【図5】一実施形態における真空採血管の製造手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】一実施形態における真空採血管の製造手順の他の例を示すフローチャートである。
【図7】一実施形態における真空採血管を使用して採血する場合の電子カルテシステムのブロック図である。
【図8】図7の電子カルテシステムにおける患者カードの模式図である。
【図9】図7の電子カルテシステムにおけるHD装置に記憶される情報記憶内容の一例を示す図である。
【図10】図7の電子カルテシステムにおける受付処理のフローチャートである。
【図11】図7の電子カルテシステムにおける診察処理のフローチャートである。
【図12】図7の電子カルテシステムにおける採血処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1……管本体
2……栓体
6……フィルム被膜
7……情報記録部
8……採血管情報
9……バーコード
10……フィルム材
12……ICタグ
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部の真空を利用して血液を採取する真空採血方式に使用される真空採血管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空採血管を使用して採血する真空採血方式では、被採血者の血管に採血針の先端を挿入した状態で、採血針の反対側端部が真空採血管の栓体を刺通して管本体に挿入されると、真空採血管内が減圧されていることから、被採血者の血管内の圧力と真空採血管内の圧力差によって血液が真空採血管内に流入して採血が行われる。
【0003】
このとき、血沈検査用や凝固機能検査用の真空採血管では、採取した血液の凝固を防止するために、予め管本体内にはヘパリン、クエン酸塩水溶液などの血液抗凝固剤が収納されたり、生化学検査用の真空採血管では、逆に血液の凝固を促進するために、シリカ、カオリン、珪藻土といったシリカ系鉱物などの血液凝固促進剤が収納されている(特許文献1参照)。
【0004】
そして、この種の真空採血管を用いて血液検査を行う場合、行うべき検査内容を記載した検査依頼書が真空採血管とともに、院内の検査部門または院外の検査センターなどの検査機関に送られ、検査機関では送られてきた真空採血管と検査依頼書とを照合し、その真空採血管内の血液について検査依頼書で指示されている所定の血液検査を行い、その検査結果を病院側に報告するようにしている。
【0005】
このとき、患者と真空採血管と検査依頼書とが確実に対応付けられている必要があり、これらの間での対応に一部でも誤りがあると、採血のやり直しが必要となって患者の負担を増大したり、最悪の場合には患者の誤診を招いてしまうこととなるため、従来では、検査機関において採血に先立ち、少なくとも容器種類及び管理番号などをコード化したバーコードを透明体により形成したラベルをラベルプリンタにより印刷して真空採血管及び検査依頼書に貼り付け、両者のバーコードを読み取ることによって真空採血管と検査依頼書とを対応付ける(特許文献2参照)などが行われている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−253538号公報(段落0002〜0003、図9)
【特許文献2】特開平9−34361号公報(段落0016,0020)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の真空採血管の場合、管本体内が減圧されて内部が真空状態にされているため、ある程度時間が経過すると管本体内の真空劣化が徐々に進み、内部の血液抗凝固剤などが次第に空気に晒されて劣化し、このように血液抗凝固剤等が劣化した真空採血管を使用した場合には、検査結果に大きな誤差が生じるという問題があった。
【0008】
そこで、真空採血管には有効期限が設定されて有効期限を経過した真空採血管は廃棄処分されるようになっているが、真空採血管の有効期限の管理には多大な手間と時間を要し、厳密に期限管理をすることが困難であるため、多くの真空採血管が無駄に廃棄されるというのが現状である。通常、ガラス製の真空採血管の有効期限は3ヶ月であり、近年、製造コストの低さや取り扱い易さの点からPET(ポリエチレンテレフタレート)製の真空採血管が多用されるようになってきているが、PET製の真空採血管はガラス製よりも真空劣化が激しく有効期限が短い。
【0009】
さらに、特許文献2に記載のように、バーコードを印刷したラベルを真空採血管及び検査依頼書に貼り付ける場合、真空採血管と同一のバーコードを検査依頼書にも付する必要があるため、作業工程が多くなり、特に大病院では作業件数が膨大なものになるため、ラベルの貼り違えなどの人為的なミスが生じ易く、このような検査機関の作業者の錯誤による人為的なミスが原因で、採血のやり直しを患者に強いたり、患者の取り違えによる誤診を招くおそれもある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、真空採血管の有効期限の長期化を図るとともに真空採血管の期限管理を簡素化し、廃棄される真空採血管の数を低減して無駄を削減することを目的とする。さらに、採血を行う検査機関における真空採血管及び検査依頼書へのラベル貼付などの作業を不要にしてラベルの貼り違えなどの人為的なミスの発生を未然に防止することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明における真空採血管は、一端が開口され他端が閉塞された透光性の管本体と、採血針を刺通可能な材質により形成され前記管本体の一端を閉塞して該管本体に取り付けられた栓体と、少なくとも前記管本体の外周面を包被して形成された透光性のフィルム被膜と、前記管本体と前フィルム被膜との間に介在され少なくとも採血管有効期限を表わす期限情報を含む採血管情報が記録された情報記録部とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
また、本発明における真空採血管は、前記フィルム被膜が、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面を包被して形成され、前記フィルム被膜の形成後に前記管本体内部が減圧状態とされることを特徴としている(請求項2)。
【0013】
また、本発明における真空採血管は、前記フィルム被膜が、前記管本体内部が減圧状態とされた後に、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面及び前記栓体の外周面の一部を包被して形成されることを特徴としている(請求項3)。
【0014】
また、本発明における真空採血管は、前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に、印刷により形成されて成ることを特徴としている(請求項4)。
【0015】
また、本発明における真空採血管は、前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に貼付されたICタグから成ることを特徴としている(請求項5)。
【0016】
また、本発明における真空採血管は、前記フィルム被膜が、0.001〜1.0mmの膜厚のポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂から成ることを特徴としている(請求項6)。
【0017】
また、本発明における真空採血管は、前記情報記録部に記録される情報には、採血管各々を相互に識別するための識別情報と、採血管使用先である医療機関を相互に識別するための医療機関情報とが含まれ、当該情報記録部の記録情報が読取手段により外部から読み取られることを特徴としている(請求項7)。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、管本体の外周面を透光性のフィルム被膜によりコーティングするため、管本体内の収容物を目視できる状態のまま真空採血管の有効期限を、コーティングをしない場合の有効期限の3倍以上に延ばすことができる。また、管本体とフィルム被膜との間に情報記録部を備えているため、情報記録部を剥離又は破損等から保護することができるとともに、製造工程において情報記録部に採血管有効期限を表わす期限情報を記録することが可能であり、透光性のフィルム被膜を通して情報記録部に記録された期限情報を読取手段により外部から読み取ることができ、コンピュータなどにより真空採血管の有効期限を簡単に把握、管理することが可能になり、従来のように無駄に廃棄していた真空採血管の数を減らすことができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、管本体外周面にフィルム被膜を形成した後に管本体内部を減圧状態とするため、例えば流動浸漬法や静電塗装法、シュリンク加工法などの周知の手法によりフィルム被膜を容易に形成することができ、その後管本体内部を滅菌し減圧状態して栓体により閉栓すれば、従来よりも有効期限の長い真空採血管を得ることができる。ここで、流動浸漬法とは、樹脂粉体槽に圧縮空気を下方から送り込んで粉体を槽内に流動させ、加熱処理したワーク(管本体)を一定時間浸漬し、ワーク(管本体)熱によりワーク(管本体)の外周面に樹脂粉体を融解させることによってフィルム被膜を形成する手法である。また、静電塗装法とは、ワーク(管本体)を陽極、塗装霧化装置を陰極として両極間に直流高圧を与えて静電界を作り、霧化した塗料を負に帯電させて反対極性のワーク(管本体)の外周面に塗装してフィルム被膜を形成する手法である。さらに、シュリンク加工法とは、ワーク(管本体)を専用フィルムで覆い、これを加熱収縮させてワーク(管本体)の外周面にフィルム被膜を形成する手法である。
【0020】
請求項3の発明によれば、管本体内部が減圧状態とされた後に、管本体の外周面及び栓体の外周面の一部をフィルム被膜により包被して形成されるため、管本体と栓体との境界部分もフィルム被膜により包被できることから、より真空劣化の少ない真空採血管を提供することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、情報記録部は、フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に直接印刷して形成されるため、従来のように検査機関など医療現場において情報を記録したラベルを貼付するといった作業が不要となって医療作業者の負担を軽減することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、情報記録部はICタグから成るため、少なくとも読取手段により、外部から当該情報記録部の記録情報を簡単に読み取ることができる。なお、ICタグは接触式、非接触式のいずれであってもよい。
【0023】
請求項6の発明によれば、フィルム被膜を0.001〜1.0mmの膜厚のポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂製とするため、真空採血管の真空劣化をより効果的に防止することが可能であり、かつ真空採血管の透明度も保持されることにより、真空採血管内部を目視により確認することができる。なお、フィルム被膜の膜厚は0.01〜0.02mmであることが最も好適である。
【0024】
請求項7の発明によれば、情報記録部に記録される情報には少なくとも採血管の識別情報、有効期限情報、及び使用先の医療機関情報等が含まれ、読取手段により当該情報記録部の記録情報を外部から読み取られるため、病院などの検査機関において採血を行なう際に、真空採血管各々の情報記録部から読み取った識別管理、有効期限管理及び医療機関情報等の採血管情報と、被採血者の性別や氏名、年齢、性別といった固有の被採血者情報と、必要な検査項目からなる検査依頼情報とを対応付けてコンピュータにデータ入力することによって、真空採血管と被採血者情報と検査依頼情報とを対応付けて一元管理することが可能になり、従来のように真空採血管及び検査依頼書へのラベル貼付などの作業を不要にして、ラベルの貼り違えなどの人為的なミスの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態について図1ないし図12を参照して説明する。なお、図1は完成された真空採血管の斜視図、図2は製造途中における真空採血管の斜視図、図3および図4はフィルム被膜の形成に使用されるフィルム材を示す図、図5および図6は真空採血管のそれぞれ異なる製造工程を示すフローチャートである。
【0026】
真空採血方式に使用される本発明にかかる真空採血管は、図1に示すように構成されている。すなわち、一端が開口され他端が閉塞された試験管状の例えばガラス製の管本体1の開口側に、例えばゴム製の栓体2が嵌着されて開口が閉塞でされている。このとき、図2に示すように、管本体1内には検査種類に応じた検査試薬4が予め収納され、例えば血沈検査用や凝固機能検査用の真空採血管の場合には、採取した血液の凝固を防止するためのヘパリン、クエン酸塩水溶液などの血液抗凝固剤が予め収納され、生化学検査用の真空採血管の場合には、逆に血液の凝固を促進するためのシリカ、カオリン、珪藻土といったシリカ系鉱物などの血液凝固促進剤が収納される。
【0027】
そして、後に詳述するが、内部が滅菌、減圧状態にされて栓体2により閉塞された管本体1の外周部がフィルム被膜6により包被され、管本体1内の真空劣化の抑制が図られ、真空採血管の有効期限の長期化が図られている。このとき、管本体1の外周部をフィルム被膜6により包被しない場合に比べてフィルム被膜6により包被することで、真空採血管の有効期限が約3倍に延びることを実験により確認している。
【0028】
なお、管本体1には、上記したガラスのほか、取り扱い及び加工の容易さ並びに製造コストの低さから近年ではPET(ポリエチレンテレフタレート)が用いられるようになってきており、その他にもポリエチレン等が使用される。また、栓体2には、採血時に採血針の先端が刺通し易いようにするため、天然ゴム、合成ゴムのほか軟質の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどを使用するのが好ましい。さらに、栓体2はスクリューキャップのゴム製中栓であってもよい。
【0029】
また、フィルム被膜6には、ポリアミド系樹脂又は塩化ビニル樹脂等を用いるのが望ましく、耐久性、安全性の観点から米国食品医薬品局試験に合格しているナイロン11(登録商標)を用いるのが最も望ましい。また、フィルム被膜6の素材として、このような透光性を備えた材質を用いることにより内容物の状態を確認することができてより安全であり、フィルム被膜6の膜厚として、0.001〜1.0mmとするのが好ましく、特に透光性を維持しつつ取り扱いやすい膜厚として、0.01〜0.02mmとすることが最も好ましい。
【0030】
ところで、フィルム被膜6の管本体1に巻き付ける内面側には採血管有効期限を表わす期限情報を含む採血管情報が記録された情報記録部7が形成され、管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被したときに、情報記録部7が管本体1とフィルム被膜6との間に介在されて情報記録部7の記録情報を外部から読み取れるようになっている。
【0031】
このとき、例えばシュリンク加工法によりフィルム被膜6を形成する場合、図3に示すように、ロール状に巻回された長尺のフィルム材10の内面側に、各管本体1ごとの間隔をあけてバーコード9を印刷形成しておき、フィルム材10をロールから繰り出して各管本体1の外周面に順次巻き付けて管本体1をフィルム材10により覆い、これを加熱収縮させることによって管本体1の外周面にフィルム被膜6が形成される。
【0032】
図1に示すように、情報記録部7の採血管情報8は、例えばEAN−128規格のバーコードで表されており、上記した採血管有効期限を表わす期限情報81のほか、真空採血管の配布先である各医療機関を相互に識別するための医療機関情報82と、各々の真空採血管を相互に識別するための固有の識別情報83と、当該真空採血管の種別を表す種別情報84とが含まれている。
【0033】
また、EAN−128規格のバーコードで表される情報記録部7を、管本体1の外周面に予め印刷しておいてもよく、外周面に情報記録部7のバーコードが印刷された管本体1に、シュリンク加工法のほか流動浸漬法や静電塗装法によりフィルム被膜6を形成するようにしてもよい。さらに、EAN−128規格のバーコードに代えて、図4に示すように、非接触式のICタグ12をフィルム材10の内面側に各管本体1ごとの間隔をあけて貼り付け、或いは、管本体1の外周面にICタグ12を貼り付けておき、その後にフィルム被膜6を形成するようにしてもよい。
【0034】
ここで、上記したように、シュリンク加工法とは、ワーク(管本体)を専用フィルムで覆い、これを加熱収縮させてワーク(管本体)の外周面にフィルム被膜を形成する手法であり、流動浸漬法とは、樹脂粉体槽に圧縮空気を下方から送り込んで粉体を槽内に流動させ、加熱処理したワーク(管本体)を一定時間浸漬し、ワーク(管本体)熱によりワーク(管本体)の外周面に樹脂粉体を融解させることによってフィルム被膜を形成する手法であり、静電塗装法とは、ワーク(管本体)を陽極、塗装霧化装置を陰極として両極間に直流高圧を与えて静電界を作り、霧化した塗料を負に帯電させて反対極性のワーク(管本体)の外周面に塗装してフィルム被膜を形成する手法である。
【0035】
そして、フィルム被膜6の形成には、図5及び図6に示す2通りの方法がある。図5に示すように、例えば管本体1にガラスを用いる場合、通常のガラス加工法により管本体1を量産する(ステップS1)。一方、図3に示すようにフィルム被膜6となるフィルム材10にバーコード9を印刷して各真空採血管ごとに内容の異なる採血管情報を含む情報記録部7を形成しておく(ステップS2)。そして、管本体1に情報記録部7が印刷されて形成されたフィルム材10を巻き付け、例えばシュリンク加工法によりフィルム被膜6を形成(コーティング)して管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被し(ステップS3)、その後管本体1内部を滅菌して減圧処理し、栓体2により管本体1の開口を閉塞封止する(ステップS4)。この場合、管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被した後で栓体2により管本体1を封止するため、管本体1と栓体2との境界部分までフィルム被膜6により包被することはできない。
【0036】
また、もうひとつのやり方として、図6に示すように、通常のガラス加工法により管本体1を量産し(ステップS11)、管本体1内部を滅菌して減圧処理し、栓体2により管本体1の開口を閉塞封止しておく(ステップS12)。そして、図3に示すようにフィルム被膜6となるフィルム材10にバーコード9を印刷して各真空採血管ごとに内容の異なる採血管情報を含む情報記録部7を形成しておき(ステップS13)、管本体1に情報記録部7が印刷されて形成されたフィルム材10を巻き付けてシュリンク加工法によりフィルム被膜6を形成(コーティング)して管本体1の外周面をフィルム被膜6により包被してもよい(ステップS14)。なお、図6に示すように、シュリンク加工法による加熱収縮によりフィルム被膜6を形成するのに先立ち、管本体1内部を滅菌、減圧状態として栓体2を装着する場合には、管本体1と栓体2との境界部分もフィルム被膜6により包被するのが望ましく、こうすると管本体1と栓体2との境界部分をフィルム被膜6により密封できるため、より真空劣化の少ない真空採血管を提供することができる。
【0037】
次に、上記した構成の真空採血管を使用して採血する場合における採血管情報及び患者情報の一元管理を行う電子カルテシステムの構成と、その管理処理について図7、図8を参照して説明する。図7は電子カルテシステムを示すブロック図、図8は患者カードの模式図である。この図7は、病院の電子カルテシステム14を示しており、外来患者の受付を行う受付カウンタに設けられた受付部20と、診療科に対応して患者の診察を行う診察室に設けられた診察部30と、患者から採血を行う採血室に設けられた採血部40と、血液検査を行う検査部60と、システム全体を統括する病院サーバ装置50とを備えている。受付部20、診察部30、採血部40、検査部60と、病院サーバ装置50とは、互いに無線または有線のネットワークNTを介して接続されている。
【0038】
なお、診察部30は診療科に対応して設けられるもので、図7では1つの診察部30のみを図示しているが、1つに限られず、例えば内科や外科などの複数の診療科がある場合には、各診療科に対応してそれぞれ設けられるものである。また、図7では1つの受付部20のみを図示しているが、これも同様であり、例えば受付カウンタに複数の受付部20を設けるようにしてもよい。また、検査部60の詳細については後述する。
【0039】
病院サーバ装置50は、電子カルテシステム14の各部の制御を行うCPU51と、種々のデータを保存するためのハードディスク(HD)装置52と、CPU51の動作を制御する制御プログラムが格納されたROM53とを備えている。CPU51の機能については後述する。
【0040】
受付部20は、初診や再診の外来患者の受付を行うためのものである。受付担当者は、外来患者が初診の場合には、モニタ21を見ながらキーボード22を操作して、当該初診の外来患者の氏名、性別、住所、生年月日などを含む患者特定情報を作成するとともに、患者の希望する診療科を入力し、その患者特定情報が記録された患者カード16を作成する。この患者特定情報は、本発明の「被採血者情報」に相当するものであり、以下「被採血者情報」という。患者カード16は、この実施形態では例えば図8に示すようにICチップ17が組み込まれたメモリカードで、ICカードリーダライタ23により被採血者情報をICチップ17に書き込むことで、その外来患者専用の患者カード16が作成される。また、受付担当者は、外来患者が再診の場合には、その外来患者が所持する患者カード16の被採血者情報をICカードリーダライタ23により読み取って当該患者の電子カルテをモニタ21に表示し、キーボード22を操作して、当該患者が希望する診療科を電子カルテに記入することによって、再診の外来患者の受付を行う。この電子カルテシステム14では、病院内を移動する患者は常に患者カード16を携帯するようになっている。
【0041】
そして、病院サーバ装置50のCPU51は、受付部20において受付が行われた患者の被採血者情報に基づき、初診の外来患者の電子カルテを作成してHD装置52に保存する。また、病院サーバ装置50のCPU51は、受付部20において受付が行われた初診または再診の外来患者の電子カルテを、当該患者が希望する診療科に対応する診察部(ここでは診察部30とする)に送る。
【0042】
診察部30では、担当医師が、モニタ31を見ながらキーボード32を操作し、順番に患者の電子カルテをモニタ31に表示させて患者の氏名を呼び出す。呼ばれて入室した患者の患者カード16がICカードリーダ33により読み取られ、同姓同名の異なる患者ではないことが確認される。担当医師は、患者の診察を行い、血液検査が必要と判断したときは、キーボード32を操作して必要な検査項目(例えば脂質検査や肝機能検査など)からなる検査依頼情報を電子カルテに書き込む。これによって、検査依頼情報が、被採血者情報と対応付けられて設定されることとなる。そして、病院サーバ装置50のCPU51は、検査依頼情報が書き込まれた電子カルテをHD装置52に保存する。血液検査が指示された患者は、診察部30が設けられた診察室から採血部40が設けられた採血室に移動する。
【0043】
患者が採血室に到着すると、まず、その患者の携帯する患者カード16が採血部40のICカードリーダ41により読み取られて当該患者の被採血者情報が取得され、病院サーバ装置50のCPU51は、その被採血者情報に対応付けて設定されている検査依頼情報をモニタ42に表示する。採血作業者は、その検査依頼情報を見て必要な種別の前記真空採血管を必要な個数だけ選択する。
【0044】
医療機関情報82は、前記真空採血管の配布先である各医療機関を相互に識別するためのもので、この実施形態では、上記検査機関が取引のある病院や診療所その他の医療機関ごとに特定のコードを予め設定している。識別情報83は、各々の前記真空採血管を相互に識別するためのもので、この実施形態では、医療機関情報82ごとに通し番号で設定している。なお、識別情報83に用いる通し番号が最大値に達したときは、再び“1”から繰り返して用いればよい。このため、通し番号の最大値は、識別情報83として通し番号が重複して使用されるおそれがないような大きい値に設定しておく必要がある。
【0045】
種別情報84は、当該真空採血管の種別を表すものである。すなわち、真空採血管には血液検査項目によって様々な種別があり、この実施形態では、上記検査機関がそれらの種別ごとに特定のコードを予め設定している。この種別情報84を表示しておくことにより、使用する当該真空採血管の種別の誤認を未然に防止できる。期限情報81は、当該真空採血管の有効期限を表すものである。すなわち、特定の血液検査項目に用いる真空採血管には薬剤が封入されているため、その薬剤の有効期限が設定されている。また、薬剤が封入されていなくても、あまりに古い採血管を用いるのは好ましくない。そこで、この期限情報81を表示しておくことにより、期限切れの真空採血管を使用するのを未然に防止できる。
【0046】
そして、採血作業者は、バーコードリーダ43によって、選択した真空採血管の採血管情報8を読み取らせる。病院サーバ装置50のCPU51は、バーコードリーダ43により読み取られた採血管情報8を取得し、現在の日時と期限情報81の有効期限とを比較して、その真空採血管が有効期限内か否かを判定し、その判定結果をモニタ42に表示する。すなわち有効期限内であれば例えば「○」マークの有効表示を行うとともに、その採血管情報8をHD装置52に保存し、期限切れであれば例えば「×」マークの警告表示を行う。警告表示が行われると、採血作業者は、その真空採血管と同一種別の異なる真空採血管を改めて選択し、バーコードリーダ43によって、その改めて選択した真空採血管の採血管情報8を読み取らせる。そして、全ての真空採血管が例えば「○」マークの有効表示が行われると患者から採血を行い、採血が無事終了して、その旨をキーボード44から入力すると、病院サーバ装置50のCPU51は、例えば図9に示すように、採血管情報8に対応付けて、被採血者情報および検査依頼情報をHD装置52に記憶する。
【0047】
図9はHD装置52に記憶される情報記憶内容の一例を示す図である。図9の例では、被採血者情報B1の患者に対して、1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C1と、2本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C2との2種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A1〜A3を有する合計3本の真空採血管が用いられる。また、被採血者情報B2の患者に対して、それぞれ1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C1,C3の2種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A4、A5を有する2本の真空採血管が用いられる。
【0048】
また、被採血者情報B3の患者に対して、1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C1の1種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A6を有する1本の真空採血管が用いられる。また、被採血者情報B4の患者に対して、1本の真空採血管を必要とする検査依頼情報C3の1種類の検査依頼情報が設定されており、採血管情報A7を有する1本の真空採血管が用いられる。そして、図9に示すように、HD装置52には、採血管情報A1に被採血者情報B1および検査依頼情報C1が対応付けられて記憶され、採血管情報A2,A3に、それぞれ被採血者情報B1および検査依頼情報C2が対応付けられて記憶される。
【0049】
また、採血管情報A4に被採血者情報B2および検査依頼情報C1が対応付けられて記憶され、採血管情報A5に被採血者情報B2および検査依頼情報C3が対応付けられて記憶される。また、採血管情報A6に被採血者情報B3および検査依頼情報C1が対応付けられて記憶され、採血管情報A7に被採血者情報B4および検査依頼情報C3が対応付けられて記憶される。
【0050】
続いて、外来患者の受付処理から診察処理、採血処理までの手順について図10ないし図12を参照して説明する。ここで、図10は受付処理の手順の一例を示すフローチャート、図11は診察処理の手順の一例を示すフローチャート、図12は採血処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0051】
図10に示すように、受付カウンタにおける受付処理では、まず、外来患者が初診の場合には(ステップS20でYES)、被採血者情報が作成され(ステップS21)、さらに患者の希望する診療科が入力されて(ステップS22)、電子カルテが作成されてHD装置52に記憶される(ステップS23)。また、ICカードリーダライタ23により被採血者情報がICチップ17に書き込まれて患者カード16が作成される(ステップS24)。そして、患者が希望する診療科の診察部30に向けて病院サーバ装置50のCPU51により電子カルテが送信される(ステップS25)。
【0052】
一方、外来患者が再診の場合には(ステップS20でNO)、その外来患者が所持する患者カード16の被採血者情報をICカードリーダライタ23により読み取り(ステップS26)、当該患者が希望する診療科が電子カルテに記入され(ステップS27)、その診療科の診察部30に向けて病院サーバ装置50のCPU51により電子カルテが送信される(ステップS25)。
【0053】
図11に示すように、診察室における診察処理では、まず、担当医師によりモニタ31に順番に患者の電子カルテが表示されて患者の氏名が呼び出され(ステップS30)、入室した患者の患者カード16がICカードリーダ33により読み取られて同姓同名の異なる患者ではないことが確認されて(ステップS31)、患者の診察が開始される(ステップS32)。そして、血液検査が必要と判断したときは検査依頼情報が電子カルテに書き込まれて(ステップS33)、その患者の診察が終了する。
【0054】
図12に示すように、採血室における採血処理では、まず、採血室に到着した患者の携帯する患者カード16が採血部40のICカードリーダ41により読み取られ、その読み取られた当該患者の被採血者情報をCPU51が取得する(ステップS40)。そして、その被採血者情報に対応する電子カルテをCPU41がモニタ42に表示することにより、設定されている検査依頼情報が表示される(ステップS41)。そして、採血作業者は、その検査依頼情報を見て必要な種別の真空採血管を必要な個数だけ選択し(ステップS42)、それらの真空採血管の採血管情報8をバーコードリーダ43によってそれぞれ読み取らせる(ステップS43)。次いで、読み取った採血管情報8に基づき、その真空採血管が有効期限内か否かが判定され(ステップS44)、期限切れのものがあれば(ステップS44でNO)、その真空採血管に対してモニタ42に警告表示が行われる(ステップS45)。
【0055】
そして、ステップS42に戻り、採血作業者によりその期限切れの真空採血管と同一種別の異なる真空採血管が改めて選択され、バーコードリーダ43により、その改めて選択された真空採血管の採血管情報8が読み取られる(ステップS43)。そして、真空採血管が有効期限内であれば(ステップS44でYES)、その真空採血管に対して患者から採血が行われ(ステップS46)、採血が終了した旨が採血作業者によりキーボード44から入力されると(ステップS47)、病院サーバ装置50のCPU51により、採血管情報8に対応付けられて、被採血者情報および検査依頼情報がHD装置52に記憶される(ステップS48)。
【0056】
このようにすれば、採血管情報8がバーコード表示された情報記録部7を備える真空採血管を用いて採血を行い、その採血管情報8に対応付けて被採血者情報および検査依頼情報をHD装置52に記憶し、採血管情報8を基に被採血者情報および検査依頼情報を一元管理することができる。これによって、電子カルテシステム14における採血に関する情報管理を簡素化することができる。
【0057】
したがって、上記した実施形態によれば、管本体1の外周面を透光性のフィルム被膜6により包被するため、管本体1内部の収容物を目視できる状態のまま真空採血管の有効期限を、包被しない場合の有効期限の3倍以上に延ばすことができる。
【0058】
また、管本体1とフィルム被膜6との間に情報記録部7を備えているため、情報記録部7を剥離又は破損等から保護することができるとともに、製造工程において情報記録部7に採血管有効期限を表わす期限情報を記録することが可能であり、透光性のフィルム被膜6を通して情報記録部7に記録された期限情報を読取手段により外部から読み取ることができ、コンピュータなどにより真空採血管の有効期限を簡単に把握、管理することが可能になり、従来のように無駄に廃棄していた真空採血管の数を減らすことができる。
【0059】
また、管本体1外周面にフィルム被膜6を形成した後に管本体1内部を減圧状態とするため、周知の手法によりフィルム被膜6を容易に形成することができ、従来よりも有効期限の長い真空採血管を得ることができる。さらに、管本体1内部が減圧状態とされた後に、管本体1の外周面及び栓体2の外周面の一部をフィルム被膜6により包被して形成されるため、管本体1と栓体2との境界部分もフィルム被膜6により包被できることから、より真空劣化の少ない真空採血管を提供することができる。
【0060】
また、情報記録部7は、フィルム被膜6の内面側または前記管本体1の外周面に直接形成されるため、検査機関など医療現場において情報を記録したラベルを貼付するといった作業が不要となり、ラベルの貼り違え等の人為的なミスの発生を防止することができる。さらに、情報記録部7がICタグ12から成るときは、読取手段により、外部から当該情報記録部7の記録情報を簡単に読み取るだけでなく、記録を書き込むこともできる。
【0061】
また、情報記録部7に記録された真空採血管の識別情報83、有効期限情報81、及び使用先の医療機関情報82等の採血管情報8を、読取手段により当該外部から読み取り、病院などの検査機関において採血を行なう際に、採血管情報8と、被採血者の氏名等の被採血者情報と、検査依頼情報とを対応付けてコンピュータにデータ入力することによって、真空採血管と被採血者情報と検査依頼情報とを対応付けて一元管理することができる。
【0062】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0063】
例えば、上記した実施形態では、採血管情報8をEAN−128規格によるバーコード9により表示した例を示したが、他の規格のバーコードでもよい。また、ICタグを備える場合は接触式、非接触式のいずれであってもよい。
【0064】
また、上記した実施形態では、フィルム被膜6の形成方法として流動浸漬法、静電塗装法、シュリンク加工法を用いた例を示したが、これらに限られるものではなく、上記以外の可能な加工法を採用してもよい。
【0065】
また、上記した実施形態では、フィルム被膜6はポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂製としているが、他の透光性材料によりフィルム被膜6を形成するとしてもよい。
【0066】
また、上記した実施形態では、フィルム被膜6上にバーコード9を印刷により形成していたが、バーコード9を含む一定領域の色を赤、黄、緑など種々の色に変更して印刷するとしてもよい。この形態によれば、例えば特定の患者等には、黄色等に着色した情報記録部7を備えた真空採血管を用いることにより、採血担当者の注意を促すことができる。
【0067】
さらに、上記した実施形態では、病院内の真空採血管に関して有効期限等の一括管理を行っていたが、病院外の検査部等の真空採血管に関しても、その有効期限管理を病院内で合わせて行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態における真空採血管の斜視図である。
【図2】一実施形態における真空採血管のフィルム被膜形成前の斜視図である。
【図3】一実施形態におけるバーコードを印刷したフィルム材を示す図である。
【図4】一実施形態におけるICタグを貼付したフィルム材を示す図である。
【図5】一実施形態における真空採血管の製造手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】一実施形態における真空採血管の製造手順の他の例を示すフローチャートである。
【図7】一実施形態における真空採血管を使用して採血する場合の電子カルテシステムのブロック図である。
【図8】図7の電子カルテシステムにおける患者カードの模式図である。
【図9】図7の電子カルテシステムにおけるHD装置に記憶される情報記憶内容の一例を示す図である。
【図10】図7の電子カルテシステムにおける受付処理のフローチャートである。
【図11】図7の電子カルテシステムにおける診察処理のフローチャートである。
【図12】図7の電子カルテシステムにおける採血処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1……管本体
2……栓体
6……フィルム被膜
7……情報記録部
8……採血管情報
9……バーコード
10……フィルム材
12……ICタグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空採血方式に使用される真空採血管において、
一端が開口され他端が閉塞された透光性の管本体と、
採血針を刺通可能な材質により形成され前記管本体の一端を閉塞して該管本体に取り付けられた栓体と、
少なくとも前記管本体の外周面を包被して形成された透光性のフィルム被膜と、
前記管本体と前フィルム被膜との間に介在され少なくとも採血管有効期限を表わす期限情報を含む採血管情報が記録された情報記録部と
を備えたことを特徴とする真空採血管。
【請求項2】
前記フィルム被膜が、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面を包被して形成され、
前記フィルム被膜の形成後に前記管本体内部が減圧状態とされることを特徴とする請求項1に記載の真空採血管。
【請求項3】
前記フィルム被膜が、前記管本体内部が減圧状態とされた後に、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面及び前記栓体の外周面の一部を包被して形成されることを特徴とする請求項1に記載の真空採血管。
【請求項4】
前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に、印刷により形成されて成ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の真空採血管。
【請求項5】
前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に貼付されたICタグから成ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の真空採血管。
【請求項6】
前記フィルム被膜が、0.001〜1.0mmの膜厚のポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂から成ることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の真空採血管。
【請求項7】
前記情報記録部に記録される情報には、採血管各々を相互に識別するための識別情報と、採血管使用先である医療機関を相互に識別するための医療機関情報とが含まれ、
当該情報記録部の記録情報が読取手段により外部から読み取られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の真空採血管。
【請求項1】
真空採血方式に使用される真空採血管において、
一端が開口され他端が閉塞された透光性の管本体と、
採血針を刺通可能な材質により形成され前記管本体の一端を閉塞して該管本体に取り付けられた栓体と、
少なくとも前記管本体の外周面を包被して形成された透光性のフィルム被膜と、
前記管本体と前フィルム被膜との間に介在され少なくとも採血管有効期限を表わす期限情報を含む採血管情報が記録された情報記録部と
を備えたことを特徴とする真空採血管。
【請求項2】
前記フィルム被膜が、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面を包被して形成され、
前記フィルム被膜の形成後に前記管本体内部が減圧状態とされることを特徴とする請求項1に記載の真空採血管。
【請求項3】
前記フィルム被膜が、前記管本体内部が減圧状態とされた後に、前記管本体との間に前記情報記録部を介在した状態で、前記管本体の外周面及び前記栓体の外周面の一部を包被して形成されることを特徴とする請求項1に記載の真空採血管。
【請求項4】
前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に、印刷により形成されて成ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の真空採血管。
【請求項5】
前記情報記録部が、前記フィルム被膜の内面側または前記管本体の外周面に貼付されたICタグから成ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の真空採血管。
【請求項6】
前記フィルム被膜が、0.001〜1.0mmの膜厚のポリアミド系樹脂または塩化ビニル樹脂から成ることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の真空採血管。
【請求項7】
前記情報記録部に記録される情報には、採血管各々を相互に識別するための識別情報と、採血管使用先である医療機関を相互に識別するための医療機関情報とが含まれ、
当該情報記録部の記録情報が読取手段により外部から読み取られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の真空採血管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−264066(P2008−264066A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108194(P2007−108194)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(500488915)ホクユーメディックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(500488915)ホクユーメディックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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