説明

真空断熱材

【課題】この発明は、芯材に有機繊維を用いて、芯材にガラス繊維を用いることによる、ガラス繊維の飛散による作業環境の悪化を抑え、かつ切り目を芯材に形成して、有機繊維の破断し難さを改善し、有機繊維の綿状化に起因するリサイクル回収物である金属への絡みつきやフィルタの目詰まりを抑制できる真空断熱材を得る。
【解決手段】真空断熱材1は、有機繊維シートからなる芯材2と、ガスバリア性を有し、芯材2を収納して真空封止される包装材6と、を有する。スリットが有機繊維を長さ方向に分断するように有機繊維シートに形成され、支持材5が芯材2の厚み方向の一方の面に重ねられて包装材6内に収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷蔵庫、自動販売機、保冷箱、保冷車、給湯器貯湯タンクなどの断熱材に用いられる真空断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫、自動販売機、保冷箱、保冷車、給湯器貯湯タンクなどには、優れた断熱性を有する真空断熱材が多く使用されている。一般的に、真空断熱材は、ガスバリア性の金属蒸着フィルムなどからなる外被材に芯材を充填し、その内部を減圧して密封した構造となっている。そして、真空断熱材の断熱性、生産性、取り扱い性は、その芯材によって大きく左右される。
【0003】
第1の従来の真空断熱材では、古紙を積層して矩形平板状に形成された充填体(芯材)を、ガスバリア性フィルムからなる袋状の外殻(外被材)の内部に収納し、外殻の内部の空気を排出した後、外殻を気密に封止して構成されていた(例えば、特許文献1参照)。そして、充填体には、古紙の積層方向に延びて積層体を貫通する略十字形の切り込みが設けられており、外殻の内部の空気を排出する際の排気効率を上げ、外殻内の真空引き時間を短縮していた。
【0004】
しかしながら、近年、真空断熱材への要求が多岐にわたってきており、より高性能な真空断熱材が求められてきた。そこで、古紙に比べて断熱性能に優れるガラス繊維集合体からなる芯材と、芯材の少なくとも一方の面に積層された補強材と、ガスバリア性を有する外被材と、からなる第2の従来の真空断熱材が提案されていた(例えば、特許文献2参照)。
しかし、第2の従来の真空断熱材では、芯材として、ガラス繊維集合体を用いていたので、リサイクル時に、外被材を開封すると、ガラス繊維集合体が飛散し、環境負荷が大きくなるという問題があった。
【0005】
このような状況を鑑み、ポリエステル繊維からなるシート状繊維集合体で構成される芯材と、ガスバリア性を有する外包体と、からなる第3の従来の真空断熱材が提案されていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−156793号公報
【特許文献2】特開2002−310384号公報
【特許文献3】特開2006−29505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第3の従来の真空断熱材では、芯材がポリエステル繊維からなるシート状繊維集合体で構成されているので、芯材にガラス繊維を用いることによる、ガラス繊維の飛散による作業環境の悪化を抑えることができる。しかし、有機材料を繊維集合体としているので、芯材が破断し難くなった。そこで、例えば当該真空断熱材を搭載した冷蔵庫などを、回転刃をもつ破砕機に投入する方法により、鉄などの金属を取り出してリサイクルする場合、芯材を回転刃で断ち切ることができず、繊維状の有機材料が引き伸ばされ、嵩が増えて綿状化する。そして、綿状化した有機材料がリサイクル回収物である金属に絡みつき、リサイクル品としての品位を低下させ、あるいは破砕された金属を分離するフィルタに有機材料が付着し、目詰まりを生じさせるという新たな問題が生じた。
【0008】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、芯材に有機繊維を用いて、芯材にガラス繊維を用いることに起因する作業環境の悪化を抑え、かつ切り目を芯材に形成して、有機繊維の破断し難さを改善し、有機繊維の綿状化に起因するリサイクル回収物である金属への絡みつきやフィルタの目詰まりを抑制できる真空断熱材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による真空断熱材は、有機繊維シートからなる芯材と、ガスバリア性を有し、上記芯材を収納して真空封止される包装材と、を有し、スリットが有機繊維を長さ方向に分断するように上記有機繊維シートに形成され、支持材が上記芯材の厚み方向の少なくとも一方の面に重ねられて上記包装材内に収納されている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、芯材が有機繊維シートにより構成されているので、芯材にガラス繊維を用いることによる、ガラス繊維の飛散による作業環境の悪化を抑えることができる。
また、スリットが有機繊維を長さ方向に分断するように有機繊維シートに形成されているので、有機繊維の破断し難さが改善される。そこで、真空断熱材を破砕機に投入しても、有機繊維の綿状化が抑えられ、有機繊維の綿状化に起因するリサイクル回収物である金属への絡みつきやフィルタの目詰まりを抑制でき、リサイクル性が高められる。
さらに、芯材が支持材に支持されて包装材に挿入されるので、スリットが形成されてバラバラになったり、折れ曲がりやすくなった有機繊維シートを、当該支持材がサポートすることによって組立作業性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る真空断熱材を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る真空断熱材における芯材と支持材の構成を説明する分解斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る真空断熱材に用いられる芯材の製造方法を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る真空断熱材に用いられる有機繊維シートに形成されるスリット配列を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る真空断熱材を示す断面図である。
【図6】この発明による真空断熱材のリサイクル性および組立作業性を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の真空断熱材の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る真空断熱材を示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る真空断熱材における芯材と支持材の構成を説明する分解斜視図である。
【0014】
図1および図2において、真空断熱材1は、樹脂繊維をシート化したものにスリット加工を施した有機繊維シート3を所定枚積層して構成される芯材2と、芯材2の厚み方向の少なくとも一方の面に重ねて配設される支持材5と、芯材2と支持材5との積層体を内包し、内部の空気を排出した後、気密に封止される包装材6と、を備えている。ここで、芯材2の厚み方向とは有機繊維シート3の厚み方向である。
【0015】
ここで、有機繊維シート3には、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂材料を繊維化した有機繊維をシート化したものが用いられ、剪断性を改善するためにスリット加工が施される。また、紡糸・シート化の方法としては、スパンボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法などが用いられる。
【0016】
有機繊維シート3の熱伝導率に影響する因子には、繊維同士の接触に起因する固体熱伝導率と、繊維間の空隙に起因する気体熱伝導率とがある。そして、有機繊維の繊維径が9μm未満であると、繊維同士の接触面積が小さくなるものの、繊維強度が小さく、真空封止した際に、繊維の撓みが生じて空隙率が低下するために熱伝導率が増大する。一方、有機繊維の繊維径が25μmより大きくなると、繊維強度は増すものの、繊維断面積が増加するために、繊維自体の固体熱伝導量が増大する。これらのことから、繊維同士の接触面積を低減して固体熱伝導率を低減し、かつ繊維間の空隙を微細化して気体熱伝導率を低減して優れた断熱性能を得るには、繊維径の分布のピークが9μm以上、25μm以下の樹脂繊維を用いることが好ましい。
【0017】
支持材5は、スリット加工を施して強度低下した有機繊維シート3を支持できる引っ張り強度を有していれば、特に材料は限定されないが、厚みが薄く、表面性がよく、熱伝導率が小さく、安価で、安定性がよく、破砕性がよいものがよい。支持材5には、例えば、無機繊維シートが用いられる。無機繊維シートの材料としては、ガラス繊維、セラミックスファイバー、ロックウールなどが利用可能である。ガラス繊維シートには、ガラス繊維を湿式法によって抄造してシート化したガラス繊維シート、バインダを使用して乾式法で作製したガラス繊維シートなどがある。
【0018】
支持材5として無機繊維シートを用いる場合、包装材6の内部の空気を排出して封止した状態での空隙率を80%以上、97%以下、好ましくは85%以上、97%以下にすることがよい。このように、支持材5が封止後に高い空隙率を維持することで、支持材5自体の熱伝導率が小さくなり、真空断熱材1の厚み当たりの断熱性能の低下を抑えることができる。このとき、支持材5の熱伝導率を有機繊維シート3の熱伝導率以下とすると、支持材5の挿入前の真空断熱材1と同等の断熱性能を得るために、当該真空断熱材1の厚みが厚くなることがない。
【0019】
支持材5の引っ張り強度が1N/25mm未満であると、スリット加工された有機繊維シート3の積層体である芯材2に重ねて包装材6に挿入する際に、支持材5が有機繊維シート3を支持しきれず、有機繊維シート3がバラバラになり、真空断熱材1の組立作業性が低下する。そこで、支持材5の引っ張り強度は、1N/25mm以上(好ましくは、2N/25mm以上)がよい。
【0020】
なお、支持材5から幅25mm、長さ120mm以上の試験片を切り出し、当該試験片を100mmのチャック間隔でテンシロン引張試験機に把持させ、100mm/minの速度で引っ張り、最大荷重値を測定し、測定された最大荷重値を支持材5の引っ張り強度とした。
【0021】
包装材6は、ガスバリア性を有し、内部を減圧状態に維持できるものであれば、特に材料は限定されないが、ヒートシール可能なものが好ましい。包装材6には、例えば、最外層から保護層、ガスバリア層、ガスバリア層、熱融着層の順に重ねた4層構造のラミネート材を用いることができる。保護層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムなどが用いられる。ガスバリア層としては、ステンレスやアルミニウムなどの金属箔、金属蒸着フィルムなどが用いられる。金属蒸着フィルムとしては、アルミニウムなどの金属をポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどの樹脂フィルムに蒸着したものが用いられる。熱融着層としては、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムなどが用いられる。
【0022】
つぎに、スリット加工された有機繊維シート3の製造方法について図3を参照しつつ説明する。
【0023】
スリット加工された有機繊維シート3の製造ラインは、有機繊維の材料となる樹脂ペレット7が投入されるタンク8と、タンク8にて加熱・溶融された樹脂ペレット7の溶融物が押し出されるノズル9と、ノズル9から押し出された有機繊維を冷却するためのブロア10と、冷却された有機繊維を所望の繊維径に延伸するエジェクター11と、エジェクター11によって延伸された有機繊維を集積して、所望の厚みとなるように速度をコントロールされた集積コンベアー12と、集積コンベアー12によって集積された有機繊維を加熱・溶着してシート化する圧着ロール13と、圧着ロール13によってシート化された有機繊維シート3にスリット加工を施すスリットロール14と、を備えている。
【0024】
まず、樹脂ペレット7がタンク8に供給され、加熱・溶融される。そして、樹脂ペレット7の溶融物をギアポンプ(図示せず)によってノズル9から押し出し紡糸する。ノズル9から押し出された有機繊維はブロア10により冷却された後、エジェクター11内に吸引され、繊維径分布のピークが9μm以上、25μm以下となるように延伸される。延伸された有機繊維は、集積コンベアー12上で所定の厚みとなるように集積される。集積された有機繊維は、圧着ロール13により加熱溶着、圧縮され、有機繊維シート3に成形される。成形された有機繊維シート3は、スリットロール14によりスリット加工が施される。スリット加工が施された有機繊維シート3は所定の厚みとなるように複数枚積層され、所定のサイズにカットされ、芯材2となる。
【0025】
このように作製された芯材2は乾燥後、芯材2の厚み方向の一面に重ねられた支持材5に支持されて、支持材5とともに袋状に形成された包装材6に挿入される。その後、包装材6の内部の空気が排気され、包装材6の開口部がヒートシールされて、真空断熱材1が作製される。
【0026】
ここで、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂を繊維化した有機繊維をシート化して作製した有機繊維シートの静摩擦係数を測定したところ、0.9だった。そこで、静摩擦係数を0.9未満とする支持材を用いると、支持材を芯材に重ねて包装体に挿入する作業性は、芯材単体を包装体に挿入する作業性より高められる。また、静摩擦係数を0.1以下とする支持体を用いると、支持材を芯材に重ねて包装体に挿入する際に、芯材が支持材から滑り落ち易くなり、支持材を芯材に重ねて包装体に挿入する作業性は、芯材単体を包装体に挿入する作業性より低下することがわかった。このように、支持材を芯材に重ねて包装体に挿入する作業性を高める観点から、支持材の静摩擦係数を有機繊維シートの静摩擦係数より小さく、かつ0.1より大きくすることが好ましい。
【0027】
静摩擦係数を有機繊維シートの静摩擦係数より小さく、かつ0.1より大きい静摩擦係数を有する支持材は、有機繊維シートの静摩擦係数より小さく、かつ0.1より大きい静摩擦係数を有する離形剤を支持材に塗布すればよい。また、支持材を、1N/25mm以上の引っ張り強度を有する芯材支持層と、有機繊維シートの静摩擦係数より小さく、かつ0.1より大きい静摩擦係数を有する低摩擦層との2層構造としてもよい。この場合、支持材は、芯材支持層を芯材に向けて芯材に重ねられる。
【0028】
つぎに、スリット加工による有機繊維シートに形成されるスリット配列について図4を参照しつつ説明する。図4中、矢印Aは有機繊維シート3の巻き取り方向を示している。
スリット4は、スリット長さ方向を矢印Aの方向と直交する方向とし、それぞれ所定の長さlを有し、矢印Aの方向と直交する方向に所定の間隔dで、かつ矢印Aの方向に所定のピッチpで、有機繊維シート3を厚み方向に貫通するように複数形成される。有機繊維シート3は、有機繊維の長さ方向がランダムであるので、このスリット加工により、有機繊維が長さ方向に分断される。
【0029】
スリット4の形状、個数、配列などは、特に限定されないが、スリット加工された有機繊維シート3の完全破断時の伸び率が200%以下(好ましくは、100%以下)となるようにスリット4を形成することが重要である。つまり、スリット加工された有機繊維シート3の完全破断時の伸び率が200%を超えると、回転刃で破砕したときに、有機繊維が引き伸ばされて綿状化し、リサイクル回収物である金属に絡みつき、リサイクル品としての品位を低下させ、あるいは破砕された金属を分離するフィルタに有機繊維が付着し、目詰まりを生じさせるという問題が生じる。例えば、スリット長さlを3mm以上、500mm以下(好ましくは、3mm以上、150mm以下)、スリット間隔dを0.2mm以上、100mm以下(好ましくは、0.2mm以上、50mm以下)、スリットピッチpを3mm以上、200mm以下(好ましくは、3mm以上、50mm以下)とすることがよい。また、スリットを矢印Aの方向にも形成して、十字型にしてもよい。
【0030】
なお、有機繊維シート3から幅25mm、長さ120mm以上の試験片を切り出し、当該試験片を100mmのチャック間隔でテンシロン引張試験機に把持させ、100mm/minの速度で引っ張り、荷重のかかり初めから破断時までの試験片の伸び率を測定し、測定された試験片の伸び率を有機繊維シート3の完全破断時の伸び率とした。
【0031】
この実施の形態1によれば、有機繊維シート3を積層して芯材2としているので、芯材にガラス繊維を用いることによる、ガラス繊維の飛散による作業環境の悪化を抑えることができる。
【0032】
また、有機繊維シート3にスリット加工を施しているので、有機繊維が長さ方向に分断され、有機繊維の破断し難さが改善される。そこで、真空断熱材を破砕機に投入しても、有機繊維の綿状化が抑えられ、有機繊維の綿状化に起因するリサイクル回収物である金属への絡みつきやフィルタの目詰まりを抑制でき、リサイクル性が高められる。
さらに、芯材2がその厚み方向の一面に重ねられた支持材5に支持されて包装材6に挿入されるので、スリット加工されて剛性の低下した有機繊維シート3がバラバラになったり、折れ曲がったりすることがなくなり、組立作業性が高められる。
【0033】
なお、上記実施の形態1では、包装材内に有機繊維シートを積層した芯材のみを入れて、断熱性に優れた真空断熱材を得ているが、経時的な大気からのガス侵入による真空度の低下による熱伝導率の上昇を抑制するために、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの物理吸着剤や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物などの化学吸着剤を封入し、外部からの侵入ガスを吸着するようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態1では、包装材の封止工程に先立って、芯材の乾燥工程を入れているが、芯材の乾燥工程は省略してもよい。
また、上記実施の形態1では、支持材を芯材の厚み方向の一面に重ねるものとしているが、支持材は芯材の厚み方向の両面に重ねてもよい。
また、上記実施の形態1では、芯材が有機繊維シートを積層して構成されているものとしているが、有機繊維シートが所定の厚みに成形できれば、1枚の有機繊維シートで芯材を構成してもよい。
【0035】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る真空断熱材を示す断面図である。
【0036】
図5において、真空断熱材1Aは、スリット加工を施した有機繊維シート3を所定枚積層して構成される芯材2と、芯材2の厚み方向の両面に覆うように芯材2に巻き付けられた支持材5Aと、支持材5Aが巻き付けられた芯材2を内包し、内部の空気を排出した後、気密に封止される包装材6と、を備えている。
なお、実施の形態2は、支持材5Aが芯材2の厚み方向の両面に覆うように芯材2に巻き付けられている点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0037】
この実施の形態2においても、支持材5Aは、スリット加工を施して強度低下した有機繊維シート3を支持できる引っ張り強度、すなわち1N/25mm以上の引っ張り強度を有し、厚みが薄く、表面性がよく、熱伝導率が小さく、安価で、安定性がよく、破砕性がよいものがよい。この実施の形態2では、支持材5Aが芯材2の厚み方向の両面に覆うように芯材2に巻き付けられることから、支持材5Aには、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムなどが用いられる。
【0038】
この実施の形態2においても、有機繊維シート3にスリット加工を施しているので、真空断熱材1Aを破砕機に投入しても、有機繊維の綿状化が抑えられる。また、支持材5Aが芯材2の厚み方向の両面に覆うように芯材2に巻き付けられているので、芯材2を包装材6に挿入する際に、有機繊維シート3がバラバラになったり、折れ曲がったりすることがない。
【0039】
ここで、有機繊維シートの伸び率および支持材の引っ張り強度を変えて真空断熱材を作製し、リサイクル性および組立作業性を評価した結果を図6に示す。なお、リサイクル性は、真空断熱材1を破砕機に投入後、有機繊維が綿状化したか否か評価した。組立作業性は、有機繊維シートの積層体である芯材に支持材を重ねて包装材に挿入する際に、芯材がバラバラになるか否か、あるいは芯材が折れ曲がったか否かを評価した。
【0040】
実施例1.
有機繊維シートは、ポリエチレンテレフタレート樹脂を材料として、上述のスパンボンド法によって、繊維径の分布のピークが14μmである有機繊維を集積し、集積された有機繊維を加熱溶融、圧縮して、厚さ0.1mmとなるようにシート化して作製した。そして、有機繊維シートを200枚積層し、500mm×1500mmのサイズにカットした。カットされた有機繊維シートの積層体に、スリット長さlが4mm、スリット間隔dが0.5mm、スリットピッチpが6mmとするスリット(ミシン目)をスリット長さ方向が有機繊維シートの巻き取り方向と直交するように形成し、芯材とした。この有機繊維シートの完全破断時の伸び率は100%であった。
【0041】
支持材は、湿式法によって抄造してシート化したガラス繊維シートを用いた。ガラス繊維シートは、有機繊維シートと同じサイズにカットされ、繊維径の分布が4μmにピークがあり、厚さが1mm、引っ張り強度が3N/25mmであった。
包装材は、最外層からナイロン(保護層)、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(ガスバリア層)、アルミ箔(ガスバリア層)、低密度ポリエチレン(熱融着層)の順に4層に重ねたラミネート材をヒートシールして袋状に形成して作製した。
そして、支持材を芯材の厚み方向の一面に重ねて包装材内に挿入し、90℃で数時間乾燥した後、包装材の内圧が1〜10Pa程度の真空度となるように排気し、包装材の開口部をヒートシールして封止して、真空断熱材を作製した。
【0042】
実施例2.
スリット長さlが4mm、スリット間隔dが1.5mm、スリットピッチpが6mmとするスロットをスリット長さ方向が有機繊維シートの巻き取り方向と直交するように形成した有機繊維シートを200枚積層し、芯材とした。この有機繊維シートの完全破断時の伸び率は200%であった。なお、他の材料は実施例1と同じものを用いた。
【0043】
実施例3.
支持材は、繊維径の分布が4μmにピークがあり、厚さが0.3mm、引っ張り強度が1N/25mmとしたガラス繊維シートを用いた。なお、他の材料は実施例1と同じものを用いた。
【0044】
実施例4.
支持材は、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。支持材の引っ張り強度は70N/25mmであった。そして、支持材を芯材の厚み方向の両面を覆うように芯材に巻き付け、包装材に挿入した。なお、他の材料は実施例1と同じものを用いた。
【0045】
比較例1.
スリット長さlが4mm、スリット間隔dが2mm、スリットピッチpが6mmとするスリットをスリット長さ方向が有機繊維シートの巻き取り方向と直交するように形成した有機繊維シートを200枚積層して、芯材とした。この有機繊維シートの完全破断時の伸び率は250%であった。なお、他の材料は実施例1と同じものと用いた。
【0046】
比較例2.
支持材は、繊維径の分布が4μmにピークがあり、厚さが0.16mm、引っ張り強度が0.5N/25mmとしたガラス繊維シートを用いた。なお、他の材料は実施例1と同じものと用いた。
【0047】
実施例1〜4、および比較例1は、組立作業性が良好だった。すなわち、有機繊維シートの積層体に支持材を重ねて、あるいは巻き付けて包装材に挿入する際に、有機繊維シートの積層体がバラバラになったり、折れ曲がったりすることはなかった。
しかし、比較例2は、有機繊維シートの積層体に支持材を重ねて包装材に挿入する際に、有機繊維シートの積層体と支持材がバラバラになり、包装材に挿入する作業性が悪化した。
【0048】
実施例1〜4、および比較例2は、リサイクル性が良好だった。すなわち、真空断熱材を破砕機に投入したところ、有機繊維シートの綿状化は確認されなかった。
しかし、比較例1の真空断熱材を破砕機に投入したところ、有機繊維シートの綿状化が確認された。
【0049】
このように、図6から、支持材の引っ張り強度が1N/25mm以上であれば、支持材がスリット加工された有機繊維シートの積層体を確実に支持できること、すなわち包装材に挿入する際に、有機繊維シートの積層体がバラバラになることに起因する組立作業性の低下を抑えられることが確認された。
また、スリット加工された有機繊維シートの完全破断時の伸び率が200%以下であれば、回転刃で破砕したときに、有機繊維の綿状化が抑えられること、すなわちリサイクル回収物である金属への有機繊維の絡みつき、やフィルタの目詰まりの発生を抑えられることが確認された。
【符号の説明】
【0050】
1,1A 真空断熱材、2 芯材、3 有機繊維シート、4 スリット、5,5A 支持材、6 包装材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維シートからなる芯材と、ガスバリア性を有し、上記芯材を収納して真空封止される包装材と、を有する真空断熱材において、
スリットが有機繊維を長さ方向に分断するように上記有機繊維シートに形成され、
支持材が上記芯材の厚み方向の少なくとも一方の面に重ねられて上記包装材内に収納されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
上記スリットが形成された上記有機繊維シートの完全破断時の伸び率が200%以下であることを特徴とする請求項1記載の真空断熱材。
【請求項3】
上記支持材の引っ張り強度が1N/25mm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の真空断熱材。
【請求項4】
上記支持材は、無機繊維シートであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【請求項5】
上記支持材は、上記芯材の厚み方向の両面を覆うように該芯材に巻かれていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【請求項6】
上記支持材は、上記有機繊維シートの静摩擦係数より小さく、0.01より大きい静摩擦係数を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−36595(P2013−36595A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175657(P2011−175657)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】