説明

真空遮断器、及びスイッチギヤ

【課題】可動導体に近接して配置される接点加圧バネ機構の絶縁耐電圧を高めることにより、真空遮断器の縮小化を図ることを目的とする。
【解決手段】接離可能な接点を形成する一対の接触子を一端にそれぞれ備える固定導体、及びその接触子に対向配置される接触子を一端に備える可動導体31をそれぞれ有する2つの真空バルブ21と、2つの真空バルブの可動導体に電気的に接続される共通導体24と、真空バルブの接離を操作する操作機構と、可動導体との間を連結する可動操作軸26と、可動操作軸の可動導体との接続部に近接して配置される接点加圧ばね機構25と、2つの真空バルブに近接して配置される底面部と、共通導体、及び接点加圧ばね機構を包囲する側面部とを有する導電性箱23と、を有し、2つの真空バルブ、及び導電性箱が絶縁体27でモールドされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空遮断器、及び真空遮断器を備えるスイッチギヤに関する。より詳細には、2つの真空バルブを有する2点切り真空遮断器、及び2点切り真空遮断器を備えるスイッチギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
遮断器は、受変電設備などにおいて、短絡・地絡などの故障時の大電流を遮断するとともに、常時の回路の開閉操作にも使用される。遮断器には、油遮断器、磁気遮断器、空気遮断器、ガス遮断器、及び真空遮断器(VCB:Vacuum Circuit Breaker)などがある。この中で、真空遮断器は、真空容器である真空バルブ内に接点を有し、真空バルブ内に形成される真空状態におけるアークの拡散作用を利用して、負荷電流を遮断する。このため、真空遮断器は、火災の心配がないこと、多頻度操作に適すること、及び保守点検が容易であることなどの特徴を有し、66kV以下の受変電設備で広く採用される。24kVを越える高電圧で使用される真空遮断器において、真空バルブの外側を絶縁体でモールドすることにより、真空バルブ外側沿面の耐電圧性能を向上させて、機器の大きさの縮小化を図ることが知られる。例えば、特許文献1では、真空バルブの固定導体と、可動導体の両側を絶縁層で一体モールドして、モールド真空バルブの全体形状を縮小化している。
【0003】
また、真空ギャップにおける絶縁破壊電圧は、ギャップ間隔の1/2乗に比例することが知られている。したがって、数十kVを超える定格電圧を有する真空バルブでは、定格耐圧性能を確保するために、非常に大きなギャップ間隔が必要になるので、真空バルブが大型化する。一方、比較的大電流、高電圧の真空バルブに使用される縦磁界電極は、電極に設置される縦磁界発生機構によって、接点間ギャップに軸方向磁界を発生させて、軸方向の磁束に荷電粒子を捕捉する。これによって、ピンチ効果によるアークの集中を妨げ、電極の過熱を防止する。しかしながら、ギャップ間隔が大きくなると、縦方向の磁束が径方向に膨らんで、アークが電極以外の部材に接触して、再点弧が発生するおそれが生じる。そこで、直列に複数の真空バルブを接続して、再点弧が発生する可能性を低くするとともに、真空遮断器の容積、及び設置面積を縮小化することが考えられる。しかしながら、複数の真空バルブを軸方向に直線的に配置すると、機器の大きさの縮小化が十分に図れない。これは、操作機構の大きさを考慮したときの、直列真空遮断器の軸方向の長さが、耐電圧性能が十分なギャップ長を有する単一の真空バルブを採用する真空遮断器の軸方向の長さとほぼ同等になるためである。そこで、1つの方向から接離操作される2つの真空バルブを並列に配置することにより、真空遮断器の軸方向の長さの縮減を図るスイッチギヤが提案されている(特許文献2参照)。さらにまた、特許文献3において、真空バルブの遮断性能に重要な初開離速度を向上させるために、真空バルブの可動導体に近接して接点加圧バネ機構を配置する構成を採用する真空遮断器が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2001−357761号公報
【特許文献2】特開第2002−152930号公報
【特許文献3】特開第平5−290690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可動導体に近接して接点加圧バネ機構を配置する場合、真空遮断器を縮小化すると、所望の絶縁耐電圧を維持することが困難になるという問題があった。
【0006】
また、2つの真空バルブを並列に配置すると、それぞれの可動導体において生じる抵抗熱を効率的に放熱できないために、定格電流値が制限されるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題を解決することが可能な真空遮断器、及びスイッチギヤを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、可動導体に近接して配置される接点加圧バネ機構の絶縁耐電圧を高めることにより、真空遮断器の縮小化を図ることを目的とする。
【0009】
また、本発明は、真空バルブの可動導体に生じる抵抗熱の放熱効率を上げることにより、定格電流値が大きい真空遮断器、及びスイッチギヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するため、本発明に係る真空遮断器は、接離可能な接点を形成する一対の接触子を一端にそれぞれ備える固定導体、及びその接触子に対向配置される接触子を一端に備える可動導体をそれぞれ有する2つの真空バルブと、2つの真空バルブの可動導体に電気的に接続される共通導体と、真空バルブの接離を操作する操作機構と、可動導体との間を連結する可動操作軸と、可動操作軸の可動導体との接続部に近接して配置される接点加圧ばね機構と、2つの真空バルブに近接して配置される底面部と、共通導体、及び接点加圧ばね機構を包囲する側面部とを有する導電性箱と、を有し、2つの真空バルブ、及び導電性箱が絶縁体でモールドされることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る真空遮断器では、共通導体と、導電性箱とを伝熱する伝熱部材をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る真空遮断器、及びスイッチギヤでは、2つの真空バルブの可動側蓋板に近接して配置される底面部と、共通導体、及び接点加圧ばね機構を包囲する側面部とを有する導電性箱を備えるために、真空遮断器の縮小化を図ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るスイッチギヤの一例の単線結線を示す図である。
【図2】本発明に係るスイッチギヤの一例の横断面を示す図である。
【図3】本発明に係る真空遮断器の一例の横断面を示す図である。
【図4】本発明に係る真空遮断器の一連の開閉動作の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る真空遮断器の一連の開閉動作の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る真空遮断器の一連の開閉動作の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る真空遮断器の一連の開閉動作の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る真空遮断器の一連の開閉動作の一例を示す図である。
【図9】本発明に係る真空遮断器の一連の開閉動作の一例を示す図である。
【図10】図3に示す矢印Aの方向からの真空遮断器の透視平面図である。
【図11】図3に示す矢印Aの方向からの真空遮断器の他の例の透視平面図である。
【図12】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図13】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図14】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図15】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図16】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図17】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図18】図17に示す矢印Aの方向からの透視平面図である。
【図19】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図20】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図21】本発明に係る真空遮断器の他の例の横断面を示す図である。
【図22】本発明に係るスイッチギヤの他の例の横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスイッチギヤ、及び真空遮断器について詳細に説明する。それぞれの図面において、同一、又は類似する機能を有する構成素子には、同一、又は類似する符号が付される。したがって、先に説明した構成要素と同一、又は類似する機能を有する構成素子に関しては、改めて説明をしないことがある。
【0015】
図1、及び図2を参照して、本発明に係るスイッチギヤの一例を説明する。図1は、スイッチギヤ1を示す単線結線図である。図1において、スイッチギヤ1は、ケーブルヘッド15(以下「CHD」(Cable Head)と称する)により高圧、又は特別高圧の送配電線と接続され、避雷器14(以下「LA」(Lightning Arrester)と称する)、線路側接地開閉器13(以下「LES」(Line side Earthing Switch)と称する)、負荷側断路器11a、及び線路側断路器11b(以下「DS」(Disconnecting Switch)と称する)、接地開閉器12a、及び12b(以下「ES」(Earthing Switch)と称する)、遮断器10(以下「CB」(Circuit Breaker)と称する)を有する。CHDには、商用電力を供給する送配電線などの高圧電気回路が接続される。一方、DS11aには、母線(BUS)16、主要変圧器(図示せず)などを介して、負荷回路などが接続される。CB10は、計器用変成器が短絡、地絡などの故障時に発生する異常電流、又は異常電圧を検出したときに、負荷回路と、送配電線との間の電気的接続を遮断する。またCB10は、負荷回路の常時の開閉操作にも使用される。DS11は、スイッチギヤ1などの受変電設備用電気機器、及び送配電線などを点検するときに開閉され、負荷電流の開閉には使用されない。LES13は、CHD15、及びCHD15に接続される送配電線を点検するときに、閉路される。ES12は、CB10、及び負荷回路の設備を点検するときに閉路される。LA14は、過渡的な異常電圧からCB10などの電気機器を保護する。LA14は、酸化亜鉛(ZnO)を用いたギャップレス形が、標準的に適用される。
【0016】
図2は、図1に示すスイッチギヤ1の横断面図である。スイッチギヤ1は、SF6ガス、又は圧縮空気などの絶縁性ガスが内部に充填される金属容器2を有する。金属容器2は、接地用導体5を介して、大地に接地される。金属容器2の内部には、CB10、DS11a、及び11bなどの電気機器を介してCHD15とBUS16とを接続する主回路導体17と、LES13、並びにES12a、及び12bなどの接地機器が配置される。金属容器2の内部に配置される主回路導体17、及びCB10などの電気機器は、絶縁スペーサなどの絶縁支持物18によって、金属容器2に絶縁保持される。DS11a、及びES12aは、操作器3aにより操作され、DS11b、及びES12bは、操作器3bにより操作され、LES13は、操作器3cにより操作される。またCB10は、操作器3dにより、遮断器操作機構4を介して、操作される。なお、図2に示す電気機器はそれぞれ、単相のみ記載されるが、実際には、スイッチギヤ1は、三相で構成される。
【0017】
スイッチギヤ1において使用されるCB10は、負荷電流を遮断する機能をそれぞれ有する負荷側真空バルブ21aと、線路側真空バルブ21bとを有する2点切り真空遮断器である。負荷側真空バルブ21aと、線路側真空バルブ21bとは、それぞれの可動操作軸が互いに平行になり、かつ床面に対して平行になるように配置される。またこれら2つの真空バルブ21a、及び21bは、両可動操作軸を含む面が床面に垂直になるように配置される。このようにCB10は、2つの真空バルブ21a、及び21bをスイッチギヤ1の容器2内部で上下方向に積み上げる構成にすることができる。CB10は、操作器3dにより遮断器操作機構4を操作することにより、負荷側真空バルブ21a、及び線路側真空バルブ21bの内部に形成される接点を同時に接離させ、負荷回路と、送配電線との電気的接続を制御する。
【0018】
図3〜11を参照して、本発明に係るCBの一例を説明する。図3は、図2のCB10の横断面を拡大した図である。CB10は、負荷側真空バルブ21aと、線路側真空バルブ21bと、これら2つの真空バルブ21a、及び21bの可動導体31a、及び31bの間を電気的に接続する共通導体24とを有する。例えば、共通導体24は、摺動接触子によって、可動導体31a、及び31bに電気的に接続できる。また負荷側真空バルブ21a、及び線路側真空バルブ21bはそれぞれ、図1に示す主回路導体17に接続される負荷側接続端子22a、及び線路側接続端子22bを固定導体の端部に有する。スイッチギヤ1のBUS16に接続される負荷回路(図示せず)に、スイッチギヤ1を介して、電力を供給されるときには、負荷電流は、線路側接続端子22bから線路側真空バルブ21b、共通導体24、及び負荷側真空バルブ21aを順に介して、負荷側接続端子22aに流れる。
【0019】
またCB10は、可動導体31a、及び31bに接続される可動操作軸26a、及び26bと、可動操作軸26a、及び26bの真空バルブ側の端部に近接して配置される接点加圧バネ機構25a、及び25bとを有する。可動操作軸26a、及び26bは、真空バルブの可動導体31a、及び31bと、図1に示す遮断器操作機構4とを連結する。これにより、図1に示す操作器3dに入力される命令に基づいて、遮断器操作機構4は、2つの真空バルブ21a、及び21b内部に形成される接点を接離する。可動操作軸26a、及び26bは、可動導体31a、及び31bと、遮断器操作機構4とを絶縁するため、絶縁材料で形成される。また、開極動作時には、真空バルブ21a、及び21b内部で発生するアークを消弧させるために、可動操作軸26a、及び26bに、大きな力が瞬時に加えられて、開極される。このため、可動操作軸26a、及び26bは、このような力に耐えるのに十分な堅牢さを有する必要がある。接点加圧バネ機構25a、及び25bは、CB10が投入状態にあるとき、可動導体31a、及び31bの端部に形成される接触子を、固定導体の端部に形成される接触子に押圧する方向に押圧力を加えるように、蓄勢される。これにより、地絡、及び短絡などの故障時にCB10の接点に流れる大電流によって、開極方向の電磁的な力が接点に生じた場合でも、CB10は、投入状態を維持できる。
【0020】
さらに図3を参照すると、CB10は、導電性箱23を有する。導電性箱23は、2つの真空バルブ21a、及び21bの可動側蓋板36a、及び36bに近接して配置される底面部と、共通導体24、並びに接点加圧バネ機構25a、及び25bを包囲する側面部とを有する。CB10は、導電性箱23によって、接点加圧バネ機構25a、及び25b、並びに共通導体24の表面に生じる電界を緩和することができる。接点加圧バネ機構25a、及び25b、並びに共通導体24は、その機能上、電界的に適切な形状をとることが難しいので、これらの部分では、電界の分布が不均一になるので、部分的に電界が強くなり絶縁破壊が生じやすい。このような絶縁破壊が生じやすい部分を、導電性箱23でシールドすることによって、CB10の絶縁耐力を向上させることが可能になる。
【0021】
CB10は、さらに絶縁耐力を向上するために、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料により形成される絶縁体27によって、真空バルブ21a、及び21b、並びに導電性箱23がモールドされる。一般にエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂材料は、SF6ガス、又は圧縮空気などの絶縁性ガスよりも良好な絶縁耐力を有する。このため、CB10は、真空バルブ21a、及び21b、並びに導電性箱23を、絶縁性樹脂材料でモールドすることにより、絶縁耐力を向上させるとともに、CB10の大きさの縮小化を図ることができる。絶縁体27でモールドするときに、導電性箱23は、パンチングメタル、金網、鋳物、及び切削加工品の何れかにしてもよい。これによって、絶縁体27と、導電性箱23との一体性を高めて、絶縁体27を形成する絶縁性モールド材料と、導電性箱23と間の剥離による亀裂・空洞発生を防止することができる。このため、耐部分放電(耐コロナ)性能が向上し、トリーやトラッキング等の劣化を抑制して機器寿命を向上させることが可能である。また、導電性箱23は、パンチングメタル、金網、鋳物、及び切削加工品の何れかを組み合せてもよい。さらにまた、鋳物、及び切削加工品を導電性箱23に使用するときは、絶縁低下を起こさない程度に、サンドブラストなどで接着表面を荒らすことにより、接着性を向上させてもよい。
【0022】
CB10は、導電性箱23と、共通導体24とを伝熱する伝熱部材29をさらに有してもよい。導電性箱23と、共通導体24とを伝熱接続することにより、真空バルブ21a、及び21bの可動導体31a、及び31b、並びに共通導体24に生じる抵抗熱を放熱することができる。真空バルブ21a、及び21bの接点では、対向配置される接触子の間の電気抵抗により抵抗熱を発熱するが、固定導体の接触子で発生した抵抗熱は、接続端子22を介して、主回路導体17に放熱される。しかしながら、可動導体31a、及び31bの接触子は、共通導体24のみに伝熱されるため、放熱効率が悪くなる可能性がある。そこで、CB10において、可動導体の接触子で発生した抵抗熱を放熱するための放熱板として導電性箱23を使用するために、導電性箱23と、共通導体24とを伝熱部材29を介して伝熱することができる。伝熱部材29は、窒化アルミニウム、又は窒化ケイ素などの熱伝導率の高いセラミック部材によって形成でき、また銅、又はアルミニウムなどの金属などによって形成できる。
【0023】
図4〜9を参照して、CB10の投入操作、及び開極操作について説明する。図4は、CB10の開極状態を示す透視断面図である。図3と異なり、図4では、真空バルブ21aは、可動導体31a、固定導体32a、可動導体31aの一端に形成される接触子33a、固定導体32aの一端に形成される接触子34a、及び成型ベローズ35aなどの構成素子が示される。また、接点加圧バネ機構25aは、筐体71a、バネ73a、及びバネ固定部75aが構成素子として示される。同様に図4〜9において、真空バルブ21b、及び接点加圧バネ機構25bの構成素子も示されるが、CB10の投入操作、及び開極操作においては、真空バルブ21a、及び接点加圧バネ機構25aと、真空バルブ21b、及び接点加圧バネ機構25bとは、同一の動作をするため、ここでは、真空バルブ21a、及び接点加圧バネ機構25aのみを参照して、CB10の投入操作、及び開極操作について説明する。
【0024】
CB10の開極状態における、可動導体31aの接触子33aと、固定導体32aの接触子34aとの間の距離は、所定の開離距離である。真空バルブ21aの可動導体31aと、共通導体24との間の電気的な接続は、チューリップコンタクトなどによる可動接触子により接続することができる。接点加圧バネ機構25aのバネ73aは、一端を筐体71aに接し、他端をバネ固定部75aに接する。接点加圧バネ機構25aの筐体71aは、バネ73aが接する面を含む部材で、可動操作軸26aに機械的に接続されるが、真空バルブ21aの可動導体31aには、機械的に接続されていない。接点加圧バネ機構25aのバネ固定部75aは、バネ73aが接する面において、可動操作軸26aに機械的に接続されるとともに、反対側の面で真空バルブ21aの可動導体31aに、機械的に接続される。このため、バネ73aは、後に詳細に説明するように、CB10の投入時に、筐体71aと、バネ固定部75aとの間で圧縮されることにより、可動導体31aの接触子33aと、固定導体32aの接触子34aとの間に形成される接点に、押圧力を加えることができる。
【0025】
図5〜7を参照して、CB10の投入操作の工程を順に説明する。図5において、可動導体31aは、固定導体32aの方向に向かう力を遮断器操作機構4から受けて、固定導体32aの方向への移動を開始する。このとき、接点加圧バネ機構25aのバネ73aの伸びは、開極状態のバネ73aの伸びと同一である。そして、図6に示すように、可動導体31aの接触子33aと、固定導体32aの接触子34aとが接触した後も、遮断器操作機構4から力を受け続ける。これにより、接点加圧バネ機構25aの筐体71aが、バネ73aを圧縮しながら共通導体24の方向に移動する。そして、図7に示す投入状態において、接点加圧バネ機構25aのバネ73aは、筐体71aと、バネ固定部75aとの間で圧縮される。このように投入状態では、バネ73aは、可動導体31aの接触子33aを、固定導体32aの接触子34aの方向に押圧する所望の押圧力を加えることができる。バネ73aが、短絡電流などにより生ずる電磁反発力よりも大きな押圧力を、可動導体31aの接触子33aに加えることにより、接触子33aと、接触子34aとの間に形成される接点を固定することができる。逆にバネ73aの押圧力が電磁反発力よりも小さい場合には、電磁反発力によって、接触子間に空隙が生じ、アークが発生する可能性がある。アークが発生した場合、可動導体31aの接触子33a、及び固定導体32aの接触子34aが溶損、又は溶着するおそれがある。したがって、投入状態では、想定される短絡電流によって生じる電磁反発力よりも大きいバネ73aの押圧力で接触子33aを常に押圧しておく必要がある。
【0026】
次いで図7〜9を参照して、CB10の開極操作の工程を順に説明する。上述のように図7は、CB10の投入状態を示す図であり、接点加圧バネ機構25aのバネ73aは、圧縮されている。開極操作のときには、可動導体31aは、固定導体32aと反対の方向に向かう力を遮断器操作機構4から可動操作軸26aを介して受ける。図8に示すように、接点加圧バネ機構25aのバネ固定部75aに筐体71aが接するまでの間は、可動導体31aの接触子33aと、固定導体32aの接触子34aとは、接触し続ける。次いで、図9に示すように、接点加圧バネ機構25aの筐体71aがバネ固定部75aに接することにより、遮断器操作機構4からの力が、真空バルブ21aの可動導体31aに加わる。この時、可動操作軸26a、及び筐体71aがバネ固定部75aに衝突する前に有していた運動量が可動導体31aに与えられることで、可動導体31aは、ある程度の初速度をもって開極することができる。このように、CB10において接点加圧バネ機構25は、CB10の投入時に、接触子33を、接触子34の方向に押圧する方向に押圧力を加えるとともに、開極時に可動導体31aに、ある程度の初速度を与えることができる。
【0027】
図10は、図3に示す矢印Aの方向からのCB10の透視平面図である。単相のCB10a、10b、及び10cがそれぞれ有する導電性箱23、及び絶縁体27は、角丸長方形の形状を有する。また、導電性箱23、及び絶縁体27は、長円形、繭形の形状にすることができる。このような凹凸が少ない形状を採用することにより、それぞれのCB10の間を対流する絶縁性ガスの対流放熱を効果的に行うことができる。このため、CB10の通電性能(電流容量)を向上させることが可能である。さらに図11に示すように、導電性箱23、及び絶縁体27は、両端の円形部を直線部で連結する略鉄アレイ形の形状にすることができる。導電性箱23、及び絶縁体27を略鉄アレイ形の形状にすることにより、CB10の間を対流する絶縁性ガスの量を増加することができる。このため、絶縁性ガスの対流放熱をさらに効果的に行うことができる。さらに、導電性箱23、及び絶縁体27を略鉄アレイ形の形状にすることで、相間における絶縁体27の表面の電界が高い部分の面積を少なくすることができ、絶縁性能を向上できる。
【0028】
以上、本発明の一例であるCB10の構成、及び機能などについて説明してきた。以下、図12〜22を参照しながら、本発明の他の例のCBについて順に説明する。図12は、本発明に係るCB101を示す図である。CB101において、導電性箱23は、底面部と反対の側面部の端部にR曲げ加工がされる。R曲げ加工は、しぼり加工で端部を巻き込む加工である。側面部の端部にR曲げ加工がされることにより、電界緩和と強度の確保が可能になる。また、図13に示すように、CB102では、導電性箱23の底面部と反対の側面部に近傍して金属線コイル51を環状に配置することができる。さらにまた、図14に示すように、CB103では、導電性箱23の底面部と反対の側面部に接続して金属線コイル53を環状に配置することができる。このような構成を採用することで、導電性箱23の端部などの高電界部分の耐部分放電(耐コロナ)性能が向上して、トリーやトラッキングなどの劣化を抑制して機器寿命の向上を図ることが可能である。
【0029】
図15は、本発明に係るCB104を示す図である。CB104において、共通導体24には、フレキシブルな導体、すなわち可とう性導体が採用される。共通導体24にフレキシブルな導体を採用することにより、図3に示すCB10において、可動導体31と、共通導体24との間に配置される摺動接触子(図4など参照のこと)が不要になる。すなわち、可とう性を有する共通導体24が可動導体の移動に伴い湾曲するため、共通導体24を可動導体31に着設することが可能になる。CB104において、共通導体24を可動導体31に着設することにより、共通導体24と、可動導体31との間の接触面積が増加するので、共通導体24と、可動導体31との間の熱伝導率が向上する。このため、CB104では、真空バルブ21a、及び21bの可動導体31に生じる抵抗熱を、より効率的に伝熱できる。
【0030】
図15において、CB104は、開極状態であるときに、接点加圧バネ機構25aのバネは、所定の伸びに圧縮された状態にある。バネの押圧力により、共通導体24と可動操作軸26とを、一体に動作させるためである。なお、共通導体24と可動操作軸26とを、一体に動作させるためには、接点加圧バネ機構25aのバネに蓄勢される押圧力は、共通導体24の反発力よりも大きくすることが望ましい。接点加圧バネ機構25aのバネに蓄勢される押圧力が、共通導体24の反発力よりも小さい場合、投入操作時に接点加圧バネ機構25aのバネが圧縮される。この場合、共通導体24と可動操作軸26とは、一体に動くことができなくなる。このような事態を防止するために、接点加圧バネ機構25aに蓄勢されるバネの押圧力を、共通導体24の反発力よりも大きくすることが望ましい。
【0031】
図16は、本発明に係るCB105を示す図である。CB105では、共通導体24ではなく、伝熱部材29にフレキシブルな部材を採用することにより、図3に示すCB10における摺動接触子の機能を代替する。図15に示すCB104の共通導体24、及び図16に示すCB105の伝熱部材29に採用されるフレキシブルな材料として、無酸素銅の箔などを使用することができる。これらの銅箔は、定格電流、及び短絡電流により生じる抵抗熱による温度上昇と、絶縁体27の耐熱温度とを勘案して、重層される枚数を決定することができる。
【0032】
図17は、本発明に係るCB106を示す図である。CB106において、導電性箱23の側面部に対応する絶縁体27の外面に放熱フィン61が配置される。放熱フィン61を導電性箱23の側面部に配置することにより、放熱面積が大きくなり、対流冷却性能をさらに向上させることができる。これによって、CB106は、より大きな通電容量を獲得できる。放熱フィン61は、絶縁体27の導電性箱23の側面部に対応する部分に、絶縁部材により突起を形成することによって、作り出すことができる。また、放熱フィン61は、セラミックスなど熱導電率が高い絶縁性材料で形成することもできる。図18は、図17に示す矢印Aの方向からのCB106の透視平面図である。CB106の第1の単相CB106aが有する放熱フィン61aと、第2の単相CB106bが有する放熱フィン61bとは、互い違いに配置される。同様に、第2の単相CB106bが有する放熱フィン61bと、第3の単相CB106cが有する放熱フィン61cとは、互い違いに配置される。このように放熱フィン61を互い違いに配置することにより、放熱フィンの先端部の電界を小さくできるとともに、ぞれぞれの単相CB106a〜cの間を絶縁性ガスが対流するための通路を確保できる。これにより、対流放熱効果を確保しながら電気絶縁性を確保するとともに、CB106の大きさの縮小化を図ることができる。
【0033】
図19は、本発明に係るCB107を示す図である。CB107において、共通導体24は、放熱フィン63を有する。共通導体24に放熱フィン63を形成することにより、真空バルブ21a、及び21bの可動導体31a、及び31b、並びに共通導体24に生じる抵抗熱を直接放熱することができる。なお、放熱フィン63の近傍の電界分布が、不均一になる可能性があるが、接点加圧バネ機構25などと同様に、放熱フィン63を導電性箱23でシールドすることによって、不均一な電界分布が生じることを防止できる。放熱フィン63は、共通導体24だけでなく、伝熱部材29にも形成してもよい。
【0034】
図20は、本発明に係るCB108を示す図である。CB108において、真空バルブ21a、及び21bは、弾力性を有する絶縁層28を介して、絶縁体27にモールドされる。真空バルブ21a、及び21bと、絶縁体27との間に、弾力性を有する絶縁層28を配置することによって、絶縁性樹脂の硬化により生じる局部的な歪、又は応力が局部的に集中することを緩和できる。このため、真空バルブ21a、及び21bと、絶縁体27との間に亀裂が発生することを防止できる。
【0035】
図21は、本発明に係るCB109を示す図である。CB109は、絶縁体27の開放端を密封するように配置される密封部材41を有することができる。密封部材41と、絶縁体27との密着面は、密封部材41、及び絶縁体27により形成される気密空間45と、気密空間45の外部と間の気体の出入りを遮断する。また、可動操作軸26は、操作軸連結部材42、及び連結操作軸43を介して、遮断器操作機構に連結される。連結操作軸43は、気密空間45を保持するために、成型ベローズ44によってシールされる。CB109は、密封部材41などで気密空間45と、気密空間45の外部と間の気体の出入りを遮断することにより、気密空間45の圧力を、金属容器2の内部に充填される絶縁性ガスの圧力と異なる圧力にすることができる。例えば、気密空間45の圧力を、金属容器2の内部に充填される0.3Mpa程度の絶縁性ガスの圧力よりも低い圧力にして、真空バルブ21a、及び21b内部の真空圧に近づけることができる。これによって、真空バルブ21a、及び21bの内部に、真空保持の機密構造を確保するために配置される成型ベローズに加圧される圧力を抑制することができる。この結果、CB10が、密封部材41を有する場合には、成型ベローズは、金属容器2の内部に充填される絶縁性ガスの圧力に対する耐圧構造を有する必要がなくなる。CB109では、密封部材41は、単相のCB109ごとに気密空間45を形成するが、全ての各相のCB109にわたる共通の気密空間45を形成することも可能である。例えば、図22に示すように、CB109が格納される金属容器2を形成する部材により、金属容器2内部に気密空間45を形成することができる。
【0036】
本発明は、本発明のある好適な実施形態を特に参照して詳細に説明してきた。しかし、本発明の範囲内で変化及び変形を行うことができることが理解されるであろう。また本発明の開示において提供された様々な図は、本発明の説明を意図したものであり、適当な縮尺を示すことを意図したものではないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0037】
1 スイッチギヤ
2 金属容器
3 操作器
4 遮断器操作機構
5 接地用導体
10 遮断器
11 断路器
12 接地開閉器
13 線路側接地開閉器
14 避雷器
15 ケーブルヘッド
21 真空バルブ
22 接続端子
23 導電性箱
24 共通導体
25 接点加圧バネ機構
26 可動操作軸
27 絶縁体
28 絶縁層
29 伝熱部材
31 可動導体
32 固定導体
33 可動導体の接触子
34 固定導体の接触子
35 成型ベローズ
41 密封部材
45 気密空間
101、102、103、104、105、106、107、108、109 遮断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触子を一端に備える固定導体、及び前記接触子に対向配置される接触子を一端に備える可動導体をそれぞれ有する2つの真空バルブと、
前記2つの真空バルブの前記可動導体に電気的に接続される共通導体と、
前記真空バルブの接離を操作する操作機構と、前記可動導体との間を連結する可動操作軸と、
前記可動操作軸の前記可動導体との接続部に近接して配置される接点加圧ばね機構と、
前記2つの真空バルブに近接して配置される底面部と、前記共通導体、及び前記接点加圧ばね機構を包囲する側面部とを有する導電性箱と、
を有し、前記2つの真空バルブ、及び前記導電性箱が絶縁体でモールドされることを特徴とするスイッチギヤ用真空遮断器。
【請求項2】
前記共通導体と、前記導電性箱とを伝熱する伝熱部材をさらに有する請求項1に記載の真空遮断器。
【請求項3】
前記導電性箱の前記側面部、及び前記側面部をモールドする絶縁体の横断面形状が、長円形、繭形、又は角丸長方形である請求項1、又は請求項2に記載の真空遮断器。
【請求項4】
前記導電性箱の前記側面部、及び前記側面部をモールドする絶縁体の横断面形状が、両端の円形部を直線部で連結する略鉄アレイ形である請求項1、又は請求項2に記載の真空遮断器。
【請求項5】
前記導電性箱は、パンチングメタル、金網、鋳物、及び切削加工品の1つ、又はこれらの組み合せを有し、前記導電性箱の一部、又は全てが、前記絶縁体にモールドされる請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項6】
前記導電性箱の前記側面部の前記底面部と反対の端部は、R曲げ加工され、環状金属線コイルが接続され、又は環状金属線コイルが近傍に配置される請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項7】
前記2つの真空バルブの可動導体と、共通導体との接続が摺動接触子を介してなる請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項8】
前記共通導体は、フレキシブルな導体である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項9】
前記伝熱部材は、フレキシブル導体である請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項10】
前記真空バルブと、前記絶縁体との間に、弾力性を有する絶縁層が配置される請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項11】
前記絶縁体の前記導電性箱をモールドする外面の少なくとも一部に放熱フィンが配置される請求項2〜請求項10のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項12】
前記共通導体、又は前記伝熱部材は、放熱フィンを有する請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項13】
真空バルブの可動操作軸が互いに平行であり、かつ地平面に対して平行になるように配置される請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の真空遮断器。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載された真空遮断器を3組収納して三相をなし、かつ絶縁性ガスが充填される容器を備えるスイッチギヤ。
【請求項15】
前記2つの真空バルブ、及び前記導電性箱をモールドする絶縁体の開放端に密封部材を配置することにより、気密空間を形成する請求項14に記載のスイッチギヤ。
【請求項16】
前記気密空間の圧力は、前記気密空間の外部の圧力と相違する請求項15に記載のスイッチギヤ。
【請求項17】
請求項11〜請求項13に記載される真空遮断器を収納し、かつ前記放熱フィンが互い違いに配置されるスイッチギヤ。
【請求項18】
請求項13に記載される真空遮断器を3組収納して三相をなし、かつ各相の前記真空バルブの床面高さが同一であるスイッチギヤ。
【請求項19】
請求項13に記載される真空遮断器を3組収納して三相をなし、かつそれぞれの相の2つの真空バルブの軸を含んで形成される平面が床面に垂直であるスイッチギヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−69345(P2012−69345A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212491(P2010−212491)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】