説明

真空遮断器及び真空遮断器用放熱器

【課題】高い冷却性能をもち一層小型化が可能な真空遮断器及びこの真空遮断器に用いられる真空遮断器用放熱器を提供する。
【解決手段】真空バルブ12外の可動通電軸125の軸端部125aを間に挟んでお互いに対向して設けられる一対の放熱部材51を含む放熱器50を備え、一対の放熱部材51は、可動通電軸125の軸端部からの熱の伝熱経路を形成するための基部52と、基部52の両端部から突出して配列された放熱用フィン53とを有し、各基部52は、可動通電軸125の軸端部に部分的に嵌合する嵌合凹部と、嵌合凹部52Aと段差をもって隣接し絶縁ロッド19との干渉を防止するための逃げ凹部52Bとが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空遮断器及び真空遮断器用放熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空遮断器は、例えば、特許文献1等に開示されているように、高真空の容器に電極を収めた構造を有し、高真空による絶縁耐力と消アーク能力を利用して電流の遮断を行う。このような真空遮断器では、小型化の要請が強く、特許文献1は、放熱フィンを通電用の固定側通電軸(電極)及び可動側通電軸(電極)に設けてこれらの温度上昇を抑制することにより、真空遮断器の小型化を図る技術を開示している。この技術によれば、固定側通電軸及び可動側通電軸に放熱フィンを取り付けるだけで真空遮断器の通電部の温度上昇を抑制することができるので、比較的簡素な構造で小型化を実現できる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−6502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、真空遮断器の固定側通電軸及び可動側通電軸に放熱フィンを固定する場合、放熱フィンの取り付けのために固定側通電軸及び可動側通電軸の長さを延長する必要があり、小型化にも限界がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、高い冷却性能をもち一層小型化が可能な真空遮断器及びこの真空遮断器に用いられる真空遮断器用放熱器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る真空遮断器は、固定通電軸と、前記固定通電軸の軸線方向に移動可能に設けられ前記固定通電軸と接触及び離隔する可動通電軸と、前記固定通電軸と可動通電軸との少なくとも接触部を真空雰囲気下におくための真空バルブとを有する真空遮断器であって、前記真空バルブ外の前記可動通電軸の軸端部を間に挟んでお互いに対向して設けられる一対の放熱部材を含む放熱器を備え、前記一対の放熱部材は、前記可動通電軸の軸端部からの熱の伝熱経路を形成するための基部と、前記基部の両端部から突出して配列された放熱用フィンと、を有し、前記各基部は、お互いの対向面に、前記可動通電軸の軸端部と部分的に嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合凹部と段差をもって隣接し、前記可動通電軸と前記可動通電軸へ駆動力を伝達するための駆動部材とを連結する連結部材との干渉を防止するための逃げ凹部とが形成されている、ことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、基部に嵌合凹部及び逃げ凹部を形成することにより、可動通電軸への設置面積を抑制しつつ、可動通電軸から放熱用フィン熱へ至る伝熱経路を確保でき、高い冷却性能をもち一層小型化が可能な真空遮断器が得られる。
【0008】
本発明に係る真空遮断器用放熱器は、固定通電軸と、前記固定通電軸の軸線方向に移動可能に設けられ前記固定通電軸と接触及び離隔する可動通電軸と、前記固定通電軸と可動通電軸との少なくとも接触部を真空雰囲気下におくための真空バルブとを有する真空遮断器において、前記真空バルブ外の前記可動通電軸の軸端部に設けられる真空遮断器用放熱器であって、前記真空バルブ外の前記可動通電軸の軸端部を間に挟んでお互いに対向して設けられる一対の放熱部材を有し、前記一対の放熱部材は、前記可動通電軸の軸端部からの熱の伝熱経路を形成するための基部と、前記基部の両端部から突出して配列された放熱用フィンと、を有し、前記各基部は、お互いの対向面に、前記可動通電軸の軸端部と部分的に嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合凹部と段差をもって隣接し、前記可動通電軸と前記可動通電軸へ駆動力を伝達するための駆動部材とを連結する連結部材との干渉を防止するための逃げ凹部と、が形成されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い冷却性能をもち一層小型化が可能な真空遮断器及びこの真空遮断器に用いられる真空遮断器用放熱器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図7は本発明の一実施形態を示す図であって、図1は本発明の一実施形態に係る真空遮断器の一部に断面図を含む構成図、図2は放熱器が装着されていない状態の真空遮断器の一部に断面図を含む構成図、図3は図1のA−A線方向の断面図、図4は図1のB−B線方向の断面図、図5は放熱器の斜視図、図6は放熱器の断面図、及び、図7は放熱部材の斜視図である。
【0011】
真空遮断器1は、図1及び図2に示すように、鉛直方向に立設する電気的に絶縁された絶縁フレーム11、この絶縁フレーム11の上端部に支持された固定側端子17及び中間部に支持された可動側端子18、固定側端子17に電気的に接続され先端部に接点122aを備える固定通電軸121、可動側端子18に摺動接触子13を介して電気的に接続され先端部に接点122bを備える可動通電軸125、接点122a,122bを含む固定通電軸121及び可動通電軸125を真空雰囲気下におくための真空バルブ12、真空バルブ12と可動通電軸125との間をシールするベローズ124、可動通電軸125の下端部に接続された電気絶縁性材料からなる連結部材としての絶縁ロッド19、絶縁ロッド19と駆動部材としての連結棒23により連結された金具21、金具21とピン22により回動自在に連結され開閉軸14を中心に揺動可能に支持された開閉レバー15等から基本的に構成され、さらに、可動側端子18に固定された放熱器30及び可動通電軸125の軸端部125aに固定された放熱器50を備える。
【0012】
尚、絶縁ロッド19は、可動通電軸125と接触ばね20との間の電気的距離を稼ぐために、末広がり状に形成されており、可動通電軸125の軸径よりも大きな直径を有する。
【0013】
上記構成の真空遮断器1では、図示しない操作機構が開閉レバー15に連結されており、この操作機構により開閉レバー15を開閉軸14を中心に駆動することにより、可動通電軸125が上下動し、接点122a及び接点122bの接触、離隔(開閉)が行われる。接触ばね20は、接点122aと接点122bとが接触する際にその付勢力により加圧し、接触抵抗を低減させる役割を果たす。接点122a及び接点122bが導通することにより、固定側端子17から可動側端子18に至る通電回路が形成され、図示しない操作機構の操作により、接点122aと接点122bとが開くと、真空バルブ12の真空雰囲気内でアークが短時間に消弧され、電流が遮断される。
【0014】
放熱器30は、図3に示すように、複数の放熱フィン30fを備えており、この放熱フィン30fは、可動通電軸125の軸線方向に沿って配列されている。放熱器30は、熱伝導率が比較的高いアルミニウムあるいはアルミニウム合金等で形成されている。
【0015】
また、放熱器30は、図1に示すように、可動側端子18に設けられた摺動接触子13の近傍に配置されている。可動通電軸125及び可動側端子18は、摺動接触子13において最も熱を発生しやすく、この摺動接触子13の近傍に放熱器30を設けることにより、可動側端子18及び可動通電軸125を効率良く冷却できる。
【0016】
次に、放熱器50の構成について図4ないし図7を参照して説明する。
放熱器50は、図4に示すように、一対の放熱部材51を有し、これら一対の放熱部材51は、真空バルブ12外の可動通電軸125の軸端部125aを間に挟んでお互いに対向して設けられ、ナット24及びボルト25からなる締結部材により互いに締結されることにより軸端部125aに固定されている。
【0017】
放熱部材51は、例えば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金等の熱伝導性の高い材料で形成され、図5ないし図7に示すように、可動通電軸125の軸端部125aからの熱の伝熱経路を形成するためのブロック状の基部52と、この基部52の両端部から突出して配列された複数の放熱用フィン53とを備えている。
【0018】
各放熱部材51の基部52は、お互いの対向面に、可動通電軸125の軸端部125aに部分的に嵌合する嵌合凹部52Aと、嵌合凹部52Aと段差をもって隣接し連結部材としての絶縁ロッド19との干渉を防止するための逃げ凹部52Bとが形成されている。また、基部52は、ボルト25を挿通するための貫通孔54が嵌合凹部52Aの両側に形成されている。
【0019】
嵌合凹部52Aは、可動通電軸125の断面円形の軸端部125aの外周面とフィットするように、半円筒状の曲面に形成され、この曲面が軸端部125aの外周面に接触することにより、可動通電軸125側の熱が基部52へ伝導される。
【0020】
逃げ凹部52Bは、基部52が絶縁ロッド19と接触するのを防止するために、絶縁ロッド19の上端側を基部52が囲むように半円筒状の曲面に形成されると共に嵌合凹部52Aよりも大径に形成されている。この逃げ凹部52Bにより、基部52が絶縁ロッド19と接触するのを防止することにより、可動通電軸125を延長化することなく、放熱フィン53の可動通電軸125の軸線方向における幅を十分に確保でき、放熱フィン53の表面積を拡大化できる。
【0021】
また、基部52に逃げ凹部52Bを形成することにより、図6に示すように、熱が伝導する断面52cの面積は十分に確保できるので、基部52の軸線方向の上側から下側に向けて熱を行き渡らせることができ、放熱部材51の放熱性能は確保できる。
【0022】
放熱用フィン53は、図4等に示すように、基部52の両端部の軸線方向の全幅に亘り形成されていると共に、可動通電軸125の軸線方向に沿って配置され、例えば、厚さは、1〜2mm程度、基部52から先端部までの長さは、30〜50mm程度であり、高いフィン効率が得られる。
【0023】
また、放熱用フィン53は、可動通電軸125の軸線方向に沿って配置されているので、放熱部材51の断面係数を大きくとることができ、強度低下を軽減して大きな加速度に耐えうるようになっている。
【0024】
ここで、放熱器50の製造方法の一例について図8を参照して説明する。
先ず、図8(a)に示すように、例えば、1.0mm程度の肉厚のフィン板材61、フィン板材61よりも短いブロック板材62、及び肉厚0.5mm程度のブレージングシート材63を用意し、対向するフィン板材61の間にブロック板材62を挟むと共に各フィン板材61とこれに対向するブロック板材62との間にブレージングシート材63をそれぞれ挟む。
【0025】
次いで、図8(b)に示すように、フィン板材61、ブロック板材62、及びブレージングシート材63を治具を使用して接合すると共に、600℃前後の加熱炉で加熱する。これにより、フィン板材61、ブロック板材62、及びブレージングシート材63を一体化し、図8(c)に示すように、基部52と放熱フィン53とを備えるを形成する。
【0026】
そして、一対の放熱部材51の間にスペーサ64を挟み、図8(d)に示すように、各放熱部材51の基部52の対向面に嵌合凹部52A及び逃げ凹部52Bを機械加工するとともに、基部52に貫通孔54を機械加工する。
【0027】
上記の製造方法により各放熱部材51を製造すると、ブレージングシート材63により全面接合するため、放熱部材51を熱抵抗が小さく、小型化、軽量化できる。
【0028】
放熱器50の製造方法の他の例としては、図9(a)に示すように、基部52と放熱フィン53とを別々に用意すると共に、基部52の両端部に放熱フィン53を嵌めるための溝52eを形成し、溝52eを加締めることにより、図9(b)に示すような放熱部材51Aが得られる。
【0029】
放熱器50の製造方法のさらに他の例としては、図10(a)に示すように、基部52と放熱フィン53とを別々に用意すると共に、基部52の両端部に複数の突条52fを形成する。そして、各突条52fと放熱フィン53とを溶接することにより、図10(b)に示すような放熱部材51Bが得られる。
【0030】
図11及び図12は、本発明の他の実施形態を示す図であって、図11は真空遮断器の一部に断面図を含む構成図、及び図12は放熱器が装着されていない状態の図1の真空遮断器の構成図である。尚、図11及び図12において、図1及び図2に示した真空遮断器と同一の構成部分には同一の符号を使用している。
【0031】
図11及び図12に示す真空遮断器1Aは、可動通電軸125の軸端部にボルト26により金属製の連結部材27が固定され、この連結部材27は駆動部材としての絶縁ロッド29の一端部とピン28により連結されている。絶縁ロッド29の他端部は、開閉レバー15の一端部とピン22により回転自在に連結されている。また、開閉レバー15の他端部には、ピン16により図示しない操作機構が連結されており、この操作機構と開閉レバー15との間に接触ばね20Aが設けられ、この接触ばね20Aは、開閉レバー15の他端部を下向きに付勢する。
【0032】
尚、連結部材27は、筒状に形成され、その下端部に絶縁ロッド19の軸端部が挿入され、連結部材27の外径は可動通電軸125の軸径よりも大きくなっている。
【0033】
放熱器50は、図1に示すように、連結部材27の上側部分を囲んでおり、可動通電軸125の軸線方向において放熱部材51の下端部は連結部材27の中途まで延びている。これにより、可動通電軸125を延長化することなく、放熱器50を可動通電軸125に取り付けることができると共に、放熱器50の放熱フィンの面積を大きくとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空遮断器の一部に断面図を含む構成図である。
【図2】放熱器が装着されていない状態の図1の真空遮断器の一部に断面図を含む構成図である。
【図3】図1のA−A線方向の断面図である。
【図4】図1のB−B線方向の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る放熱器の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る放熱器の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る放熱部材の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る放熱器の製造方法の一例を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る放熱器の製造方法の他の例を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る放熱器の製造方法のさらに他の例を説明するための図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る真空遮断器の一部に断面図を含む構成図である。
【図12】放熱器が装着されていない状態の図11の真空遮断器の一部に断面図を含む構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1、1A…真空遮断器
11…絶縁フレーム
12…真空バルブ
13…摺動接触子
14…開閉軸
15…開閉レバー
17…固定側端子
18…可動側端子
19…絶縁ロッド(連結部材)
21…金具
23…連結棒(駆動部材)
27…連結部材
29…絶縁ロッド(駆動部材)
121…固定通電軸
122a…接点
122b…接点
124…ベローズ
125…可動通電軸
30,50…放熱器
51…放熱部材
52…基部
53…放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定通電軸と、前記固定通電軸の軸線方向に移動可能に設けられ前記固定通電軸と接触及び離隔する可動通電軸と、前記固定通電軸と可動通電軸との少なくとも接触部を真空雰囲気下におくための真空バルブとを有する真空遮断器であって、
前記真空バルブ外の前記可動通電軸の軸端部を間に挟んでお互いに対向して設けられる一対の放熱部材を含む放熱器を備え、
前記一対の放熱部材は、前記可動通電軸の軸端部からの熱の伝熱経路を形成するための基部と、
前記基部の両端部から突出して配列された放熱用フィンと、を有し、
前記各基部は、お互いの対向面に、前記可動通電軸の軸端部と部分的に嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合凹部と段差をもって隣接し前記可動通電軸と前記可動通電軸へ駆動力を伝達するための駆動部材とを連結する連結部材との干渉を防止するための逃げ凹部とが形成されている、
ことを特徴とする真空遮断器。
【請求項2】
固定通電軸と、前記固定通電軸の軸線方向に移動可能に設けられ前記固定通電軸と接触及び離隔する可動通電軸と、前記固定通電軸と可動通電軸との少なくとも接触部を真空雰囲気下におくための真空バルブとを有する真空遮断器において、前記真空バルブ外の前記可動通電軸の軸端部に設けられる真空遮断器用放熱器であって、
前記真空バルブ外の前記可動通電軸の軸端部を間に挟んでお互いに対向して設けられる一対の放熱部材を有し、
前記一対の放熱部材は、前記可動通電軸の軸端部からの熱の伝熱経路を形成するための基部と、
前記基部の両端部から突出して配列された放熱用フィンと、を有し、
前記各基部は、お互いの対向面に、前記可動通電軸の軸端部と部分的に嵌合する嵌合凹部と、前記嵌合凹部と段差をもって隣接し前記可動通電軸と前記可動通電軸へ駆動力を伝達するための駆動部材とを連結する連結部材との干渉を防止するための逃げ凹部とが形成されている、
ことを特徴とする真空遮断器用放熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−9849(P2009−9849A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170929(P2007−170929)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503361927)富士電機アセッツマネジメント株式会社 (402)