説明

真空遮断器

【課題】真空バルブの外部絶縁耐力を大幅に向上させることのできる真空遮断器を提供する。
【解決手段】接離自在の一対の接点2を有する真空バルブ3と、真空バルブ3の周りにエポキシ樹脂のような絶縁材料をモールドして設けられた絶縁層4と、絶縁層4の周りに設けられたゴムで成形された第1のポリマー外被9と、真空バルブ3の可動軸6の軸方向に連結された絶縁操作ロッド10と、絶縁操作ロッド10を収納するとともに、絶縁層4に連結固定された第1のFRP11と、第1のFRP11の周りに設けられたゴムで成形された第2のポリマー外被15とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、真空バルブの外側となる外部絶縁耐力を向上し得る真空遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変電所などに適用される真空遮断器では、接離自在の一対の接点を有する真空バルブを磁器製のがい管に収納し、SF6ガス、乾燥空気などの絶縁ガスを封入して真空バルブの外側の絶縁耐力を向上させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ガスブッシングにおいても、磁器製やポリマー製のがい管に絶縁ガスを封入し、絶縁耐力を向上させることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このように、絶縁ガスを封入するものでは、絶縁耐力がガス圧力に比例するため、絶縁耐力を向上させようとすると、がい管を高圧力に耐えるような圧力容器にしなければならなかった。しかしながら、容器の圧力を上昇させることには限界があり、絶縁耐力を向上させることを困難とさせていた。なお、絶縁ガスに絶縁耐力のよいSF6ガスを用いると、取り扱いが困難となる。一方、取り扱いが容易の乾燥空気などを用いようとすると、絶縁耐力が劣るので、更なる圧力上昇が必要となってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−281620号公報
【特許文献2】特開平11−273475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、SF6ガス、高圧力の乾燥空気などの絶縁ガスよりも絶縁耐力の優れた固体絶縁を用い、圧力容器を用いずに、真空バルブの外部絶縁耐力を向上し得る真空遮断器を提供することにある。また、沿面距離を増大させ、屋外にも適用できるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の真空遮断器は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブと、前記真空バルブの周りにモールドにより設けられた絶縁層と、前記絶縁層の周りに設けられた第1のポリマー外被と、前記真空バルブの可動軸の軸方向に連結された絶縁操作ロッドと、前記絶縁操作ロッドを収納するとともに、前記絶縁層に連結固定された第1のFRPと、前記第1のFRPの周りに設けられた第2のポリマー外被と、を具備したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1に係る真空遮断器の構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例2に係る真空遮断器の構成を示す断面図。
【図3】本発明の実施例3に係る真空遮断器の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
先ず、本発明の実施例1に係る真空遮断器を図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る真空遮断器の構成を示す断面図である。
【0010】
図1に示すように、真空遮断器は、図示上部の遮断部1aと図示下部の操作機構部1bで構成されている。
【0011】
遮断部1aには、接離自在の一対の接点2を有する真空バルブ3が設けられ、その周りにエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂のような絶縁材料をモールドして形成した絶縁層4が設けられている。真空バルブ3の固定側には、上部導体5が固定され、可動側には、軸方向に可動軸6が導出されている。可動軸6は、接触子7を介して絶縁層4に固定された下部導体8を移動自在に貫通している。上部導体5と下部導体8間の絶縁層4の周りには、シリコーンゴム、EPゴムのようなゴムで成形された複数枚のヒダを有する筒状の第1のポリマー外被9が設けられている。
【0012】
操作機構部1bには、可動軸6の軸方向に連結された移動自在の絶縁操作ロッド10が設けられている。絶縁操作ロッド10は、例えばエポキシ樹脂で積層された筒状の第1のFRP11(ガラス繊維強化プラスチック)に収納されている。第1のFRP11の上部には、上部フランジ12が固定され、下部導体8に固定されている。下部には、下部フランジ13が固定され、接点2を開閉操作する操作機構14の筐体に固定されている。上部フランジ12と下部フランジ13間の第1のFRP11の周りには、第1のポリマー外被9と同様の材料からなる筒状の第2のポリマー外被15が設けられている。第1のFRP11内は、気中となっているが、乾燥空気を正圧力で封入するのが好ましい。
【0013】
ここで、下部導体8は絶縁層4に固定され、また上部フランジ12は第1のFRP11に固定され、下部導体8と上部フランジ12がボルトなどで固定されているので、絶縁層4の軸方向には第1のFRPが連結固定されていることになる。
【0014】
これにより、絶縁層4は、数10kV/mmの絶縁耐力を有するので、真空バルブ3の外側となる外部絶縁耐力を大幅に向上させることができる。なお、SF6ガスは1気圧の平等電界で絶縁耐力が約9kV/mmであり、これよりも絶縁層4の絶縁耐力は格段に高いものとなる。また、第1のポリマー外被9により沿面距離を増大させているので、屋外にも適用することができる。
【0015】
操作機構部1bも同様に、第2のポリマー外被15により沿面距離を増大させることができる。なお、絶縁操作ロッド10は、図示しないが先端が半球状の埋め金が対向した簡素な電極配置であり、遮断部1aよりも電界強度が上昇しないので、第1のFRP11を圧力容器とする必要はない。
【0016】
ここで、第1のポリマー外被9にシリコーンゴムを用いると、比誘電率が約2.7となり、絶縁層4にシリカや酸化チタンなどの充填剤を添加すると、比誘電率を4〜8とすることができる。これにより、外周側よりも内周側の比誘電率を大きくすることができ、真空バルブ3の電界緩和を図ることができる。
【0017】
上記実施例1の真空遮断器によれば、真空バルブ3を絶縁材料でモールドして絶縁層4を設け、この周りに第1のポリマー外被9を設けているので、絶縁層4による貫通方向の高い絶縁耐力と、第1のポリマー外被9による沿面方向の高い絶縁耐力を得ることができ、外部絶縁耐力を大幅に向上させることができる。
【実施例2】
【0018】
次に、本発明の実施例2に係る真空遮断器を図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施例2に係る真空遮断器の構成を示す断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、絶縁層の外周に第2のFRPを設けたことである。図2において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0019】
図2に示すように、絶縁層4の外周には、例えばエポキシ樹脂で積層された筒状の第2のFRP16を設け、この第2のFRP16の周りに第1のポリマー外被9を設けている。
【0020】
製造においては、第2のFRP16内に真空バルブ3をセットし、絶縁材料を充填することにより絶縁層4を設けることができる。実施例1では、注型金型を用い、絶縁材料を充填して絶縁層4を設けていたので、注型金型が不要となる。第2のFRP16は、充填する絶縁材料と同等以上の耐熱性があり、数mmの絶縁厚さを有していれば、モールドに耐え得るものとなる。
【0021】
上記実施例2の真空遮断器によれば、実施例1による効果のほかに、絶縁層4のモールド作業を容易とすることができる。
【実施例3】
【0022】
次に、本発明の実施例3に係る真空遮断器を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例3に係る真空遮断器の構成を示す断面図である。なお、この実施例3が実施例2と異なる点は、第1のポリマー外被のヒダを大きくしたことである。図3において、実施例2と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0023】
図3に示すように、第2のFRP16の周りに設ける第1のポリマー外被9のヒダの高さを大きくしている。即ち、第2のポリマー外被15よりも沿面距離を増大させている。なお、ヒダの枚数を増加させてもよい。
【0024】
第1のポリマー外被9は極間絶縁であり、第2のポリマー外被15は対地間絶縁である。このため、第2のポリマー外被15よりも第1のポリマー外被9の沿面距離を増大させることで、対地間よりも極間の絶縁耐力を高くする絶縁協調を図ることができ、事故拡大を防止することができる。
【0025】
上記実施例3の真空遮断器によれば、実施例2による効果のほかに、絶縁協調を図ることができる。
【0026】
以上述べたような実施形態によれば、真空バルブを絶縁材料でモールドし、その周りにポリマー外被を設けているので、貫通方向と沿面方向の絶縁耐力を大幅に向上させることができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1a 遮断部
1b 操作機構部
2 接点
3 真空バルブ
4 絶縁層
5 上部導体
6 可動軸
7 接触子
8 下部導体
9 第1のポリマー外被
10 絶縁操作ロッド
11 第1のFRP
12 上部フランジ
13 下部フランジ
14 操作機構
15 第2のポリマー外被
16 第2のFRP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在の一対の接点を有する真空バルブと、
前記真空バルブの周りにモールドにより設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の周りに設けられた第1のポリマー外被と、
前記真空バルブの可動軸の軸方向に連結された絶縁操作ロッドと、
前記絶縁操作ロッドを収納するとともに、前記絶縁層に連結固定された第1のFRPと、
前記第1のFRPの周りに設けられた第2のポリマー外被と、
を具備したことを特徴とする真空遮断器。
【請求項2】
前記第1のポリマー外被、前記第2のポリマー外被をシリコーンゴムで成形したことを特徴とする請求項1に記載の真空遮断器。
【請求項3】
前記絶縁層と前記第1のポリマー外被の間に、第2のFRPを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空遮断器。
【請求項4】
前記第2のポリマー外被よりも前記第1のポリマー外被の沿面距離を大きくしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空遮断器。
【請求項5】
前記第1のポリマー外被よりも前記絶縁層の比誘電率を大きくしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の真空遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−93276(P2013−93276A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235892(P2011−235892)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】