説明

眼の訓練装置

【課題】 画像表示部に係るコストを低減した眼の訓練装置を提供する。
【解決手段】 本発明の眼の訓練装置は、左右一対の接眼レンズと、画像を表示する1つの画像表示部と、画像表示部に表示された画像を前記左右それぞれの接眼レンズに分して導く光学系と、光学系を接眼レンズの光軸に沿って移動させる光学系の移動部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の訓練をするための眼の訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、眼の毛様体筋の運動を促すことにより眼精疲労の回復を目的とした眼の訓練装置や眼の訓練機能を備えた表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような装置では、左右の眼に対して画像を表示する左右一対の表示器を備え、この表示器に表示される視標(画像)の位置を移動することにより、眼の毛様体筋の運動を促すことが行われている。
【特許文献1】特開平10−282449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の眼の訓練装置では、左右の眼に対してそれぞれ左右一対の表示器を備えるため表示器に係るコストが高くなり、装置形状が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の眼の訓練装置は、左右一対の接眼レンズと、画像を表示する1つの画像表示部と、画像表示部に表示された画像を前記左右それぞれの接眼レンズに分岐して導く光学系と、前記光学系を接眼レンズの光軸に沿って移動させる光学系の移動部を備える。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、眼の訓練装置に用いる視標を表示する画像表示器に係るコストを2つの表示器を備えた従来のものよりも低減し、さらに輻輳・開散制御が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る眼の訓練装置の上面図、図2は内部の上面概略図、図3は横断面概略図、図4はシフトレンズ及びハーフミラーと全反射ミラーを駆動させた場合を説明する内部の上面概略図、図5は画像表示部に表示される画像を輻輳方向に移動させたときの説明図、図6は制御ブロック図である。
【0007】
まず図1を用いて説明する。
眼の訓練装置を備える双眼鏡本体1の上面には、電源をON/OFFするPOWERボタン3(電源ON/OFF)、各モードを切り替るMODEボタン4(モード設定部)、電源のON/OFFや現在のMODE等を表示する表示LCD2(情報表示部)、対物レンズを通し外部の観察物を観察する双眼鏡モード(以降はBINOで記載)と眼の訓練を行うEFモード(以降はEFで記載)を切替えるBINO/EFボタン6、双眼鏡モード時とEFモード時に観察象にピントを合わせるFOCUSボタン7(前進、後進の2個)、訓練の開始と停止を指示するSTARTボタン5(スタートON/OFF)が設けられている。
【0008】
MODEボタン4は、例えば、EFモード時に画像表示部に表示する画像に関する情報を変更するものである。この情報とは、図6に示すように視標の輝度や画像の種類、トレーニング時間またはトレーニング時の効果音の設定等である。
【0009】
図2、3を用いて説明する。
双眼光学系は、左右一対の対物レンズ8'、正立プリズム10、接眼レンズ11、シフトレンズから構成される。
【0010】
一方、EF光学系は、視標表示部(LCD)23、視標結像レンズ21、左右に視標画像を分割するハーフミラー12A及び全反射ミラー12Bから構成される。
左右の光路切替ミラー9の各々は、左右の双眼光学系の各々の光路に挿脱可能な構成になっており、BINOモードとEFモードの切り替えに伴って光路を変換するものである。そして、光路切替ミラー9とハーフミラー12A及び全反射ミラー12Bは、視標表示部23に表示された画像を左右の接眼レンズ11に分岐して導くための光学系である。この分岐により右側の光路切替ミラー9に入射した画像は右側の接眼レンズ11入射し、左側の光路切替ミラー9に入射した画像は、左側の接眼レンズ11方向に反射され、左側の接眼レンズ11に入射する。これで使用者の左右眼での視標の観察が可能となる。
【0011】
BINO/EFボタン6によりBINOとEFを切替えた場合、図2に示すように左右の光路切換ミラー9がミラー移動手段により双眼光学系の光路上にあったミラーの位置(点線)と光路から脱した位置(実線)とに回転移動する。BINOの場合は、図2中の点線の位置に回転移動する。ミラー移動手段としては、ミラーの一端を回動可能に訓練装置本体に設置し、BINOとEFで切替え指示をすることで不図示のモータにより、ミラーの回動を行うようにするものが挙げられる。または、回動ではなく、ミラーをスライドさせ光路への挿脱を行なうようにした移動手段を採用してもよい。
【0012】
更に、双眼光学系の光軸上であり、接眼レンズ11と光路切替ミラー9との間には、光軸方向に沿って移動可能に設置されたシフトレンズが設置されている。これは、BINO時には観察対象物に焦点を合わせるためのフォーカスレンズとなり、EF時には、視標表示部23に表示された画像を眼の焦点位置から近点、遠点に往復移動させて、ピントがボケた画像を形成させるためのレンズとなる。
【0013】
次に、EF時のシフトレンズ8と一対のハーフミラー12A、全反射ミラー12Bの移動構造を説明する。
左右のシフトレンズ8は、固定部16に固定されている。固定部16には、軸受け18と送りナット15、ホール素子など等の位置検出部20(発光)が設けられており、本体に固定してあるガイドバー19に添って移動する構成になっている。この移動は、モータ制御部44で制御される駆動モータ13で行なわれる。固定部16は、送りネジ14と契合している。
【0014】
そして、これらの構成により、固定部16に固定された左右のシフトレンズ8は、駆動モータ13の正/逆転により光軸方向に移動する。
左右のシフトレンズ8は、電源ON時にデフォルトで決めてあるイニシャライズ位置(基準位置)を原点として光軸方向の前後に移動する。EF時には
さらにFOCUSボタンで表示視標に眼のピントを合わせ、STARTボタンを押すと、前記ピント位置が原点となり訓練時間の間光軸方向の前後に往復移動し停止する(イニシャライズ位置から±方向(光軸に沿って前後方向)の所定のシフト範囲で左右のシフトレンズ8を反復移動させる。シフト位置の検出は例えばエンコーダなどの検出器26で行なわれる。)。但し、輻輳方向のみでEFを行なう場合はシフトレンズはイニシャライズ位置で停止したままとなる。
イニシャライズ位置の検出は、制御回路基板22に設けた例えばホール素子等の位置検出部(受光)24で行なわれる。このイニシャライズ位置はEEROM(基準位置記憶部)43で記憶してある。
【0015】
次に図4を用いて輻輳・開散を説明する。
図4に示すように一対のハーフミラー12A及び全反射ミラー12Bは、固定部Bに固定され、光軸方向(±Y矢印方向)に移動する。これにより、視標表示部23に表示された画像の左右の光路切替ミラー9への入射位置が変わる。つまり、固定部Bが接眼レンズ11寄りに位置する場合、光路切替ミラー9への画像の入射位置も接眼レンズ11寄りになる。従って、図5に示すように接眼レンズ11に入射する画像は、接眼光学系の光軸に対し外側になる。
【0016】
逆に固定部Bが対物レンズ8'寄りに位置する場合、光路切替ミラー9への画像に入射位置も対物レンズ8'寄りになる。従って、図5に示すように接眼レンズ11に入射する画像は、接眼光学系の光軸に対し内側になる。尚、図5では、輻輳方向へ移動する画像の位置は、光軸の位置と光軸に対し内側の位置との間での移動となっているが、上記のように、光軸に対し外側にまで画像を表示すれば、より眼の訓練効果を高めることが可能になる。
【0017】
このようにハーフミラー12Aと全反射ミラー12Bを光軸方向に往復移動させることにより、左右の視標の輻輳量が光軸に対して垂直な左右方向(±X方向)に変化し輻輳方向の眼の訓練が可能になる。
【0018】
上記のようにEF時のピント合わせは、画像見て、シフトレンズがイニシャライズ位置に停止している状態から、FOCUSボタン7を押すことによりシフトレンズを前進または後進させて焦点の合う位置に移動させて焦点合わせを行う。BINO時には、外界の観察対象物を見て行なう。
【0019】
本実施形態では、FOCUSボタン7を押している間は、シフトレンズが移動し、FOCUSボタン7から手を離した位置で停止するように設定してあるが、停止時に再度ボタンを押す操作を行なって停止させるようにしてもよい。
【0020】
更に、図4に示すように、ハーフミラー12Aと全反射ミラー12Bの移動に連動してシフトレンズ8を双眼光学系の光軸に沿って移動させるようにし、上記のように輻輳方向の画像の移動と連動させたEFを行なうことも可能であり、これにより更に眼の訓練効果を向上させることができる。この点について図5を用い、更に詳細に説明する。
【0021】
ハーフミラー12Aと全反射ミラー12Bは、図5の輻輳開始位置から輻輳MAX位置での範囲内であり、光軸方向である、図4に示す矢印±Y方向に往復運動する。この運動に伴って、図4、図5に示すように視標の像の光軸を左右に±X移動(光軸に対して垂直な方向に互いに開いたり、閉じたりする方向)する。更に、シフトレンズ8を光軸方向に沿って移動させる。まず使用者は、視標表示部23に表示された画像を観察し、画像に焦点が合うようにシフトレンズ8を移動させ、これを原点位置とする。そして、この原点位置を光軸方向の開始位置とし、シフトレンズ8を光軸に添って対物レンズ8'方向(視標シフト遠点MAX位置)と接眼レンズ方向11(視標シフト近点MAX位置)に移動させることにより焦点ずれを生じさせる。
【0022】
このように、ハーフミラー12Aと全反射ミラー12Bの光軸方向の移動とシフトレンズ8の光軸方向への移動を連動させれば、画像の光軸方向への移動と輻輳方向への移動とを連動させることができる。勿論、両者を連動させずに各々単独でEFを行なうようにしてもよい。
【0023】
EFの場合、上記のように眼の訓練のために視標を移動させるが予め画像メモリには、EFに使用される視標となる画像が数種類記憶されている。
まず使用者は、MODEボタン4を押し、画像メモリ(画像記憶部)42に記憶されている画像の中から任意に画像を選択し、これを画像表示制御部41で制御し、指標表示部23に表示させる。尚、本実施形態では上述のように画像メモリ42に記憶された画像を用いていたが、例えばUSB端子35(図6)からの外部画像の入力により新たな画像の使用を可能にすることも可能である。
【0024】
EFの使用手順は以下の通りである。
まずFOCUSボタン7を押し、視標表示部23に表示させた視標にピント合わせを行う。ピント合わせは、左右のシフトレンズ8を光軸方向に移動させて行なう。
【0025】
次にSTARTボタン5を押すと、先にピント合わせをしたシフトレンズ8の位置を原点としてEF動作が開始する。EF動作開始前の左右のシフトレンズ8及びハーフミラー12A、全反射ミラー12Bの位置は、イニシャライズ位置に停止されている。
【0026】
シフトレンズ8及びハーフミラー12A、全反射ミラー12Bは、予めデフォルト値として決められた光軸方向の前後の移動範囲(±ストローク範囲)と予め設定された駆動時間で反復移動しEF動作が行なわれる。そして、予め設定された時間経過後、EF動作は終了し、シフトレンズ8及びハーフミラー12A、全反射ミラー12Bは、EF動作開始前に位置であるイニシャライズ位置に戻り、EF動作は自動停止し訓練が終了する。訓練時間は、タイマーIC(時間計測部)45でカウントされ、制御回路22にて各動作が制御される。
【0027】
このように前記ピント位置から遠/近にピント及び左右方向に輻輳が変化する視標を眼で追従する訓練を決められた時間で行う事で、緊張した毛様体を緩和させ眼精疲労回復等の眼の訓練を行なうことができる。
【0028】
以上の説明では、シフトレンズ8とハーフミラー12A、全反射ミラー12Bを連動させることでEF機能を達成することを例示したが、MODEボタンで左右のシフトレンズとハーフミラー12A、全反射ミラー12Bを各々単独で移動させたり、訓練時間、往復シフト範囲、移動速度をあらかじめ数種類記憶させておき選択して使用することも可能である。
【0029】
双眼鏡として使用する場合は、まず図1に示すPOWERボタン3を押すことにより電源ONとする。そして、BINO/EFボタン6でBINOを選択する。これにより、左右の光路切替ミラー9が接眼レンズ11と対物レンズ8'とを結ぶ光路から外れ、対物レンズ8'と接眼レンズ11とを結ぶ光路が確保できる。
【0030】
次いで、使用者は、接眼レンズ11から対物レンズ8'を通して、外界の観察対象物を見ながらFOCUSボタン7によりを押すことにより、シフトレンズ8を光軸方向に移動させ、ピント合わせて観察する。本実施形態では、ピント合わせに際しシフトレンズ8を用いたが、ピント合わせ用のフォーカスレンズを光軸上移動可能に設けたり、接眼レンズを光軸方向に移動可能にしてもよい。
【0031】
本実施例では、眼の訓練装置における表示部を1つとし、さらに光軸方向に移動させ、輻輳・開散も可能な構造としたので、表示部に係るコストを低減し、訓練効果を高める装置を実現することができる。
【0032】
また、大幅な小型化を実現することも可能である。
また、表示部を左右それぞれに備える場合に発生する2つの表示器の位置ずれや、2つの表示器における画像の品質や画像に含まれる視標の位置の相違を回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態の眼の訓練装置の上面図である。
【図2】本実施形態の眼の訓練装置の内部の上面概略図である。
【図3】は、本実施形態の眼の訓練装置の横断面概略図である。
【図4】は、本実施形態の眼の訓練装置におけるシフトレンズ及びハーフミラーと全反射ミラーを駆動させた場合を説明する内部の上面概略図である。
【図5】は、本実施形態の眼の訓練装置の画像表示部に表示される画像を輻輳方向に移動させたときの説明図である。
【図6】は、本実施形態の眼の訓練装置の制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
1:眼の訓練装置、8:シフトレンズ、9:反射部、12A:ハーフミラー、 12B:反射ミラー、23:視標表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の接眼レンズと、
画像を表示する1つの画像表示部と、
前記画像表示部に表示された画像を前記左右それぞれの接眼レンズに分岐して導く光学系と、
前記光学系を光軸方向に沿って移動させる光学系の移動部を備えたことを特徴とする眼の訓練装置。
【請求項2】
前記光学系は、前記画像表示部に表示される画像を前記左右の接眼レンズの一方へ反射させかつ透過させるハーフミラーと、前記ハーフミラーを透過した画像が入射され、入射した画像を前記左右の接眼レンズのうちの他方へ反射させる反射ミラーと、前記ハーフミラーで反射した画像が入射し、前記一方の接眼レンズに反射させる一方の反射部材と、前記反射ミラーで反射した画像が入射し、前記他方の接眼レンズに反射させる他方の反射部材とを備え、前記移動部は、前記ハーフミラーと前記反射ミラーとを一体に移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の眼の訓練装置。
【請求項3】
前記左右の反射部材は、前記接眼レンズの光軸に対して挿脱可能に設置されることを特徴とする請求項2に記載の眼の訓練装置。
【請求項4】
前記眼の訓練装置は、左右一対の対物レンズを有し、前記左右の反射部材の光軸に対して脱することにより、対物レンズに入射する光を接眼レンズに入射可能にすることを特徴とする請求項3に記載の眼の訓練装置。
【請求項5】
前記左右の反射部材と前記接眼レンズの間の前記接眼レンズの光軸上に前記光軸方向に移動可能に設置された左右のシフトレンズを移動させるシフトレンズの移動部を有することを特徴とする請求項1に記載の眼の訓練装置。
【請求項6】
前記シフトレンズの移動と前記光学系との移動を連動させる連動部材を有することを特徴とする請求項5に記載の眼の訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−288466(P2006−288466A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109769(P2005−109769)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(501439264)株式会社 ニコンビジョン (86)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)