説明

眼内レンズ検査装置

【課題】 眼内レンズを眼内に埋植した際に生じるグレアの発生状態を好適に確認できる眼内レンズの検査装置を提供できる。
【解決手段】 眼内レンズの光学特性を測定する眼内レンズ検査装置は、人眼の角膜曲率に合わせた曲面を有する角膜模型レンズ及び網膜曲率に合わせた曲面を有するスクリーンとを備え、角膜模型レンズ及びスクリーンとの間に設けられる着脱部であって、角膜模型レンズに対して人眼の角膜から水晶体までの距離に相当する位置に眼内レンズを着脱可能に設置させるための着脱部とを有する模型眼ユニットと、模型眼ユニットに対して所定の広がりを有する光束を照射するための光源ユニットと、角膜模型レンズに対する光束の光軸中心の入射角度を変えるために、模型眼ユニット及び光源ユニットの少なくとも一方を回動させるための回動機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内に埋植される眼内レンズを検査するための眼内レンズ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術による水晶体摘出後の視力補正に眼内レンズが用いられている。眼内レンズは、屈折力を持つ光学部と、光学部を眼内で支える一対の支持部とから構成されており、被検者眼に設けられる切開創から眼内に挿入される。また、切開創をできるだけ小さくするために、眼内レンズは折り曲げ可能な柔軟性と、元の状態に復元可能な弾性とを備える素材にて形成されている。
【0003】
ところで、眼内レンズが眼内に設置された状態で光学部の周端部(コバ部)に対して斜め方向から光束が入射されると、入射光がコバ部で反射することによるぎらつき(グレア)が発生することがある。例えば、瞳孔が大きく開く夜間時には、コバ部に対して入射光が斜め方向から入射されやすくなるため、グレアが発生しやすくなる。グレアが発生すると、不要な眩しさによる不快感を患者に与えてしまうことになる。そこで、眼内レンズのコバ部に複数の溝を形成して入射光の反射方向を変えるなど、様々なグレア対策が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−189986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、グレアの発生を好適に抑えた眼内レンズの開発及び製造を行うためには、眼内レンズを眼内に取り付けた状態を想定して、グレアの発生状態を好適に検査できる検査装置が求められている。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、眼内レンズを眼内に埋植した際に生じるグレアの発生状態を好適に確認できる眼内レンズの検査装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 眼内レンズの光学特性を測定するための眼内レンズ検査装置において、人眼の角膜曲率に合わせた曲面を有する角膜模型レンズ及び網膜曲率に合わせた曲面を有するスクリーンとを備え、前記角膜模型レンズ及び前記スクリーンとの間に設けられる着脱部であって、前記角膜模型レンズに対して前記人眼の角膜から水晶体までの距離に相当する位置に前記眼内レンズを着脱可能に設置させるための着脱部とを有する模型眼ユニットと、該模型眼ユニットに対して所定の広がりを有する光束を照射するための光源ユニットと、前記角膜模型レンズに対する前記光束の光軸中心の入射角度を変えるために、前記模型眼ユニット及び前記光源ユニットの少なくとも一方を回動させるための回動機構と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼内レンズ検査装置は、前記角膜模型レンズ及び前記着脱部に設置された前記眼内レンズを介して前記スクリーンに投影される前記光束の投影模様を前記スクリーンの後側から撮影するための撮影ユニットを備えることを特徴とする。
(3) (2)の眼内レンズ検査装置において、前記模型眼ユニットは前記角膜模型レンズ及び前記スクリーンとの間の空間に所定の屈折率の液体を溜めることができる筐体であることを特徴とする。
(4) (3)の眼内レンズ検査装置は、前記撮影ユニットで撮影された撮影画像を表示するためのモニタと、を備えることを特徴とする。
(5) (4)の眼内レンズ検査装置において、前記撮影ユニットで撮影された撮影画像を画像処理することにより前記グレアを検出するためのグレア検出手段と、該グレア検出手段による検出結果に基づき前記眼内レンズの良否の判定を行うための眼内レンズ判定手段と、を備えることを特徴とする。
(6) (1)乃至(5)のいずれかに記載の眼内レンズ検査装置において、前記回動機構の回転軸は、前記模型眼ユニット又は前記光源ユニットがグレア検査を行うために必要となる所定の角度範囲で回動されたときに、前記光束の光軸中心が前記角膜模型レンズを通過するように前記模型眼ユニット上の所定位置に設けられることを特徴とする。
(7) (6)の眼内レンズ検査装置において、前記回転軸は、前記角膜模型レンズの軸中心を通過することを特徴とする。
(8) (1)乃至(7)のいずれかに記載の眼内レンズ検査装置において、前記光束は、球面波、平面波,または任意形状の拡散光であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、眼内レンズを眼内に埋植した際に生じるグレアの発生状態を好適に確認できる眼内レンズの検査装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は眼内レンズ検査装置1の概略説明図である。眼内レンズ検査装置1は、眼内レンズ10を人眼に設置した状態を再現するための模型眼ユニット100と、模型眼ユニット100に所定の広がりを有する光束を照射させるための光源ユニット200と、模型眼ユニット100に投影された映像からエッジグレア(以下、グレアと記す)の発生状態を撮影するための撮影ユニット300とを備える。
【0011】
図2に模型眼ユニット100の内部構成の説明図を示す。なお、図2には模型眼ユニット100を光軸に水平な断面(角膜模型レンズ110の軸中心を通る光軸に対して水平な断面)切断して見たときの断面拡大図が示されている。
模型眼ユニット100は、上部に開口部105が形成された箱状の筐体101と、人眼の角膜を模擬した角膜模型レンズ110と、人眼の網膜を模擬した網膜スクリーン120(以下、単にスクリーンと略す)と、眼の虹彩を模擬した絞り部(擬似虹彩)130と、筐体101内で眼内レンズ10を着脱可能に保持するための着脱部である眼内レンズ保持部140とから構成されている。
【0012】
筐体101には、光源ユニット200から照射された光束を通過させるための貫通孔(図示は省略する)が前後方向に形成されており、光源ユニット200に対向する側の貫通孔に角膜模型レンズ110が取り付けられ、撮影ユニット300側に対向する側の貫通孔にスクリーン120が取り付けられるようになっている。筐体101の光軸方向の長さは、角膜模型レンズ110とスクリーン120との距離が人眼の眼軸長と略等しくなるように決定されている。また、筐体101の内部(内側)には、絞り部130と眼内レンズ保持部140とを着脱可能に取り付けるための図示を略す複数のスライド機構が設けられている。なお、スライド機構は、絞り部130の取り付け位置が人眼の角膜から虹彩までの距離に相当する位置に合わせて形成されており、眼内レンズ保持部140の取り付け位置が人眼の角膜から水晶体までの距離に相当する位置に合わせて形成されている。
【0013】
角膜模型レンズ110は、ガラス又は樹脂等の透明な材料にて、人眼の角膜の曲率(角膜の曲率の平均値等)に合わせた曲面に形成されている。また、スクリーン120は、スクリーンとして使用可能な材料であって、投影されるグレアの模様を後ろ側から撮影できる程度に透光性を有しているものであれば良い。例えば、ガラス又は樹脂などの材料を半透明とした状態で、人眼の網膜の曲率に合わせた形状に形成されている。また、本実施形態のスクリーン120は筐体101の外側に位置される曲面が粗面(すりガラス状)となっている。これにより、スクリーン120にグレアの発生状態が投影されるようになる。なお、スクリーン120の粗面加工は、サンドブラスト、やすり掛けなどの周知の表面加工にて形成される。また、粗面は、スクリーン120の内側と外側の曲面上の少なくとも一方に形成されていれば良い。なお、本実施形態では網膜の形状に加工した部材を粗面加工することにより、スクリーンとして用いるものとしているが、これに限るものではない。着色等を施してスクリーンとして使用可能な程度に半透明状態にすることもできる。
【0014】
絞り部130は、板部131と貫通孔132から構成される。板部131は、筐体101に形成された図示を略すスライド部に合わせてスライド可能な形状に形成されている。貫通孔132は、板部131を筐体101に取り付けたときに、角膜模型レンズ110から入射された光束が通過される光路上に形成される。なお、ここでの貫通孔132の径は、グレアが発生しやすい暗所で瞳孔が開いた状況を再現するために、一般的な眼が暗所で開いたときの瞳孔径に合わせて形成されている。なお、ここでの貫通孔132の径は固定であるが、貫通孔132の径は可変であっても良い。貫通孔132の径が可変であると、眼内レンズ10の設計段階で、様々な条件(明るさ等)でのグレアの発生状態を確認しやすくなる。なお、貫通孔132が可変な場合の径の調節方法としては、手動の他、周知の電動機構にて自動で行われても良い。また、径の異なる貫通孔132が形成された複数の絞り部130を手動または自動的に筐体101に切換配置しても良い。
【0015】
眼内レンズ保持部140は、板部141、貫通孔142、板部141の後方側(スクリーン120側)で眼内レンズ10を保持するための保持部143とから構成されている。板部141は筐体101のスライド部に合わせたスライド可能な形状に形成される。貫通孔142は、板部141が筐体101に取り付けられたときに、絞り部130を通過した光束が通過する位置に形成される。なお、貫通孔142の径は、保持部143に保持された眼内レンズ10に対して斜めに光束が入射されるときに、光学部の周縁に光束が十分に当たるように広く形成される。つまり、保持部143で保持された眼内レンズ10(光学部)の周囲(前方)に、人眼に眼内レンズを設置したのと同程度な空間が形成されるようにしている。なお、本実施形態の保持部143は、貫通孔142の径よりも大きな径を有する溝(凹部)にて形成されており、溝の位置に支持部を嵌めこむことによって眼内レンズ1全体を保持する構成となっている。ここでの溝の径は、貫通孔142の径よりも広く、開放状態の眼内レンズ10の最外形よりも僅かに小さい径とされる。これにより、眼内レンズ10を取り付ける際には眼内レンズ10全体が僅かに圧縮されるようになり、支持部を保持部143(溝)に取り付けた状態で生じる復元力によって眼内レンズ10が保持されるようにしている。なお、保持部143の構成はこれに限られるものでは無く、支持部によって眼内レンズ10全体が保持される構成であれば良い。
【0016】
以上のような構成の模型眼ユニット100が用いられることで、人眼に眼内レンズ10と取り付けた状態とより近い条件で眼内レンズ10の検査が行えるようになる。また、筐体101の開口部105の位置で眼内レンズ保持部140を着脱させるだけで、簡単に眼内レンズ10を交換できるようになる。なお、ここでは、絞り130と眼内レンズ保持部140とは別部材とされ、筐体101に対して個別に着脱可能な構成となっている。これ以外にも、絞り部130と眼内レンズ保持部140とが一体成形されたものが、開口部105に対して着脱可能にされても良い。又は、筐体101に絞り部130が固定されていても良く、少なくとも眼内レンズ保持部140のみが筐体101に対して着脱される構成
となっていれば良い。
【0017】
スクリーン120から所定距離だけ離れた後方側には、スクリーン120を撮影するための撮影ユニット130が置かれている。撮影ユニット130はCCDなどの周知の撮像素子を備えており、撮像素子はスクリーン120と略共役位置に置かれる。また、撮影ユニット130にはモニタ131が接続されており、撮影ユニット130で撮影されたスクリーン120の画像が表示されるようになっている。なお、眼内レンズ検査装置1に撮影ユニット130を設けずに、スクリーン120に投影された投影模様を操作者が直接見ることによってグレアの発生状態を確認しても良い。
【0018】
光源ユニット200は、光源210と、光源210から照射された光束の径を角膜模型レンズ110全体に照射可能な程度に広げるための光学部材220とから構成される。例えば、光源210には光量を十分に確保できるレーザ光源の他、LED光源などが用いられる。光学部材220には、周知のレンズ、ビームエキスパンダ、拡散板等が用いられる。例えば、光学部材220に周知のレンズが用いられることで、光源210からの照射光が球面波に変更される。また、光学部材220にビームエキスパンダが使用されることで光源210からの照射光が平面波に変更される。また、光学部材220に拡散板が用いられることで、任意の形状の拡散光に変更される。なお、以上のような光学部材220は、光源210から照射された光束の径を角膜模型レンズ110全体に照射可能に広げるものが選択されれば良い。
なお、光源210としてハロゲンランプ等の所定の広がりを持つ光束(例えば、拡散光)を照射する光源が使用される場合には、光学部材220を設けずに、光源210からの光束を直接角膜模型レンズ110に照射するようにしても良い。
【0019】
以上のような構成の模型眼ユニット100及び撮影ユニット300は支持台150に置かれる。また、光源ユニット200は支持台250に置かれる。そして、支持台150及び支持台250はそれぞれ共通の基台260に取り付けられる。また、本実施形態では、支持台250が基台260に対して固定されるのに対して、支持台150は基台260に対して回動可能に取り付けられる。つまり、模型眼ユニット100上で設定された回転軸Oを中心として回動される構成となっている。なお、ここでの回転軸Oは角膜模型レンズ110の角膜頂点位置(軸中心)を通る位置に設けられている。これ以外にも、回転軸Oは、模型眼ユニット100が所定の角度範囲(グレア検査を行うために必要となる回転角度範囲、例えば60度の角度範囲)で回動されるときに、光源ユニット200からの光束(光軸中心)が常に角膜模型レンズ120に入射されるように、模型眼ユニット100上の所定位置に設定される。これにより、グレア検査に必要な回転角度範囲で模型眼ユニット100を回動させたときに、角膜模型レンズ120に対して好適に光束(光軸中心)が入射されるようになる。
【0020】
なお、模型眼ユニット100に対して光束が所定の角度範囲で入射される際に、光束が常に角膜模型レンズ120を通過する構成であれば良く、模型眼ユニット100が固定され、光源ユニット200が回動される構成であっても良い。
【0021】
次に以上のような眼内レンズ検査装置1を用いて、眼内レンズ10のグレアの発生状態を検査する場合の動作を説明する。まず、眼内レンズ10の開発段階などで眼内レンズ10を検査する例を説明する。図3は図1に示される眼内レンズ検査装置1を上方から見た図であり、眼内レンズ検査装置の使用状態を示している。図4は撮影ユニット300の撮影で得られるスクリーン200の撮影画像であり、グレアの発生状態が示されている。
【0022】
はじめに操作者は、眼内レンズ保持部140の保持部143(溝)に、検査を行う眼内レンズ10の支持部を取り付けて眼内レンズ10を保持させる。次に、開口部105から
好ましくは生理食塩水等の体液に近い屈折率を有する液体を入れて筐体101内全体に液体を溜める。なお、筐体101内に液体が溜められることで、より実際の人眼に近い状態での検査が行われるようになる。次に、図示を略すスライド部を介して、筐体101に絞り部130と眼内レンズ保持部140とを取り付ける。
【0023】
次に、模型眼ユニット100(又は光源ユニット200)を所定の回転角度範囲で回動させたときのグレアの発生状態を確認する。なお、回転角度は、光学部の周縁に光束が照射されることにより、グレアの発生の有無を確認できる角度範囲に決定される。
【0024】
図3(a)に示すように、模型眼ユニット100の光軸L2と光源ユニット200の光軸L1とが略一致された状態で、光源ユニット200の光源210が点灯されると、光源210から照射された光束の径が光学部材220で広げられて、模型眼ユニット100の角膜模型レンズ110に入射されるようになる。角膜模型レンズ110を通過した光束は、絞り部(擬似虹彩)130の貫通孔を経て、眼内レンズ10の光学部を照明する。そして、眼内レンズ10を透過した光束は、スクリーン120に投影される。本実施形態ではスクリーン120の外側曲面が粗面になっているので、眼内レンズ10を透過または反射した光による投影模様がスクリーン120上に現れるようになる。スクリーン120に現れた投影模様(エッジグレアの発生状態)は、撮影ユニット130で撮影される。
【0025】
図4(a)に、この時のスクリーン120の撮影画像を示す。図3(a)に示すように、角膜模型レンズ110の軸中心Oに対して真っ直ぐに入射光が入射される場合には、光学部のコバ部に入射光が照射されない(照射されたとしても僅かであるので)、投影模様からエッジグレアは確認されない。
【0026】
ところで、光学部のコバ部による入射光の反射で発生するグレアは、眼内レンズ10(光学部)に対する光束の入射角度が大きくなる(斜めに入射される)と発生しやすくなる。そこで、操作者は、角膜模型レンズ110の軸中心Oを回転軸として、模型眼ユニット110が載せられている支持台150を所定の回転角度で回動させることにより、模型眼ユニット110に対する入射光の入射角度を変えて、グレアGの発生状態の変化を観察する。
【0027】
図3(b)に示すように、角膜模型レンズ110の軸中心を回転軸Oとして支持台150を角度θ1で回動させる。これにより、光源ユニット200から照射された光束が角膜模型レンズ110に対して斜め方向から入射されるようになる。これにより、貫通孔132及び貫通孔142を通過した光束は眼内レンズ10の軸中心Oからずれた位置に照射されるようになると共に、その光束の一部が光学部のコバ部に照射されて反射されるようになる。これにより、図4(b)の撮影画像に示すように、スクリーン120の投影模様の中心付近に円弧状のグレアGが確認されるようになる。
【0028】
そして、図3(c)に示すように、角膜模型レンズ110の軸中心を回転軸Oとして支持台150を角度θ2(θ1<θ2)で更に大きく回動させると、角膜模型レンズ110に対する光束の入射角度が更に大きくなることで、各貫通孔132及び142を通過した光束が眼内レンズ10の軸中心から更にずれた位置に入射されるようになる。その為、図4(c)の撮影画像に示されるように、スクリーン120の投影模様の中心付近で確認されていたグレアGが、次第にスクリーン120の外周付近で確認されるようになる。
【0029】
以上のように、検者は光源ユニット200に対して、模型眼ユニット100を角膜模型レンズ110の軸中心を回転軸Oとして所定の回転角度で回動させることによって、光学部に対する光束の入射角度を次第に変更する。そして、スクリーン120に投影されるグレアの発生状態の変化を、撮影ユニット300を介して観察する。
【0030】
以上のように、眼内レンズ10の開発段階で本発明の構成を備える眼内レンズ検査装置1が用いられることで、人眼で生じる可能性のあるグレアの発生状態を好適に再現できるようになる。その為、グレアの発生が好適に抑制された眼内レンズを設計することができるようになる。なお、図1に示すように、撮影ユニット300にモニタ301を接続して、撮影ユニット300で撮影された撮影画像をモニタ301を介して眼内レンズ10のグレアGを確認しても良い。
【0031】
また、以上のような眼内レンズ検査装置1は眼内レンズ10の製造段階に使用されると便利である。この場合には、以上のような構成の眼内レンズ検査装置1の撮影ユニット300に、眼内レンズ10の良否判定をするための眼内レンズ判定装置を接続する。また、眼内レンズ検査装置1全体の動作制御を行うための制御手段を設ける。
【0032】
図示を略す制御手段は、検査を行う眼内レンズ10が予め保持部143に保持された眼内レンズ保持部140を、内部に所定の屈折率を有する液体が溜められた状態にある筐体101の開口部105の位置に自動的に配置する。そして、図示を略す電動機構の駆動により、模型眼ユニット100及び撮影ユニット300が置かれた支持台150を、角膜模型レンズ110の軸中心を回転軸Oとして所定の回転角度で回動させる(眼内レンズ10の光学部のコバに光束が照射されるように所定の回転角度で回転させる)。一方、制御手段は撮影ユニット300の駆動制御によりスクリーン120の撮影を行う。撮影ユニット300で取得された画像情報は、眼内レンズ判定装置に送られる。なお、眼内レンズ判定装置にはグレア判定の為の輝度の閾値情報が予め記憶されているとする。これにより、メモリに記憶された輝度情報とスクリーン120の撮影画像を構成する輝度情報との比較により、グレアの発生箇所を抽出する。そして、所定の回転角度での眼内レンズ10のグレアの発生状態を抽出した結果、グレアが発生していないと判定された眼内レンズ10のみが採用されるようにしても良い。
【0033】
以上のように、実際の人眼により近い構成の模型眼ユニットを備える眼内レンズ検査装置を眼内レンズ10の製造段階で用いることで、製造段階でグレアが発生する基準を超える眼内レンズを精度よく取り除くことができ、より好適に眼内レンズを提供できるようになる。
【0034】
なお、眼内レンズ検査装置1(模型眼ユニット100)は以上の構成に限られるものではない。図5に模型眼ユニット100の構成の変用例を示す。ここでは、模型眼ユニット100を光軸L2の位置で上下に切断し、上方(開口部105側)から見た断面図が示されている。なお、図5において上述の眼内レンズ検査装置1と同一の構成には同じ図番号を付して説明する。
【0035】
ここでは、眼内レンズ保持部140にて眼内レンズ10が保持される位置が、光軸L2に対して偏心した位置に設けられている。つまり、板部141が筐体101に取り付けられた状態で、貫通孔142に対して保持部143が偏心した位置となるように形成されている。これにより、保持部143で保持された眼内レンズ10のコバ部に、光源ユニット200から照射された光束が照射されやすくなり、コバ部に照射される光量が十分確保されることで、よりグレアの発生状態を好適に確認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】眼内レンズ検査装置の概略説明図である。
【図2】模型眼ユニットの内部構成の説明図である。
【図3】眼内レンズ検査装置の使用状態の説明図である。
【図4】グレアの発生状態の説明図である。
【図5】模型眼ユニットの変用例である。
【符号の説明】
【0037】
1 眼内レンズ検査装置
100 模型眼ユニット
105 開口部
110 角膜模型レンズ
120 スクリーン
130 絞り部130
140 眼内レンズ保持部
150、250 支持台
200 光源ユニット
300 撮影ユニット
301 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズの光学特性を測定するための眼内レンズ検査装置において、
人眼の角膜曲率に合わせた曲面を有する角膜模型レンズ及び網膜曲率に合わせた曲面を有するスクリーンとを備え、前記角膜模型レンズ及び前記スクリーンとの間に設けられる着脱部であって、前記角膜模型レンズに対して前記人眼の角膜から水晶体までの距離に相当する位置に前記眼内レンズを着脱可能に設置させるための着脱部とを有する模型眼ユニットと、
該模型眼ユニットに対して所定の広がりを有する光束を照射するための光源ユニットと、
前記角膜模型レンズに対する前記光束の光軸中心の入射角度を変えるために、前記模型眼ユニット及び前記光源ユニットの少なくとも一方を回動させるための回動機構と、
を備えることを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項2】
請求項1の眼内レンズ検査装置は、前記角膜模型レンズ及び前記着脱部に設置された前記眼内レンズを介して前記スクリーンに投影される前記光束の投影模様を前記スクリーンの後側から撮影するための撮影ユニットを備えることを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項3】
請求項2の眼内レンズ検査装置において、
前記模型眼ユニットは前記角膜模型レンズ及び前記スクリーンとの間の空間に所定の屈折率の液体を溜めることができる筐体であることを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項4】
請求項3の眼内レンズ検査装置は、
前記撮影ユニットで撮影された撮影画像を表示するためのモニタと、を備えることを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項5】
請求項4の眼内レンズ検査装置において、
前記撮影ユニットで撮影された撮影画像を画像処理することにより前記グレアを検出するためのグレア検出手段と、
該グレア検出手段による検出結果に基づき前記眼内レンズの良否の判定を行うための眼内レンズ判定手段と、を備えることを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の眼内レンズ検査装置において、前記回動機構の回転軸は、前記模型眼ユニット又は前記光源ユニットがグレア検査を行うために必要となる所定の角度範囲で回動されたときに、前記光束の光軸中心が前記角膜模型レンズを通過するように前記模型眼ユニット上の所定位置に設けられることを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項7】
請求項6の眼内レンズ検査装置において、
前記回転軸は、前記角膜模型レンズの軸中心を通過することを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の眼内レンズ検査装置において、前記光束は、球面波、平面波,または任意形状の拡散光であることを特徴とする眼内レンズ検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate