説明

眼屈折力測定装置

【課題】 小型で故障や騒音の少ない光束偏向部材の回転駆動機構となる。
【解決手段】 被検眼眼底に測定指標を投光する投光光学系と、測定指標の眼底での反射により形成される指標像を受光する受光光学系と、その指標像を受光して眼屈折力を測定する眼屈折力測定光学系を有する眼屈折力測定装置において、眼屈折力測定光学系の光路に配置され、かつ瞳孔と共役位置から外れた位置に配置された光束偏向部材と、光束偏向部材が内周面に設けられた回転子と、回転子の外周面にベアリングを介して設けられ測定光学系の光軸を中心に回転子を回転させる固定子と、回転子を固定子に対して一定方向に連続的に回転させる駆動制御手段と、回転子の回転時において光軸方向に関して回転子と固定子が接近する方向に吸着させるための第2の磁石と、を備える回転駆動ユニットを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼を測定・検査する眼科装置として、例えば、オートレフラクトメータが知られている。このような装置には、検査室に置かれる据え置き型の装置と、持ち運びが可能なハンディタイプの装置がある。
【0003】
例えば、検査室に置かれる据え置き型のオートレフラクトメータにおいて、その投影光学系と受光光学系の共通光路に光束偏向部材(例えば、プリズム)を回転駆動可能に設けることにより、被検眼の瞳孔内の眼屈折力を平均的に測定する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
プリズムを回転させる構成について、従来は、プリズムの回転軸とは別の回転軸として配置されるモータと、プリズムを回転可能に保持する回転フォルダとが設けられ、モータの回転力をプーリを介して回転フォルダに伝達することにより、プリズムを回転させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−185523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の構成の場合、そのモータの回転振動がプリズムに伝わってしまい、意図しない光軸ずれや故障の原因となっていた。意図しない光軸ずれは、瞳孔内での測定位置に影響を与えるため、測定精度の低下の原因になり得る。また、この回転振動が原因となる音が検者や被検者に不快感を与えている。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑み、小型で故障や騒音の少ない光束偏向部材の回転駆動機構を持つ眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
(1) 被検眼眼底に測定指標を投光する投光光学系と、前記測定指標の眼底での反射により形成される指標像を受光する受光光学系と、その指標像を受光して眼屈折力を測定する眼屈折力測定光学系を有する眼屈折力測定装置において、前記眼屈折力測定光学系の光路に配置され、かつ瞳孔と共役位置から外れた位置に配置された光束偏向部材と、前記光束偏向部材が内周面に設けられた回転子と、前記回転子の外周面にベアリングを介して設けられ前記測定光学系の光軸を中心に前記回転子を回転させる固定子と、前記回転子を前記固定子に対して一定方向に連続的に回転させる駆動制御手段と、前記回転子の回転時において前記光軸方向に関して回転子と固定子が接近する方向に吸着させるための第2の磁石と、を備える回転駆動ユニットを備えることを特徴とする。
(2) 前記磁石の近傍に配置され、前記磁石の吸着力を増強させるためのヨークを備える(1)の眼屈折力測定装置。
(3) 前記回転子は、該光束偏向部材を保持するフォルダと,前記フォルダに連結され固定子を外側から覆うカバーと,カバーの内側に設けられた駆動磁石と,を有し,前記固定子は、コイルが巻かれたコアが外側に配置され、前記磁石及びヨークが内側に配置されたハウジングを有し、前記駆動制御手段は、前記コイルに駆動電流を通電させることによって、前記駆動磁石を回転駆動させ、前記測定光軸を中心として前記光束偏向部材を連続的に回転させる(2)のいずれかの眼屈折力測定装置。
(4) 手持型の眼屈折力測定装置である(1)〜(3)のいずれかの眼屈折力測定装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型で故障や騒音の少ない光束偏向部材の回転駆動機構となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態においては、眼科装置の一例として手持型の眼屈折力測定装置を例に説明をする。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る手持型眼屈折力測定装置の一例を示す外観側方図である。なお、以下の説明では、被検眼と装置との位置関係について、前後方向をZ方向、左右方向をX方向、上下方向をY方向として説明する。
【0012】
装置本体100には、被検眼Eに指標光束を投光しその反射光を受光する検眼光学系10を含む光学ユニット1が設けられている。また、検査窓102は、本体100の眼E側に配置される。操作部84及びモニタ85は、本体100の検者側に配置される。さらに、装置本体100には、制御や演算処理のための電気系が収納される。検者は、被検者に対向し、本体100を把持する。そして、モニタ85を見ながら、眼Eに対し本体100をアライメントする。
【0013】
図1において、反射ミラー72は、眼Eと対向する位置に配置され、検眼光学系(測定光学系)10は、反射ミラー72の下方に配置されている。なお、検眼光学系10の光軸L1は、反射ミラー72によって眼E方向に折り曲げられる。反射ミラー72は、検眼光学系10からの出射光を反射して眼Eに導き、また、眼Eからの反射光を反射して検眼光学系10に導く。
【0014】
図2は本体100に収納された光学系を正面から見た光学配置図である。光学ユニット1は、検眼光学系10、眼Eに固視標を投影するための投影光学系30、眼Eを観察するための観察光学系50、を備える。
【0015】
図2において、検眼光学系10は、他覚的に眼屈折力を測定するための光学系である。検眼光学系10は、眼底Efに測定指標を投影し、その眼底反射光束を受光する。そして、その受光信号に基づいて眼Eの屈折力が測定される。
【0016】
概して、検眼光学系10の光路中には、回転駆動ユニット(図5参照)が設けられている。回転駆動ユニットにおいて、光束偏向部材と、回転子と、固定子と、駆動制御部と、吸着用磁石と、を備える。光束偏向部材は、検眼光学系10の光路に配置され、かつ瞳孔と共役位置から外れた位置に配置される。光束偏向部材は、検眼光束を偏向させる。光束偏向部材は、回転子の内周面に設けられている。
【0017】
固定子は、装置内部に固定される。固定子は、回転子の外周面にベアリングを介して設けられ、検眼光学系10の光軸を中心に回転子を回転させるために用いられる。駆動制御部は、固定子に配置されたコイルと回転子に配置された駆動磁石との間に作用する反発吸引力により回転子(光束偏向部材)を固定子に対して一定方向に連続的に回転させる。吸着用磁石は、固定子又は回転子に設けられ、回転子の回転時において前記光軸方向に関して回転子と固定子が接近する方向に吸着させる(本構成の具体例については後述する)。
【0018】
より具体的には、検眼光学系10は、瞳孔中心Pcを介して被検眼Eの眼底Efに測定指標光束(スポット指標)を投光する投光光学系10と、指標光束の眼底での反射光を瞳孔周辺からリング状に取り出し、受光素子(撮像素子)26上に形成される指標像(リング状の反射像)を受光する受光光学系20と、から構成される。
【0019】
投光光学系10aは、光軸L1上に配置された光源11、リレーレンズ12、プリズム回転ユニット60、ホールミラー13、対物レンズ14、及び反射ミラー72を備える。光源11は、眼底Efと略共役位置に配置され、ホールミラー13の開口は、眼Eの瞳孔と略共役位置に配置される。プリズム回転ユニット(回転駆動ユニット)60は、プリズム(光路偏向部材)61を備え、光軸L1を中心にプリズム61を回転駆動させる。プリズム61は眼Eの瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置されており、通過する光束を光軸L1に対して偏心させる。なお、プリズム61に代えて平行平面板を光軸L1上に斜めに配置する構成でも良い。
【0020】
光源11から出射された測定光は、光源11、リレーレンズ12、プリズム61、ホールミラー13、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー53、対物レンズ14を介して反射ミラー72により反射される。そして、反射ミラー72によって反射された測定光は瞳孔中心Pcを通過し、そして、スポット状の光束が眼底Ef上に投影される。このとき、光軸L1を中心とするプリズム61の回転によって、ホールミラー13のホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は、高速に偏心回転される。
【0021】
プリズム61は、投光光学系10aと受光光学系10bと共通光路に配置されている。このため、眼底からの反射光束は、投光光学系10aと同じプリズム61を通過するため、それ以降の光学系ではあたかも瞳孔上における投影光束・反射光束(受光光束)の偏心が無かったかのように逆走査される。
【0022】
受光光学系10bは、反射ミラー72、対物レンズ14、プリズム回転ユニット60、ホールミラー13、コリメータレンズ22、リングレンズ24、及び撮像素子(例えば、CCD、CMOS等の二次元撮像素子)26、を備える。撮像素子26は、レンズ14、レンズ22、リングレンズ24を介して眼底Efと略共役位置に配置される。リングレンズ20は、円筒レンズがリング状に形成されたレンズ部と、レンズ部と同じ大きさのリング開口を持つ遮光部と、から構成され、眼Eの瞳孔と略共役位置に配置されている。撮像素子26からの出力信号は、制御部80に接続される(図3参照)。
【0023】
そして、投光光学系10aによる眼底反射光束は、再び反射ミラー72により反射され、対物レンズ14、ダイクロイックミラー53、ダイクロイックミラー35、プリズム61を介して、ホールミラー13の反射面により反射され、コリメータレンズ22にて略平行光束(正視眼の場合)とされ、リングレンズ24によってリング状光束として取り出され、リング像として撮像素子26に受光される。
【0024】
なお、上記構成の他、瞳孔周辺部から眼底Efにリング指標を投影し、瞳孔中心から反射光を取り出して、撮像素子上にリング像を受光させる方式、など種々の方式が採用可能である。
【0025】
対物レンズ14とホールミラー13との間には、ビームスプリッタとして可視反射・赤外透過のダイクロイックミラー35が配置され、光源31からの光が眼Eに向けて導光される。また、ダイクロイックミラー35と対物レンズ14との間には、ビームスプリッタとしてダイクロイックミラー53が配置され、前眼部からの光が観察光学系50に導光される。そのミラー53は、測定光束を透過し、観察光束を反射する波長特性を有する。これらのビームスプリッタによって、測定光軸、固視光軸、観察光軸は、同じ光軸(L1)上に配置される。
【0026】
投影光学系30は、可視光を発する光源31、風景/動物などが描かれた固視標32、投光レンズ33、全反射ミラー34、ダイクロイックミラー35、対物レンズ14、反射ミラー72を備える。なお、上記構成の他、固視標として、LEDなどの点光源、液晶パネルなどのディスプレイなどが用いられる。また、複数の固視標が二次元的に配置されてもよい。
【0027】
光源31に照明された固視標32は、投光レンズ33、全反射ミラー34、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー53、対物レンズ14、反射ミラー72を介して眼底Efに投影される。これにより、眼Eは固視される。また、光源31及び固視標32が光軸方向に移動され、眼Eに雲霧がかけられる。
【0028】
また、検査窓102の外側には、被検眼の角膜Ecにリング状の有限遠指標を投光(投影)する第1投光光学系(第1投影光学系)45が光軸L1と同心円状に配置されている。また、角膜Ecに無限遠指標を投影する第2投光光学系(第2投影光学系)46が光軸L1に対し左右対称(図の便宜上上下)に配置されている。なお、第1投影光学系45は、赤外光にて前眼部を照明する。また、角膜形状測定指標(ケラト指標)としても利用されうる。
【0029】
観察光学系50は、反射ミラー72、対物レンズ14、ダイクロイックミラー53、撮像レンズ51、二次元撮像素子52を備える。撮像素子52からの出力信号は、制御部80に接続され、モニタ85に出力される(図3参照)。なお、観察光学系50は、眼Eの正面像を観察する他、眼Eに対する装置本体100のアライメント状態を検出する検出光学系として用いられる。
【0030】
第1投影光学系45により照明された眼Eの前眼部像は、反射ミラー72、対物レンズ14、ダイクロイックミラー53、撮像レンズ51を介して、撮像素子52の撮像面に受光される。また、同様に、第1投影光学系45、第2投影光学系46によるアライメント指標像が、撮像素子52に検出される。
【0031】
図3は本体100に収納された電気・制御系を示すブロック図である。制御部80は、装置全体の制御、眼屈折値の算出などの演算処理を行う。制御部80には、光源11、撮像素子26、光源31、撮像素子52、プリズム回転ユニット60、各種設定に用いられる操作部84、モニタ85、メモリ81、等が接続されている。
【0032】
なお、制御部80は、モニタ85の表示を制御し、前眼部像、測定結果、などを画面上に重畳表示する。また、制御部80は、撮像素子52からの撮像信号に基づいてアライメントずれを検出する。
【0033】
<プリズム回転ユニット>
図4は、プリズム回転ユニットの構成について説明するための正面図である。図5は、図4に示したプリズム回転ユニット60をAからA‘方向に切断して、横方向から見た断面図である。図6は、プリズム回転ユニット60を可動部(回転子)60aと固定部(固定子)60bに分けた図である。なお、図4の正面図では、レンズフォルダ62とカバー63を除いたプリズム回転ユニット60の正面図を示している。
【0034】
プリズム回転ユニット60は、可動部60aと、固定部60bと、ベアリング71で構成される。プリズム回転ユニット60に駆動信号が付与されると、可動部60aは、光軸L1を中心に回転する。固定部60bは、検眼光学系10に配置された光学部材を固定する台に対し、取り付け板76を介して固定されている。固定部60bは、可動部60aの回転時においても、回転しない。ベアリング71は、可動部60aの回転軸受として用いられる。すなわち、可動部60aは、ベアリング71を介して固定部60bに対して相対的に回転可能に配置されている。
【0035】
可動部60aは、プリズム61、レンズフォルダ62、カバー63、駆動磁石(永久磁石)64で構成され、これらの部材は連結されている。
【0036】
レンズフォルダ62は、プリズム61を保持するためのものであり、レンズフォルダ62の内側にプリズム61が保持される。カバー63は、固定部60bを外側から覆うための鉄製の部材であり、レンズフォルダ62の外側に連結されている。カバー63の円筒部の内側には、リング形状の駆動磁石64が設けられている。
【0037】
駆動磁石64は、円周方向に関して極性が交互にN極とS極とを繰り返すように、6極並ぶように配列されている。なお、本実施形態においては、6極並ぶように配列されている構成としたがこれに限定されない。例えば、これより多い12極、これより少ない2極等で構成されていてもよい。
【0038】
固定部60bは、磁石(吸着用磁石)73、ヨーク74、ハウジング75、取り付け板76、コイル77、コア79、で構成され、これらの部材は連結されている。
【0039】
ハウジング75は、円筒状の部材であり、円筒面の外側に、コア79、取り付け板76が設けられ、円筒面の内側に、磁石73、ヨーク74が設けられている。
【0040】
コア79は、ハウジング75の外側に配置され、円周方向に所定間隔毎に配置された複数の鉄製の柱によって形成されている。コア79に関して、各柱に導線がそれぞれ巻かれており、これらは、それぞれコイル77として用いられる。各コイル77には、図無き回路基板に接続されている。回路基板は、制御部80に接続され、回路基板を介して、各コイル77へ駆動電流が通電される。すなわち、制御部80は、各コイル77に対して駆動電流を切り換え通電する(詳しくは後述する)。
【0041】
磁石73及びヨーク74は、ハウジング75の内側に配置され、それぞれリング形状で形成されている。磁石73とヨーク74は、後述するベアリング71に与圧をかけて、安定して回転させるための構成である。
【0042】
ベアリング71は、可動部60aと固定部60bとの間に配置される。ベアリング71の内輪71aには、レンズフォルダ61が嵌められ、これにより、ベアリング71と可動部60aが連結される。一方、ベアリング71の外輪71bは、ハウジング75の円筒部に嵌められ、これにより、ベアリング71と固定部60aが連結される。これにより、可動部60は、固定部60aに対して摩擦抵抗なく回転されると共に、その回転軸の位置が安定する。
【0043】
以下、図7に示した回転駆動の模式図を用いて、プリズム回転ユニット60の回転駆動について説明する。本実施形態において、図7に示すU、V、W、U'、V'、W'は、コア79とコイル77によって形成される。UとU'によってU相、VとV'によってV相、WとW'によってW相がそれぞれ形成されている。UとU'、VとV'、WとW'は、それぞれ、対角に向かい合わせに配置されており、電流の向きが逆となる。そして、回路基板によって三相交流電流(駆動電流)を各相に順に通電することにより各相に順に磁界を発生させ、磁界に基づく磁束が駆動磁石64に作用することによって、駆動磁石64が回転をする。
【0044】
具体的には、各相(各コイル77)に駆動電流を通電することによって、各相ごとに磁界が発生する。例えば、U相に対応するコイル77に駆動電流を通電した場合、UとU'に磁界が発生する。このため、例えば、駆動磁石64のN極64aがUに引きつけられる。また、Uと電流の向きが逆であるU'に駆動磁石64のS極64bが引きつけられる。次いで、U相への通電をV相へ切り換えていく場合、UとU'に発生していた磁界が無くなっていき、VとV'に磁界が発生していく。このため、駆動磁石64のN極64aが徐々にVに引きつけられる。また、Vと電流の向きが逆であるV'に駆動磁石64のS極64bが徐々に引きつけられる。すなわち、U層に位置していたN極64a及びS極64bが徐々にV相に移動する。これによって、駆動磁石64がB方向に移動する。次いで、V相からW相への駆動電流の切り換えが行われると、駆動磁石64がB方向にさらに移動する。これらの駆動電流を通電させる相を切り換えていくことによって、駆動磁石64が回転駆動する。
【0045】
なお、W相まで通電を行った後、U相に通電を開始するが、このとき、電流の向きをUとU'で変更して通電することによって、駆動磁石64のN極64aがU'に引きつけられる。また、U'と電流の向きが逆であるUに駆動磁石64のS極64bが引きつけられる。すなわち、駆動電流を通電させる相の切り換えと通電させる駆動電流の向きを変更することによって、駆動磁石64が一定の方向に回転駆動をする。
【0046】
以上のようにして、駆動磁石64が回転駆動をするため、可動部60aは、固定部60bに対して回転駆動をする。これによって、プリズム61が回転駆動する。
【0047】
以下、磁石73とヨーク74の作用について説明する。磁石73とヨーク74は、ベアリング71の内輪71aの回転時に生じるベアリング71のぐらつきを抑制するために、用いられる。磁石73は、鉄製のカバー63を磁石73が持つ吸着力(磁力)によって、カバー63を磁石73側に引きつける。
【0048】
ヨーク74は、鉄製のリング形状の板であり、磁石71の近傍に配置され、磁石71が持つ吸着力を増幅(増強)する。ヨーク74は、吸着対象(鉄製のカバー63)を吸着するための磁力が磁石71の後方(ベアリング71側)から漏れるのを遮断し、その磁力を、吸着対象物(鉄製のカバー63)に向ける役目をする。すなわち、ヨーク74は、磁石73が持つ吸着力を増強し、鉄製のカバー63をより強く引きつけさせる。このため、ベアリング71のぐらつきが抑制され、回転駆動以外の動きは抑制される。そして、レンズフォルダ62を介してベアリング71と固定されているプリズム61は、回転駆動以外の動きが抑制され、安定して回転する。これにより、回転軸のぶれが抑制され、回転駆動以外の動きによる光軸ずれが抑制される。
【0049】
以下、以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。検者は、装置本体100を把持し、固視標32を固視するよう指示した後、検査窓102を眼Eの正面に置く。これにより、前眼部が撮像素子52によって撮像され、モニタ85には、前眼部像F、第1投影光学系45によるリング像(マイヤーリング像)R、第2投影光学系46によって投影された無限遠指標像Mが表示される(図4参照)。
【0050】
そして、制御部80は、撮像素子52からの撮像信号に基づいて被検眼に対するアライメント状態を検出する。この場合、制御部80は、リング指標Rの中心位置(略角膜中心)を算出することによりXY方向のアライメントずれを求める。また、制御部80は、装置本体100がZ方向にずれた場合に、指標Mの間隔がほとんど変化しないのに対して、リング指標Rの像間隔が変化するという特性を利用して、Z方向のアライメントずれを求める(詳しくは、特開平6−46999号参照)。制御部80は、Z方向のアライメント検出結果に基づいてインジゲータGの数を増減させる。
【0051】
ここで、検者は、リング像RとレチクルマークLTが同心円になるように装置本体100をXY方向に移動させる。また、Z方向のアライメント検出結果に基づいて変化するインジゲータGを参考にしながら(もしくはリング像Rが最も細くなるように)、装置本体100をZ方向に移動させる。
【0052】
その後、オートショットを作動させた場合、制御部80は、XYZ方向のアライメント状態が許容範囲を満たしたら、測定開始のトリガ信号を発する。一方、オートショットがOFFの場合には、操作部84に設けられたトリガスイッチが押されると、測定が開始される。
【0053】
トリガ信号が出力されると、制御部80は、光源11を点灯させ、眼底Efに測定指標を投光する。制御部80は、コイル77に流す駆動電流の方向や強さを可変させ、プリズム61を回転駆動させる。制御部80は、コイル77に順に駆動電流を通電する。コイル77に駆動電流が通電されると、そのコイル77に磁界が発生し、駆動磁石64が引きつけられる。そして、各コイル77に駆動電流を切り換えて通電することによって、駆動磁石64が回転駆動する。これによって、駆動磁石64に設けられた可動部60aは、固定部60bに対して回転駆動し、プリズム61を測定光軸を中心として連続的に高速回転させる。そして、制御部80は、眼底Ef上で回転するスポット状の点光源像を形成する。眼底Ef上に形成された点光源像の光は、反射・散乱されて眼Eを射出し、制御部80は、その反射光を撮像素子26により受光し、指標像を検出する。
【0054】
なお、撮像素子26の蓄積時間よりも短い周期でプリズム61が高速回転されることにより、所定の測定領域内(例えば、φ=4mm以下)を測定光束が通過することになる。そして、これらの測定光束は、眼底で反射され、最終的には、撮像素子22からそれらを積分したリング状の像として検出される。そして、制御部70は、撮像素子22によって取得されたリング像に基づき眼屈折力を測定する。これにより、被検眼における瞳孔の所定領域内における眼屈折力の平均が得られる。
【0055】
このとき、はじめに予備測定が行われ、その結果に基づいて光源31及び固視標板32が光軸方向に移動され、眼Eに対して雲霧がかけられる。その後、雲霧がかけられた被検眼Eに対して眼屈折力の本測定が行われる。
【0056】
図8は測定の際に撮像素子26に撮像されるリング像である。撮像素子26からの出力信号は、メモリ81に画像データ(測定画像)として記憶される。その後、制御部80は、メモリ81に記憶された画像に基づいて各経線方向に関し像位置を検出し、その後、最小二乗法等を用いて楕円近似を行う。そして、制御部80は、近似した楕円の中心位置を検出し、中心位置を基準として楕円形状から各経線方向の屈折誤差が求める。そして、制御部80は、各経線方向の測定結果に基づいて眼屈折値、S(球面度数)、C(柱面度数)、A(乱視軸角度)を測定し、結果をモニタ85に表示する。
【0057】
上記のような実施形態によれば、従来のようなモータ機構やプーリが不要となり、光束偏向部材を回転駆動させる構成を小型化できる。これは、特に、手持型がん屈折力測定装置に有効となる。
【0058】
さらに、上記ベアリング71、磁石73、及びヨーク74によって、光束偏向部材を所定の回転軸(光軸l1)を中心に安定して回転できるため、回転動作以外による意図しない光軸ずれを抑制できる。これによって、測定エラーや誤った測定結果が算出されることを防止できる。
【0059】
これは、特に、手ぶれの振動によってプリズムが意図しない方向に動いてしまい、意図しない光軸ずれが頻繁に生じるような手持型眼科装置において有用である。すなわち、手ぶれの原因による光軸ずれと、プリズムが安定して回転しないことによる光軸ずれがともに生じるような眼科装置では、測定が特に困難となるため、上記のような構成が特に有用である。なお、追加的に、手ぶれによる光軸ずれを補正するための手ぶれ補正機構を設けることによって、手持型装置における意図しない光軸ずれをさらに軽減でき、測定精度を安定できる。
【0060】
なお、本実施形態においては、手持型眼科装置を例として説明をしたがこれに限定されない。手持型眼科装置でなく、据置型眼科装置であっても、装置が不安定な場所に置かれる場合に備えて、本発明の適用がありうる。
【0061】
なお、本実施形態においては、固定部60bにヨーク74と磁石73が設けられた構成としたがこれに限定されない。ヨーク74と磁石73によって、回転軸方向に関して可動部60aと固定部60bが近づく方向に吸着させる構成であればよい。例えば、ヨーク74と磁石73が可動部60aに設けられた構成であってもよい。この場合、固定部60bにヨーク74と磁石73によって吸着される構成(例えば、固定部60bの一部を鉄製とする)が必要となる。
【0062】
なお、本実施形態においては、駆動磁石64をコア79及びコイル77の外側に設ける構成としたが、これに限定されない。駆動磁石64とコア79及びコイル77の配置位置は、駆動磁石64とコア79及びコイル77によって、プリズム回転ユニット60が回転駆動を行うことができる構成であればよい。例えば、コア79及びコイル77を可動部60aのカバー63aの内側に設け、ハウジング75の外側に駆動磁石を設けた構成であってもよい。
【0063】
なお、本実施形態において、プリズム回転ユニット60の回転量を検出することが可能なロータリーエンコーダを設ける構成としてもよい。これによって、回転量が検出できるようになるため、ロータリーエンコーダによって回転量を確認しながら、コイル77に通電する電流を調整することによって、回転量を調整することができる。
【0064】
なお、駆動磁石64については、駆動磁石64を構成する6極が1つの磁石で構成されていてもよいし、複数の磁石の組み合わせによって構成されていてもよい。また、リング形状でなくてもよく、複数の磁石を各々に所定間隔で配置していく構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態に係る手持型眼屈折力測定装置の一例を示す外観側方図である。
【図2】本体に収納された光学系を正面から見た光学配置図である。
【図3】本体に収納された電気・制御系を示すブロック図である。
【図4】プリズム回転ユニットの構成について説明するための正面図である。
【図5】プリズム回転ユニットを横方向から見た断面図である。
【図6】プリズム回転ユニットを可動部と固定部に分けた図である。
【図7】プリズム回転ユニットの回転駆動を示す模式図である。
【図8】測定の際に撮像素子に撮像されるリング像である。
【符号の説明】
【0066】
10 検眼光学系
45 第1投影光学系
46 第2投影光学系
50 観察光学系
60 プリズム回転ユニット
60a 可動部
60b 固定部
61 プリズム
62 レンズフォルダ
63 カバー
64 駆動磁石
71 ベアリング
73 磁石
74 ヨーク
75 ハウジング
77 コイル
79 コア
80 制御部
81 メモリ
85 モニタ
100 装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼眼底に測定指標を投光する投光光学系と、前記測定指標の眼底での反射により形成される指標像を受光する受光光学系と、その指標像を受光して眼屈折力を測定する眼屈折力測定光学系を有する眼屈折力測定装置において、
前記眼屈折力測定光学系の光路に配置され、かつ瞳孔と共役位置から外れた位置に配置された光束偏向部材と、前記光束偏向部材が内周面に設けられた回転子と、前記回転子の外周面にベアリングを介して設けられ前記測定光学系の光軸を中心に前記回転子を回転させるための固定子と、前記回転子を前記固定子に対して一定方向に連続的に回転させる駆動制御手段と、前記回転子の回転時において前記光軸方向に関して回転子と固定子が接近する方向に吸着させるための吸着用磁石と、を備える回転駆動ユニットを備えることを特徴とする眼屈折力測定装置。
【請求項2】
前記磁石の近傍に配置され、前記磁石の吸着力を増強させるためのヨークを備える請求項1の眼屈折力測定装置。
【請求項3】
前記回転子は、該光束偏向部材を保持するフォルダと,前記フォルダに連結され固定子を外側から覆うカバーと,カバーの内側に設けられた駆動磁石と,を有し,
前記固定子は、コイルが巻かれたコアが外側に配置され、前記磁石及びヨークが内側に配置されたハウジングを有し、
前記駆動制御手段は、前記コイルに駆動電流を通電させることによって、前記駆動磁石を回転駆動させ、前記測定光軸を中心として前記光束偏向部材を連続的に回転させる請求項2のいずれかの眼屈折力測定装置。
【請求項4】
手持型の眼屈折力測定装置である請求項1〜3のいずれかの眼屈折力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−70943(P2013−70943A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214240(P2011−214240)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)