説明

眼特性の測定方法及び眼科装置

【課題】被検眼の角膜の頂点と瞳孔の中心とが偏心している場合でも、角膜形状の測定から眼屈折力の測定までの一連の測定をスムーズに行うことができる眼科装置を提供する。
【解決手段】本発明の眼科装置は、被検眼Eの角膜Cの頂点Pに装置本体12の光軸をアライメントするステップ、角膜Cの頂点Pに対する装置本体12のアライメントが完了したことを判断して角膜に角膜形状測定用リング状指標を投影するステップ、角膜形状測定用リング状指標の像を受像して角膜形状を演算するステップ、角膜形状測定用リング状指標の像の中心部位から放射方向に各画像を走査して被検眼Eの瞳孔Pdの縁Pdxの各座標を求め、各座標から被検眼の瞳孔の中心を推定するステップ、求められた瞳孔の推定中心PdO’と角膜形状測定用リング状指標の中心部位との偏差を演算するステップ、得られた偏差が所定値以上のときに装置本体の光軸が推定中心PdO’に一致するように装置本体を駆動するステップを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜形状の測定と眼屈折力との測定とを行うことが可能な眼特性の測定方法及び眼科装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、眼特性としての角膜形状の測定と眼屈折力との測定とを行うことが可能な眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このものによれば、角膜形状の測定と眼屈折力との測定とを一台の器械で行うことができる。
【0003】
また、眼を照明して、瞳孔中心を推定する技術も知られている(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−189624号公報
【特許文献2】特開2003−144388号公報
【特許文献3】特開平6−142054号公報
【特許文献4】特開平6−148508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の角膜形状の測定と眼屈折力との測定とを一台の器械で行う眼科装置では、例えば、図1に示すように、被検眼Eの角膜Cの頂点Pに対して装置本体1の主光軸O1をアライメントして、図2に示すように、角膜Cに角膜形状測定用リング状指標Q1を投影することにより角膜Cの形状を測定している。
【0006】
ついで、図3に示すように、眼底Efに眼屈折力測定用リング状指標Q2を投影することにより被検眼Eの眼屈折力を測定している。その測定の詳細については、例えば、特許2937373号公報に記載されている。
【0007】
ところが、患者には、図4に示すように、被検眼Eの角膜Cの頂点Pと、被検眼Eの瞳孔Pdの中心PdOとがずれている人がいる。
この種の患者に対して、図4に示すように、被検眼Eの角膜Cの頂点Pに装置本体1の主光軸O1を合わせるアライメントを行って、角膜形状測定用リング状指標Q1を投影することにより角膜Cの形状を測定した後、引き続き、図5に示すように、眼屈折力測定用リング状指標Q2を投影することにすると、眼屈折力測定用リング状指標Q2の一部が斜線で示すように虹彩Ehにより遮断され、眼屈折力測定用リング状指標Q2の一部が眼底Efに投影されないことが起こり得る。
なお、符号Pdxは瞳孔の縁を示している。
【0008】
そこで、このような場合には、検者はやむなく手動操作により装置本体1の主光軸O1を瞳孔Pdの中心PdOに一致させて、眼屈折力の測定を行っている。
このため、被検眼Eの角膜Cの頂点Pと瞳孔Pdの瞳孔中心PdOとがずれている患者の場合には、角膜形状の測定から眼屈折力の測定までの一連の測定をスムーズに行うことができないという不便がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、被検眼Eの角膜Cの頂点Pと瞳孔Pdの中心PdOとが偏心している場合であっても、角膜形状の測定から眼屈折力の測定までの一連の測定をスムーズに行うことができる眼科装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の眼科装置は、被検眼の角膜の頂点に装置本体の光軸をアライメントするステップ、角膜頂点に対する装置本体のアライメントが完了したことを判断して角膜に角膜形状測定用リング状指標を投影するステップ、角膜形状測定用リング状指標の像を受像して角膜形状を演算するステップ、角膜形状測定用リング状指標の像の中心部位から放射方向に各画像を走査して被検眼の瞳孔の縁の各座標を求め、各座標から被検眼の瞳孔の中心を推定するステップ、求められた瞳孔の推定中心と角膜形状測定用リング状指標の像の中心部位との偏差を演算するステップ、得られた偏差が所定値以上のときに装置本体の光軸が推定中心に一致するように装置本体を駆動するステップを実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検眼の角膜の頂点と瞳孔の瞳孔中心とが偏心している場合であっても、角膜形状の測定から眼屈折力の測定までの一連の測定をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、被検眼に対する眼科装置の装置本体のアライメントの一例を示す模式図である。
【図2】図2は、角膜形状測定用リング状指標が投影された被検眼の前眼部像を示す図である。
【図3】図3は、眼屈折力測定用リング状指標が投影された被検眼の眼底像を示す図である。
【図4】図4は、瞳孔の瞳孔中心と角膜の頂点とが偏心している被検眼の角膜の頂点に装置本体をアライメントして角膜形状測定用リング指標が投影された前眼部像を示す図である。
【図5】図5は、瞳孔中心と角膜の頂点とが偏心している被検眼の角膜の頂点に装置本体をアライメントして眼屈折力測定用リング状指標が投影された前眼部像を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施例に係わる眼科装置の外観の一例を示す図である。
【図7】図7は、図6に示すベース内に配置されている駆動機構の一例を示す図である。
【図8】図8は、図6に示す眼科装置の模式図である。
【図9】図9は、図8に示す角膜形状・眼屈折力測定部の光学系の一例を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す信号処理部の一例を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の実施例に係る眼科装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、角膜の頂点を原点とする放射方向への画像走査による瞳孔の縁の検出の一例を示す説明図である。
【図13】図13は、放射方向の画像走査により得られた放射方向の輝度分布の一例を示す説明図である。
【図14】図14は、瞳孔の縁を求める画像処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
図6は、本発明の実施例に係わる眼科装置の外観図である。この図6において、符号10は眼科装置を示す。この眼科装置10は、ベース11、装置本体としての測定ヘッド12、モニタ部としての液晶ディスプレイ13、コントロールレバー14、測定スイッチ15、顎受け16、額当て17を有する。その液晶ディスプレイ13は検者の側に設けられ、顎受け16、額当て17は被検者(患者)の側に設けられている。
【0014】
被検者は、顎を顎受け16に載せ、額当て17に額を当接させた状態で検査を受ける。
測定ヘッド12は、ベース11に対して上下方向(Y方向)・前後方向(Z方向)・左右方向(X方向)に移動可能な構成とされている。測定ヘッド12の駆動は後述する駆動機構によって行われる。
【0015】
液晶ディスプレイ13には、被検眼の前眼部像等の画像が表示される。また、検査結果等も表示される。コントロールレバー14は測定ヘッド12を手動で駆動するときに用いられる。なお、液晶ディスプレイ13をタッチパネル式の構成として、コントロールレバー14を設けない構成とすることもできる。
駆動機構はベース11内に設けられている。その駆動機構は図7に示すように底板20を有する。底板20はベース11に固定され、底板20には支持部21が設けられている。
【0016】
支持部21は中空部を有し、この中空部21には支柱22が配設されている。また、底板20には駆動モータ(駆動部)23が固定されている。駆動モータ23は図示を略す駆動力伝達機構を介して支柱22を上下方向に駆動する。支柱22にはステージ24が固着されている。ステージ24は支柱22と共に上下動される。
【0017】
ステージ24には一対の前後方向レール25が設けられている。前後方向レール25にはステージ26が設けられている。ステージ24には駆動モータ(駆動部)27が設けられている。駆動モータ27は、図示を略す駆動力伝達機構を介して駆動力をステージ26に伝達し、これにより、ステージ26は被検者に対して前後方向(Z方向)に駆動される。
【0018】
ステージ26にはベース11に対するステージ29の左右方向器械中心位置Oを検出する検出センサSOが設けられている。この検出センサSOは例えばフォトカプラから構成されている。この検出センサSOは、装置本体を初期位置にセットする役割を果たす。
【0019】
ステージ26には左右方向レール28が設けられている。左右方向レール28にはステージ29が設けられている。ステージ26には駆動モータ(駆動部)30が設けられている。駆動モータ30は、図示を略す駆動力伝達機構を介して駆動力をステージ29に伝達する。これにより、ステージ29は被検者に対して左右方向に駆動される。
【0020】
測定ヘッド12には、図8に模式的に示すように、角膜形状・眼屈折力測定部12Aと眼圧測定部12Bとが設けられている。角膜形状・眼屈折力測定部12Aは、被検眼Eの角膜Cの形状と被検眼Eの眼屈折力(球面度数、乱視度数、乱視軸角度等)とを測定する際に用いられる。眼圧測定部12Bは、被検眼Eの眼圧を測定する際に用いられる。角膜形状・眼屈折力測定部12Aは、例えば、眼圧測定部12Bの上部に設けられている。
【0021】
(角膜形状・眼屈折力測定部12Aの構成)
角膜形状・眼屈折力測定部12Aは、図9に示す光学系を有する。この光学系は図示を略すケース内にコンパクトにまとめて配置されている。なお、眼圧測定部12Bの光学系の構成については、本発明とは直接関連がないので説明を省略する。
【0022】
その図9において、41は被検眼Eを固視・雲霧させるために視標を眼底Efに投影する固視標投影光学系、42は被検眼Eの前眼部Erを観察する観察光学系、43は照準スケールを二次元固体撮像素子としてのCCD44に投影するスケール投影光学系、45は被検眼Eの眼屈折力を測定するための眼屈折力測定用リング状指標としてのパターン光束を眼底Efに投影する眼屈折力測定用リング状指標投影光学系、46は眼底Efから反射された眼屈折力測定用リング状指標像をCCD44に受光させる受光光学系、47は光軸と垂直な方向のアライメント状態を検出するための指標光を被検眼に向けて投影するアライメント光投影系、49は信号処理部である。なお、この光学系は、被検眼Eと装置本体(測定ヘッド12)との間の作動距離WOを検出するための図示を略す作動距離検出光学系を有している。
【0023】
その眼屈折力測定用リング状指標投影光学系45、受光光学系46は、観察光学系42、後述する角膜形状測定用リング状指標投影光源と共に、角膜形状・眼屈折力測定光学系を構成している。
【0024】
固視標投影光学系41は、固視標光源51、コリメータレンズ52、指標板53、リレーレンズ54、ミラー55、リレーレンズ56、ダイクロイックミラー57、ダイクロイックミラー58、対物レンズ59を備えている。
【0025】
固視標光源51から出射された可視光は、コリメータレンズ52によって平行光束とされた後、指標板53を透過する。指標板53には、被検眼Eを固視・雲霧させるためのターゲットが設けられている。
【0026】
そのターゲット光束は、リレーレンズ54を透過してミラー55により反射され、リレーレンズ56を経てダイクロイックミラー57に導かれかつこのミラー55により反射されて光学系の主光軸O1に導かれ、ダイクロイックミラー58を透過した後、対物レンズ59を経て被検眼Eに導かれる。
【0027】
固視標光源51、コリメータレンズ52、指標板53は、指標ユニットU10を構成し、指標ユニットU10は、被検眼Eを固視・雲霧させるために、駆動モータPM1によって、固視標投影光学系41の光軸O2に沿って一体に移動可能とされている。
【0028】
観察光学系42は、図示を略す照明光源、対物レンズ59、ダイクロイックミラー58、絞り61’を有するリレーレンズ62、ミラー63、リレーレンズ64、ダイクロイックミラー65、結像レンズ66、二次元固体撮像素子としてのCCD44を有する。
【0029】
照明光源から出射された照明光束は、被検眼Eの前眼部Erを照明する。前眼部Erで反射された照明光束は、対物レンズ59を経てダイクロイックミラー58に反射され、リレーレンズ62の絞り61’を通過し、ミラー63により反射された後、リレーレンズ64、ダイクロイックミラー65を透過して、結像レンズ66によりCCD44に導かれ、CCD44の撮像面に前眼部像Er’が形成される。
【0030】
スケール投影光学系43は、投影光源71、照準スケールを有するコリメータレンズ72、リレーレンズ73、ダイクロイックミラー58、絞り61’を有するリレーレンズ62、ミラー63、リレーレンズ64、ダイクロイックミラー65、結像レンズ66、CCD44を有する。
【0031】
投影光源71から出射された光束は、コリメータレンズ72を透過する際に平行光束とされ、リレーレンズ73、ダイクロイックミラー58、絞り61’を有するリレーレンズ62を経てミラー63により反射され、このリレーレンズ64、ダイクロイックミラー65を経て結像レンズ66によってCCD44に結像される。
【0032】
CCD44からの映像信号は、信号処理部49を介して液晶ディスプレイ13に入力され、液晶ディスプレイ13に前眼部像Er’が表示されると共にアライメントマークALM1、ALM2が表示される。なお、アライメント完了後の屈折力測定時には、照明光源、投影光源71は消灯される。
【0033】
眼屈折力測定用リング状指標投影光学系45は、眼屈折力測定用光源81、コリメータレンズ82、円錐プリズム83、リング指標板84、リレーレンズ85、ミラー86、リレーレンズ87、穴空きプリズム88、ダイクロイックミラー57、ダイクロイックミラー58、対物レンズ59を備えている。
【0034】
眼屈折力測定用光源81とリング指標板84とは光学的に共役であり、リング指標板84と被検眼Eの眼底Efとは光学的に共役な位置に配置されている。また、眼屈折力測定用光源81、コリメータレンズ82、円錐プリズム83、リング指標板84は、指標ユニットU40を構成し、この指標ユニットU40は、駆動モータPM2により光軸O3に沿って進退駆動される。
【0035】
眼屈折力測定用光源81から出射された光束は、コリメータレンズ82によって平行光束とされ、円錐プリズム83を透過してリング指標板84に導かれる。その光束は、このリング指標板84に形成されたリング状のパターン部分を透過して眼屈折力測定用リング状指標としてのパターン光束となる。
【0036】
このパターン光束は、リレーレンズ85を透過した後、ミラー86により反射され、リレーレンズ87を透過して穴空きプリズム88の反射面によって反射され、主光軸Olに沿つてダイクロイックミラー57に導かれ、ダイクロイックミラー57、58を透過した後、対物レンズ59により眼底Efに結像される。
【0037】
受光光学系46は、対物レンズ59、ダイクロイックミラー58、57、穴空きプリズム88の穴部88a、リレーレンズ91、ミラー92、リレーレンズ93、ミラー94、合焦レンズ95、ミラー96、ダイクロイックミラー65、結像レンズ66、CCD44を有する。合焦レンズ95は、指標ユニットU40と連動して、光軸O4に沿って移動可能とされている。
【0038】
眼屈折力測定用リング状指標投影光学系45によって眼底Efに導かれかつこの眼底Efで反射されたパターン反射光束は、対物レンズ59により集光され、ダイクロイックミラー58、57を透過し、穴空きプリズム88の穴部88aへと導かれ、この穴部88aを通過する。
【0039】
この穴部88aを通過したパターン反射光束は、リレーレンズ91を透過してミラー92によって反射され、リレーレンズ93を透過してミラー94により反射され、合焦レンズ95を透過してミラー96、ダイクロイックミラー65により反射され、結像レンズ66によってCCD44に導かれる。これにより、CCD44に眼屈折力測定用リング状指標Q2の像が結像される。
【0040】
アライメント光投影系47は、LED101、ピンホール102、コリメータレンズ103、ハーフミラー104を備え、被検眼Eの角膜Cに向けてアライメント指標光束を投影することにより被検眼Eに対して装置本体を自動的にアライメントする機能を有する。
【0041】
被検眼Eに向けて平行光として投影されたアライメント指標光束は、被検眼Eの角膜Cにおいて反射され、観察光学系42によりCCD44上にアライメント指標像としての輝点像Tが投影される。この輝点像TがアライメントマークALM1内に位置すると、アライメント完了と判断される。
【0042】
眼屈折力測定用リング状指標投影光学系45には、対物レンズ59の前方側に主光軸O1に関して同心状に有限距離から角膜形状測定用リング状指標を投影する角膜形状測定用リング状指標投影光源61A、61B、61Cが設けられている。
【0043】
これらの3つの角膜形状測定用リング状指標投影光源61A、61B、61Cは、被検眼Eの角膜Cに投影されて、角膜Cに角膜形状測定用リング状指標Q1を形成する。
その角膜形状測定用リング状指標Q1を形成する光束は、被検眼Eの角膜Cで反射されて、観察光学系42によりCCD44上に結像される。信号処理部49は、このCCD44からの出力を信号処理して角膜形状測定用リング状指標の像61A’、61B’、61C’(Q1)を液晶ディスプレイ13に表示させる。
【0044】
信号処理部49は、図10に示すように、制御演算部110と、A/D変換部112と、フレームメモリ113と、デジタルアナログ変換部114とを有する。その制御演算部110は、CPUと公知の最小値フィルター処理部115を有する。最小値フィルター処理部115は瞳孔Pdの縁Pdxを検出するために暗い画素のコントラストを強調する機能を有する。そのCPUには、図11に示すフローチャートを実行するプログラムが組み込まれている。
【0045】
その制御演算部110は、また、パルスモータPM1、PM2を駆動制御すると共に、駆動モータ23、27、30を駆動制御する。これにより、装置本体(測定ヘッド12)がX、Y、Z方向に駆動される。また、制御演算部110は、各種光源51、61A〜61C、71、81、LED101の点灯制御を行うため、図示を略すドライバに接続されている。
【0046】
その制御演算部110は、角膜形状の測定を実行すると共に、眼屈折力の測定を実行させる。なお、制御演算部110による演算結果等はRAM(図示を略す)に記憶される。
【0047】
更に、制御演算部110は、CCD44に受光された輝点像Tの受光位置を演算し、この演算結果に基づき、主光軸O1と被検眼Eの角膜Cの頂点Pとの間のズレ量Δxy、適正作動距離WOからのズレ量Δzを演算する。
左右方向器械中心Oが予め既知であるので、左右方向器械中心Oを原点として輝点像Tと主光軸O1との位置座標は演算により求めることが可能である。
【0048】
また、制御演算部110は、ズレ量Δxy、Δzが閾値Δxy0、Δz0以下となった場合に(アライメントマークALM1に輝点像Tが位置した場合に)、角膜形状測定用リング状指標投影光源61A〜61Cを発光させる駆動信号を出力する。なお、閾値Δxy0、Δz0は信号処理部49のRAM(図示を略す)に記憶されている。すなわち、制御演算部110は、被検眼Eに対して装置本体(測定ヘッド12)を自動的にアライメントする機能を有する。
【0049】
更に、制御演算部110は、瞳孔Pdの後述する推定中心PdO’と装置本体の主光軸O1とが一致したときに、眼屈折力測定用光源81を発光させる駆動信号を出力する。すなわち、制御演算部110は、推定中心PdO’に対して装置本体(測定ヘッド12)を自動的にアライメントする機能をも有する。
【0050】
以下、図11に示すフローチャートを参照しつつ、本発明の実施例を詳細に説明する。
電源スイッチがONにされ(S1)、図示を略す照明光源が点灯されると、図9に示すように、前眼部像Er’が液晶ディスプレイ13の画面に表示される。
【0051】
ついで、検者は、液晶ディスプレイ13の画面に表示されているアライメントマークALM2に被検眼Eの瞳孔Pdが位置するように、コントロールレバー14を手動操作して装置本体を前後左右に移動させて、被検眼Eに対する装置本体の概略アライメントを行う(S.2)。
【0052】
この概略のアライメントが終了すると、輝点像Tが液晶ディスプレイ13の画面に映し出される。この後、アライメント光投影系47、作動距離検出光学系(図示を略す)に基づくアライメント検出が開始される。
【0053】
これにより、装置本体(測定ヘッド12)がX,Y,Z方向に駆動され、自動アライメント調整が開始される。すなわち、装置本体(測定ヘッド12)は、その被検眼Eに対するズレ量Δxy、ΔzがそれぞれΔxy0、Δz0以下となるようにX、Y、Z方向に駆動制御される。これにより、輝点像(アライメント指標像)TがアライメントマークALM1内に位置すると、被検眼Eの角膜Cの頂点に対する自動アライメントが完了する(S.3、S.4)。
【0054】
この自動アライメントが完了すると、角膜形状測定用リング状指標光源61A〜61Cが点灯され、角膜形状測定用リング状指標Q1が角膜Cに投影される(S.5)。
信号処理部49は、その角膜Cに投影された角膜形状測定用リング状指標Q1の像61A’〜61C’に基づいて、角膜Cの形状を測定する(S.6)。その角膜形状Cの測定の詳細については、公知であるのでその説明は省略する。
【0055】
ついで、制御演算部110は、角膜形状測定用リング状指標Q1の像61A’〜61C’の中心部位から、図12に示すように、放射方向に前眼部像Er’を走査する。ここでは、制御演算部110は、輝点像Tを中心部位にして輝点像Tの周回り方向に等角度毎に放射方向に前眼部像Er’を走査する。
【0056】
制御演算部110は、この放射方向の走査により、輝点像Tに存在する画素を原点O’(図13参照)としてその放射方向に存在する各画素の輝度を取得する。
例えば、制御演算部110は、放射方向Mの走査により、図13に示す輝度分布を得る。
その図13において、符号T’は、輝点像Tに対応する輝度分布であり、符号61A”は角膜形状測定用リング状指標Q1の像61A’に対応する輝度分布であり、符号61B”は角膜形状測定用リング状指標Q1の像61B’に対応する輝度分布であり、符号61C”は角膜形状測定用リング状指標Q1の像61C’に対応する輝度分布である。
【0057】
ここで、輝度分布のピーク値が原点O’から遠ざかるに伴って漸次低くなっているのは、CCD44に受光される光量が角膜Cの頂点Pから遠ざかるに伴って、少なくなるからである。
【0058】
また瞳孔Pdの縁Pdxの部分で、輝度の光量が増加しているのは、瞳孔Pdの部分はほぼ真っ暗であるのに対して、瞳孔Pdの縁Pdxよりも外側には虹彩Ehが存在するため、反射光量が増大するからである。
【0059】
制御演算部110は、このようにして取得された各画素の輝度に対して最小値フィルター処理を行う。この最小値フィルター処理により、画像の暗い部分がより暗く強調処理され、図14に示すように、局所的に輝度の高い輝度分布が除去される。
ついで、制御演算部110は、閾値Vhに基づいて、瞳孔Pdの縁Pdxの座標M(X、Y)を求める。
【0060】
制御演算部110は、その座標M(X、Y)を輝点像Tの周回り方向に少なくとも3つ以上取得することにより、仮想円を求め、この仮想円の中心を瞳孔Pdの推定中心PdO’として取得する(S.7、S.8)。
【0061】
ついで、制御演算部110は、この推定中心PdO’と輝点像T(角膜Cの頂点P)との差を演算する。すなわち、推定中心PdO’のX方向座標位置と輝点像TのX方向座標位置との差、推定中心PdO’のY方向座標位置と輝点像TのY方向座標位置との差を求める(S.9)。
【0062】
ついで、この推定中心PdO’と輝点像Tとの差が所定値以上のときには(S.10)、制御演算部110は、装置本体の主光軸O1が推定中心PdO’に一致するように装置本体を駆動する(S.11)。ついで、装置本体の主光軸O1が推定中心PdO’に一致したか否かを判断する(S.12)。
【0063】
ついで、制御演算部110は、推定中心PdO’と輝点像Tとの差が所定値よりも小さいとき、又は、推定中心PdO’に装置本体の主光軸O1が一致したとき、被検眼Eが正視眼であると仮定した場合の眼底共役位置にリング指標板84が位置するようにユニットU40を駆動して眼屈折力測定用リング状指標投影光源81を発光させる(S.13)。
【0064】
これにより、被検眼Eの眼底Efに眼屈折力測定用リング状指標Q2が図3に示すように投影され、その結果、CCD44上に眼屈折力測定用リング状指標Q2の像が結像される。CCD44からの映像信号は、A/D変換器112によりデジタル値に変換され、フレームメモリ113に記憶される。制御演算部110は、フレームメモリ113に記憶された画像データに基づき、眼屈折力測定用リング状指標Q2の像を2値化処理により抽出する。
【0065】
その結果、眼屈折力としての球面度数、円柱度数、軸角度が周知の手法により測定される。この眼屈折力測定部の構成は特開2002−253506号公報に開示のものと同一であるが、この構成に限られるものではない。
【0066】
以上説明したように、本発明の実施例に係る制御演算部110は、被検眼Eの角膜Cの頂点Pに測定ヘッド(装置本体)12の光軸をアライメントするアライメント実行処理ステップと、角膜Cの頂点Pに対する装置本体のアライメントが完了したことを判断して角膜に角膜形状測定用リング状指標Q1を投影する角膜形状リング状指標投影処理ステップと、角膜形状測定用リング状指標Q1の像を受像して角膜形状を演算する角膜形状演算処理ステップと、角膜形状測定用リング状指標Q1の像の中心部位から放射方向に画像を走査して被検眼Eの瞳孔Pdの縁Pdxの各座標を求め、この各座標から被検眼Eの瞳孔Pdの中心PdOを推定する推定処理ステップと、この推定ステップにより求められた瞳孔Pdの推定中心PdO’と角膜形状測定用リング状指標Q1の像の中心部位との偏差を演算する偏差演算処理ステップと、偏差演算ステップにより得られた偏差が所定値以上のときに装置本体12の光軸が推定中心PdO’に一致するように装置本体を駆動する駆動処理ステップとを実行する。
【0067】
ついで、制御演算部110は、装置本体12の駆動処理後の装置本体12の光軸が推定中心PdO’に一致したときに、被検眼Eの眼底Efに眼屈折力測定用リング状指標Q2を投影することにより、眼屈折力を測定する眼屈折力演算処理ステップを実行する。
【0068】
角膜形状測定用リング状指標Q1の像の中心部位は角膜Cの頂点Pに形成された輝点像Tであることが望ましいが、角膜形状測定用リング状指標Q1の像の形状から中心部位を求め、この中心部位を原点として放射方向に画像を走査して瞳孔Pdの縁Pdxの座標を求めても良い。
【0069】
この実施例によれば、角膜形状の演算処理の実行中に瞳孔Pdの中心を推定し、この瞳孔Pdの推定中心に向けて装置本体12を自動的に駆動するようにしたから、被検眼Eの角膜Cの頂点Pと瞳孔Pdの中心PdOとが偏心している患者について角膜形状の測定から眼屈折力の測定までの一連の測定を行う場合であっても、その測定をスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
12…測定ヘッド(装置本体)
C…角膜
P…頂点
Pd…瞳孔
PdO’…推定中心
Pdx…瞳孔の縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜の頂点に装置本体の光軸をアライメントするアライメント実行処理ステップと、
前記角膜頂点に対する装置本体のアライメントが完了したことを判断して前記角膜に角膜形状測定用リング状指標を投影する角膜形状リング状指標投影処理ステップと、
前記角膜形状測定用リング状指標の像を受像して角膜形状を演算する角膜形状演算処理ステップと、
前記角膜形状測定用リング状指標の像の中心部位から放射方向に各画像を走査して前記被検眼の瞳孔の縁の各座標を求め、該各座標から前記被検眼の瞳孔の中心を推定する推定処理ステップと、
該推定ステップにより求められた瞳孔の推定中心と前記角膜形状測定用リング状指標の像の中心部位との偏差を演算する偏差演算処理ステップと、
該偏差演算ステップにより得られた偏差が所定値以上のときに前記装置本体の光軸が前記推定中心に一致するように前記装置本体を駆動する駆動処理ステップとを含むことを特徴とする眼特性の測定方法。
【請求項2】
前記装置本体の駆動処理後の該装置本体の光軸が前記推定中心に一致したときに、前記被検眼の眼底に眼屈折力測定用リング状指標を投影することにより、眼屈折力を測定する眼屈折力演算処理ステップとを含むことを特徴とする眼特性の測定方法。
【請求項3】
前記角膜形状測定用リング状指標の中心部位が前記角膜の頂点に形成された輝点像であることを特徴とする請求項2に記載の眼特性の測定方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の処理ステップを実行可能な処理プログラムが内蔵された処理回路を備えた眼科装置。
【請求項5】
前記処理プログラムが前記瞳孔の縁を検出するために画像の暗い部分を強調する最小値フィルターを備えていることを特徴とする請求項4に記載の眼科装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−22122(P2013−22122A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157791(P2011−157791)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)