説明

眼球周りの流体の局部的な集中を改善する装置

【課題】眼球周りの液体の局部的な集中を改善する装置を提供する。
【解決手段】液体を受け入れるように構成された受入れ部22、及び該受入れ部22から前記液体を受入れるように構成された液体通路24を含む上部20と、眼球の部分でシールを形成すると共に前記液体通路24から流れ出る前記液体を受入れるように構成された受渡し部36を含み、該受渡し部36の縁部によって規定された境界線の内側に前記液体を保持する下部30と、前記上部20を前記下部30に密封状態に且つ着脱可能に接続する接続部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年3月24日に出願された米国仮出願番号61/064,730及び2008年3月24日に出願された米国仮出願番号61/064,731の優先権を主張し、その全内容が参照文献として本出願に含まれるものである。
【0002】
本発明は、眼球の周囲で使用する装置に関し、より詳細には、眼球周りの流体の局部的な集中を改善する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
〔角膜屈折矯正法〕
角膜屈折矯正法(オルソケラトロジー;Orthokeratology)は、目の屈折障害を改善する外科手術を伴わない方法であり、例えばレーザー眼科手術に代わるものである。具体的には、角膜屈折矯正法は、患者の角膜の湾曲を変形させる治療法である。従来の角膜屈折矯正法は、少しずつ角膜を変形させて、前部湾曲をより球状に近づけるよう意図した一連の多焦点コンタクトレンズ(progressive contact lenses)の使用を含んでいる。その方法は、一般に、2組から複数組の特別に設計されたコンタクトレンズの取り付けを含んでおり、従来は角膜を変形させるのに約3〜6ヶ月かかっていた。この方法は、近視と乱視を軽減し又は取除くことが実証されており、それ故、自然視を改善し、正視(視覚に屈折障害がない状態又は補正が必要でない状態)をもたらす。角膜屈折矯正用レンズの設計における最近の改善により、一層速やかに正視の状態にすることが可能となってきている。多くの場合、これは、1対の仕上げレンズ(end result lenses)を一晩着用することで達成され得る。
【0004】
角膜屈折矯正法の欠点は、変形された角膜組織がその元の湾曲の記憶を持ち続け、レンズが取除かれた後、緩んで元の湾曲に戻る傾向があるということである。したがって、角膜屈折矯正患者が最大の効果を得ようとする場合には、処方された保持用コンタクトレンズを時々着用して、その効果を安定させなければならない。保持用コンタクトレンズは、一般に、硬質なガス透過性材料で作られている。角膜屈折矯正の患者は、所望の効果を速やかに得るために、また、自分の日中の活動時にほぼ正視の状態の視力を得るために、夜間の保持用コンタクトレンズの着用を増やす。この手法の欠点は、角膜が元の形状に戻らないようにするために、保持用コンタクトレンズを毎晩着用する必要があるということである。
【0005】
〔角膜形成術(Corneoplasty)〕
この問題を解決するための関連手法は、正視の状態にすることを目的として所望の形状に一層容易に変形できるようにするために、角膜の柔軟剤を使用して一時的に角膜を軟化させることである。角膜形成術は、1回の通院で、又は数週間の期間を通して行われる3ステップの工程である。この3ステップの工程は、角膜柔軟剤を投与して角膜組織を軟化させる第1ステップと、角膜を覆うように硬質のコンタクトレンズを取り付けて目を正視の状態にする第2ステップと、安定化剤を投与する第3ステップとを含んでいる。その結果、角膜は変形し、硬質のコンタクトレンズによって決められた所望の形状に一致するようになる。角膜柔軟剤の投与は、より短期間でより大きな屈折障害を矯正するのに役立つ。
【0006】
しかしながら、整形用コンタクトレンズを視軸に対し正確に取り付けて角膜組織の変形を制御することは難しいということが判明している。いくつかの失敗した適用例においては、角膜形成術は、整形用コンタクトレンズの置き違えによる誤差が原因で乱視又は複視を引き起こした。さらに、3ステップの全てが1回の通院で行なわれるため、患者には、角膜組織の変形結果に対処する機会がない。患者は、上記工程の間に、「試して、様子を見る」こともできないし、よりよい結果達成を助けるべく臨床医を誘導することもできない。
【0007】
〔角膜構造〕
人間の角膜は、上皮、基質(ストロマ)及び内皮の3つの主要な層からなっている。角膜の厚さは、通常、500〜600μmであり、90%が基質である。上皮は約50μmの厚さであり、細胞間が密着結合している5〜6層の細胞を含んでおり、特に最初の2層は平らでプレート状の表面細胞である。次の2〜3層は、1列に並んだ円柱状の基底細胞を覆う翼状か又は多角形状の細胞を含んでいる。
【0008】
上皮は、特に、極性分子及びイオン性分子に対して透過障壁を形成する。イオン性分子及び親水性分子に関して、分子の大きさは、上皮を突き抜ける能力に影響する。そのような分子の透過性は、一般に、約500ダルトンの分子サイズまでに制限される(Liaw and Robinson, In “Ophthalmic Drug Delivery Systems” Ed. A.K. Mitra, Marcel Dekker, Inc. NY, 1993.参照)。対照的に、親油性分子は、容易に上皮を通過して吸収される。
【0009】
上皮の直ぐ下の障壁は、ボーマン膜である。ボーマン膜は、下層の無細胞基質(固有質)と上皮を分ける8〜14μm厚みの均質なシートである。
【0010】
基質は、200〜250層が交互に重なり合ったコラーゲン線維のラメラ(層)からなる。各ラメラは、約1μm厚み及び10〜25μmの幅である。基質は、70%の水を含んでおり、約500,000ダルトンよりも大きい分子の移動を妨げる。コラーゲン線維は、角膜構造の大部分を構成する。プロテオグリカン及び線維結合コラーゲンがコラーゲン線維に接続され、これにより、直径が制御され、また、基質の構造が安定される。線維に関係するプロテオグリカンは、低分子ロイシンリッチプロテオグリカン(SLRPs;small leucine-rich proteoglycans)と呼ばれるカテゴリーを含んでおり、デコリン(decorin)、バイグリカン(biglycan)、ケラトカン(keratocan)、ルミカン(lumican)、ミミカン(mimican)及びフィブロモジュリン(fibromodulin)を含んでいる。線維に関係するコラーゲンは、断続性三重螺旋を有する線維付随性コラーゲン分子(FACITs;fibril associated collagen molecules with interrupted triple helices)として知られるカテゴリーを包含し、VI型コラーゲン、X型コラーゲン、XII型コラーゲン、及びXIV型コラーゲンを含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
防腐剤(塩化ベンザルコニウム)、カチオン界面活性剤及びキレート剤(0.5%のEDTA)を含む特定の賦形剤の濃度を十分に高くすると、角膜の完全性が損なわれる場合がある。
【0012】
目に投与される流体の浸透を促進させる他の方法は、0.02%の塩化セチルピリジニウムを使用して上皮細胞の表層を破壊すること、及びジギトニンで上皮の最上層2層を剥離する角膜の前処理によって上皮層を取り除くことを含んでいる。さらに、他の浸透促進剤は、細胞骨格モジュレータとしてのサイトカラシンBを含んでいる。
【0013】
現在、非角膜浸透により、透過性の低い親水性分子の供給が行われている。非角膜吸収経路(角膜を経由しない吸収経路)では、強膜及び結膜を通過して眼内組織に浸透する必要がある。この手法は薬剤の角膜への供給手法としては非効率的である。なぜなら、薬剤が角膜強膜縁を越えて眼球の表面に浸透する場合、近くの毛細血管床によって吸収され、体循環によって移動されるからである。一般に、非角膜吸収に依存する点眼剤のうち房水に達するのは1%未満である。
【0014】
角膜吸収は、眼内用薬剤を供給するには比較的高効果な方法であるが、この投与経路は角膜上皮によって律速される。したがって、薬剤及び他の物質を角膜基質に効率良く眼内供給するためには、特に、より大きな親水性分子の、上皮透過(trans-epithelial penetration)を促進する必要がある。
【0015】
前述を考慮すると、眼球周りへの流体投与を改善する装置が必要である。この装置は、角膜基質へのあらゆる目薬の集中及び/又は受け渡しを増進するために使用されてもよい。
【0016】
開示された装置は、上記問題の1つ以上の解決を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、眼球周りの流体の局部的な集中を改善する装置について記述している。この装置は、流体を受け入れるように構成された受入れ部と、この受入れ部から上記流体を受け取るように構成された流体通路とを有する上部を含んでいてもよい。さらに、上記装置は、下部を含んでいてもよい。この下部は、眼球の部分でシールを形成すると共に流体通路から流れ出る流体を受け入れるように構成された受渡し部を含み、この受渡し部の縁部によって規定された境界線の内側に流体を保持してもよい。さらに、上記装置は、上部を下部に密封状態に且つ着脱可能に接続する接続部を含んでいてもよい。
【0018】
別の例示的な実施形態において、本開示は、眼球周りの流体の局部的な集中を改善する装置について記述している。この装置は、流体を受け入れるように構成された受入れ部と、この受入れ部から上記流体を受け取るように構成された第1の流体通路とを有する上部を含んでいてもよい。また、上記装置は、第1の流体通路から流体を受け取るように構成された第2の流体通路と、眼球の部分でシールを形成すると共に第2の流体通路から流れ出る流体を受け入れるように構成された受渡し部とを有し、この受渡し部の縁部によって規定された境界線の内側に流体を保持する下部を含んでいてもよい。さらに、上記装置は、装置の一部に接続され、装置を操作し及び装置に対する制御を維持するたハンドルを含んでもよい。
【0019】
また、別の例示的な実施形態において、本開示は、眼球周りの流体の局部的な集中を改善する装置について記述している。この装置は、流体を受け入れるように構成された受入れ部と、受入れ部から流体を受け入れるように構成された流体通路とを有する上部を含んでいてもよい。また、上記装置は、眼球の部分でシールを形成するように構成された受渡し部を有する下部を含んでいてもよい。また、受渡し部は、流体通路から流れ出る流体を受け入れると共に受渡し部の縁部によって規定された境界線の内側に流体を保持するように構成されてもよい。さらに、上記装置は、上部を下部に密封状態に且つ着脱可能に接続する接続部を含んでいてもよい。さらに、上記装置は、装置の一部に接続され、装置を操作し及び装置に対する制御を維持するたハンドルを含んでもよい。
【0020】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付の説明図と結び付けて考慮されれば、その説明が進むに連れ明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ある開示された実施形態と一致する例示的な装置の図である。
【図2】ある開示された実施形態と一致する図1の装置の例示的な上部の図である。
【図3】ある開示された実施形態と一致する図1の装置の例示的な下部の図である。
【図4a】ある開示された実施形態と一致する図2の例示的な上部の透視図である。
【図4b】ある開示された実施形態と一致する図2aの例示的な上部の透視図である。
【図4c】ある開示された実施形態と一致する図4aの例示的な上部の断面図である。
【図4d】ある開示された実施形態と一致する図4bの例示的な上部の断面図である。
【図5a】ある開示された実施形態と一致する図3の例示的な下部の透視図である。
【図5b】ある開示された実施形態と一致する図3の例示的な下部の透視図である。
【図5c】ある開示された実施形態と一致する図5bの例示的な下部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の開示は、眼球周りの流体の局部的な集中及び吸収を改善する装置を提供する。特に、開示された実施形態は、局部的な集中、及びその結果、角膜領域への医薬品の吸収を改善するように構成されている。本明細書では、流体という用語は、眼球に意図的に投与されるあらゆるガス状又は液状の薬剤を意味している。さらに、本明細書では、「薬剤」という用語は、化学的であろうと生物的であろうと、意図的に眼球に投与されるいかなる薬剤をも意味している。
【0023】
図1は、ある開示された実施形態と一致する例示的な装置10を開示している。図1に示すように、装置10は着脱可能に連結した上部20及び下部30を有している。上部20は、流体受入れ部22と、接続機構28を備えた流体通路24と、ハンドル26とを含んでいる。下部30は、接続機構32と、流体通路34と、受渡し部36とを含んでいる。装置10は、単一の製造ユニットで構成されてもよいし、又は複数に分かれた製造ユニットで構成されてもよい。図1に示すように、また図2及び図3に詳述するように、1つの例示的な実施形態において、装置10は、2つの別々に製造されたユニットで構成されている。
【0024】
図2は、装置10の例示的な上部20の透視図を開示している。図2に示すように、上部20は、流体が注入及び/又は挿入される流体受入れ部22と、流体受入れ部22から下部30に流体を通す流体通路24とを含む単一統合ユニットである。上部20は、ハンドル26も含んでいてもよい。1つの例示的な実施形態において、ハンドル26は、流体通路24の外部に接続されている。しかし、ハンドル26は、ハンドル26が装置10を操作し、且つ装置10に対する制御を維持できる上部20のいかなる部分に接続されてもよいと考えられる。1つの例示的な実施形態において、上部20の縁部は、全て丸みを帯びていてもよい。
【0025】
さらに、上部20は、上部20を下部30に着脱可能に接続する接続機構28を含んでいてもよい。例示的な接続機構は、例えば、ねじ込み形式、摩擦形式、加圧形式及び/又はジョイント形式等を含んでいてもよい。図2に示すように、接続機構28は、この接続機構28の1つ以上の突出部の外周29が下部30の対応する接続機構の1つ以上の貫入部の内周33にぴったりと嵌るように、下部30の対応する接続機構の1つ以上の酷似した貫入部に入る1つ以上の突出部から成っていてもよい(図3参照)。
【0026】
上部20は、医薬品及び/又は敏感な肉体組織との相互作用に適した如何なる材料で構成されてもよい。1つの例示的な実施形態においては、上部20は、医療グレードのABS,BASF社のテルルラン(Terluran;登録商標)HD-15及び/又は同等の材料から作られる。この材料は、如何なる色のものでも及び/又は、如何なる半透明度のものであってもよく、その半透明度は、例えば、完全に半透明、完全に不透明、又はその組合せなどである。図2に示すように、例示的な上部20は、次の特性を有している。即ち、部品体積=1.31cm3(0.08in3)、部品重量=1.36g(0.003lbm)及び部品密度=1.024g/cm3(0.037lbm/in3)である。
【0027】
図3は、装置10の例示的な下部30の透視図を開示している。図3に示すように、下部30は、下部30を上部20に着脱可能に連結する接続機構と受渡し部36とを含む単一統合ユニットで、この受渡し部36は、受渡し部36と眼球の部分(図示せず)との間を密封するように構成され、それによって受渡し部36の周囲で規定された領域内に流体を収めるようになっている。下部30は、上部20と接続を形成し、上部20の流体受入れ部22内の流体を、流体通路24,34を通して受け取ると共に下部30の受渡し部36の周囲で規定された眼球部分に上記受け取った流体を投与できるように構成されている。1つの例示的な実施形態において、下部30の縁部は、全て丸みを帯びていてもよい。
【0028】
下部30は、該下部30を上部20に着脱可能に連結する接続機構32を含んでいてもよい。例示的な接続機構は、例えば、ねじ込み形式、摩擦形式、加圧形式及び/又はジョイント形式等を含んでいてもよい。図3に示すように、接続機構32は、上部20の接続機構28(図2参照)の対応する突出部に酷似する1つ以上の貫入部から成っていてもよい。これにより、接続機構28の突出部は、接続機構32の1つ以上の酷似する貫入部に入ることが可能となり、その結果、接続機構28の1つ以上の突出部の外周29が接続機構32の1つ以上の貫入部の内周33にぴったりと嵌る。
【0029】
下部30は、医薬品及び/又は敏感な肉体組織との相互作用に適した如何なる材料で構成されてもよい。1つの例示的な実施形態において、下部30の材料は、熱可塑性エラストマーであるサントプレン(santoprene)8000TPV 8281-35 MEDであってよい。材料は、如何なる色のものでも又は、如何なる半透明度のものであってもよく、その半透明度は、例えば、完全に半透明、完全に不透明、又はその組合せなどである。図3に示すように、例示的な下部30は、次の特性を有している。即ち、部品体積=0.65cm3(0.04 in3)、部品重量=0.453g(0.001lbm)及び部品密度=0.913g/cm3(0.033lbm/in3)である。
【0030】
図4aは、ある開示された実施形態と一致する上部20の透視図を開示している。図4aに示すように、この透視図は、流体通路24に至る流体受入れ部22を上部から見下ろしたものである。図4aには、正確な寸法が開示されているが、これらの寸法は変わり得るということは考えられる。例えば、図4aに示す最も幅広の位置は4.26cm(1.678in)である。しかしながら、寸法は、本発明の範囲から逸脱しない限りは、より広くてもより狭くてもよい。
【0031】
図4bは、ある開示された実施形態に一致する上部20の透視図を開示している。図4bに示すように、この透視図は、上部20の正面からのものであり、ハンドル26の顔部分が見える。ハンドル26の内部領域40は、固形材料で作られていることを示しているが、内部領域40には全く材料が無いということは予想される。即ち、ハンドル26の内部領域40は、エッジ領域42によって囲まれた空間であってもよい。また、エッジ領域42は、つかんで使用し、上部20及び装置10が操作され及び/又は制御される。さらに、他のハンドル形状、大きさ及び寸法も考えられ、これらが制限を受けるのは、設計上及び/又は生産上の考慮によってのみである。
【0032】
開示された実施形態において、流体受入れ部22は、流体通路24側で狭く上部でより広くなっており、その結果、部分的に円錐状に形成されてもよい。図4bには、流体受入れ部22が角度35°で狭まっていることを開示しているが、流体受入れ部22から流体通路24への流体の流れという同じ結果が得られるならば、他の角度が使用されてもよいことは予想される。同様に、上部20についても他の形状、大きさ及び寸法も考えられ、これらが制限を受けるのは、設計上及び/又は生産上の考慮によってのみである。
【0033】
図4cは、図4aに対応する上部20の例示的な断面図を開示している。また、図4dは、図4bに対応する上部20の例示的な断面図を開示している。図4a及び図4bに関連して上述したように、上部20の形状、大きさ及び寸法は、図に示されているように変わってもよい。しかしながら、各断面図の形状、大きさ及び寸法は、対応する透視図の形状、大きさ及び寸法と一致しているべきである。図4dに示すように、上部20の外表面(例えば、注3)は、テクスチャ加工されていてもよい。1つの例示的な実施形態において、外表面の質感は、光の「有毛細胞(haircell)」的質感であってもよい。同様に、図4dに示すように、上部20の内表面(例えば、注4)も、テクスチャ加工されていてもよい。しかしながら、内表面の質感は、艶出し仕上げされたものがよい。例えば、内表面の質感は、SPI A-3、又はそれ以上の艶出し仕上げを有しているとよい。
【0034】
図4a〜4dにおいて使用される測定の単位は、特別の定めがない限り、インチである。図4a〜4dの他の特徴は、下記を含んでいてもよい。即ち、特別の定めがない限り、抜勾配は1.0度、平行及び垂直である全ての表面は0.005TIR、及び許容値は.XX±.010、.XXX±0.005、.XXXX±0.0005及び角度は±0°30′である。
【0035】
図5aは、ある開示された実施形態と一致する下部30の透視図を開示している。図5aに示すように、この透視図は、受渡し部36から上部20の接続機構28が差し込まれている接続機構32の一部分を底面から見上げたものである。図5aには、正確な寸法が開示されているが、これらの寸法が変わり得るということは予想される。例えば、5aに示す直径は、1.643cm(0.647in)である。しかしながら、寸法は、本発明の範囲から逸脱しない限りは、より広くてもより狭くてもよい。
【0036】
図5bは、ある開示された実施形態と一致する下部30の透視図を開示している。図5bに示すように、この透視図は、下部30の直視型である。図5bには、正確な寸法が開示されているが、これらの寸法は変わり得るということは予想される。例えば、図5bに示す高さは、1.242cm(0.489in)である。しかしながら、寸法は、本発明の範囲から逸脱しない限りは、より広くてもより狭くてもよい。さらに、下部30の大きさ、形状及び寸法は変わってもよく、これらが制限を受けるのは、生産上及び/又は設計上の考慮によってのみと考えられる。
【0037】
さらに、図5bは、下部の例示的な形状を開示している。図5bに見られるように、下部30は、ベル型を有していてもよい。これにより、下部30の受渡し部36が眼球に損傷又は炎症を生じさせることなく眼球部分を密封することができる。例えば、受渡し部36は、形状が部分的に円錐状であってもよい。さらに、受渡し部36のエッジは丸みを帯びており、受渡し部36が眼球部分に接している際の快適性を増大させると共に安全性を確保している。下部30の受渡し部36の直径は、角膜の平均直径に関する実験データに基づいて決定される。あるいは、夫々直径が異なる複数の下部を製造し、共通の互換性のある上部20と共に取り替えて使用してもよい。さらに、下部30の大きさ、形状及び寸法は変わってもよく、これらが制限を受けるのは、生産上及び/又は設計上の考慮によってのみと考えられる。
【0038】
図5cは、図5bに対応する例示的な下部30の断面図を開示している。図5a及び図5bに関連して上述したように、下部30の形状、大きさ及び寸法は、図に示されているように変わってもよい。しかしながら、各断面図の形状、大きさ及び寸法は、対応する透視図の形状、大きさ及び寸法と一致しているべきである。さらに、下部30の接続機構32は、大きさ、形状、寸法及び機能性において上部20の接続機構28と一致すべきである。
【0039】
図5a〜図5cで用いられる測定の単位は、特別の定めがない限りはインチである。図5a〜図5cの他の特徴は、下記を含んでいてもよい。即ち、抜勾配が1.0度、特別の定めがない限り、平行及び垂直である全ての表面は0.005TIR、及び許容値は.XX±.010、.XXX±0.005、.XXXX±0.0005及び角度は±0°30′である。
【0040】
様々な流体及び/又は医薬品は、装置10と共に使用されてよく、どの目の組織と接触するかを限定しながら、目に投与することができる。例えば、脱プロトン化溶液、及び破壊剤及び/又は解離剤を含む溶液が装置10を使用して投与されてもよい。例えば、装置10など角膜の表面に適用される装置の中に必要とされる流体又は薬剤を含んでいる溶液を直接投与することによって、この必要とされる流体又は薬剤は、角膜に投与され、これによって角膜への薬剤の供給効率が改善される。この投与方法は、薬剤に角膜の中心部をさらすが、角膜周辺部がさらされるのを防ぐ。
【0041】
開示された装置の使用方法の限定されない例は、Bruce DeWoolfson及びDale DeVoreによる「角膜上皮の浸透性を向上させ、かつ、基質コラーゲン原線維網を不安定化させる方法(METHODS TO INCREASE PERMEABILITY OF CORNEAL EPITHELIUM AND DESTABILIZE STROMAL COLLAGEN FIBRIL NETWORK)」とタイトルされた同時係属の仮出願(仮出願番号61/064,730)に記述されており、その全体が参考文献として本出願に含まれている。
【0042】
上記同時係属の仮出願の1つの限定されない例に記述されているように、流体又は薬剤は、一般に、治療直前に生理学的に許容可能な溶液で溶かされ又は希釈され、投与器に注入するために注射器に入れられる。その後、溶液は、約2秒〜約1分間、多くの場合は、約15秒〜約45秒、通常は約25秒〜約35秒間、角膜の表面を剥き出しにする開示された装置に注入される。角膜への直接受渡しは、角膜に対して如何なる薬剤の受渡しも促進するために使用することができる。
【0043】
本発明を具体化するある特定の構造物をここに示し記述する一方、基本的な発明概念の精神と範囲から逸脱することなく部分的な様々な変形及び再構成が可能であり、また、添付された請求項の範囲によって示されている範囲を除いて、ここに示され記述されている特定の形態に制限されないということは、当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球周りの流体の局部的な集中を改善する装置であって、
流体を受け入れるように構成された受入れ部、及び該受入れ部から前記流体を受入れるように構成された流体通路を含む上部と、
眼球の部分でシールを形成すると共に前記流体通路から流れ出る前記流体を受入れるように構成された受渡し部を含み、該受渡し部の縁部によって規定された境界線の内側に前記流体を保持する下部と、
前記上部を前記下部に密封状態に且つ着脱可能に接続する接続部と、
を含んで構成された装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記上部に接続された第1の接続機構と前記下部に接続された第2の接続機構とを含んで構成された請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の接続機構は、前記上部から伸びる突出部を含んで構成された請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の接続機構は、前記下部から伸びる貫入部を含んで構成された請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記上部から伸びる前記突出部は、該突出部が前記下部から伸びる前記貫入部に入って前記貫入部にぴったりと嵌るように、前記貫入部に酷似している請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記接続部は、ねじ込み形式の接続機構、摩擦形式の接続機構、加圧形式の接続機構及びジョイント形式の接続機構の一つである請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置の一部に接続され、前記装置を操作し及び装置に対する制御を維持するハンドルをさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項8】
眼球周りの流体の局部的集中を改善する装置であって、
流体を受け入れるように構成された受入れ部、及び該受入れ部から前記流体を受入れるように構成された第1の流体通路を含む上部と、
前記第1の流体通路から前記流体を受入れるように構成された第2の流体通路、及び眼球の部分でシールを形成すると共に前記第2の流体通路から流れ出る前記流体を受入れるように構成された受渡し部を含み、該受渡し部の縁部によって規定された境界線の内側に前記流体を保持する下部と、
前記装置の一部に接続され、前記装置を操作し及び装置に対する制御を維持するハンドルと、
を含んで構成された装置。
【請求項9】
前記上部を前記下部に密封状態に且つ着脱可能に接続する接続部をさらに含んで構成された請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記接続部は、前記上部から伸びる突出部と前記下部から伸びる貫入部とを含んで構成された請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記上部から伸びる前記突出部は、該突出部が前記下部から伸びる前記貫入部に入って前記貫入部にぴったりと嵌るように、前記貫入部に酷似している請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ハンドルは、中空でない内部領域を含む請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記受入れ部は、部分的に円錐形である請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記受渡し部は、部分的に円錐形である請求項8に記載の装置。
【請求項15】
眼球周りの流体の局部的集中を改善する装置であって、
流体を受け入れるように構成された受入れ部、及び該受入れ部から前記流体を受入れるように構成された流体通路を含む上部と、
眼球の部分でシールを形成すると共に前記流体通路から流れ出る前記流体を受入れるように構成された受渡し部を含み、該受渡し部の縁部によって規定された境界線の内側に前記流体を保持する下部と、
前記上部を前記下部に密封状態に且つ着脱可能に接続する接続部と、
前記装置の一部に接続され、前記装置を操作し及び前記装置に対する制御を維持するハンドルと、
を含んで構成された装置。
【請求項16】
前記ハンドルは、前記流体通路に接続されている請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記接続部は、前記上部から伸びる突出部と前記下部から伸びる貫入部とを含んで構成された請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記上部から伸びる前記突出部は、該突出部が前記下部から伸びる前記貫入部に入って前記突出部の外周が前記貫入部の内周にぴったりと嵌るように、前記貫入部に酷似している請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記受入れ部は、部分的に円錐形である請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記受渡し部は、部分的に円錐形である請求項15に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2011−515195(P2011−515195A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501917(P2011−501917)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037509
【国際公開番号】WO2009/120550
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509352244)ユークリッド システムズ コーポレイション (4)