説明

眼球運動、特に眼底の運動の測定装置および測定方法

全体画像における眼の潜在的運動野を記録するための第1検出器に加えて、第2の検出器が部分画像における眼の特定の部分を記録するために用いられる。全体画像から得られる2つの全体画像間の変位と、2つの部分画像間の中間変位とから、これらの変位を連結することにより眼の運動が決定される。部分は、好ましくはコヒーレント光により照明され、眼上で散乱する干渉光がスポットパタンを生成する。或いは、眼の強膜が、コヒーレント光により照明され、強膜上で散乱する干渉光がスポットパタンを生成し、部分画像におけるスポットパタンの特定の部分は、空間分解検出器を用いて記録され、部分画像に基づいて中間変位が決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの眼球、とりわけ眼底(基底部)の運動を、眼球の潜在的運動野を全体画像として反復して記録する2次元位置分解検出器によって(高速に)測定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科学および他の適用分野ではしばらく前から、眼球運動を測定および追跡するための運動追跡装置(英語「eye tracker」)が、とりわけ研究、診断、および治療目的で使用されている。例えば外科的レーザによる眼(角膜、網膜)の治療では、眼の損傷を回避するために、光エネルギーの投入が、治療よりも前に、眼中の計画した個所で実際に行われることが保証されなければならない。このことは、眼球運動が検知されると直ちにレーザを遮断することにより、または測定された眼球運動に対応してレーザ光を照明光学系によって追跡することにより行われる。眼球運動測定のさらなる使用分野は、機械、例えばコンピュータまたは自動車の制御である。
【0003】
従来の技術では、例えば国際公開第01/89438号パンフレットによれば、眼の瞳が通例、高速ビデオカメラによって高い画像反復周波数で複数回連続して画像として記録される。記録された画像において、特別な画像評価アルゴリズムによって、例えばエッジ検出によって、黒い眼瞳と明るい光彩との間の比較的鮮明な境界を同定することができる。連続画像中での、この境界または瞳中央の変位から、原理的に眼球運動を検知することができる。振幅の小さな眼球運動を検出できるようにするためには、画像を高い光学的分解能と鮮明度で記録しなければならない。振幅の大きな眼球運動を検出できるようにするためにも、瞳の潜在的運動野をできるだけ広範に画像として記録しなければならない。この2つの要件の組合せは、高画素数の画像の記録を必要とする。
【0004】
しかし、カメラセンサからこのような大きな画像を読み出し、続いて、少なくとも画像部分を評価するのは、データ量が大きいので比較的時間が掛かる。そのため、低い有効画像反復周波数しか、すなわち後続の評価も含めた記録のための周波数が最大で数100Hzにしか達しない。しかしヒトの眼は、いわゆるサッケード運動を毎秒約600°までの速度で実施することがある。このような速度で高精度の運動測定を達成するには、格段に高い有効画像反復周波数を達成しなければならない。フェムト秒のレーシック手術中に治療レーザを追跡するには、例えば少なくとも1kHzの有効画像反復周波数が必要になろう。このことは、従来の技術では、空間解像度を制限するか、または観察する最大運動野を制限することによってしか達成できない。
【0005】
さらに、とりわけ網膜の治療中に、例えばレーザ凝固術中に眼底の運動を測定する場合、必要な照明が赤外線(IR)波長領域でしか許されないという問題がある。これは、眩惑およびこれによる眼瞼反射を回避するためであるが、眼底はIR領域ではコントラストが弱い。IR照明は、例えば非散瞳型眼底カメラでは、位置合わせおよび調整中に使用される。カラー画像記録の場合に初めて、可視光が短時間入射される。これは、通常は画像照明時間の終了後に初めて眼瞼の閉鎖を引き起こす。眼底の運動を、とりわけレーザの追跡のために十分に正確に求めるためには、記録されたIR画像を、小さなコントラストの故に、瞳におけるエッジ検出の場合よりも格段に大きな画像部分で評価しなければならない。このため、有効画像反復周波数がさらに低下する。あるいは、眼底の運動を、比較的大きな血管の位置変化から求めることもできる。しかし眼底は大きな血管を少数しか有していないので、この形式の評価のためには眼底の小さな部分しか使用できず、したがって限られた運動野でしか測定できない。
【0006】
ビデオ記録に基づく運動測定の他に、とくに眼底の運動を走査型(英語「scanning」)レーザ運動追跡装置により測定することができる。このシステムは、例えば米国特許出願公開第2006/228011号明細書、米国特許第6726325号明細書、および米国特許第5644642号明細書から公知であり、眼底のできるだけ強く構造化された部分をレーザ光により共焦点で走査する。その際、走査は、太い静脈分岐または眼の瞳を中心に円形に行うことができる。このシステムは、センサを特別な眼の幾何形状に合わせて調整することができるという利点を有する。これによりこのシステムは、運動を高精度に検出するために、眼底の少数の点だけを走査すればよく、したがって画像内容を高速かつ簡単に評価できるようにする。欠点は、高価なレーザ走査ユニット(英語「Laser Scanner」)が必要なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎となる課題は、冒頭に述べた形式の装置および方法を、高い空間測定精度かつ低コストで、従来技術よりも高い有効画像反復周波数が可能となるように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば独立請求項に記載された特徴の組合せによって解決される。
本発明の有利な形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明によれば、眼球運動の測定の際に、大型で動作の遅い運動測定装置と、高速で小型の運動測定装置とを組み合わせることによって、有効画像反復周波数を格段に上昇させることができることが認識された。
【0010】
したがって本発明によれば、眼の潜在的運動野を、第1の画像反復周波数により、それぞれ第1の数の画素を含む全体画像として反復して記録するための第1の2次元位置分解検出器の他に、眼のそれぞれの部分を、第1の画像反復周波数より高い第2の画像反復周波数により、それぞれ第1の数の画素を含む部分画像として反復して記録するための第2の2次元位置分解検出器と、間接にまたは直接に連続する2つの全体画像に基づいてその間の変位を求め、間接または直接に連続しており、時間的にこれら全体画像の間で記録された2つの部分画像に基づいてその間の変位を求め、これらの変位を連結することにより眼の運動を求めるための計算ユニットとが配置されている。変位とは、本発明においては、例えば2次元ベクトルである。このようなベクトルは、例えば画像間のずれを記述することができる。連結とは、本発明においては、2つの変位を、例えばベクトル加算によって順に繋ぐことであると理解される。運動を求める際には、求めた2次元変位を2次元回転運動に変換するのが目的にかなっている。運動を求めた後、これをさらなる処理のために出力するのが目的にかなっている。
【0011】
比較的高い第2の画像反復周波数を達成するには、第2の画素数を、第1の画素数より少なく、とりわけ有意に少なくするのが有利である。部分画像の画素数が少ないので、変位を決定するための部分画像の評価を、とりわけ高速に実施することができる。
【0012】
眼球運動を測定するための有効画像反復周波数の上昇は、これらの特徴の組合せにより、眼球運動の測定を、簡単に表現すれば、低い画像反復周波数で記録された全体画像の間の時間においては、比較的高い画像反復周波数で記録された部分画像によって補間することによって達成される。部分画像から抽出された変位の誤差が伝播するのを回避するために、潜在的運動野全体を含む高分解能の全体画像から抽出された変位が、再較正に用いられる。ここで再較正は、好ましくはそれぞれ最後に記録された全体画像を、常に同じ(一定の)、好ましくはこの方法の開始時に記録されたもっとも早期の全体画像と比較することによって達成される。有利には、このもっとも早期の全体画像中の眼の擬似絶対的出発位置は、より早期の治療計画記録との手動または(例えば画像処理アルゴリズムによる)自動的な比較によって求めることができる。この変位は小さな部分画像から高速に求めることができ、これにより高い有効画像反復周波数が達成される。この高い有効画像反復周波数によって、計画された光エネルギー投入における位置決めの際に、治療レーザを高い空間的かつ時間的精度で追跡することができる。
【0013】
好ましくは変位は、該当する2つの画像の画像内容の少なくともそれぞれ一部分を、例えば相互相関によって比較することにより求められる。このようにして2次元の変位を、低コストで求めることができる。相関技術の使用は、米国特許第5786804号明細書に記載されており、その記載内容をここに全面的に援用する。例えば、先行の変位から既知である運動方向を最初に検査することにより、最適化された比較を行うことができる。検査の結果、運動がこの方向で継続していないことが分かった場合だけ、他の可能な方向を二次的に検査する。
【0014】
とくに好ましい1実施形態では、眼の潜在的運動野をインコヒーレント光により照明するための第1の光源と、眼のそれぞれの部分をコヒーレント光により照明するための第2の光源とが、該当する部分において、眼で散乱する干渉性のコヒーレント光によりスペックルパターンが発生するように設けられており、第2の検出器が、このスペックルパターン(英語「speckle pattern」)の少なくとも一部分を、該当する部分画像として記録するように構成されている。スペックルパターンは、眼球組織、例えば強膜(Sklera)または網膜(Retina)の体積中の微細構造における散乱によって眼に発生する。コントラスの強いスペックルパターンを部分画像として形成し、記録することにより、変位を、したがって眼球運動を、眼のコントラストの弱い領域、例えば強膜でも、または赤外線領域においては網膜でも求めることができる。なぜならスペックルパターンは、眼球運動の際に同じように運動するからである。スペックルパターンの変位は、例えば相互相関を用いた画像比較により求めることができる。スペックルパターンの相関は、例えば日本特許第60174905号明細書に記載されている。
【0015】
ここで第2の検出器は、好ましくはスペックルパターンを第2の検出器に、スペックルパターンの個々のスペックルが第2の検出器の画素の大きさにほぼ対応するか、またはそれより大きい大きさを有するように拡大して結像するための光学系を有する。これによって部分画像間のスペックルパターンの変位を、高精度で求めることができる。
【0016】
眼の眼底の運動を測定するために、有利には、第1の光源が、眼底を赤外線により照明するように構成され、第1の検出器が、眼底の少なくとも一部分を眼の潜在的運動野として記録するように構成され、第2の光源が、眼底のそれぞれの部分を赤外線により照明するように構成される。赤外線を使用することによって、眼底の運動の測定の際に、眩惑およびこれによる眼瞼反射が回避される。
【0017】
好ましくは第2の光源は、平面照明角が1°〜10°になるように構成されている。これにより、例えば共焦点スポット照明の際に発生するような過度に高いエネルギー密度が回避される。
【0018】
第2の光源を、眼瞳の平面内で実質的に点状に形成することによって、眼での障害となる光反射、とりわけ眼の角膜(Cornea)の前側における光反射を回避する、または少なくとも低減することができる。このことは例えば、眼瞳に対して共役な第2の光源面を実質的にリング状に形成することによって実現できる。
【0019】
好ましくは第2の光源は、眼の瞳に対して共役な平面内にコヒーレント光を集束するように構成されている。共役に配置することにより、本発明の装置を、低コストで従来の眼底カメラに組み込むことができる。
【0020】
有利には、結像光線路および照明光線路は、第2の光源のコヒーレント光の眼への中央入射方向が、第2の検出器の観察方向と実質的に一致するように構成されている。このことは例えば、結像光線路と照明光線路を、1つまたは複数のビームスプリッタ/ビームコンバイナによって結合することにより実現できる。とりわけこれは、それぞれの光線路のある幾何部分を反射し、別の幾何部分をそのまま通過させるミラー、例えばリングミラーにより達成される。
【0021】
本発明の装置は、第2の検出器にレーザマウスの検出器を使用することにより低コストに実現できる。このような検出器は、ストック数が大きく、標準的な電子回路であるので有利なコストで入手可能である。通常は、順次連続する部分画像間の相関を形成するための評価電子回路が、このような検出器に組み込まれている。
【0022】
好ましくは第2の検出器は、それぞれの部分に対して光学的に共役な平面内に配置される。それぞれの部分は、眼底の運動を測定する場合は眼底にあり、したがって第2の検出器は眼底に対して共役である。共役に配置することにより、本発明の装置を、従来の眼底カメラに低コストで組み込むことができる。
【0023】
本発明の装置は、とりわけ有利に眼底カメラまたは眼科学レーザシステムにおいて、治療レーザのための運動追跡装置として、および/または(例えば過度に大きな)眼球運動を検知した際に治療レーザを遮断するために使用することができる。これにより外科的侵襲、すなわち眼底でのレーザ凝固術または光線力学的療法(PDT)を、高精度で実施することができる。
【0024】
好ましくは眼底カメラまたはレーザシステムは、照明および検知のための無反射フロント対物レンズを、または本発明の装置に対して軸外れの照明および検知を有する。このようにして、フロント対物レンズでの障害となる光反射を回避することができる。
【0025】
本発明によればさらに、部分画像を2次元位置分解検出器によって反復して記録する間に、光源が眼の強膜をコヒーレント光により、強膜で散乱された干渉光によってスペックルパターンが発生するように照明することによって、眼球運動を、もっぱら個別の高速な検出器を用いても、いくつかの適用例には十分な精度で求めることができ、ここでは検出器が、スペックルパターンの少なくとも一部分を部分画像として記録するように構成しなければならないことが認識された。変位とは、本発明においては、例えば2次元ベクトルである。このようなベクトルは、例えば画像間のずれを記述することができる。この場合、眼の運動は、例えば計算ユニットにより、2つの部分画像に基づいて求められるスペックルパターンのその間の変位に基づいて求めることができる。例えばエッジ検出による画像内容の面倒な評価を、これにより省略することができる。と言うのは、画像反復周波数が高い場合、スペックルパターンの変位を検出できるようにするのに、少数のピクセルを評価するだけでよいからである。好ましくは計算ユニットは、この変位を、該当する部分画像の画像内容を比較することにより、例えば相関により求める。運動を求めた後、これをさらなる処理のために出力するのが目的にかなっている。
【0026】
好ましくは検出器は、スペックルパターンを検出器に、スペックルパターンの個々のスペックルが検出器の画素の大きさにほぼ対応するか、またはそれより大きい大きさを有するように、拡大して結像するための光学系を有する。これによって部分画像間のスペックルパターンの変位を、高精度で求めることができる。
【0027】
好ましくはコヒーレント光源は、10μm×10μmから1mm×1mmまでの平坦な平面照明が得られるように結像される。これにより、例えば共焦点スポット照明の際に発生するような過度に高いエネルギー密度が回避される。
【0028】
有利には結像光線路および照明光線路は、コヒーレント光の眼への中央入射方向が、検出器の観察方向と実質的に一致するように構成されている。これは、例えば、結像光線路と照明光線路を、1つまたは複数のビームスプリッタ/ビームコンバイナによって結合することにより実現できる。
【0029】
本発明の装置は、検出器にレーザマウスの検出器を使用することにより低コストで実現できる。このような検出器は、ストック数が大きく、標準的な電子回路であるので有利なコストで入手可能である。通常は、順次連続する部分画像間の相関を形成する評価電子回路が、このような検出器に組み込まれている。
【0030】
本発明の装置は、とりわけ有利に眼底カメラまたは眼科学レーザシステムにおいて、治療レーザのための運動追跡装置として、および/または(例えば過度に大きな)眼球運動を検知した際に治療レーザを遮断するために使用することができる。これにより外科的侵襲を高精度で実施することができる。
【0031】
好ましくは眼底カメラまたはレーザシステムは、照明および検知のための無反射フロント対物レンズを、または本発明の装置に対して軸外れの照明および検知を有する。このようにして、フロント対物レンズでの障害となる光反射を回避することができる。
【0032】
例えば計算ユニットにより、記録された2つ以上の部分画像を、それぞれ求められた変位に基づいてモザイク状に全体画像に統合する構成がとくに好ましい。ここでは、それぞれ最後に記録された部分画像に対するスペックルパターンの変位が、この部分画像の画像内容と全体画像の画像内容との比較によって求められる。これにより複数の連続する記録中に、変位の経過で誤差が伝播するのを低減することができる。
【0033】
本発明は、本発明の方法の1つを実施するためのコンピュータプログラムおよび制御ユニットを含み、とりわけこのようなコンピュータプログラムを含んだデータ媒体、および本発明の装置を含んだ眼科学用機器をも含む。
【0034】
以下、本発明を例示的実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の眼底カメラを示す図である。
【図2】高品質の赤外線眼底撮影を示す図である。
【図3】高速の運動測定装置と低速の運動測定装置を備える眼底カメラの概略図である。
【図4】照明光線路の概略図である。
【図5】デモンストレーションの眼で記録されたスペックルパターンを備える部分画像を示す図である。
【図6】検出器を1つだけ備える眼球運動追跡装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
すべての図面中、一致する部分には同じ参照符号を付す。
散乱表面、例えば紙または壁を、レーザまたは他の空間的および時間的にコヒーレントな光源により照明すると、表面から後方散乱された光が空間中で干渉することがあり、通常は粒子状の構造またはスペックル(英語「speckles」)が発生する。これを本発明においては、スペックルパターンと称する。主観的スペックルと客観的スペックルが区別される。主観的スペックルは、散乱表面が光学系によりカメラセンサに結像されるときに発生する。主観的スペックルは、結像システムの光学的分解能とまったく同じ大きさである。このようにして記録されたスペックルパターンは、散乱表面の変位の際にともに変位し、したがって変位の量的決定を可能にする。客観的スペックルは、光学系を備えないカメラセンサが、試料から後方散乱光中に配置される場合に発生する。客観的スペックルは、試料表面の傾斜に反応する。客観的スペックルの大きさは、光線の波長、照明される試料面の直径、および試料面とカメラセンサとの間隔から計算される。以下の量が、とくに眼においてとりわけスペックル相関技術により測定することができる。
【0037】
a)例えばオートフォーカスのための載置面から散乱面までの間隔の測定。所定のアパーチャを備えるレーザ波を試料表面に集束させる。試料の表面から後方散乱された光波を、光学系を備えないカメラセンサにより記録する。客観的スペックルの平均的大きさを、カメラ画像の自動相関関数の半値幅を求めることにより決定する。この半値幅は、波長が固定されており、かつ散乱面からのカメラの間隔が固定されている場合、照明面の直径に正比例する。照明波の集束により、照明面の直径は照明波の焦点面から散乱面までの間隔に依存するので、このようにして間隔センサを実現することができる。
【0038】
b)散乱面の変位の測定:レーザ波を、測定すべき試料面に結像させる。試料から後方散乱された光を、光学システムによってカメラセンサに結像させる。光学系により、画像誤差および回折不鮮明度に基づき、常に、試料の特定の一部分がカメラ面の1つの点に結像される。ここでオブジェクトの分布が、光学システムの点拡散関数(英語「point−spread function」、PSF)により畳み込まれ、これにより記録された画像が得られる。レーザ波がコヒーレントであるため、カメラセンサの画素に入射する光は干渉することができ、これにより、平均的大きさが回折制限されたPSFの半値幅と同じであるスペックルを備えるスペックルパターンを形成することができる。このスペックルパターンは、側方に変位する場合には散乱面とともに動く。スペックルパターンの連続して記録された2つの画像間の相互相関を形成することにより、2つの画像間の相対的変位の大きさと方向を決定することができる。この方法は、試料の構造を測定するのではなく、後方散乱された光フィールド中の相関を測定するのでロバストである。画像の構造化は、照明波のコヒーレントな性質を、表面での散乱による統計的な位相分散と組み合わせることにより実現される。相互相関には、小型で低分解能の、数百画素のカメラセンサを使用することができる。これによりkHz領域の非常に高い測定速度が可能になる。客観的スペックルと主観的スペックルの測定を組み合わせることにより、3次元変位ベクトルを求めることができる。複数のセンサにより、一般的な平面の位置変化および角度変化を決定することができ、したがってヒトの眼の運動をあらゆる自由度で求めることができる。2次元変位決定のための類似の方法が、光学式コンピュータマウスで使用されており、この光学式コンピュータマウスではテーブルから後方散乱された光の相関が測定される。
【0039】
速度と精度が最適化された運動測定を実現するためには、まずシステムの運動自由度を決定しなければならない。この運動自由度は、実現すべき適用例に非常に強く依存することがある。基本的に、眼は身体も含めて3つの空間方向すべてで変位でき、または3つの角度で傾斜することができる。加えて、眼は眼窩内で2つの角度(水平、垂直)で回転することができる。したがって眼のすべての運動を測定するためには、3つの変位の決定と3つの角度変化の決定が必要となろう。しかし、いくつかの眼科学適用例においては、眼の運動を約1秒だけ測定し、補償する。この場合、頭部運動ではなく、高速の眼球運動だけを測定すればよい。この場合、1つのセンサにより測定することのできる2つの自由度(水平および垂直の回転角)で十分である。さらに、角膜の屈折治療の場合、治療装置からの角膜の距離を測定するオートフォーカスセンサが必要となろう。
【0040】
まず、眼底カメラにおける眼底の運動測定について説明する。図1は、この目的のための従来の眼底カメラ1を示す。眼底カメラは、照明光線路Bに、眼2の眼底6に集束照明するための光学素子4を備える光源3を有する。結像光線路Aはビームスプリッタ7によって反射されて照明光線路Bに入るが、眼底6を位置分解検出器10上に結像するための検出光学系9を含んでいる。眼底カメラ1は、一方では検出器13と、他方では光源3と接続された制御ユニット14によって作動される。
【0041】
図2は、高品質の赤外線眼底撮影を示す。それでもなおコントラストが弱く、したがって順次連続する2つの撮影間の変位は、例えば大きなコストを掛けた(大きな画像領域の相関)相関によってしか、したがって低速でしか求めることができない。
【0042】
図3には、高速の運動測定装置と、低速の運動測定装置とを備える、本発明に従って改善された眼底カメラ1が概略的に図示されている。低速の運動測定装置は、第1のインコヒーレントなIR光源3と、検出光学系9Aを含む第1のIR検出器10とを有する。高速の運動測定装置は、干渉によりスペックルパターンを形成する第2のコヒーレントなIR光源12と、スペックルパターンを記録するための検出光学系9Bを含む第2のIR検出器15とを有する。検出器10、15はどちらも計算ユニット(図示せず)と接続されており、この計算ユニットは、眼底6の潜在的運動野全体の全体画像を第1の検出器10によって、眼底6の部分画像を第2の検出器15によって連続的に記録する。
【0043】
低速の運動測定装置は、擬似絶対座標における眼底の変位を、したがって先行の基礎記録に対する関係を、非常に高い信頼性で記録するという利点を有する。このため、治療/診断の予備計画が可能になる。さらに、比較的大きな画像野を備える低速の運動測定装置によって、比較的強い眼底偏向を検知できる。高速の運動測定装置は、不鮮明な、構造化の少ない眼底領域の測定であっても、待ち時間が非常に短く、速度が大きく、運動測定の信頼性が高いという利点を有する。高速の運動測定装置は、相対的変位しか測定可能でないという欠点を有し、したがってこれだけに基づいては治療計画が不可能である。さらに順次連続する画像の対ごとの比較による計算誤差が累積し、したがって誤差の伝播により、変位全体の座標計算に大きな誤差が生じるようになる。
【0044】
この理由から、まず、低速の運動測定装置を用いた治療計画のために、以前の記録に対して眼底の変位が行なわれる。その後、高速の運動測定装置により、眼底の運動を連続的に検出する。例えば毎秒2回、1つの全体画像を低速の運動測定装置により記録し、以前の計画記録との比較により評価する。そこから求められた運動を、求めた変位を連結することより、高速の運動測定装置の座標システムの再較正に用いる。
【0045】
低速の運動測定装置の機能原理:
眼底全体6を、第1のIR光源3、例えばIR−LED、またはスペクトルフィルタを備える白色光ランプにより照明する。眼底6から後方散乱された光を、位置分解検出器10、例えばCMOSカメラまたはCCDカメラに結像させる。全体画像を、1Hzから30Hzの画像反復周波数(フレーム毎秒)により記録し、コンピュータモニタ(図2)に表示する。組合せ型運動測定装置のこの低速部分用のハードウェアは、IRモニタまたはIR調整補助として、すでにすべての非散瞳型眼底カメラで技術的に実施されている。このようにして撮影された全体眼底画像から、可能な限り明確に構造化された4つの画像詳細を含む2×2ピクセルの正方形画像野を切り出す。すべての全体画像を第1の全体画像に対して相互相関させ、第1の全体画像に対する各全体画像の変位を決定する。第1の全体画像は、一連の全体画像の最初の画像とすることができ、したがって第1の全体画像に対するさらなる各全体画像の変位は既知である。とくに好ましい1変形実施形態では、標準の眼底カメラによって、眼底6のカラー画像とこれに所属のIR画像を撮影する。これらの画像によって、医師は実施すべき治療/診断、例えば眼底6の領域のレーザ凝固術を計画することができる。次に治療/診断の開始時に、眼底の第1のIR全体画像を撮影し、眼底6の出発状態を決定するために治療計画記録のIR画像に対して相関させる。次いで、後続の全体画像を常に、第1の全体画像に対して、または治療計画記録のIR画像に対して相関させる。このようにして例えばレーザコアギュレータで、前もって計画した眼底のスポットを走査し、治療することができる。なぜなら眼底6の運動が、治療計画に対して測定されるからである。相関のための画像野は、(例えば内部固定によりサポートされる)特別な観察事例で発生する眼球運動の最大振幅、すなわち眼底6の潜在的運動野が、画像野の大きさより小さくなるように選択される。この際、眼底運動を確実に検知できるようにするために、全体画像の光学的品質に依存するある最小サイズを下回ってはならない(したがって好ましくはn=6...9である)。
【0046】
図示の方法の大きな利点は、これがいずれの非散瞳型眼底カメラでもすでに技術的に設けられており、したがって非常に安価に実現できることである。しかしこの方法では、非散瞳型眼底カメラで使用されるような標準の白黒カメラが使用されるので、典型的な読み出し時間は少なくとも50msと見積もられる。相互相関の計算は、好ましくは眼底カメラに含まれる標準計算機で行うべきであり、したがって相関すべき画像野の大きさに応じて約500msが必要である。したがって550msかかるこの方法は、従来技術に属する別の運動測定装置または運動追跡装置と比較してずっと低速である。この理由から、低速の運動測定装置が、高速の運動測定を可能にする第2の独立したシステムと組み合わされる。
【0047】
高速の運動測定装置の機能原理:
高速の運動測定装置では、眼底6の小さい一部分をコヒーレントなIRレーザ照明12により照明する。眼底6におけるコヒーレントな照明領域の直径は平面角で約1°〜10°であり、これにより眼底6の光線負荷は可能な限り小さくなり、したがって眼底カメラ検出器10の画像野よりも格段に小さい。しかし1°〜10°という照明面は、典型的な共焦点スポット照明の照明面よりも格段に大きい。眼底6から反射した光はスペックルパターンの形で干渉し、このスペックルパターンを低分解能の位置分解検出器15により部分画像として記録する。検出器の技術的構成の例は、CCDカメラ、CMOSカメラ、またはInGaAsカメラであり、好ましくは小さな画像部分(英語「region of interest(関心領域)」ROI)だけが読み出される。検出光学系9Bのアパーチャは、照明光源12のコヒーレントな性質により生じるスペックルの大きさが、少なくとも検出器15のピクセルと同じ大きさであるように設計される。
【0048】
このようにして撮影した部分画像から、続いてそれぞれの先行画像に対する相対的変位、またはさらなる全体画像の記録後のそれぞれ第1の部分画像に対する相対的変位を、相互相関によって計算し、またはその代りに光の流れの観察によって推定する。相互相関の計算速度を上昇させるさらなる手段は、相互相関のすべての点を計算するようにしないことである。相互相関の9つのピクセル(3×3)だけを、すなわち両方の部分画像と、各方向におけるその次の部分画像との間で予想される変位のピクセルだけを計算する。これにより正確な変位(好ましくはサブピクセル補間により)が計算され、次の部分画像への変位の推定に用いられる。そして次に続く部分画像では、両方の部分画像間で予想される変位に対応する、相互相関の9ピクセルだけを計算する。このような評価によって、典型的な(例えば30×30ピクセルの)ピクセルアレイでは計算時間を100分の1に低減することができる。満たさなければならないただ1つの要件は、変位の加速度が所定の限界を上回ってはならないことである。
【0049】
撮影された部分画像の大きさ、または相関に使用される部分画像のサブ画像の大きさは、約10×10ピクセルから100×100ピクセルであり、したがって比較的少数のデータだけを評価すればよく、これにより評価が格段に高速になる。目標仕様として、高速の運動測定装置は好ましくは5ms以内に1画像を記録し読み込むことができ、かつ変位データを評価できるべきである。ここで評価は、標準の計算機、または好ましくは専用の評価電子回路、例えばいわゆるスマートピクセルカメラで行うことができる。
【0050】
コヒーレント照明によって、相対的に構造のない眼底6が、格段に良好に記録できる、非常に強い構造の干渉パターンに重畳される。この方法のさらなる利点は、「スペックル(Speckle)」スポットの特殊な性質の故に、眼底6の運動の測定が、(検出光学系9Bの)検出器15が最適に集束されていない状態でも可能なことである。
【0051】
とくに好ましくは、市場で入手可能なレーザマウスセンサにより、高速の運動測定装置の部分画像を記録および評価する。これらのセンサは、散乱背景において視射角の下でのスペクトル反射を利用して運動を測定するように構成されており、例えば米国特許第7161682号明細書および米国特許第5786804号明細書に開示されている。その評価原理は通例、センサ内に固定配線されているが、これを、スペックルパターン−部分画像の記録および評価のために驚くほど安価に利用することができる。しかしここに示した変形実施形態では、スペクトル反射は評価されない。なぜならスペクトル反射は実質的に散乱表面の3D表面湾曲により発生するからである。一方、眼底6では約0.5mmの厚いボリューム散乱層(網膜)を検知すべきである。同様のことが、強膜上の測定のための代替実施形態に対しても当てはまる。
【0052】
レーザマウスセンサの検出器15は、眼底カメラ1内で眼底に対して共役な平面ZB(中間画像面)内に配置する。その際、米国特許第7161682号明細書において検出光線路に存在するすべての光学系と光線制限面を取り除き、または眼底に対して共役な画像を、そこに記載された検出光学系の最適焦点に配置する。どちらの場合も、絞りにより、または対応する結像縮尺の選択により、光学的検出システム9Bのアパーチャを、発生する検出スペックルが検出器15のピクセルより大きくなるように制限する。
【0053】
眼底カメラ1は実質的に生物学的顕微鏡に相当し、これを用いて眼底を画像として表示することができる。ヒトの眼の特殊な幾何形状に基づき眼底カメラ1には、眼底6のできるだけ最適な画像を記録することができるように、特殊な技術的構成手段が設けられている。この特殊な光学系の一要素は、眼2の瞳5内のリング照明である。この照明は、検出光線路での角膜前側の光反射を抑制するために選択される。そのために、仮想照明源として、例えば5.5mmの外径、3.5mmの内径を有する照明リング3が、ヒトの眼2の角膜面に入射され、この照明リングは眼底6をできるだけ均等に、約22°までの視野角で照明する。例えばリング状のファイバ束3から放射される光線は、やはり眼瞳5に対して共役な平面内にある光学系16によって、リング状ミラー13に結像される。眼底6から後方散乱された光線は、リングミラー13中のホールを通過し、第2の検出器15に結像される。この第2の検出器15は、眼底6に対して共役な中間画像面ZB内にある。前記の構造は標準の眼底カメラに相当するものであり、この実施形態では組み合わされた運動測定装置の低速部分である。
【0054】
高速部分では、コヒーレントなIRレーザ照明12が光学系19Aによりコリメートされ、次に第2のレンズ19Bによって、瞳平面に対して共役な平面内に配置されたリング絞り14に集束される。このことが図4に詳細に図示されている。この場合コヒーレントなIR光は、ビームコンバイナ20としてのダイクロイックミラーまたはハーフミラーを介して、第1のインコヒーレントなIR光源3の照明光線路と重畳される(図3)。次にIR光は、眼底カメラ1の光学系16、4により眼底6に向けられ、そこで1°から10°の平面直径を有する平面を照明する(図3)。
【0055】
眼底6から後方散乱された光は、別のダイクロイックミラーまたはハーフミラー7により、眼底カメラ光線路から分岐され、眼底6に対して共役な第2の検出器15に結像される(図3)。眼底6をコヒーレント光により照明し、後方散乱された光を第2の検出器15に結像することによって、2種類のスペックルが生じる。すなわち、主観的検出スペックルと客観的照明スペックルである。主観的検出スペックルは、眼底6の運動を測定するために使用され、一方、客観的照明スペックルは障害量を示す。客観的照明スペックルの障害的影響を制限するために、コヒーレントな照明を、好ましくは眼瞳に対して共役な平面(リング絞り14)上に集束させる。これにより照明スペックルは眼底6において、眼底6での光線直径にほぼ相当する大きさを有し、したがってさらなる処理に対しては何ら問題とならない。第2の光源12には、好ましくは半導体レーザ源を使用する。しかし、約0.5mm以上のコヒーレント長(このコヒーレント長は、良好なスペックルパターンコントラストを検出器15上で達成するために好ましくは、少なくとも網膜の2倍の厚さに相当すべきである)と、良好な空間的コヒーレンスとを有する他のあらゆる種類のコヒーレント光源も、この方法に使用することができる。
【0056】
眼底カメラ照明光学系のさらなる特殊な特徴は、照明光線路における反射防止点(絞り)の導入であり、この反射防止点は眼底カメラのフロント対物レンズにおける、検出光線路への反射を阻止するものである。この反射防止点が最適に調整されていないか、または照明光線路の光学的エレメントのいくつかが塵粒子により軽く散乱されると、眼底カメラの検出器画像中に典型的なリング状の反射が認識される。この反射は、レーザマウス光線路にも発生し、運動測定の際に問題を引き起こし得る。この理由から、無反射フロント対物レンズの使用がとくに好ましい。眼底カメラに標準の対物レンズを使用する場合の第2の好ましい変形形態は、軽く軸外れした照明、および適合された軸ずれの検出である。
【0057】
図5は、眼底6をコヒーレント照明した際に記録されたスペックルパターンを示す。
とりわけ高い精度を必要とする、角膜の屈折外科的治療(例えばフェムト秒レーシック;fsレーシック)では、眼の位置を規定するためにコンタクトレンズが使用される。この場合、眼の運動は理論的に不可能である。しかし眼とコンタクトレンズとの間の力が比較的強い場合には、眼がコンタクトレンズに平行に変位することがある。この場合、治療レーザを追跡または遮断するために、この変位を高速で測定しなければならないこととなる。まさにこの測定課題を、1つの検出器のみを備える本発明の装置がとりわけ簡単かつ有利に解決する。
【0058】
図6は、運動測定装置の基本構造を概略的に示す。角膜16を治療するためのレーシックレーザ(図示せず)の光線路は変化しないままである。運動測定装置を実現するために、コンタクトレンズ18の横、またはその縁部にコンタクトレンズ18を通して、光源12の高コヒーレントなレーザビームを眼2の強膜17上に集束させる。強膜17から後方散乱された光を検出光学系(図示せず)により、個別の位置分解能カメラセンサ15に強く拡大して結像させる。非常に小さい画像野だけをカメラセンサ15上に結像すればよいので、光学系の品質に対する要件は比較的小さい。光学システムの分解能は、運動測定装置の達成すべき測定精度と一致するように選択する。fsレーシックの場合、分解能は1μm〜3μmとすべきである。そのためには、比較的開口数の大きい対物レンズが必要である。データの評価のためには、「スペックル(Speckle)」スポット約10個分の直径の画像野で十分である。これは1μmの分解能の場合、約10μmの画像野に相当する。この種の小さい画像野は、厳密に単色のレーザ光により照明する場合、比較的低コストで実現できる。運動測定の間、カメラセンサ15は、非常に高い画像反復周波数で強膜17の部分画像を記録し、次々と連続する画像の相互相関を計算する。相互相関関数の最大値の位置は、部分記録間の散乱性強膜17の相対的変位を表す。カメラセンサ15は、その画像野内において、2つの部分画像間の変位がカメラセンサ15の画像野よりも決して大きくならないように寸法設定しなければならない。この装置では、記録間の相対的変位しか計算できないことに注意すべきである。これは、測定誤差が伝播するため、部分画像の数が増すにつれて、眼の絶対位置決定が不確実になることを意味する。
【0059】
眼の運動または位置を擬似絶対的に測定できるようにするために、測定の開始後、測定される第3の部分画像を第2の部分画像に対してではなく、再び第1の部分画像と相互相関させ、第1の部分画像に対する変位を決定する。このことは、両方の画像の相対的変位がセンサの画像野より小さい限り達成される。そして包括的な尺度を展開するために、種々の部分画像を相関アルゴリズムによってモザイク状に1つの完全な全体画像に統合する。この際、さらなる記録を、もっぱらこの包括的全体画像の一部分と相関させる。この評価方法によって、位置の不正確度は、もはや画像の数とともに上昇するのではなく、第1の部分画像の中心に対する相対的距離とともにだけ上昇する。前述の変位センサにより、1μm〜3μmの測定精度を、1kHz〜10kHzの有効画像反復周波数で達成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 眼底カメラ
2 眼
3 第1の光源
4 フロント対物レンズ
5 瞳
6 眼底
7 ビームスプリッタ
8 絞り
9 検出光学系
10 第1の検出器
11 制御ユニット
12 第2の光源
13 リングミラー
14 リング絞り
15 第2の検出器
16 角膜
17 強膜
18 カバーガラス
19 照明光学系
20 ビームコンバイナ
A 結像光線路
B 照明光線路
ZB 中間画像面
f、f’ 焦点距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼(2)の運動を測定するための装置であって、眼(2)の潜在的運動野を、第1の画像反復周波数により全体画像として反復して記録するための第1の2次元位置分解検出器(10)を備える前記装置において、
眼(2)のそれぞれの部分を、該第1の画像反復周波数より高い第2の画像反復周波数により部分画像として反復して記録するための第2の2次元位置分解検出器(15)と、
2つの全体画像に基づいてその間の変位を求め、2つの部分画像に基づいてその間の変位を求め、これらの変位を連結することにより眼(2)の運動を求めるための計算ユニット(11)と
を特徴とする装置。
【請求項2】
眼(2)の潜在的運動野をインコヒーレント光により照明するための第1の光源(3)と、
眼(2)のそれぞれの部分をコヒーレント光により、眼(2)で散乱した干渉性のコヒーレント光によって該当する部分にスペックルパターンが発生するように照明するための第2の光源(12)と、
該第2の検出器(15)が、該スペックルパターンの少なくとも一部分を、該当する部分画像として記録するように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の検出器(15)が、スペックルパターンを該第2の検出器(15)に、スペックルパターンの個々のスペックルが該第2の検出器(15)の画素の大きさにほぼ対応するか、またはそれより大きい大きさを有するように拡大して結像するための光学系(9B)を有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の光源(3)が、眼底(6)を赤外線光により照明するように構成されていること、
前記第1の検出器(10)が、眼底(6)の少なくとも一部分を、眼の潜在的運動野として記録するように構成されていること、
前記第2の光源(12)が、眼底(6)のそれぞれの部分を赤外線光により照明するように構成されていること
を特徴とする、眼(2)の眼底の運動を測定するための請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
前記第2の光源(12)が、(平面)照明角が1°〜10°になるように構成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の光源(12)が、眼瞳(5)の平面内で実質的に点状に構成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の光源(12)が、眼(2)の瞳(5)に対して共役な平面内にコヒーレント光を集束するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の光源(12)のコヒーレント光の眼(2)への中央入射方向が、前記第2の検出器(15)の観察方向と実質的に一致することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の検出器(15)が、レーザマウスの検出器として構成されていることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の検出器(15)が、それぞれの部分に対して光学的に共役な平面(ZB)内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記計算ユニット(11)が、該当する2つの画像の画像内容の少なくともそれぞれ一部分を比較することにより、コヒーレントな照明の場合には特に記録されたスペックルパターンの少なくともそれぞれ一部分を比較することにより、前記変位を求めることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
第1の2次元位置分解検出器によって、少なくとも眼の潜在的運動野が第1の画像反復周波数により全体画像として反復して記録される、眼の運動を測定する方法において、
第2の2次元位置分解検出器によって、眼のそれぞれの部分が、該第1の画像反復周波数より高い第2の画像反復周波数により全体画像として反復して記録され、2つの全体画像に基づいてその間の変位が求められ、2つの部分画像に基づいてその間の変位が求められ、これら2つの変位の連結によって眼の運動が求められ(そして出力され)ることを特徴とする方法。
【請求項13】
眼(2)の運動を測定するための装置であって、眼(2)の一部を部分画像として反復して記録するための2次元位置分解検出器(15)を備える前記装置において、
眼(2)の強膜(17)をコヒーレント光により、該強膜(17)で散乱した干渉性の光によってスペックルパターンが発生するように照明する光源(12)と、
該検出器(15)が、該スペックルパターンの少なくとも一部分を部分画像として記録するように構成されていること、
2つの部分画像に基づいてスペックルパターンのその間の変位を求め、該変位に基づいて眼(2)の運動を求めるための計算ユニットと
を特徴とする装置。
【請求項14】
前記計算ユニットが、該当する部分画像の画像内容を比較することにより、前記変位を求めることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記検出器(15)が、スペックルパターンを該検出器(15)に、スペックルパターンの個々のスペックルが該検出器(15)の画素の大きさにほぼ対応するか、またはそれより大きい大きさを有するように、拡大して結像するための光学系を有することを特徴とする請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
前記光源(12)が、(平面)照明面積が10μm〜1mmになるように構成されていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記光源(12)のコヒーレント光の眼への中央入射方向が、前記検出器(15)の観察方向と実質的に一致することを特徴とする請求項13至16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記検出器(15)が、レーザマウスの検出器として構成されていることを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記検出器(15)が、それぞれの部分に対して光学的に共役な平面内に配置されていることを特徴とする請求項13乃至18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
眼底カメラ(1)または眼科学レーザシステム内に配置されていることを特徴とする請求項13乃至19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
照明および検出のための無反射フロント対物レンズ、または照明および検出の軸外れ構成を特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
2次元位置分解検出器によって眼の一部を部分画像として反復して記録する、眼の運動を測定する方法において、
眼の強膜がコヒーレント光の光源によって、該強膜で散乱する干渉性の光によってスペックルパターンが発生するように照明され、該スペックルパターンから該検出器によってそれぞれの部分が部分画像として記録され、2つの部分画像に基づいて記録されたスペックルパターンの少なくとも一部分のその間の変位が求められ、該変位に基づいて眼の運動が求められ(そして出力され)ることを特徴とする方法。
【請求項23】
該当する2つの部分画像の画像内容の比較により、前記変位が求められることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
記録された2つ以上の部分画像が、それぞれ求められた変位に基づいてモザイク状に1つの全体画像に統合され、それぞれ最後に記録された部分画像に対するスペックルパターンの変位が、該部分画像の画像内容と該全体画像の画像内容との比較によって求められることを特徴とする請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
請求項12または22乃至24のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成された、コンピュータプログラム、特に該コンピュータプログラムを備えるデータ媒体、または制御ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−503996(P2012−503996A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528229(P2011−528229)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006816
【国際公開番号】WO2010/037485
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany