説明

眼用レンズ供与する際の眼調整誤差測定の用途

眼用レンズを製造または供与する方法は、1種類以上の眼用レンズを設計または選択する際に調整誤差測定値を利用することを含んでいる。或る実施形態では、眼用レンズはコンタクトレンズである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、合衆国法典第35巻119条の(e)(35 U.S.C. §119 (e))の規定に基づき、2009年5月4日出願済みの先出願である米国特許仮出願第61/175,233号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、コンタクトレンズなどのような眼用レンズを供与する方法に関するものである。幾つかの方法については、本発明は眼用レンズの製造方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
コンタクトレンズは、旋盤加工技術、回転注型成形技術、または、静止注型成形技術などのような各種技術によって製造することができる。通常は、レンズ設計は、患者すなわちレンズ装着者の屈折率の必要に基づいて患者に矯正視力を供与するように選択される。設計データがコンピュータ入力されると、コンピュータがそのデータを利用して、所望の設計のレンズを成形する1種類以上の機械に指示を与えることができる。各種の多様な設計すなわち多様なパラメータの多数のレンズを製造することで、大勢の人々の視力矯正の需用を満たすことができるようにしている。レンズの設計は、素材に直接的に旋盤加工または重合化処理を施して所望の設計のレンズの形状にすることにより達成されることもあれば、所望の設計のスチールインサートを形成してから、かかるインサートを使ってレンズ型のレンズ成形面の形状設定をすることにより達成される場合もあるが、後者の場合は更に、レンズ成形面がレンズ型を使って形成されたレンズに設計を転写することになる。光学設計は、通例は、屈折視力矯正をもたらすように選択された表面曲率、レンズ厚み方向プロファイル、および、光学域寸法に基づいている。レンズ設計が所望どおりであるかを迅速検査する手段として、コンタクトレンズを後日に自分の眼に装着することになる患者に供与して、レンズを適所に設置した患者の眼の視力を測定するという方法がある。視力が容認できるものでなければ、レンズ設計は退けられ、新たな設計の提案が行われることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、視力の諸症状のうち或るものの治療は、屈折視力矯正や視力矯正と同じくらい迅速に行われるものではない。換言すると、レンズ設計と、上述のような視力の諸症状に対する設計の実効性を検査するためには、レンズ設計により治療効果がもたらされたか否かを観察するのにかなりの時間を必要とする。設計が容認できるものではない場合、特定の設計が容認できるものではないことを認識したうえで新たなレンズをどのように設計するかを判断する前に、相当な時間遅延が生じてしまうことになる。具体的には、視力矯正に較べて、近視の進行、すなわち、近眼進行(例えば、患者の視力が初期状態からより近視が進んだ第2状態に移行すること)は、相対的にゆっくりした変遷を示す。近眼進行は眼球の軸線伸長やそれ以外の生理学的変化および物理的変動に関与している。近眼進行および酷い近視の進展に付随するネガティブな結果のせいで、近眼進行を緩和または阻止することは眼の健康管理上の重要な目的となっている。近眼進行を緩和または阻止するにあたってレンズ設計が有効であるか否かを検査するために、通常は、レンズ設計に関して数か月または少なくとも1年にわたる臨床研究が遂行されることで、近眼進行に対するレンズ実効性を判定する。このような時間尺度は臨床的見地と製造上の見地から望ましいものではなく、とりわけ、レンズ設計が近眼進行を緩和または阻止しなかったせいで新たなレンズ設計の検査をしなければならないような場合には望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
眼用レンズを供与または製造する新規な方法が発明されている。眼用レンズの新たな使用方法も発明されている。本発明の方法は、治療が成功しているかどうかを判定するのに屈折視力矯正診断よりも長時間を要する眼症状検査において特定のレンズ設計が有効であるか否かを予測または測定する時間を短縮する。或る局面では、本発明の方法は眼用レンズ設計を最適化する方法に関するものであると解釈するとよい。例えば、眼用レンズを製造または供与する本発明の方法を利用すれば、眼用レンズの制作または製造の開発サイクルにおけるレンズ設計段階を迅速化することができるようになる。本発明の眼用レンズとは、コンタクトレンズ、眼鏡レンズ、検眼用レンズ、その他のレンズ、または、これらの各種組合せのことである。眼用レンズとは、ヒドロゲルコンタクトレンズやシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどのようなコンタクトレンズのことである。
【0006】
一局面では、単数または複数の眼用レンズを供与する方法を説明してゆく。かかる方法は、第1の眼用レンズを供与することと、第2の眼用レンズを供与することを含んでいる。本件で使用されているような、英語原文中の不定冠詞 ‘a’または ‘an’という語は1つ・1個・1種類・片方または2つ以上を意味し、’at least one’すなわち「少なくとも1個の」という句と置き換えできるものとする。第1の眼用レンズとは、例えば、眼鏡レンズまたはコンタクトレンズである。第1の眼用レンズがコンタクトレンズである場合、人が装着することができる。第1の眼用レンズが眼鏡レンズである場合、かかる眼鏡レンズはフレームに嵌め込んで供与される。第2のコンタクトレンズは、視力矯正ではなく視力治療の必要がある人によって装着されるべきものである。第1の眼用レンズは第1のレンズ設計を有しており、第2の眼用レンズは第1のレンズ設計とは異なる第2のレンズ設計を有している。第2の眼用レンズ設計は、第1の眼用レンズを装着している人の眼の調節誤差の測定値に基づいて選択される。従って、本発明の方法の基礎となる発明は、眼用レンズの或る設計について複数の異なるパラメータの複数の眼用レンズのうちから1つの眼用レンズを選択するにあたり調節誤差測定値を使用することで、視力矯正とは異なる眼の諸症状であって、通例は実効性を判断するのに要する臨床研究の時間がもっと長いのが通例である諸症状について、新たなレンズ設計を行って検査する時間を迅速化するよう図ったものである。本件で使用されているような「第2の眼用レンズ」という語は、眼用レンズが装着者に供与された順序を明瞭にする目的で「第1の眼用レンズ」について言及しながら使用される。一例を挙げると、眼用レンズが眼鏡レンズまたはそれ以外の或る種のレンズであって、コンタクトレンズではないものの場合は、「第2の眼用レンズ」はコンタクトレンズである可能性もあり、よって、「第2の眼用レンズ」は装着者に供与されている第1のコンタクトレンズとなる場合もある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多様な実施形態を後段の「詳細な説明」で詳細に説明してゆく。文脈と本件明細書と当業者の知識をもってすれば明らかであるが、本件に記載されている各種特徴は、いずれの1つまたは各種組合せも、そのような組合せに含まれている各特徴が相互に矛盾しているのでもなければ、本発明の範囲に入る。更に、各種特徴のいずれの1つまたは各種組合せも、本発明のどの実施形態からも特に排除されるものではない。本発明の上記以外の利点や局面は、後段の詳細な説明および添付の特許請求の範囲で明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
眼用レンズを供与する本発明の方法は、多様な眼用レンズを選択するのに必要な時間を減じるのに有用であり、または、臨床効果を判定するのに通例はかなりの時間を要する眼の諸症状の治療を目的とした多様な眼用レンズを設計して多様な眼用レンズ設計を試験するのに要する時間を短縮するのに有用である。例えば、本発明の方法は、近眼進行を緩和または阻止することにより治療するといったような近眼進行治療を目的とした、または、近眼進行と同様に臨床試験時間を必要とする近視以外の眼の諸症状の治療を目的とした、コンタクトレンズなどのような新規な眼用レンズの設計で採用されるとよい。本件開示の新規方法の恩恵を享受する近視以外の眼の諸症状の具体例としては、各種症状のうちでもとりわけ、文字判読能力が挙げられる。例えば、患者の眼調節誤差を測定して、調節誤差測定値に基づいて眼用レンズを選択することにより、レンズ装着者の調節誤差を減じるような眼用レンズを設計することができるようになり、それにより、文字判読能力を向上させる方法を供与することができるが、斯様な能力向上は調節誤差低減量を測定するよりも判定に時間を要する。
【0009】
本発明の開示に関しては、コンタクトレンズとは、眼の角膜上に設置されるレンズのことを言う。コンタクトレンズは、屈折視力矯正を必要とするレンズ装着者または患者に屈折視力矯正をもたらすことができる。これに加えて、または、代替例として、コンタクトレンズは、屈折視力矯正以外の所望の治療効果を供与することができる。
【0010】
「眼調節」とは、眼の力の光学的変動に言及したものである。通例は、眼調節は、接眼レンズの形状を変えることにより眼のレンズの屈折力を変えることができる眼の能力を意味している。患者に調節誤差が無い場合には、患者は調節ラグや調節リードを被ることはない。調節ラグとは、調節を誘発する光屈折刺激よりも眼の調節反応が鈍い分量のことである。調節リードとは、調節を誘発する光屈折刺激よりも眼の調節反応が上回る分量のことである。従って、本件で使用されているような「眼調節誤差」とは、当業者には分かることであるが、調節ラグまたは調節リードのことである。老眼になるまでに十分に調節を行うことができるはずであるが、人の眼調節能力は時間経過とともに退化する。本発明の方法は、老視者ではない人などのような、眼調節を行える人々、すなわち、眼調節能力を示している人々にコンタクトレンズを供与または製造するにあたって特に有用となる。老眼と診断されるのが最も多いのは40歳ぐらいから上の年代の人々である。本発明の方法および用途は、40歳よりも若年の患者に有益である。かかる方法および用途は、成年前後の人々、未成年者、または、その両方に有用となることもある。例えば、本発明の方法は、25歳よりも若年の患者向けにコンタクトレンズを製造するのに有効である。
【0011】
眼調節誤差を測定するためには、当業者には分かるような従来の器具と方法を使用するとよい。例えば、本件に記載されているように、近視標距離、中間視標距離、または、遠視標距離など、幾つもの異なる距離で眼調節反応を測定するには、検影器や屈折計を採用するとよい。利用することができる検影器の一例がウエルチアレン(WelchAllyn:合衆国ニューヨーク州スカニートルスフォールス)から入手可能なエリート(ELITE)検影器であり、利用することができる屈折計の一例がグランドセイコー(Grand Seiko:福岡県)から購入できるWR-5100Kである。利用できる更に別な検影器はキーラー(Keeler:英国ウインザー)やハイネ(Heine:ドイツ連邦ヘルシンク)などのような企業から入手可能である。臨床環境では、例えば40 cmといったような近距離で少なくとも1回の眼調節誤差測定が行われるとともに、例えば6 m(600 cm)といったような遠距離すなわち事実上の無限遠で少なくとも1回の眼調節誤差測定が行われる。眼調節誤差を測定するのに利用することのできる視標の具体例としては、スネレン視力検査表またはマルテーゼクロスなどのような、既存の幾つかの視力検査表が挙げられる。眼調節誤差測定は1回行われるだけでもよいし、或いは、眼調節誤差測定を複数回(例えば、2回以上)行ってから平均を求めることで、患者の眼の調節誤差の度数表示を提示するようにしてもよい。眼調節反応は、必要に応じて、両目または片目のいずれについて記録されるようにしてもよい。理解できることであるが、眼球機能の或る局面は互いに連動し合う筋肉によって統制されているせいで、眼調節は片目についてしか測定されないことが多い。例えば、眼用レンズは患者の一方の目の近接位置に置かれる。眼の調節誤差の観測は眼用レンズを装着しないままで眼の調節誤差を測定することにより行うことができるが、他方で、患者は眼用レンズを着用したままで視力検査表を見ていることになる。眼調節測定および調節誤差測定の一例をここで説明する。
【0012】
本発明の方法を実施するにあたり、眼用レンズが供与される。より具体的には、第1の眼用レンズが供与され、第1の眼用レンズは視力矯正以外の視力治療の必要がある人により装着されることになる。第1の眼用レンズは第1のレンズ設計を有している。人または患者は視力矯正以外の視力治療を必要としているが、幾つかの方法は、視力治療を必要としており尚且つ視力矯正を必要としている人によって装着される第1の眼用レンズを供与することを含んでいる。第1の眼用レンズは第1のコンタクトレンズである場合もある。本件で使用されているような「視力治療」とは、症状の治療効果が視力の治療効果を判定するのに必要な時間に比べて、判定するのに必然的により長時間を要する眼の状態のことである。臨床効果判定時間は少なくとも15分、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも7日、少なくとも30日、少なくとも3か月、少なくとも6か月、またはそれより長期である。時間が短い場合、例えば、15分程度である場合は、時間は調節誤差の測定およびそれ以外の任意の測定と一括生産分の複数のレンズから異なるレンズ設計の第2のコンタクトレンズまたはコンタクトレンズ以外の眼用レンズを選択するのに要する時間のことである。この時間は、第2の眼用レンズを製造する必要がある場合などのように、付加的な工程が採用される場合にはもっと長くなる場合もある。これに加えて、上述のような視力治療および眼の諸症状については臨床研究が採用されることが多いうえに、コンタクトレンズによってもたらされる効果が療法効果であるか否かを判定するためには数か月または数年にわたる場合もある。本件で使用されているような「療法」または「治療」もしくは「治療する」という句は、治療中である眼の症状に付随している1種類以上の諸症候の緩和または除去を意味する。
【0013】
一例として、視力治療を受ける必要がある眼の症状に近眼進行がある。治療の1つの目的は、患者の近眼進行を緩和または阻止することである。近眼進行に付随している1つの症候は、患者の眼球の軸線伸長である。従って、統制値と比較した場合に患者の眼球の軸線慎重が除去または緩和されている場合は、本発明のレンズは患者の治療に成功したか、または、患者に対して治療効果をもたらしたことになる。統制値とは、とりわけ、患者の視力、眼の健康、遺伝的疾病素質、環境因子、または、これらの各種組合せを考慮した場合の、患者についての予測値を意味している。本発明のレンズは、眼の症状の近眼進行以外の1種類以上の症候を緩和または除去できた場合にも同様に、治療に成功した、または、患者に治療効果をもたらしたと判定することができる。
【0014】
本発明の方法は、第1のレンズ設計を有している第1の眼用レンズを供与する工程の他に、もう1つ別な工程を含んでいる。本発明の方法のもう1つ別な工程は、視力治療を必要とする人によって装着される上述のような第2の眼用レンズを製造または供与することである。第2の眼用レンズは、第1のレンズ設計とは異なっている第2のレンズ設計を含んでいる。眼用レンズは、第1の眼用レンズを装着している人の眼の調節誤差の測定値に基づいて選択された第2の眼用レンズ設計を有している。換言すると、患者の眼の調節誤差は、眼の近傍または眼内に眼用レンズを配備してもしなくても、いずれであれ、第1の眼用レンズとは異なる設計を有している第2の眼用レンズを選択するにあたっての1係数として採用される。供与する工程は、調節誤差測定値に基づいて、多様な設計または多様なパラメータを有している複数の眼用レンズの中から第2の眼用レンズを選択する工程を含んでいる場合もある。或いは、本発明の方法は、本件に記載されているような第2の眼用レンズを製造して第2の眼用レンズを供与する工程を含んでいることもある。
【0015】
一例として、第1の眼内レンズが眼の近傍または眼内に配置されている患者の調節誤差は、屈折計や検影器などのような測定装置によって測定される。当業者には分かることであるが、従来の方法および機器は調節および調節誤差を測定する目的で使用される。患者の調節誤差は、通例は、測定装置を使用して検眼士または眼科医などのような視力矯正士によって測定される。視力矯正士によって測定される調節誤差は、データとしてコンピュータに保存することができる。次に、調節誤差データは、第2の眼用レンズなどのような少なくとももう1つ別な眼用レンズを設計する際の係数として眼用レンズ製造者または眼用レンズ設計者によって利用される。例えば、レンズ製造者またはレンズ設計者は、視力検査技師またはそれ以外のデータ供給者から1名または多数の患者ごとの調節誤差データを受け取ることができる。次いで、調節誤差データは、第2の眼用レンズの設計に影響を与える要素として、1つ以上のコンピュータプログラムにより使用されるか、または、レンズ設計者により使用される。一例として、本発明の説明に従ってコンタクトレンズを開発中に多様なレンズ設計に関する多数の研究を遂行することにより、収差プロファイルなどの光学域直径のような多様なコンタクトレンズ特性と調節誤差測定値との間の関係を供与する相関関係が得られる。次に、本発明の方法に従って、レンズ設計者などが患者の調節誤差値を受け取って患者ごとの調節誤差を先に開発済みの相関関係と比較し、患者の調節誤差を補正することになるレンズ設計を選択することができる。本発明の方法を実施するにあたり、レンズ設計者またはレンズ製造者が患者の調節誤差を実際に測定することは必要ではないが、本発明の方法は人または患者の調節誤差を測定する工程を含んでいることがある。代替例として、または、上記に加えて、データの調節誤差測定値は、一括生産分の複数の眼用レンズから、または、複数の眼用レンズから第2の眼用レンズを選択する工程で使用することができる。また別な方法は、第2の眼用レンズに加えて1種類以上のまた別な眼用レンズを製造する工程、設計する工程、または、選択する工程を含んでいるようにするとよい。
【0016】
前述の事柄に鑑みて、本発明の方法の広義の局面は、眼用レンズを供与する際、眼用レンズを設計する際、または、その両方を実施する際に調節誤差測定値を利用することに関連している。本発明の方法の各局面が調節誤差測定値を利用して眼用レンズ設計を最適化することに関するものであることが分かる。新規なレンズ設計を製造し、設計し、試験し、または、その各種組合せを実施する利点は、調節誤差を測定するのに要する時間を比較的短時間にすることにより達成される。調節誤差を測定することにより、新規なレンズ設計を製造して試験するのに要する時間を短縮することができるのみならず、かかる眼用レンズ設計が治療の成功をもたらすか否か、または、視力矯正以外の視力療法を患者に供与しているか否かを予測する目的で調節誤差測定値を利用することができる。従って、本発明の方法は、人の眼の近眼進行の治療において有用となる眼用レンズを製造するのに有効であることが分かる。
【0017】
より詳細に述べると、第2の眼用レンズは、調節リード測定値を解析することにより、または、第1の眼用レンズを装着している人の眼の調節ラグ測定値を解析することにより供与される。上述のように、かかる解析は、ソフトウエアコード、ハードウエアコード、その両方のコードのいずれであれ、コンピュータプログラムを利用して実施することができ、或いは、手動で実施することができる。解析は、第2のレンズ設計を有している第2のレンズが治療を施されるべき眼の症状に有効な治療またはより良好な治療を供与するか否かに関する予測をもたらすことができる。これは、本件で既に説明されているような、調節誤差と1つ以上のコンタクトレンズ特性との間で先に生成された関係と、調節誤差を比較することにより達成することができる。第2のレンズは患者の調節ラグを低減するように選択される場合もあれば、患者に幾ばくかの調節リードを供与するように選択される場合すらある。
【0018】
本発明の方法は、新規なレンズ設計の効果を判定するのに要する時間を短縮する。第1の眼用レンズは調節誤差を測定するといったような方法により人の眼の眼内または近傍で評価され、第2の眼用レンズは、第1の眼用レンズが評価された時点から6か月以内に製造されて人の眼で試験される。第2の眼用レンズは、第1の眼用レンズが評価された時点から15分以内に試験される場合もある。かかる評価は、調節誤差測定などのような従来の眼用レンズ評価技術および接眼試験を利用して、検眼士または眼科医によって実施される。初期評価からその後の評価までの期間は変動することがあり、本件で説明されているとおり、6か月よりも長短いずれかである。第2の眼用レンズは、第1の眼用レンズが人の眼の近傍または眼内で評価された時点から1か月以内に製造されて人の眼で試験される。
【0019】
本発明の方法の1つの目的は、新規な眼用レンズ設計が近視矯正以外の視力治療で将来的に成功できるかどうかの予測変数として、調節リード測定値と調節ラグ測定値のいずれであれ、調節誤差測定値を利用することである。第2の眼用レンズまたはその他の眼用レンズに付随する調節誤差が1.5ジオプター未満である場合には、第2の眼用レンズ設計またはその他の眼用レンズ設計が選択される。すなわち、調節誤差は+1.5ジオプター未満の場合もあれば、−1.5ジオプターよりも大きくなる場合もある。例えば、調節誤差が1.0ジオプター未満、0.8ジオプター未満、0.6ジオプター未満、0.4ジオプター未満、0.2ジオプター未満である場合、または調節誤差が約0.0ジオプターである場合には、本発明の方法は第2のレンズ設計を選択する工程を含んでいるようにするとよい。
【0020】
本発明の方法においては、例えば、眼用レンズを使用して近眼進行を緩和または阻止するといった場合には、第1の眼用レンズおよび第2の眼用レンズは各々が、第1の屈折力を呈するはっきり見える視力域と第2の屈折力を呈する近視焦点ボケ領域とを含んでいるようにするとよい。近視焦点ボケ領域の第2の屈折力は、通例は、第1の屈折力よりもプラス側に強く、すなわち、マイナス寄りの程度が少ない(例えば、第1の屈折力よりも少なくとも0.5ジオプターはプラス側に強く、第1の屈折力よりも6.0ジオプターに満たない程度にプラス側に強い場合が多い)。近視焦点ボケ領域の屈折力は負値のジオプター、ゼロジオプター、または、正値のジオプターのいずれになる場合もある。はっきり見える視力域の屈折力は約0ジオプターから約−10.0ジオプターまでの値を呈することがある。視力矯正領域は球面屈折力、円柱度数、または、球面屈折力と円柱度数の両方を含んでいるようにするとよい。眼用レンズの視力矯正領域の屈折力は、球面レンズ表面曲率、非球面レンズ表面曲率、または、その組合せによって供与される。本件で使用されているような眼用レンズの視力矯正領域は、コンタクトレンズ製造環境で採用されるような頂点計または焦点距離計によって測定された場合は、明らかに1種類の屈折力しか備えていないように思われる。しかしながら、視力矯正領域は2種類以上の屈折力を視力矯正領域に供与する非球面を呈しているようにしてもよいが、但し、その場合にも依然として、レンズは実効屈折率を1種類のみ呈する。このような実施形態の一例では、第1の眼用レンズと第2の眼用レンズのうちの少なくとも一方にコンタクトレンズを含んでいる。
【0021】
近視焦点ボケ領域は、近視標距離と遠視標距離で見ている患者に焦点ボケした像を供与するのと同時に、くっきり見える領域、すなわち、近視焦点ボケ領域よりもマイナス側の光屈折力が強い領域を患者に供与する構成となっている(寸法、形状、または、寸法と形状の両方がそのように設定されている)。本件で使用されているような「近視焦点ボケ」とは、眼用レンズによって網膜の前側に形成される焦点ボケした像について言及したものである。近視焦点ボケは、眼用レンズによって作られた焦点ボケした像が眼用レンズが作用している眼の網膜の前側に置かれるという点で正であることが分かる。本件で使用されているような「はっきり見える視力」すなわち「クリアな視力」とは、通例、標準文字図表を利用するといったような方法で視力検査を施す検眼士によって判定される。本件開示の目的では、「くっきり見える視力」すなわち「クリアな視力」とは、本発明のコンタクトレンズを装着している場合で、尚かつ、600 cmの視標距離といったような遠視標距離で見る場合に、レンズ装着者が約20/40から約20/10までの間の視検得点を取得することを意味しているものとする。
【0022】
眼用レンズのうちの少なくとも1つがコンタクトレンズを含んでいる実施例においては、本発明のコンタクトレンズ(1個または複数個)を装備している患者ははっきり見える視力域を使って近距離と遠距離でものをクリアに見るようにしているせいで、近距離ではっきり見える(市場で入手可能な二焦点コンタクトレンズの近視力域に比べて)視力を供与するのに患者は近視焦点ボケ領域を使用せず、その代わりに、近距離と遠距離の両方で患者に焦点ボケした像を供与するのに近視焦点ボケ領域が有効である、という点が重要である。
【0023】
眼用レンズを装着することになる人が近視になる疾病素因のある正視者である場合には、はっきり見える視力域の第1の屈折力は0.0ジオプターである。眼用レンズを装着することになる人が近視者である場合には、はっきり見える視力域は遠方視力域であり、その第1の屈折力は0.0ジオプターよりもマイナス側に高くなる。例えば、第1の屈折力が−0.25ジオプターから約−10.0ジオプターとなる。眼用レンズのはっきり見える視力域の屈折力が患者の眼の遠方視力を矯正するような値である場合には、眼用レンズのはっきり見える視力域は遠方視力(英語で‘distance optical power’、’distance power’、または、’distance vision power’)を示すことが分かる。これは、眼の近視力を矯正する屈折力との対比であり、或いは、近方視力(英語で‘near optical power’、’near power’、または、’near vision power’)を示す領域との対比である。本発明のレンズの各種実施形態のはっきり見える視力域は、近視標距離と遠視標距離の両方で患者にはっきり見える視力を供与する構成となっている(寸法、形状、または、寸法と形状の両方がそのように設定されている)。
【0024】
本件で使用されているような「近距離(近視標距離)」とは、見られている視標の患者からの距離が約60 cmまたはそれより短い視距離について言及したものである。視距離はまた、視標距離と称されることもある。近視標距離の具体例としては、約50 cm、約40 cm、約35 cm、および、約25 cmが挙げられる。近方視力は約40 cmで測定されることが多い。本件で使用されているような「遠距離(遠視標距離)」とは、見られている視標までの距離が少なくとも400 cmある場合の視距離または視標距離を意味している。遠視標距離の具体例としては、少なくとも400 cm、少なくとも500 cm、および、少なくとも600 cmが挙げられる。本件で使用されているような「中間視距離(中間視標距離)」とは、近視標距離と遠視標距離との間の距離を意味している。例えば、中間視標距離とは、約60 cmから約400 cmまでの距離を意味しており、例えば、約80 cm、約100 cm、約120 cm、および、約140 cmなどの距離を含んでいる。
【0025】
眼用レンズのはっきり見える視力域は近視標距離と遠視標距離の両方でレンズ装着者にはっきり見える視力を供与する。これと比べて、従来の二焦点コンタクトレンズは特殊な近距離域寸法と特殊な遠距離域寸法を有して設計されており、レンズ装着者が遠距離を見るには遠距離域を使用し、近距離を見るには近距離域を使う構成になっている。
【0026】
本発明の方法においては、コンタクトレンズのはっきり見える領域は、コンタクトレンズの光学軸線が通っている中央の円形域を含んでおり、近視焦点ボケ領域は中央の円形域を包囲している環状域に設けられている。近視焦点ボケ領域は環状域全体の境界を画定しており、或いは、環状域は複数の環状小域から構成されており、レンズを装着している人が近距離と遠距離で見ている場合は、これら環状小域のうちの少なくとも1小域の屈折力が近視焦点ボケを供与するように設定されている。
【0027】
前述の方法のいずれについても、各方法はコンタクトレンズに第1面積を有しているはっきり見える領域と第2面積を有している近視焦点ボケ領域とを設けるようにしている。これら方法で第2のコンタクトレンズを製造する工程は、第1のコンタクトレンズのレンズ設計の第1面積、第2面積、または、第1面積と第2面積の両方を変動する工程を含んでいる。換言すると、第1のコンタクトレンズのレンズ設計は、第1面積および第2面積の各々が或る値を示すようにしている。第2のコンタクトレンズは、第1のコンタクトレンズの第1面積および第2面積のうちの少なくとも一方を変動させて第2のコンタクトレンズの新規なレンズ設計にすることで製造される。
【0028】
本発明の方法のいずれであれ、かかる方法の供与する工程は、眼用レンズをレンズ配給業者に供給すること、レンズを検眼士や眼科医などの視力検査士に提供すること、レンズを患者に用意すること、または、これらの各種組合せを含んでいる。本発明の方法は、レンズ小売業者などのレンズ配給業者に眼用レンズを供給するレンズ製造業者を対象としたものであり、その後、レンズ配給業者がレンズを視力検査士や患者に供給する。本発明の方法は、眼用レンズを視力検査士に提供するレンズ製造業者またはレンズ配給業者を対象としたものである場合もある。本発明の方法は、レンズを患者に支給してからレンズの装着の仕方を患者に指導する視力検眼士を対象とする場合もある。
【0029】
本発明の方法のいずれも、供与する工程は少なくとも1対の第1レンズを供与すること、すなわち、第1のレンズ設計を有しているレンズを供与することを含んでいる。レンズがコンタクトレンズである場合、供与することは、第1箱の複数のレンズを供与すること、または、第1箱の複数のレンズと第2箱の複数のレンズを供与することを含んでいる。他のレンズ、例えば、第2のレンズなども対で供与されてもよく、或いは、2個以上のレンズのセットで供与されるようにしてもよい。
【0030】
本発明の方法のいずれの製造する工程も、重合化可能な組成物を注型成形してコンタクトレンズの形状にし、注型成形後のコンタクトレンズをコンタクトレンズ鋳型部材から分離し、分離された注型成形コンタクトレンズを液体に接触させ、分離された注型成形コンタクトレンズを検査し、分離された注型成形コンタクトレンズをコンタクトレンズ梱包材に詰め、コンタクトレンズを梱包材ごと滅菌し、または、これら処理の各種組合せを行うことを含んでいる。
【0031】
注型成形コンタクトレンズを形成する1つの方法は以下のとおりである。第1鋳型部材および第2鋳型部材を製造する。第1鋳型部材および第2鋳型部材は、一緒に結合させるとコンタクトレンズ型集成体を形成するような構成になっている。第1鋳型部材は正面側鋳型部材であり、コンタクトレンズの正面側を形成することになる凹レンズ形成面を有している。第2鋳型部材は背面側鋳型部材であり、コンタクトレンズの背面側を形成することになる凸レンズ形成面を有している。第1鋳型部材はその凹面に1種類以上の表面曲率を呈するように製造される。表面曲率の寸法は、本件記載のようなはっきり見える視力域と近視焦点ボケ領域とを設けるように設定されている。重合化可能な組成物は製造され、コンタクトレンズを成形する際に使用される反応性の各種材料および任意で非反応性の各種材料が含有されている。これら各種材料の具体例としては、1種類以上の親水性単量体、親水性低重量体、親水性高分子単量体、親水性重合体、1種類以上の疎水性単量体、疎水性低重量体、疎水性高分子単量体、疎水性重合体、1種類以上のシリコーン含有単量体、シリコーン含有低重量体、シリコーン含有高分子単量体、シリコーン含有重合体、または、これらの各種組合せが挙げられる。重合化可能な組成物は第1鋳型部材の凹表面上に分配される。第2鋳型部材は第1鋳型部材に接して設置されて、コンタクトレンズ形状の空洞の内部に重合化可能な組成物を置くことができるようにしたコンタクトレンズ型集成体を形成する。次に、コンタクトレンズ型集成体は熱または光に晒されて、重合化可能な組成物を重合化することで重合コンタクトレンズ製品を成形する。コンタクトレンズ型集成体の鋳型を解体するのに、第1鋳型部材と第2鋳型部材を互いから分離させる。重合コンタクトレンズ製品は第1鋳型部材および第2鋳型部材に付着したままであるため、次に、鋳型部材からレンズの取外しまたは分離が行われる。取外されたコンタクトレンズは液体に接触させられるが、かかる液体は洗浄液の場合もあり、或いは、梱包用の液体である場合もある。洗浄液は、取外されたコンタクトレンズ製品から未反応材料または一部反応材料を抽出するのに役立つ1種類以上の薬剤を含んでいる。このような方法は、乾燥状態、保湿状態、または、その両方の状態でレンズを検査する1以上の工程を含んでいることがある。かかる検査は、欠陥検査や品質制御目的の検査を含んでいる場合がある。レンズが梱包用の液体中に入れられてしまえば、梱包材が封止されてから滅菌されるとよい。
【0032】
本発明の方法の製造する工程は、或る量の近視焦点ボケをもたらすレンズ設計を有しているように第2のコンタクトレンズを設計することを含んでおり、その場合、焦点ボケの量は人の眼の調節誤差に基づいている。一実施形態では、本発明の方法の製造する工程は、第2のコンタクトレンズを設計するにあたり、その人の眼の調節誤差に等しいジオプター数だけ第1のレンズ設計の近視焦点ボケ量とは異なっている近視焦点ボケ量を供与するレンズ設計を有しているように構成することを含んでいる。
【0033】
本発明の方法のいずれについても、製造する工程は、第2のコンタクトレンズを設計するにあたり、第2のコンタクトレンズを装着していない眼の調節誤差を少なくとも10%だけ低減する実効域が設けられた近視焦点ボケ領域を備えているレンズ設計を有しているように構成することを含んでいるとよい。具体例として、調節誤差を少なくとも20%だけ低減する、少なくとも40%だけ低減する、少なくとも60%だけ低減する、少なくとも80%だけ低減する、または、少なくとも100%だけ低減するレンズ設計を有しているような第2コンタクトレンズを製造することが挙げられる。調節誤差が調節ラグである場合で、尚且つ、調節ラグの誤差低減率が100%を超える場合は、眼は調節リードを被ることとなる。
【0034】
本発明の方法は、人が装着することになる少なくとも1個の第3のコンタクトレンズを製造する1工程または複数工程を更に含んでいるようにしてもよく、その場合、第3のコンタクトレンズは、第1のレンズ設計、第2のレンズ設計、または、その両方のレンズ設計とは異なっている第3のレンズ設計を有している。また別な方法は、第4のコンタクトレンズ、第5のコンタクトレンズ、第6のコンタクトレンズ、または、それ以上のコンタクトレンズを最適レンズ設計が選択されるまで製造することを含んでいるようにしてもよい。
【0035】
本発明の方法により供与される本発明のコンタクトレンズはソフトコンタクトレンズであり、すなわち、レンズ装着者の眼に設置されると、レンズ装着者の眼の形状に概ね一致するような可撓性を有しているコンタクトレンズである。通例、ソフトコンタクトレンズは、剛性の気体透過性コンタクトレンズと対比されるような、ヒドロゲルコンタクトレンズと称される。本件で使用されているような「ヒドロゲルコンタクトレンズ」という語は、水を吸収して水を平衡状態に維持することができる能力を有している重合体レンズに言及したものである。本明細書の説明の文脈では、ヒドロゲルレンズはシリコーン含有成分を含んでいない重合体素材であってもよいし、シリコーン含有成分を含んでいる重合体素材であってもよい。シリコーンを含有していないヒドロゲルコンタクトレンズの大半が、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の各種単量体を含んでいる重合化可能なレンズ配合物を主材料としている。ヒドロゲルコンタクトレンズ材の具体例としては、以下に列挙する合衆国公認物質名(USAN)を持つものがある。すなわち、エタフィルコンA、ネルフィルコンA、オキュフィルコンA、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、および、オマフィルコンAである(英名:順にetafilcon A、nelfilcon A、ocufilcon A、ocufilcon B、ocufilcon C、ocufilcon D、omafilcon A)。これに加えて、本発明のコンタクトレンズは、グリセリルメタクリレート(GMA)のみを含有、または、GMAをHEMAとの混合物として含有しているレンズ配合物を主材料としているヒドロゲルコンタクトレンズであってもよい。シリコーン含有ヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと呼称されることが多い。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの大半は、シロキサンの各種単量体、各種低重量体、または、各種高分子単量体などの重合化可能なレンズ配合物を主材料としている。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ素材の具体例としては、以下に列挙する合衆国公認物質名の付いた物質がある。すなわち、アクアフィルコンA、バラフィルコンA、コムフィルコンA、エンフィルコンA、ガリフィルコンA、レネフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、および、セノフィルコンAである(英名:順にacquafilcon A または aquafilcon A、balafilcon A、comfilcon A、enfilcon A、galyfilcon A、lenefilcon A、lotrafilcon A、lotrafilcon B、senofilcon A)。
【0036】
本発明のコンタクトレンズは、1種類以上の親水性単量体、1種類以上の疎水性単量体、1種類以上のシリコーン含有単量体、1種類以上のシリコーン含有低重量体、1種類以上のシリコーン含有高分子単量体、1種類以上の重合体、または、これらの各種組合せなどからなる重合化可能な組成物の重合反応製品であるとよい。これに加えて、本発明のレンズを製造するのに使用される重合化可能な組成物の具体例としては、架橋結合剤、遊離基重合開始剤、着色剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。本発明のソフトコンタクトレンズは、前述の合衆国公認物質名(USAN)によって同定される前掲のコンタクトレンズ材料のうちのいずれかから構成されており、いずれかを必須要素として含んでおり、または、いずれかをその一部として含んでいる。本発明のレンズはオマフィルコンAから製造されていてもよい。本発明のレンズは、コムフィルコンAまたはエンフィルコンAから製造されているシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであってもよい。
【0037】
本発明のコンタクトレンズは、回転注型成形コンタクトレンズまたは静止注型成形コンタクトレンズなどのような成形コンタクトレンズであってもよいし、または、旋盤回転加工コンタクトレンズであってもよい。これら各種のコンタクトレンズはそれぞれの製造方法が原因で物理的特性が互いに異なっていることが分かる。「注型成形コンタクトレンズ」とは、2つのコンタクトレンズ鋳型断片を互いに接触させてコンタクトレンズ形状の空洞を形成することにより構成されているコンタクトレンズ型集成体から得られるコンタクトレンズのことである。これに加えて、本発明のコンタクトレンズの一部は、コンタクトレンズ形成後に研磨され、または、平滑にされる。例えば、注型成形または旋盤回転加工されたコンタクトレンズ、もしくは、注型成形と旋盤回転加工の両方が施されたコンタクトレンズは研磨されることで遷移領域を低減することができ、或いは、端縁形状を改善することができ、その結果として研磨処理されていないレンズに比べてより優れた快適さを供与することになる。
【0038】
本発明のコンタクトレンズは日別装着レンズまたは長時間装着するレンズである場合もある。本発明で使用されているような、長時間装着するコンタクトレンズとは、連続24時間を超える装着用に認可されたコンタクトレンズについて言及したものである。レンズ対をなすコンタクトレンズは各々が1日で使い捨てができるコンタクトレンズである(すなわち、人の眼に1回だけ装着されたきりで廃棄されるコンタクトレンズ)。これと比べて、当業者には分かることであるが、日別装着レンズは人の眼に装着されてから、洗浄されて少なくとももう1回だけ人の眼に装着される。日別装着コンタクトレンズおよび長時間装着コンタクトレンズと比較した場合、1日限りの使い捨てコンタクトレンズは物理的に異なっているか、化学的に異なっているか、または、物理的にも化学的にも異なっている。例えば、日別装着コンタクトレンズまたは長時間装着コンタクトレンズを製造するために使用される処方は、1日限りの使い捨てコンタクトレンズを製造するために使用される処方とは異なっているが、これは、かなり大量の1日限りの使い捨てコンタクトレンズを製造するにあたっての経済的要因と商業的要因のせいである。
【0039】
本発明のコンタクトレンズは患者の眼に設置された際に、レンズの両面のうち背面が患者の眼の角膜上皮に対面するようになっている。
【0040】
本発明の方法の各局面は、以下の実施例を思量することにより、よりよく分かるようになる。
【実施例1】
【0041】
本発明の実施例1である。
【0042】
ヒドロゲルコンタクトレンズは、前段までの詳細な説明に記載されていたようなオマフィルコンAから製造されている注型成形コンタクトレンズである。かかるコンタクトレンズには、遠方視力を供与する中央の円形域が設けられている。含水状態のコンタクトレンズの中央の円形域の直径は約3.3 mmであり、中央の円形域の屈折力は−3.00ジオプターである。コンタクトレンズは、中央の円形域を包囲する環状域を有している。環状域は、互いに異なる屈折力の複数のリングから構成されている。これらリングの幾つかには−1.00ジオプターの屈折力が供与されており、複数のリングのうちの少なくとも1つには−3.00ジオプターの屈折力が供与されている。この−3.00ジオプター域は、レンズのはっきり見える視力域すなわち遠方視力域と近方視力域の輪郭を画定している。−1.00ジオプター域はレンズの近視焦点ボケ領域の境界を画定している。はっきり見える視力域の近視焦点ボケ領域に対する面積比は約1:1である。換言すると、屈折力の約50%ははっきり見える視力域に由来し、屈折力の残りの約50%は近視焦点ボケ領域に由来するものである。
【0043】
10歳児の近視者の調節誤差測定値を記録した。測定は視標距離40 cm で屈折計を用いて行われた。患者には、前段までで説明してきたヒドロゲルコンタクトレンズが供与された。このコンタクトレンズを装着した状態での視標距離40 cmにおける調節誤差は−0.4ジオプターであった。
【0044】
レンズ設計者は視力検査士から−0.5ジオプターという調節誤差測定値を受け取った。レンズ設計者は、レンズ設計の係数としてこの−0.5ジオプターという調節誤差を利用して第2のコンタクトレンズを設計した。第2のコンタクトレンズの設計は、はっきり見える視力域の近視焦点ボケ領域に対する相対面積を変動させることによって、第1のコンタクトレンズと比較して、第2のコンタクトレンズを装着した場合に患者の眼の調節誤差を少なくとも0.25ジオプターだけ低減させるように実施された。従って、調節誤差は−0.25ジオプターまたは0ジオプターとなった。第2のコンタクトレンズは本件記載のとおりに注型成形された。
【0045】
第1のコンタクトレンズの評価から2週間以内に、近視患者は第2のコンタクトレンズを試着し、調節誤差測定が行われた。第2のコンタクトレンズを装着した眼の調節誤差は−0.25ジオプターであった。
【0046】
本件開示は或る特定の実施形態に言及したものであるが、これら実施形態は具体例として提示されたものであり、限定するためではないものと理解するべきである。前述の詳細な説明の意図は、具体的な実施形態について論じている場合でも、種々の変更例、代替例、および、実施形態の均等物の全てを網羅して、添付の特許請求の範囲に規定されているような本発明の真髄および範囲に入るものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節誤差測定値に基づいて眼用レンズを供与する方法は、
視力矯正以外の視力治療を必要とする人が装着することになる、第1のレンズ設計を有している第1の眼用レンズを供与する工程と、
第1の眼用レンズを装着するのと同じ眼についてその人が装着することになる、第1のレンズ設計とは異なる第2のレンズ設計を有している第2の眼用レンズを供与する工程とを含んでおり、第2の眼用レンズ設計は第1の眼用レンズを装着している人の眼の調節誤差の測定値に基づいて選択されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記第2の眼用レンズを製造する工程を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記人の眼の近視進行の治療で有用なコンタクトレンズを製造するのに有効であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の眼用レンズは、前記第1の眼用レンズを装着している人の少なくとも調節ラグ測定値に基づいて製造されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記人の眼に装着して前記第1の眼用レンズを評価してから、前記人の眼に装着して前記第1の眼用レンズが評価された時点から6か月以内に前記第2の眼用レンズを供与し、前記人の眼に装着した前記第2の眼用レンズを試験する工程を更に含んでいる、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2の眼用レンズが製造されてから、前記人の眼に装着して前記第1の眼用レンズが評価された時点から1か月以内に前記人の眼に装着して前記第2の眼用レンズが試験されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の眼用レンズ設計は、1.5ジオプターよりも小さい調節誤差を得るように選択されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の眼用レンズおよび前記第2の眼用レンズは各々が、第1の屈折力を有しているはっきり見える視力域と、第1の屈折力よりもプラス側に強い第2の屈折力を有している近視焦点ボケ領域とを備えていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記はっきり見える領域は、眼用レンズの光学軸線が通っている中央の円形域を含んでおり、前記近視焦点ボケ領域は、中央の円形域を包囲している環状域に設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記はっきり見える領域は第1面積を有しており、前記近視焦点ボケ域は第2面積を有しており、前記第2の眼用レンズの製造は、前記第1の眼用レンズの前記第1のレンズ設計の第1面積、第2面積、または、第1面積と第2面積の両方を変動させることを含んでいることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の眼用レンズを供与する前記工程は、前記第2の眼用レンズをレンズ配給業者に供給すること、視力検査士に提供すること、患者に用意すること、または、これらの各種組合せを含んでいることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第2の眼用レンズを供給する前記工程は、1対の前記第1の眼用レンズを供与することを含んでいることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第2の眼用レンズを供給する前記工程は、重合化可能な組成物を注型成形してコンタクトレンズの形状にすること、注型成形コンタクトレンズをコンタクトレンズ鋳型部材から分離すること、分離された注型成形コンタクトレンズを液体に接触させること、分離された注型成形コンタクトレンズを検査すること、分離された注型成形コンタクトレンズをコンタクトレンズ梱包材に詰めること、注型成形コンタクトレンズを梱包材ごと滅菌すること、または、これらの各種組合せを行うことを含んでいることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第2の眼用レンズを供与する前記工程は、前記第2の眼用レンズを設計するにあたり、前記第1の眼用レンズを装着している前記人の眼の概ねの調節誤差に等しいジオプター値だけ、前記第1の眼用レンズ設計の近視焦点ボケの量とは異なっている近視焦点ボケの量をもたらすように前記第2の眼用レンズを設計することを含んでいる、請求項1から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第2の眼用レンズを供与する前記工程は、前記第2の眼用レンズを設計するにあたり、前記第2の眼用レンズを装着していない眼の調節誤差を約40 cmの視標距離で少なくとも10%だけ低減する効果のある領域を有している近視焦点ボケ領域を設けるように前記第2の眼用レンズを設計することを含んでいる、請求項1から請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、人に装着されることになる少なくとも1つの第3の眼用レンズを供与する工程を更に含んでおり、第3の眼用レンズは前記第1のレンズ設計、前記第2のレンズ設計、または、前記第1のレンズ設計と前記第2のレンズ設計の両方と異なっている第3のレンズ設計を有していることを特徴とする、請求項1から請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の眼用レンズを供与する前記工程は、ヒドロゲルコンタクトレンズを供与することを含んでいることを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロゲルコンタクトレンズはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2012−526303(P2012−526303A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509874(P2012−509874)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/033393
【国際公開番号】WO2010/129472
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(508316416)クーパーヴィジョン インターナショナル ホウルディング カンパニー リミテッド パートナーシップ (13)
【Fターム(参考)】