説明

眼科学的分析方法及び分析システム

【課題】分析システムを用いて眼の眼圧を測定する眼科的分析方法、並びに駆動デバイス、モニタリングシステム及び分析デバイスで構成されたタイプの分析システムを提供する。
【解決手段】眼11の角膜10が駆動デバイスで非接触で変形され、空気の一吹きが前記駆動デバイスを用いて前記眼11に加えられて前記角膜10を変形させ、前記角膜10の変形が前記モニタリングシステムで監視及び記録され、変形していない及び変形した前記角膜10の断面像が前記モニタリングシステムを用いて記録され、前記眼圧が前記分析デバイスで前記角膜の断面像から導出され、前記変形した前記角膜10の記録された断面像が、前記変形していない前記角膜10の記録された断面像を基準として補正され、前記眼圧が前記補正を考慮して導出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システムを用いて眼における眼圧(眼内圧)を測定するための眼科学的分析方法、並びに駆動デバイス、モニタリングシステム及び分析デバイスで構成されたタイプの分析システムに関する。眼の角膜が前記駆動デバイスで非接触で変形され、空気の一吹きが前記駆動デバイスを用いて前記眼に加えられて前記角膜を変形させ、前記角膜の変形が前記モニタリングシステムで監視及び記録され、変形していない及び変形した前記角膜の断面像が前記モニタリングシステムを用いて記録され、前記眼圧が前記分析デバイスで前記角膜の断面像から導出される。
【背景技術】
【0002】
このタイプの分析方法及びシステムは、十分に知られており、主に眼における眼圧を非接触でできるだけ正確に測定するために使用されている。例えば、非接触眼圧計がこの目的に使われており、これを使って空気の一吹きが検査されるべき眼に当てられ、眼の角膜が内側に押されてくぼんだ表面形状を形成するように、空気の一吹きの強さが選択される。角膜の変形が最大に達する前に、かつ、角膜が接眼レンズに向かって内側にへこむ前に、角膜は「第1圧平点」と呼ばれる平らな面を一時的に形成する。角膜の最大のゆがみに続いて、角膜が元の状態に戻ると、角膜は、第2の、同じ圧平点を通過する。そして、空気の一吹きの圧力を角膜の圧平の時間的な推移に関連付けることによって、眼圧を確定することが可能になる。非接触眼圧計を用いて確定された測定値は、実際の眼圧に近似した眼内圧が結果として得られるように、比較的正確に測定をする圧平眼圧計又は接触眼圧計を用いて確定された比較測定値と比較される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、非接触眼圧計を用いて測定された眼圧は、圧平眼圧計を用いて得られた圧力測定値に比べて、まだ十分には正確ではない。とりわけ、測定値が角膜によってずれるからである。したがって、測定精度を向上させるために、測定中の角膜の生体力学的特性を非接触眼圧計による測定に含めること、及びこの測定過程におけるこれらの特性を確定することが試みられてきた。この目的のために、空気の一吹きが角膜に当てられ、ポンプ圧が圧力トランスデューサ手段によって前記測定の行程の間連続して測定される。測定の時間的な推移も監視され、角膜の第1及び第2圧平点が光学的に検出される。例えば、特に、角膜が内側及び外側に変形するときに角膜を湾曲させるために必要な力は同じ大きさであると仮定されていて、互いに打ち消し合うので、眼圧は第1及び第2圧平の瞬間における主な圧力を測定することによって導出され得る。したがって、眼圧は、空気の一吹きによって与えられ、角膜を内側及び外側に変形させるために使われる力の平均から結果として得られる。
【0004】
代替として、第1及び第2圧平点間のヒステリシスを求め、このヒステリシス測定に基づいて眼圧を導出又は補正することが知られている。この測定方法の不利な点は、空気の一吹きによって生じる角膜の動きが力学的な効果を受け、これがこのタイプの時間/圧力測定値をゆがめる。特に、上述の非接触眼圧計の測定値の場合には、力学的な効果が考慮され得ないからである。総じて、並列相互依存圧力及び時間を測定し、圧平点の同時検出をする、従来技術からの分析方法及びシステムは、このため、接触眼圧計を用いて行われる測定に比べてまだ比較的不正確である。前述の、可能性がある、不正確さの誤差源を考慮しないとしても、このタイプの非接触眼圧計の場合には、測定に誤差を与える効果が明らかにまだ更に存在する。
【0005】
本発明の目的は、したがって、眼の眼圧を測定する眼科学的分析方法及びこのタイプの分析システムを提供することにあり、これにより測定精度を比較的向上させることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する眼科学的分析方法、及び請求項15の特徴を有する分析システムによって達成される。
【0007】
分析システムを用いて眼の眼圧を測定する本発明による眼科的分析方法において、前記分析システムは、駆動デバイスと、モニタリングシステムと、分析デバイスとを有し、前記眼の角膜が前記駆動デバイスで非接触で変形され、空気の一吹きが前記駆動デバイスを用いて前記眼に加えられて前記角膜を変形させ、前記角膜の変形が前記モニタリングシステムで監視及び記録され、変形していない及び変形した前記角膜の断面像が前記モニタリングシステムを用いて記録され、前記眼圧が前記分析デバイスで前記角膜の断面像から導出され、前記変形した角膜の記録された断面像が、前記変形していない角膜の記録された断面像を基準として補正され、前記眼圧が前記補正を考慮して導出される。
【0008】
驚いたことに、非接触眼圧計による測定の行程において眼の器官全体を監視しているときに、変形していない角膜の記録された断面像と変形した角膜の記録された断面像との間に、相対位置の点で相違が存在することが発見された。空気の一吹きが加えられた結果として、力が眼の角膜に加えられ、眼全体の動きを引き起こす。従来技術から知られている非接触眼圧計による測定の場合には、眼の正面の領域が監視されるのみであるので、眼圧を導出するときに眼の器官全体の動きは考慮され得ず、これが確定された測定値のずれにつながる。本発明による分析方法によると、変形した角膜の記録された断面像は、眼の器官全体の動きによって、変形していない角膜の断面像に対してずれているのであるが、問題になっている誤差によって補正され、そのときにのみ、眼圧が、変形した及び変形していない記録された断面像から導出される。誤差源は、従来は非接触眼圧計の手段によって眼圧を測定するときに考慮されていなかったのであるが、効果的に除外され得るし、測定精度のレベルが遙かに改善される。
【0009】
変形していない角膜の断面像は、このように、変形した角膜の断面像のための参照点として用いられ得る。したがって、眼の器官全体の動きに起因する、参照点からの又は変形していない角膜の少なくとも1つの断面像からの、変形した角膜の断面像の空間的変位が、補正され得る。変形していない角膜の断面像、又はそれから推測される変形していない角膜の位置は、したがって、変形した角膜の又は眼の器官全体の空間的変位の参照点として用いられる。
【0010】
変形した角膜の断面像は、変形していない角膜の断面像を基準として、空間的オフセットによってそれぞれ補正され得る。空気の一吹きによって駆動デバイスから離れる方向に生じる眼の器官全体の動きは、したがって、光軸又は分析システムのデバイス軸の方向への眼全体の空間的、平行オフセットを生じさせる。測定中に生じる誤差は、このオフセットを確定することによって特に容易に補正され得る。つまり、変形した角膜の断面像を、変形していない角膜の断面像に対する空間的オフセットによって補正することのみが必要である。
【0011】
オフセットの機能を考慮すると、このタイプの補正は更に改善され得る。これは、角膜の変形の期間に関して、眼全体の動きは、必ずしも平行に、かつ角膜の変形に線形に推移するわけではないことを意味する。例えば、それぞれの質量の違いのため、眼全体の動きが角膜の動きに関して遅れるということ、及び、角膜の変形が最大に達したときでさえ、起こり得る最大のオフセットにまだ達しないということが、補正の間、考慮され得る。眼を収容する眼窩は、空気の一吹きが眼に加えられると、眼の動きに抵抗して既に逆らっているので、眼の器官全体の動きが、角膜の変形期間に関して線形には拡張されないということも、考慮に入れてよい。
【0012】
角膜の変形の開始と終了との間の期間が測定され得る。特に、全ての記録された断面像は、測定の特定の瞬間にそれぞれ対応付けられ、これによって変形の時間的な行程が再現され得る。特に、角膜の第1及び第2圧平の瞬間、及び時間間隔が正確に求められ得る。この期間の確定は、適切な補正値を求めるためにも用いられ得る。更に、角膜の変形全体の期間は、補正値を導出するために参照され得る。
【0013】
動いた角膜の速度も測定され得る。特に角膜の変形の時間的な推移が知られていれば、変形中の動的な効果を必要な補正に関して評価するために、変形又はオフセットの変遷も調査され得る。例えば、空気の一吹きを加えられた際の角膜の後振動は、測定において後振動を考慮すればもはや測定結果に誤差を与える効果はない。空気の一吹きの速度も、そうでなければ測定には好ましくない動的な効果に関して、任意に選択可能である。測定された速度から押し込みの深さ、又は変形及びオフセットの最大値を推定することも可能である。これらの変数の間には関数の関係があるからである。
【0014】
眼球のオフセットが測定されると、特に正確な補正が可能である。眼の器官全体の動きが、全体として検出され得るし、したがって補正され得る。
【0015】
眼底のオフセットを測定することも可能である。例えば、干渉計又は他の適切な測定デバイスが、眼の長さ、又はその測定デバイスに関しての眼底までの距離並びに眼の網膜の点を求めるために用いられ得る。この距離は、空気の一吹きによる角膜の変形の間、連続して測定され得、これにより、空気の一吹きにより生じる網膜のオフセットが確定され得る。眼の器官全体の動きは、このように実質的に比較的正確に測定され得る。
【0016】
この目的のために、単独で又は前記方法への前述の変更に加えて、オフセットを、変形した角膜及び変形していない角膜の断面像から導出することも可能である。変形した角膜の一連の断面像が記録されると、断面像から明らかになる変形の推移に基づいて、眼のオフセットが空気の一吹きの結果として生じたのか否かを判定し、このオフセットはどのくらいの大きさなのかを求めることが可能である。
【0017】
このオフセットは、光軸又はデバイス軸から離れた断面像の周辺領域における複数の参照点から確定される。角膜は、空気の一吹きにより、記録された断面像の周辺領域、例えば強膜への遷移領域においては遙かに小さく変形される。むしろ、眼の器官全体の動きによって生じる角膜の各領域のオフセットの結果として生じる断面像の比較から、変形は明らかになる。角膜の周辺領域の変形に対するオフセットの影響又は効果がわかっていれば、これは、変形した角膜の断面像を補正するために、考慮され得る。
【0018】
最大オフセットが確定されていれば、更に有利である。角膜の変形が眼の器官全体の最大オフセットに達する瞬間が、容易に確定され得る。これらの測定値も、変形した角膜の記録された断面像のより正確な補正のために参照され得る。
【0019】
本発明による方法の場合に、ポンプ圧を測定する必要はないということにも、注目しなければならない。このため、眼圧のどのような測定も、常に同一の一定のポンプ圧で行われ得る。この場合、ポンプ圧のレベル及びポンプ圧の時間的な同期は、変更する必要がなく、あり得る誤差源の範囲が排除され得るし、特に正確な測定が行われ得る。
【0020】
空気の一吹きを生成するポンプ圧は、その継続時間に関してベル形曲線の形で推移すれば、更に有利である。ポンプ圧は、それぞれの測定に全く同様に、かつ全く影響を受けずに、角膜に対して空気の一吹きの形で作用し得る。ベル形曲線は、とりわけ、対称的な形を有していてもよい。
【0021】
空気の一吹きを生成するための最大ポンプ圧も、その前後の測定において同一であってもよい。異なる測定を特によく比較することが、これにより可能になり得る。最大ポンプ圧は、例えば70mmHgであり得る。
【0022】
必要な場合にポンプ圧を補正し、望ましい圧力カーブを確認することをなお可能にするために、空気の一吹きを生成するためのポンプ圧は、角膜の圧平点に達すると測定され得る。例えば、ポンプは、測定の全行程にわたってポンプ圧を監視することを可能にする圧力センサを有していてもよい。ポンプ圧に関してのどのような誤差も、測定中に排除され得るし、連続する測定の一貫性が保証され得る。
【0023】
補正値をより正確に求めるために、角膜の最大の変形は、角膜の断面像から導出され得る。少なくとも圧平点の1つに関して、角膜の最大の押し込み深さが断面像から確定され得、角膜の最大の変形の瞬間も求められ得る。
【0024】
角膜の断面像の必要な補正は、角膜の変形の振幅が角膜の断面像から導出される場合には、より正確に求められ得る。変形及びオフセットの正確な幾何学的な推移は、それゆえ容易に再現され得る。これは、変形のどのような瞬間であっても、その瞬間の変形の幾何学的な形状が記録され得、したがって変形の幾何学的な推移が変形の映画のように測定され得る、ということを意味する。例えば、角膜が外に向かってたわむときの又は第2圧平点の後の後振動も、効果的に測定され得る。
【0025】
角膜の圧平点に達しているときであっても、平坦な圧平領域のサイズも、オプションとして測定され得る。例えば、圧平領域のサイズ及び/又はその直径及び/又はその形状を、角膜の変形のウェイポイントの標識として考慮に入れられてもよい。
【0026】
更に、変形中の角膜の他の測定可能な点又はオフセットに関して、角膜又は断面像のオフセットを眼の動きの結果として定義するために、変形領域又は圧平領域が変形の特定の期間において参照されてもよい。それぞれの位置の確定された変位及び相対値も、データベースにおいて格納され、比較され得る。目的とする眼の内圧又は対応する補正値が、このようにデータベースに格納された値として知られ得るし、したがって測定された眼の目的とする眼圧が、角膜又は眼全体のオフセットを考慮して導出され得る。
【0027】
角膜の断面像のオフセットは、角膜の変形が角膜の自由振動によって続いている場合、及び、角膜の自由振動の更なる補正が行われる場合には、更に識別され得る。その結果として、角膜の実際の変形を越えた角膜の断面像が、角膜のどのような自由振動をも確定するために、モニタリングシステムの手段によって記録され得る。
【0028】
本分析方法の好都合な実施形態において、モニタリングシステムは、カメラと、シャインプルーク(Scheimpflug)配置された照明デバイスとを備え、断面像は前記カメラ手段によって記録され得る。これは、カメラが、眼を照明するためのギャップ照明デバイスの光軸に関してシャインプルーク配置されていてもよく、眼の照明断面像がこのカメラを用いて記録され得る、いうことを意味する。例えば、カメラは、少なくとも毎秒4000画像を撮影可能な高速度カメラとして用いられてもよい。ギャップ照明デバイスの光軸は、眼の光軸の範囲に入ってもよいし、これと一致してもよい。空気の一吹きの動く方向は、好ましくはギャップ照明デバイスの光軸と同じ方向であってもよい。
【0029】
本発明による眼の眼圧を測定する眼科的分析システムは、駆動デバイスと、モニタリングシステムと、分析デバイスとを有する。前記眼の角膜が前記駆動デバイスで非接触で変形され得、空気の一吹きが前記駆動デバイスを用いて前記眼に加えられて前記角膜を変形させることが可能であり、前記角膜の変形が前記モニタリングシステムで監視及び記録され得、変形していない及び変形した前記角膜の断面像が前記モニタリングシステムを用いて記録され、前記眼圧が前記分析デバイスで前記角膜の断面像から導出され得、前記変形した角膜の記録された断面像が、前記変形していない角膜の記録された断面像を基準として補正され、前記眼圧が前記補正を考慮して導出される。
【0030】
本分析システムの更なる好都合な実施形態が、方法の請求項1に従属する請求項の特徴の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】測定過程における眼の角膜の変形の縦断面図を示す。
【図2】測定過程におけるポンプ圧及びポンプ時間を表すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の好適な実施形態を、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0033】
図1(a)〜(c)は、分析システム(ここでは図示せず)を用いて眼の内圧の各測定時における眼11の角膜10の変形の特定の状態を示す。これらの図は、眼11の光軸12に沿った縦断面図である。図2は、横軸に時刻t、縦軸にポンプ圧pを示すグラフを示す。モニタリングシステム(図示せず)又はギャップ照明デバイスを有するシャインプルーク(Scheimpflug)カメラを独立して使用して、ポンプ圧は、ポンプの開始時刻Tでの圧力Pから始まり時刻Tで最大ポンプ圧Pに達し、終了時刻Tでポンプ圧Pまで再び低下する、対称的なベル形曲線13のように推移する。ポンプを起動してTで角膜10に発射された空気の一吹きは、角膜10の第1変形をもたらし、時刻Aの直後に、これはモニタリングデバイスによって記録され得る。図1(a)は、時刻Aにおける、まだ変形していない角膜10の形を示している。ポンプ圧が上昇するにつれて、図1(b)のとおりに角膜10の完全圧平が時刻Aで観察される。ここで、図示されているように、ほぼ平坦で圧平15の平面にある直径d1の圧平領域14が形成される。つまり角膜は角膜の頂点16からXだけ退かされ又は押し込まれる。ポンプ圧Pは、時刻Aで前記第1圧平点に達する瞬間と同じ時刻Tに、達成されてもよいし、必ずしもそうでなくでもよい。ポンプ圧Pに達すると、時刻Aで角膜10の最大の変形が生じ、これは図1(c)の説明図に対応する。最大の変形を示す点17は、角膜10の頂点16からXだけ退いている。この場合、これが変形の振幅の最大の振れである。へこんだ変形領域18の直径dは、変形のこの最大振幅において形成され、測定される。直径dは、角膜10の縦断面の面における2つの対向する点の間の距離によって定義される。これらの点は、角膜10の、分析システムに面する最も近い点を表す。次に角膜10は、戻る動きを行うか、振動を停止し、ここでは詳細には図示されていないが、時刻Aにおいて第2圧平点に達する。同じ時刻Tにおいてポンプ圧Pを求めることも可能である。時刻Tでポンプ圧が元の値Pに戻ると、角膜10は、時刻Aにおいて、図1(a)に図示されているように、その最初の位置に再び達する。説明された角膜10の変形の状態は、A〜Aで表記された各時刻によって特徴付けられるが、眼の眼圧の各測定の前述の説明に従って確定される。関連する時刻A〜Aの間隔、並びに長さ又は押し込みの深さX及びXは、特にポンプ圧とは独立して測定される。
【0034】
図1(a)〜(c)から更に推測できるように、眼11は、長さAを有し、頂点16から網膜19までの光軸12に沿った距離は長さLである。頂点16からレンズ20までの長さZも測定可能である。例えば、長さZは、シャインプルーク配置されたカメラ手段によって測定可能であり、長さLは干渉計を用いて測定可能である。角膜10が空気の一吹きという手段によって変形されるときには、図1(b)に示されているように、眼11の全体は眼窩(図示せず)において光軸12に沿って長さYだけオフセットしている。角膜10は押し込みの深さXによって測定できる程度に変形しているので、角膜10の実際の変形は、頂点16を基準として等式Xcorrection=X−Yに従って存在する。その結果、図1(b)に示された断面像は、補正された断面像を用いて眼圧を導き出すために、長さYだけ補正される。角膜10が更に押し込みの深さXまで変形されると、眼11は長さYだけ同様にオフセットされる。すると、図1(c)に示された変形した眼11の断面像は、前述のように、光軸12に沿って長さYだけシフト又は補正される。代替として又は加えて、長さZ,Z及びZの間の差に基づいて、各断面像は同様に補正されてもよい。
【0035】
変形した眼11及び角膜10の、このようにして補正された断面像を用いると、角膜の断面像から眼圧を導出するときに実質的な誤差源を排除し、従来技術から知られている測定方法と比べてより正確な眼圧の測定値を得ることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動デバイス、モニタリングシステム及び分析デバイスで構成された分析システムを用いて眼(11)の眼圧を測定する眼科的分析方法であって、
前記眼の角膜(10)が前記駆動デバイスで非接触で変形され、空気の一吹きが前記駆動デバイスを用いて前記眼に加えられて前記角膜を変形させ、
前記角膜の変形が前記モニタリングシステムで監視及び記録され、変形していない及び変形した前記角膜の断面像が前記モニタリングシステムを用いて記録され、
前記眼圧が前記分析デバイスで前記角膜の断面像から導出され、
前記変形した角膜の記録された断面像が、前記変形していない角膜の記録された断面像を基準として補正され、前記眼圧が前記補正を考慮して導出される
ことを特徴とする分析方法。
【請求項2】
前記変形していない角膜(10)の断面像が、前記変形した角膜の断面像の参照点として用いられる
ことを特徴とする請求項1の分析方法。
【請求項3】
前記変形した角膜(10)の断面像が、前記変形していない角膜の断面像を基準として空間的にオフセットすることによってそれぞれ補正されるという点において、前記変形した角膜の断面像は補正される
ことを特徴とする請求項1又は2の分析方法。
【請求項4】
前記オフセットの機能が考慮される
ことを特徴とする請求項3の分析方法。
【請求項5】
眼球のオフセットが測定される
ことを特徴とする請求項3又は4の分析方法。
【請求項6】
眼底(19)のオフセットが測定される
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項7】
オフセットが前記変形した又は変形していない角膜(10)の断面像から導出される
ことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項8】
前記オフセットは、光軸(12)又はデバイス軸から離れた前記断面像の周辺領域における複数の参照点から確定される
ことを特徴とする請求項7の分析方法。
【請求項9】
最大オフセットが確定されている
ことを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項10】
前記空気の一吹きを生成するポンプ圧は、その継続時間に関してベル形曲線(13)の形で推移する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項11】
前記空気の一吹きを生成するための最大ポンプ圧は、その前後の測定において同一である
ことを特徴とする請求項10の分析方法。
【請求項12】
前記空気の一吹きを生成するためのポンプ圧は、角膜(10)の圧平点に達すると測定される
ことを特徴とする請求項10又は11の分析方法。
【請求項13】
前記角膜(10)の最大の変形は、前記角膜の断面像から導出される
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項14】
前記モニタリングシステムは、カメラと、シャインプルーク(Scheimpflug)配置された照明デバイスとを備え、
前記断面像は前記カメラ手段によって記録される
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項15】
眼(11)の眼圧を測定する眼科的分析システムであって、
駆動デバイスと、モニタリングシステムと、分析デバイスとを備え、
前記眼の角膜(10)が前記駆動デバイスで非接触で変形され得、空気の一吹きが前記駆動デバイスを用いて前記眼に加えられて前記角膜を変形させることが可能であり、
前記角膜の変形が前記モニタリングシステムで監視及び記録され得、変形していない及び変形した前記角膜の断面像が前記モニタリングシステムを用いて記録可能であり、
前記眼圧が前記分析デバイスで前記角膜の断面像から導出され得、
前記変形した角膜の記録された断面像が、前記変形していない角膜の記録された断面像を基準として補正され、前記眼圧が前記補正を考慮して導出される
ことを特徴とする分析システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−250040(P2012−250040A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−124197(P2012−124197)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(509081562)オクルス オプティクゲレーテ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)