説明

眼科測定装置

【課題】状態が時々刻々と変化する被検眼が計測に適した状態にあるか否かを直感的に且つ的確に把握することができる眼科測定装置を提供する。
【解決手段】前眼部を照明する照明手段58と、前眼部からの反射光を前眼部像100として受光する光電変換手段52と、前眼部像100に基づいて瞳孔径を算出する算出手段70と、前眼部像を表示する表示手段62と、を少なくとも備える眼科測定装置であって、算出された瞳孔径に対応した大きさの瞳孔径疑似リング120が、前眼部像100の瞳孔像102に重ねて表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レフラクトメータやケラトメータやレフケラトメータ等の眼科測定装置に関し、詳細には、被検眼の瞳孔径に対応した瞳孔径疑似リングを表示する機能を有する眼科測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の前眼部に照明光を照射(投影)して、その反射光すなわち被検眼前眼部像をモニタ画面上に表示し、検者が計測用カーソル等をモニタ画面上の被検眼前眼部像に位置合わせを行い、被検眼の瞳孔径をモニタ画面上で手動で計測する方法が用いられている。
【0003】
また、被検眼の前眼部に指標測定光を照射(投影)して、その反射光すなわち被検眼前眼部像を受光した光電検出器上の受光像に基づいて被検眼の瞳孔径を計測し、その計測値をモニタ画面上に自動的に表示することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
上記いずれの方法も、被検眼の瞳孔径の計測データを数値としてモニタ上に表示するだけであり、その数値がどのような意味を持っているかを直感的に且つ的確に把握することができない。すなわち、一般に、アライメント状態が変化したり、瞼や睫毛の影響を受けたり、あるいは瞳孔の大きさや位置等が変化したりすることによって計測中の被検眼の状態が時々刻々と変化するが、検者は、状態が時々刻々と変化する被検眼が計測に適した状態にあるか否かについて直感的に且つ的確に把握することができない。
【0005】
【特許文献1】特開2000−262475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、状態が時々刻々と変化する被検眼が計測に適した状態にあるか否かを直感的に且つ的確に把握することができる眼科測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及びその作用と効果】
【0007】
上述の技術的課題を解決するために、本発明に係る眼科測定装置は、以下の特徴を有する。
【0008】
すなわち、本発明に係る眼科測定装置は、
前眼部を照明する照明手段と、
前眼部からの反射光を前眼部像として受光する光電変換手段と、
前眼部像に基づいて瞳孔径を算出する算出手段と、
前眼部像を表示する表示手段と、を少なくとも備える眼科測定装置であって、
算出された瞳孔径に対応した大きさの瞳孔径疑似リングが、前眼部像の瞳孔像に重ねて表示されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、算出手段によって算出された瞳孔径に対応した大きさの瞳孔径疑似リングが、前眼部像の瞳孔像に重ねて表示されているので、算出結果が妥当であるか否かを瞳孔像と比較して直感的に視認可能であり、アライメント状態が変化したり、瞼や睫毛の影響を受けたり、あるいは瞳孔の大きさや位置等が変化したりすることによって被検眼の状態が時々刻々と変化したりすることによって、生じる誤測定を瞬時に知ることができる。その結果、被検眼の状態が、計測に適した状態であるか計測に適していない状態であるかを検者は直感的に且つ的確に把握することができる。
【0010】
被検眼の状態が時々刻々と変化するので、瞳孔径疑似リングの表示時間が、視認できる程度に瞬時であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る眼科測定装置の一実施形態を、図1乃至4を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1に示した眼科測定装置は、被検眼2の角膜形状と眼屈折力との両方を測定することができるレフラクト・ケラトメータである。レフラクト・ケラトメータは、角膜曲率半径及び眼屈折力等の光学特性を測定するための光学測定部50と、I/Oポート66を介して光学測定部50からの各種データに基づいて角膜曲率半径及び眼屈折力等の測定値を演算したり、光学測定部50の動作を制御するCPU(中央処理装置)70と、前眼部像100やレチクルマーク112や瞳孔径疑似リング120や眼科測定値といった種々の情報を表示するモニタ62と、I/Oポート66を介して操作情報を入力する入力装置68と、を備えている。
【0013】
光学測定部50は、被検眼2の前眼部に照明光を投影する照明用光源58と、被検眼2の角膜にケラト測定光を投影するケラト測定用光源56と、被検眼2の眼底に対してレフラクト測定光を投影するレフラクト測定用光源54と、眼底指標像や前眼部像や角膜指標像を受光して光電変換する光電検出器(CCDセンサ)52と、レフ受光像のフォーカスを制御するフォーカス駆動回路60と、を備える。
【0014】
照明用光源58は、通常、接眼レンズの近傍に設けられており、照明用光源58から出射された照明光は、被検眼2の角膜上に投影される。前眼部像は、接眼レンズ、ダイクロイックミラー、フィールドレンズ、ビームスプリッタ、及び絞り等からなる前眼部観察光学系によって光電検出器(CCDセンサ)52上に導かれる。
【0015】
被検眼2の角膜あるいは眼底に対して光学特性測定用の指標光をそれぞれ投影する投影光学系及びその受光光学系について説明する。
【0016】
被検眼2の角膜の曲率半径を測定するためのケラト測定用の指標光投影光学系は、接眼レンズの近傍に設けられている。リング状に配置されたケラト測定光源から出射された光は、拡散板を介して被検眼2の角膜上に投影される。角膜指標像は、接眼レンズ、ダイクロイックミラー、フィールドレンズ、ビームスプリッタ、及び絞りからなる前眼部観察光学系によって光電検出器(CCDセンサ)52上に導かれて結像する。
【0017】
被検眼2の眼屈折力を測定するためのレフラクト測定用の指標光投影光学系において、レフラクト測定光源から出射したレフラクト測定光は、穴開きミラー、ダイクロイックミラー、接眼レンズを経て、被検眼に投影され、被検眼の眼底で反射して眼底指標像を形成する。眼底指標像は、接眼レンズ、ダイクロイックミラー、穴開きミラー、及び結像レンズからなるレフ受光光学系によって光電検出器(CCDセンサ)52に導かれて結像する。
【0018】
角膜曲率半径及び眼屈折力や瞳孔径等を算出する算出手段としてのCPU70は、光電検出器(CCDセンサ)52上で結像した被検眼反射像等の画像信号から、上記の諸データ値を算出する。CPU70には、光電検出器(CCDセンサ)52からの信号を受け取って角膜反射像をモニタ62に出力するビデオ回路64と、投影・受光光学系を介して被検眼2に対して投影する各光源を制御する制御出力信号、及びジョイスティックやキーボード等の入力装置68の入力信号の入出力端子であるI/Oポート66と、アナロクデータをデジタル化するためのA/D変換回路と、システム制御のプログラムが書き込まれたROM74と、システムのワークエリアとして使用されて角膜指標像や眼底指標像や瞳孔径の各実測値を一時的に記憶する記憶手段としてのRAM76と、ビデオ回路64からの信号を直接CPU70に伝えるダイレクトメモリアクセス回路72と、が接続されている。
【0019】
前眼部像の結像した光電検出器(CCDセンサ)52から出力された電気信号は、ビデオ回路64で映像信号に変換され、画像表示デバイスとしてのモニタ62に前眼部像100が表示される。検者はモニタ62上の前眼部像100を見ながら、ジョイスティック68を操作して、光学測定部50を搭載した移動台をベースに対して前後、左右に移動させる。前眼部像100の中心がモニタ62に表示されたレチクルマーク112の中心と一致するように、すなわち被検眼2と光学測定部50との光軸1が一致するように、検者はモニタ62を見ながら照準する。なお、このような照準操作を行う際には、被検眼2が光学測定部50に対して予め略合焦状態になっているので、その後に続く合焦操作が容易且つスムーズに行われる。
【0020】
光電検出器(CCDセンサ)52上に結像された角膜指標像116も、上記前眼部像100と同様の信号処理によって、モニタ62に表示される。検者は、モニタ62に表示された角膜指標像116を見ながら、光学測定部50を搭載した移動台をベースに対してジョイスティック68を操作して前後に動かして、角膜指標像116を合焦させる。
【0021】
次に、本発明の一実施形態としてのレフラクト・ケラトメータの測定方法に関して、図2及び3に示したモニタ62上の表示画面と、図4に示した測定フローチャートとを参照しながら詳細に説明する。
【0022】
ステップ#100で被検眼2の測定が開始される。ステップ#110では、被検者が不図示の固視標を測定窓から注視している状態で照明用光源が点灯されて、光電検出器(CCDセンサ)52上に結像された前眼部像は画像処理されてモニタ62に表示される。検者は、モニタ62に表示された前眼部像100を見ながら、ジョイスティック68を操作して光学測定部50の載置された移動台をベースに対して前後、左右に移動させる。このように検眼部100を光学測定部50に対して三次元的に移動させることにより、モニタ62上に表示されたレチクルマーク112の中心と前眼部像100の中心とが一致させるべくアライメント調整を行う。このとき、光学測定部50は被検眼2に対して略合焦位置となっている。
【0023】
ステップ#120において、このようなアライメント操作が完了したか否かが判断される。アライメントが完了していなければ、ステップ#110に戻って、上述のアライメント調整が完了するまで繰り返し行なわれる。アライメント調整が完了しているならば、次のステップ#130に進む。
【0024】
ステップ#130において、光電検出器(CCDセンサ)52上に結像されたある瞬間の前眼部像100のデータをRAM76に一時的に蓄え、ある瞬間の前眼部像100に対して画像処理を施して、被検眼2の瞳孔情報(瞳孔径や瞳孔形状)が求められ、それらの情報はRAM76に一時的に格納される。モニタ62上に表示される前眼部像100が時々刻々と更新されることに対応して、RAM76に格納されている被検眼2の瞳孔情報(瞳孔径や瞳孔形状)も時々刻々と更新されている。
【0025】
ステップ#140において、検者は眼屈折度測定を開始するか否かを判断する。測定不適切と判断した場合には、アライメント操作のステップまで戻る。
【0026】
測定開始OKと判断したとき、ステップ#150において、算出された瞳孔径に相当するサイズの瞳孔径疑似リング120がモニタ62上に表示される。すなわち、図2に示すように、瞳孔径疑似リング120は、モニタ62上に表示された前眼部像100の瞳孔像102と同心であるように、瞳孔像102に重ねて表示される。このとき、検者が瞳孔径疑似リング120を容易に視認することができるように、瞳孔径疑似リング120を白色表示としたり、瞳孔径疑似リング120を例えば黄色等のカラー表示としたり、瞳孔径疑似リング120を点滅表示したりすることができる。また、表示される瞳孔径疑似リング120は、連続したリングや、破線や点線のように一部分が規則にあるいは不規則に切り欠かれた不連続リングであってもよい。
【0027】
ステップ#160において、瞳孔径疑似リング120が、非常に短時間、モニタ62上に表示される。瞳孔径疑似リング120のモニタ62上に表示時間は、例えば、0.01乃至0.1秒であり、好ましくは0.05秒程度である。このとき、瞳孔径疑似リング120が瞳孔像102と虹彩像104との境界部分にすなわち瞳孔像102の最外周縁にまで延在するように表示されているとき、被検眼2は測定に適した状態にあると判断される。逆に、瞳孔径疑似リング120が瞳孔像102の例えば半分程度の大きさにしか表示されていない場合や瞳孔径疑似リング120が全く表示されていない場合には、睫毛や瞼が瞳孔に重なった影響を受けて、被検眼2は測定に適した状態には無いと判断される。
【0028】
ステップ#170において、瞳孔径疑似リング120が非表示の状態となって、前眼部像100だけがモニタ62上に表示される。
【0029】
ステップ#180では、レフラクト測定用指標光を眼底に投影し、眼底で反射した眼底指標像の光は、レフラクト測定用光源54を経て光電検出器(CCDセンサ)52上に結像される。光電検出器(CCDセンサ)52上に結像された眼底指標像が画像信号としてRAM76に格納される。
【0030】
ステップ#190では、RAM76に格納された眼底指標像の画像データから、S(球面度数)、C(乱視度数)、A(乱視軸)が算出される。そして、図3に示すように、算出されたこれらのデータとともに、図2に示された瞳孔径疑似リング120に対応する瞳孔径φが表示される。ステップ#200で被検眼の測定が終了する。
【0031】
本願発明によれば、CPU70によって算出された瞳孔径に対応した大きさの瞳孔径疑似リング120が、前眼部像100の瞳孔像102に重ねて表示されているので、算出結果が妥当であるか否かを瞳孔像と比較して直感的に視認可能であり、アライメント状態が変化したり、瞼や睫毛の影響を受けたり、あるいは瞳孔の大きさや位置等が変化したりすることによって生じる誤測定を瞬時に知ることができる。その結果、被検眼2の状態が、計測に適した状態であるか計測に適していない状態であるかを検者は直感的に且つ的確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る眼科測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の眼科測定装置のモニタ上に表示される表示画面の例である。
【図3】図1の眼科測定装置のモニタ上に表示される他の表示画面の例である。
【図4】図1の眼科測定装置の動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 光軸
2 被検眼
50 光学測定部
52 光電検出器
54 レフラクト測定用光源
56 ケラト測定用光源
58 照明用光源
60 フォーカス駆動回路
62 モニタ
64 ビデオ回路
66 I/Oポート
68 入力装置
70 CPU
72 DMA
74 ROM
76 RAM
100 被検眼像
102 瞳孔像
104 虹彩像
112 レチクルマーク
114 被検眼照明光
116 ケラト測定光
120 瞳孔径疑似リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前眼部を照明する照明手段と、
前眼部からの反射光を前眼部像として受光する光電変換手段と、
前眼部像に基づいて瞳孔径を算出する算出手段と、
前眼部像を表示する表示手段と、を少なくとも備える眼科測定装置であって、
算出された瞳孔径に対応した大きさの瞳孔径疑似リングが、前眼部像の瞳孔像に重ねて表示されていることを特徴とする眼科測定装置。
【請求項2】
瞳孔径疑似リングの表示時間が、視認できる程度に瞬時であることを特徴とする、請求項1記載の眼科測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−143746(P2007−143746A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340694(P2005−340694)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)