眼科装置及びその制御方法
【課題】従来の眼球運動計測装置(眼球追尾装置)は眼底画像から特徴点を抽出し、画像を比較する事で取得画像間での眼球の動き量を算出していたが、抽出された特徴点が取得画像の端部に位置していると眼球が動いた際、特徴点が次画像上に無く眼球の動き量が検出できない等の問題があった。
【解決手段】被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置であって、前記被検眼の眼底画像を取得する取得手段と、前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定手段と、前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から特徴点を抽出する抽出手段とを有することを特徴とする眼科装置を用いる事で前記課題を解決できる。
【解決手段】被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置であって、前記被検眼の眼底画像を取得する取得手段と、前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定手段と、前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から特徴点を抽出する抽出手段とを有することを特徴とする眼科装置を用いる事で前記課題を解決できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置及び制御方法に関するもので、特に眼球の動きを求める眼科装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、眼球運動を計測する装置が注目されている。眼球運動の計測が可能になれば、視野検査や、より高精細な画像を取得する眼底断層撮像装置等に応用し、より精度の高い眼底検査が可能になる。
【0003】
眼球運動を計測する方法としては角膜反射法(プルキニエ像)、サーチコイル法等、様々な技術が公知である。なかでも、簡易的で被験者に負担が少ない方法として、眼底画像から眼球運動を計測する方法が検討されている。
【0004】
眼底画像から精度良く眼球運動を計測するには、眼底画像から特徴点を抽出し、処理対象とする画像において特徴点を探索・検出した後、特徴点の移動量を算出する必要がある。これらのうち、特徴点の抽出工程は眼球運動の計測安定性・精度・再現性という点で重要である。眼底画像の特徴点としては、黄斑や視神経乳頭(以下、乳頭とする)などが用いられる。また、患眼等では黄斑や乳頭が不完全な場合が少なくない為、眼底画像の特徴点として、血管が用いられる事もある。血管の特徴点の抽出方法として様々な方法が知られている。例えば特許文献1には、眼底画像に設定したフィルターの外周部上における画素値の平均値から、血管の本数及び、フィルター中心部における血管の存在の有無を判定し、フィルター領域内における血管交叉部の存在判定を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−70247
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の様な方法を用いて眼底の特徴点を抽出し、画像間の特徴点の位置関係を比較する事で取得画像間での眼球の動き量を算出すれば、眼底画像から精度良く眼球の動きを検出することが可能である。しかし、抽出された特徴点が取得画像の端部に位置しているような場合には、眼球の動きによって特徴点が処理対象とする画像上から外れてしまい、眼球の動き量が検出できなくなること(特徴点探索エラー)があるという問題があった。また、眼球の回旋運動を検出しようとする際に、画像の中心部から特徴点が抽出されると、眼球の回旋による特徴点の位置の変化が生じず、回旋が検出できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決する為、本発明に係る眼科装置は、被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置であって、前記被検眼の眼底画像を取得する取得手段と、前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定手段と、前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から特徴点を抽出する抽出手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る眼科装置の制御方法は、被検眼の眼底画像から特徴点を抽出し、抽出した特徴点の位置の変化を算出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置の制御方法であって、前記被検眼の眼底画像を取得する工程と、前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定工程と、前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除く第2の領域から前記特徴点を抽出する抽出工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に依れば、眼球が動いた際にも眼底特徴点が取得画像の枠外に外れる事が無く、特徴点探索エラーの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1における眼底カメラの光学系の構成を説明する概略図である。
【図2】本発明の実施例1における眼底画像を説明する概略図である。
【図3】本発明の実施例1における装置の機能体系の概略図である。
【図4】本発明の実施例1における制御フロー図である。
【図5】本発明の実施例1における制御フローの処理Aに関するフロー図である。
【図6】本発明の実施例1における制御フローの処理Bに関するフロー図である。
【図7】本発明の実施例2におけるOCT装置とSLO装置の光学系の構成を説明する概略図である。
【図8】本発明の実施例2における装置の機能体系の概略図である。
【図9】本発明の実施例2における制御フロー図である。
【図10】本発明の実施例2における制御フローの処理Cに関するフロー図である。
【図11】本発明の実施例2における眼球の移動距離を算出する為のグラフに関する概略図である。
【図12】本発明の実施例2における制御フローの処理Dに関するフロー図である。
【図13】本発明の実施例2におけるSLO画像を説明する概略図である。
【図14】本発明の実施例2における表示例を表す概略図である。
【図15】本発明の実施例3における眼底画像を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について、以下の実施例において図面を用い詳細に説明する。
なお、以下の実施例では本発明を単一の装置に応用した例を記載するが、本発明の対象は下記の構成に限定されることはなく、また、下記の構成を備える単一の装置に限定されることはない。本発明は、下記の機能を実現するための方法の使用及び、これらの機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理によっても実現される。
【実施例】
【0012】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1について説明する。
本実施例では、上記説明した課題を解決するために、眼底画像の特徴点を抽出する際、抽出領域を指定する事で、眼球運動を計測する例について述べる。
【0013】
(眼底カメラ)
眼底画像取得に眼底カメラを用いた。図1に眼底カメラの概略図を示す。眼底カメラ本体部1には、信号取得部としてビデオレートで撮像可能なデジタル一眼レフカメラ50が接続部40を介し接続されている。被検眼Eと対向する対物レンズ11の光路上には、孔あきミラー12が設けられている。孔あきミラー12の入射方向の光路上には、リレーレンズ13、黒点板14、リレーレンズ15、リングスリット板16、蛍光エキサイタフィルタ17、ミラー18が配列されている。更に、ミラー18の入射方向には、コンデンサレンズ19、キセノン管から成る撮影用光源20、コンデンサレンズ21、赤外発光ダイオードから成る観察用光源22が配置されている。尚、図上における光路は点線で示している。
【0014】
孔あきミラー12の背後には、フォーカスレンズ24、蛍光バリアフィルタ25、結像レンズ26が配列され、デジタル一眼レフカメラ50が接続されている。デジタル一眼レフカメラ50内には、対物レンズ11の背後の光路と同一光路上に、クイックリターンミラー51、フォーカルプレーンシャッタ(図示せず)、二次元センサ53が配置されている。また、クイックリターンミラー51の反射方向には、ペンタプリズム54、接眼レンズ55が設けられている。二次元センサ53で受光した信号は信号処理基盤52で処理され、ケーブルを介し、HDD58を有するPC56へ転送され、ディスプレイ57に表示される。眼底カメラには、外部固視灯(図示せず)が設けられ、固視が安定するよう構成されている。
【0015】
(制御方法)
図3に機能体系を示す。機能体系は、システム全体を制御するCPU303、眼底画像取得部を制御する制御部305、眼底画像を取得するカメラ部301、システム状態を表示する表示部302、眼底画像や撮像条件等を記録するHDD(記録部)304、により構成されている。眼底の観察時及び撮影時には、CPU303より制御部305に撮像条件が指令され、眼底が撮像される。眼底が撮像された後、カメラ部301からCPU303に画像が送られ、画像処理等がなされた後、表示部302で表示され、同時又はその後、記録部304に保存される。
【0016】
上述の機能を用い、一定時間の眼球運動を計測する全体のフローを図4に示す。眼底カメラ1を用い、第1の眼底画像を取得する(ステップ402)。第1の眼底画像を取得した後、特徴点(以下、テンプレートと記す)を抽出する前に、第1の画像の周辺部から画像の中心座標方向に一定の幅を有する領域を、マスク領域(第1の領域)として設定する(ステップ403)。このとき、測定時間内の固視微動等により眼球が移動する距離よりもマスク領域の幅が広くなるように、マスク領域を設定する。マスク領域以外の部分を抽出領域(第2の領域)として、抽出領域からテンプレート画像を抽出する(ステップ404)。テンプレート画像の抽出の方法は、複数の画像間で探索・検出することができる特徴点を抽出する方法であれば、特に限定されない。テンプレート画像、第1の画像内に設定した基準位置の情報、及びテンプレート座標の情報を記録部304に保存する(ステップ405)。ここで、テンプレート座標とは、基準位置を原点(0、0)としたときのテンプレート画像の中心座標の値であり、基準位置に対するテンプレート画像の位置の情報(第1の位置の情報)を意味する。眼底カメラは一定時間連続撮像している為、次の新規の眼底画像(第2の眼底画像)が取得される(ステップ406)。処理Aにおいて(ステップ407)、取得された第2の眼底画像全体からテンプレート画像を探索(以下テンプレートマッチングとも記す)する。処理Bにより、テンプレート画像の位置の変化を算出し、一定時間の眼球運動量を算出する(ステップ408)。以上、ステップ406からステップ408の処理を眼球運動の計測が終了(新規画像が取得される)するまで繰り返す。また、眼球運動量、画像、計測時間、前眼部のリアルタイムモニタ画像等を表示部302に表示してもよい(ステップ409)。
【0017】
部分的なフローである処理Aについて(ステップ407)、図5を用い説明する。テンプレートマッチングは記録部304に保存されたテンプレート画像を読み出し(ステップ502)、新規取得眼底画像内でテンプレートマッチングを行う(ステップ503)。テンプレートマッチングの手段は限定されず、公知のいかなる手法によっても行うことができる。テンプレートマッチング終了後(ステップ504)、マッチング座標を記録部304に保存する。ここで、マッチング座標とは、第1の画像における基準位置に対応する第2の画像上の点を原点(0、0)としたときのマッチング画像の中心座標の値であり、基準位置に対するマッチング画像の位置の情報(第2の位置の情報)を意味する。
【0018】
次に、処理B(ステップ408)について、図6を用い説明する。先ず、記録部304からテンプレート座標とマッチング座標とを読み出し(ステップ602)、テンプレート座標とマッチング座標との間の座標差を算出し(ステップ603)、算出した座標差から移動距離を算出する。
【0019】
(追尾計測:具体例)
取得した眼底画像に対して以上の各処理を行った具体例を図2に示す。上述した眼底カメラ1を用い、10Hzの周期で、直径10mmの眼底画像を取得する測定条件で10秒間眼底を追尾計測する。
【0020】
先ず、図2(a)に取得された第1のデジタル眼底画像を示す。図2(a)の様に、乳頭201から血管が端部に向かって複雑に伸びている。第1の眼底画像を取得した後、図2(b)の様に画像端部からY=1mmの領域をマスク領域202に設定する。マスク領域の幅Yの設定方法は後述する。マスク領域202からはテンプレートを抽出しないようにし、マスク領域以外の抽出領域から、図2(c)の点線で示すテンプレート画像203を抽出する。ここではテンプレート画像を500μm×500μmの正方形としたが、これに限定されることなく、テンプレート画像の形状やサイズは任意に決定することができる。本実施例では、眼底写真の中心座標を原点(0、0)とすると、図2(d)で示す第1の眼底画像で抽出したテンプレート画像の中心座標(以下、テンプレート座標と記す)はZ0(0、−200)である。なお、座標単位はμmである。次に、対象とする第2の眼底画像である図2(e)からテンプレートを探索する。図2(f)の様にテンプレートマッチングした後、テンプレート画像と一致したマッチング画像のマッチング座標Z1を計測する。この例では、マッチング座標Z1は(0、−400)である。図2(g)の様にテンプレート座標Z0とマッチング座標Z1から座標の変化を求め、眼球運動量(本実施例では(0μm、−200μm))を算出する。同様にして10Hzで取得される第3、第4・・・の眼底画像図についても上述の図2(e)〜(g)のテンプレートマッチングを繰り返し、計測中に眼球が基準位置からどの程度移動したか計測し、表示する。
【0021】
図2(b)で行ったマスク領域の設定方法の例を以下に示す。図2(b)のように眼底画像の大きさ、精度、及びすべての眼底画像を撮像する間の測定時間(本実施例では10秒間)内における固視微動による眼球の動く距離等の属性情報を考慮し、画像周辺部よりYmmの幅を有する範囲をマスク領域と指定する。今回、画像の直径は10mmであり、10μm程度の精度である。また、固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係についてモデル化された関数を示すグラフをもとに、測定時間内の人眼の移動量を求めることができる。このグラフは外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件ごとに予め用意されている公知のグラフを使用することができ、測定の方法や対象ごとに任意に選択することができる。本外部固視灯を有する健常者の固視微動は、測定時間10秒間で約1mm程度である。その為、上述条件では、画像周辺部から1mmの幅の領域をマスク領域として確保した。
【0022】
このマスク領域は測定中の人眼の動きにより測定範囲から外れてしまう可能性のある領域である。そのため、以上の様にテンプレート抽出時にマスク領域202を設定する事で、測定中の人眼の動きによりテンプレート画像が取得した画像の範囲から外れることがなくなるため、テンプレート検出エラーを防止し、安定した眼球運動の計測が可能となる。
【0023】
[実施例2]
以下、本発明の実施例2について説明する。
実施例2では、眼底撮像取得にSLO(Scanning Laser Opthalmoscope)を用い、SLO眼底画像から実施例1と同様の方法により眼球運動の計測を行い、眼球運動の計測結果を眼底断層像撮像(OCT:Optical Coherent Tomography)装置にリアルタイムにフィードバックする事で高精細な立体のOCT画像を取得した例について述べる。
【0024】
(OCT構成)
眼科装置としてOCT装置を用いた。OCTの構成概要に関して、図7を用いて説明する。
低コヒーレント光源715は、SLD光源(Super Luminescent Diode)や、ASE光源(Amplified Spontaneous Emission)が好適に用いることができる。低コヒーレント光の好適な波長は、850nm近傍および1050nm近傍の波長が眼底撮影には好適に用いられる。本実施例では、中心波長840nm、波長半値幅45nmのSLD光源を用いる。低コヒーレント光源から照射される低コヒーレント光がファイバーを経由して、ファイバカプラー710に入り、計測光OCTビームとも言う)と参照光に分けられる。ここではファイバを用いた干渉計構成を記載しているが、空間光光学系でビームスプリッタを用いた構成としてもかまわない。
【0025】
計測光は、ファイバ709を介して、ファイバコリメータ708から平行光となって照射される。さらに計測光は、OCTスキャナ(Y)707、リレーレンズ706、705を経由し、さらにOCTスキャナ(X)704を通り、ダイクロイックビームスプリッタ703を透過しスキャンレンズ702、接眼レンズ701を通り700の被検眼に入射する。ここでOCTスキャナ(X)707および(Y)704は、ガルバノスキャナを用いている。被検眼eに入射した計測光は、網膜で反射し、同一光路を通りファイバカプラ710に戻る。
【0026】
参照光は、ファイバカプラ710から716のファイバコリメータ716に導かれ、平行光となり照射される。照射された参照光は、分散補正ガラス717を通り、光路長可変ステージ718上の参照ミラー719により反射される。参照ミラー719により反射された参照光は、同一の光路をたどり、ファイバカプラー710に戻る。
ファイバカプラ710で戻ってきた計測光および参照光が合波され、ファイバコリメータ711に導かれる。ここでは合波された光を干渉光と呼ぶ。ファイバコリメータ711、グレーティング712、レンズ713、ラインセンサ714によって、分光器が構成されている。干渉光は、分光器によって、波長毎の強度情報となって計測される。ラインセンサ714によって計測された波長毎の強度情報は、不図示のPCに転送され、被検眼eの断層画像として生成される。
【0027】
(SLO構成)
次に眼底画像を取得するSLO撮影部の光学構成を同じく図7を用いて説明する。レーザ光源729は、半導体レーザやSLD光源が好適に用いることができる。用いる波長は、波長分離手段によってOCT用の低コヒーレント光源の波長と分離できる光源であれば制約はないが、眼底観察像の画質として、700nm〜1000nmの近赤外の波長域が好適に用いられる。本実施例においては、波長760nmの半導体レーザを用いる。
【0028】
レーザ光源729から出射されたレーザはファイバ728を介して、ファイバコリメータ727から並行光となって出射され、シリンダーレンズ726に入射する。本実施例ではシリンダーレンズで記載しているが、ラインビーム生成可能な光学素子であれば特に制約はなく、パウエルレンズや回折光学素子を用いたラインビームシェイパーを用いることができる。シリンダーレンズ726で広げられたビーム(SLOビームとも言う)は、リレーレンズ725、724によって、リングミラー723の中心を通り、リレーレンズ721、722を通り、SLOスキャナ(Y)720に導かれる。SLOスキャナは、ガルバノスキャナを用いている。さらにダイクロイックビームスプリッタ703で反射され、スキャンレンズ702と接眼レンズ701を通り、被検眼700に入射する。ダイクロイックビームスプリッタ703は、OCTビームを透過し、SLOビームを反射するように構成しておく。被検眼に入射したビームは、被検眼の眼底に、ライン状のビームで照射される。このライン状のビームが、被検眼の眼底で反射あるいは散乱され、同一光路をたどり、リングミラー723まで戻る。リングミラー723の位置は、被検眼の瞳孔位置と共役になっており、眼底に照射されているラインビームが後方散乱した光のうち、瞳孔周辺部を通った光が、リングミラー723によって反射され、レンズ730によりラインセンサー731上に結像する。ラインセンサの位置毎の強度情報に基づき,不図示のPCにより眼底の平面画像を生成する。本実施例では、ラインビームを用いるラインスキャンSLO(以下、L-SLOと記す)構成でSLOを記載したが、当然ながら、フライングスポットSLOであっても構わない。
【0029】
(内部固視灯)
本実施例では、被検眼eに注視させることで固視微動を安定させる内部固視灯を有している。本実施例が有する内部固視灯について、OCT装置、SLO装置同様、図7を用い説明する。固視灯に用いる光源752は発光ダイオード(LD)を用いた。発光ダイオードの点灯位置を、PCの制御により撮像したい部位に合わせて変更する。発光ダイオード752は500nmの波長で、光源から出射されたビームは、レンズ751とダイクロイックミラー750を経由し、被検眼eに照射される。ダイクロイックミラー750は、スキャンレンズ702と接眼レンズ701の間に位置し、短波長(500nm程度)の光とOCTビーム,SLOビーム(700nm以上)を波長分離する。
【0030】
(制御方法)
図8に本実施例で用いられる機能体系を示す。その機能体系は、システム全体を制御するCPU801、SLO装置、OCT装置及び固視灯を制御する各々の制御部802、803、808、SLO画像及びOCT画像を取得する各々のラインセンサカメラ部804、805、システム状態を表示するPCの表示部806、眼底画像や撮像条件等を記録するPCの記録部807、により構成されている。眼底の撮影時には、CPU801より制御部802、803に各々の撮像条件が指令され、眼底が撮像される。眼底が撮像された後、カメラ部804、805からCPU801に画像が送られ、CPU801にて画像処理された後、表示部806で表示され、同時又はその後、記録部807に保存される。
【0031】
上述の機能を用い、OCT装置で眼球の断層像を取得している間の眼球運動を計測する全体のフローを図9に示す。
【0032】
まず、処理C(マスク領域計測)を実行し(ステップ901)、測定時間内の固視微動等により眼球が移動する距離よりもマスク領域の幅が広くなるように、マスク領域幅を決定する(ステップ902)。以上の処理と同時に、SLO装置を作動させSLOにより眼底画像を取得する(ステップ903)。SLOの画像に対して、第1の画像の周辺部から画像の中心座標方向にマスク領域(第1の領域)を設定し(ステップ904)、マスク領域以外の抽出領域(第2の領域)からテンプレートを抽出する(ステップ905)。テンプレート抽出後、テンプレート情報の画像とテンプレート画像の中心座標であるテンプレート座標を保存する(ステップ906)。OCT装置の走査基準位置を記録し(ステップ907)、OCT装置の計測を開始する(ステップ908)。SLO装置からの新規の画像を取得後(ステップ909)、実施例1と同様、処理A(テンプレートマッチング)(ステップ910)、処理B(眼球移動量算出)を実行し(ステップ911)、処理D(眼球移動量のOCTへのフィードバック)を行い(ステップ912)、OCT装置が断層像を継続計測している間はステップ909〜912の工程を繰り返す(ステップ913)。OCT撮像が終了した後、眼球運動の計測を終了する(ステップ914)。なお、処理A、処理Bは実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0033】
部分的なフローである処理C(マスク領域計測)について(ステップ901)、図10を用い説明する。OCT撮像条件から(ステップ1002)、すべての眼底画像を撮像する間のOCT撮像時間を計測する(ステップ1003)。固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係についてモデル化された関数を示すグラフである図11を参考に、OCT撮像時間をグラフ1101に適合させ、眼球移動距離(マスク領域)を算出する(ステップ1004)。実施例1と同様、このグラフは外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件ごとに予め用意されている公知のグラフを使用することができ、測定の方法や対象ごとに任意に選択することができる。図11のグラフは内部固視灯を有した装置で健常眼を測定した際の眼球移動量情報である。
【0034】
処理D(OCT装置へのフィードバック)について(ステップ912)、図12を用いて説明する。CPUにて、OCT装置のスキャン位置データを読み出し(ステップ1202)、眼球移動量からOCTスキャナに投入する電圧を算出し(ステップ1203)、CPUより投入電力をOCT制御部へ転送した後(ステップ1204)、スキャナ移動の信号を確認し(ステップ1205)、スキャン位置の変更情報を保存する(ステップ1206)。任意で変更状態、OCT画像、SLO画像(マスク領域、テンプレート位置表示)残り時間、等を表示する(ステップ1207)。
【0035】
(追尾計測:具体例)
内部固視灯を有した装置で健常眼を測定した際に取得したSLO画像に対し以上の各処理を行った具体例を図13に示す。L-SLOは眼底位置での画像の大きさは、ライン幅10mm、スキャン範囲10mm、つまり、10mm×10mmである。SLO画像は30Hzで取得できる。OCT画像を取得する際の条件は、上述したSD―OCTを用い、カメラを70k A−scanで動作させ、B―scan画像(眼底スキャン範囲10mm、レーザスポット径20μm)は1000lineで構成され、B―scan280枚、網膜の立体画像を取得する。計測時間は4秒となる。
【0036】
図13(a)にSLOで取得された眼底画像(以下、単にSLO画像と記す)を示す。図13(a)の様に、乳頭から血管が端部に向かって複雑に伸びている。第1のSLO画像を取得した後、OCTの撮像条件から撮像時間4秒を算出する。図11を参照すると、4秒間に眼球は250μm移動する為、図13(b)の様に画像端部からP=250μmの領域をマスク領域1301に設定し、マスク領域1301からはテンプレートを抽出しないようにし、図13の(c)の点線で示す様な500μm×500μmのテンプレート画像1302を抽出する。ここではテンプレート画像を500μm×500μmの正方形としたが、これに限定されることなく、テンプレート画像の形状やサイズは任意に決定することができる。テンプレート抽出後、図13(d)のテンプレート座標X0を移動量算出の基準として設定する。本実施例では、SLO画像の中心座標を原点(0、0)とすると、このテンプレート画像のテンプレート座標はX0(−50、−200)であった。座標単位はμmである。次に対象とする第2の眼底画像である図13(e)からテンプレートをマッチングする。図13(f)の様にテンプレートマッチングした後、マッチングしたマッチング画像のマッチング座標X1を計測する。この第2の眼底画像図では、マッチング座標はX1(−50、−400)であった。図13(g)の様にテンプレート座標X0とマッチング座標X1から座標の変化を求め、眼球の移動量(0μm、−200μm)を算出する。以上の算出した結果はCPUを介し、OCT装置のスキャナ707、704へ反映され、OCTの走査位置を変更する。上述の図13(e)〜(g)のテンプレートマッチングを繰り返し、30Hzで取得されるSLO画像を各々マッチングし、OCT装置にフィードバックする。以上の処理中、図14の様に、OCT画像1501、眼球運動計測結果1506、残りの計測時間1505、SLO画像(マスク領域、テンプレート画像表示含む)1504、撮像条件1503、等をディスプレイ1507に表示し、ユーザが動作を確認できるようにしてもよい。
【0037】
図13(b)のようなマスク領域の設定方法を以下に示す。眼底撮像手段とは別の眼科機器(本実施例のOCT装置)で検査する際の検査時間を算出する。検査時間と、撮像条件から、例えば、外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件に適合した図11のグラフを選択し、選択したグラフから眼球の移動量を算出する。眼球の移動量をマスク領域Pの幅とし、マスク領域を決定する。
【0038】
このマスク領域は測定中の人眼の動きにより測定範囲から外れてしまう可能性のある領域である。そのため、以上の様に、OCT撮像時間に応じ、テンプレート抽出時のマスク領域202を設定する事で、測定中の人眼の動きによりテンプレート画像が取得した画像の範囲から外れることがなくなり、テンプレート検出エラーを防止し、眼球運動に依る画像ズレの無い立体のOCT画像が取得できる。
【0039】
(実施例3)
実施例1、2において、マスク領域を設定する領域は画像の周辺部には限定されず、例えば取得した第1の眼底画像の中心部に設定することもできる。
このとき、マスク領域は画像の中心部にのみ設定してもよいし、画像の周辺部と中心部との双方に設定してもよい。
【0040】
眼球の回旋を検出する為、図15の様に、第1の眼底画像から複数の特徴点を抽出する事がある。このとき、実施例1、2の通り、1505の斜線部が示すように、画像周辺部よりマスク領域(第1の領域)を設定する。更に、画像の中心部1506にもマスク領域を設定する。ここで、中心部は、例えば、すべての眼底画像を撮像する間の時間に眼球の移動する距離よりも大きい半径を持つ、第1の眼底画像の中心を中心とする円で規定される領域である、と定義することができる。本実施例にて、円の半径を眼球の移動量より大きい値に設定しているのは、各特徴点が中心を超えて動いた場合、回旋運動、眼球のシフトと眼球の倍率(眼軸方向の動き)を切り分ける事が困難になる為である。半径が眼球の移動量より小さくても、測定の際の条件(特徴点の数、大きさや抽出方法を変更する)で対応できる。実施例1,2と同様、固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係についてモデル化された関数を示すグラフから眼球嚢移動する距離を求めることができる。また、同様に外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件ごとに予め用意されている公知のグラフを使用することができ、測定の方法や対象ごとに任意に選択することができる。
【0041】
このマスク領域から特徴点を抽出した場合、眼球の回旋によるテンプレート座標とマッチング座標との間の座標差が生じず、回旋が測定できないおそれがある。そのため、以上の様に、撮像時間に応じ、テンプレート抽出時のマスク領域1506を設定する事で、画像の中心部からテンプレートを抽出することを防ぐことができ、より確実に眼球の回旋運動を検出することが可能となる。
【0042】
そして、上記マスクを決定した後、画像をA、B、C、Dの様に4分割し、各分割されたエリア内から特徴点1501〜1504を抽出する。その後、実施例1,2と同様に各特徴点1501〜1504の各々の移動距離を検出し、4点から眼球の旋回を算出する。以上の様に画像の以外から特徴点を抽出する事で、眼球の旋回を正確に算出する事が出来る。今回、実施例1のような円形の画像を用いたが、実施例2の様な長方形の眼底画像でも同様の事が出来る。
【0043】
(その他)
実施例1、2では血管のテンプレートを用いて抽出したが、黄斑や乳頭をテンプレートとして用いても同様の効果が得られる。眼底画像は、眼底カメラ、走査レーザ検眼鏡(SLO)を用い画像を取得していたが、実施例に記載したもの以外の装置を用い眼底画像を取得しても良い。更に、視野検査を行う視野検査装置などでも同様の効果が得られる。
実施形態で示したフローの順序はこれに限定されるものではなく、順序が異なっていたり、又は、その他のフローによっても、テンプレート抽出時にマスク領域を設定する事で同様の効果が得られる。
【0044】
実施例1では、外部固視を設けていた為、マスク領域を1mmとしたが、マスク領域として設定する幅は眼底画像の撮像条件等の各種状況に応じて適宜設定できる。例えば、固視が更に安定する内部固視灯が装置されている装置ではマスク領域を小さくすることができるし、一方で高年齢者や患眼等、固視が安定しない場合などはマスク領域を広くした方が良い。同被験者について複数回測定を行う場合、前回の測定データを用いる事でより正確なマスク領域を設定できる。
【0045】
上記実施例では、眼科機器に対してリアルタイムで眼球運動の補正を行ったが、得られた画像に対して測定終了後に補正又は後処理を行っても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0046】
1:眼底カメラ
50:デジタル一眼レフカメラ
202:マスク領域
403:マスク領域設定
1301:マスク領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置及び制御方法に関するもので、特に眼球の動きを求める眼科装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、眼球運動を計測する装置が注目されている。眼球運動の計測が可能になれば、視野検査や、より高精細な画像を取得する眼底断層撮像装置等に応用し、より精度の高い眼底検査が可能になる。
【0003】
眼球運動を計測する方法としては角膜反射法(プルキニエ像)、サーチコイル法等、様々な技術が公知である。なかでも、簡易的で被験者に負担が少ない方法として、眼底画像から眼球運動を計測する方法が検討されている。
【0004】
眼底画像から精度良く眼球運動を計測するには、眼底画像から特徴点を抽出し、処理対象とする画像において特徴点を探索・検出した後、特徴点の移動量を算出する必要がある。これらのうち、特徴点の抽出工程は眼球運動の計測安定性・精度・再現性という点で重要である。眼底画像の特徴点としては、黄斑や視神経乳頭(以下、乳頭とする)などが用いられる。また、患眼等では黄斑や乳頭が不完全な場合が少なくない為、眼底画像の特徴点として、血管が用いられる事もある。血管の特徴点の抽出方法として様々な方法が知られている。例えば特許文献1には、眼底画像に設定したフィルターの外周部上における画素値の平均値から、血管の本数及び、フィルター中心部における血管の存在の有無を判定し、フィルター領域内における血管交叉部の存在判定を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−70247
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の様な方法を用いて眼底の特徴点を抽出し、画像間の特徴点の位置関係を比較する事で取得画像間での眼球の動き量を算出すれば、眼底画像から精度良く眼球の動きを検出することが可能である。しかし、抽出された特徴点が取得画像の端部に位置しているような場合には、眼球の動きによって特徴点が処理対象とする画像上から外れてしまい、眼球の動き量が検出できなくなること(特徴点探索エラー)があるという問題があった。また、眼球の回旋運動を検出しようとする際に、画像の中心部から特徴点が抽出されると、眼球の回旋による特徴点の位置の変化が生じず、回旋が検出できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決する為、本発明に係る眼科装置は、被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置であって、前記被検眼の眼底画像を取得する取得手段と、前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定手段と、前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から特徴点を抽出する抽出手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る眼科装置の制御方法は、被検眼の眼底画像から特徴点を抽出し、抽出した特徴点の位置の変化を算出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置の制御方法であって、前記被検眼の眼底画像を取得する工程と、前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定工程と、前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除く第2の領域から前記特徴点を抽出する抽出工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に依れば、眼球が動いた際にも眼底特徴点が取得画像の枠外に外れる事が無く、特徴点探索エラーの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1における眼底カメラの光学系の構成を説明する概略図である。
【図2】本発明の実施例1における眼底画像を説明する概略図である。
【図3】本発明の実施例1における装置の機能体系の概略図である。
【図4】本発明の実施例1における制御フロー図である。
【図5】本発明の実施例1における制御フローの処理Aに関するフロー図である。
【図6】本発明の実施例1における制御フローの処理Bに関するフロー図である。
【図7】本発明の実施例2におけるOCT装置とSLO装置の光学系の構成を説明する概略図である。
【図8】本発明の実施例2における装置の機能体系の概略図である。
【図9】本発明の実施例2における制御フロー図である。
【図10】本発明の実施例2における制御フローの処理Cに関するフロー図である。
【図11】本発明の実施例2における眼球の移動距離を算出する為のグラフに関する概略図である。
【図12】本発明の実施例2における制御フローの処理Dに関するフロー図である。
【図13】本発明の実施例2におけるSLO画像を説明する概略図である。
【図14】本発明の実施例2における表示例を表す概略図である。
【図15】本発明の実施例3における眼底画像を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について、以下の実施例において図面を用い詳細に説明する。
なお、以下の実施例では本発明を単一の装置に応用した例を記載するが、本発明の対象は下記の構成に限定されることはなく、また、下記の構成を備える単一の装置に限定されることはない。本発明は、下記の機能を実現するための方法の使用及び、これらの機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理によっても実現される。
【実施例】
【0012】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1について説明する。
本実施例では、上記説明した課題を解決するために、眼底画像の特徴点を抽出する際、抽出領域を指定する事で、眼球運動を計測する例について述べる。
【0013】
(眼底カメラ)
眼底画像取得に眼底カメラを用いた。図1に眼底カメラの概略図を示す。眼底カメラ本体部1には、信号取得部としてビデオレートで撮像可能なデジタル一眼レフカメラ50が接続部40を介し接続されている。被検眼Eと対向する対物レンズ11の光路上には、孔あきミラー12が設けられている。孔あきミラー12の入射方向の光路上には、リレーレンズ13、黒点板14、リレーレンズ15、リングスリット板16、蛍光エキサイタフィルタ17、ミラー18が配列されている。更に、ミラー18の入射方向には、コンデンサレンズ19、キセノン管から成る撮影用光源20、コンデンサレンズ21、赤外発光ダイオードから成る観察用光源22が配置されている。尚、図上における光路は点線で示している。
【0014】
孔あきミラー12の背後には、フォーカスレンズ24、蛍光バリアフィルタ25、結像レンズ26が配列され、デジタル一眼レフカメラ50が接続されている。デジタル一眼レフカメラ50内には、対物レンズ11の背後の光路と同一光路上に、クイックリターンミラー51、フォーカルプレーンシャッタ(図示せず)、二次元センサ53が配置されている。また、クイックリターンミラー51の反射方向には、ペンタプリズム54、接眼レンズ55が設けられている。二次元センサ53で受光した信号は信号処理基盤52で処理され、ケーブルを介し、HDD58を有するPC56へ転送され、ディスプレイ57に表示される。眼底カメラには、外部固視灯(図示せず)が設けられ、固視が安定するよう構成されている。
【0015】
(制御方法)
図3に機能体系を示す。機能体系は、システム全体を制御するCPU303、眼底画像取得部を制御する制御部305、眼底画像を取得するカメラ部301、システム状態を表示する表示部302、眼底画像や撮像条件等を記録するHDD(記録部)304、により構成されている。眼底の観察時及び撮影時には、CPU303より制御部305に撮像条件が指令され、眼底が撮像される。眼底が撮像された後、カメラ部301からCPU303に画像が送られ、画像処理等がなされた後、表示部302で表示され、同時又はその後、記録部304に保存される。
【0016】
上述の機能を用い、一定時間の眼球運動を計測する全体のフローを図4に示す。眼底カメラ1を用い、第1の眼底画像を取得する(ステップ402)。第1の眼底画像を取得した後、特徴点(以下、テンプレートと記す)を抽出する前に、第1の画像の周辺部から画像の中心座標方向に一定の幅を有する領域を、マスク領域(第1の領域)として設定する(ステップ403)。このとき、測定時間内の固視微動等により眼球が移動する距離よりもマスク領域の幅が広くなるように、マスク領域を設定する。マスク領域以外の部分を抽出領域(第2の領域)として、抽出領域からテンプレート画像を抽出する(ステップ404)。テンプレート画像の抽出の方法は、複数の画像間で探索・検出することができる特徴点を抽出する方法であれば、特に限定されない。テンプレート画像、第1の画像内に設定した基準位置の情報、及びテンプレート座標の情報を記録部304に保存する(ステップ405)。ここで、テンプレート座標とは、基準位置を原点(0、0)としたときのテンプレート画像の中心座標の値であり、基準位置に対するテンプレート画像の位置の情報(第1の位置の情報)を意味する。眼底カメラは一定時間連続撮像している為、次の新規の眼底画像(第2の眼底画像)が取得される(ステップ406)。処理Aにおいて(ステップ407)、取得された第2の眼底画像全体からテンプレート画像を探索(以下テンプレートマッチングとも記す)する。処理Bにより、テンプレート画像の位置の変化を算出し、一定時間の眼球運動量を算出する(ステップ408)。以上、ステップ406からステップ408の処理を眼球運動の計測が終了(新規画像が取得される)するまで繰り返す。また、眼球運動量、画像、計測時間、前眼部のリアルタイムモニタ画像等を表示部302に表示してもよい(ステップ409)。
【0017】
部分的なフローである処理Aについて(ステップ407)、図5を用い説明する。テンプレートマッチングは記録部304に保存されたテンプレート画像を読み出し(ステップ502)、新規取得眼底画像内でテンプレートマッチングを行う(ステップ503)。テンプレートマッチングの手段は限定されず、公知のいかなる手法によっても行うことができる。テンプレートマッチング終了後(ステップ504)、マッチング座標を記録部304に保存する。ここで、マッチング座標とは、第1の画像における基準位置に対応する第2の画像上の点を原点(0、0)としたときのマッチング画像の中心座標の値であり、基準位置に対するマッチング画像の位置の情報(第2の位置の情報)を意味する。
【0018】
次に、処理B(ステップ408)について、図6を用い説明する。先ず、記録部304からテンプレート座標とマッチング座標とを読み出し(ステップ602)、テンプレート座標とマッチング座標との間の座標差を算出し(ステップ603)、算出した座標差から移動距離を算出する。
【0019】
(追尾計測:具体例)
取得した眼底画像に対して以上の各処理を行った具体例を図2に示す。上述した眼底カメラ1を用い、10Hzの周期で、直径10mmの眼底画像を取得する測定条件で10秒間眼底を追尾計測する。
【0020】
先ず、図2(a)に取得された第1のデジタル眼底画像を示す。図2(a)の様に、乳頭201から血管が端部に向かって複雑に伸びている。第1の眼底画像を取得した後、図2(b)の様に画像端部からY=1mmの領域をマスク領域202に設定する。マスク領域の幅Yの設定方法は後述する。マスク領域202からはテンプレートを抽出しないようにし、マスク領域以外の抽出領域から、図2(c)の点線で示すテンプレート画像203を抽出する。ここではテンプレート画像を500μm×500μmの正方形としたが、これに限定されることなく、テンプレート画像の形状やサイズは任意に決定することができる。本実施例では、眼底写真の中心座標を原点(0、0)とすると、図2(d)で示す第1の眼底画像で抽出したテンプレート画像の中心座標(以下、テンプレート座標と記す)はZ0(0、−200)である。なお、座標単位はμmである。次に、対象とする第2の眼底画像である図2(e)からテンプレートを探索する。図2(f)の様にテンプレートマッチングした後、テンプレート画像と一致したマッチング画像のマッチング座標Z1を計測する。この例では、マッチング座標Z1は(0、−400)である。図2(g)の様にテンプレート座標Z0とマッチング座標Z1から座標の変化を求め、眼球運動量(本実施例では(0μm、−200μm))を算出する。同様にして10Hzで取得される第3、第4・・・の眼底画像図についても上述の図2(e)〜(g)のテンプレートマッチングを繰り返し、計測中に眼球が基準位置からどの程度移動したか計測し、表示する。
【0021】
図2(b)で行ったマスク領域の設定方法の例を以下に示す。図2(b)のように眼底画像の大きさ、精度、及びすべての眼底画像を撮像する間の測定時間(本実施例では10秒間)内における固視微動による眼球の動く距離等の属性情報を考慮し、画像周辺部よりYmmの幅を有する範囲をマスク領域と指定する。今回、画像の直径は10mmであり、10μm程度の精度である。また、固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係についてモデル化された関数を示すグラフをもとに、測定時間内の人眼の移動量を求めることができる。このグラフは外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件ごとに予め用意されている公知のグラフを使用することができ、測定の方法や対象ごとに任意に選択することができる。本外部固視灯を有する健常者の固視微動は、測定時間10秒間で約1mm程度である。その為、上述条件では、画像周辺部から1mmの幅の領域をマスク領域として確保した。
【0022】
このマスク領域は測定中の人眼の動きにより測定範囲から外れてしまう可能性のある領域である。そのため、以上の様にテンプレート抽出時にマスク領域202を設定する事で、測定中の人眼の動きによりテンプレート画像が取得した画像の範囲から外れることがなくなるため、テンプレート検出エラーを防止し、安定した眼球運動の計測が可能となる。
【0023】
[実施例2]
以下、本発明の実施例2について説明する。
実施例2では、眼底撮像取得にSLO(Scanning Laser Opthalmoscope)を用い、SLO眼底画像から実施例1と同様の方法により眼球運動の計測を行い、眼球運動の計測結果を眼底断層像撮像(OCT:Optical Coherent Tomography)装置にリアルタイムにフィードバックする事で高精細な立体のOCT画像を取得した例について述べる。
【0024】
(OCT構成)
眼科装置としてOCT装置を用いた。OCTの構成概要に関して、図7を用いて説明する。
低コヒーレント光源715は、SLD光源(Super Luminescent Diode)や、ASE光源(Amplified Spontaneous Emission)が好適に用いることができる。低コヒーレント光の好適な波長は、850nm近傍および1050nm近傍の波長が眼底撮影には好適に用いられる。本実施例では、中心波長840nm、波長半値幅45nmのSLD光源を用いる。低コヒーレント光源から照射される低コヒーレント光がファイバーを経由して、ファイバカプラー710に入り、計測光OCTビームとも言う)と参照光に分けられる。ここではファイバを用いた干渉計構成を記載しているが、空間光光学系でビームスプリッタを用いた構成としてもかまわない。
【0025】
計測光は、ファイバ709を介して、ファイバコリメータ708から平行光となって照射される。さらに計測光は、OCTスキャナ(Y)707、リレーレンズ706、705を経由し、さらにOCTスキャナ(X)704を通り、ダイクロイックビームスプリッタ703を透過しスキャンレンズ702、接眼レンズ701を通り700の被検眼に入射する。ここでOCTスキャナ(X)707および(Y)704は、ガルバノスキャナを用いている。被検眼eに入射した計測光は、網膜で反射し、同一光路を通りファイバカプラ710に戻る。
【0026】
参照光は、ファイバカプラ710から716のファイバコリメータ716に導かれ、平行光となり照射される。照射された参照光は、分散補正ガラス717を通り、光路長可変ステージ718上の参照ミラー719により反射される。参照ミラー719により反射された参照光は、同一の光路をたどり、ファイバカプラー710に戻る。
ファイバカプラ710で戻ってきた計測光および参照光が合波され、ファイバコリメータ711に導かれる。ここでは合波された光を干渉光と呼ぶ。ファイバコリメータ711、グレーティング712、レンズ713、ラインセンサ714によって、分光器が構成されている。干渉光は、分光器によって、波長毎の強度情報となって計測される。ラインセンサ714によって計測された波長毎の強度情報は、不図示のPCに転送され、被検眼eの断層画像として生成される。
【0027】
(SLO構成)
次に眼底画像を取得するSLO撮影部の光学構成を同じく図7を用いて説明する。レーザ光源729は、半導体レーザやSLD光源が好適に用いることができる。用いる波長は、波長分離手段によってOCT用の低コヒーレント光源の波長と分離できる光源であれば制約はないが、眼底観察像の画質として、700nm〜1000nmの近赤外の波長域が好適に用いられる。本実施例においては、波長760nmの半導体レーザを用いる。
【0028】
レーザ光源729から出射されたレーザはファイバ728を介して、ファイバコリメータ727から並行光となって出射され、シリンダーレンズ726に入射する。本実施例ではシリンダーレンズで記載しているが、ラインビーム生成可能な光学素子であれば特に制約はなく、パウエルレンズや回折光学素子を用いたラインビームシェイパーを用いることができる。シリンダーレンズ726で広げられたビーム(SLOビームとも言う)は、リレーレンズ725、724によって、リングミラー723の中心を通り、リレーレンズ721、722を通り、SLOスキャナ(Y)720に導かれる。SLOスキャナは、ガルバノスキャナを用いている。さらにダイクロイックビームスプリッタ703で反射され、スキャンレンズ702と接眼レンズ701を通り、被検眼700に入射する。ダイクロイックビームスプリッタ703は、OCTビームを透過し、SLOビームを反射するように構成しておく。被検眼に入射したビームは、被検眼の眼底に、ライン状のビームで照射される。このライン状のビームが、被検眼の眼底で反射あるいは散乱され、同一光路をたどり、リングミラー723まで戻る。リングミラー723の位置は、被検眼の瞳孔位置と共役になっており、眼底に照射されているラインビームが後方散乱した光のうち、瞳孔周辺部を通った光が、リングミラー723によって反射され、レンズ730によりラインセンサー731上に結像する。ラインセンサの位置毎の強度情報に基づき,不図示のPCにより眼底の平面画像を生成する。本実施例では、ラインビームを用いるラインスキャンSLO(以下、L-SLOと記す)構成でSLOを記載したが、当然ながら、フライングスポットSLOであっても構わない。
【0029】
(内部固視灯)
本実施例では、被検眼eに注視させることで固視微動を安定させる内部固視灯を有している。本実施例が有する内部固視灯について、OCT装置、SLO装置同様、図7を用い説明する。固視灯に用いる光源752は発光ダイオード(LD)を用いた。発光ダイオードの点灯位置を、PCの制御により撮像したい部位に合わせて変更する。発光ダイオード752は500nmの波長で、光源から出射されたビームは、レンズ751とダイクロイックミラー750を経由し、被検眼eに照射される。ダイクロイックミラー750は、スキャンレンズ702と接眼レンズ701の間に位置し、短波長(500nm程度)の光とOCTビーム,SLOビーム(700nm以上)を波長分離する。
【0030】
(制御方法)
図8に本実施例で用いられる機能体系を示す。その機能体系は、システム全体を制御するCPU801、SLO装置、OCT装置及び固視灯を制御する各々の制御部802、803、808、SLO画像及びOCT画像を取得する各々のラインセンサカメラ部804、805、システム状態を表示するPCの表示部806、眼底画像や撮像条件等を記録するPCの記録部807、により構成されている。眼底の撮影時には、CPU801より制御部802、803に各々の撮像条件が指令され、眼底が撮像される。眼底が撮像された後、カメラ部804、805からCPU801に画像が送られ、CPU801にて画像処理された後、表示部806で表示され、同時又はその後、記録部807に保存される。
【0031】
上述の機能を用い、OCT装置で眼球の断層像を取得している間の眼球運動を計測する全体のフローを図9に示す。
【0032】
まず、処理C(マスク領域計測)を実行し(ステップ901)、測定時間内の固視微動等により眼球が移動する距離よりもマスク領域の幅が広くなるように、マスク領域幅を決定する(ステップ902)。以上の処理と同時に、SLO装置を作動させSLOにより眼底画像を取得する(ステップ903)。SLOの画像に対して、第1の画像の周辺部から画像の中心座標方向にマスク領域(第1の領域)を設定し(ステップ904)、マスク領域以外の抽出領域(第2の領域)からテンプレートを抽出する(ステップ905)。テンプレート抽出後、テンプレート情報の画像とテンプレート画像の中心座標であるテンプレート座標を保存する(ステップ906)。OCT装置の走査基準位置を記録し(ステップ907)、OCT装置の計測を開始する(ステップ908)。SLO装置からの新規の画像を取得後(ステップ909)、実施例1と同様、処理A(テンプレートマッチング)(ステップ910)、処理B(眼球移動量算出)を実行し(ステップ911)、処理D(眼球移動量のOCTへのフィードバック)を行い(ステップ912)、OCT装置が断層像を継続計測している間はステップ909〜912の工程を繰り返す(ステップ913)。OCT撮像が終了した後、眼球運動の計測を終了する(ステップ914)。なお、処理A、処理Bは実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0033】
部分的なフローである処理C(マスク領域計測)について(ステップ901)、図10を用い説明する。OCT撮像条件から(ステップ1002)、すべての眼底画像を撮像する間のOCT撮像時間を計測する(ステップ1003)。固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係についてモデル化された関数を示すグラフである図11を参考に、OCT撮像時間をグラフ1101に適合させ、眼球移動距離(マスク領域)を算出する(ステップ1004)。実施例1と同様、このグラフは外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件ごとに予め用意されている公知のグラフを使用することができ、測定の方法や対象ごとに任意に選択することができる。図11のグラフは内部固視灯を有した装置で健常眼を測定した際の眼球移動量情報である。
【0034】
処理D(OCT装置へのフィードバック)について(ステップ912)、図12を用いて説明する。CPUにて、OCT装置のスキャン位置データを読み出し(ステップ1202)、眼球移動量からOCTスキャナに投入する電圧を算出し(ステップ1203)、CPUより投入電力をOCT制御部へ転送した後(ステップ1204)、スキャナ移動の信号を確認し(ステップ1205)、スキャン位置の変更情報を保存する(ステップ1206)。任意で変更状態、OCT画像、SLO画像(マスク領域、テンプレート位置表示)残り時間、等を表示する(ステップ1207)。
【0035】
(追尾計測:具体例)
内部固視灯を有した装置で健常眼を測定した際に取得したSLO画像に対し以上の各処理を行った具体例を図13に示す。L-SLOは眼底位置での画像の大きさは、ライン幅10mm、スキャン範囲10mm、つまり、10mm×10mmである。SLO画像は30Hzで取得できる。OCT画像を取得する際の条件は、上述したSD―OCTを用い、カメラを70k A−scanで動作させ、B―scan画像(眼底スキャン範囲10mm、レーザスポット径20μm)は1000lineで構成され、B―scan280枚、網膜の立体画像を取得する。計測時間は4秒となる。
【0036】
図13(a)にSLOで取得された眼底画像(以下、単にSLO画像と記す)を示す。図13(a)の様に、乳頭から血管が端部に向かって複雑に伸びている。第1のSLO画像を取得した後、OCTの撮像条件から撮像時間4秒を算出する。図11を参照すると、4秒間に眼球は250μm移動する為、図13(b)の様に画像端部からP=250μmの領域をマスク領域1301に設定し、マスク領域1301からはテンプレートを抽出しないようにし、図13の(c)の点線で示す様な500μm×500μmのテンプレート画像1302を抽出する。ここではテンプレート画像を500μm×500μmの正方形としたが、これに限定されることなく、テンプレート画像の形状やサイズは任意に決定することができる。テンプレート抽出後、図13(d)のテンプレート座標X0を移動量算出の基準として設定する。本実施例では、SLO画像の中心座標を原点(0、0)とすると、このテンプレート画像のテンプレート座標はX0(−50、−200)であった。座標単位はμmである。次に対象とする第2の眼底画像である図13(e)からテンプレートをマッチングする。図13(f)の様にテンプレートマッチングした後、マッチングしたマッチング画像のマッチング座標X1を計測する。この第2の眼底画像図では、マッチング座標はX1(−50、−400)であった。図13(g)の様にテンプレート座標X0とマッチング座標X1から座標の変化を求め、眼球の移動量(0μm、−200μm)を算出する。以上の算出した結果はCPUを介し、OCT装置のスキャナ707、704へ反映され、OCTの走査位置を変更する。上述の図13(e)〜(g)のテンプレートマッチングを繰り返し、30Hzで取得されるSLO画像を各々マッチングし、OCT装置にフィードバックする。以上の処理中、図14の様に、OCT画像1501、眼球運動計測結果1506、残りの計測時間1505、SLO画像(マスク領域、テンプレート画像表示含む)1504、撮像条件1503、等をディスプレイ1507に表示し、ユーザが動作を確認できるようにしてもよい。
【0037】
図13(b)のようなマスク領域の設定方法を以下に示す。眼底撮像手段とは別の眼科機器(本実施例のOCT装置)で検査する際の検査時間を算出する。検査時間と、撮像条件から、例えば、外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件に適合した図11のグラフを選択し、選択したグラフから眼球の移動量を算出する。眼球の移動量をマスク領域Pの幅とし、マスク領域を決定する。
【0038】
このマスク領域は測定中の人眼の動きにより測定範囲から外れてしまう可能性のある領域である。そのため、以上の様に、OCT撮像時間に応じ、テンプレート抽出時のマスク領域202を設定する事で、測定中の人眼の動きによりテンプレート画像が取得した画像の範囲から外れることがなくなり、テンプレート検出エラーを防止し、眼球運動に依る画像ズレの無い立体のOCT画像が取得できる。
【0039】
(実施例3)
実施例1、2において、マスク領域を設定する領域は画像の周辺部には限定されず、例えば取得した第1の眼底画像の中心部に設定することもできる。
このとき、マスク領域は画像の中心部にのみ設定してもよいし、画像の周辺部と中心部との双方に設定してもよい。
【0040】
眼球の回旋を検出する為、図15の様に、第1の眼底画像から複数の特徴点を抽出する事がある。このとき、実施例1、2の通り、1505の斜線部が示すように、画像周辺部よりマスク領域(第1の領域)を設定する。更に、画像の中心部1506にもマスク領域を設定する。ここで、中心部は、例えば、すべての眼底画像を撮像する間の時間に眼球の移動する距離よりも大きい半径を持つ、第1の眼底画像の中心を中心とする円で規定される領域である、と定義することができる。本実施例にて、円の半径を眼球の移動量より大きい値に設定しているのは、各特徴点が中心を超えて動いた場合、回旋運動、眼球のシフトと眼球の倍率(眼軸方向の動き)を切り分ける事が困難になる為である。半径が眼球の移動量より小さくても、測定の際の条件(特徴点の数、大きさや抽出方法を変更する)で対応できる。実施例1,2と同様、固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係についてモデル化された関数を示すグラフから眼球嚢移動する距離を求めることができる。また、同様に外部固視、内部固視、患眼若しくは健常者、年齢、または1枚の眼底画像を撮像する時間等の撮像条件ごとに予め用意されている公知のグラフを使用することができ、測定の方法や対象ごとに任意に選択することができる。
【0041】
このマスク領域から特徴点を抽出した場合、眼球の回旋によるテンプレート座標とマッチング座標との間の座標差が生じず、回旋が測定できないおそれがある。そのため、以上の様に、撮像時間に応じ、テンプレート抽出時のマスク領域1506を設定する事で、画像の中心部からテンプレートを抽出することを防ぐことができ、より確実に眼球の回旋運動を検出することが可能となる。
【0042】
そして、上記マスクを決定した後、画像をA、B、C、Dの様に4分割し、各分割されたエリア内から特徴点1501〜1504を抽出する。その後、実施例1,2と同様に各特徴点1501〜1504の各々の移動距離を検出し、4点から眼球の旋回を算出する。以上の様に画像の以外から特徴点を抽出する事で、眼球の旋回を正確に算出する事が出来る。今回、実施例1のような円形の画像を用いたが、実施例2の様な長方形の眼底画像でも同様の事が出来る。
【0043】
(その他)
実施例1、2では血管のテンプレートを用いて抽出したが、黄斑や乳頭をテンプレートとして用いても同様の効果が得られる。眼底画像は、眼底カメラ、走査レーザ検眼鏡(SLO)を用い画像を取得していたが、実施例に記載したもの以外の装置を用い眼底画像を取得しても良い。更に、視野検査を行う視野検査装置などでも同様の効果が得られる。
実施形態で示したフローの順序はこれに限定されるものではなく、順序が異なっていたり、又は、その他のフローによっても、テンプレート抽出時にマスク領域を設定する事で同様の効果が得られる。
【0044】
実施例1では、外部固視を設けていた為、マスク領域を1mmとしたが、マスク領域として設定する幅は眼底画像の撮像条件等の各種状況に応じて適宜設定できる。例えば、固視が更に安定する内部固視灯が装置されている装置ではマスク領域を小さくすることができるし、一方で高年齢者や患眼等、固視が安定しない場合などはマスク領域を広くした方が良い。同被験者について複数回測定を行う場合、前回の測定データを用いる事でより正確なマスク領域を設定できる。
【0045】
上記実施例では、眼科機器に対してリアルタイムで眼球運動の補正を行ったが、得られた画像に対して測定終了後に補正又は後処理を行っても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0046】
1:眼底カメラ
50:デジタル一眼レフカメラ
202:マスク領域
403:マスク領域設定
1301:マスク領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置であって、
前記被検眼の眼底画像を取得する取得手段と、
前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定手段と、
前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から特徴点を抽出する抽出手段とを有することを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記一定の幅を持つ領域は、前記眼底画像の画像周辺部から画像の中心方向に設定された領域、及び/又は、前記眼底画像の中心部に設定された領域であることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記一定の幅は、1枚の眼底画像を撮像する時間によって定められることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記設定手段で設定された第1の領域は、測定時間内に被検眼が移動する領域よりも広い領域であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記測定時間内に被検眼が移動する領域は、固視の開始からの時間に対する人眼の移動距離により決まる領域であり、前記固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係は、外部固視、内部固視、患眼及び健常者、年齢並びに1枚の眼底画像を撮像する時間からなる撮像条件によって異なることを特徴とする、請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
第1の眼底画像における前記特徴点の、第1の眼底画像における基準位置に対する第1の位置の情報を記録する記録手段と、
前記記録手段に記録された前記第1の位置の座標と、前記取得された眼底画像のうち第2の眼底画像から抽出される前記特徴点と一致する画像の、第2の眼底画像における前記基準位置に対応する位置に対する第2の位置の座標と、の間の座標差を算出することにより、前記被検眼の動きを求める手段とを更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記第2の眼底画像全体から前記特徴点と一致する画像が抽出されることを特徴とする請求項6に記載の眼科装置。
【請求項8】
被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置の制御方法であって、
前記被検眼の眼底画像を取得する工程と、
前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定工程と、
前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から前記特徴点を抽出する抽出工程とを有することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の眼科装置を、コンピュータで実現するためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置であって、
前記被検眼の眼底画像を取得する取得手段と、
前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定手段と、
前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から特徴点を抽出する抽出手段とを有することを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記一定の幅を持つ領域は、前記眼底画像の画像周辺部から画像の中心方向に設定された領域、及び/又は、前記眼底画像の中心部に設定された領域であることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記一定の幅は、1枚の眼底画像を撮像する時間によって定められることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記設定手段で設定された第1の領域は、測定時間内に被検眼が移動する領域よりも広い領域であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記測定時間内に被検眼が移動する領域は、固視の開始からの時間に対する人眼の移動距離により決まる領域であり、前記固視の開始からの時間と人眼の移動距離との関係は、外部固視、内部固視、患眼及び健常者、年齢並びに1枚の眼底画像を撮像する時間からなる撮像条件によって異なることを特徴とする、請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
第1の眼底画像における前記特徴点の、第1の眼底画像における基準位置に対する第1の位置の情報を記録する記録手段と、
前記記録手段に記録された前記第1の位置の座標と、前記取得された眼底画像のうち第2の眼底画像から抽出される前記特徴点と一致する画像の、第2の眼底画像における前記基準位置に対応する位置に対する第2の位置の座標と、の間の座標差を算出することにより、前記被検眼の動きを求める手段とを更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記第2の眼底画像全体から前記特徴点と一致する画像が抽出されることを特徴とする請求項6に記載の眼科装置。
【請求項8】
被検眼から取得した複数の眼底画像の間における特徴点の位置の変化を検出することにより前記被検眼の動きを検出する眼科装置の制御方法であって、
前記被検眼の眼底画像を取得する工程と、
前記取得された眼底画像のうち第1の眼底画像に、一定の幅を持つ領域である第1の領域を設定する設定工程と、
前記第1の眼底画像のうち、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域から前記特徴点を抽出する抽出工程とを有することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の眼科装置を、コンピュータで実現するためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−188946(P2011−188946A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56557(P2010−56557)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
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