説明

眼科装置

【課題】 検者が眼科装置の側方に立った状態で被検者の瞼を上げるなどの介添えを行いつつ、無理な姿勢をとらないでモニタに表示される前眼部像を容易に観察可能にする。
【解決手段】 装置本体に搭載された検眼部を被検眼に対して移動して検眼を行う眼科装置は、検眼部に設けられ被検眼前眼部を撮像する撮像手段と、検眼部又は装置本体に設けられ,撮像手段に撮像された前眼部像を表示するモニタと、モニタを略垂直状態から略水平状態まで傾斜可能に保持する保持手段と、を備える。さらに、眼科装置の右側方又は左側方に立つ検者の方向に合わせてモニタの前眼部像の表示方向を90度回転した状態に切換える切換え手段を備える。スイッチパネルがモニタと一体的に傾斜可能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科医院等で被検眼を検眼(検査、測定)するために使用される眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜形状測定装置や眼屈折力測定装置、非接触式眼圧計等の眼科装置においては、被検者を座らせて被検者の顔を顎載せ台等で固定し、検者は装置本体を挟んで対面し、装置本体の正面側(被検者とは反対側)に設けられたモニタ上に表示される前眼部像を観察しながらジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼に対して検眼部を位置合わせしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−129711号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の眼科装置においては、前眼部像を表示するモニタは、装置本体を挟んで被検者と対面して座っている検者が観察可能なように、装置本体の正面にほぼ垂直状態(多少の傾斜状態も含む)で固定されている。被検者の瞼の開瞼が十分な被検者の場合には、検者は座ったままでモニタに表示される前眼部像の状態を観察しながら検眼を行っている。しかし、瞼が下垂している被検者の場合には、検者は装置正面のモニタを観察しつつ、検者は腕を伸ばして被検者の瞼を持ち上げながら検眼を行う必要があり、無理な姿勢になりがちで検眼操作が容易でないという問題があった。
本発明は、検者が眼科装置の側方に立った状態で被検者の瞼を上げるなどの介添えを行いつつ、無理な姿勢をとらないでモニタに表示される前眼部像を容易に観察できる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 装置本体に搭載された検眼部を被検眼に対して移動して検眼を行う眼科装置において、前記検眼部に設けられ被検眼前眼部を撮像する撮像手段と、前記検眼部又は装置本体に設けられ,前記撮像手段に撮像された前眼部像を表示するモニタと、該モニタを略垂直状態から略水平状態まで傾斜可能に保持する保持手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科装置において、眼科装置の右側方又は左側方に立つ検者の方向に合わせて前記モニタの前眼部像の表示方向を90度回転した状態に切換える切換え手段を設けたことを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の眼科装置において、前記モニタの回りに所定の信号を入力する複数のスイッチを持つスイッチパネルを設け、該スイッチパネルが前記モニタと一体的に傾斜可能に保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、検者は眼科装置の側方に立った状態で被検者の瞼を上げるなどの介添えを行いつつ、無理な姿勢をとらないでモニタに表示される前眼部像を容易に観察できる。また、アライメント操作も容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の眼科装置の側面図である。
眼科装置1は電動光学台2に載置される据置きタイプの装置である。被検者は椅子に座った状態で検眼を行う。眼科装置1は、基台10と、ジョイスティック14の操作により基台10上を被検眼に対して左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向)に移動可能な装置本体部である移動台11と、移動台11に搭載されて被検眼に対して左右・上下(Y方向)・前後の3次元方向に移動可能な検眼部13と、被検者の顔を支持するために基台10に固定された顔支持ユニット12を備える。移動台11には検眼部13を3次元移動させるための3次元駆動部16が設けられている。3次元駆動部16は、Y方向に移動可能なYテーブルの上にZ方向に移動可能なZテーブルを配置し、Zテーブルの上にX方向に移動可能なXテーブルを配置し、Xテーブルの上に検眼部13を配置し、Yテーブル、Zテーブル及びXテーブルをそれぞれモータ駆動することにより検眼部13の3次元の移動を可能にする。なお、検眼部13は、ジョイスティック14に設けられた回転ノブ15の回転操作により3次元駆動部16のY移動機構が作動することにより上下移動する。17は、移動台11を基台10に対して固定するためのストッパ機構である。
【0007】
検眼部13の正面であるの検者側には、前眼部観察像や測定結果が表示されるモニタ18が設けられている。モニタ18は液晶パネルからなり、眼科装置1のほぼ垂直状態の位置から、点線で示すほぼ水平状態の位置まで調整可能に検眼部13の筐体に保持されている。なお、モニタ18は検眼部13に設ける他、移動台11(本体部)に設けても良い。本装置では、手動操作により基台10上を移動台11が移動する構成としたが、検眼部13をジョイスティック14により3次元方向に電動で移動する構成、あるいは3次元的に自動アライメントとさせる構成とした場合には、移動台11と基台10とを一体にして、これを本体部とする構成でも良い。
【0008】
図2は、モニタ18の保持機構を説明する図である。モニタ18はフレーム20に取り付けられている。フレーム20にはL字状の金具21が取り付けられ、金具21はフリーストップヒンジ23の軸22に固定された第1腕23aに取り付けられている。フリーストップヒンジ23のもう片方の第2腕23bは、検眼部13の筐体に取り付けられている。図3は、フリーストップヒンジ23の構造例を示す図である。軸22は第2腕23bが持つ穴に通されており、隙間23cの間隔をネジ23dで締め付け調整することにより、軸22が回転可能にきつく保持される。すなわち、ある一定以上の力を掛けることにより軸22が回転可能となり、力を掛けない状態では摩擦力により、軸22の回転状態が維持される。これにより、モニタ18が図2の点線で示す垂直状態から実線で示す水平状態まで傾斜可能とされ、水平状態のままでもその状態が維持される。なお、モニタ18の水平状態の維持は、クリック機構やストッパ機構を設けることでも良い。モニタ18の水平状態は、検者が眼科装置の側方に立って使用するときに、表示画面を見やすくできれば良いので、水平方向に対して多少の傾斜(角度にして10度前後ほど)があっても良い。モニタ18の垂直状態についても、検者が装置正面に向かって座位したときに見やすくするために、多少の傾斜(角度にして15度ほど)があっても良い。
【0009】
図4は、検眼部13に収納される光学系と眼科装置1の制御系の概略構成図である。本実施形態の装置では、検眼光学系として眼屈折力測定光学系、角膜形状測定光学系を備える。また、検眼部13には、前眼部撮像光学系、固視光学系、アライメント光学系が設けられている。
前眼部照明光源50による被検眼Eの前眼部像は、ハーフミラー51、ハーフミラー52及び結像レンズ53を介して、撮像素子であるCCDカメラ54により撮像される。CCDカメラ54により撮像された前眼部像は、モニタ18に表示される。
【0010】
65は固視標投影用の可視光源であり、光源65により照明された固視標66の光は、投影レンズ67、ハーフミラー52、ハーフミラー51を介して被検眼Eに向かう。眼屈折力測定時には、投影レンズ67が光軸方向に移動することにより、被検眼Eの雲霧が行われる。
【0011】
70は眼屈折力測定用の赤外光源であり、光源70による光は、回転セクター71に設けられたスリットを通過し、投影レンズ72,絞り73,ハーフミラー74,ハーフミラー51を介して、被検眼Eの眼底に走査されながら投影される。眼底からの反射光は、ハーフミラー51,ハーフミラー74,受光レンズ75及び絞り76を介して、複数対の受光素子を備える受光部77により受光される。本装置の眼屈折力測定光学系は、位相差法を測定原理としているものである。なお、光源70による角膜反射像はX方向及びY方向のアライメント指標として利用される。
【0012】
80は角膜形状測定用及びZ方向のアライメント用の赤外光源であり、眼屈折力測定及び角膜形状測定の基準光軸L1を中心に4個配置されている。この内の2つは装置の水平方向に、他の2つは装置の垂直方向に、それぞれ投影光軸が光軸L1に対して所定の角度で交わるように配置されている。光源80からの光は、スポット絞り81及びコリメーティングレンズ82を介して角膜Ecに投影される。光源80による角膜反射像は、ハーフミラー51,ハーフミラー52及び結像レンズ53を介してCCDカメラ54に受光される。CCDカメラ54を含む撮像光学系は、角膜測定指標の検出光学系を兼ねる。
【0013】
85はZ方向のアライメント用の赤外光源であり、光軸L1を中心に2個配置されている。光源85からの光は、スポット絞り86を介して角膜Ecに投影される。また、光源85は、装置の水平方向にそれぞれ投影光軸が光軸に対して所定の角度で交わるように配置されている。また、水平方向に配置された2個の光源80は、Z方向のアライメント用の光源を兼ねる。光源80及び85による角膜反射像は、ハーフミラー51,ハーフミラー52及び結像レンズ53を介して、CCDカメラ54に受光される。前眼部撮像光学系は、アライメント指標の検出光学系を兼ねる。光源80による光は平行光束であるため、被検眼Eに対する検眼部13の作動距離(Z方向の距離)が変化しても角膜反射像の位置はほとんど変化しない。一方、光源85による光は発散光束であるので、作動距離が変化すると角膜反射像の位置が変化する。そして、2つの光源80による角膜反射像の間隔と、2つの光源80による角膜反射像の間隔とを比較することにより、Z方向のアライメント状態を検出することができる(特開平6−46999号公報等を参照)。
【0014】
CCDカメラ54の出力は画像制御部101に接続されており、画像制御部101はアライメント及び角膜測定用の角膜反射像を検出処理する。また、画像制御部101はモニタ18の表示を制御する。主制御部100には、画像制御部101、眼屈折力測定光学系の受光素子77、3次元駆動部16、回転ノブ15、モニタ18の回りに配置されたスイッチパネル部110が接続されている。スイッチパネル部110には、測定モードを切換えるスイッチ110a、自動アライメントと手動アライメントとを切換えるスイッチ110b、測定結果を印字出力するためのプリントスイッチ110c、データをクリアするためのスイッチ110d、各測定モードに応じた信号を入力するための複数個のスイッチ112、モニタ18上の前眼部像の表示方向を90度回転した状態に切換えるための2個のスイッチ111R,111L等、眼科装置1に所定の信号を入力する複数のスイッチが設けられている。スイッチ111R,111Lは、検者の立った方向に合わせて使用する。また、主制御部100は、受光素子77からの出力に基づき眼屈折力を演算する機能、画像制御部101により検出処理された角膜反射像に基づき角膜形状を演算する機能、アライメント状態を判定して3次元駆動部16を制御する機能を有する。
【0015】
次に、本装置による測定時の動作を説明する。図1に示すように、被検者には椅子に座ってもらい、顔を顔支持ユニット12により固定する。検者は、通常、被検者の正面で、座位で位置する。モニタ18は、検者が座位で見やすいように略垂直状態の位置にある。検者はモニタ18を観察しながらカメラ54で撮像された前眼部像を画面中央に位置するように、ジョイスティック14を操作して移動台11を前後左右に移動し、また、回転ノブ15を操作して検眼部13を上下移動する。光源70,80及び85による角膜反射像がカメラ54で撮像され、これらがアライメント指標像として検出されるようになると、自動アライメント及び自動追尾が作動するようになる。主制御部100は、光源70の指標像を基に3次元駆動部16を制御して検眼部13をX方向,Y方向に移動させる。また、水平方向に位置する光源80及び85の指標像を基に、3次元駆動部16を制御して検眼部13をZ方向に移動させる。XYZの各方向のアライメントが完了すると、主制御部100は自動的にトリガ信号を発して測定を実行する。角膜形状測定及び眼屈折力測定の連続測定モードが設定されているときは、これらの測定が連続的に実行される。
【0016】
ここで、被検眼の眼瞼が下垂している場合、角膜反射像が検出されなくなり、自動アライメントや自動追尾の条件を満たさず、測定が開始しない。また、自動アライメントが作動して測定が実行されても、角膜形状測定では角膜反射像が眼瞼により遮られて測定エラーとなっていしまう。このような場合には、検者はフレーム20を手で持ち上げることにより、モニタ18の角度をほぼ水平になるまで傾ける。そして、図5に示すように、検者は眼科装置1の側方に立って片方の手を伸ばし、被検者の眼瞼を持ち上げる。このとき、モニタ18が水平状態まで傾けられているので、検者は被検者の眼瞼を持ち上げつつ、モニタ18に表示される前眼部像を容易に観察できる。
【0017】
また、検者が立った方向に位置するスイッチ111R又は111Lを押すと、画像制御部101はその方向に合わせてモニタ18の前眼部像の表示方向を90度回転するようにモニタ18の表示を制御する。すなわち、図5の例では、検者が眼科装置1の右側方に立っているので、スイッチ111Rを押すことにより、前眼部像の表示方向が時計回りに90度回転した状態に切換えられる。これにより、眼瞼の開き具合、まつげの掛かり具合、瞳孔の開き具合等の被検眼の状況が見やすくなり、適切な対処を行える。検者が眼科装置1の左側方に立つ場合は、スイッチ111Lを押すことにより、前眼部像の表示方向が反時計回りに90度回転した状態に切換えられる。なお、再度同じスイッチ111R又は111Lを押すと、前眼部像の表示方向は元に戻される。
【0018】
検者は、もう片方の手をジョイスティックに持っていき、ジョイスティック14を操作することができる。アライメントが不備の場合は、前眼部像を観察しながらジョイスティック14等を操作して自動アライメントが作動可能な位置まで検眼部13を移動させる。手動アライメントモードの場合には、モニタ18に表示される前眼部像を観察しながら、容易に検眼部13を移動するための操作ができる。そして、前眼部像の観察によりアライメントを完了させ、図示なき測定開始スイッチを押すことにより測定が実行される。
【0019】
なお、検眼部13が十分に自動アライメント(自動追尾)可能な状態まで位置合わせできているときは、ストッパ機構17を使用して移動台11を基台10に固定しておくと良い。これにより、モニタ18の回りにあるスイッチパネル110の各種のスイッチを操作したり、誤って移動台11に触れたりしても、不用意に移動台11が移動することを防止できる。
上記では検者が眼科装置の側方に立って測定する場合を説明したが、検者が椅子に座らずに被検者の正面に立って測定する場合にも、モニタ18をほぼ水平状態まで移動できるので都合が良い。すなわち、検者は立ったままでも無理な姿勢をとらずに、前眼部の様子が見やすくなり、容易に検眼操作を行える。
また、モニタ18の回りにはスイッチパネル110が設けられており、モニタ18と一体的に水平状態まで傾けることができるので、検者は立ったままで無理な姿勢をとることなく、容易にスイッチ操作を行える
以上の実施形態は、種々の変容が可能である。モニタ18の前眼部像の表示方向を90度回転した状態に切換える手段としては、モニタ18自体を回転可能に保持する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の眼科装置の側面図である。
【図2】モニタの保持機構を説明する図である。
【図3】モニタの保持機構を構成するフリーストップヒンジの構造例を示す図である。
【図4】検眼部に収納される光学系と眼科装置の制御系の概略構成図である。
【図5】検者が眼科装置の側方に立って検眼する状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0021】
1 眼科装置
10 基台
11 移動台
13 検眼部
14 ジョイスティック
16 3次元駆動部
18 モニタ
20 フレーム
23 フリーストップヒンジ
54 CCDカメラ
110 スイッチパネル部
111R,111L スイッチ
100 主制御部
101 画像制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に搭載された検眼部を被検眼に対して移動して検眼を行う眼科装置において、前記検眼部に設けられ被検眼前眼部を撮像する撮像手段と、前記検眼部又は装置本体に設けられ,前記撮像手段に撮像された前眼部像を表示するモニタと、該モニタを略垂直状態から略水平状態まで傾斜可能に保持する保持手段と、を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、眼科装置の右側方又は左側方に立つ検者の方向に合わせて前記モニタの前眼部像の表示方向を90度回転した状態に切換える切換え手段を設けたことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼科装置において、前記モニタの回りに所定の信号を入力する複数のスイッチを持つスイッチパネルを設け、該スイッチパネルが前記モニタと一体的に傾斜可能に保持されていることを特徴とする眼科装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−55439(P2006−55439A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241597(P2004−241597)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)