説明

眼科装置

【課題】 上下動部を上下させるときに検者が感じる操作負荷の増大を抑えた操作が行える眼科装置を提供する。
【解決手段】 被検者眼を観察するための観察ユニットが搭載された上下動部と、基台部に対して上下動部を検者が操作部材の手動操作によって上下移動させるための上下移動機構と、検者の操作負荷を軽減するために上下動部を上方へ付勢する付勢部材と、を備える眼科装置において、基台部に対する前記上下動部の上下位置を検知する上下検知手段と、付勢部材の一端を支持し、付勢部材を上下方向に移動可能に基台部又は上下動部に配置された支持部材と、支持部材を付勢方向に沿って移動する駆動源を持つ駆動手段と、上下検知手段によって検知された上下位置に基づいて駆動源の駆動を制御し、付勢部材の付勢力を所定の許容値内で維持するように支持部材を移動させる制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者眼の観察等を行う観察ユニットを備える眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科の診察では、被検者眼を観察するために、観察ユニットである顕微鏡ユニットを備えるスリットランプ(細隙灯顕微鏡)等の眼科装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。このような装置は、検者が観察したい被検者眼の部位に観察ユニットの観察光軸をアライメントするために、観察ユニットを水平方向に移動させる摺動機構と、観察ユニットを上下方向に移動させる上下動機構と、を備えている。上下動機構は、ジョイスティック(操作桿)の上部又は下部に取り付けられた回転ノブ(回転操作部材)を回転操作することによって観察ユニットを上下動させる機構である。このような上下動機構は、回転ノブの回動を上下方向の直動に変換するユニット等を備えている。
【0003】
このような上下動機構には、観察ユニット等の重量が加わっている。このため、観察ユニットの上昇時においては、検者は、回転ノブの回転操作時に観察ユニット等の重量分の負担(負荷)を感じる。これに対し、例えば、上下動しないベース(摺動台)と観察ユニットが搭載された上下動部との間にバネを配置し、上下動部を上方へと付勢して検者の負荷を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−184543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上下動部の高さの違いによってバネの長さが変わってしまうため、それに伴ってバネの付勢力が変わってしまう。このため、検者には、上下動部の高さの違いによって回転ノブの回転負荷が変わって感じられ、スムーズな操作がしにくい問題があった。すなわち、上下動部の高さが中位の位置で重量の平衡がとれている状態において、上下動部を最上位の位置まで上昇させるときには、バネの付勢力が徐々に弱くなり、作動負荷が大きくなる。また、上下動部を最下位の位置まで下降させるときにも、バネの付勢力が徐々に強くなり、作動負荷が大きくなる。特に、スリットランプでは、レーザ照射ユニット等の手術ユニットを搭載する場合があり、上下動機構に加わる重量はさらに増すため、上下動部の高さの違いによる負荷の変化が、より強く感じられる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、上下動部を上下させるときに検者が感じる操作負荷の増大を抑え、スムーズな操作が行える眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成を有することを特徴とする。
(1) 被検者眼を観察するための観察ユニットが搭載された上下動部と、基台部に対して前記上下動部を検者が操作部材の手動操作によって上下移動させるための上下移動機構と、検者の操作負荷を軽減するために前記上下動部を上方へ付勢する付勢部材と、を備える眼科装置において、前記基台部に対する前記上下動部の上下位置を検知する上下検知手段と、前記付勢部材の一端を支持し、前記付勢部材を上下方向に移動可能に前記基台部又は上下動部に配置された支持部材と、前記支持部材を付勢方向に沿って移動する駆動源を持つ駆動手段と、前記上下検知手段によって検知された上下位置に基づいて前記駆動源の駆動を制御し、前記付勢部材の付勢力を所定の許容値内で維持するように前記支持部材を移動させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科装置において、前記付勢部材は前記基台部と上下動部との間に配置され、前記上下動部を上方向に付勢する弾性体であり、前記制御手段は前記弾性体を所定の許容長さに維持するように前記支持部材を移動させることを特徴とする。
(3) (2)の眼科装置において、前記支持部材は前記弾性体の下側を支持し、前記制御手段は、前記上下動部の上昇が検知されたときに前記弾性体を所定の許容長さに維持するように前記支持部材を上方へ移動させることを特徴とする。
(4) (2)の眼科装置において、前記支持部材は前記弾性体の下側を支持し、前記制御手段は、前記上下動部の上昇が検知されたときに前記弾性体を所定の許容長さに維持するように前記支持部材を下方へ移動させることを特徴とする。
(5) (2)の眼科装置において、前記制御手段は、前記上下動部の高さ位置の変化量と同じ変化量で前記支持部材を移動させることを特徴とする。
(6) (1)〜(5)の何れかの眼科装置は、眼科装置への駆動電流をオフにするスイッチを有し、
前記制御手段は、前記オフスイッチのオフ信号が入力されたときには前記操作部材が操作されることによって前記上下動部が所定の下方位置に移動可能となるまで前記支持部材を移動させることを特徴とする。
(7) (1)〜(6)の何れかの眼科装置は、前記付勢部材の付勢力を変更するための変更信号を入力する信号入力手段を備え、前記制御手段は、前記支持部材を移動させるときに、前記変更信号に基づいて前記付勢部材の付勢力の許容値を変更することを特徴とする。
(8) (1)〜(6)の何れかの眼科装置は、前記付勢部材の付勢力を変更するための選択信号を入力するセレクタを有し、前記制御手段は、前記セレクタの選択信号に基づき、前記支持部材を移動させるときの前記付勢にオフセット量を付与するために前記付勢部材の長さを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検者が感じる操作負荷の増大を抑え、観察ユニット等の上下動をスムーズな操作で行える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態であるスリットランプの概略外観図である。図2は、スリットランプの光学系の概略構成図である。
【0010】
スリットランプ(細隙灯顕微鏡)100は、顔支持ユニット10と、移動ユニット20と、照明ユニット60と、顕微鏡ユニット(観察ユニット)70と、を備えている。
【0011】
移動ユニット20は、テーブル1上で水平方向(左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向))に摺動可能なスライドベース(基台部)21と、スライドベース21を移動させるために検者の手に把持されて傾倒操作されるジョイスティック(操作棹)22と、スライドベース21から上方に略鉛直方向(Z方向)に延びるベースシャフト(基軸)23と、を備えている。ジョイスティック22の上方には、検者の手に把持されて回転操作されるグリップ(回転ノブ(回転操作部材))22aが一体的に形成されている。また、移動ユニット20は、ジョイスティック22が左右前後に傾倒されることによってスライドベース21(及びベースシャフト23)を水平方向(左右及び前後方向(X及びY方向))に移動させる周知の摺動機構を備えている。さらにまた、移動ユニット20は、ジョイスティック22(グリップ22a)が水平方向に回転されることによってベースシャフト23を上下方向(Z方向)に移動させる上下動機構を備えている(詳細は後述する)。
【0012】
ベースシャフト23には、照明ユニット60を支持するアーム60aと、顕微鏡ユニット70を支持するアーム70aと、が、ベースシャフト23の中心軸Aを中心に個々に水平方向に回転可能に支持されている。これにより、照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70は、中心軸Aを中心に別個に水平方向に回転できる。
【0013】
顔支持ユニット10は、ベースシャフト23の上方に被検者眼E(図2参照)が位置するように、被検者の顔(頭)を支持する。すなわち、顔支持ユニット10は、照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70に対して被検者側に配置されている。顔支持ユニット10は、被検者の額を支持する額当11と、被検者の顎を支持する顎台12と、を備えており、2本の支柱13によってテーブル1に固定されている。
【0014】
照明ユニット60において、ハロゲンランプ等の光源61からの白色光(可視光)は、コンデンサレンズ62を透過して可変アパーチャ63及び可変スリット64を照明する。アパーチャ63及びスリット64を通過した白色光は、投影レンズ65を透過してプリズムミラー66で反射され、被検者眼Eに投射される。このような構成により、照明光学系60оが成立する(図2参照)。
【0015】
顕微鏡ユニット70において、照明光学系からの白色光により照明された被検者眼Eの眼底像は、対物レンズ71と変倍光学系72と結像レンズ73とを透過し、正立プリズム74で反射される。プリズム74で反射された白色光は、視野絞り75を通過して接眼レンズ76を透過し、検者眼Fに入射する。このような構成により、観察光学系70оが成立する(図2参照)。
【0016】
次に、スリットランプ100の上下動機構について説明する。図3は、移動ユニット20の概略構成を示す斜視図である。図4は、上下動機構の部材の関係を示すための斜視図である。図5は、支持部材周辺の拡大斜視図である。図3は、左後方斜視図(検者側の左方向から見た斜視図)であり、図4は、右後方斜視図である。なお、図4では、スライドベース21を省略し、図5では、付勢部材46を省略している。
【0017】
本実施形態では、ジョイスティック22(グリップ22a)の水平方向の回転(回動)をベースシャフト23の上下方向(Z方向)の直動に変換する上下動機構は、ジョイスティック22内を略鉛直方向(Z方向)に挿通してグリップ22aを水平方向に回転可能に支持するシャフト(支持部材)31と、シャフト31を傾倒可能に保持すると共にジョイスティック22の水平方向の回転に伴って水平方向に回転する,外周部に歯が形成されたギアである回転ベース(回転部材)32と、回転ベース32の歯と噛み合う歯が外周部に形成された,回転ベース32の水平方向の回転を伝達するために水平方向に回転するギアである伝達部材33と、伝達部材33の水平方向の回転を上下方向の直動に変換する変換ユニット34と、変換ユニット34によって上下方向に移動される,ベースシャフト23が固定された(照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70を支持する)上下動部50と、上下動部50の下部に設けられた中空のシャフト51と、スライドベース21に設けられた,上方がシャフト51内に収まる外径を持つシャフトユニット41と、を備えている。
【0018】
変換ユニット34は、スライドベース21から略鉛直方向(Z方向)に延びているシャフト(支持部材)34aと、伝達部材33の歯と噛合する歯が外周部に形成された,伝達部材の水平方向の回転を伝達するためにシャフト(送りネジ)34aを中心に水平方向に回転するギアである変換部材34bと、を備えている。上下動部50は、雄ネジであるシャフト34aと螺合する雌ネジである変換部材(送りナット)50aを備えている。これにより、グリップ22aが回転されると、その回転力がシャフト31、回転ベース32、伝達部材33を介して変換ユニット34に伝達され、シャフト34aの回転が変換部材50aを上下方向の直動に変換され、上下動部50が上下動することとなる。
【0019】
また、上下動機構は、シャフト34a又はグリップ22aの回転数(回転量)を検出することによって、スライドベース(基台部)21の基準位置(上下動部50の最下端の位置)に対する上下動部50の高さ位置を検出するセンサ(検出器)38を備える。センサ38は、回転シャフトに取り付けられ,伝達部材35に噛み合うピニオンギアを有し,グリップ22aの回転数を各伝達部材を介して検出する。伝達部材35は、変換部材34bの回転をセンサ38に伝達する。変換ユニット34、伝達部材35、センサ38によって上下動部50の高さ位置を検出するセンサユニット36が構成される。
【0020】
本実施形態では、センサ38は、グリップ22a(変換ユニット34)の回転数を検出するエンコーダまたはポテンショメータである。センサ38は、グリップ22aの一周当りの回転量を読み取るだけでなく、グリップ22aの総回転数(総回転量)を読み取る。センサ38は、グリップ22aの回転位置に対応して検出信号を発する。従って、センサ38の検出信号に基づいて、変換ユニット34の回転数を検出でき、スライドベース(基台部)21の基準位置に対する上下動部50の高さ位置を検出することができる。すわわち、センサ38は、グリップ22aの操作(入力)量と、操作の結果により生じた上下動部50の高さ位置の変化(出力)とを検出するためのセンサとなる(上下位置検出手段)。センサ38は、制御部(制御手段)80に接続されている。
【0021】
上下動機構は、さらに、上下動部50を下方から上方向に付勢するコイルバネ(弾性体)等の付勢部材46と、付勢部材46を保持するために、スライドベース21に設けられたシャフトユニット(ガイド部材)41と、付勢部材46の付勢力を調整するために、シャフトユニット41に沿って上下方向に移動可能な支持部材42と、支持部材42を上下方向に移動するために、スライドベース21に設けられた駆動ユニット40と、を備える。付勢部材46は、シャフト41aの外周に配置され、その下端が支持部材42に支持され、その上端が中空シャフト51の上部に当接される。シャフトユニット(ガイド部材)41は、スライドベース21に回転可能に保持されており、鉛直方向に延びて配置され表面に雄ネジが形成されたシャフト(送りネジ)41aと、スライドベース21の下側(下面)に配置されるギア等の伝達部材41bと、を備えている。シャフト41aと伝達部材41bは一体的に成形されている。シャフトユニット41は、支持部材42の移動方向を上下方向としてガイドする役割を持つ。スライドベース21は駆動ユニット40の一部を構成する。
【0022】
駆動ユニット40は、シャフトユニット41を回転させることによって支持部材42を上下動させるための駆動源であるモータ49と、シャフトユニット41に回転力を伝達するギアである伝達部材43と、支持部材42の回転を止めるための回り止めである規制部材45と、を有する。伝達部材43は、スライドベース21に水平回転可能に保持され、伝達部材41bと噛み合うように配置されている。伝達部材43は、モータ49の回転シャフトに取り付けられたピニオンギアと噛み合っている。このようにして、シャフトユニット41は、各伝達部材を介してモータ49と連結されている。
【0023】
支持部材42は、中空の円筒状の部材であり、内部にシャフト41aの雄ネジと螺合する雌ネジが形成された筒部(送りナット)42aと、筒部42aの下部で筒部42aから外周方向に突出して形成され付勢部材46の下端と当接し、付勢部材46を下方から支持するためのフランジ42bと、規制部材45を収める空間として形成された溝部42cと、を備えている(図5参照)。規制部材45は、スライドベース21に下端を固定され、鉛直方向に延びて配置された柱状の部材である。規制部材45は、シャフト41aに取り付けられた支持部材42の溝部42cに収まるように、シャフト41aに近接して配置されている。
【0024】
上記のような駆動ユニット40により、モータ49は、制御部80の指令信号に基づいて伝達部材43、伝達部材41bを介してシャフト41aを回転させ、支持部材42をスライドベース21に対して上下移動させる。支持部材42の上下移動により、付勢部材46も上下移動される。
【0025】
なお、上下動部50を上方に付勢する付勢部材46は、上下動部50に上方から加わる荷重をほぼ打ち消す役割を持ち、上下動部50を上方に移動させる際にグリップ22aに加わる回転負荷(回転抵抗)を軽減する。付勢部材46は、シャフト41aより若干大きい内径で、かつ、シャフト51bの内径より小さい外径で形成される。付勢部材46の下端は、フランジ42bに当接し、付勢部材46の上端は、シャフト51の上部(天井部)に当接する。この付勢部材46の付勢力は、上下動部50に上方から加わる荷重より若干弱い程度とする。これにより、変換部材50aの雌ネジのネジ山が変換部材34aの雄ネジのネジ山に常に載ることとなり、ネジ同士のがたつきが低減され、上下動部50の上下方向(Z方向)の移動が滑らかに行える。ここで、付勢部材46の付勢方向は、シャフト41a、シャフト51の延びる方向、つまり、鉛直方向となっている。
【0026】
また、スライドベース21には、シャフトユニット41の回転数の検出によって支持部材42の高さ位置を検出するセンサユニット47が配置されている。センサユニット47は、センサ38と同様にエンコーダまたはポテンショメータ等から構成されるセンサ48と、駆動ユニット40が有する伝達部材43からの回転力をセンサ48に伝達するためのギアである伝達部材44を備える。ギアである伝達部材44はセンサ48の回転シャフトに取り付けられたピニオンギアと噛み合っている。このような構成によりシャフトユニット41の回転数はセンサ48に得られ、シャフトユニット41の回転数から支持部材42の高さ位置が検出される。
【0027】
なお、図示は略すが、上下動部50には、上下動部50の高さの最上限(最上位置)を規制する規制部材が設けられている。また、シャフトa41及びシャフト51の長手方向(Z方向)の長さにより、上下動部50の高さの最下限(最下位置)が規制される。本実施形態では、上下動部50は、30mmの移動幅を持つものとする。従って、最下位(下限)に位置した上下動部50は、最上位(上限)までの間(30mm)を上下動できることとなる。
【0028】
次に、支持部材42の上下方向の移動(上下動)の動作を説明する。伝達部材43が、モータ49によって回転されると、伝達部材41bが回転されシャフト41aが回転される。シャフト41aの回転は、支持部材42(の筒部42a)に伝達される。支持部材42は、規制部材45によって回転を規制されているため、シャフト41aの雄ねじの回転が筒部42aの雌ねじに伝達され、雄ねじの回転に伴って支持部材42全体が上下方向に移動することとなる。例えば、伝達部材43が右回り(時計回り)に回転されると、支持部材42は下方へと移動し、伝達部材43が左回り(反時計回り)に回転されると、支持部材42は上方へと移動する。
【0029】
図6は、装置の制御系を示すブロック図である。制御部80には、センサ38及びセンサ48、モータ49、動作プログラムが記憶されたメモリ81、装置のオン・オフを行うための電源スイッチ82、が接続されている。制御部80は、センサ38から送られる検出信号によって、上下動部50の高さ位置を検出(把握)し、センサ48から送られる検出信号によって、支持部材42の高さ位置を検出する。本実施形態では、ポテンショメータであるセンサ38及び48の抵抗値に基づく信号によって上下動部50、支持部材42の高さ位置を取得する。制御部80は、センサ38の検出信号に基づいてモータ49を駆動し、付勢部材46の付勢力を所定の許容値内で維持するように支持部材42を上下移動する。好ましくは、制御部80は、支持部材42と上下動部50との高さ位置の差(距離)を一定に保つように支持部材42を移動し、付勢部材46の長さを一定にすることにより付勢部材46の付勢力を一定にする。具体的には、センサ38により検出した上下動部50の高さ位置の変化量(上下方向の移動量)と同じ高さに対応する移動量で支持部材42を移動させる。このとき、制御部80は、センサ48の検出信号によって、支持部材42の高さ位置を取得し、支持部材42が上下動部50の高さ位置の変化量と同じ量だけ移動したかどうかを確認する。
【0030】
次に、上下動部50の上下方向(Z方向)の移動動作について説明する。図7は、上下動部50の高さを変えた場合の支持部材42と付勢部材46の状態を示した模式的断面図である。図7(a)は、上下動部50と支持部材42が最下位に位置している状態を示し、図7(b)は、上下動部50と支持部材42が中腹程度に位置した状態を示している。
【0031】
図7(a)に示すように、上下動部50が最下限にある状態では、付勢部材46は、シャフト51と支持部材42に挟まれ、自然状態から圧縮されている。このときの付勢部材46は、長さLの状態とされており、長さLに対応した付勢力を持っている。付勢部材46の付勢力は、上下動部50に上方から加わる荷重より若干弱い程度又はその荷重の平衡を取る程度とする。この状態からグリップ22aが水平方向に回転される(例えば、時計回りに回転される)と、回転ベース32、伝達部材33、変換部材34b等を介してシャフト34aが回転し、上下動部50が上方に直動(上昇)する。このとき、センサ38は、変換部材34bの回転を伝達部材35の回転を介して検出する。センサ38からは、現在の上下動部50の高さ位置に対応した検出信号が出力されている。制御部80は、センサ38の検出信号に基づいて上下動部50の位置(又は移動量)を取得し、上下動部50が移動した(上昇した)分だけ、支持部材42を移動させるように、モータ49を駆動する。モータ49が駆動されると、ピニオンギアの回転が伝達部材43を介して伝達部材41bに伝わる。伝達部材41bが回転するとシャフト41aも回転し、雄ねじの回転によって雌ねじ(筒部42a)を介して支持部材42に回転力が伝わる。支持部材42は、規制部材45の規制によって回転されないため、シャフト41aの回転に応じて上方へ移動(上昇)する。付勢部材46の下端は、支持部材42に押されて上昇する(図7(b)参照)。図7(b)において、付勢部材46の長さLは、図7(a)と同じである。
【0032】
一方、図7(b)の状態から、グリップ22aが前述とは逆方向に水平方向に回転される(例えば、反時計回りに回転される)と、各部材は前述とは逆の動作を行い、上下動部50は下方に直動(下降)する。このとき、制御部80は、センサ38の検出信号に基づいて、上下動部50の位置を検出し、上下動部50の位置に対応した移動量だけ支持部材42が下降するようにモータ49を前述とは逆回転させる。モータ49が前述とは逆方向に回転駆動されると、支持部材42は下方に移動(下降)する。そして、制御部80は、センサ48の検出信号により支持部材42の位置を確認する。
【0033】
このようにして、グリップ22aの回転操作によって上下動部50(及びベースシャフト23)が上下方向に移動する。また、上下動部50の移動に伴って支持部材42も移動する。上下動部50と支持部材42の移動を連動させることによって、上下動部50と支持部材42の高さ位置の差が一定となり、付勢部材46の長さも一定となる。
【0034】
このようにして、上下動部50の高さ位置に依らずに付勢部材46の長さが一定となるため、グリップ22aの回転操作において、検者が感じる負荷は一定となる。これにより、顕微鏡ユニット70等の上下動がスムーズに行え、アライメントがし易くなる。また、上下動の動作において、検者の負担(負荷)が軽減される。また、モータ等の駆動ユニットによって直接的に上下動部50が上下動されることとは異なるため、上記装置は以下のような利点を持つ。顕微鏡ユニット70の高さ位置の微調整において、グリップ22aの微妙な回転による調整がし易い。別に設けたモータによって顕微鏡ユニット70の高さ位置を微調整する場合、高性能のモータが必要となり、装置の大型化、コストアップとなってしまう。これに対し、本実施形態の装置では、グリップ22aの回転操作は、能動的ではない(モータによる駆動力の付加がない)各伝達部材の連携により上下動部50が移動するため、グリップ22aの微妙な回転操作によって顕微鏡部ユニット70の微妙な位置調整ができる。つまり、従来の微妙な操作感を維持したまま、回転操作の負荷を一定とできる。
【0035】
なお、付勢部材46の長さと付勢部材46の付勢力との間には相関があり、好ましくは、付勢部材46の付勢力(付勢部材46の長さ)を一定とするように、上下動部50の移動量と同量だけ支持部材42を移動させるが、検者がグリップ22aを回転操作するときの負荷が大きく変動しないように設定された許容値内に付勢部材46の付勢力があれば良い。例えば、付勢部材46の付勢力が許容値内から外れるときに支持部材42を移動させても良い。付勢部材46がバネ等の弾性体である場合には、付勢部材46の長さを所定の許容値内で一定に保つように、支持部材42を移動させる。
【0036】
また、制御部80は、スイッチ82により装置のオフ信号が入力されると、上下動部50が所定の下方位置に移動可能となるまで、支持部材42を移動させる、上記の例では、制御部80は、支持部材42を最下位まで移動させる。支持部材42が最下位まで下がらずに、例えば、中間位置で停止している場合、グリップ22aを操作しても上下動部50は付勢部材46の変形可能な範囲までしか下がらない。この場合、装置を輸送する目的で装置を所定の梱包材に収納しようとしても、装置が梱包材に収納できない等の問題が起こり得る。これに対して、支持部材42が最下位まで下がっていれば、従来と同じく、グリップ22aの回転操作により、上下動部50を最下位まで下げることができ、前述した不都合を回避できる。
【0037】
以上のような構成を有する装置において、実際の使用動作を簡単に説明する。検者は、検査に先立ち、スリットランプ100の電源(図示を略す)を入れる。次に、検者は、顔支持ユニット10に被検者の顔を固定させ、移動ユニット20の操作(ジョイスティック22の傾倒操作及びグリップ22aの回転操作)を行い、照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70の大まかなアライメント(X,Y及びZ方向の位置決め)を行う。そして、照明ユニット60の光源61を点灯して照明光(白色光)を被検者眼Eに投光し、顕微鏡ユニット70を介して被検者眼Eを観察する。検者は、被検者眼Eを観察しながら移動ユニット20の操作(ジョイスティック22の傾倒操作及びグリップ22aの回転操作)を行い、照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70の細かなアライメント(X,Y及びZ方向の位置決め)を行う。上下方向(Z方向)のアライメントを行う場合、検者は、グリップ22aを回転操作して、照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70の上下方向(Z方向)の位置(高さ)を変更する。このとき、制御部80は、センサ38及び48の検出信号に基づいてモータ49を制御し、顕微鏡ユニット70の高さ調節において検者の操作の負荷を軽減する。
【0038】
図1に示した眼科装置においては、レーザ光を被検者眼に照射するレーザ照射ユニット又は被検者眼を撮影するカメラ等の付属ユニットを上下動部50に搭載する場合がある。この場合、上下動部50掛かる荷重が増加するため、前述の付勢部材46の付勢力では不足することとなり、上方向への移動を行う場合の検者の負担が増加することとなる。そこで、上下動部50に追加された重量に応じて上下動部50と支持部材42の高さ位置の差(付勢部材46の付勢力の許容値又は付勢部材46の長さLの許容値)を変化させることにより、付勢部材46の付勢力を増加させるように調整し、検者の負荷増加を抑制する。付勢部材46の付勢力の調整が必要な場合には、以下のように行う。
【0039】
図6において、セレクタ83が制御部80に接続されている。セレクタ83は、支持部材42とシャフト51の上部とに挟まれる付勢部材46の長さL(付勢力)を変更する選択信号を入力するためのユニットであり、予め設定された複数の長さL(又は複数の付勢力)の中から選択信号を入力する。セレクタ83の選択信号が入力されると、制御部80は、付勢部材46の長さLを選択された長さに変更するように、支持部材42の高さ位置を変更する。これによって、付勢部材46の付勢力が変更され、検者がクリップ22aの回転操作で感じる負荷を変更(軽減)できる。
【0040】
例えば、セレクタ83よって付勢力を量増加させるための信号が入力されると、制御部80は、センサ38で取得している上下動部50の高さ位置と、センサ48で取得している支持部材42の高さ位置との関係において、支持部材42の高さを一定量だけ上昇させる。ここでいう一定量とは、付勢力を変更するオフセット量である。例えば、セレクタ83によって、2段階に付勢力を上昇できる構成とする。検者が、セレクタ83の操作すると、選択信号が制御部80に入力され、制御部80は、付属ユニットの搭載前の基準に対して、オフセット量だけ(オフセット量に対応させて)付勢部材46の長さを短くする(付勢力を増加させる)ように、支持部材42の高さ位置を変更し、その後の支持部材42の上下動において、付勢部材46の長さを一体に保つ。
【0041】
以上説明した実施形態は種々の変容が可能である。例えば、以上の説明では、支持部材42は付勢部材46の下端を支持し、スライドベース21に設けられた駆動ユニット40により、上下動部50が上昇したときに支持部材42も上昇される構成としたが、これに限るものではない。支持部材42が付勢部材46の上端を支持し、スライドベース21側が付勢部材46の下端を受ける構成とし、駆動ユニット40及びセンサユニット47等を上下動部50側に設けても良い。この場合、基準の高さ位置から上下動部50が上昇したときに支持部材42の下端を下げることにより、付勢部材46の長さ(付勢力)が許容内に入るようにする。
【0042】
また、以上の説明では、位置検出手段としてのセンサ38及び48は、支持部材42の高さ位置を検出するためのエンコーダまたはポテンショメータとしたが、これに限るものではない。サンサ38及びセンサ48とは別に、上下動部50及び支持部材42の高さをそれぞれ直接検出する距離センサを設けてもよい。また、センサ48は、必ずしも必要ない。制御部80は、支持部材42を最下位から駆動させる構成とし、モータ49の回転量を検出(又は記憶)することによって、支持部材42の高さ位置を取得する構成としてもよい。
【0043】
また、以上の説明では、センサ38は、グリップ22aの総回転量から上下動部50の高さ位置を検出し、センサ48は、シャフトユニット41aの総回転量から支持部材42の高さ位置を検出する構成としたが、これに限るものではない。センサ38は、伝達部材を介してグリップ22aの回転(相対的な回転量)を検出して上下動部50の上下方向での移動量を検出する構成であってもよい。同様に、センサ48は、伝達部材を介してシャフトユニット41の回転(相対的な回転量)を検出し、支持部材42の上下方向での移動量を検出する構成であってもよい。この場合、制御部80は、上下動部50と支持部材42の高さ位置を把握するために、装置の起動時、イニシャライズ時に、支持部材42を最下位に下げる。この状態からの相対的な支持部材42の移動量をセンサ48で検出することにより、支持部材42の高さ位置を取得(検出)する構成とする。同様に、上下動部50を最下位まで下げ(検者が操作する)、制御部80は、この状態からの上下動部50の相対的な移動量をセンサ38により検出することで、上下動部50の高さ位置を取得する。また、制御部80は、センサ38で検出した上下動部50の移動量(方向性も含む)に比例させてモータ49を駆動させればよい。
【0044】
また、以上の説明では、支持部材42は、シャフトユニット41と螺合し、モータ63の回転力を受けて、上下方向に移動する構成としたが、これに限るものではない。支持部材42がガイド部材に沿って上下方向に移動する構成であればよい。
【0045】
また、以上の説明では、モータによって、支持部材42を上下動させる構成としたが、これに限るものではない。支持部材42を上下動(付勢部材46の付勢方向に沿った移動)ができる駆動ユニットであればよく、例えば、駆動ユニット40としてジャッキ等でもよい。ジャッキを用いる場合は、支持部材42を直接上下動させればよく、支持部材42はネジの螺合を利用しなくてもよい。
【0046】
なお、本実施形態では、眼科装置の例としてスリットランプを挙げたが、観察ユニットを備えている眼科装置に本件発明を適用できる。例えば、非接触式眼圧計、眼屈折力測手装置等の据え置き型の眼科装置に本件発明を適用できる。
【0047】
また、本実施形態では、回転ノブとしてグリップ22aを用いたが、回転ノブとなる部材は装置の何れに設けられてもよい。
【0048】
以上のように本発明は実施形態に限られず、て種々の変容が可能であり、本発明はこのような変容も技術思想を同一にする範囲において含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態であるスリットランプの概略外観図である。
【図2】スリットランプの光学系の概略構成図である。
【図3】移動ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図4】上下動機構の部材の関係を示すための斜視図である。
【図5】支持部材周辺の拡大斜視図である。
【図6】スリットランプの制御系の概略ブロック図である。
【図7】上下動部の高さを変えた場合の支持部材と付勢部材の状態を示した模式的断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 顔支持ユニット
20 移動ユニット
22 ジョイスティック
22a グリップ
38、48 センサ
41 シャフトユニット
42 支持部材
46 付勢部材
49 モータ
50 上下動部
60 照明ユニット
70 顕微鏡ユニット
80 制御部
100 スリットランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者眼を観察するための観察ユニットが搭載された上下動部と、基台部に対して前記上下動部を検者が操作部材の手動操作によって上下移動させるための上下移動機構と、検者の操作負荷を軽減するために前記上下動部を上方へ付勢する付勢部材と、を備える眼科装置において、
前記基台部に対する前記上下動部の上下位置を検知する上下検知手段と、
前記付勢部材の一端を支持し、前記付勢部材を上下方向に移動可能に前記基台部又は上下動部に配置された支持部材と、
前記支持部材を付勢方向に沿って移動する駆動源を持つ駆動手段と、
前記上下検知手段によって検知された上下位置に基づいて前記駆動源の駆動を制御し、前記付勢部材の付勢力を所定の許容値内で維持するように前記支持部材を移動させる制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、前記付勢部材は前記基台部と上下動部との間に配置され、前記上下動部を上方向に付勢する弾性体であり、
前記制御手段は前記弾性体を所定の許容長さに維持するように前記支持部材を移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項2の眼科装置において、前記支持部材は前記弾性体の下側を支持し、前記制御手段は、前記上下動部の上昇が検知されたときに前記弾性体を所定の許容長さに維持するように前記支持部材を上方へ移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項2の眼科装置において、前記支持部材は前記弾性体の下側を支持し、前記制御手段は、前記上下動部の上昇が検知されたときに前記弾性体を所定の許容長さに維持するように前記支持部材を下方へ移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項2の眼科装置において、前記制御手段は、前記上下動部の高さ位置の変化量と同じ変化量で前記支持部材を移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの眼科装置は、眼科装置への駆動電流をオフにするスイッチを有し、
前記制御手段は、前記オフスイッチのオフ信号が入力されたときには前記操作部材が操作されることによって前記上下動部が所定の下方位置に移動可能となるまで前記支持部材を移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの眼科装置は、前記付勢部材の付勢力を変更するための変更信号を入力する信号入力手段を備え、
前記制御手段は、前記支持部材を移動させるときに、前記変更信号に基づいて前記付勢部材の付勢力の許容値を変更することを特徴とする眼科装置。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかの眼科装置は、前記付勢部材の付勢力を変更するための選択信号を入力するセレクタを有し、
前記制御手段は、前記セレクタの選択信号に基づき、前記支持部材を移動させるときの前記付勢にオフセット量を付与するために前記付勢部材の長さを変更することを特徴とする眼科装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−231935(P2012−231935A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102241(P2011−102241)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)