説明

眼科装置

【課題】モニターの輝度により接眼レンズを介した被検眼の観察を妨げることなく、かつモニターの表示機能を損なうことがない眼科装置を提供する。
【解決手段】被検眼Eを検者が接眼レンズ32を介して観察する第1の観察手段と、被検眼を電子撮影装置51で動画撮影し、その撮影された動画をモニター40に表示して観察する第2の観察手段が設けられる。観察手段として第1の観察手段が選択された時には、第2の観察手段が選択された時に比べて、モニター40の輝度が減少される。検者はモニターの輝きにより被検眼の観察が妨げられることが防止され、被検眼の観察に集中することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼を検者が接眼レンズを介して観察する第1の観察手段と、被検眼を電子撮影装置で動画撮影し、その撮影された動画を画像表示手段に表示して観察する第2の観察手段と、を備えた眼科装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼底カメラなどの眼科撮影装置を用いて種々の撮影モードで眼底の撮影が行われている。通常の眼底のカラー撮影を行う場合、被検眼に散瞳剤を点眼して眼底を撮影する散瞳撮影モード、あるいは散瞳剤が被検者に負担を強いるので、散瞳剤なしで赤外光で眼底を照射し、眼底観察を行って撮影を行う無散瞳撮影モードがあり、また、蛍光撮影を行う場合には、可視蛍光像を撮影する可視蛍光撮影モード、赤外蛍光像を撮影する赤外蛍光撮影モードがある。
【0003】
無散瞳、散瞳の眼底撮影が可能な眼底カメラにおいて、撮影モードが無散瞳撮影モードに切り替えられたときは、観察用光源の光量を散瞳撮影モードのときよりも減少させ、無散瞳で観察像を撮像する白黒CCDに入射する光量を減少させている(特許文献1)。
【0004】
また、種々の撮影モードで撮影可能な眼底カメラでは、光学ファインダー(接眼レンズ)を用いて、あるいは白黒CCDなどで撮影された眼底画像をモニターに動画表示させて眼底観察を行い、アライメントや合焦が完了後、眼底がカラーCCDなどにより電子画像として静止画撮影される。このとき、静止画として撮影された眼底画像を、撮影直後に動画表示に使用されるモニターに静止画として表示させ、所定時間経過後は自動的にあるいは手動でモニターに再び動画像を表示させることが行われている(特許文献2)。
【0005】
カメラで撮影される対象物を予め視認するための電子式ファインダーを備えた映像機器では、その映像機器の周辺の照度とその変化に応じて、ファインダー内の明度を自動的に調整し、ファインダーでとらえた画像を見やすくする工夫がなされている(特許文献3)。
【0006】
また、ファインダーを用いて対象物を観察し、液晶などの表示部に撮影データを表示させるカメラなどにおいて、ファインダー近辺に接眼検知センサーを設け、撮影者がファインダーを覗いて接眼が検知された場合、表示部を照明するライトを消灯して、消費電力を低減させることが行われている(特許文献4)。
【0007】
また、液晶ファインダーを備えたカメラにおいて、使用される記録媒体(フィルム)の種類に応じて液晶の画面表示を変化させることが行われている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3930957号公報
【特許文献2】特許3987760号公報
【特許文献3】特開平8−18834号公報
【特許文献4】特開2010−19977号公報
【特許文献5】特開平11−38493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光学ファインダーを用いて、あるいはモニターを用いて眼底を観察撮影し、撮影された眼底をモニターに動画あるいは静止画表示できる眼科装置では、モニターが所定の輝度で輝いているので、光学ファインダーを用いて眼底を観察撮影する場合に、モニターの輝度により光学ファインダーを介した眼底の観察が妨げられる、という問題がある。
【0010】
特に、モニターを有する眼科システムを暗室で使用する場合、モニターの輝度が大きいと、光学ファインダーでの観察に集中したい場合、操作者の近傍でモニターが明るく輝いているため、光学ファインダーを介した観察の妨げになる。
【0011】
特許文献3に記載されたように、機器が使用される外部環境に合わせてファインダー内の明るさを自動的に調整する機構では、ファインダー内の明るさを調整するだけで、モニターの輝度を調節するものではないので、上記問題は解決されない。
【0012】
また、外部の明るさを検知してモニターの輝度を調節する場合、眼科装置は暗室で使用することが前提となるため、モニターの輝度を暗室の環境に合わせて適度な輝度に調整するだけである。従って、光学ファインダーでの観察を妨げないほど輝度を低下させることはできない。また、光学ファインダーで観察するとき、モニターの輝きが妨げになる場合は、手動でモニターの輝度を調整する、手動でモニターの電源を切る、モニターを横に向ける、モニターを暗幕などで隠すなどの作業が行われている。手動でモニターの輝度を調節する場合、検者は手動操作を要求されるので、検査に集中できない、検査中に手間が増えるなどの問題がある。また、モニター電源を落とす、モニターを横に向ける、モニターを暗幕で隠すなどの作業を行うと、光学ファインダーでの観察はモニターの輝度により妨げられることはないが、モニターに表示されている必要な情報を見ることができなくなる、という問題がある。また、光学ファインダーとモニターを使い分けるたびにモニターの輝度を操作するのは煩わしく、眼科装置の使用性を悪くしてしまう。
【0013】
特許文献4に記載されたように接眼検知センサーを用いて接眼が検知されたとき、撮影データなどを表示する表示部を照明するライトを自動的に消灯する場合には、撮影者がファインダーを覗いた場合、表示部は暗くなるので、ファインダーでの観察は表示部の輝度により妨げられることはないが、表示部に表示されている必要な情報を見ることができなくなる、という上記と同様な問題がある。
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、接眼レンズ並びにモニターを用いて眼底を観察することができる眼科装置で、モニターの輝度により接眼レンズを介した被検眼の観察を妨げることなく、かつモニターの表示機能を損なうことがない眼科装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
被検眼を検者が接眼レンズを介して観察する第1の観察手段と、被検眼を電子撮影装置で動画撮影し、その撮影された動画を画像表示手段に表示して観察する第2の観察手段と、を備えた眼科装置であって、
前記画像表示手段は、眼科装置の設定条件情報を表示する機能、または眼科装置の操作を行なえるタッチパネル機能の、少なくともどちらか一方の機能を有しており、
観察手段として第1の観察手段が選択された時には、第2の観察手段が選択された時に比べて、前記画像表示手段の輝度が減少されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、被検眼の観察手段として、接眼レンズを介した観察手段が選択されたときは、画像表示手段の輝度が減少されるので、検者は画像表示手段の輝きにより被検眼の観察が妨げられることが防止され、被検眼の観察に集中することができる。また、画像表示手段はその輝度が減少されるだけなので、画像表示機能は損なわれることがない。従って、検者は撮影された画像を画像表示手段を介して確実に確認することが可能となり、また画像表示手段に表示されている撮影情報などを視認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の眼科装置の全体構成を示した構成図である。
【図2】各種リングスリットの構成を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1には、眼科撮影装置(眼底カメラ)として構成された本発明の眼科装置の実施例が図示されている。同図において、ハロゲンランプなどの観察用光源1からの光束は、凹面鏡2で集光されたあと、撮影用光源であるストロボ3、コンデンサーレンズ4を経てミラー5で反射され、リレーレンズ20、21を通過して穴あき全反射ミラー22で反射される。この全反射ミラー22で反射された光束は対物レンズ23により被検眼Eの瞳Epで結像された後、眼底Erに入射する。
【0020】
眼底照明光学系の光路には、無散瞳時に、赤外透過フィルタ6が観察用光源1の後に挿入され、また、標準リングスリット61、小瞳孔用リングスリット62、蛍光用リングスリット63をターレット円盤に配置してターレット円盤を回転させることにより、あるいは、直線上に配置してスライド機構などを用いてスライドさせることにより、そのいずれか一つが照明光学系の光路に挿入される。
【0021】
図2に詳細に示したように、標準リングスリット61は、レンズ61a、角膜共役位置にあるリングスリット61b(例えば外径=16mm、内径=8mm)、瞳共役位置にある円形の開口絞り61c(例えば直径=12mm)、水晶体共役位置にあるリングスリット61d(例えば外径=16mm、内径=8mm)から構成され、これらの各素子61a、61b、61c、61dは一体の構成としてユニット化されている。
【0022】
小瞳孔用リングスリット62は、レンズ62a、角膜共役位置にあるリングスリット62b(例えば外径=13mm、内径=7mm)、瞳共役位置にある円形の開口絞り62c(例えば直径=10mm)、それに水晶体共役位置にあるリングスリット62d(例えば外径=13mm、内径=7mm)から構成され、これらの各素子62a、62b、62c、62dも一体構成で、ユニット化されている。
【0023】
蛍光用リングスリット63は、レンズ63a(例えば直径=18mm)と、瞳共役位置にあるリングスリット63c(例えば外径=16mm、内径=2mm)から構成され、それに700nmから800nmの赤外光を通過させる赤外蛍光エキサイタフィルタ46(図1)が設けられ、同様に、各素子63a、63c、並びに46は、一体の構成となっていて、ユニット化されている。
【0024】
標準のリングスリット61は、通常使用されるリングスリットで、小瞳孔用のリングスリット62は、被検者の散瞳状態が十分ではないとき、あるいは被検者が子供のような、いわゆる小瞳孔に対して使用される。蛍光用リングスリット63は、主に赤外蛍光撮影のときに用いられるもので、照明光を多く入射させることができる。可視蛍光撮影の時は、通常標準リングスリット61が用いられるが、光量が要求される場合には、蛍光用リングスリット63を用いることができる。
【0025】
可視蛍光撮影時には、レンズ4とミラー5間の光路に450nmから520nmの青色光束を通過させる可視蛍光エキサイタフィルタ45が挿入され、赤外蛍光撮影時には、蛍光用リングスリット63が照明光学系光路に挿入されるので、それと一体に構成された赤外蛍光エキサイタフィルタ46が照明光学系光路に挿入される。
【0026】
被検眼Eの眼底Erからの反射光は、再び瞳Epの中心部を通過して対物レンズ23を介して受光され、穴あき全反射ミラー22の穴を通過し、観察撮影光学系の光路に配置された撮影絞り24、フォーカスレンズ25、26、結像レンズ27を通過してリターンミラー30に入射する。結像レンズ27は、倍率の異なる結像レンズ28と交換できこれにより変倍機構を構成している。また、この観察撮影光路で撮影絞り24とフォーカスレンズ25の間に、可視蛍光撮影時、眼底からの可視蛍光を透過させるために可視蛍光バリアフィルタ42が挿入される。
【0027】
リターンミラー30で反射された眼底からの光束は、リターンミラー31で反射され肉眼観察光学系を構成する接眼レンズ(光学ファインダー)32に入射するので、検者は接眼レンズ32を介して眼底像を観察することができる。また、赤外透過フィルタ6を挿入し、リターンミラー31が跳ね上がって光路より離脱すると、眼底からの光束はリターンミラー33により反射されて赤外光用観察光学系に入射する。この赤外光用観察光学系は、赤外光に感度を有する赤外CCD(赤外光用電子撮影装置)51を有し、これにより撮像された赤外眼底像は、切替回路39を介してLCDなどでタッチパネルとして構成された画像表示手段としてのモニター40に表示される。この赤外CCD51は、眼底観察中の画像を動画撮影するので、モニター40には、眼底観察中に撮像される眼底の赤外動画像が表示され、検者はこの眼底像をモニター40で観察しながら、アライメントや焦点合わせを行うことができる。このように、図1に示した眼科装置では、被検眼の眼底を検者が接眼レンズ32を介して観察する第1の観察手段(対物レンズ23から接眼レンズ32までの光学系を含む)と、被検眼眼底を電子撮影装置で動画撮影し、その撮影された動画を画像表示手段としてのモニター40に表示して観察する第2の観察手段(対物レンズ23からリターンミラー33までの光学系、赤外CCD51、モニター40などを含む)を有している。
【0028】
赤外CCD51は、後述するように、赤外蛍光撮影をするときに、ストロボ3の発光により得られる眼底像を静止画像としても撮像する。赤外CCD51の感度は、ゲイン切換回路52により撮影時には低いゲイン値に、観察時には、高いゲイン値に設定される。
【0029】
リターンミラー31とリターンミラー33間の光路には、赤外蛍光撮影時、820nmから900nmの赤外光を透過させる赤外蛍光バリアフィルタ43が挿入される。
【0030】
リターンミラー33が跳ね上がって光路から離脱すると、眼底からの光束は、ミラー50で反射され、可視光に感度を有するカラーCCD(可視光用電子撮影装置)36に入射し、眼底が静止画撮影され、その画像が切替回路39を介してモニター40に静止画像として表示される。
【0031】
なお、電子撮影装置36、51で撮像された眼底画像は記録部53に記録でき、記録部53には、蛍光撮影時に用いられるタイマー54が接続される。これにより、撮影された時刻をタイマー54で計測し、眼底画像を、その撮影時刻とともに、記録部53に記録することができる。
【0032】
また、リターンミラー30が跳ね上がって光路から離脱する時には、眼底画像が35mmフィルムのような写真フィルム44に撮影できるようになっている。この写真フィルムの代わりにカラーCCD36と同等な電子撮影装置を用いて眼底像を撮影することもできる。
【0033】
このように構成された眼科装置では、散瞳撮影、無散瞳撮影、可視蛍光撮影、赤外蛍光撮影の各撮影モードで撮影が可能であり、通常のカラー撮影は散瞳撮影あるいは無散瞳撮影で行われる。
【0034】
撮影モードの選択は、操作部11に設けられた散瞳撮影スイッチ11a、無散瞳撮影スイッチ11b、可視蛍光撮影スイッチ11c、赤外蛍光撮影スイッチ11dを操作することにより行われ、その選択信号が制御部10に送信される。制御部10は、信号線Aで示したように、撮影モードの選択に応じてリングスリット61、62、63の切り替え、赤外透過フィルタ6、可視蛍光エキサイタフィルタ45の光路への挿脱、リターンミラー31の光路への挿脱を制御する。図1では、図が煩雑になるために信号線では図示されていないが、制御部10はその他撮影モードに応じてバリアフィルタ42、43の光路への挿脱なども制御する。
【0035】
制御部10には、シャッタースイッチ13からのシャッター操作信号が入力され、制御部10はシャッタースイッチ13が操作されると、信号線Bで示したように、撮影モードに応じてリターンミラー30、31、33を光路に挿入するか、あるいは光路から離脱させるとともに、ストロボ3を発光させる。
【0036】
モニター40の輝度を調整するために、輝度調整回路12が設けられており、観察手段として接眼レンズ32が選択された時には、観察手段としてモニター40が選択された時に比べて、モニター40の輝度が減少される。
【0037】
操作部11には、TVスイッチ11eが設けられ、このスイッチ11eを操作することによっても、輝度調整回路12を介してモニター40の輝度が調整される。
【0038】
画像表示手段としてのモニター40は、撮影された眼底画像を表示するほかに、撮影モード、撮影日時、被検眼ID、撮影光量などの撮影に関した設定条件情報を表示する機能、あるいはスイッチ11a〜11eと同等な操作を行えるタッチスイッチ、その他タッチ操作を備えたタッチパネル機能の、少なくともどちらか一方の機能を有している。
【0039】
また、眼科装置には、図1で一点鎖線の区画で示したように、外部モニター70、パーソナルコンピューター(PC)で実現される外部記憶装置71がLANなどの通信装置を介して切替回路39を通して接続されている。外部記憶装置71、外部モニター70は、それぞれ眼科装置の記録部53、モニター40と同じ機能を有し、外部モニター70の輝度は、制御部10からの信号により輝度調整回路72を介して調整できるようになっている。
【0040】
以下に、このように構成された眼科装置の機能について説明する。
【0041】
上述した眼科装置では、散瞳撮影、無散瞳撮影、可視蛍光撮影、赤外蛍光撮影の各撮影モードを選択でき、散瞳撮影スイッチ11aを操作して散瞳撮影モードが選択された場合には、被検者に散瞳剤が点眼される。このとき赤外透過フィルタ6は光路から離脱され、またリングスリットとしては、通常の場合は標準リングスリット61が、また小瞳孔の場合は、小瞳孔用リングスリット62が選択されて光路に挿入される。
【0042】
バリアフィルタ42、43は蛍光撮影のためのものであるので、光路から離脱されており、リターンミラー30、31、33は図示の位置を占めている。観察用光源1からの光束は、ミラー5で反射された後、標準リングスリット61(あるいは小瞳孔用リングスリット62)、リレーレンズ20、21を通過して穴あき全反射ミラー22で反射されて対物レンズ23に入り、眼底Erを可視光で照明する。
【0043】
被検眼Eの眼底Erからの反射光は、対物レンズ23、穴あき全反射ミラー22、撮影絞り24、フォーカスレンズ25、26、結像レンズ27を通過してリターンミラー30、31を介して接眼レンズ32に入射する。それにより検者は接眼レンズ32を介して眼底を観察できるので、アライメント、焦点合わせなどの位置合わせを行うことができる。
【0044】
散瞳撮影時には、接眼レンズ32を介して観察を行う観察手段が選択されるので、輝度調整回路12によりモニター40は、眼底画像をモニター40に表示して観察するときに比較してその輝度が、たとえば1/2程度に自動的に減少される。モニター40の輝度が減少されることにより、検者はモニター40の輝きに惑わされないので、接眼レンズ32を介した眼底観察が妨げられることが防止される。モニター40には、選択された撮影モードなどの撮影に関連した設定条件情報が表示され、また種々のタッチスイッチなどが配列されているが、モニター40は消灯されるのではなく、その輝度が減少されるだけなので、検者は設定条件情報を視認することができ、また検者はタッチスイッチを操作することができる。従って、モニター40はその機能は損なわれることがなく、通常の機能を果たすことができる。
【0045】
眼底観察により、アライメント、焦点合わせが完了すると、シャッタースイッチ13が操作される。この操作に連動して、制御部10はリターンミラー31、33(あるいはリターンミラー30)を光路から離脱させるとともに、ストロボ3を発光させるので、眼底がカラーCCD36(あるいはフィルム44)にカラーで静止画撮影される。撮影された眼底は切替回路39を介してモニター40に所定時間表示され、記録部53にも記録される。そのとき、タイマー54で撮影時刻が計測されるので、その撮影時刻とともに眼底画像を記録部53に記録することができる。
【0046】
一方、無散瞳撮影スイッチ11bが操作されて、無散瞳撮影モードが選択されると、赤外透過フィルタ6が挿入され、リングスリットとして小瞳孔用リングスリット62が選択され、リターンミラー31が跳ね上がって光路から離脱される。赤外透過フィルタ6が光路に挿入されることにより、眼底は赤外光で照明される。赤外光で照明された眼底は、撮影光学系を介して赤外CCD51により動画像として撮像され、この画像が切替回路39を介してモニター40に動画像として表示される。検者はモニター40に表示される眼底を観察することにより、アライメント、焦点合わせなどの位置合わせを行うことができる。当然のことながら、接眼レンズ32を介した観察は行われないので、モニター40の輝度は輝度調整回路12により減少されることはない。
【0047】
アライメント、焦点合わせが完了した後の撮影は、散瞳撮影のときと同様であり、シャッタースイッチ13の操作に応じてリターンミラー33(あるいはリターンミラー30)が光路から離脱され、ストロボ3が発光されるので、眼底がカラーCCD36(あるいはフィルム44)に静止画として撮影され、モニター40に所定時間表示され、またその静止画が記録部53に撮影時刻とともに記録される。
【0048】
可視蛍光撮影スイッチ11cが操作され、可視蛍光撮影モードが選択されたときは、リングスリットは、通常の瞳孔か小瞳孔かに応じて標準あるいは小瞳孔用リングスリット61、62が選択され、また、可視蛍光エキサイタフィルタ45が光路に挿入される。観察は接眼レンズ32を介して行われるので、リターンミラー31が光路に挿入される。散瞳撮影のときと同様に、輝度調整回路12により、モニター40の輝度が、たとえば1/2程度に自動的に減少される。従って、接眼レンズ32を用いた眼底観察がモニター40の輝きにより妨げられることが防止される。またモニター40はその輝度が減少されるだけなので、検者は設定条件情報を視認することができ、また検者はタッチスイッチを操作することができ、モニター40は通常の機能を果たすことができる。
【0049】
アライメント、焦点合わせが完了すると、蛍光剤が静注され、可視蛍光バリアフィルタ42が光路に挿入され、タイマー54が計時を開始する。所定時間T1が経過すると、可視蛍光エキサイタフィルタ45を通過した励起光により眼底に可視蛍光像が発生するので、シャッタースイッチ13が操作される。このとき、リターンミラー31、33が跳ね上がり光路から離脱するとともに、ストロボ3が発光するので、可視蛍光像がカラーCCD36により静止画撮影される。撮影された可視蛍光像は、切替回路39を介してモニター40に静止画として所定時間表示されるとともに、記録部53に撮影時刻とともに記録される。シャッタースイッチ13が操作されるごとに同様な動作となり、可視蛍光像の撮影が行われる。
【0050】
赤外蛍光撮影スイッチ11dが操作され、赤外蛍光撮影モードが選択されると、リングスリットとしては、眼底への照明光量が最大となる蛍光用リングスリット63が光路に挿入され、これと一体となった赤外蛍光エキサイタフィルタ46も光路に挿入される。また、無散瞳撮影のときと同様に、リターンミラー31が跳ね上がって光路から離脱される。赤外蛍光エキサイタフィルタ46が光路に挿入されることにより、眼底は赤外光で照明される。赤外光で照明された眼底は、撮影光学系を介して赤外CCD51により動画像として撮像され、この画像が切替回路39を介してモニター40に動画像として表示される。検者はモニター40に表示される眼底を観察することにより、アライメント、焦点合わせなどの位置合わせを行うことができる。無散瞳撮影のときと同様に、接眼レンズ32を介した観察は行われないので、モニター40の輝度は輝度調整回路12により減少されることはない。なお、赤外CCD51の感度は、観察時には、ゲイン切換回路52により撮影時よりも高いゲイン値に設定される。
【0051】
アライメント、焦点合わせが完了すると、蛍光剤が静注され、赤外蛍光バリアフィルタ43が挿入され、タイマー54が計時を開始する。所定時間T2が経過すると、赤外蛍光エキサイタフィルタ46を通過した励起光により眼底に赤外蛍光像が発生するので、シャッタースイッチ13が操作され、ストロボ3が発光する。このとき、リターンミラー30は、図示の位置に固定され、リターンミラー31は跳ね上げられて固定されているので、シャッタースイッチ13が操作されるごとに、蛍光赤外像が赤外CCD51により静止画撮像され、切替回路39を介してモニター40に静止画像として所定時間表示されるとともに、記録部53に撮影時刻とともに記録される。赤外CCD51の感度は、ゲイン切換回路52により観察時よりも低いゲイン値に設定される。
【0052】
以上、説明したように、接眼レンズを介して眼底観察が行われるとき(散瞳撮影ないし可視蛍光撮影が行われるとき)、モニターの輝度が減少されるので、検者はモニターの輝きにより被検眼の観察が妨げられることが防止され、被検眼の観察に集中することができる。また、モニターはその輝度が減少されるだけなので、モニターの表示機能は損なわれることがなく、検者は撮影された画像をモニターを介して確実に確認することが可能となる。
【0053】
上記実施例において、モニター40には、各撮影モードにおいてストロボ3の発光により静止画撮影された眼底画像が撮影直後の所定時間静止画像として表示される。この場合、モニター40に静止画として表示中は、モニター40の輝度は、接眼レンズ32を観察手段にするかあるいはモニター40を観察手段にするかに関わらず所定の輝度、たとえばモニター40を観察手段にしたときの輝度あるいはそれ以上の高い輝度となるようにしておく。これにより、検者は静止画として撮影された被検眼眼底を明るい輝度でモニター40で確認することが可能となる。
【0054】
また、上記実施例では、散瞳撮影、あるいは可視蛍光撮影時、接眼レンズ32を用いて眼底を観察する場合、モニター40の輝度を自動的に暗くなるように調整したが、モニター40のタッチパネルを操作した場合(たとえば、タッチパネルの一か所を手で触るなど)、モニター40に表示されている情報を確認する必要があると判断して、予め決められた時間だけ、減少したモニター40の輝度を上げるように、たとえば減少する前の輝度に戻すようにしてもよい。これにより、簡単な操作でモニター40の輝度を戻すことができ、モニター40に表示されている画像あるいは情報を確認することが可能となる。
【0055】
また、シャッタースイッチ13を操作するときには、眼底観察は終了しており、モニター40が輝いていても障害はないので、シャッタースイッチ13を操作したとき、その操作信号を図1で一点鎖線で示したように操作部11に送り、輝度調整回路12を介して、観察時に減少したモニター40の輝度を元の輝度に戻すようにしてもよい。
【0056】
また、眼科装置に直接接続されているモニター40だけではなく、眼科装置と通信機能を介して接続されている外部モニター70に対しても、同様なモニターの輝度調整を行うようにしてもよい。これは、モニター40の輝度調整に連動して制御部10より制御信号を輝度調整回路72に送り、外部モニター70の輝度をモニター40の輝度と同様に調整することにより行うようにする。例えば、モニター40の輝度を50%減少させる場合には、外部モニター70の輝度も50%減少させる、などである。しかしながら、外部モニター70は眼科装置から離れて設置される場合もあり、その場合にはこういう輝度調整を行なわないほうが好まれることもある。従って、設定に応じてモニター40と外部モニター70は別々の輝度調整が可能なようにしておくのがよい。例えば、眼科装置のモニター40の輝度のみ自動減光を行うか、モニター40と外部モニター70の両方を連動して同じ比率であるいは異なる比率で自動減光を行うかを、操作部11に設けたスイッチ(不図示)で使用者が選択できるようにするのが好ましい。
【0057】
また、上述した実施例では、操作部11における撮影スイッチ11a〜11dのスイッチ操作により接眼レンズ32を用いた眼底観察が選択されたことを判断しているが、赤外光を発光する発光素子と、当該赤外光の検者の顔からの反射を受光する受光素子からなる接眼検知センサーを設け、この接眼検知センサーにより接眼レンズを介した検者の眼底観察が行われていることを検知して、モニター40の輝度を自動的に低く調節するようにしてもよい。
【0058】
また、眼科装置が暗い部屋に設置される場合には、モニター40の輝度をそれに応じて暗くするなど、眼科装置が設置される部屋の明るさを検知し、部屋の明るさに応じてモニターの輝度を補正するようにしてもよい。
【0059】
また、操作部11に設けたTVスイッチ11eを操作することにより、輝度調整回路12を介してモニター40の輝度を調整する(明るくあるいは暗くする)ようにしてもよく、通常の輝度(基準輝度)と減光したときの輝度、をそれぞれ使用者の好みに合わせて設定できるようにしておくのもよい。
【符号の説明】
【0060】
6 赤外透過フィルタ
10 制御部
11 操作部
11a 散瞳撮影スイッチ
11b 無散瞳撮影スイッチ
11c 可視蛍光撮影スイッチ
11d 赤外蛍光撮影スイッチ
12 輝度調整回路
13 シャッタースイッチ
32 接眼レンズ
36 カラーCCD
40 モニター
42 可視蛍光バリアフィルタ
43 赤外蛍光バリアフィルタ
45 可視蛍光エキサイタフィルタ
46 赤外蛍光エキサイタフィルタ
51 赤外CCD
53 記録部
61 標準リングスリット
62 小瞳孔用リングスリット
63 蛍光用リングスリット
70 外部モニター
71 外部記憶装置
72 輝度調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検者が接眼レンズを介して観察する第1の観察手段と、被検眼を電子撮影装置で動画撮影し、その撮影された動画を画像表示手段に表示して観察する第2の観察手段と、を備えた眼科装置であって、
前記画像表示手段は、眼科装置の設定条件情報を表示する機能、または眼科装置の操作を行なえるタッチパネル機能の、少なくともどちらか一方の機能を有しており、
観察手段として第1の観察手段が選択された時には、第2の観察手段が選択された時に比べて、前記画像表示手段の輝度が減少されることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記画像表示手段は少なくともタッチパネル機能を備えており、タッチパネルを操作したとき、又はシャッタースイッチが操作されたときには、減少した画像表示手段の輝度が増大されることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記眼科装置は、被検眼を複数の撮影モードで撮影可能な眼科撮影装置であり、撮影前に第1の観察手段を使用して被検眼を観察する撮影モードが選択されたときに、画像表示手段の輝度が減少されることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
接眼検知センサーが設けられ、該接眼検知センサーが接眼レンズを介した被検眼の観察を検出したときに、画像表示手段の輝度が減少されることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記眼科装置は眼科撮影装置であり、静止画撮影した画像を、撮影直後の所定時間、画像表示手段に静止画画像として表示する機能を備え、静止画画像表示中は、画像表示手段の輝度は、観察手段の選択に関わらず所定の輝度となることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記眼科装置は散瞳、無散瞳兼用型眼底撮影装置であり、撮影前の観察のための観察手段として第1の観察手段が選択された時は可視光にて被検眼眼底を照明し、観察手段として第2の観察手段が選択された時は赤外光にて被検眼眼底を照明することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項7】
眼科装置が設置された部屋の明るさを検知するセンサーが設けられ、該センサーが検知した明るさに応じて、画像表示手段の輝度が補正されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記眼科装置と通信装置を介して接続されている外部モニターを備え、外部モニターの輝度を前記眼科装置に備えられたモニターの輝度に連動して減少させる機能を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記眼科装置と通信装置を介して接続されている外部モニターと、前記眼科装置に備えられたモニターの輝度を連動させるかどうかを設定に応じて変えることができることを特徴とする請求項8に記載の眼科装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−50469(P2012−50469A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193038(P2010−193038)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)