説明

眼科装置

【課題】 シンプルな構成の電動式ジョイスティック機構を持つ眼科装置を提供する。
【解決手段】 被検眼を検査するための検眼ユニットと、被検眼に対して検眼ユニットを移動させるための駆動手段と、任意の方向に傾倒可能に支持される操作桿と、前記操作桿に対する傾倒操作を電気的に検出する操作検出手段と、を含むジョイスティック機構と、前記操作検出手段から出力される操作信号に基づいて前記駆動手段の駆動を制御し、前記検眼ユニットを前後左右方向に移動させる制御手段と、を備え、前記ジョイスティック機構は、前記操作桿を任意の方向に傾倒可能に支持する支持機構と、前記操作桿の下部に設けられ,前記ジョイスティックの傾倒動作に連動して水平方向に移動する移動部材と、該移動部材の水平方向における移動を検出して前記操作信号を出力する移動検出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼を検査する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼に対する位置合わせが必要な眼科装置(例えば、オートレフや眼底カメラ)において、近年、ジョイスティックやトラックボール等に対する検者からの操作を電気的に検出し、検出結果に基づいて測定光学系等を持つ検眼ユニットを電動駆動させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、特許文献1の装置では、ジョイスティックの傾倒角度に応じて検眼ユニットの駆動制御を位置制御と速度制御とに分けている。さらに、ジョイスティックの傾倒角度が所定角度を超えた範囲(例えば、20°〜35°)において、傾倒角度の増分に対して移動速度が増加するように制御する手法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1のジョイスティック機構には、ジョイスティックの前後方向への傾倒動作に伴って回転する第1の回転軸と、第1の回転軸の回転角度を検出する第1ポテンショメータと、ジョイスティックの左右方向への傾倒動作に伴って回転する第2の回転軸と、第2の回転軸の回転角度を検出する第2ポテンショメータと、が設けられ、ジョイスティックの傾動動作を前後及び左右への回転軸の回転運動に変換することにより、検者からのジョイスティック操作を電気的に検出するような構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−369799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような電動式のジョイスティック機構において、検者の意図が反映され、かつ、操作性の高いものであることが望ましい。しかしながら、特許文献1の装置の場合、ジョイスティックの傾倒角度が所定角度を超えた範囲での速度制御において、ジョイスティックの微妙な角度調整が難しく、検者の意志に反する速度で検眼ユニットが動いてしまう場合が考えられる。また、検眼ユニットを早く移動させる場合、ジョイスティックを大きく傾ける(例えば、35°)必要があり、検者にとって手間である。
【0007】
また、特許文献1のジョイスティック機構の場合、ジョイスティックの傾動動作を前後及び左右への回転軸の回転運動に変換するために形状が異なる(ジョイスティックとの連結部付近)回転軸を用意する必要があるなど、全体的に複雑な構成となる。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み簡単な構成の電動式のジョイスティック機構を持つ眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0010】
(1)
被検眼を検査するための検眼ユニットと、
被検眼に対して検眼ユニットを移動させるための駆動手段と、
任意の方向に傾倒可能に支持される操作桿と、前記操作桿に対する傾倒操作を電気的に検出する操作検出手段と、を含むジョイスティック機構と、
前記操作検出手段から出力される操作信号に基づいて前記駆動手段の駆動を制御し、前記検眼ユニットを前後左右方向に移動させる制御手段と、を備え、
前記ジョイスティック機構は、
前記操作桿を任意の方向に傾倒可能に支持する支持機構と、
前記操作桿の下部に設けられ,前記ジョイスティックの傾倒動作に連動して水平方向に移動する移動部材と、該移動部材の水平方向における移動を検出して前記操作信号を出力する移動検出手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科装置において、
前記移動検出手段は、前記移動部材の移動方向、移動速度を検出することを特徴とする。
(3) (1)の眼科装置において、
前記操作桿が所定の限界位置まで傾倒されたことを検知する検知手段を有し、
前記制御手段は、前記検知手段からの検知信号に基づいて前記駆動手段の駆動を制御し、前記検眼ユニットの移動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば簡単な構成の電動式のジョイスティック機構を持つ眼科装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態に係る眼科装置の外観構成図である。眼科装置は、いわゆる据え置き型の眼科装置であって、基台1と、基台1に取り付けられた顔支持ユニット2と、基台1上に取り付けられた本体部3と、本体部3に移動可能に設けられ、被検眼を検査するための構成を持つ測定光学系(例えば、眼屈折力測定光学系)を収納する測定部(検眼ユニット)4と、測定部4を移動させるために操作されるジョイスティック機構5と、を備える。
【0013】
測定部4は、本体部3に設けられたY駆動部6により、被検眼に対して上下方向(図1に示すY方向)に移動される。また、測定部4は、Y駆動部6の上に設けられたXZ駆動部7により、被検眼Eに対して左右方向(X方向)、前後(作動距離)方向(Z方向)に移動される。この場合、XZ駆動部7においては、被検者の左右眼に対して測定部4をアライメントできるよう、その駆動範囲が大きく確保されている。
【0014】
また、ジョイスティック機構5は、図2に示すように、測定部4を移動させるために操作される操作桿50と、操作桿50を任意の方向に傾倒可能に支持する支持部59と、操作桿50の下部に設けられ,操作桿50の傾倒動作に連動して水平方向に移動される移動部材57と、移動部材57の水平方向における移動を検出して検出信号を出力する移動検出部71を含む。すなわち、検者による操作桿50に対する傾倒操作は電気的に検出され、ジョイスティック機構5からの検出信号に基づいてXZ駆動部7が駆動される。これにより、操作桿50を検者が操作すると、XZ駆動部7の駆動により測定部4が水平方向(X方向及びZ方向)に移動される。また、検者が回転ノブ5aを回転操作すると、Y駆動部6の駆動により測定部4がY方向に移動される。また、操作桿50の頂部には、測定開始スイッチ5bが設けられている。なお、本体部3には、表示モニタ40が設けられている。
【0015】
図2は本実施形態に係るジョイスティック機構について説明する図である。ここで、図2(a)は側方断面図であり、図2(b)は図2(a)で示すジョイスティック機構の要部を下方から示した概略図である。
【0016】
図2(a)に示すように、操作桿50には軸52が挿通しており、軸52の下方には、支持部59が有する球軸受58に支持される球面部53と、移動部材57の円筒器部(凹部)57aに係合される略球状の球面部54が形成されている。操作桿50の上部には、軸52に対して回転する回転ノブ5aが設けられている。なお、支持部59は、本体部3の筐体内で固定されている。
【0017】
また、移動部材57は、支持部59に固定されドーナツ状の形状を持つ第1滑り部材61と、本体部3の底面側に設けられドーナツ状の形状を持つ第2滑り部材62との間にあって、水平方向に摺動可能に配置されている。また、第2滑り部材62はその内部に図示無きバネ等の弾性部材を備え、その弾性力によって移動部材57を上方へ押圧している。このような構成により、操作桿50を操作した際の傾倒状態を安定して保持することができるようになっている。一方、検者から操作桿50に対して適当な力が加えられると、第2滑り部材62の押圧力に抗して移動部材57が水平方向に移動され、操作桿50が傾倒される。このため、本実施形態に係るジョイスティック機構の操作感は、測定部4及び本体部3を基台1に対してメカニカルに摺動させることで測定部4を移動させる機械式(手動式)ジョイスティック機構の操作感に近いものとなる。
【0018】
また、移動検出部71は、ガイド板65a、65bと、センサ70a、70bとを持つ。薄い平板からなるガイド板65a、65bは、移動部材57の上部に形成された鍔部57bの外縁部分に互いに直交するように係合されている。この場合、ガイド板65a、65bには、楕円状の孔66a、66bが互いに直交するように形成されている。そして、ガイド板65a、65bは、ガイド板65a、65bの移動方向と楕円状の孔66a、66bの短径方向が一致するように配置されており、その短径部分と移動部材57の鍔部57bの外縁部が係合されるようになっている。これにより、移動部材57の水平方向の移動によってガイド板65a、65bが各方向に移動される。なお、楕円状の孔66a、66bの短径部分と直交する長径部分は、操作桿50が傾倒された際に、移動部材57の鍔部57bの外縁部分とガイド板65a、65bの他の部分が干渉(係合)しないように、その長さが決定される。すなわち、鍔部57bの外縁部と楕円状の孔66a、66bとの間には、各ガイド板65a、65bの移動方向に直交する左右一対(66a)、前後一対(66b)の中空スペース(略三日月状)が形成され、ガイド板65a、65bが各方向に独立して移動できるような構成となっている。
【0019】
また、ガイド板65aには、前後方向に延びる2つのスリット(ガイド孔)67aが形成されており、本体部3の筐体内に固定されるローラ(ガイド軸)68aによって移動方向が制限されることで、前後方向に摺動可能な構成となっている。また、ガイド板65bには、左右方向に延びる2つのスリット(ガイド孔)67bが形成されており、本体部3の筐体内に固定されるローラ(ガイド軸)68bによって移動方向が制限されることで、左右方向に摺動可能な構成となっている。
【0020】
また、ガイド板65a、65bには、等間隔に微小なスリットが施された検出用スリット69a、69bが形成されており、本体部3の筐体内に固定されたセンサ(例えば、光学式エンコーダや磁気式エンコーダ)70a、70bによって移動部材57の移動方向、移動量及び移動速度等が検出できるような構成となっている。センサ70a(70b)の具体的構成としては、2つのフォトインタラプタがスリットの移動方向に並べて配置された構成が考えられ、これらは、出力される矩形波(パルス信号)の位相が互いに1/4ピッチ異なるように配置される。この場合、2つのフォトインタラプタから出力されるパルス信号の位相関係、パルスの数、各パルス信号間の時間間隔、等を検出することにより、移動部材57の移動方向、移動量、移動速度が検出される。なお、センサ70a、70bから出力される検出信号は、制御部80へと入力される。そして、制御部80は、センサ70a、70bからの検出信号に基づいてXZ駆動部7を駆動制御し、測定部4をXZ方向に移動させる。この場合、センサ70a、70bは、所定の傾倒限界位置まで傾倒されていない範囲で操作される操作桿50の傾倒動作を検出するために用いられる。
【0021】
また、ジョイスティック機構5には、操作桿50が所定の傾倒限界位置まで傾倒されたことを検知するための検知部75が4つ配置されている。検知部75a、75bはガイド板65aを前後方向から挟むように配置されている。検知部75c、75dはガイド板65bを左右方向から挟むように配置されている。検知部75a〜75dは、例えばマイクロスイッチからなり、ガイド板65a、65bの端面が当接することにより、操作桿50が所定の限界位置まで傾倒されたことを検知する。
【0022】
図3は、本実施形態に係る眼科装置の光学系及び制御系の構成について説明するための概略構成図である。被検眼Eの前方のダイクロイックミラー1の透過光路O1上には、測定光学系10が配置されている。ダイクロイックミラー1の反射方向には、眼Eを観察するための対物レンズ11、ダイクロイックミラー12、全反射ミラー13が配置されている。ミラー13の反射方向の光路O2上には、眼Eに固視標を固視させるための図示なき固視標投影光学系が配置されている。ダイクロイックミラー12の反射方向の光路O3上には、結像レンズ20、眼Eの前眼部付近と略共役な位置に配置されたエリアCCD等の二次元撮像素子21を含み眼Eを撮影し被検眼像を得る観察光学系22が配置されている。
【0023】
さらに、眼Eの前眼部の前方には、眼Eの角膜Ecにリング指標を投影するための近赤外光を発するリング指標投影光学系30と、眼Eの角膜Ecに無限遠指標を投影することにより被検眼に対する作動距離方向のアライメント状態を検出するための近赤外光を発する作動距離指標投影光学系31が観察光軸に対して左右対称に配置されている。なお、リング投影光学系30は、眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。
【0024】
ここで、ダイクロイックミラー1は測定光学系10が持つ測定光源から発せられる波長の光を透過し、リング投影光学系30と作動距離投影光学系31から発せられた波長の光及び可視光を反射する特性を有する。また、ダイクロイックミラー12は可視光を透過し、赤外光を反射する特性を有している。
【0025】
制御部80は、測定光学系10からの出力信号に基づいて眼屈折力を求める演算を行っったり、ジョイスティック機構5から出力される出力信号に基づいてXZ駆動部7及びY駆動部6を駆動制御する他、装置全体の制御を行う。また、撮像素子21からの画像信号が制御部80へ入力される。撮像素子21によって得られた前眼部像は、制御部80にて測定結果やアライメント用マーク等の表示情報と合成(重ねあわせる)されたのち、表示モニタ40の画面上に表示される。なお、制御部80には、この他、測定結果等のデータを記憶するメモリ81、ジョイスティック機構5、XZ駆動部7、Y駆動部6、検査に関する各種設定(測定モード切換やアライメントモード切換など)を行うための操作スイッチ部45等が接続されている。
【0026】
以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。検者は、被検者の顔を顔支持ユニット2に固定させ、被検眼に対するアライメントを行う。検者は、表示モニタ40を観察しながら、操作桿50を傾倒させたり、回転ノブ5aを回転させることで、測定部4を三次元的に移動し位置合わせを行い、被検眼の前眼部像がモニタ40の画面に入るように粗くアライメントする。測定部4を被検眼Eに対して前後及び左右方向に移動するには、操作桿50を前後左右方向に傾倒させる。また、測定部4を被検眼に対して上下方向に移動するには、回転ノブ5aを回転させる。
【0027】
ここで、被検眼と測定部4とが大きく離れている場合には、検者は、測定部4を素早く被検眼Eまで移動させるべく、操作桿50を限界位置まで傾倒する。操作桿50が所定方向の限界位置まで傾倒されると、所定方向とは反対方向に配置された検知部75a〜75dがガイド板65a、65bの端面に押圧される。この場合、操作桿50の傾倒方向に応じて検知部75a〜75dにより検知信号が制御部80へ出力される。例えば、操作桿50を左側に倒すと、検知部75cより検知信号が制御部80へ出力される。
【0028】
そして、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号に基づいて操作桿50の傾倒方向を取得し、傾倒方向に対応する方向に測定部4が移動するようにXZ駆動部7を駆動させる(粗動制御)。例えば、操作桿50が左方向に倒されると、制御部80は、測定部4を左方向に移動させる。また、操作桿50が斜め左前方向に倒されると、制御部80は、測定部4を斜め左前方向に移動させる。なお、本実施形態では、検知部75a〜75dからの検知信号に応じて測定部4を移動させる場合、制御部80は、XZ駆動部7を高速で駆動させ、測定部4を素早く移動させる。これにより、測定部4は操作桿50の傾倒方向に高速で移動されるため、迅速な位置合わせが可能となる。
【0029】
このようにして、表示モニタ40上に前眼部像が現れるようになり、被検眼に対する測定部4のアライメントがある程度完了したら、検者は、傾倒限界に達している方向と反対方向に操作桿50を操作することにより、測定部4の高速移動を停止させる。このとき、ガイド板65a、65bと検知部75a〜75dとの押圧状態が解除されるため、検知部75a〜75dから制御部80へ出力される検知信号がなくなる。そして、制御部80は、これに応じてXZ駆動部7の駆動を停止させ、測定部4の移動を停止させる。
【0030】
以上のようにして粗アライメントが行われると、被検眼の前眼部が撮像素子21によって撮影され、表示モニタ40上には、前眼部像、レチクルマークLT、リング投影光学系30によって投影されたリング指標像(マイヤーリング像)R、作動距離投影光学系31によって投影された無限遠指標像Mなどが表示される(図4(a)参照)。
【0031】
検者は、図示なき固視標を固視するよう指示した後、表示モニタ40に表示されるリング像(マイヤーリング像)Rを見ながら操作桿50を操作して、リング像RとレチクルマークLTが同心円になるように測定部4の位置を上下左右方向に調整する。その後、インジゲータを参考にしながら(もしくはリング像Rが最も細くなるように)、測定部4の作動距離方向の位置を調整する(図4(b)参照)。
【0032】
ここで、検者によって操作桿50が旋回(傾倒)されると、球軸受58を介して軸52が球面部53の中心を支点に旋回され、操作桿50の下端に設けられた球面部54が揺動される。そして、球面部54に係合された移動部材57が傾倒方向とは逆の方向に移動し、ガイド板65a及びガイド65bが水平方向に移動する。例えば、操作桿50が前方向に倒されるとガイド板65aが後方向に移動し、操作桿50が左方向に倒されるとガイド板65bが右方向に移動する。
【0033】
ここで、ガイド板65a、65bに形成された検出用スリット69a、69bがセンサ70a、70bに対して移動すると、センサ70a、70bからの検出信号が制御部80にパルス信号として入力される。この場合、制御部80は、入力されたパルス信号に基づいて移動部材57の移動速度、移動方向を検出する。これにより、操作桿50の操作信号(操作速度及び操作方向)が得られる。そして、制御部80は、センサ70aからの検出信号に基づいて取得された操作信号に基づいてXZ駆動部7を駆動し、測定部4を前後方向に移動させる(微動制御)。この場合、例えば、操作桿50が前方向に倒されてガイド板65aが後方向に移動すると、制御部80は、測定部4を前方向に移動させる。また、制御部80は、センサ70bからの検出信号に基づいて取得された操作信号に基づいてXZ駆動部7を駆動し、測定部4を左右方向に移動させる(微動制御)。この場合、例えば、操作桿50が左方向に倒されてガイド板65bが右方向に移動すると、制御部80は、測定部4を左方向に移動させる。
【0034】
なお、本実施形態では、制御部80は、センサ70a、70bから逐次出力される各パルス信号間の時間間隔(あるパルス信号が検出されてから次のパルスが検出されるまでの時間)に基づいて操作桿50の操作速度をリアルタイムで取得する。そして、制御部80は、取得された操作桿50の操作速度に基づいてXZ駆動部7に設けられたモータ(例えば、DCモータ)に印加する電圧を変化させることにより、モータの回転速度をリアルタイムで制御する。この場合、逐次取得される各パルス信号間の時間間隔が短いと、モータに印可する電圧が大きくなってモータの回転速度が速くなり、逐次取得される各パルス信号間の時間間隔が長いと、モータに印可する電圧が少なくなってモータの回転速度が遅くなる。したがって、操作桿50を速く動かすと測定部4が大きく移動し、操作桿50を遅く動かすと測定部4が小さく移動する。したがって、被検眼と測定部4との相対距離が短い場合には、検者は、操作桿50を遅く動かすことにより被検眼に対する測定部4のアライメントの微調整を行う。
【0035】
また、操作桿を傾倒限界まで傾けさせず、途中で止めた状態(検知部75a〜75dからの検知信号が出力されていない状態)で、且つあるパルス信号が検出されてから所定時間以上次のパルス信号が検出されない場合、制御部80は、操作桿50に対する傾倒操作が止められたと判定し、モータに対する電圧印可を止めモータの回転を停止させる。したがって、検者が操作桿50の傾倒動作を停止させると、測定部4の水平方向への移動が停止される。なお、操作桿50の傾倒動作が止まる(検者からの操作桿50を動かす力が解除される)と、操作桿50の傾倒状態は、第2滑り部材62の弾性力によって傾倒動作を終えたときの傾倒角度に保持された状態となる。このようにすれば、操作桿50に対する操作速度によって測定部4の移動速度(移動量)が変化されるため、従来の機械式のジョイスティック機構と同様の操作感覚で測定部4の微動及び粗動を行うことができる。以上のようにして、操作桿50を用いた被検眼に対する測定部4の微動操作が完了して、検者から測定開始スイッチ5bが押されると、測定が行われる。 制御部80は、トリガ信号の入力に基づき測定光学系10の測定光源を点灯させる。測定光源から発せられた測定光束は、図示なき投光光学系を介して眼底Efに投影される。そして、眼底Efにて反射された測定光束は、図示なき受光光学系を介して受光素子に受光される。
【0036】
はじめに眼屈折力の予備測定が行われ、予備測定の結果に基づいて図示なき固視標投影光学系の光源及び固視標板が光路O2方向に移動されることで、被検眼Eに対して雲霧がかけられる。その後、雲霧がかけられた被検眼に対して眼屈折力の測定が行われる。そして、所定エラーを除いた測定値(例えば3個)が得られると、制御部80は、測定結果が所定の測定終了条件を満たしたと判断し、測定を終了する。そして、制御部80は、表示モニタ40上に測定結果を表示する。
【0037】
以上のように、操作桿50の傾倒動作を操作桿50の下端に設けられた移動部材57の水平運動に変換し、移動部材57の水平方向への移動を検出することにより、ジョイスティック機構の構成を簡素化させることができる。なお、以上の説明においては、センサ70a、70bにより移動部材57の移動速度を検出して操作桿50の操作速度を取得するような構成としたが、これに限るものではなく、例えば、移動部材57の移動量を検出して操作桿50の操作量を取得するようにしてもよいし、ポテンショメータ等を用いて移動部材57の移動位置を検出するような構成においても、本発明の適用は可能である。
【0038】
より具体的には、センサ70a、70bから逐次出力される各パルス信号間の時間間隔(所定時間当たりのパルス数であってもよい)に基づいて、操作桿50の操作速度をリアルタイムで取得して、これを測定部4の移動速度に対応させると共に、センサ70a、70bから逐次出力される各パルス当りの測定部4の移動量を一定として、操作桿50の操作量と測定部4の移動量とが一対の関係(例えば、比例関係、二次曲線の関係)となるようにしてもよい。この場合、XZ駆動部7に用いられるモータとして、センサ70a、70bから出力されるパルス信号に対応して駆動されるパルスモータを用いるようなことが考えられる。このようにすれば、操作桿50に対する傾倒速度が異なっていても、傾倒角度が同じであれば、その傾倒速度によって測定部4の移動速度は変化するが、測定部4の移動量自体は一定となる。このようにすれば、検者は、操作桿50の操作量に対する測定部4の移動量の把握が容易となり、精密なアライメントを行うことができる。
【0039】
また、上記のように粗アライメントが行われ、被検眼の前眼部が撮像素子21によって撮影されたら、以下のような自動アライメントを行うようにしてもよい。ここで、制御部80は、撮像素子21からの撮像信号に基づいて被検眼に対するアライメント状態を検出する。この場合、制御部80は、例えば、リング指標Rの中心座標に基づいて被検眼に対する上下左右方向のアライメント状態を求める。また、制御部80は、測定部4が作動距離方向にずれた場合に、前述の無限遠指標Mの間隔がほとんど変化しないのに対して、リング指標Rの所定経線方向の像間隔が変化するという特性を利用して、被検眼に対する作動距離方向のアライメント状態を求める(詳しくは、特開平6−46999号参照)。そして、制御部80は、アライメント検出結果に基づいてY駆動部6及びXZ駆動部7を駆動制御することにより測定部4を移動させ、被検眼に対する自動アライメントを行う。そして、アライメントが完了したら、制御部80は、自動的にトリガ信号を発して測定を開始する(オートショット)。
【0040】
以上のように、自動アライメント機能を備えた装置とすれば、自動アライメントが有効な被検眼に対しては自動アライメント機能を利用し、自動アライメントが効かない(例えば、被検眼の角膜に異常があったり、固視微動が激しい被検眼等)被検眼に対しては前述のジョイスティック機構5を用いた手動アライメントを行うことが可能となる。
【0041】
なお、以上の説明において、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号に基づいて測定部4を粗動させるようにXZ駆動部7を駆動制御する際、XZ駆動部7を高速駆動させるような構成としたが、操作桿50が傾倒されるときに得られる操作桿50の操作速度に基づいて測定部4を粗動させる速度を変化させるようにしてもよい。
【0042】
ここで、検者によって操作桿50が傾倒されると、制御部80は、前述のようにセンサ70a、70bからの検出信号に基づいて操作桿50の操作速度を逐次取得し、これに基づいてXZ駆動部7を駆動させていく(微動操作モード)。そして、検者によって操作桿50が傾倒されていき、所定方向の限界位置まで傾倒されると、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号に基づいてXZ駆動部7を駆動させる(粗動操作モード)。この粗動操作モードにおいて、制御部80は、検者によって操作桿50が傾倒される間にセンサ70a、70bから出力された検出信号に基づいて操作桿50の操作速度を取得し、得られた操作速度に基づいてXZ駆動部7の駆動速度を制御する。
【0043】
これにより、検知部75a〜75dからの検知信号が出力される前段階において、操作桿50に対する操作速度が速ければ測定部4を粗動させる速度が速くなり、操作桿50に対する操作速度が遅ければ測定部4を粗動させる速度が遅くなる。すなわち、微動制御時における操作速度に基づいて測定部4を粗動させる速度が変化される。 すなわち、操作桿50が速く傾倒されていたときには、測定部4を大きく移動させたい(例えば、左右眼の切換の場合)という検者の意図があると考えられるので、測定部4を速く移動させることで測定部4を大きく移動させる。また、操作桿50がゆっくりと傾倒されていたときには、測定部4を細かく移動させたい(例えば、操作桿50の微動操作(センサ70a、70bからの検出信号に応じた測定部4の移動)によって移動される測定部4の移動可能範囲外に被検眼が位置しているが、もう少し測定部4が移動すれば被検眼に対するアライメントが完了するような場合)という検者の意図があると考えられるので、測定部4をゆっくりと移動させることで測定部4を細かく移動させる。
【0044】
以上のようにすれば、微動操作に限らず粗動操作においても操作桿50を操作する検者の意図を反映させた測定部4の操作を行うことができる。
【0045】
上記制御において、例えば、検知部75a〜75dからの検知信号が出力される直前に取得された操作桿50の操作速度に基づいてXZ駆動部7の駆動速度を制御する。そして、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号が出力される直前の測定部4の移動速度と、粗動操作の際(検知部75a〜75dからの検知信号が出力されたとき)の測定部4の移動速度が等しくなるよう、XZ駆動部7の駆動速度が維持されるように駆動制御を行う。このようにすれば、微動操作モードにおける測定部4の移動速度のままで測定部4の粗動が行われるため、粗動操作モード(操作桿50が所定の傾倒限界位置に達した状態)に切り換わっても、検者は、微動操作モード(操作桿50が所定の傾倒限界位置まで傾倒されていない状態)が続いているような感覚で違和感なく操作桿50を操作できる。
【0046】
なお、上記説明においては、検知部75a〜75dからの検知信号が出力される直前に取得された操作桿50の操作速度に基づいて測定部4の粗動を行うようにしたが、これに限るものではない。例えば、操作桿50が傾倒されて傾倒限界位置に達するまでの所定時間内における(例えば、検知部75a〜75dからの検知信号が出力される前の1秒間)操作桿50の操作速度の平均値に基づいてXZ駆動部7の駆動速度を制御するようにしてもよい。
【0047】
なお、以上のような被検眼に対する測定部4の粗動操作が可能な構成を有する装置において、粗動操作の際の被検眼に対する測定部4の移動速度を調整(増減)させるための速度調整スイッチを設け、速度調整スイッチからのスイッチ信号に基づいて測定部4の移動速度を制御するようにしてもよい。例えば、前述のように検知部75a〜75dからの検知信号に基づいてXZ駆動部7の粗動動作を行う際、制御部80は、速度調整スイッチからのスイッチ信号の入力に応じてXZ駆動部7の駆動速度を速くしたり遅くしたりする。なお、速度調整スイッチは、操作桿50の近傍に設けることが好ましく、例えば、測定開始スイッチ5bに速度調整スイッチとしての機能を付加し、これらを共用させるようにしてもよい。この場合、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号があったときには、測定動作を開始するためのトリガ信号は無効とし、粗動操作の際に測定動作が行われないようにしておく。
【0048】
また、以上説明したジョイスティック機構において、被検眼に対する測定部4の粗動操作を行うための粗動スイッチを設け、粗動スイッチから制御部80へと入力されたトリガ信号に応じて検知部75a〜75dからの検知信号によるXZ駆動部7の駆動制御を行うようにしてもよい。この場合、制御部80は、検知部75a〜75dから検知信号が入力されても粗動スイッチからのトリガ信号がない限り、XZ駆動部7の駆動動作を行わない。ここで、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号が入力され、かつ、粗動スイッチからのトリガ信号が入力されると、検知部75からの検知信号によるXZ駆動部7の駆動制御を行う。そして、制御部80は、粗動スイッチからのトリガ信号が解除されるか、もしくは検知部75a〜75dから検知信号がなくなるまでXZ駆動部7を駆動させる。
【0049】
以上のようにすれば、被検眼に対する測定部4の微動操作(センサ70a、70bからの検出信号による測定部4の移動)を検者が行っている間に、操作桿50が所定の限界位置まで傾倒されてしまい、検者の意思に反して測定部4の粗動操作が行われるのを回避することができる。なお、前述のような粗動スイッチを設けた場合、上記とは逆に、検知部75a〜75dから検知信号が入力されても粗動スイッチからのトリガ信号がある限り、XZ駆動部7の駆動動作を行わないようにしてもよい。ここで、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号が入力され、かつ、粗動スイッチからのトリガ信号が解除されると、検知部75からの検知信号によるXZ駆動部7の駆動動作を行う。そして、制御部80は、粗動スイッチからのトリガ信号が発せられるか、もしくは検知部75a〜75dから検知信号がなくなるまでXZ駆動部7を駆動させる。この場合、粗動操作を行う場合には粗動スイッチを操作入力せず、粗動操作を禁止したい場合に粗動スイッチを操作入力すればよい。 なお、以上のような駆動操作において、粗動スイッチを粗動操作を開始するためのトリガスイッチとしてのみに用いるようにしてもよく、粗動操作の停止については、検知部75a〜75dからの検知信号がなくなったことに応じて実行するようにしてもよい。
【0050】
なお、粗動スイッチは、操作桿50の近傍に設けることが好ましく、例えば、測定開始スイッチ5bに粗動スイッチとしての機能を付加し、これらを共用させるようにしてもよい。この場合、制御部80は、検知部75a〜75dからの検出信号があったときには、測定動作を開始するためのトリガ信号は無効とし、粗動操作の際に測定動作が行われないようにしておく。
【0051】
また、上記のように被検眼に対する測定部4のアライメント状態を検出可能な場合、制御部80は、検出されるアライメント状態に応じて、一定の条件の下、検知部75a〜75dからの検知信号に基づく測定部4の移動に規制をかけるようにしてもよい。より具体的には、制御部80は、検知部75a〜75dからの検知信号が出力されても、撮像素子21からの撮像信号に基づいて検出される被検眼に対する測定部4のアライメント偏位量が所定の許容範囲内(例えば、検知部75a〜75dからの検知信号が出力されない範囲で行われる操作桿50に対する傾倒動作によって測定部4が移動できる範囲内)のときは、XZ駆動部7の駆動動作を行わない。このようにすれば、上記のようなスイッチ操作を行わずに、検者の意思に反する測定部4の粗動を回避できる。
【0052】
なお、上記粗動スイッチにおいて、検知部75a〜75dからの検知信号がなくなったときには、アライメントモードを粗動操作モードから微動操作モードに切換える。また、検知部75a〜75dからの検知信号がなくなっても、粗動スイッチから入力されたトリガ信号が解除されるまでは、センサ70a、70bからの検出信号によるXZ駆動部7の駆動制御を停止するようにしてもよい。この場合、検者は、前述のように測定部4の粗動操作を行ったのち、粗動スイッチを押しっぱなしにした状態で操作桿50を中立位置(直立位置)付近まで復帰させ、その後に粗動スイッチの入力を解除する。そして、粗動スイッチからのトリガ信号がなくなると、制御部80は、センサ70a、70bからの検出信号によるXZ駆動部7の駆動制御を再開し、検者による微動操作を可能とする。このようにすれば、操作桿50が所定の限界位置まで傾倒された後に、操作桿50が所定の傾倒限界位置から中立位置付近まで復帰される間、測定部4の移動が停止される。したがって、被検眼に対する測定部4の粗動操作を行ったのちに、操作桿50が中立位置付近にある状態から微動操作を行うことができるので、微動操作をスムーズに開始することができる。
【0053】
なお、上記説明においては、粗動スイッチからのトリガ信号の解除によって粗動操作後の微動操作を再開させるような構成としたが、他の手法も考えられる。例えば、傾倒限界位置からの操作桿50の操作量を検出し、その検出結果に基づいて操作桿50が中立位置付近まで復帰されたか否かを判定し、判定結果に基づいて微動操作を再開させるような構成としてもよい。
【0054】
なお、以上のように示した微動操作時の操作桿50の操作速度に基づいて測定部4を粗動させる速度を変化させる動作は、前述のような移動部材57の移動から操作桿50の操作情報(操作速度、操作量、操作位置等)を検出するような検出機構をもつジョイスティック機構に限るものではなく、ジョイスティックの傾倒方向と傾倒角度を検出する検出機構を持つ他の電動ジョイスティック機構であっても、本発明の適用は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係る眼科装置の外観構成図である。
【図2】本実施形態に係るジョイスティック機構について説明する図である。
【図3】本実施形態に係る眼科装置の光学系及び制御系の構成について説明するための概略構成図である。
【図4】表示モニタに表示されたアライメント画面を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
4 測定部(検眼ユニット)
5 ジョイスティック機構
5b 測定開始スイッチ(粗動スイッチ、速度調整スイッチ)
7 XZ駆動部
50 操作桿
57 移動部材
59 支持部
65a、65b ガイド板
70a、70b センサ
71 移動検出部
75 検知部
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査するための検眼ユニットと、
被検眼に対して検眼ユニットを移動させるための駆動手段と、
任意の方向に傾倒可能に支持される操作桿と、前記操作桿に対する傾倒操作を電気的に検出する操作検出手段と、を含むジョイスティック機構と、
前記操作検出手段から出力される操作信号に基づいて前記駆動手段の駆動を制御し、前記検眼ユニットを前後左右方向に移動させる制御手段と、を備え、
前記ジョイスティック機構は、
前記操作桿を任意の方向に傾倒可能に支持する支持機構と、
前記操作桿の下部に設けられ,前記ジョイスティックの傾倒動作に連動して水平方向に移動する移動部材と、該移動部材の水平方向における移動を検出して前記操作信号を出力する移動検出手段と、を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、
前記移動検出手段は、前記移動部材の移動方向、移動速度を検出することを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項1の眼科装置において、
前記操作桿が所定の限界位置まで傾倒されたことを検知する検知手段を有し、
前記制御手段は、前記検知手段からの検知信号に基づいて前記駆動手段の駆動を制御し、前記検眼ユニットの移動を制御することを特徴とする眼科装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−66760(P2013−66760A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272810(P2012−272810)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2007−228345(P2007−228345)の分割
【原出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)