説明

眼科装置

【課題】 フィルタの切換個所を低減する。
【解決手段】 観察時に第1の駆動手段により前記蛍光用エキサイタフィルタを光路中から退避し、第2の駆動手段により蛍光用バリアフィルタを光路中に挿入し、カラー撮影には、第1の駆動手段により蛍光用エキサイタフィルタを光路中から退避すると共に第2の駆動手段により赤外光カットフィルタを光路中に挿入し、蛍光撮影には第1の駆動手段により蛍光用エキサイタフィルタを光路中に挿入すると共に第2の駆動手段により蛍光用バリアフィルタを光路中に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外光で観察し、カラー撮影及び例えば自発蛍光(FAF)撮影の蛍光撮影を行う眼底カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼底を観察・撮影する眼底カメラには、散瞳剤を点眼する散瞳型眼底カメラと、散瞳剤を点眼しない無散瞳型眼底カメラがある。
【0003】
一般に、散瞳型眼底カメラは主に眼科医によって使用され、カラー撮影のみならず、蛍光撮影、特殊フィルタ撮影等の様々な手技により複数枚の撮影を行うのに適している。一方、無散瞳型眼底カメラは集団健診や内科医によって使用され、主に1枚の撮影で使用するのに適している。しかし、眼科医においても散瞳剤を点眼せずに済み、被検者への負担を軽減できることから、無散瞳撮影への要求が高まってきている。
【0004】
特許文献1においては、近赤外観察をしながらカラー撮影、可視蛍光(FA)撮影を行うことのできる無散瞳型の眼底カメラが開示されている。この眼底カメラにおいては、眼底照明系に可視光カットフィルタを挿脱可能に配置し、撮影系には可視観察手段として光学ファインダ、近赤外観察手段と静止画撮影用の2つの撮像手段が設けられている。
【0005】
上述の特許文献1の眼底カメラを用いてFA撮影を行う場合には、蛍光が出現するまでは可視光カットフィルタを光路外に配置し、ファインダを介して観察する。そして、蛍光が出現すると、光路に可視光カットフィルタを挿入し、被検眼に近赤外光を照射し、眼底像を動画で観察可能な観察用撮像手段を介して観察する。
【0006】
また、撮影に際しては、跳ね上げミラーにより光路を切換えて撮影を行う。なお、可視蛍光撮影の際に用いるエキサイタフィルタ、バリアフィルタはそれぞれ近赤外光を透過する特性を有していることが重要である。
【0007】
また、近年、加齢性黄斑変性(AMD)の新しい診断方法として、自発蛍光撮影が注目されている。初期の自発蛍光はレーザースキャン型検眼装置に搭載されたが、現在では眼底カメラにおいても応用され始めている。
【0008】
眼底カメラを用いて自発蛍光撮影を行う場合には、眼底照明系にエキサイタフィルタを挿入し、検者は可視光で被検眼眼底の観察及びアライメントを行う。また、蛍光撮影の際には、撮影に同期して撮影系にバリアフィルタを挿入して撮影を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許2000−300521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、自発蛍光撮影の可能な散瞳型眼底カメラはカラー撮影と自発蛍光撮影をするために、図4に示す従来例1のようにフィルタの切換えが必要である。
【0011】
なお、図4に示すように照明光学系L1と観察撮影光学系L2が配置されている。照明光学系L1には、観察光源として例えばハロゲン光源1、撮影光源としてキセノン管2が用いられており、ハロゲン光源1、キセノン管2の何れも可視光と近赤外光の波長を含む光を発光する。
【0012】
自発蛍光撮影を行う際には、照明光学系L1の光路内には、照明系1として励起光のみを透過するエキサイタフィルタ3と、カラー撮影時に挿入される光路長を補正するための平面板4とが挿脱可能に配置されている。
【0013】
また、観察撮影光学系L2には、撮影系1として蛍光撮影時に挿入され自発蛍光の蛍光波長域のみを透過するバリアフィルタ5と、カラー撮影時に挿入される近赤外カットフィルタ6とが挿脱可能に配置されている。近赤外カットフィルタ6が必要なのは、カラー撮影した画像に赤成分が強くなり過ぎ、良好な画質が得られなくなることを防止するためである。
【0014】
上述の眼底カメラにおいて、自発蛍光撮影モードの観察時には、照明系1にエキサイタフィルタ3を挿入し、撮影系1に近赤外カットフィルタ6を挿入し、ファインダを介してアライメント及び観察を行う必要がある。そして、撮影時には撮影系1の近赤外カットフィルタ6とバリアフィルタ5とを入れ換えて撮影が行われる。
【0015】
また、カラー撮影モードにおける観察時、撮影時は共に、照明系1に平面板4が挿入され、撮影系1には近赤外カットフィルタ6を挿入して行う。
【0016】
なお、上述の眼底カメラにおいては、可視光で観察を行うため、被検者に散瞳剤を点眼して散瞳させる必要がある。
【0017】
図5に示す従来例2の眼底カメラにおいては、照明光学系L1に、観察光源として近赤外光を発光する近赤外光源11、撮影光源として可視光と近赤外光の波長を含む光を発光するキセノン管12を用いている。
【0018】
この照明光学系L1には、照明系1として近赤外光カットフィルタ13と近赤外波長も透過するエキサイタフィルタ14とが入れ換え可能に設けられており、更に照明系2として近赤外光カットフィルタ15と平面板16が挿脱可能に設けられている。観察撮影光学系L2には、撮影系1として撮像手段17の前方にバリアフィルタ18と平面板19とが入れ換え可能に設けられ、カラー撮影モードと蛍光撮影モードの撮影を行うことができる。
【0019】
図5に示すように、撮像手段を1つにした場合には、撮像手段17は近赤外観察をする必要があり、図5に示す従来例2の静止画撮影時には、赤外光カットフィルタを照明光学系L1か観察撮影光学系L2の何れかに挿入する必要がある。
【0020】
従って、カラー撮影モードの観察時においては、照明系1にエキサイタフィルタ14を挿入し、照明系2に平面板16を挿入し、撮影系1に平面板19を挿入して観察する。また、カラー撮影モードの撮影時においては、照明系1に近赤外光カットフィルタ13を挿入し、照明系2に平面板16を挿入し、撮影系1に平面板19を挿入して撮影する。
【0021】
蛍光撮影モードの観察時においては、照明系1にエキサイタフィルタ14を挿入し、照明系2に平面板16を挿入し、撮影系1にバリアフィルタ18を挿入して観察する。また、蛍光撮影モードの撮影時においては、照明系1にエキサイタフィルタ14を挿入し、照明系2に近赤外光カットフィルタ15を挿入し、撮影系1にバリアフィルタ18を挿入して撮影する。
【0022】
上述のように、カラー撮影モードと蛍光撮影モードの撮影を行うためには、3個所のフィルタの切換機構が必要になる。この3個所の切換機構を必要とする理由としては、エキサイタフィルタ14が赤外波長も透過するため、赤外波長光の透過を阻止する近赤外光カットフィルタ13、15が必要になるためである。
【0023】
図6に示す従来例3の眼底カメラにおいては、カラー撮影と自発蛍光撮影を可能にするために2つの撮像手段を備えており、照明光学系L1と観察撮影光学系L2、L3が配置されている。照明光学系L1には、観察光源として例えばハロゲン光源21、撮影光源としてキセノン管22が用いられており、ハロゲン光源21、キセノン管22の何れも可視光と近赤外光の波長を含む光を発光する。
【0024】
自発蛍光撮影を行う際には、照明光学系L1の光路内には、照明系1として励起光のみを透過するエキサイタフィルタ23と、カラー撮影時に挿入される光路長を補正するための平面板24とが挿脱可能に配置されている。
【0025】
また、観察撮影光学系L2には、撮影系1として蛍光撮影時に挿入され自発蛍光の蛍光波長域のみを透過するバリアフィルタ25と、カラー撮影時に挿入され光路長を補正するための平面板26とが挿脱可能に配置されている。更に、観察撮影光学系L2のカラー撮影用撮像手段27の前方には、撮影系2として、撮影した画像に赤成分が強くなり過ぎ、良好な画質が得られなくなることを防止するための近赤外光カットフィルタ28が配置されている。切換ミラー29によって分岐された観察撮影光学系L3には、自発蛍光撮影用撮像手段30が配置されている。
【0026】
上述の眼底カメラにおいて、自発蛍光撮影モードの観察時には、照明系1にエキサイタフィルタ23を挿入し、撮影系1に平面板26を挿入し、図示しないファインダを介してアライメント及び観察を行う。そして、撮影時には撮影系1の平面板26とバリアフィルタ25とを入れ換え、切換ミラー29が光路内に挿入され、撮像手段30によって撮影が行われる。また、カラー撮影モードにおける観察時、撮影時には、共に照明系1に平面板24が挿入され、切換ミラー29が光路から退避して撮像手段27によって撮影が行われる。
【0027】
なお、上述の眼底カメラにおいては、可視光で観察を行うため、被検者に散瞳剤を点眼して散瞳させる必要がある。
【0028】
表2は上述の従来例をまとめたものであり、表中の「−」は該当する位置にフィルタが
存在しないことを示している。
【0029】
表2
従来例1
撮影モード カラー/自発蛍光
観察波長 可視光
カラー 蛍光
照明系1 観察時 平面板 エキサイタ
照明系1 撮影時 平面板 エキサイタ
照明系2 観察時 − −
照明系2 撮影時 − −
撮影系1 観察時 近赤外光カット 近赤外光カット
撮影系1 撮影時 近赤外光カット バリア
撮影系2 観察時 − −
撮影系2 撮影時 − −

従来例2
撮影モード カラー/可視蛍光
観察波長 近赤外光
カラー 蛍光
照明系1 観察時 エキサイタ エキサイタ
照明系1 撮影時 近赤外光カット エキサイタ
照明系2 観察時 平面板 平面板
照明系2 撮影時 平面板 近赤外光カット
撮影系1 観察時 平面板 バリア
撮影系1 撮影時 平面板 バリア
撮影系2 観察時 − −
撮影系2 撮影時 − −

従来例3
撮影モード カラー/自発蛍光
観察波長 可視光
カラー 蛍光
照明系1 観察時 平面板 エキサイタ
照明系1 撮影時 平面板 エキサイタ
照明系2 観察時 − −
照明系2 撮影時 − −
撮影系1 観察時 平面板 平面板
撮影系1 撮影時 平面板 バリア
撮影系2 観察時 近赤外光カット 近赤外光カット
撮影系2 撮影時 近赤外光カット 近赤外光カット
【0030】
このように、自発蛍光撮影ができる従来例1、3においては、散瞳型眼底カメラがベースになっているため、可視光による観察となり被検者は散瞳する必要がある。また、従来例2のように近赤外観察をして、蛍光撮影とカラー撮影を行う装置においてはフィルタ切換え機構が3個所に必要となる。
【0031】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、フィルタの切換個所を低減し、カラー撮影と自発蛍光撮影を無散瞳で行うことにより、患者の負担を軽減することができる眼底カメラを提供することにある。特に、自発蛍光撮影による加齢性黄斑変性症等の疾病のスクリーニングを可能とした眼底カメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するための本発明に係る眼底カメラは、被検眼の眼底に不可視光により観察するために不可視光のみを照射する手段と眼底を可視光により撮影するために可視波長域と不可視光を照射する手段とから成る照明手段、該照明手段と被検眼の間の光路中に挿脱を可能とした蛍光用波長域のみを透過する蛍光用エキサイタフィルタと、該蛍光用エキサイタフィルタの挿脱を駆動する第1の駆動手段と、照明された眼底からの反射光を受光し眼底像を結像する観察撮影光学系と、近赤外波長域及び可視波長域に感度を有し動画撮影と静止画撮影が可能である撮像手段と、前記観察撮影光学系の光路中に蛍光用波長域及び近赤外波長域を透過する特性を有する蛍光用バリアフィルタと赤外光カットフィルタとを入れ換え駆動する第2の駆動手段と、静止画撮影を実施するための撮影スイッチと、複数の撮影モードを切換える撮影モード選択手段と、該撮影モード選択手段の出力と前記撮影スイッチの出力とに基づいてシステムを制御する制御手段とを有する眼底カメラであって、前記制御手段は、観察時に前記第1の駆動手段により前記蛍光用エキサイタフィルタを光路中から退避し、前記第2の駆動手段により前記蛍光用バリアフィルタを光路中に挿入し、カラー撮影には、前記第1の駆動手段により前記蛍光用エキサイタフィルタを光路中から退避すると共に第2の駆動手段により前記赤外光カットフィルタを光路中に挿入し、蛍光撮影には前記第1の駆動手段により前記蛍光用エキサイタフィルタを光路中に挿入すると共に第2の駆動手段により前記蛍光用バリアフィルタを光路中に挿入する制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る眼底カメラによれば、照明光学系に自発蛍光用エキサイタフィルタを挿脱し、観察撮影光学系に蛍光波長と近赤外光透過の分光特性を有する自発蛍光用バリアフィルタと近赤外光カットフィルタを挿脱可能とする。これにより、カラー撮影と蛍光撮影の撮影モードに対応することができる。観察時、撮影時にフィルタ挿脱制御を行うことにより、2つの撮影モードを2個所のフィルタ切換えのみで簡便に行うことができる。また、近赤外光で観察できるので散瞳剤が不要であり、被検者の負担を軽減することができ、加齢性黄斑変性症等の疾病のスクリーニングに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例の眼底カメラの構成図である。
【図2】フィルタの分光特性グラフ図である。
【図3】フィルタの分光特性グラフ図である。
【図4】従来例1の眼底カメラの説明図である。
【図5】従来例2の眼底カメラの説明図である。
【図6】従来例3の眼底カメラの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を図1〜図3に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【0036】
図1は実施例における無散瞳型眼底カメラの構成図を示している。被検眼Eの前方には、対物レンズ31、孔あきミラー32、撮影絞り33、フォーカスレンズ34、結像レンズ35、自発蛍光用バリアフィルタ36、撮像手段37が順次に配列され、観察撮影光学系が構成されている。また、自発蛍光用バリアフィルタ36は光路中に挿脱が可能とされ第1の駆動手段38により、近赤外光カットフィルタ39と入れ換えるようになっている。
【0037】
孔あきミラー32の反射方向には、リング状の開口部を有する角膜絞り40、リレーレンズ41、光路長補正ガラス42、リレーレンズ43、ミラー44が順次に配列されている。また、光路長補正ガラス42は第2の駆動手段45により自発蛍光用エキサイタフィルタ46と入れ換え可能となっている。
【0038】
ミラー44の反射方向には、照明光束による被検眼Eの水晶体からの有害光である反射光が撮影絞り33に入射しないように、照明光束と撮影光束を分離するためのリング状の開口部を有する水晶体絞り47が配置されている。また、この水晶体絞り47の後方には、被検眼Eの瞳位置と略共役の位置に配置されたリング状の開口部を有する瞳絞り48、レンズ49、可視光による閃光を照射する撮影用光源であるキセノン管50が配列されている。更に、このキセノン管50の後方には、拡散板51、可視光を透過しない可視光カットフィルタ52、観察用照明光源であるハロゲンランプ53が配置され、ハロゲンランプ53の後方には反射鏡54が配置され、照明光学系が構成されている。また、被検眼Eの前方には、被検眼Eを誘導するための外部固視標55が設けられている。
【0039】
撮像手段37の出力はシステム全体を制御する制御手段56に接続されていると共に、制御手段56に複数の撮影モードを選択するための撮影モード選択手段57、静止画撮影をする撮影スイッチ58の出力が接続されている。また、制御手段56の出力は第1の駆動手段38、第2の駆動手段45、キセノン管50、撮像した動画、静止画の眼底像を表示するためのモニタ59に接続されている。
【0040】
図2(a)は自発蛍光用エキサイタフィルタ46の分光特性グラフ図を示し、この蛍光用エキサイタフィルタ46は580nm近傍の蛍光用波長域の光を透過し、それ以外の波長域の光を阻止する特性とされている。
【0041】
図2(b)は自発蛍光用バリアフィルタ36の分光特性グラフ図を示し、蛍光用バリアフィルタ36は少なくとも600〜780nmの波長を透過する特性を有し、600nmよりも短い波長の透過を阻止する特性を有している。図2(b)の点線は、図2(a)の自発蛍光用エキサイタフィルタ46の分光特性を示し、蛍光用バリアフィルタ36と透過帯の重なりがないことを示している。
【0042】
図2(c)は近赤外光カットフィルタ39の分光特性グラフ図を示し、近赤外光カットフィルタ39は430〜700nmの波長を透過し、700nmよりも長い近赤外光の透過を阻止する特性を有している。これは不可視光である近赤外光を透過することで、カラー撮影撮影画像を劣化させないためである。
【0043】
図3は可視光カットフィルタ52の分光特性グラフ図を示し、可視光カットフィルタ52は少なくとも680nm以上の透過波長を含んでいる。
【0044】
撮像手段37は可視波長域から近赤外波長域までに感度を有し、動画、静止画出力が可能である。ただし、近赤外波長域では可視波長域と比較すると感度が低いため、被検者に負担を掛けないために、近赤外波長域で観察する際には撮影時と比較するとゲインを上げたり、解像度を低下させて画素加算等の処理を行う必要がある。
【0045】
撮影モード選択手段57を介してカラー撮影モードが選択され動画撮影するカラー撮影では、観察時の照明光はハロゲンランプ53による近赤外光を用いるため、観察撮影光学系において第1の駆動手段38を介して蛍光用バリアフィルタ36を光路内に挿入する。
更に、照明光学系においては、第2の駆動手段45を介して光路長補正ガラス42が光路中に挿入される。
【0046】
検者は撮像手段37から出力される動画像をモニタ59により眼底Erを観察しながら、外部固視標55を動かして被検者の視線を所望の位置に誘導すると共に、フォーカスレンズ34を移動させてフォーカシングを行う。なお、モニタ59に表示される眼底画像は、撮像手段37によって受光し撮像された画像に、電子的に作成されたアパーチャマスクを付加した画像となる。
【0047】
撮影スイッチ58が押されると、制御手段56は第1の駆動手段38を介して、蛍光用バリアフィルタ36を近赤外光カットフィルタ39に入れ換え、照明光学系の光路長補正ガラス42はそのままで切換えない。更に、静止画撮影においてはキセノン管50の閃光により撮影されるため、光量が十分得られることと、撮影された眼底画像は診断に使用されるため高解像度が求められることから、制御手段56は撮像手段37のゲインと解像度を元に戻す。そして、キセノン管50を発光させて眼底Erに対する静止画撮影を行い、撮影された眼底画像はモニタ59上に表示される。
【0048】
静止画撮影が終了すると、動画による眼底観察に戻すため、制御手段56は第1の駆動手段38を介して近赤外光カットフィルタ39を蛍光用バリアフィルタ36に切換えると共に、撮像手段37のゲインを上げ、解像度を低下させる。
【0049】
次に、撮影モード選択手段57を介して、自発蛍光撮影モードを選択し、眼底Erを動画観察する蛍光撮影には、制御手段56は撮影光学系については第1の駆動手段38を介して蛍光用バリアフィルタ36を光路中に挿入する。更に、制御手段56は第2の駆動手段45を介して、光路長補正ガラス42を光路内に挿入すると共に、撮像手段37のゲインを上げ、解像度を低下させる。この状態において、検者はカラー撮影での眼底観察時と同様に、アライメント、フォーカシングを行う。
【0050】
撮影スイッチ58が押されると、制御手段56は第2の駆動手段45を介して光路長補正ガラス42を蛍光用エキサイタフィルタ46に切換える。撮影光学系については既に蛍光用バリアフィルタ36が光路内にあるため切換えない。更に、ゲインと解像度を元に戻す制御を行った上で、キセノン管50を発光させ静止画撮影を行い、撮影された画像をモニタ59上に表示する。
【0051】
静止画撮影が終了すると、動画観察に戻すために、制御手段56は照明光学系については第2の駆動手段45を介して光路内にある蛍光用エキサイタフィルタ46を光路長補正ガラス42に入れ換える。撮影光学系については、既に蛍光用バリアフィルタ36が光路内にあるため切換えない。更に、撮像手段37のゲインを上げ、解像度を低下させる。
【0052】
表1は実施例の各撮影モードに対する観察・撮影時のフィルタの光路に対する状態を示している。
【0053】
表1
照明光学系 撮影光学系 撮像手段
撮影モード エキサイタ 光路長補正ガラス バリア 近赤外光カット
カラー観察 退避 挿入 挿入 退避 動画
カラー撮影 退避 挿入 退避 挿入 静止画
FAF観察 退避 挿入 挿入 退避 動画
自発蛍光撮影 挿入 退避 挿入 退避 静止画
【0054】
なお実施例では、照明光学系には蛍光用エキサイタフィルタ46と光路長補正ガラス4
2を入れ換えるようにしている。しかし、光路長の違いを無視できれば光路長補正ガラス
42を省略し、蛍光用エキサイタフィルタ46のみを第2の駆動手段45により退避する
ようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
36 自発蛍光用バリアフィルタ
37 撮像手段
38 第1の駆動手段
39 近赤外光カットフィルタ
42 光路長補正ガラス
45 第2の駆動手段
46 自発蛍光用エキサイタフィルタ
50 キセノン管
52 可視光カットフィルタ
53 ハロゲンランプ
56 制御手段
57 撮影モード選択手段
58 撮影スイッチ
59 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に不可視光により観察するために不可視光のみを照射する手段と眼底を可視光により撮影するために可視波長域と不可視光を照射する手段とから成る照明手段、該照明手段と被検眼の間の光路中に挿脱を可能とした蛍光用波長域のみを透過する蛍光用エキサイタフィルタと、該蛍光用エキサイタフィルタの挿脱を駆動する第1の駆動手段と、照明された眼底からの反射光を受光し眼底像を結像する観察撮影光学系と、近赤外波長域及び可視波長域に感度を有し動画撮影と静止画撮影が可能である撮像手段と、前記観察撮影光学系の光路中に蛍光用波長域及び近赤外波長域を透過する特性を有する蛍光用バリアフィルタと赤外光カットフィルタとを入れ換え駆動する第2の駆動手段と、静止画撮影を実施するための撮影スイッチと、複数の撮影モードを切換える撮影モード選択手段と、該撮影モード選択手段の出力と前記撮影スイッチの出力とに基づいてシステムを制御する制御手段とを有する眼底カメラであって、前記制御手段は、観察時に前記第1の駆動手段により前記蛍光用エキサイタフィルタを光路中から退避し、前記第2の駆動手段により前記蛍光用バリアフィルタを光路中に挿入し、カラー撮影には、前記第1の駆動手段により前記蛍光用エキサイタフィルタを光路中から退避すると共に第2の駆動手段により前記赤外光カットフィルタを光路中に挿入し、蛍光撮影には前記第1の駆動手段により前記蛍光用エキサイタフィルタを光路中に挿入すると共に第2の駆動手段により前記蛍光用バリアフィルタを光路中に挿入する制御を行うことを特徴とする眼底カメラ。
【請求項2】
前記照明手段が発光する不可視光は680nmよりも長い波長域を含むと共に、前記蛍光撮影は自発蛍光によるものであり、前記蛍光用エキサイタフィルタは580nm近傍を透過すると共に、前記蛍光用バリアフィルタは前記蛍光用エキサイタフィルタと透過波長の重ならない600nmから少なくとも780nmまでの波長域を透過することを特徴とする請求項1に記載の眼底カメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−99646(P2013−99646A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−39443(P2013−39443)
【出願日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【分割の表示】特願2009−68577(P2009−68577)の分割
【原出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)