眼科診断支援装置および方法
【課題】病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者が病変候補を探す手間をかけずに容易に取得可能にする。
【解決手段】眼底の広域画像を取得する取得手段と、前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算手段と、前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段とを備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【解決手段】眼底の広域画像を取得する取得手段と、前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算手段と、前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段とを備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼部の画像撮像を支援する画像処理装置に関し、特に眼部の断層画像を用いた画像処理を行って眼科診断の支援を行う眼科診断支援装置、および方法、更には該方法を実行するプラグラムおよび該プログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病や失明原因の上位を占める疾病の早期診断を目的として、眼部の検査が広く行われている。光干渉断層計(OCT;Optical Coherence Tomography)などの眼部断層画像撮像装置は、網膜層内部の状態を3次元的に観察することが可能であるため、疾病の診断をより的確に行うのに有用であると期待されている。
【0003】
図1は、OCTで撮像した網膜の黄斑部断層画像の模式図を示す。図1のFは眼底画像、RXYは眼底上の撮像範囲、MCは黄斑中心、T1〜Tnはボリューム画像を構成する2次元の断層画像(Bスキャン画像、以下、断層画像と呼ぶ)、Aは網膜の深さ方向(z方向)へのスキャンライン(Aスキャンライン)を表す。さらに、断層画像にTnおいて、1は内境界膜、2は神経線維層、3は神経節細胞層、4は内網状層、5は内顆粒層、6は外網状層、7は外顆粒層、8は外境界膜、9は視細胞内節外節接合部、10は網膜色素上皮層境界を表す。このような断層画像が入力された場合に、例えば、内境界膜1から網膜色素上皮層境界10の間の厚み、つまり網膜厚を計測できれば、網膜厚の変化よって視力に異常が生じる様々な疾病の診断に役立てることができる。このように、眼底上の2次元の範囲を撮像してボリューム画像を取得する撮像方法を3Dスキャンと呼ぶことにする。
【0004】
また、OCT撮像では、眼底上の同じライン上の照射領域を繰り返し撮像し、得られた断層画像を加算平均することでノイズの少ない高精細な断層画像を出力するという撮像方法が用いられている。以降、これをラインスキャンと呼ぶことにする。この撮像方法により、眼底疾患の診断のために重要な部位である、黄斑中心や病変部位における、網膜層内部の解剖構造を詳細に観察することができる。このラインスキャンの撮像では、1枚の断層画像に限らず、複数のラインが眼底上の撮像領域として設定されることにより、複数枚の断層画像が撮像されることもある。
【0005】
このように、臨床現場では、断層画像の撮り漏らしがないように広範囲のボリューム画像を取得することを目的とした3Dスキャンと、病変の詳細観察のために高精細画像を取得することを目的としたラインスキャンの2種類の撮像方法が併用されることが多い。
【0006】
このとき、ラインスキャンでは、眼底上の特定のライン領域に対応する断層画像のみしか取得できないため、黄斑中心や病変部位の解剖構造が断層像に写るように、撮像位置を適切に決める必要がある。しかしながら、従来のOCT装置では操作者は撮像位置を手動で決定する必要があるため、眼底から黄斑中心や病変の位置を探す手間がかかっていた。さらに、操作者が病変を見落としたり、黄斑中心からずれた位置を撮像位置に設定したりすることで、適切な位置を撮像できない可能性があった。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1では、予備計測で取得した断層画像から特徴部位の位置を特定した後、本計測で特徴部位がフレーム内の所定位置に描写されるように、特徴部位の位置に基づいて信号光の照射位置を変更する発明が記載されている。具体的には、予備計測の断層画像から特徴部位として黄斑中心や視神経乳頭中心を表す窪みの位置を検出することで、本計測でその位置がフレームの所定位置に描写されるように照射位置を決定している。
【0008】
また、特許文献2では、眼底の広域画像から病変候補を検出し、検出された病変候補の種類と範囲に基づいて撮像する断層画像の空間的範囲やスキャンライン間隔、走査順・方向を決定する技術が開示されている。さらに、病変候補の重篤度や発生部位に応じて断層画像取得の要否を決定する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−279031
【特許文献2】特開2010−35607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の技術では以下の課題があった。上述の特許文献1では、黄斑部や視神経乳頭部のような、部位の中心(窪み)から等方的に広がる構造を持つ特徴部位を対象とした場合は、中心の位置のみを特定できれば断層像にその特徴が描写されるように照射位置を決定できる。しかし、特徴部位が病変である場合、病変はその中心位置から等方的な広がりを持つとは限らない。例えば、糖尿病網膜症で見られる黄斑浮腫の症例では、毛細血管瘤や血管から血液が漏れ出すことにより、網膜内に嚢胞と呼ばれる低輝度領域が発生し、網膜が膨らむ。このとき、網膜は病変の中心位置から等方的に膨らむ訳ではなく、この嚢胞の発生位置や度合いに応じて様々に異なる膨らみを呈する。従って、特許文献1の方法で撮像位置を自動設定した場合、取得された断層画像内には病変の一部は写っていたとしても、必ずしも上に述べた黄斑浮腫の特徴が描写されている訳ではないため、それが病変の詳細観察に適した断層画像であるとは限らない。
【0011】
また、特許文献2では、スキャン間隔が密な3Dスキャンを撮像する場合であれば、病変の広がりに応じて断層画像の空間的範囲を決定すれば、取得したボリューム画像の中に病変に関する診断に有益な断層画像を含むことが可能である。しかし、上述の断層画像の加算平均を前提としたラインスキャンを複数枚撮像する場合、スキャン間隔が疎な断層画像を撮像することになるため、必ずしもそれが上述のような病変の特徴を捉えた断層画像を含むとは限らない。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者が病変候補を探す手間をかけずに容易に取得可能にする、眼科診断を支援する装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記を達成するための、本発明の一態様による眼科診断支援装置は、眼底の広域画像を取得する取得手段と、前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算手段と、前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、眼底上の病変候補の異常の程度に応じて、断層画像を取得する位置を自動設定することで、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者が手動で病変候補を探す手間をかけずに容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】3Dスキャンの撮像範囲と断層画像内の眼部特徴を示す模式図。
【図2】実施例1に係る撮像支援装置の機能構成を示す図。
【図3】実施例1に係る撮像支援装置10の処理手順を示すフローチャート。
【図4】眼底画像に重畳された網膜厚の重要度マップを示す図。
【図5】シングルライン撮像位置の第1の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図6】病変候補の異常の程度の最大位置を含むシングルライン撮像位置と取得画像を示す図。
【図7】シングルライン撮像位置の第2の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図8】病変候補の領域を最も多く含むシングルライン撮像位置と取得画像を示す図。
【図9】シングルライン撮像位置の第3の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図10】病変候補の個数を最も多く含むシングルライン撮像位置と取得画像を示す図。
【図11】実施例2に係る撮像支援装置10の処理手順を示すフローチャート。
【図12】マルチライン撮像位置の第1の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図13】病変候補の異常の程度の最大位置を含むマルチライン撮像位置を示す図。
【図14】マルチライン撮像位置の第2の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図15】病変候補の領域を最も多く含むマルチライン撮像位置を示す図。
【図16】マルチライン撮像位置の第3の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図17】病変候補の個数を最も多く含むマルチライン撮像位置を示す図。
【図18】実施例3に係る撮像支援装置10の処理手順を示すフローチャート。
【図19】シングル・マルチライン撮像位置の切替え設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図20】病変候補と黄斑中心の位置関係によるシングル・マルチラインの撮像位置の切替えを示す図。
【図21】実施例4に係る診断支援装置の機能構成を示す図。
【図22】実施例4に係る診断支援装置20の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例1]
本実施例では、OCTを用いて黄斑部を3Dスキャンし、撮像したボリューム画像から病変候補を検出する。その上で、病変候補の検出結果を利用することでその特徴を最も良く捉えるように、次に黄斑部を1本のライン(一つの線分、以降、シングルラインと呼ぶ)でラインスキャンする撮像位置、すなわち断層画像の取得位置を自動的に決定する。これにより、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者の手間なく撮像することを可能にする。さらに、臨床現場において3Dスキャンとラインスキャンが併用される場合は、3Dスキャンで得られたボリューム画像の情報を、ラインスキャンの撮像位置決定のために有効活用することを可能にする。
【0017】
図2は、本実施形態に係る撮像支援装置(眼科診断支援装置)10の機能構成を示したものである。図中の201は指示取得部、202は眼底追跡部、203は断層画像撮像部、204は記憶部、205は画像解析部、208は撮像位置設定部、209は表示部である。また、画像解析部205は、眼部特徴検出部206と病変候補検出部207からなる。断層画像撮像部203は本発明における断層画像取得手段として、また病変候補検出部207は病変候補検出手段および求めた病変候補の評価のための評価値を算出する演算手段として、各々機能するモジュールを包含する。
【0018】
図2は、本実施形態のフローチャートであり、撮像支援装置10が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。
【0019】
<ステップS301>
ステップS301において、指示取得部201は不図示の操作者による不図示の被検眼の眼底の3Dスキャンの撮像指示情報を取得し、眼底追跡部202と断層画像撮像部203へと送信する。
【0020】
<ステップS302>
ステップS302において、眼底追跡部202は取得した撮像指示情報に基づき眼底の追跡を開始する。具体的には、撮像指示情報を取得した際に被検眼の眼底画像を撮像し、これを眼底画像Aとする。さらに、実時間で被検眼の眼底画像を撮像し、これを眼底画像Bとする。眼底画像Bは、時間経過に伴い常に最新の画像に更新される。これら眼底画像AとBを実時間で位置合わせすることにより、実時間で取得される眼底の位置情報が、撮像指示の時点で得られた眼底の位置情報と常に対応付けられた状態を実現する。
【0021】
また、眼底画像AとBの位置合わせ処理は具体的には次の方法を用いる。まず、両方の画像から線状構造を強調するフィルタを用いて血管を抽出する。ここでは、線分を構造要素としたときに構造要素内での輝度値の平均値と構造要素を囲む局所領域内での平均値の差を計算するようなコントラストに基づく線分強調フィルタを用いる。ここでフィルタの処理結果として得られる多値領域をそのまま血管抽出結果としても良いし、ある閾値で2値化した領域を抽出結果としてもよい。得られた画像をそれぞれ眼底画像A’及びB’とする。
【0022】
本実施形態では眼底画像A’の座標系を基準とし、眼底画像B’のスケール(Sx,Sy)、位置座標(x,y)、回転(rot)パラメータを求めることにより、眼底画像A’とB’の位置を合わせる。また、画像同士が合っているかの指標を算出するため、眼底画像A’と眼底画像B’における画像全体の輝度値の平均二乗誤差を用いる。つまり平均二乗誤差が最も小さくなる位置合わせパラメータを求める。
【0023】
なお、位置合わせの指標はこれに限定されるものではない。輝度値の平均二乗誤差の代わりに相関係数、相互情報量などを用いてもよい。また、元の眼底画像AとBをそのまま位置合わせのための入力としてもよい。
【0024】
次に、眼底画像B及び求めた位置合わせパラメータを実時間で断層画像撮像部203と表示部209へと送信する。
【0025】
<ステップS303>
ステップS303において、断層画像撮像部203は取得した撮像指示情報に基づき眼底を3Dスキャンし、例えば図1に例示される眼底の全域或いはこれに準じた広範囲の広域画像を取得する。続いて、取得した広域画像であるボリューム画像を記憶部204と眼部特徴検出部206へと送信する。このとき、ステップS302の眼底画像Aと本ステップの3Dスキャンは共通の光源を用いて同時に撮像されており、位置が対応付けられているものとする。
【0026】
<ステップS304>
ステップS304において、眼部特徴検出部206は、ボリューム画像から眼部特徴として網膜層境界と、黄斑中心の位置を検出する。なお、本実施形態ではこのように黄班中心を特徴部位として扱うこととしているが、前述した血管等の例えば病変と関連する部位を特徴部位とすることも可能である。
【0027】
本実施形態では、網膜層境界として、図3における内境界膜1と網膜色素上皮層境界10を検出する。まず、ここでは処理対象であるボリューム画像を構成する各断層画像単位で以下の処理を行う。
【0028】
まず着目する断層画像に平滑化処理を行い、ノイズ成分を除去する。次に断層画像のz方向のエッジの強調処理を行い、エッジ強調画像からエッジ成分を検出する。ここで、内境界膜1は輝度値が低い硝子体領域と輝度値が高い網膜領域の境界であるため、特に強いエッジ成分として現れる。また、網膜色素上皮層境界は、網膜層内でも特に高い輝度で描出される網膜色素上皮層の下側の境界であるため、強いエッジ成分として現れる。そこで、エッジ強調画像からAスキャンラインに沿った輝度プロファイルを生成し、特に大きな輝度の山を2つ検出し、網膜の手前側から順に内境界膜1、網膜色素上皮層境界10として位置を特定する。これを画像内の全てのAスキャンラインについて行い、内境界膜1及び網膜色素上皮層境界10のラインを抽出する。このように検出した層境界のデータを層境界データと呼ぶことにする。
【0029】
また、本ステップで検出する網膜層境界は内境界膜1と網膜色素上皮層境界10に限らない。画像から検出するエッジ成分の大きさを調整することで、内境界膜1、神経線維層2、神経節細胞層3、内網状層4、内顆粒層5、外網状層6、外顆粒層7、外境界膜8、視細胞内節外節外節接合部9、網膜色素上皮層境界10の何れを検出対象とすることも可能である。
【0030】
次に、以下の黄斑中心MCの解剖学的特徴を利用して黄斑中心MCの位置を検出する。
(i)黄斑中心MCは眼底上の窪んだ領域である。
(ii)黄斑中心MCにおいて網膜血管が存在しない。
(iii)黄斑中心MCにおいて神経線維層2が存在しない。
【0031】
本実施形態では、基本的には(i)の特徴を利用して、検出した内境界膜1のz座標が最大となる点を黄斑中心MCとする。但し、黄斑浮腫の症例では黄斑中心が膨らみ、(i)が成り立たない可能性がある。その場合は、(ii)・(iii)の特徴を利用して、網膜血管が存在せず、かつ神経線維層2の層厚が0になる位置を黄斑中心と特定する。網膜血管が存在しない領域はステップS302において検出した血管領域の情報を利用して求められ、神経線維層2の層厚は、本ステップで神経線維層2を抽出することで求められる。
【0032】
そして、検出した層境界データを病変候補検出部207へと送信し、中心窩MCの座標を記憶部204へと送信する。
【0033】
<ステップS305>
ステップS305において、病変候補検出部207は、取得した層境界データに基づき、病変候補を検出する。例えば、黄斑浮腫の症例では、網膜内部に発生した嚢胞などの病変の影響により網膜厚(内境界膜1と網膜色素上皮層境界10の間の層の厚み)が正常に比べると厚くなるという特徴がある。そこで、本実施形態では、まず内境界膜1と網膜色素上皮層境界10の境界データから網膜厚を計算し、正常の網膜厚と比較して特に大きくなる箇所を病変候補として検出する。
【0034】
具体的には、図1におけるx-y平面の各座標において、Aスキャンライン(z軸正の方向)に沿って内境界膜1と網膜色素上皮層境界10間のz座標の差分を計算する。この演算において、x−y平面上の座標(i,j)におけるこの差分値を網膜厚の層厚値ti,jとする。
【0035】
次に、該演算によって求められた層厚値を予め記憶部204に格納された多数の網膜厚の正常値データベースと比較することで網膜厚が異常に厚い部位を検出する。具体的には、x−y平面上の各座標(i,j)を以下の条件に従って、「病変候補領域」・「境界領域」・「正常領域」の3つに分類する。
(i)「病変候補領域」:層厚値ti,jが、網膜厚の正常値のデータ集合に対して値の大きい方から数えて上位1%未満の範囲に含まれる場合
(ii)「境界領域」:層厚値ti,jが(i)を除いて上位5%未満の範囲に含まれる場合
(iii)「正常領域」:層厚値ti,jが(i)・(ii)を除いた残りの範囲(5〜100%)に含まれる場合
【0036】
このように、x−y平面上の座標(i,j)が分類されたマップを重要度マップと呼ぶことにする。本実施形態では、上記重要度マップの「病変候補領域」に属する座標(i,j)に対して、「病変候補領域」ラベルを付与し、「病変候補領域」ラベルが付与された座標とその層厚値ti,jのデータ集合を病変候補情報と呼ぶことにする。従って、病変候補検出部207は、病変候補の検出結果に基づいて眼底平面における病変候補の領域を求める領域算出手段として機能するモジュールも包含する。
【0037】
図4は、網膜厚に異常がある症例において、眼底画像に対して重要度マップを重畳させた図である。図4において、Fは眼底画像、RXYは3Dスキャンの撮像領域、MCは黄斑中心、ARは病変候補領域、BRは境界領域、NRは正常領域を表す。
【0038】
また、本ステップにおいて検出する病変候補は上述の病変候補領域ARに限らない。領域ARとBRを含めた領域を病変候補として検出してもよい。さらに、病変候補を検出するために計算する層厚は網膜厚のみに限らない。例えば、視細胞層に欠損が生じている症例の場合、図3の視細胞内節外節接合部9と網膜色素上皮層境界10の間の層が薄くなる。従って、この場合には、視細胞内節外節接合部9と網膜色素上皮層境界間の層厚が正常に比べて異常に薄くなる領域を病変候補として検出する。その他、病変候補は、層厚値の異常領域に限らない。例えば、黄斑浮腫の症例で見られる嚢胞領域は断層画像上では周囲の網膜層領域に比べ低輝度で描出される。そこで、閾値処理により低輝度領域を検出し、これを病変候補としてもよい。その他、糖尿病網膜症の症例では、血管から漏れ出た脂肪分が沈着することで白斑と呼ばれる領域が発生することがあり、周囲の網膜層領域に比べ高輝度で描出される。そこで、閾値処理により高輝度領域を検出し、これを病変候補としてもよい。
【0039】
そして、病変候補検出部207は、病変候補情報を撮像位置設定部208に送信する。
【0040】
<ステップS306>
ステップS306において、撮像位置設定部208は、記憶部204に格納された中心窩MCの座標と、取得した病変候補情報とに基づき、シングルラインで撮像するための撮像位置を設定する。具体的な設定方法の例を以下に述べる。
【0041】
本実施形態では、第一の方法として病変候補の異常の程度が最大になる位置を含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定する方法を説明する。
図5は、第1の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な設定方法をこのフローチャートに沿って説明する。
【0042】
<ステップS501>
ステップS501において、撮像位置設定部208は、記憶部204から黄斑中心MCの座標を取得する。
【0043】
<ステップS502>
ステップS502において、撮像位置設定部208は、取得した病変候補情報から病変候補の異常の程度が最大となる位置を検出する。具体的には、記憶部に格納された正常値データベースに基づき、座標(i、j)ごとの正常の層厚平均値ni,jを算出し、平均値ni,jと層厚値ti,jとの差分が最大となる座標(i、j)を求め、この座標を点PARとする。
【0044】
<ステップS503>
ステップS503において、撮像位置設定部208は、点MCと点PARの2点を通過するラインを撮像位置として設定する。
【0045】
図6は、病変候補の異常の程度が最大となる位置を通る撮像位置と取得される断層画像を表す図である。図6(a)は網膜厚の重要度マップを表し、AR、BR、NR、MCは、図4と同様のものを表す。PARは病変候補の異常の程度が最大となる位置であり、Lは点MCと点PARの2点を通過するラインである。図6(b)は眼底をラインLの位置で撮像した断層画像を表し、MCとPARは図6(a)と同様のもの、CYは嚢胞を表す。図6(b)では、黄斑中心と、特に網膜が腫れ上がった部位が1枚の断層画像に描写されていることが分かる。
【0046】
これにより、黄斑疾患の診断上重要となる黄斑中心と、病変候補の異常の程度が最大となる位置の両方を含むような断層画像を取得できるように、撮像位置を設定することができる。この方法は、病変候補が局所的に大きく現れるような症例において有効である。図6のような黄斑浮腫で局所的に腫れ上がった箇所がある症例以外でも、例えば、ポリープ状脈絡膜血管症のように、ポリープや異常血管網により網膜色素上皮層が大きく変形する症例においても有効である。
【0047】
次に、第2の方法として病変候補の領域を最も多く含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定する方法を説明する。
【0048】
図7は、第2の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な設定方法をこのフローチャートに沿って説明する。
【0049】
<ステップS701>
ステップS701において、撮像位置設定部208は、記憶部204から黄斑中心MCの座標を取得し、ラインスキャンの撮像位置Lの初期位置として、黄斑中心MCを通り角度θ=0のラインを設定する。さらに、下記で説明する断面積Sの最大値SMAXを0に設定する。
【0050】
<ステップS702>
ステップS702において、撮像位置設定部208は、取得した病変候補情報とステップS701で設定されたラインLの位置をx−y平面上で対応付ける。そして、病変候補情報をx−y平面に対してz方向に層厚値を持つボリュームデータとみなし、ラインLが横切る病変候補のボリュームデータの断面積Sを計算する。このとき、ラインLが病変候補を通過していなければS=0となる。
【0051】
<ステップS703>
ステップS703において、撮像位置設定部208は、計算した断面積Sを断面積の最大値SMAXと比較し、S>SMAXの場合にはステップS704に処理を移し、S≦SMAXの場合にはステップS705に処理を移す。
【0052】
<ステップS704>
ステップS704において、撮像位置設定部208は、断面積の最大値SMAXを値Sに更新し、最大値をとるときのラインLの角度θMAXを現在のラインLの角度θに更新する。
【0053】
<ステップS705>
ステップS705において、撮像位置設定部208は、現在のラインLの角度θを変更する。本実施形態では、例えばθの値に5°加える。
【0054】
<ステップS706>
ステップS706において、撮像位置設定部208は、現在のラインLの角度θの値を参照し、θ≧360°である場合はステップS707に処理を移し、θ<360°の場合はステップS702へと処理を移す。
【0055】
<ステップS707>
ステップS707において、撮像位置設定部208は、病変候補を通る断面積が最大値SMAXをとるときの角度θMAXのラインLをラインスキャンの撮像位置に設定する。
このように、撮像位置設定部208は、病変候補の検出結果に基づいて、眼底と直交する断面に含まれる病変候補の領域を求める演算手段として機能するモジュールを包含している。そして、その結果得られた情報に基づき断面に含まれる病変候補の領域が最大になるようにラインスキャンの撮像位置を設定している。
【0056】
図8は、病変候補を通る断面積が最大となる撮像位置と取得される断層画像を表す図である。図8(a)は網膜厚の重要度マップを表し、AR、BR、NR、MCは図6と同様のものを表し、LはMCを通り病変候補を通る断面積が最大となるラインを表す。図8(b)は眼底をラインLの位置で撮像した断層画像を表し、ARは図8(a)と同様に病変候補領域を表し、MC、CYは図6(b)と同様のものを表す。図8(b)では、黄斑中心と、特に網膜が腫れている領域が大きく広がっている部位が1枚の断層画像に描写されていることが分かる。
【0057】
これにより、黄斑疾患の診断上重要となる黄斑中心を含み、病変候補の領域を最も多く含むような断層画像を取得できるように、撮像位置を設定することができる。この方法は、サイズの大きい病変候補が存在するような症例において有効である。図8のような黄斑浮腫で網膜が腫れている領域が大きく広がった箇所がある症例以外でも、例えば、程度の大きい網膜剥離のように、広範囲に網膜が浮き上がっている症例においても有効である。
【0058】
次に、第3の方法として、病変候補の個数を最も多く含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定する方法を説明する。
【0059】
図9は第3の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。ここで、ラインLが通過する病変候補の個数をN、Nの最大値をNMAXとすると、本手法は、手法2における断面積Sを個数Nに、断面積の最大値SMAXを個数の最大値NMAXに置き換えたものに等しい。従って、具体的な説明は省略する。但し、病変候補の個数がNMAXをとる時の角度θMAXは一意に求まらないことがあり得る。そこで、以下に述べるように、本実施形態ではステップS904において、最大個数NMAXをとるラインの中で通過する病変候補の断面積の総和が最大となるようなラインを選ぶような処理を行う。ステップS904の具体的な処理を以下に説明する。
【0060】
<ステップS904>
ステップS904において、撮像位置設定部208は、ライン上に含まれる病変候補の断面積S(この場合は複数の病変候補各々の断面積の総和)を計算する。そして、断面積の最大値SMAX(初期値は0)と比較し、S>SMAXならば、SMAX=S、NMAX=N、θMAX=θとして値を更新し、S≦SMAXならば値は更新しない。以上の操作により、取得位置設定手段たる撮像位置設定部208は、病変候補の個数の分布に基づいて断層画像の取得位置を設定する。
このように、撮像位置設定部208は、眼底上に設定されたラインLの角度を探索的に変更しながらラインLが通過する病変候補の個数を求めているため、病変候補の検出結果に基づいて病変候補の個数の分布を求める演算手段として機能するモジュールを包含している。そして、その結果得られた情報に基づき断面に含まれる病変候補の個数が最大になるようにラインスキャンの撮像位置を設定している。
【0061】
図10は、病変候補の個数を最も多く含む撮像位置と取得される断層画像を表す図である。図10(a)は網膜厚の重要度マップを表し、BR、NR、MCは図6と同様のものを表し、LはMCを通り病変候補の個数を最も多く含むラインを表す。また、AR1〜AR3は、それぞれ異なる病変候補領域を表す。図10(b)は眼底をラインLの位置で撮像した断層画像を表し、AR1〜AR3は図10(a)と同様に異なる病変候補領域を表し、MC、CYは図6(b)と同様のものを表す。図10(b)では、黄斑中心と3箇所の網膜が腫れている部位が1枚の断層画像に描写されていることが分かる。
【0062】
これにより、黄斑中心を含み、病変候補の個数をできるだけ多く含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定することができる。この方法は、比較的小さな病変候補が多く存在するような症例において有効である。図10のような黄斑浮腫で網膜が腫れている領域が散在する症例以外にも、例えば、糖尿病網膜症などの症例で、白斑領域が広範囲に多数分布しているような場合においても有効である。この場合は、ステップS305において、病変候補として白斑領域を抽出することとなる。
【0063】
また、以上のように、黄斑中心と病変部位の両方を含むように撮像位置を設定する方法を3種類説明したが、必ずしも黄斑中心を含む方法に限定される必要はなく、上述の方法からラインが黄斑中心を通るという条件を省いた方法をとっても良い。この場合、病変候補の特徴を最も良く捉えることのみに特化した撮像位置が設定されることとなる。
【0064】
次に、撮像位置設定部208は、設定したラインスキャンの位置情報を撮像時のパラメータとして断層画像撮像部203と表示部209へと送信する。
【0065】
<ステップS307>
ステップS307において、表示部209は、眼底追跡部202から実時間で撮像される眼底画像B及び位置合わせパラメータを取得し、さらに、撮像位置設定部208から取得したシングルラインの撮像位置情報を取得する。そして、不図示のモニタ上に、シングルラインの撮像位置情報を眼底画像Bに重畳させて表示する。
【0066】
このとき、シングルラインの撮像位置情報は、ステップS303で撮像される3Dスキャンのボリュームデータに基づいて求められたものであり、眼底画像Aの座標系と対応付いている。そこで、位置合わせパラメータを用いてラインスキャンの位置情報を眼底画像Bの座標系に変換することで、眼底画像Bと座標系を一致させる。
【0067】
以上述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、検出結果に基づいてその特徴を最も良く捉えるように、次に撮像するシングルラインの撮像位置を自動的に決定する。これにより、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者が手動で病変候補を探す手間をかけずに容易に撮像することができる。また、操作者による病変候補の見落としを防ぐことができる。さらに、臨床現場において3Dスキャンとラインスキャンが併用される場合は、3Dスキャンで得られたボリューム画像の情報を、ラインスキャンの撮像位置決定のために有効活用することができる。
【0068】
[実施例2]
実施例1では、シングルラインの撮像位置を自動設定する方法を述べた。本実施例では、実施例1の撮像位置設定部208において、複数のシングルラインからなるマルチラインの撮像位置を設定する場合を説明する。従来の撮像位置の設定方法では、病変候補の範囲に基づいて撮像位置を設定するため、空間的に疎なマルチラインの撮像位置を設定する場合、病変候補の広がりはカバーできるが、必ずしも病変に関する診断に有益な断層画像を取得できるとは限らなかった。そこで、本実施形態では、病変候補の特徴を捉え、かつ病変候補の広がりや分布をカバーできるようにマルチラインの撮像位置を自動設定する。
【0069】
装置の構成については実施例1と同様であるため、説明は省略する。但し、図3の撮像位置設定部208が実施例1ではシングルラインの撮像位置を設定したのに対し、実施例2ではマルチラインの撮像位置を設定する点が異なる。
【0070】
図11は、本実施形態のフローチャートであり、断層画像撮像装置10が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1101〜1105とステップS1107は、図2におけるステップS301〜305とステップS307の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0071】
<ステップS1106>
ステップS1106において、撮像位置設定部208は、記憶部204に格納された中心窩(黄班中心)MCの座標と、取得した病変候補情報とに基づき、マルチラインスキャンを実行するための撮像位置を設定する。本実施形態では、マルチラインの本数を5本として具体的な設定方法の例を以下に述べる。
【0072】
本実施形態では、第一の方法として病変候補の異常の程度が最大になる位置を含む断層画像を取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定する方法を説明する。この方法は、実施例1のステップS306における第一の方法と同様、病変候補が局所的に大きく変化するような症例を対象とする。
【0073】
図12は、第一の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1201、1202は、図5におけるS501、502と同様であるため、説明は省略する。
【0074】
<ステップS1203>
ステップS1203において、撮像位置設定部208は、点PARと点MCをそれぞれ通る2本のラインL1とL2を水平方向に配置する。
【0075】
<ステップS1204>
ステップS1204において、撮像位置設定部208は、病変候補の領域が黄斑中心を含むか否かを判定し、黄斑中心を含む場合は処理をステップS1205に移し、含まない場合は処理をステップS1206に移す。撮像位置設定部208は、このように眼底における病変候補の領域が特徴部位である黄班中心を含むか否かを判定する判定手段として機能するモジュールを含む。
【0076】
<ステップS1205>
ステップS1205において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を病変候補領域に合わせて水平に配置する。具体的には、まず、x−y平面における病変候補領域のy方向(上下方向)の範囲をRYとする。次に、範囲RY内に、水平ラインL1を含めて等間隔となるように、ラインL3〜5を均等に配置する。このとき、範囲RYが非常に大きいとラインの配置間隔が疎になり過ぎる。そこで、RYの幅をdARとして、dARの値に上限値dMAXを持たせる。そして、実際の幅dARがdMAXを超えた場合は幅をdMAXに修正し、L1を基準とするdMAXの幅を持つ範囲に、ラインL3〜5を等間隔に配置する。本実施形態では、dMAXとして3.0mmを採用する。
【0077】
図13は、病変候補の異常の程度が最も大きい箇所を通るマルチラインの撮像位置を表す図である。図13(a)は病変候補領域が黄斑中心を含まない場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、ARは病変候補領域、BRは境界領域、NRは正常領域、MCは黄斑中心、PARは病変候補の異常の程度が最も大きい位置を表す。また、L1は点PARを通る水平ライン、L2は黄斑中心を通る水平ライン、dARは病変候補領域のy方向の幅、L3〜5はL1を基準にdARの範囲に配置された水平ラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補の異常の程度の最大点を含み、かつ病変候補領域の全体をカバーするように配置されていることが分かる。
【0078】
<ステップS1206>
ステップS1206において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を黄斑中心の周りに水平方向に配置する。具体的には、点MCを通る水平ラインL2を基準とするy方向(上下方向)に所定の幅dMCを持つ範囲に、ラインを等間隔に配置する。本実施形態では、上下幅dMCとして1.0mmを採用する。
【0079】
図13(b)は病変候補領域が黄斑中心を含む場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MC、PAR、L1、L2は図13(a)と同様のものを表す。また、dMCは黄斑中心の周りに設定された所定幅、L3〜L5はL2を基準にdMCの範囲に配置された水平ラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補の異常の程度の最大点を含み、かつ黄斑中心の周りをカバーするように配置されていることが分かる。
【0080】
これにより、黄斑中心と病変候補の異常の程度が最大となる位置をそれぞれ含む断層画像を一般的な撮像角度で取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。さらに、黄斑中心が病変候補領域に含まれない場合は、病変候補領域を均等に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。一方、黄斑中心が病変候補領域に含まれる場合は、黄斑中心の状態観察が重要となるため黄斑中心の周りを詳細に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。
【0081】
次に、第2の方法として病変候補の領域を最も多く含む断層画像を取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定する方法を説明する。この方法は、実施例1のステップS306における第2の方法と同様、サイズの大きい病変候補が存在するような症例を対象とする。
【0082】
図14は、第2の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1401、1404は、図12におけるS1201、1204と同様であるため、説明は省略する。
【0083】
<ステップS1402>
ステップS1402において、撮像位置設定部208は、病変候補を通る断面積が最大になるラインL1を検出する。本実施形態では、病変候補の重心を通り、かつ病変候補を通る断面積が最大になるラインを検出する。この処理は、図7のシングルライン撮像位置を設定する第2の方法において、黄斑中心を病変候補の重心に置き換えた処理に等しいので、具体的な説明は省略する。但し、ラインL1は必ずしも病変候補の重心を通る必要はなく、病変候補の異常の程度が最大となる位置を通るラインとしても良い。
【0084】
<ステップS1403>
ステップS1403において、撮像位置設定部208は、点MCを通り、ラインL1に平行なラインL2を配置する。
【0085】
<ステップS1405>
ステップS1405において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を病変候補領域に合わせてL1と平行に配置する。この処理は、ステップS1205において、配置するラインの角度を水平ではなくL1と平行にするという処理に置き換えたものに等しいので、具体的な説明は省略する。
【0086】
図15は、病変候補領域を最も多く含むマルチラインの撮像位置を表す図である。図15(a)は病変候補領域が黄斑中心を含まない場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MCは図13(a)と同様のものを表す。また、L1は通過する病変候補領域の断面積が最大になるライン、L2は黄斑中心を通りL1に平行に配置されたライン、dARはラインL1に対して垂直な方向の病変候補領域の幅、L3〜5はL1を基準にdARの範囲にL1と平行に配置されたラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補領域を最も多く含み、かつ病変候補領域の全体をカバーするように配置されていることが分かる。
【0087】
<ステップS1406>
ステップS1406において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を黄斑中心の周りにL1と平行に配置する。この処理は、ステップS1206において、配置するラインの角度を水平ではなくL1と平行にするという処理に置き換えたものに等しいので、具体的な説明は省略する。
【0088】
図15(b)は病変候補領域が黄斑中心を含む場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MC、L1、L2は図15(a)と同様のものを表す。また、dMCはラインL1に対して垂直な方向に黄斑中心の周りに設定された所定幅、L3〜L5はL2を基準にdMCの範囲にL2と平行に配置されたラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補領域を最も多く含み、かつ黄斑中心の周りをカバーするように配置されていることが分かる。
【0089】
これにより、黄斑中心を含む断層画像と病変候補領域を最も多く含む断層画像をそれぞれ取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。さらに、黄斑中心が病変候補領域に含まれない場合は、より診断上重要となる病変候補の全体が観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。一方、黄斑中心が病変候補領域に含まれる場合は、黄斑中心の状態観察が重要となるため黄斑中心の周りを詳細に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。
【0090】
次に、第3の方法として、病変候補の個数を最も多く含むように、マルチラインの撮像位置を設定する方法を説明する。この方法は、実施例1のステップS306における第3の方法と同様、比較的小さな病変候補が多く存在するような症例を対象とする。
【0091】
図16は、第3の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1601〜1604、1606は、図12におけるS1201〜1204、1206と同様であるため、説明は省略する。
【0092】
<ステップS1605>
ステップS1605において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を病変候補の個数に合わせて配置する。具体的には、病変候補ごとに、異常の程度が最大となる位置をそれぞれ検出する。但し、全ての病変候補の中で異常の程度が最大となる位置については、ステップS1602で検出しているため、これを除いて最大3つまでの病変候補について検出する。そして、検出した位置を病変候補の異常の程度が大きい順に点PAR1、PAR2、PAR3、とすると、ラインL3〜5を、点PAR1〜点PAR1をそれぞれ通り角度が水平となるように配置する。
【0093】
図17は、最も多くの個数の病変候補領域を含むマルチラインの撮像位置を表す図である。図17(a)は病変候補領域が黄斑中心を含まない場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MCは図13(a)と同様のものを表す。また、L1及びL3〜5は病変候補ごとに異常の程度が最大となる位置を通過する水平ライン、L2は黄斑中心を通る水平ラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心とできるだけ多くの病変候補領域を含むように水平に配置されていることが分かる。
【0094】
図17(b)は病変候補領域が黄斑中心を含む場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図である。この図は図13(b)と全く同じであるので、説明は省略する。
【0095】
これにより、黄斑中心を含み、かつ病変候補の個数を最も多く含んだ上で一般的な撮像角度で取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。さらに、黄斑中心が病変候補領域に含まれない場合は、できるだけ多くの病変を観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。一方、黄斑中心が病変候補領域に含まれる場合は、黄斑中心の周りを詳細に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。
【0096】
また、以上のように、マルチラインを全て平行にのみ配置する方法を説明したが、必ずしもこの方法に限定する必要はない。例えば、図13において、マルチラインを水平に配置する箇所を、全て垂直に置き換えたラインを新たに追加しても良い。これにより、マルチラインが十字に交差した状態で撮像位置を配置できる。これにより、黄斑中心や病変候補の状態をより詳しく把握することができる。
【0097】
以上述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、その特徴を最も良く捉えかつ病変候補の広がりや分布をカバーするように、次に撮像するマルチラインの撮像位置を自動的に決定する。これにより、病変候補に関する診断に有益な複数の断層画像を、操作者が手動で病変候補を探す手間なく撮像することができる。また、操作者による病変候補の見落としを防ぐことができる。
【0098】
[実施例3]
実施例1及び2では、シングルライン及びマルチラインの撮像位置を自動設定する方法をそれぞれ述べた。本実施例では、シングルラインとマルチラインの撮像方法を状況に応じて自動的に切替え、撮像位置を自動設定する方法を説明する。病変候補が黄斑中心を含む場合は、病変候補の特徴が現れる断層画像において、病変候補が黄斑中心に及ぼす影響を互いに対応付けて観察できることは重要である。一方、病変候補領域が黄斑中心を含まない場合は、基本的には病変候補と黄斑中心との関連性はないため、同一断層画像内で観察できる必要性はない。さらに、眼底上での断層画像の撮像角度が水平や垂直のような一般的な撮像角度でないと、操作者にとって慣れない撮像角度で取得された断層画像を観察することになってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、病変候補が黄斑中心を含む場合は、病変候補の特徴と黄斑中心の両方が描写されるようにシングルラインの撮像位置を設定し、含まない場合は、病変候補の特徴と黄斑中心が別々に描写されるようにマルチラインの撮像位置を水平に設定する。
【0099】
装置の構成については実施例1と同様であるため、説明は省略する。但し、図1の撮像位置設定部208が実施例1ではシングルラインの撮像位置のみを設定したのに対し、実施例3ではシングルラインとマルチラインの撮像方法を切替えて撮像位置を設定する点が異なる。
【0100】
図18は、本実施形態のフローチャートであり、断層画像撮像装置10が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1801〜1805とステップS1807は、図2におけるステップS301〜305とステップS307の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0101】
<ステップS1806>
ステップS1806において、撮像位置設定部208は、記憶部204に格納された中心窩(黄班中心)MCの座標と、取得した病変候補情報とに基づき、シングルラインで撮像するかマルチラインで撮像するかを判別する。そして、シングルラインと判断された場合は、シングルラインスキャンを実行するための撮像位置を設定する。マルチラインと判断された場合は、マルチラインスキャンを実行するための撮像位置を設定する。本実施形態では、マルチラインの本数を2本として具体的な設定方法の例を以下に述べる。
【0102】
図19は、撮像方法をシングルラインとマルチラインの間で切り替えて撮像位置を設定する方法を表すフローチャートであり、具体的な設定方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1901、1902は、図5におけるS501、502と同様であるため、説明は省略する。
【0103】
<ステップS1903>
ステップS1903において、撮像位置設定部208は、病変候補の領域が黄斑中心を含むか否かを判定し、黄斑中心を含む場合は処理をステップS1904に移し、含まない場合は処理をステップS1905に移す。
【0104】
<ステップS1904>
ステップS1904において、撮像位置設定部208は、点PARと点MCをそれぞれ通る2本のラインL1とL2を水平方向に配置する。
【0105】
図20は、シングルラインとマルチラインとの間で撮像方法を切り替えて設定した撮像位置を表す図である。図20(a)は、撮像方法としてマルチラインが選択されたときの撮像位置が設定された図であり、ARは病変候補領域、BRは境界領域、NRは正常領域、MCは黄斑中心、PARは病変候補の異常の程度が最も大きい位置を表す。また、L1は点PARを通る水平ライン、L2は黄斑中心を通る水平ラインを表す。この図より、病変候補の領域が黄斑中心を含まない場合は、病変候補と黄斑中心がそれぞれ異なる2本のラインスキャンで撮像されることが分かる。
【0106】
これにより、病変候補を含む断層画像と黄斑中心を含む断層画像をそれぞれ、操作者が見慣れた一般的な撮像角度で撮像された画像として観察することができる。
【0107】
<ステップS1905>
ステップS1905において、撮像位置設定部208は、点PARと点MCの両方を通るラインLを配置する。
【0108】
図20(b)は、撮像方法としてシングルラインが選択されたときの撮像位置を表す図であり、AR、BR、NR、MC、PARは図20(a)と同様のものを表す。また、Lは点PARと点MCの両方を通るラインを表す。この図より、病変候補の領域が黄斑中心を含む場合は、病変候補と黄斑中心が同一のラインに含まれるようにシングルラインで撮像されることが分かる。
【0109】
これにより、1枚の断層画像において、病変候補と黄斑中心の状態を互いに対応付けて観察することができる。
【0110】
以上、述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、病変候補領域と黄斑中心の位置関係に基づき撮像方法をシングルラインとマルチラインから選択し、選択された撮像方法で撮像位置を自動設定する。これにより、操作者は病変候補と黄斑中心に関する断層画像を、状況に応じて病変候補の詳細観察に適した枚数で観察することができる。
【0111】
[実施例4]
実施例1から3では、ボリューム画像を撮像し、断層画像から検出した病変候補に基づいてラインスキャンの撮像位置を自動設定する方法を述べた。本実施例では、ラインスキャンの撮像位置ではなく、ボリューム画像から断層画像を抽出してモニタに表示する際の眼底上の位置を自動設定し、画像を表示する方法を説明する。従来は、ボリューム画像を撮像した後、モニタ上で観察したい断層画像を決定する際、操作者はボリューム画像から適切なスライスを探すという手間がかかっていた。そこで、本実施形態では、ボリューム画像を撮像し、断層画像から検出した病変候補を解析することで、病変候補の特徴を最も良く捉えた断層画像を表示できるように、眼底上の表示位置を自動設定する。
【0112】
図21は、本実施形態に係る診断支援装置20の機能構成を示したものである。図中の30は断層画像取得装置、2101は断層画像取得部、2102は記憶部、2103は画像解析部、2106は表示位置設定部、2107は表示部である。また、画像解析部2103は、眼部特徴検出部2104と病変候補検出部2105からなる。なお、表示位置設定部2106は、実施例1から3における取得位置設定手段と同様の操作により眼底の広域画像に含まれる眼底の断層画像について、その表示位置を設定する機能を有したモジュールを含む。
【0113】
図22は、本実施形態のフローチャートであり、診断支援装置20が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS2202、2203は、図3におけるステップS304、305の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0114】
<ステップS2201>
ステップS2201において、断層画像取得部2101は、不図示の操作者の指示により断層画像撮像装置30からボリューム画像を取得し、記憶部2102及び眼部特徴検出部2104へと送信する。
【0115】
<ステップS2204>
ステップS2204において、表示位置設定部2106は、病変候補検出部2105から取得した病変候補情報に基づき断層画像の表示位置を自動設定する。このとき、本実施形態の設定方法は、実施例1におけるステップS306で設定されるシングルラインの撮像位置を、断層画像の表示位置に置き換えたものに等しいため、具体的な説明は省略する。
【0116】
但し、本ステップで決定する表示位置は一つとは限らない。例えば、ステップS306に記載された3種類の撮像位置設定方法と同様の手法を用いて、3種類の表示位置を設定する方式を取ってもよい。
【0117】
<ステップS2205>
ステップS2205において、表示部2107は、記憶部2102から取得したボリューム画像における、表示位置設定部2106で設定された断層画像の表示位置情報に対応する断層画像を表示する。
【0118】
このとき、表示位置設定部2106で設定された表示位置が一つの場合は、その位置に対応する断層画像をそのまま表示する。一方、設定された表示位置が複数である場合は、設定された複数の表示位置を表示して、操作者が選択できるようにする。但し、複数の表示位置のうち、何れかを初期に表示する位置として予め設定しておき、最初は初期設定された表示位置で表示させ、その後に他の表示位置を選択できるようにしてもよい。
【0119】
以上、述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、その特徴を最も良く捉えるように、表示する断層画像の表示位置を自動的に決定し、断層画像を表示する。これにより、病変候補の詳細観察に適した断層画像をボリューム画像から探しだす手間を省くことができ、病変候補の見落としも防ぐことができる。
【0120】
(その他の実施形態)
実施例1から4は、ボリューム画像から病変候補を検出し、撮像または表示する断層画像の位置を決定したが、病変候補を検出する対象はボリューム画像に限らない。例えば、2D眼底画像から病変候補を検出してもよい。より具体的には、網膜血管の異常である毛細血管瘤は、2D眼底画像上に描出されるため、これを病変候補として検出する。まず、2D眼底画像から実施例1のステップS302に記載した手法で血管領域を抽出した後、その血管径を正常値と比較することにより所定以上の領域を毛細血管瘤として検出する。そして、毛細血管瘤の特徴が最も良く現れる断層画像が観察できるように、撮像または表示する断層画像の位置を決定する。これにより、ラインスキャンの位置を決定する場合は、予め3Dスキャン画像を撮像する手間を省くことができる。また、断層画像をモニタに表示する際の眼底上の位置を決定する場合は、眼底画像を解析することで、ボリューム画像を解析するよりも計算コストを削減することができ、断層画像を表示するまでの時間を短縮することができる。
【0121】
さらに、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0122】
10 撮像支援装置
201 指示取得部
202 眼底追跡部
203 断層画像撮像部
204 記憶部
205 画像解析部
206 眼部特徴検出部
207 病変候補検出部
208 撮像位置設定部
209 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼部の画像撮像を支援する画像処理装置に関し、特に眼部の断層画像を用いた画像処理を行って眼科診断の支援を行う眼科診断支援装置、および方法、更には該方法を実行するプラグラムおよび該プログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病や失明原因の上位を占める疾病の早期診断を目的として、眼部の検査が広く行われている。光干渉断層計(OCT;Optical Coherence Tomography)などの眼部断層画像撮像装置は、網膜層内部の状態を3次元的に観察することが可能であるため、疾病の診断をより的確に行うのに有用であると期待されている。
【0003】
図1は、OCTで撮像した網膜の黄斑部断層画像の模式図を示す。図1のFは眼底画像、RXYは眼底上の撮像範囲、MCは黄斑中心、T1〜Tnはボリューム画像を構成する2次元の断層画像(Bスキャン画像、以下、断層画像と呼ぶ)、Aは網膜の深さ方向(z方向)へのスキャンライン(Aスキャンライン)を表す。さらに、断層画像にTnおいて、1は内境界膜、2は神経線維層、3は神経節細胞層、4は内網状層、5は内顆粒層、6は外網状層、7は外顆粒層、8は外境界膜、9は視細胞内節外節接合部、10は網膜色素上皮層境界を表す。このような断層画像が入力された場合に、例えば、内境界膜1から網膜色素上皮層境界10の間の厚み、つまり網膜厚を計測できれば、網膜厚の変化よって視力に異常が生じる様々な疾病の診断に役立てることができる。このように、眼底上の2次元の範囲を撮像してボリューム画像を取得する撮像方法を3Dスキャンと呼ぶことにする。
【0004】
また、OCT撮像では、眼底上の同じライン上の照射領域を繰り返し撮像し、得られた断層画像を加算平均することでノイズの少ない高精細な断層画像を出力するという撮像方法が用いられている。以降、これをラインスキャンと呼ぶことにする。この撮像方法により、眼底疾患の診断のために重要な部位である、黄斑中心や病変部位における、網膜層内部の解剖構造を詳細に観察することができる。このラインスキャンの撮像では、1枚の断層画像に限らず、複数のラインが眼底上の撮像領域として設定されることにより、複数枚の断層画像が撮像されることもある。
【0005】
このように、臨床現場では、断層画像の撮り漏らしがないように広範囲のボリューム画像を取得することを目的とした3Dスキャンと、病変の詳細観察のために高精細画像を取得することを目的としたラインスキャンの2種類の撮像方法が併用されることが多い。
【0006】
このとき、ラインスキャンでは、眼底上の特定のライン領域に対応する断層画像のみしか取得できないため、黄斑中心や病変部位の解剖構造が断層像に写るように、撮像位置を適切に決める必要がある。しかしながら、従来のOCT装置では操作者は撮像位置を手動で決定する必要があるため、眼底から黄斑中心や病変の位置を探す手間がかかっていた。さらに、操作者が病変を見落としたり、黄斑中心からずれた位置を撮像位置に設定したりすることで、適切な位置を撮像できない可能性があった。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1では、予備計測で取得した断層画像から特徴部位の位置を特定した後、本計測で特徴部位がフレーム内の所定位置に描写されるように、特徴部位の位置に基づいて信号光の照射位置を変更する発明が記載されている。具体的には、予備計測の断層画像から特徴部位として黄斑中心や視神経乳頭中心を表す窪みの位置を検出することで、本計測でその位置がフレームの所定位置に描写されるように照射位置を決定している。
【0008】
また、特許文献2では、眼底の広域画像から病変候補を検出し、検出された病変候補の種類と範囲に基づいて撮像する断層画像の空間的範囲やスキャンライン間隔、走査順・方向を決定する技術が開示されている。さらに、病変候補の重篤度や発生部位に応じて断層画像取得の要否を決定する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−279031
【特許文献2】特開2010−35607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の技術では以下の課題があった。上述の特許文献1では、黄斑部や視神経乳頭部のような、部位の中心(窪み)から等方的に広がる構造を持つ特徴部位を対象とした場合は、中心の位置のみを特定できれば断層像にその特徴が描写されるように照射位置を決定できる。しかし、特徴部位が病変である場合、病変はその中心位置から等方的な広がりを持つとは限らない。例えば、糖尿病網膜症で見られる黄斑浮腫の症例では、毛細血管瘤や血管から血液が漏れ出すことにより、網膜内に嚢胞と呼ばれる低輝度領域が発生し、網膜が膨らむ。このとき、網膜は病変の中心位置から等方的に膨らむ訳ではなく、この嚢胞の発生位置や度合いに応じて様々に異なる膨らみを呈する。従って、特許文献1の方法で撮像位置を自動設定した場合、取得された断層画像内には病変の一部は写っていたとしても、必ずしも上に述べた黄斑浮腫の特徴が描写されている訳ではないため、それが病変の詳細観察に適した断層画像であるとは限らない。
【0011】
また、特許文献2では、スキャン間隔が密な3Dスキャンを撮像する場合であれば、病変の広がりに応じて断層画像の空間的範囲を決定すれば、取得したボリューム画像の中に病変に関する診断に有益な断層画像を含むことが可能である。しかし、上述の断層画像の加算平均を前提としたラインスキャンを複数枚撮像する場合、スキャン間隔が疎な断層画像を撮像することになるため、必ずしもそれが上述のような病変の特徴を捉えた断層画像を含むとは限らない。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者が病変候補を探す手間をかけずに容易に取得可能にする、眼科診断を支援する装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記を達成するための、本発明の一態様による眼科診断支援装置は、眼底の広域画像を取得する取得手段と、前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算手段と、前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、眼底上の病変候補の異常の程度に応じて、断層画像を取得する位置を自動設定することで、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者が手動で病変候補を探す手間をかけずに容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】3Dスキャンの撮像範囲と断層画像内の眼部特徴を示す模式図。
【図2】実施例1に係る撮像支援装置の機能構成を示す図。
【図3】実施例1に係る撮像支援装置10の処理手順を示すフローチャート。
【図4】眼底画像に重畳された網膜厚の重要度マップを示す図。
【図5】シングルライン撮像位置の第1の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図6】病変候補の異常の程度の最大位置を含むシングルライン撮像位置と取得画像を示す図。
【図7】シングルライン撮像位置の第2の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図8】病変候補の領域を最も多く含むシングルライン撮像位置と取得画像を示す図。
【図9】シングルライン撮像位置の第3の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図10】病変候補の個数を最も多く含むシングルライン撮像位置と取得画像を示す図。
【図11】実施例2に係る撮像支援装置10の処理手順を示すフローチャート。
【図12】マルチライン撮像位置の第1の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図13】病変候補の異常の程度の最大位置を含むマルチライン撮像位置を示す図。
【図14】マルチライン撮像位置の第2の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図15】病変候補の領域を最も多く含むマルチライン撮像位置を示す図。
【図16】マルチライン撮像位置の第3の設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図17】病変候補の個数を最も多く含むマルチライン撮像位置を示す図。
【図18】実施例3に係る撮像支援装置10の処理手順を示すフローチャート。
【図19】シングル・マルチライン撮像位置の切替え設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図20】病変候補と黄斑中心の位置関係によるシングル・マルチラインの撮像位置の切替えを示す図。
【図21】実施例4に係る診断支援装置の機能構成を示す図。
【図22】実施例4に係る診断支援装置20の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例1]
本実施例では、OCTを用いて黄斑部を3Dスキャンし、撮像したボリューム画像から病変候補を検出する。その上で、病変候補の検出結果を利用することでその特徴を最も良く捉えるように、次に黄斑部を1本のライン(一つの線分、以降、シングルラインと呼ぶ)でラインスキャンする撮像位置、すなわち断層画像の取得位置を自動的に決定する。これにより、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者の手間なく撮像することを可能にする。さらに、臨床現場において3Dスキャンとラインスキャンが併用される場合は、3Dスキャンで得られたボリューム画像の情報を、ラインスキャンの撮像位置決定のために有効活用することを可能にする。
【0017】
図2は、本実施形態に係る撮像支援装置(眼科診断支援装置)10の機能構成を示したものである。図中の201は指示取得部、202は眼底追跡部、203は断層画像撮像部、204は記憶部、205は画像解析部、208は撮像位置設定部、209は表示部である。また、画像解析部205は、眼部特徴検出部206と病変候補検出部207からなる。断層画像撮像部203は本発明における断層画像取得手段として、また病変候補検出部207は病変候補検出手段および求めた病変候補の評価のための評価値を算出する演算手段として、各々機能するモジュールを包含する。
【0018】
図2は、本実施形態のフローチャートであり、撮像支援装置10が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。
【0019】
<ステップS301>
ステップS301において、指示取得部201は不図示の操作者による不図示の被検眼の眼底の3Dスキャンの撮像指示情報を取得し、眼底追跡部202と断層画像撮像部203へと送信する。
【0020】
<ステップS302>
ステップS302において、眼底追跡部202は取得した撮像指示情報に基づき眼底の追跡を開始する。具体的には、撮像指示情報を取得した際に被検眼の眼底画像を撮像し、これを眼底画像Aとする。さらに、実時間で被検眼の眼底画像を撮像し、これを眼底画像Bとする。眼底画像Bは、時間経過に伴い常に最新の画像に更新される。これら眼底画像AとBを実時間で位置合わせすることにより、実時間で取得される眼底の位置情報が、撮像指示の時点で得られた眼底の位置情報と常に対応付けられた状態を実現する。
【0021】
また、眼底画像AとBの位置合わせ処理は具体的には次の方法を用いる。まず、両方の画像から線状構造を強調するフィルタを用いて血管を抽出する。ここでは、線分を構造要素としたときに構造要素内での輝度値の平均値と構造要素を囲む局所領域内での平均値の差を計算するようなコントラストに基づく線分強調フィルタを用いる。ここでフィルタの処理結果として得られる多値領域をそのまま血管抽出結果としても良いし、ある閾値で2値化した領域を抽出結果としてもよい。得られた画像をそれぞれ眼底画像A’及びB’とする。
【0022】
本実施形態では眼底画像A’の座標系を基準とし、眼底画像B’のスケール(Sx,Sy)、位置座標(x,y)、回転(rot)パラメータを求めることにより、眼底画像A’とB’の位置を合わせる。また、画像同士が合っているかの指標を算出するため、眼底画像A’と眼底画像B’における画像全体の輝度値の平均二乗誤差を用いる。つまり平均二乗誤差が最も小さくなる位置合わせパラメータを求める。
【0023】
なお、位置合わせの指標はこれに限定されるものではない。輝度値の平均二乗誤差の代わりに相関係数、相互情報量などを用いてもよい。また、元の眼底画像AとBをそのまま位置合わせのための入力としてもよい。
【0024】
次に、眼底画像B及び求めた位置合わせパラメータを実時間で断層画像撮像部203と表示部209へと送信する。
【0025】
<ステップS303>
ステップS303において、断層画像撮像部203は取得した撮像指示情報に基づき眼底を3Dスキャンし、例えば図1に例示される眼底の全域或いはこれに準じた広範囲の広域画像を取得する。続いて、取得した広域画像であるボリューム画像を記憶部204と眼部特徴検出部206へと送信する。このとき、ステップS302の眼底画像Aと本ステップの3Dスキャンは共通の光源を用いて同時に撮像されており、位置が対応付けられているものとする。
【0026】
<ステップS304>
ステップS304において、眼部特徴検出部206は、ボリューム画像から眼部特徴として網膜層境界と、黄斑中心の位置を検出する。なお、本実施形態ではこのように黄班中心を特徴部位として扱うこととしているが、前述した血管等の例えば病変と関連する部位を特徴部位とすることも可能である。
【0027】
本実施形態では、網膜層境界として、図3における内境界膜1と網膜色素上皮層境界10を検出する。まず、ここでは処理対象であるボリューム画像を構成する各断層画像単位で以下の処理を行う。
【0028】
まず着目する断層画像に平滑化処理を行い、ノイズ成分を除去する。次に断層画像のz方向のエッジの強調処理を行い、エッジ強調画像からエッジ成分を検出する。ここで、内境界膜1は輝度値が低い硝子体領域と輝度値が高い網膜領域の境界であるため、特に強いエッジ成分として現れる。また、網膜色素上皮層境界は、網膜層内でも特に高い輝度で描出される網膜色素上皮層の下側の境界であるため、強いエッジ成分として現れる。そこで、エッジ強調画像からAスキャンラインに沿った輝度プロファイルを生成し、特に大きな輝度の山を2つ検出し、網膜の手前側から順に内境界膜1、網膜色素上皮層境界10として位置を特定する。これを画像内の全てのAスキャンラインについて行い、内境界膜1及び網膜色素上皮層境界10のラインを抽出する。このように検出した層境界のデータを層境界データと呼ぶことにする。
【0029】
また、本ステップで検出する網膜層境界は内境界膜1と網膜色素上皮層境界10に限らない。画像から検出するエッジ成分の大きさを調整することで、内境界膜1、神経線維層2、神経節細胞層3、内網状層4、内顆粒層5、外網状層6、外顆粒層7、外境界膜8、視細胞内節外節外節接合部9、網膜色素上皮層境界10の何れを検出対象とすることも可能である。
【0030】
次に、以下の黄斑中心MCの解剖学的特徴を利用して黄斑中心MCの位置を検出する。
(i)黄斑中心MCは眼底上の窪んだ領域である。
(ii)黄斑中心MCにおいて網膜血管が存在しない。
(iii)黄斑中心MCにおいて神経線維層2が存在しない。
【0031】
本実施形態では、基本的には(i)の特徴を利用して、検出した内境界膜1のz座標が最大となる点を黄斑中心MCとする。但し、黄斑浮腫の症例では黄斑中心が膨らみ、(i)が成り立たない可能性がある。その場合は、(ii)・(iii)の特徴を利用して、網膜血管が存在せず、かつ神経線維層2の層厚が0になる位置を黄斑中心と特定する。網膜血管が存在しない領域はステップS302において検出した血管領域の情報を利用して求められ、神経線維層2の層厚は、本ステップで神経線維層2を抽出することで求められる。
【0032】
そして、検出した層境界データを病変候補検出部207へと送信し、中心窩MCの座標を記憶部204へと送信する。
【0033】
<ステップS305>
ステップS305において、病変候補検出部207は、取得した層境界データに基づき、病変候補を検出する。例えば、黄斑浮腫の症例では、網膜内部に発生した嚢胞などの病変の影響により網膜厚(内境界膜1と網膜色素上皮層境界10の間の層の厚み)が正常に比べると厚くなるという特徴がある。そこで、本実施形態では、まず内境界膜1と網膜色素上皮層境界10の境界データから網膜厚を計算し、正常の網膜厚と比較して特に大きくなる箇所を病変候補として検出する。
【0034】
具体的には、図1におけるx-y平面の各座標において、Aスキャンライン(z軸正の方向)に沿って内境界膜1と網膜色素上皮層境界10間のz座標の差分を計算する。この演算において、x−y平面上の座標(i,j)におけるこの差分値を網膜厚の層厚値ti,jとする。
【0035】
次に、該演算によって求められた層厚値を予め記憶部204に格納された多数の網膜厚の正常値データベースと比較することで網膜厚が異常に厚い部位を検出する。具体的には、x−y平面上の各座標(i,j)を以下の条件に従って、「病変候補領域」・「境界領域」・「正常領域」の3つに分類する。
(i)「病変候補領域」:層厚値ti,jが、網膜厚の正常値のデータ集合に対して値の大きい方から数えて上位1%未満の範囲に含まれる場合
(ii)「境界領域」:層厚値ti,jが(i)を除いて上位5%未満の範囲に含まれる場合
(iii)「正常領域」:層厚値ti,jが(i)・(ii)を除いた残りの範囲(5〜100%)に含まれる場合
【0036】
このように、x−y平面上の座標(i,j)が分類されたマップを重要度マップと呼ぶことにする。本実施形態では、上記重要度マップの「病変候補領域」に属する座標(i,j)に対して、「病変候補領域」ラベルを付与し、「病変候補領域」ラベルが付与された座標とその層厚値ti,jのデータ集合を病変候補情報と呼ぶことにする。従って、病変候補検出部207は、病変候補の検出結果に基づいて眼底平面における病変候補の領域を求める領域算出手段として機能するモジュールも包含する。
【0037】
図4は、網膜厚に異常がある症例において、眼底画像に対して重要度マップを重畳させた図である。図4において、Fは眼底画像、RXYは3Dスキャンの撮像領域、MCは黄斑中心、ARは病変候補領域、BRは境界領域、NRは正常領域を表す。
【0038】
また、本ステップにおいて検出する病変候補は上述の病変候補領域ARに限らない。領域ARとBRを含めた領域を病変候補として検出してもよい。さらに、病変候補を検出するために計算する層厚は網膜厚のみに限らない。例えば、視細胞層に欠損が生じている症例の場合、図3の視細胞内節外節接合部9と網膜色素上皮層境界10の間の層が薄くなる。従って、この場合には、視細胞内節外節接合部9と網膜色素上皮層境界間の層厚が正常に比べて異常に薄くなる領域を病変候補として検出する。その他、病変候補は、層厚値の異常領域に限らない。例えば、黄斑浮腫の症例で見られる嚢胞領域は断層画像上では周囲の網膜層領域に比べ低輝度で描出される。そこで、閾値処理により低輝度領域を検出し、これを病変候補としてもよい。その他、糖尿病網膜症の症例では、血管から漏れ出た脂肪分が沈着することで白斑と呼ばれる領域が発生することがあり、周囲の網膜層領域に比べ高輝度で描出される。そこで、閾値処理により高輝度領域を検出し、これを病変候補としてもよい。
【0039】
そして、病変候補検出部207は、病変候補情報を撮像位置設定部208に送信する。
【0040】
<ステップS306>
ステップS306において、撮像位置設定部208は、記憶部204に格納された中心窩MCの座標と、取得した病変候補情報とに基づき、シングルラインで撮像するための撮像位置を設定する。具体的な設定方法の例を以下に述べる。
【0041】
本実施形態では、第一の方法として病変候補の異常の程度が最大になる位置を含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定する方法を説明する。
図5は、第1の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な設定方法をこのフローチャートに沿って説明する。
【0042】
<ステップS501>
ステップS501において、撮像位置設定部208は、記憶部204から黄斑中心MCの座標を取得する。
【0043】
<ステップS502>
ステップS502において、撮像位置設定部208は、取得した病変候補情報から病変候補の異常の程度が最大となる位置を検出する。具体的には、記憶部に格納された正常値データベースに基づき、座標(i、j)ごとの正常の層厚平均値ni,jを算出し、平均値ni,jと層厚値ti,jとの差分が最大となる座標(i、j)を求め、この座標を点PARとする。
【0044】
<ステップS503>
ステップS503において、撮像位置設定部208は、点MCと点PARの2点を通過するラインを撮像位置として設定する。
【0045】
図6は、病変候補の異常の程度が最大となる位置を通る撮像位置と取得される断層画像を表す図である。図6(a)は網膜厚の重要度マップを表し、AR、BR、NR、MCは、図4と同様のものを表す。PARは病変候補の異常の程度が最大となる位置であり、Lは点MCと点PARの2点を通過するラインである。図6(b)は眼底をラインLの位置で撮像した断層画像を表し、MCとPARは図6(a)と同様のもの、CYは嚢胞を表す。図6(b)では、黄斑中心と、特に網膜が腫れ上がった部位が1枚の断層画像に描写されていることが分かる。
【0046】
これにより、黄斑疾患の診断上重要となる黄斑中心と、病変候補の異常の程度が最大となる位置の両方を含むような断層画像を取得できるように、撮像位置を設定することができる。この方法は、病変候補が局所的に大きく現れるような症例において有効である。図6のような黄斑浮腫で局所的に腫れ上がった箇所がある症例以外でも、例えば、ポリープ状脈絡膜血管症のように、ポリープや異常血管網により網膜色素上皮層が大きく変形する症例においても有効である。
【0047】
次に、第2の方法として病変候補の領域を最も多く含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定する方法を説明する。
【0048】
図7は、第2の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な設定方法をこのフローチャートに沿って説明する。
【0049】
<ステップS701>
ステップS701において、撮像位置設定部208は、記憶部204から黄斑中心MCの座標を取得し、ラインスキャンの撮像位置Lの初期位置として、黄斑中心MCを通り角度θ=0のラインを設定する。さらに、下記で説明する断面積Sの最大値SMAXを0に設定する。
【0050】
<ステップS702>
ステップS702において、撮像位置設定部208は、取得した病変候補情報とステップS701で設定されたラインLの位置をx−y平面上で対応付ける。そして、病変候補情報をx−y平面に対してz方向に層厚値を持つボリュームデータとみなし、ラインLが横切る病変候補のボリュームデータの断面積Sを計算する。このとき、ラインLが病変候補を通過していなければS=0となる。
【0051】
<ステップS703>
ステップS703において、撮像位置設定部208は、計算した断面積Sを断面積の最大値SMAXと比較し、S>SMAXの場合にはステップS704に処理を移し、S≦SMAXの場合にはステップS705に処理を移す。
【0052】
<ステップS704>
ステップS704において、撮像位置設定部208は、断面積の最大値SMAXを値Sに更新し、最大値をとるときのラインLの角度θMAXを現在のラインLの角度θに更新する。
【0053】
<ステップS705>
ステップS705において、撮像位置設定部208は、現在のラインLの角度θを変更する。本実施形態では、例えばθの値に5°加える。
【0054】
<ステップS706>
ステップS706において、撮像位置設定部208は、現在のラインLの角度θの値を参照し、θ≧360°である場合はステップS707に処理を移し、θ<360°の場合はステップS702へと処理を移す。
【0055】
<ステップS707>
ステップS707において、撮像位置設定部208は、病変候補を通る断面積が最大値SMAXをとるときの角度θMAXのラインLをラインスキャンの撮像位置に設定する。
このように、撮像位置設定部208は、病変候補の検出結果に基づいて、眼底と直交する断面に含まれる病変候補の領域を求める演算手段として機能するモジュールを包含している。そして、その結果得られた情報に基づき断面に含まれる病変候補の領域が最大になるようにラインスキャンの撮像位置を設定している。
【0056】
図8は、病変候補を通る断面積が最大となる撮像位置と取得される断層画像を表す図である。図8(a)は網膜厚の重要度マップを表し、AR、BR、NR、MCは図6と同様のものを表し、LはMCを通り病変候補を通る断面積が最大となるラインを表す。図8(b)は眼底をラインLの位置で撮像した断層画像を表し、ARは図8(a)と同様に病変候補領域を表し、MC、CYは図6(b)と同様のものを表す。図8(b)では、黄斑中心と、特に網膜が腫れている領域が大きく広がっている部位が1枚の断層画像に描写されていることが分かる。
【0057】
これにより、黄斑疾患の診断上重要となる黄斑中心を含み、病変候補の領域を最も多く含むような断層画像を取得できるように、撮像位置を設定することができる。この方法は、サイズの大きい病変候補が存在するような症例において有効である。図8のような黄斑浮腫で網膜が腫れている領域が大きく広がった箇所がある症例以外でも、例えば、程度の大きい網膜剥離のように、広範囲に網膜が浮き上がっている症例においても有効である。
【0058】
次に、第3の方法として、病変候補の個数を最も多く含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定する方法を説明する。
【0059】
図9は第3の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。ここで、ラインLが通過する病変候補の個数をN、Nの最大値をNMAXとすると、本手法は、手法2における断面積Sを個数Nに、断面積の最大値SMAXを個数の最大値NMAXに置き換えたものに等しい。従って、具体的な説明は省略する。但し、病変候補の個数がNMAXをとる時の角度θMAXは一意に求まらないことがあり得る。そこで、以下に述べるように、本実施形態ではステップS904において、最大個数NMAXをとるラインの中で通過する病変候補の断面積の総和が最大となるようなラインを選ぶような処理を行う。ステップS904の具体的な処理を以下に説明する。
【0060】
<ステップS904>
ステップS904において、撮像位置設定部208は、ライン上に含まれる病変候補の断面積S(この場合は複数の病変候補各々の断面積の総和)を計算する。そして、断面積の最大値SMAX(初期値は0)と比較し、S>SMAXならば、SMAX=S、NMAX=N、θMAX=θとして値を更新し、S≦SMAXならば値は更新しない。以上の操作により、取得位置設定手段たる撮像位置設定部208は、病変候補の個数の分布に基づいて断層画像の取得位置を設定する。
このように、撮像位置設定部208は、眼底上に設定されたラインLの角度を探索的に変更しながらラインLが通過する病変候補の個数を求めているため、病変候補の検出結果に基づいて病変候補の個数の分布を求める演算手段として機能するモジュールを包含している。そして、その結果得られた情報に基づき断面に含まれる病変候補の個数が最大になるようにラインスキャンの撮像位置を設定している。
【0061】
図10は、病変候補の個数を最も多く含む撮像位置と取得される断層画像を表す図である。図10(a)は網膜厚の重要度マップを表し、BR、NR、MCは図6と同様のものを表し、LはMCを通り病変候補の個数を最も多く含むラインを表す。また、AR1〜AR3は、それぞれ異なる病変候補領域を表す。図10(b)は眼底をラインLの位置で撮像した断層画像を表し、AR1〜AR3は図10(a)と同様に異なる病変候補領域を表し、MC、CYは図6(b)と同様のものを表す。図10(b)では、黄斑中心と3箇所の網膜が腫れている部位が1枚の断層画像に描写されていることが分かる。
【0062】
これにより、黄斑中心を含み、病変候補の個数をできるだけ多く含む断層画像を取得できるように、撮像位置を設定することができる。この方法は、比較的小さな病変候補が多く存在するような症例において有効である。図10のような黄斑浮腫で網膜が腫れている領域が散在する症例以外にも、例えば、糖尿病網膜症などの症例で、白斑領域が広範囲に多数分布しているような場合においても有効である。この場合は、ステップS305において、病変候補として白斑領域を抽出することとなる。
【0063】
また、以上のように、黄斑中心と病変部位の両方を含むように撮像位置を設定する方法を3種類説明したが、必ずしも黄斑中心を含む方法に限定される必要はなく、上述の方法からラインが黄斑中心を通るという条件を省いた方法をとっても良い。この場合、病変候補の特徴を最も良く捉えることのみに特化した撮像位置が設定されることとなる。
【0064】
次に、撮像位置設定部208は、設定したラインスキャンの位置情報を撮像時のパラメータとして断層画像撮像部203と表示部209へと送信する。
【0065】
<ステップS307>
ステップS307において、表示部209は、眼底追跡部202から実時間で撮像される眼底画像B及び位置合わせパラメータを取得し、さらに、撮像位置設定部208から取得したシングルラインの撮像位置情報を取得する。そして、不図示のモニタ上に、シングルラインの撮像位置情報を眼底画像Bに重畳させて表示する。
【0066】
このとき、シングルラインの撮像位置情報は、ステップS303で撮像される3Dスキャンのボリュームデータに基づいて求められたものであり、眼底画像Aの座標系と対応付いている。そこで、位置合わせパラメータを用いてラインスキャンの位置情報を眼底画像Bの座標系に変換することで、眼底画像Bと座標系を一致させる。
【0067】
以上述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、検出結果に基づいてその特徴を最も良く捉えるように、次に撮像するシングルラインの撮像位置を自動的に決定する。これにより、病変候補の詳細観察に適した断層画像を、操作者が手動で病変候補を探す手間をかけずに容易に撮像することができる。また、操作者による病変候補の見落としを防ぐことができる。さらに、臨床現場において3Dスキャンとラインスキャンが併用される場合は、3Dスキャンで得られたボリューム画像の情報を、ラインスキャンの撮像位置決定のために有効活用することができる。
【0068】
[実施例2]
実施例1では、シングルラインの撮像位置を自動設定する方法を述べた。本実施例では、実施例1の撮像位置設定部208において、複数のシングルラインからなるマルチラインの撮像位置を設定する場合を説明する。従来の撮像位置の設定方法では、病変候補の範囲に基づいて撮像位置を設定するため、空間的に疎なマルチラインの撮像位置を設定する場合、病変候補の広がりはカバーできるが、必ずしも病変に関する診断に有益な断層画像を取得できるとは限らなかった。そこで、本実施形態では、病変候補の特徴を捉え、かつ病変候補の広がりや分布をカバーできるようにマルチラインの撮像位置を自動設定する。
【0069】
装置の構成については実施例1と同様であるため、説明は省略する。但し、図3の撮像位置設定部208が実施例1ではシングルラインの撮像位置を設定したのに対し、実施例2ではマルチラインの撮像位置を設定する点が異なる。
【0070】
図11は、本実施形態のフローチャートであり、断層画像撮像装置10が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1101〜1105とステップS1107は、図2におけるステップS301〜305とステップS307の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0071】
<ステップS1106>
ステップS1106において、撮像位置設定部208は、記憶部204に格納された中心窩(黄班中心)MCの座標と、取得した病変候補情報とに基づき、マルチラインスキャンを実行するための撮像位置を設定する。本実施形態では、マルチラインの本数を5本として具体的な設定方法の例を以下に述べる。
【0072】
本実施形態では、第一の方法として病変候補の異常の程度が最大になる位置を含む断層画像を取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定する方法を説明する。この方法は、実施例1のステップS306における第一の方法と同様、病変候補が局所的に大きく変化するような症例を対象とする。
【0073】
図12は、第一の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1201、1202は、図5におけるS501、502と同様であるため、説明は省略する。
【0074】
<ステップS1203>
ステップS1203において、撮像位置設定部208は、点PARと点MCをそれぞれ通る2本のラインL1とL2を水平方向に配置する。
【0075】
<ステップS1204>
ステップS1204において、撮像位置設定部208は、病変候補の領域が黄斑中心を含むか否かを判定し、黄斑中心を含む場合は処理をステップS1205に移し、含まない場合は処理をステップS1206に移す。撮像位置設定部208は、このように眼底における病変候補の領域が特徴部位である黄班中心を含むか否かを判定する判定手段として機能するモジュールを含む。
【0076】
<ステップS1205>
ステップS1205において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を病変候補領域に合わせて水平に配置する。具体的には、まず、x−y平面における病変候補領域のy方向(上下方向)の範囲をRYとする。次に、範囲RY内に、水平ラインL1を含めて等間隔となるように、ラインL3〜5を均等に配置する。このとき、範囲RYが非常に大きいとラインの配置間隔が疎になり過ぎる。そこで、RYの幅をdARとして、dARの値に上限値dMAXを持たせる。そして、実際の幅dARがdMAXを超えた場合は幅をdMAXに修正し、L1を基準とするdMAXの幅を持つ範囲に、ラインL3〜5を等間隔に配置する。本実施形態では、dMAXとして3.0mmを採用する。
【0077】
図13は、病変候補の異常の程度が最も大きい箇所を通るマルチラインの撮像位置を表す図である。図13(a)は病変候補領域が黄斑中心を含まない場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、ARは病変候補領域、BRは境界領域、NRは正常領域、MCは黄斑中心、PARは病変候補の異常の程度が最も大きい位置を表す。また、L1は点PARを通る水平ライン、L2は黄斑中心を通る水平ライン、dARは病変候補領域のy方向の幅、L3〜5はL1を基準にdARの範囲に配置された水平ラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補の異常の程度の最大点を含み、かつ病変候補領域の全体をカバーするように配置されていることが分かる。
【0078】
<ステップS1206>
ステップS1206において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を黄斑中心の周りに水平方向に配置する。具体的には、点MCを通る水平ラインL2を基準とするy方向(上下方向)に所定の幅dMCを持つ範囲に、ラインを等間隔に配置する。本実施形態では、上下幅dMCとして1.0mmを採用する。
【0079】
図13(b)は病変候補領域が黄斑中心を含む場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MC、PAR、L1、L2は図13(a)と同様のものを表す。また、dMCは黄斑中心の周りに設定された所定幅、L3〜L5はL2を基準にdMCの範囲に配置された水平ラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補の異常の程度の最大点を含み、かつ黄斑中心の周りをカバーするように配置されていることが分かる。
【0080】
これにより、黄斑中心と病変候補の異常の程度が最大となる位置をそれぞれ含む断層画像を一般的な撮像角度で取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。さらに、黄斑中心が病変候補領域に含まれない場合は、病変候補領域を均等に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。一方、黄斑中心が病変候補領域に含まれる場合は、黄斑中心の状態観察が重要となるため黄斑中心の周りを詳細に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。
【0081】
次に、第2の方法として病変候補の領域を最も多く含む断層画像を取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定する方法を説明する。この方法は、実施例1のステップS306における第2の方法と同様、サイズの大きい病変候補が存在するような症例を対象とする。
【0082】
図14は、第2の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1401、1404は、図12におけるS1201、1204と同様であるため、説明は省略する。
【0083】
<ステップS1402>
ステップS1402において、撮像位置設定部208は、病変候補を通る断面積が最大になるラインL1を検出する。本実施形態では、病変候補の重心を通り、かつ病変候補を通る断面積が最大になるラインを検出する。この処理は、図7のシングルライン撮像位置を設定する第2の方法において、黄斑中心を病変候補の重心に置き換えた処理に等しいので、具体的な説明は省略する。但し、ラインL1は必ずしも病変候補の重心を通る必要はなく、病変候補の異常の程度が最大となる位置を通るラインとしても良い。
【0084】
<ステップS1403>
ステップS1403において、撮像位置設定部208は、点MCを通り、ラインL1に平行なラインL2を配置する。
【0085】
<ステップS1405>
ステップS1405において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を病変候補領域に合わせてL1と平行に配置する。この処理は、ステップS1205において、配置するラインの角度を水平ではなくL1と平行にするという処理に置き換えたものに等しいので、具体的な説明は省略する。
【0086】
図15は、病変候補領域を最も多く含むマルチラインの撮像位置を表す図である。図15(a)は病変候補領域が黄斑中心を含まない場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MCは図13(a)と同様のものを表す。また、L1は通過する病変候補領域の断面積が最大になるライン、L2は黄斑中心を通りL1に平行に配置されたライン、dARはラインL1に対して垂直な方向の病変候補領域の幅、L3〜5はL1を基準にdARの範囲にL1と平行に配置されたラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補領域を最も多く含み、かつ病変候補領域の全体をカバーするように配置されていることが分かる。
【0087】
<ステップS1406>
ステップS1406において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を黄斑中心の周りにL1と平行に配置する。この処理は、ステップS1206において、配置するラインの角度を水平ではなくL1と平行にするという処理に置き換えたものに等しいので、具体的な説明は省略する。
【0088】
図15(b)は病変候補領域が黄斑中心を含む場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MC、L1、L2は図15(a)と同様のものを表す。また、dMCはラインL1に対して垂直な方向に黄斑中心の周りに設定された所定幅、L3〜L5はL2を基準にdMCの範囲にL2と平行に配置されたラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心と病変候補領域を最も多く含み、かつ黄斑中心の周りをカバーするように配置されていることが分かる。
【0089】
これにより、黄斑中心を含む断層画像と病変候補領域を最も多く含む断層画像をそれぞれ取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。さらに、黄斑中心が病変候補領域に含まれない場合は、より診断上重要となる病変候補の全体が観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。一方、黄斑中心が病変候補領域に含まれる場合は、黄斑中心の状態観察が重要となるため黄斑中心の周りを詳細に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。
【0090】
次に、第3の方法として、病変候補の個数を最も多く含むように、マルチラインの撮像位置を設定する方法を説明する。この方法は、実施例1のステップS306における第3の方法と同様、比較的小さな病変候補が多く存在するような症例を対象とする。
【0091】
図16は、第3の方法の処理手順を表すフローチャートであり、具体的な方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1601〜1604、1606は、図12におけるS1201〜1204、1206と同様であるため、説明は省略する。
【0092】
<ステップS1605>
ステップS1605において、撮像位置設定部208は、残りのラインL3〜5を病変候補の個数に合わせて配置する。具体的には、病変候補ごとに、異常の程度が最大となる位置をそれぞれ検出する。但し、全ての病変候補の中で異常の程度が最大となる位置については、ステップS1602で検出しているため、これを除いて最大3つまでの病変候補について検出する。そして、検出した位置を病変候補の異常の程度が大きい順に点PAR1、PAR2、PAR3、とすると、ラインL3〜5を、点PAR1〜点PAR1をそれぞれ通り角度が水平となるように配置する。
【0093】
図17は、最も多くの個数の病変候補領域を含むマルチラインの撮像位置を表す図である。図17(a)は病変候補領域が黄斑中心を含まない場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図であり、AR、BR、NR、MCは図13(a)と同様のものを表す。また、L1及びL3〜5は病変候補ごとに異常の程度が最大となる位置を通過する水平ライン、L2は黄斑中心を通る水平ラインを表す。この図より、マルチラインが、黄斑中心とできるだけ多くの病変候補領域を含むように水平に配置されていることが分かる。
【0094】
図17(b)は病変候補領域が黄斑中心を含む場合の網膜厚の重要度マップ上にマルチラインの撮像位置を重畳した図である。この図は図13(b)と全く同じであるので、説明は省略する。
【0095】
これにより、黄斑中心を含み、かつ病変候補の個数を最も多く含んだ上で一般的な撮像角度で取得できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。さらに、黄斑中心が病変候補領域に含まれない場合は、できるだけ多くの病変を観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。一方、黄斑中心が病変候補領域に含まれる場合は、黄斑中心の周りを詳細に観察できるように、マルチラインの撮像位置を設定できる。
【0096】
また、以上のように、マルチラインを全て平行にのみ配置する方法を説明したが、必ずしもこの方法に限定する必要はない。例えば、図13において、マルチラインを水平に配置する箇所を、全て垂直に置き換えたラインを新たに追加しても良い。これにより、マルチラインが十字に交差した状態で撮像位置を配置できる。これにより、黄斑中心や病変候補の状態をより詳しく把握することができる。
【0097】
以上述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、その特徴を最も良く捉えかつ病変候補の広がりや分布をカバーするように、次に撮像するマルチラインの撮像位置を自動的に決定する。これにより、病変候補に関する診断に有益な複数の断層画像を、操作者が手動で病変候補を探す手間なく撮像することができる。また、操作者による病変候補の見落としを防ぐことができる。
【0098】
[実施例3]
実施例1及び2では、シングルライン及びマルチラインの撮像位置を自動設定する方法をそれぞれ述べた。本実施例では、シングルラインとマルチラインの撮像方法を状況に応じて自動的に切替え、撮像位置を自動設定する方法を説明する。病変候補が黄斑中心を含む場合は、病変候補の特徴が現れる断層画像において、病変候補が黄斑中心に及ぼす影響を互いに対応付けて観察できることは重要である。一方、病変候補領域が黄斑中心を含まない場合は、基本的には病変候補と黄斑中心との関連性はないため、同一断層画像内で観察できる必要性はない。さらに、眼底上での断層画像の撮像角度が水平や垂直のような一般的な撮像角度でないと、操作者にとって慣れない撮像角度で取得された断層画像を観察することになってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、病変候補が黄斑中心を含む場合は、病変候補の特徴と黄斑中心の両方が描写されるようにシングルラインの撮像位置を設定し、含まない場合は、病変候補の特徴と黄斑中心が別々に描写されるようにマルチラインの撮像位置を水平に設定する。
【0099】
装置の構成については実施例1と同様であるため、説明は省略する。但し、図1の撮像位置設定部208が実施例1ではシングルラインの撮像位置のみを設定したのに対し、実施例3ではシングルラインとマルチラインの撮像方法を切替えて撮像位置を設定する点が異なる。
【0100】
図18は、本実施形態のフローチャートであり、断層画像撮像装置10が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1801〜1805とステップS1807は、図2におけるステップS301〜305とステップS307の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0101】
<ステップS1806>
ステップS1806において、撮像位置設定部208は、記憶部204に格納された中心窩(黄班中心)MCの座標と、取得した病変候補情報とに基づき、シングルラインで撮像するかマルチラインで撮像するかを判別する。そして、シングルラインと判断された場合は、シングルラインスキャンを実行するための撮像位置を設定する。マルチラインと判断された場合は、マルチラインスキャンを実行するための撮像位置を設定する。本実施形態では、マルチラインの本数を2本として具体的な設定方法の例を以下に述べる。
【0102】
図19は、撮像方法をシングルラインとマルチラインの間で切り替えて撮像位置を設定する方法を表すフローチャートであり、具体的な設定方法をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS1901、1902は、図5におけるS501、502と同様であるため、説明は省略する。
【0103】
<ステップS1903>
ステップS1903において、撮像位置設定部208は、病変候補の領域が黄斑中心を含むか否かを判定し、黄斑中心を含む場合は処理をステップS1904に移し、含まない場合は処理をステップS1905に移す。
【0104】
<ステップS1904>
ステップS1904において、撮像位置設定部208は、点PARと点MCをそれぞれ通る2本のラインL1とL2を水平方向に配置する。
【0105】
図20は、シングルラインとマルチラインとの間で撮像方法を切り替えて設定した撮像位置を表す図である。図20(a)は、撮像方法としてマルチラインが選択されたときの撮像位置が設定された図であり、ARは病変候補領域、BRは境界領域、NRは正常領域、MCは黄斑中心、PARは病変候補の異常の程度が最も大きい位置を表す。また、L1は点PARを通る水平ライン、L2は黄斑中心を通る水平ラインを表す。この図より、病変候補の領域が黄斑中心を含まない場合は、病変候補と黄斑中心がそれぞれ異なる2本のラインスキャンで撮像されることが分かる。
【0106】
これにより、病変候補を含む断層画像と黄斑中心を含む断層画像をそれぞれ、操作者が見慣れた一般的な撮像角度で撮像された画像として観察することができる。
【0107】
<ステップS1905>
ステップS1905において、撮像位置設定部208は、点PARと点MCの両方を通るラインLを配置する。
【0108】
図20(b)は、撮像方法としてシングルラインが選択されたときの撮像位置を表す図であり、AR、BR、NR、MC、PARは図20(a)と同様のものを表す。また、Lは点PARと点MCの両方を通るラインを表す。この図より、病変候補の領域が黄斑中心を含む場合は、病変候補と黄斑中心が同一のラインに含まれるようにシングルラインで撮像されることが分かる。
【0109】
これにより、1枚の断層画像において、病変候補と黄斑中心の状態を互いに対応付けて観察することができる。
【0110】
以上、述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、病変候補領域と黄斑中心の位置関係に基づき撮像方法をシングルラインとマルチラインから選択し、選択された撮像方法で撮像位置を自動設定する。これにより、操作者は病変候補と黄斑中心に関する断層画像を、状況に応じて病変候補の詳細観察に適した枚数で観察することができる。
【0111】
[実施例4]
実施例1から3では、ボリューム画像を撮像し、断層画像から検出した病変候補に基づいてラインスキャンの撮像位置を自動設定する方法を述べた。本実施例では、ラインスキャンの撮像位置ではなく、ボリューム画像から断層画像を抽出してモニタに表示する際の眼底上の位置を自動設定し、画像を表示する方法を説明する。従来は、ボリューム画像を撮像した後、モニタ上で観察したい断層画像を決定する際、操作者はボリューム画像から適切なスライスを探すという手間がかかっていた。そこで、本実施形態では、ボリューム画像を撮像し、断層画像から検出した病変候補を解析することで、病変候補の特徴を最も良く捉えた断層画像を表示できるように、眼底上の表示位置を自動設定する。
【0112】
図21は、本実施形態に係る診断支援装置20の機能構成を示したものである。図中の30は断層画像取得装置、2101は断層画像取得部、2102は記憶部、2103は画像解析部、2106は表示位置設定部、2107は表示部である。また、画像解析部2103は、眼部特徴検出部2104と病変候補検出部2105からなる。なお、表示位置設定部2106は、実施例1から3における取得位置設定手段と同様の操作により眼底の広域画像に含まれる眼底の断層画像について、その表示位置を設定する機能を有したモジュールを含む。
【0113】
図22は、本実施形態のフローチャートであり、診断支援装置20が実行する具体的な処理手順をこのフローチャートに沿って説明する。但し、ステップS2202、2203は、図3におけるステップS304、305の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0114】
<ステップS2201>
ステップS2201において、断層画像取得部2101は、不図示の操作者の指示により断層画像撮像装置30からボリューム画像を取得し、記憶部2102及び眼部特徴検出部2104へと送信する。
【0115】
<ステップS2204>
ステップS2204において、表示位置設定部2106は、病変候補検出部2105から取得した病変候補情報に基づき断層画像の表示位置を自動設定する。このとき、本実施形態の設定方法は、実施例1におけるステップS306で設定されるシングルラインの撮像位置を、断層画像の表示位置に置き換えたものに等しいため、具体的な説明は省略する。
【0116】
但し、本ステップで決定する表示位置は一つとは限らない。例えば、ステップS306に記載された3種類の撮像位置設定方法と同様の手法を用いて、3種類の表示位置を設定する方式を取ってもよい。
【0117】
<ステップS2205>
ステップS2205において、表示部2107は、記憶部2102から取得したボリューム画像における、表示位置設定部2106で設定された断層画像の表示位置情報に対応する断層画像を表示する。
【0118】
このとき、表示位置設定部2106で設定された表示位置が一つの場合は、その位置に対応する断層画像をそのまま表示する。一方、設定された表示位置が複数である場合は、設定された複数の表示位置を表示して、操作者が選択できるようにする。但し、複数の表示位置のうち、何れかを初期に表示する位置として予め設定しておき、最初は初期設定された表示位置で表示させ、その後に他の表示位置を選択できるようにしてもよい。
【0119】
以上、述べた構成によれば、ボリューム画像から病変候補を検出し、その特徴を最も良く捉えるように、表示する断層画像の表示位置を自動的に決定し、断層画像を表示する。これにより、病変候補の詳細観察に適した断層画像をボリューム画像から探しだす手間を省くことができ、病変候補の見落としも防ぐことができる。
【0120】
(その他の実施形態)
実施例1から4は、ボリューム画像から病変候補を検出し、撮像または表示する断層画像の位置を決定したが、病変候補を検出する対象はボリューム画像に限らない。例えば、2D眼底画像から病変候補を検出してもよい。より具体的には、網膜血管の異常である毛細血管瘤は、2D眼底画像上に描出されるため、これを病変候補として検出する。まず、2D眼底画像から実施例1のステップS302に記載した手法で血管領域を抽出した後、その血管径を正常値と比較することにより所定以上の領域を毛細血管瘤として検出する。そして、毛細血管瘤の特徴が最も良く現れる断層画像が観察できるように、撮像または表示する断層画像の位置を決定する。これにより、ラインスキャンの位置を決定する場合は、予め3Dスキャン画像を撮像する手間を省くことができる。また、断層画像をモニタに表示する際の眼底上の位置を決定する場合は、眼底画像を解析することで、ボリューム画像を解析するよりも計算コストを削減することができ、断層画像を表示するまでの時間を短縮することができる。
【0121】
さらに、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0122】
10 撮像支援装置
201 指示取得部
202 眼底追跡部
203 断層画像撮像部
204 記憶部
205 画像解析部
206 眼部特徴検出部
207 病変候補検出部
208 撮像位置設定部
209 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底の広域画像を取得する取得手段と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算手段と、
前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項2】
前記取得位置設定手段は、眼底の断層画像の撮像位置を前記取得位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の眼科診断支援装置。
【請求項3】
前記取得位置設定手段は、前記広域画像に含まれる眼底の断層画像の表示位置を前記取得位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の眼科診断支援装置。
【請求項4】
前記取得位置設定手段は、眼底上の少なくとも一つの線分を断層画像の取得位置として設定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の眼科診断支援装置。
【請求項5】
前記病変候補の検出結果に基づいて、眼底における該病変候補の領域を求める領域算出手段をさらに備え、
前記取得位置設定手段は、前記病変候補の異常の程度と前記病変候補の領域とに基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の眼科診断支援装置。
【請求項6】
前記広域画像を解析して眼部の特徴部位を検出する眼部特徴検出手段を更に備え、
前記取得位置設定手段は、前記病変候補の異常の程度と前記特徴部位の検出結果とに基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の眼科診断支援装置。
【請求項7】
眼底における前記病変候補の領域が前記特徴部位を含むか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記特徴部位を含むと判定した場合は、更に眼底における該特徴部位の領域に基づいて、 眼底の断層画像の取得位置を設定し、
前記特徴部位を含まないと判定した場合は、更に眼底における前記病変部位の領域に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する
ことを特徴とする請求項6に記載の眼科診断支援装置。
【請求項8】
前記取得位置設定手段は、前記病変候補の領域が前記特徴部位を含むか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記特徴部位を含むと判定した場合は、眼底上の一つの線分を取得位置に設定し、
前記特徴部位を含まないと判定した場合は、眼底上の複数の線分を取得位置に設定する
ことを特徴とする請求項6に記載の眼科診断支援装置。
【請求項9】
前記取得手段は、広域画像が、眼底の2次元画像または眼底のボリューム画像の何れか一つであることを特徴とする請求項1から8に記載の眼科診断支援装置。
【請求項10】
眼底の広域画像を取得する取得手段と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、眼底と直交する断面に含まれる該病変候補の領域を求める演算手段と、
前記病変候補の領域に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項11】
眼底の広域画像を取得する取得手段と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の個数の分布を求める演算手段と、
前記病変候補の個数の分布に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項12】
眼底の広域画像を取得する取得工程と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出工程と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算工程と、
前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定工程と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援方法。
【請求項13】
眼底の広域画像を取得する取得工程と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出工程と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、眼底と直交する断面に含まれる該病変候補の領域を求める演算工程と、
前記病変候補の領域に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定工程と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項14】
眼底の広域画像を取得する取得工程と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出工程と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の個数の分布を求める演算工程と、
前記病変候補の個数の分布に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定工程と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援方法。
【請求項15】
コンピュータを請求項1から11の何れか1項に記載の眼科診断支援装置として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項1】
眼底の広域画像を取得する取得手段と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算手段と、
前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項2】
前記取得位置設定手段は、眼底の断層画像の撮像位置を前記取得位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の眼科診断支援装置。
【請求項3】
前記取得位置設定手段は、前記広域画像に含まれる眼底の断層画像の表示位置を前記取得位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の眼科診断支援装置。
【請求項4】
前記取得位置設定手段は、眼底上の少なくとも一つの線分を断層画像の取得位置として設定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の眼科診断支援装置。
【請求項5】
前記病変候補の検出結果に基づいて、眼底における該病変候補の領域を求める領域算出手段をさらに備え、
前記取得位置設定手段は、前記病変候補の異常の程度と前記病変候補の領域とに基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の眼科診断支援装置。
【請求項6】
前記広域画像を解析して眼部の特徴部位を検出する眼部特徴検出手段を更に備え、
前記取得位置設定手段は、前記病変候補の異常の程度と前記特徴部位の検出結果とに基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の眼科診断支援装置。
【請求項7】
眼底における前記病変候補の領域が前記特徴部位を含むか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記特徴部位を含むと判定した場合は、更に眼底における該特徴部位の領域に基づいて、 眼底の断層画像の取得位置を設定し、
前記特徴部位を含まないと判定した場合は、更に眼底における前記病変部位の領域に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する
ことを特徴とする請求項6に記載の眼科診断支援装置。
【請求項8】
前記取得位置設定手段は、前記病変候補の領域が前記特徴部位を含むか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記特徴部位を含むと判定した場合は、眼底上の一つの線分を取得位置に設定し、
前記特徴部位を含まないと判定した場合は、眼底上の複数の線分を取得位置に設定する
ことを特徴とする請求項6に記載の眼科診断支援装置。
【請求項9】
前記取得手段は、広域画像が、眼底の2次元画像または眼底のボリューム画像の何れか一つであることを特徴とする請求項1から8に記載の眼科診断支援装置。
【請求項10】
眼底の広域画像を取得する取得手段と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、眼底と直交する断面に含まれる該病変候補の領域を求める演算手段と、
前記病変候補の領域に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項11】
眼底の広域画像を取得する取得手段と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出手段と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の個数の分布を求める演算手段と、
前記病変候補の個数の分布に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定手段と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項12】
眼底の広域画像を取得する取得工程と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出工程と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の異常の程度を求める演算工程と、
前記病変候補の異常の程度に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定工程と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援方法。
【請求項13】
眼底の広域画像を取得する取得工程と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出工程と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、眼底と直交する断面に含まれる該病変候補の領域を求める演算工程と、
前記病変候補の領域に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定工程と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援装置。
【請求項14】
眼底の広域画像を取得する取得工程と、
前記広域画像を解析して眼底における病変候補を検出する病変候補検出工程と、
前記病変候補の検出結果に基づいて、該病変候補の個数の分布を求める演算工程と、
前記病変候補の個数の分布に基づいて、眼底の断層画像の取得位置を設定する取得位置設定工程と、
を備えることを特徴とする眼科診断支援方法。
【請求項15】
コンピュータを請求項1から11の何れか1項に記載の眼科診断支援装置として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体。
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図1】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図13】
【図15】
【図17】
【図20】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図1】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図13】
【図15】
【図17】
【図20】
【公開番号】特開2013−31527(P2013−31527A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168603(P2011−168603)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
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