説明

眼鏡の丁番構造および眼鏡

【課題】部品点数の削減と軽量化を可能にした縁無し眼鏡の丁番構造およびこの丁番構造を備えた縁無し眼鏡を提供する。
【解決手段】眼鏡レンズ5の外側縁面5c−1に、周方向に長い扁平な凹陥部27を形成する。レンズ保持部材23は、可撓性を有する薄い材料によって形成され、軸受部23Aとレンズ保持部23B(29a、29b、30)を一体に有する。軸受部23Aは、外周に開放する平面視C字状の筒体に形成されている。レンズ保持部23Bは、レンズ5の凹陥部27に差し込まれ、接着剤によって固定される。軸受部23Aは、軸部24Aが挿通されると、内側に弾性変形されて小径化し、軸部24Aを押圧し保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縁無し眼鏡におけるレンズ保持機能を備えた丁番構造およびこの丁番構造を備えた眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量で、目立たず、リムにより視界が妨げられない等の利点から、縁無しタイプの眼鏡(以下、縁無し眼鏡ともいう)が注目されている。縁無し眼鏡の一例である特許文献1に記載の眼鏡について図を参照して説明する。図6は特許文献1に記載の縁無し眼鏡の全体図であり、図7はそのレンズ保持構造の部分拡大図である。この縁無し眼鏡15は、眼鏡フレームとこの眼鏡フレームに取り付けられる左右一対の眼鏡レンズ(以下、レンズともいう)5、5とからなり、この眼鏡フレームは、前記左右のレンズ5、5の両内側を連結するブリッジ13と、このブリッジ13に取り付けられた左右一対の鼻当てパッド14、14と、前記左右のレンズ5、5の両外側にそれぞれ取り付けられた智7と、この智7に丁番4を介して開閉自在に連結されたテンプル3等によって構成されている。
【0003】
眼鏡レンズ5の縁面5cのうち、外側(テンプル側)の部分5c−1と内側の部分(ブリッジ側)5c−2には不貫通穴11と溝12が形成され、レンズを保持するレンズ保持部材である智7とブリッジ13にはピン16とストッパ17が形成されている。そして、前記ピン16を前記不貫通穴11に、前記ストッパ17を前記溝12に嵌合させた状態で接着剤により固定することにより、レンズ保持部材である智7とブリッジ13がレンズ5をその縁面で直接保持している。
【0004】
前記丁番4は、一般に智7の後端部内面に固定された連結具8と、テンプル3の前端部内面に固定された連結具9と、これらの連結具8、9を相対回動可能に連結する丁番ねじ10の3部材で構成されている。それぞれの連結具8,9には前記丁番ねじが挿通される孔を備えたコマ部が1つもしくは複数形成され、それぞれの連結具のコマ部同士をそれぞれの孔が一致するように組み合わせた状態で、その孔に丁番ねじ4を挿通して回動自在にねじ止めされている。これによりテンプル3は智7に対して開閉可能に連結されている。智7の後端とテンプル3の前端にはそれぞれ合口18、19が形成されており、テンプルが完全に開いた状態では、それぞれの合口が接触して、それ以上開かないよう回動範囲を規制している。
【0005】
【特許文献1】特許第3447462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されている従来の縁無し眼鏡は、丁番構造とレンズ保持構造を実現するために、レンズ縁面5cには穴11や溝12などの加工を施すとともに、智7にはその一端にレンズ保持部(ピン16、ストッパ17)を形成し他端に連結具8と合口18を形成し、テンプル3にはその前端に連結具9と合口19を形成する必要がある。また、連結具8,9を連結するための丁番ねじも必要である。このため、部品点数が多く、また、これら部品を形成するために必要な加工や作業も多かった。
【0007】
また、特に縁無し眼鏡においては、軽量化の観点や眼鏡フレームを目立たなくして装用者の顔の印象に影響を与えないようにする観点から、智やテンプルを細い線材で形成することが望まれる場合がある。しかしながら、保持構造や丁番構造の小型化には限界があるため、智やテンプルを細い線材で形成しても、保持構造や丁番構造分だけ眼鏡フレームが重くなったり、保持構造や丁番構造が線材部分に比べて大きく目立ってしまったりする場合があった。
【0008】
また、従来のように丁番ねじ10を用いる丁番構造においては、テンプル3の開閉動作が繰り返されることにより丁番ねじがゆるんでくるため、締め直す作業が必要であった。
【0009】
本発明は、上記したような従来の問題および要請に応えるべくなされたもので、その目的とするところは、レンズ保持機能と丁番機能を、構造簡易で、部品点数が少なく、軽量化可能に実現できる縁無し眼鏡の丁番構造およびこの丁番構造を備えた縁無し眼鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る眼鏡の丁番構造は、眼鏡レンズの縁面に取り付けられたレンズ保持部材にテンプルを回動可能に取り付けるための縁無し眼鏡の丁番構造において、前記眼鏡レンズの縁面には、不貫通穴である凹陥部が形成され、前記テンプルの前端部には、前記レンズ保持部材によって回動可能に軸支される軸部が設けられており、前記レンズ保持部材は、前記凹陥部に挿入されて固定されるレンズ保持部と、前記テンプルの軸部を回動可能に軸支する軸受部とを一体に有し、前記レンズ保持部材の軸受部は、軸線方向両端が開放するとともに、外周が軸線方向に分断された外周側開放部を有する筒体に形成され、前記レンズ保持部材のレンズ保持部は、前記軸受部の外周側開放部を形成する二つの開放端縁からそれぞれ軸受部の軸線方向に平行に延設された薄板状の保持片からなり、前記それぞれの開放端縁に設けられた保持片は、軸受部の軸線方向において互いに重なり合わないように形成されているものである。
【0011】
また、本発明に係る眼鏡の丁番構造は、前記レンズ保持部材のレンズ保持部は、少なくとも一方の開放端縁に設けられた保持片が軸受部の軸線方向において離間して設けられた複数の保持片からなり、他方の開放端縁に設けられた保持片が、前記一方の開放端縁に設けられた複数の保持片の間にくるように形成されているものである。
【0012】
また、本発明に係る眼鏡の丁番構造は、前記レンズ保持部材は、弾性を有する透明な樹脂によって形成されているものである。
【0013】
また、本発明に係る眼鏡の丁番構造は、前記テンプルの前端部は、前記軸部の一方の端部に、眼鏡レンズの縁面に係合しテンプルの外側への回動を規制する回動規制部が設けられているものである。
【0014】
また、本発明に係る眼鏡の丁番構造は、前記テンプルの前端部は、前記軸部の他方の端部に、前記テンプルを開いた状態において両方のテンプルの間隔を広げるように延長する幅方向延長部が設けられているものである。
【0015】
また、本発明に係る眼鏡の丁番構造は、前記テンプルの前端部は、一本の線材が屈曲してなる形状をしているものである。
【0016】
さらに、本発明に係る眼鏡は、上記の丁番構造を備えているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レンズ保持部材に設けた軸受部によってテンプルの前端に設けた軸部を回動可能に軸支しているので、連結具を設けたり、ねじで両部材を連結する必要がなく、部品点数の削減および軽量化を実現することができる。
【0018】
また、本発明においては、レンズ保持部材を眼鏡レンズに直接固定しているので、縁無し眼鏡に適用することができる。また、テンプルの前端の回動部は線状材が屈曲した形状をしているため、部品点数および組立工数を一層削減することができる。また、軸受部の弾性変形により軸受部と軸部との間に摺動摩擦抵抗を付与しているので、テンプルのふらつきを防止することができる。また、テンプルは軸部より折り畳まれるので、眼鏡のフロント部背面に折り畳まれた状態において、眼鏡の外側に突出せず、フロント部の幅を通常の眼鏡に比べて小さくすることができる。
【0019】
また、レンズ保持部材を透明なプラスチックで形成しているので、レンズ保持部をレンズに形成した凹陥部に差し込んでも目立たなくできる。また、レンズの縁面とテンプル先端部に設けた回動規制部との接触によりテンプルの開放の上限を規制しているので、テンプルの回動範囲の規制を簡易が構造で実現できる。
【0020】
また、本発明においては、部品点数が少なく軽量な眼鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る丁番構造を採用した縁無し眼鏡の一実施の形態を示す平面図、図2は丁番構造の斜視図、図3は丁番構造を構成するレンズ保持部材の自然な状態における斜視図、図4は丁番構造の分解斜視図、図5(a)〜(c)は本発明に係る丁番構造を採用した縁無し眼鏡におけるテンプルの開閉動作を説明するための図である。
【0022】
これらの図において、縁無し眼鏡20は、左右一対の眼鏡レンズ(以下、レンズと称する)5、5と、これらレンズ5、5を保持する眼鏡フレームとからなり、この眼鏡フレームは、これらのレンズ5、5の両内側を連結するブリッジ21と、このブリッジ21に取付けられた左右一対の鼻当てパッド22、22と、各レンズ5の縁面5cのテンプル側(外側)縁面5c−1を保持する左右一対からなるレンズ保持部材23、23と、各レンズ保持部材23によって開閉可能に軸支された左右一対からなるテンプル24、24を備えている。
【0023】
レンズ5は、プラスチック(合成樹脂)によって製作されたレンズ(例えば、メニスカスレンズ)からなり、レンズ前面(凸側光学面)5a、レンズ後面(凹側光学面)5bおよび縁面5cを有している。レンズ5の材質としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネイト(C−39)またはその混合系からなる共重合体等のアリル系レンズ、ポリカーボネイト系レンズ、アクリル系レンズ、ビスフェノールA誘導体系レンズ、ポリウレタン系レンズ(ポリチオウレタン系レンズ、ポリウレタンウレア系レンズを含む)等の合成樹脂が挙げられる。特に本発明に係る眼鏡20の丁番構造に好ましい材料は、耐衝撃性、引っ張り強度等に優れているポリウレタン系レンズである。
【0024】
前記レンズ5の縁面5cで、レンズ保持部材23によって保持される部位、すなわち、テンプル側縁面5c−1には、凹陥部27(図4)が形成されている。この凹陥部27は、レンズ5のテンプル側(外側)縁面5c−1に上下方向に長く(レンズ厚さ方向に狭く)形成された扁平な不貫通穴からなり、凹陥部27のレンズ厚さ方向の幅が前記レンズ保持部材23に突設されたレンズ保持部23B(保持片29a、29b、30の長さ)の板厚と略等しく(0.4〜1.2mm程度)、凹陥部27のレンズ上下方向の幅がレンズ保持部材23に突設されたレンズ保持部23Bの軸部23Bの軸方向の幅と等しく(凹陥部27のレンズ厚さ方向幅の数倍程度長い)、凹陥部27の深さがレンズ保持部材23に突設されたレンズ保持部23Bの長さ(保持片29a、29b、30の長さ)と略等しく(1.5〜4.0mm程度)設定されている。なお、凹陥部27を設ける位置(レンズ縁面における開口位置と穿孔方向)は、凹陥部27の前方側内壁面27aからレンズ前面5aまでの厚さ、及び、凹陥部27の後方側内壁面27bからレンズ後面5bまでの厚さが、強度的に十分な厚さを有している範囲内で適宜設定するとよい。この実施の形態では、光軸に略平行な縁面5cを備えたメニスカスレンズに対してその縁面5cの幅方向における所定の比率の位置(例えば中央)に凹陥部27の開口を設け、穿孔方向はレンズ前面5aと前面側内壁面27aとの間隔が、凹陥部27の開口と奥端とでほぼ同じになるように設定しているため(以下このような穿孔方向をレンズ前面5aに対して略平行とも表現する)、凹陥部27はレンズ縁面5cの垂直方向に対して傾斜して形成されている。なお、開口位置はレンズ前面5aまたは後面5bを基準にして所定の距離の位置に設定してもよい。また、穿孔方向についても、レンズ後面5bと後面側内壁面27bとの間隔が、凹陥部27の開口と奥端とでほぼ同じになるように設定してもよい(以下このような穿孔方向をレンズ後面5bに対して略平行とも表現する)し、凹陥部27の開口と奥端とで凹陥部27がレンズ5の厚さ方向におけるの所定の比率の位置(例えば中央)を通る方向に設定してもよい(以下このような穿孔方向をレンズ前面5a及びレンズ後面5bに対して略平行とも表現する)。また、縁面5cや光軸に対して所定の角度(例えば垂直)をなす方向に穿孔方向を設定してもよい。
【0025】
前記レンズ保持部材23は、前記回動部41Aを軸支する軸受部23Aと、前記凹陥部27に挿入されて固定されるレンズ保持部23Bとを有している。また、前記テンプル24は、その前端側に形成された回動部41Aと、この回動部41Aの後端に繋がっている側部41Bとからなっている。前記回動部41Aは前記軸受部によって軸支される略垂直方向に形成されている軸部24Aと、この軸部24Aと前記側部41Bとを連結する部分であり眼鏡の幅方向に延長する部分を有する幅方向延長部43と、前記軸部24Aの先端に屈曲して連結された回動規制部44とを有する。以下、レンズ保持部材23と、テンプル24の回動部41Aについてさらに詳述する。
【0026】
前記レンズ保持部材23は、透明で可撓性を有するプラスチックの成形品からなり、軸受部23Aとレンズ保持部23Bとを一体に有している。軸受部23Aは、前記回動部41Aの軸部24Aを回動自在に保持する部分であり、前記回動部41Aとともに丁番構造を構成する部分で、図3に示すように両端にそれぞれ開放する2つの軸線方向側開放部31a、31bと、外周に開放する1つの外周側開放部32とを有する平面視C字状の筒体に形成されている。軸受部23Aの内径は、外周側開放部32を閉じた状態で、軸部24Aの外径とほぼ同じかそれより若干小さく設定している。軸受部23の内径を小さくするほど軸部41Aが回動する際の摺動摩擦抵抗(アガキ)が大きくなるので、適度なアガキが得られるように軸受部23Aの内径を設定するとよい。軸受部23Aは、自然な状態において外周側開放部32が適度に開いた状態を保持するように形成されている。このように形成すると、軸部41Aの装着が容易になるので好ましい。なお、外周側開放部32が自然な状態において閉じているように形成し、軸部24Aを軸受部23Aに装着する際に外周開放部32を拡げるようにしてもよい。
【0027】
前記レンズ保持部23Bは、前記レンズに設けられた凹陥部27に挿入されて固定される部分であり、凹陥部27とともにレンズ保持構造を形成する部分で、前記軸受部23Aの外周側開放部32を形成する各開放端縁33a、33bに、板厚方向において互いに重なり合わないように前記軸受部23Aの軸線方向に離間してそれぞれ一体にかつ略平行に延設された細長い矩形の保持片29a、29b、30とで構成されている。前記保持片29a、29bは、前記開放端縁33aに設けられ、前記保持片30は前記開放端縁33bに設けられており、これらの保持片29a、29b、30は、軸受部23Aの軸線を含む面を形成するように軸受部23Aの外周側に突設されている。
【0028】
前記一方の開放端縁33aに突設されている2つの保持片29a、29bは、開放端縁33aの上端と下端にそれぞれ突設され、これら両保持片29a、29b間に他方の開放端縁33bに突設されている保持片30と略同じ大きさの空間35が形成されている。
【0029】
前記他方の開放端縁33bに突設されている保持片30は、他方の開放端縁33bの高さ方向中央に前記空間35に対応して形成されており、前記軸受部23Aを内側に弾性変形させて外周側開放部32を閉じたとき、前記空間35に入り込んで軸受部23Aの軸線方向において前記保持片29a、29bと重なり合い、これら保持片29a、29bとともに1枚の平板なレンズ保持部23Bを形成するように構成されている。上側の保持片29aの下端面37と、下側の保持片29bの上端面38は、他方の保持片30の空間35への入り込みを容易にする案内面をそれぞれ形成している。保持片29aの案内面37は、保持片30側から見て斜め下方に傾斜する斜面に形成され、保持片29bの案内面38は同じく保持片30側から見て案内面37と同一角度ではあるが斜め上方に傾斜する斜面に形成されている。
【0030】
一方、前記保持片30の上面39と下面40は、前記案内面37、38と同一角度で同方向にそれぞれ傾斜する斜面に形成されており、保持片30が空間35にはめ込まれると前記案内面37、38にそれぞれ密接または近接して対向する。なお、本実施の形態においては、一方の開放端縁33aに2つの保持片29a、29bを突設し、他方の開放端縁33bに1つの保持片30を突設したが、保持片の数は適宜増減し得るものである。例えば、一方の開放端縁に設ける保持片を3つ以上にし、この保持片の数より1つ少ない保持片を他方の開放端縁に設けてもよい。また、一方の開放端縁に設ける保持片と他方の開放端縁に設ける保持片とを同数にしてもよい。同数にする場合において、片方の開放端縁に設ける保持片が2つ以上の場合は、一方の開放端縁に設けられた保持片の間の空間に他方の開放端縁に設けられた保持片のうち一番上または一番下の保持片以外の保持片を嵌め込み、他方の開放端縁に設けられた保持片の間の空間に一方の開放端縁に設けられた保持片のうちの一番下または一番上の保持片以外の保持片を嵌め込むようにするとよい。また、一方の開放端縁及び他方の開放端縁にそれぞれ1つづつ保持片を設ける場合は、一方の保持片の上側または下側に他方の保持片がくるようにするとよい。なお、上記した例は、隣接する保持片が密接に配置されるようしているが、各保持片の間に隙間を設けることもできる。また上記例では、各保持片の正面視形状は同じであるが、各保持片の形状が異なる場合でもよい(例えば、レンズ保持部23B全体の正面視形状がくさび形の形状や、先端を丸くした形状になるように、各保持片の形状を異ならせてもよい。また、各保持片の幅を異ならせてもよい。この場合は嵌り合う保持片の幅に合わせて空間の幅を設定するとよい)。
【0031】
なお、レンズ保持部材23(少なくともレンズ保持部23B)を透明な樹脂で形成するとともに、凹陥部27に挿入されたレンズ保持部23Bと凹陥部27の内壁面との隙間に透明な樹脂(接着剤)を充填すると、レンズ保持部23Bや凹陥部27が目立たなくなり、眼鏡装用者の視界に入っても気にならないと言う点で好ましい。より好ましくはレンズ保持部材を無色透明の樹脂で形成し、接着剤を無色透明のものを用いるとよい。
【0032】
また、レンズ保持部材23は色付きであってもよく(透明、半透明、不透明含む)、また、レンズ保持部23Bに模様を設けてもよい。また、レンズ保持部材23を金属等に薄板で形成してもよい。
【0033】
前記テンプル24は、直径が0.4〜1.2mmφ程度の細い線材の折り曲げ加工によって平面視L字状に形成されることにより、内側に屈曲された前端側が回動部41Aを形成し、後方に延在する後端側が側部41Bを形成している。すなわち、このテンプル24は、一体形成された回動部41Aと側部41Bとで構成され、この回動部41Aは前記レンズ保持部材23とともに丁番構造を形成するものである。
【0034】
回動部41Aを含むテンプル24の材質としては、TiまたはTi合金、鉄系合金、純金(24金)、金合金(例えば、14金、18金など)、洋白、モネル、ハイニッケル、ステンレス等のニッケル合金、またはブロンズやベリリウム銅等の銅合金の金属材料やポリアミド、PAS、PES等の樹脂等が用いられる。
【0035】
回動部41Aは、略水平で眼鏡20の左右方向の幅を拡げるように延在する幅方向延長部43と、この幅方向延長部43の内端(ブリッジ側端)より下方に略直角に折り曲げられた軸部24Aと、この軸部24Aの下端に眼鏡20の前方に向かって折り曲げ形成された回動規制部44とで構成され、幅方向延長部43の外端に前記側部41Bが一体に設けられている。なお、図4においては、幅方向延長部43と側部41Bとの間に下方に折り曲げられた高さ方向延長部41Cを設けている。側部41Bは、眼鏡20の後方に向かって略水平に延在し、後端部が斜め下方に折り曲げられ、装用者の耳に掛けられるモダン46を形成している。
【0036】
前記回動部41Aの軸部24Aは、前記レンズ保持部材23の軸受部23Aによって回動可能に軸支される。軸部24Aの外径は、レンズ保持部材23の外周側開放部32が開いた自然な状態における軸受部23Aの内径より小さく、外周側開放部32が閉じた状態における軸受部23Aの内径とほぼ同じかそれより若干大きく設定されている。軸部24Aの上端は略垂直に折れ曲がって前記幅方向延長部43につながり、軸部24Aの下端は略垂直に折れ曲がって前記回動規制部44につながっている。そして軸部24Aの長さは、前記レンズ保持部材23の軸受部23Aと同じか、若干短く設定されている。この幅方向延長部43と回動規制部44は、軸部24Aが軸受部23Aに対して上下方向に移動しないように規制する働きをしている。すなわち、軸部24Aが軸受部23Aに軸支されている状態では、前記幅方向延長部43はその軸部24A側の端部が、軸受部23Aの上端に接触するので、軸部23Aの高さ方向の下限位置を規制しており、前記回動規制部44はその軸部24A側の端部が、軸受部23Aの下端に接触して軸部23Aの高さ方向の上限位置を規制しているので、回動部41Aはレンズ保持部材23に対して所定の高さで軸支される。なお、軸部24Aの長さを前記軸受部より短くするほど、幅方向延長部43と回動規制部44が軸受け部23Aの上下端に押圧される力が強くなるので、テンプル開閉時のアガキが増大する。したがって、適切なアガキが得られるように軸部24Aと軸受部23Aの長さを設定するとより好ましい。
【0037】
前記幅方向延長部43は、テンプル24を開いた状態で眼鏡の幅が拡がるように外側に拡がって側部41Bにつながっているため、テンプル24を閉じた状態で側部41Bがレンズ5や鼻当てパッド22と干渉したり、幅方向延長部43がレンズ5の外側縁面5c−1と接触することを防いでいる。
【0038】
前記回動規制部44は、テンプル24を開いた状態において前方に突出するように軸部24Aの下端に屈曲してつながっている。このような構成により、テンプル24を開いて、軸部24Aが回転して回動規制部44の内側がレンズ縁面5c−1に接触することによりテンプル24が開く範囲の上限を規制している。
【0039】
次に本発明に係る丁番構造の動作について図5を参照して説明する。
図5(a)は、テンプルを完全に開いた状態の平面図であり、図5(b)はその正面図であり、図5(C)は、テンプルが閉じる途中あるいは開く途中の状態を示す平面図である。
【0040】
図5(c)に示すように、テンプル24が完全に開いていない状態では、回動規制部24の内側の面はレンズ外側の縁面5c−1から離間している。この状態からテンプル24をさらに開いていくと軸部24Aを軸にして回動規制部44が回動する。そして回動規制部44内側の面がレンズ縁面5cに近づき、やがて、図5(a)、図5(b)に示すように回動規制部44の内側の面がレンズ外側の縁面5c−1(凹陥部27の下方で、かつ、凹陥部よりレンズ前面5c側)に接触する。これにより、回動規制部44のこれ以上の回動はレンズ縁面により妨げられるため、この回動規制部44がレンズ縁面に接触するところまでがテンプル24の自然な状態(テンプル24に負荷を掛けない状態)で開く最大角度として規制される。なお、回動規制部44がレンズ縁面に接触した状態から、さらに、テンプル24を開くように力を加えた場合は、テンプル24は通常、弾性を有する材料で形成されているため、軸部24Aのねじれや、幅方向延長部43、側部41B、および、ブリッジ等の撓みにより、側部41Bはそこからある程度拡がり、テンプル24の弾性復元力により装用者の頭部を適度に挟む力を生じさせることができる。
【0041】
次に、レンズ5に眼鏡フレームを取り付ける手順について説明する。
レンズへのブリッジの取り付けは、従来のリムレス眼鏡の保持構造が利用できるので、説明は省略する。
はじめに、左右の眼鏡レンズを用意し、その両外側に前記した凹陥部を所定の位置に形成する。この凹陥部の形成には公知の切削ツール(例えば、ボールエンドミル、ドリル、軸付電着ダイヤモンド砥石など)を利用することができる。
【0042】
次に、レンズ保持部材23とテンプル24を用意し、レンズ保持部材23の軸受部に軸部24Aを配置する。そしてレンズ保持部23Bを閉じて各保持片が同一平面上に並んだ状態にして、予め接着用の透明樹脂が充填された前記凹陥部27に挿入する。なお、レンズ保持部材23の少なくともレンズ保持部23Bは、予め濡れ性を向上させるための処理(例えばプラズマ洗浄処理、界面活性剤塗布など)をしておいたり、透明樹脂を凹陥部に充填する前あるいは充填後に真空中で脱気しておいたりすると、凹陥部内に泡が残らないので好ましい。なお、予めレンズ保持部材23をレンズ5に取り付けておき、回動規制部44を折り曲げない状態で軸受部23Aに挿入し軸受部の下方に軸部24Aより先を突出させ、その後軸部24Aより先の先端を折り曲げて回動規制部44を形成してもよい。
【0043】
なお、上記実施の形態においては、凹陥部27がレンズ厚さ方向に狭い扁平の穴の場合(レンズ保持部23Bの幅が板厚より長い場合)で説明したが、この場合は、レンズの縁面5Cが狭い場合であっても凹陥部27を形成できる点、各保持片の幅を広くできる点、凹陥部27の回転防止ができる点で好ましい。なお、凹陥部27(レンズ保持部23B)の形状は、非軸対象の形状であれば、レンズ保持部23の回転を防止できるので、前記形状に限定されない。例えば、凹陥部27がレンズ厚さ方向幅と上下方向幅が等しい穴の場合(レンズ保持部23Bの幅と板厚が等しい場合)や、レンズ厚さ方向に広い扁平の穴の場合(レンズ保持部23Bの板厚が幅より長い場合)であってもよい。
【0044】
このような眼鏡20の丁番構造においては、丁番を構成する部材が、レンズ保持部材23とテンプル24の2部材だけであるため、部品点数が少なく、きわめて簡単な丁番構造とすることができる。また、レンズ保持部材23は、丁番構成部材に加えてレンズ保持部材を兼用し、テンプル24は、丁番構成部材に加えて、ヨロイおよびテンプルを兼用しているので、きわめてシンプルで、機能美に溢れた斬新なデザインとすることができ、軽量化を図った縁無し眼鏡に適用して好適である。また、レンズ保持部材23の形状、構造も簡単で、容易に製作することができる。さらに、テンプル24は、軸部24Aを回動支点としてレンズ5のフロント部25の裏側に折り畳まれるので、この折り畳まれた状態において、レンズ5の外側に突出せず、眼鏡20の横幅が通常の眼鏡に比べて短く、収納スペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る丁番構造を採用した眼鏡の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】丁番構造の斜視図である。
【図3】第1の保持部材の自然な状態における斜視図である。
【図4】丁番構造の分解斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明に係る丁番構造の動作を説明するための図である。
【図6】従来の縁無し眼鏡の全体図である。
【図7】従来の縁無し眼鏡のレンズ保持構造の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
5…眼鏡レンズ、5a、5b…光学面、5c…縁面、20…眼鏡、21…ブリッジ、23…レンズ保持部材、23A…軸受部、23B…レンズ保持部、24…テンプル、27…凹陥部、29a、29b、30…保持片、31a、31b、32…開放部、41A…回動部、41B…側部、44…回動規制部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの縁面に取り付けられたレンズ保持部材にテンプルを回動可能に取り付けるための縁無し眼鏡の丁番構造において、
前記眼鏡レンズの縁面には、不貫通穴である凹陥部が形成され、
前記テンプルの前端部には、前記レンズ保持部材によって回動可能に軸支される軸部が設けられており、
前記レンズ保持部材は、前記凹陥部に挿入されて固定されるレンズ保持部と、前記テンプルの軸部を回動可能に軸支する軸受部とを一体に有し、
前記レンズ保持部材の軸受部は、軸線方向両端が開放するとともに、外周が軸線方向に分断された外周側開放部を有する筒体に形成され、
前記レンズ保持部材のレンズ保持部は、前記軸受部の外周側開放部を形成する二つの開放端縁からそれぞれ軸受部の軸線方向に平行に延設された薄板状の保持片からなり、
前記それぞれの開放端縁に設けられた保持片は、軸受部の軸線方向において互いに重なり合わないように形成されている
ことを特徴とする縁無し眼鏡の丁番構造。
【請求項2】
請求項1記載の縁無し眼鏡の丁番構造において、
前記レンズ保持部材のレンズ保持部は、少なくとも一方の開放端縁に設けられた保持片が軸受部の軸線方向において離間して設けられた複数の保持片からなり、
他方の開放端縁に設けられた保持片が、前記一方の開放端縁に設けられた複数の保持片の間にくるように形成されている
ことを特徴とする縁無し眼鏡の丁番構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の縁無し眼鏡の丁番構造において、
前記レンズ保持部材は、弾性を有する透明な樹脂によって形成されている
ことを特徴とする縁無し眼鏡の丁番構造。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の眼鏡の丁番構造において、
前記テンプルの前端部は、前記軸部の一方の端部に、眼鏡レンズの縁面に係合しテンプルの外側への回動を規制する回動規制部が設けられている
ことを特徴とする眼鏡の丁番構造。
【請求項5】
請求項4記載の眼鏡の丁番構造において、
前記テンプルの前端部は、前記軸部の他方の端部に、前記テンプルを開いた状態において両方のテンプルの間隔を広げるように延長する幅方向延長部が設けられている
ことを特徴とする眼鏡の丁番構造。
【請求項6】
請求項4または5記載の眼鏡の丁番構造において、
前記テンプルの前端部は、一本の線材が屈曲してなる形状をしている
ことを特徴とする眼鏡の丁番構造。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の丁番構造を備えたことを特徴とする眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−288683(P2009−288683A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143207(P2008−143207)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】