説明

着底式汚濁防止装置及びこの装置の汚濁防止カーテンの長さ調整方法

【課題】従来の着底式汚濁防止装置は、作業員が常時、潮位及び海底面の状況を監視して、各昇降ウインチにより、対応するカーテン部分の繰り出し長を調整する必要があり、作業員の管理項目が増え、作業効率に問題があった。
【解決手段】本発明の着底式汚濁防止装置は、工事区域の海面部分を囲む浮体と、この浮体から垂下した汚濁防止カーテンと、上記汚濁防止カーテンの下端に設けたカーテン着底検知手段と、上記汚濁防止カーテンの長さ調整手段と、潮位計測手段と、上記カーテン着底検知手段からの着底・非着底情報と上記潮位計測手段からの潮位情報とから、上記汚濁防止カーテンの繰出繰入量を演算せしめる記憶演算処理装置とよりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブ浚渫工事などに使用される着底式の汚濁防止装置及びこの装置の汚濁防止カーテンの長さ調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着底式汚濁防止装置は、海などの水域でグラブ浚渫や砂撒き作業等を行う時に発生する汚濁を周辺水域に拡散するのを抑制するために必要とされるもので、図13は、従来の着底式汚濁防止装置を示し、1は工事区域の海面部分を矩形状に囲む、海上に浮上した環状の浮体(フロート)、2は上記浮体1から垂下した汚濁防止カーテン、3は上記汚濁防止カーテン2の下端全周に渡り設けたパイプまたはチェーン、4は上記浮体1上に設けた複数の昇降ウインチ、5は上記昇降ウインチ4の昇降ワイヤーであり、上記昇降ウインチ4により上記汚濁防止カーテン2の長さが調整され、上記汚濁防止カーテン2の下端が水底6に着底するようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の着底式汚濁防止装置は、作業員が常時潮位を監視し、潮位が上がってきた場合には、図14に示すように、上記カーテン2の下端と水底6との間の隙間から汚濁が出て行くのを防止するために、上記カーテン2の長さを上記昇降ウインチ4を操作して長くして、上記カーテンの下端を下げる必要がある。また、潮位が下がってきた場合には、図15に示すように、上記カーテン2がだぶついて、グラブ(図示せず)が絡むのを防止するために、上記カーテン2の長さを上記昇降ウインチ4を操作して短くする必要がある。
【0004】
また、海底面が傾斜している場合には、作業員が海底面の状況を調査し、傾斜に合わせて、上記各昇降ウインチを操作して、上記各昇降ウインチの対応する上記カーテン2のカーテン部分の長さをそれぞれ調整する必要がある。
【0005】
また、海底の掘削により海底面が変形すると、上記カーテン2と水底6との間に隙間ができるので、作業員が常時海底面の変形を監視する必要がある。
【0006】
以上のように、作業員が常時、潮位及び海底面の状況を監視して、各昇降ウインチにより、対応するカーテン部分の長さを調整する必要があり、作業員の管理項目が増え、作業効率に問題があった。
【0007】
本発明は上記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の着底式汚濁防止装置は、工事区域の海面部分を囲む浮体と、この浮体から垂下した汚濁防止カーテンと、上記汚濁防止カーテンの下端に設けたカーテン着底検知手段と、上記汚濁防止カーテンの長さ調整手段と、潮位計測手段と、上記カーテン着底検知手段からの着底・非着底情報と上記潮位計測手段からの潮位情報とから、上記汚濁防止カーテンの繰出繰入量を演算せしめる記憶演算処理装置とよりなることを特徴とする。
【0009】
また、上記着底検知手段と上記長さ調整手段とがそれぞれ複数あり、上記各着底検知手段を1又は2以上の上記長さ調整手段に連動せしめることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の着底式汚濁防止装置の汚濁防止カーテンの長さ調整方法は、工事区域の海面部分を囲む浮体と、この浮体から垂下した汚濁防止カーテンと、上記汚濁防止カーテンの下端に設けたカーテン着底検知手段と、上記汚濁防止カーテンの長さ調整手段と、潮位計測手段と、上記カーテン着底検知手段からの着底・非着底情報と上記潮位計測手段からの潮位情報とから、上記汚濁防止カーテンの繰出繰入量を演算せしめる記憶演算処理装置とよりなる着底式汚濁防止装置の上記汚濁防止カーテンの長さを上記長さ調整手段を操作して長くし、上記カーテンの下端を下降せしめる第1の工程と、所望時間経過後に、上記カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかしていないかを検知し、着底していると判断された場合には、上記長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、着底していないと判断された場合には、所望時間経過後に、再度上記カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかしていないかを検知し、これをカーテンの下端が着底していると判断されるまで繰り返し、着底していると判断された時に、上記長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめる第2の工程と、所望時間経過後に、上記カーテン着底検知手段により、上記カーテンの下端が着底しているかしていないかを検知し、着底していると判断された場合には、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第二の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、上記記憶演算処理装置により、上記記憶した第一の潮位情報と上記第二の潮位情報とから上記カーテンの繰出繰入量を演算し、この演算に基づき上記長さ調整手段を操作せしめ、着底していないと判断された場合には、上記第1の工程と上記第2の工程を行なう第3の工程と、上記第3の工程を繰り返す第4の工程とよりなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の着底式汚濁防止装置の汚濁防止カーテンの長さ調整方法は、工事区域の海面部分を囲む浮体と、この浮体から垂下した汚濁防止カーテンと、上記汚濁防止カーテンの下端に設けた複数のカーテン着底検知手段と、上記各カーテン着底検知手段にそれぞれ連動せしめた、上記汚濁防止カーテンの対応するカーテン部分の長さを調整せしめる1又は複数のカーテン長さ調整手段と、潮位計測手段と、上記各カーテン着底検知手段からの着底・非着底情報と上記潮位計測手段からの潮位情報とから、上記各カーテン着底検知手段に対応する上記長さ調整手段のカーテン部分の繰出繰入量を演算せしめる記憶演算処理装置とよりなる着底式汚濁防止装置の上記汚濁防止カーテンの各カーテン部分の長さを上記長さ調整手段を操作して長くし、上記カーテン部分の下端を下降せしめる第1の工程と、所望時間経過後に、上記各カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかいないかを検知し、着底していると判断した着底検知手段がある場合には、この着底検知手段に対応する長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、着底していないと判断した着底検知手段がある場合には、その着底検知手段及びこれに対応するカーテン部分について、所望時間経過後に、再度上記カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかいないかを検知し、これをカーテン部分の下端が着底していると判断されるまで繰り返し、着底していると判断された時に、上記対応する長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめる第2の工程と、所望時間経過後に、上記各カーテン着底検知手段により、上記カーテンの下端が着底しているかいないかを検知し、着底していると判断した着底検知手段がある場合には、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第二の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、上記記憶演算処理装置により、上記記憶した第一の潮位情報と上記第二の潮位情報とから、上記着底検知手段の対応するカーテン部分の繰出繰入量を演算し、この演算に基づき上記長さ調整手段を操作せしめ、着底していないと判断した着底検知手段がある場合には、その着底検知手段及びこれに対応するカーテン部分について、上記第1の工程と上記第2の工程を行なう第3の工程と、上記第3の工程を繰り返す第4の工程とよりなる事を特徴とする。
【0012】
上記カーテン着底検知手段が、汚濁防止カーテンの下端に設けた、鉛直方向において傾動自在な傾動部材と、上記傾動部材に固定した傾斜スイッチと、上記傾動部材を所望量以上傾斜しないよう規制する傾動規制手段とよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の着底式汚濁防止装置によれば、汚濁防止カーテンの長さ調整のために作業員が常時潮位を監視することが不要になるという大きな利益がある。
【0014】
また、海底面に傾斜があっても、自動で、汚濁防止カーテンの全域における下端が水底に着底でき、また、海底の掘削を行っている途中で、一部の海底が崩れても、自動でカーテンの下端が水底に着底するようになる。また、カーテンがだぶついて、グラブに巻きつくことがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の着底式汚濁防止装置の説明図である。
【図2】本発明の着底式汚濁防止装置の着底検知センサの斜視図である、
【図3】本発明の着底式汚濁防止装置の説明図である。
【図4】本発明の着底式汚濁防止装置の動作のフロー図である。
【図5】本発明の着底式汚濁防止装置の説明図である。
【図6】本発明の着底式汚濁防止装置の他の実施例の説明図である。
【図7】本発明の着底式汚濁防止装置の他の実施例の説明図である。
【図8】本発明の着底式汚濁防止装置の着底検知センサの他の実施例の説明用斜視図である。
【図9】本発明の着底式汚濁防止装置の着底検知センサの他の実施例の説明用縦断側面図である。
【図10】本発明の着底式汚濁防止装置の着底検知センサの他の実施例の説明用縦断側面図である。
【図11】本発明の着底式汚濁防止装置の着底検知センサの更に他の実施例の説明用縦断側面図である。
【図12】本発明の着底式汚濁防止装置の着底検知センサの更に他の実施例の説明用縦断側面図である。
【図13】従来の着底式汚濁防止装置の説明図である。
【図14】従来の着底式汚濁防止装置の説明図である。
【図15】従来の着底式汚濁防止装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の着底式汚濁防止装置は、図1に示すように、工事区域の海面部分を矩形状に囲む、海上に浮上した環状の浮体7と、上記浮体7の全周から垂下した汚濁防止カーテン8と、上記汚濁防止カーテン8の下端全周に渡り設けたパイプまたはチェーン9と、上記汚濁防止カーテン8の下端の4隅に設けた着底検知センサ10と、上記汚濁防止カーテン8の長さを調整するための、上記矩形状の浮体7上の各辺にそれぞれ離間して2つづつ設けたエア駆動等のカーテン昇降ウインチ11と、上記昇降ウインチ11の昇降ワイヤー12と、上記昇降ワイヤー12の繰り出し長を計測するロータリエンコーダなどの繰出長計測器13と、工事区域又はその付近に設置した、例えば水圧計などを利用して潮位を計測する潮位計測装置14と、上記着底検知センサ10からの着底・非着底情報と上記潮位計測装置14からの潮位情報とを記憶し、上記情報から上記汚濁防止カーテンの繰出繰入量(伸縮量)を演算せしめる記憶演算処理装置15と、上記潮位計測装置14に設けた送受信装置16と、上記記憶演算処理装置15に設けた送受信機17と、上記着底検知センサ10の着底状況を視覚的に知らせる着底検知灯18とよりなる。
【0018】
また、上記着底検知センサ10は、例えば、図2に示すように、水底下に潜り込まない程度の大きさの円板部分19と、上記円板部分19の上面中央に固定した、上面開放の円筒状の磁石収納器20と、上記収納器20の底部に固定した磁石21と、その上端が上記汚濁防止カーテン8の下部又は下端に取り付けられ、その下端に近接センサ22を有する円柱状の近接センサ支持具23と、上記円板部分19を、上記近接センサ支持具23の下部で吊り下げた状態に取り付けるための3本のワイヤ24とよりなる。
【0019】
また、上記3本のワイヤ24の取付位置や長さは、上記近接センサ22が上記収納器20内に収まるように調節され、上記近接センサ支持具23が上記円板部分19に対して傾斜しても近接センサ22が磁石20から極度に離れてしまう事を防止する。
【0020】
そして、上記着底検知センサ10は、上記磁石21と上記近接センサ22とが所望量以上離れているときはOFFを示し、所望量より近づいた場合にはONを示すように構成され、カーテンの下端が水中を下降し、最初に上記着底検知センサ10の円板部分19が水底に着底し、カーテンの下端の下降とともに上記ワイヤ24が弛み、上記近接センサ22が磁石20に所望量だけ接近して、上記着底検知センサ10がONとなった時に、汚濁防止カーテンの下端が水底6に着底したと判断する。
【0021】
また、上記着底検知センサ10を、図3に示すように、例えば、近接する2つの上記昇降ウインチに連動せしめる。即ち、第1着底検知センサ10aからの情報に基づき、第1昇降ウインチ11aと第8昇降ウインチ11hを操作せしめ、第2着底検知センサ10bからの情報に基づき、第2昇降ウインチ11bと第3昇降ウインチ11cを操作せしめ、第3着底検知センサ10cからの情報に基づき、第4ウインチ11dと第5ウインチ11eを操作せしめ、第4着底検知センサ10dからの情報に基づき、第6ウインチ11fと第7ウインチ11gを操作せしめるように設定する。
【0022】
なお、図8及び図9は、上記着底検知センサ10の他の実施例を示す。この他の実施例の着底検知センサ10は、上記汚濁防止カーテン8の下端のパイプ又はチェーン9に設けた、鉛直方向において傾動自在な傾動部材25と、上記傾動部材25に固定した傾斜スイッチ26と、上記傾動部材25を所望量以上傾斜しないように規制するストッパー27とよりなる。
【0023】
上記傾動部材25は、上記汚濁防止カーテン8の下端のパイプ又はチェーン9にワイヤーまたはシャックル28を介して設けた取付金具29と、上記取付金具29に鉛直方向において傾動自在に設けたフレーム部30とよりなり、上記取付金具29は断面コ字状に形成され、上記取付金具29の折片29a,29aにはそれぞれ貫通孔31が設けられ、上記取付金具29の水平部29bの上面にはシャックル28取付用の吊金具32を有する。
【0024】
また、上記フレーム部30は、所望の距離離間して互いに対向するように設けた2本のL形鋼33と、これらL形鋼33,33間に設けた棒状部材34と、上記2本のL形鋼33,33と棒状鋼34とを一端側において連結せしめる着底用プレート35と、上記2本のL形鋼33,33と棒状部材34とを他端側において連結せしめるウエイト36と、上記互いに対向する2本のL形鋼33,33の折片33a,33aを連結する、上記取付金具29の貫通孔31の径よりも小さい径の枢支軸37とよりなり、上記棒状部材34に固定バンド38を介して上記傾斜スイッチ26が固定され、上記取付金具29の貫通孔31に上記枢支軸37が挿入され、上記取付金具29に対して、上記傾動部材25が鉛直方向に対して傾動自在に枢支されている。
【0025】
なお、上記枢支軸37の上記L形鋼33の折片33aに対する取付位置は、上記傾動部材25が上記取付金具29に対して傾動自在に枢支せしめたとき、上記傾動部材25の一端側が下方に傾動するように取付ける。
【0026】
また、上記着底用プレート35は、上記傾動部材25の先端が水底に到達したとき、上記L形鋼33または棒状部材34の端部が水底に突き刺さり、上記傾動部材25が傾動しなくなるのを防止するためのもので、水底への突き刺さりを防止できるものであれば他の部材を用いても良い。
【0027】
また、上記傾斜スイッチ26は、上記傾動部材25が所望量以上傾斜している時にはOFFを示し、所望量以下傾斜する時、例えば、水底に対して平行となる場合にONを示すセンサーで、例えば、フロートスイッチなどがある。なお、39は上記傾斜スイッチのON・OFF情報を上記記憶演算処理装置15に伝えるためのケーブルである。
【0028】
また、上記ウエイト36は、着底したときに必ず上記傾動部材25の他端側が下がり傾斜スイッチ26が上がるように、傾動部材25を傾けるためのものであり、着底したときに傾動部材25の他端側が下がる場合には、設けなくてもよい。
【0029】
なお、図11及び図12に示すように、上記ストッパー27に加えて、または上記ストッパー27の代わりにワイヤー40aと40bを設けてもよい。上記ワイヤー40aは、上記ワイヤー40aの一端を上記パイプ又はチェーン9に接続し、他端を棒状部材34の一端に接続せしめ、上記傾斜部材25が所望量より傾斜していない時には弛むが、所望量傾斜した時には張るような長さとして、上記傾動部材25が所望量以上傾斜しないようにし、また、前記ワイヤー40bは、上記ワイヤー40bの一端を上記パイプ又はチェーン9に接続し、他端を棒状部材34の他端に接続せしめ、上記傾動部材がその一端が下を向く方向で傾斜している時は弛むが、上記傾動部材25が水平面に対して水平になった時に張るようになる長さとして、上記傾動部材25がその他端が下を向く方向に傾斜しないようにする。
【0030】
上記他の実施例の着底検知センサ10は、上記傾斜スイッチ26、即ち傾動部材25が所望量以上傾斜しているときはOFFを示し、水底に対して、例えば、平行になる場合にはONを示すように構成され、カーテン下端が水中を下降し、最初に上記着底検知センサ10の傾動部材25の一端側が着底し、カーテンの下端の下降とともに上記傾動部材25の傾斜量が少なくなり、上記傾動部材25、即ち傾斜スイッチ26が水底面に対して水平になってONとなった時に、汚濁防止カーテンの下端が水底6に着底しと判断される。
【0031】
また、上記各昇降ウインチ11a〜11hにより調整される各カーテン部分の長さは、例えば、図4のフローに従い以下のように操作せしめる。
【0032】
まず、上記各昇降ウインチ11a〜11hにより長さ調整が行われるカーテン部分が全て水底に着底していない初期の状態から、
(1)上記記憶演算装置15が、上記潮位計測器14から潮位データが得られているか否かを判断する。
【0033】
(2)上記(1)の判断において、潮位データが得られていないと判断された場合には、上記潮位計測装置14や送受信機16、17などの伝送ラインの作動状況を確認し、これらを正しく作動せしめた後、上記(1)の操作に戻る。
【0034】
(3)上記(1)の判断において、潮位データが得られていると判断された場合には、上記記憶演算処理装置15が、上記各昇降ウインチのウインチエアバルブを操作して、各カーテン部分の長さを長くして、上記各カーテン部分の下端を降下せしめる。
【0035】
(4)所望の時間経過後、上記各着底検知センサがONかOFFかを検知せしめる。
【0036】
(5)上記(4)の判断において、上記着底検知センサがONである判断された着底検知センサがある場合には、上記繰出長計測器13により計測しながら、この時の上記着底検知センサの対応する各昇降ウインチのカーテン部分の長さから、更に波高動揺分(α)だけカーテン部分の長さを長くして、上記対応する昇降ウインチを停止せしめる。
【0037】
(6)上記(4)の判断において、OFFであると判断された着底検知センサがある場合には、この着底検知センサ及びこれに対応する各昇降ウインチについて、所望の時間経過後、再度上記各着底検知センサがONかOFFかを検知せしめ、これをカーテン部分の下端が着底していると判断されるまで繰り返し、着底していると判断された時に、上記繰出長計測器13により計測しながら、この時の上記着底検知センサの対応する各昇降ウインチのカーテン長さから、更に波高動揺分(α)だけカーテン部分の長さを長くして、上記対応する昇降ウインチを停止せしめる。
【0038】
なお、上記αは、潮位変動ではなく、波の動揺により汚濁防止カーテンが持ち上がり、汚濁防止カーテン下端と水底との間に隙間が出来るのを避けるために、波の動揺分だけ、汚濁防止カーテンを下げるものである。
【0039】
また、上記着底検知センサがONと判断された場合に、上記対応する各昇降ウインチを一度停止せしめ、そこから上記着底検知センサの対応する各昇降ウインチを再度操作して、上記繰出長計測器13により計測しながら、波高動揺分(α)だけカーテン部分の長さを長くして、上記対応する昇降ウインチを停止せしめるようにしてもよい。
【0040】
(7)そして、上記(4)、(6)において、上記各着底検知センサ10a〜10dがそれぞれONであると判断した時の各潮位をa(a1、a2、a3、a4)として、上記各着底検知センサ10a〜10dに対応して上記記憶演算処理装置15に記憶せしめる。
【0041】
なお、上記潮位a1は着底検知センサ10aがONであると判断した時の潮位、上記潮位a2は着底検知センサ10bがONであると判断した時の潮位、上記潮位a3は着底検知センサ10cがONであると判断した時の潮位、上記潮位a4は着底検知センサ10dがONであると判断した時の潮位である。
【0042】
但し、潮位変動が少ない場合等には、基準となる着底検知センサがONであると判断した時の潮位aを、他の着底検知センサがONであると判断した時の潮位として用いても良い。
【0043】
(8)次に、所望の時間経過後に,上記各着底検知センサ10a〜10dがそれぞれONかOFFかを検知せしめる。
【0044】
(9)上記(8)の判断において、OFFと判断された着底検知センサがある場合には、この着底検知センサ及びこれに対応する各昇降ウインチにおいて、各昇降ウインチのウインチエアバルブを操作して、各カーテン部分の長さを長くして、上記各カーテン部分の下端を下降せしめる上記(3)の操作に戻る。
【0045】
(10)上記(8)の判断において、ONと判断された着底検知センサがある場合には、この時の潮位をbとして、上記記憶演算処理装置15に記憶せしめる。
【0046】
(11)そして、上記記憶された潮位bから、上記着底検知センサの対応する潮位aを引いた値が、例えば、10cmより大きいか否かを、上記記憶演算処理装置15により演算せしめる。
【0047】
なお、上記10cmは、潮位変動の誤差等を吸収するための一例の値で、海域や時刻等によっては20cmと設定しても良い。
【0048】
(12)上記(11)の判断において、大きいと判断した場合には、上記繰出長計測器13により計測しながら、上記着底検知センサの対応するカーテン部分の長さを(b−a)cmだけ繰り出し(伸ばし)、昇降ウインチを停止せしめ、この時の潮位をaとして、上記着底検知センサに対応して記憶演算処理装置15に記憶し直させ、上記(8)の操作に戻る。
【0049】
(13)上記(11)の判断において、小さいと判断した場合には、上記潮位bから、上記記憶した着底検知センサの対応する潮位aを引いた値が、例えば、−10cmより小さいか否かを、上記記憶演算処理装置15により演算せしめる。
【0050】
なお、上記−10cmは、潮位変動の誤差等を吸収するための一例の値で、海域や時刻等によっては−20cmと設定しても良い。
【0051】
(14)上記(13)の判断において、小さいと判断した場合には、上記繰出長計測器13により計測しながら、上記着底検知センサの対応するカーテン部分の長さを(a―b)cmだけ繰り入れて(短くして)、昇降ウインチを停止せしめ、この時の潮位をaとして、上記着底検知センサに対応して記憶演算処理装置15に記憶し直させ、上記(8)の操作に戻る。
【0052】
(15)上記(13)の判断において、大きいと判断した場合には、この時の潮位をaとして、上記着底検知センサに対応して記憶演算処理装置15に記憶し直させ、上記(8)の操作に戻る。
【0053】
本発明の着底式汚濁防止装置は上記のような構成であるから、例えば、図3及び図5に示すように、傾斜した海底面6bがあり、海底面6aと海底面6cとの間に高低差がある場合には、まず全ての昇降ウインチ11a〜11hが操作されて、各カーテン部分の下端が下り、最初に第3着底検知センサ10cと第4着底検知センサ10dが着底を検知して、上記第3着底検知センサ10cを挟む第4昇降ウインチ11dと第5昇降ウインチ11eと、上記第4着底検知センサ10dを挟む第6昇降ウインチ11fと第7昇降ウインチ11gが停止(STOP)する。
【0054】
また、上記第1着底検知センサ10aを挟む第8昇降ウインチ11hと第1ウインチ11aと、上記第2着底検知センサ10bを挟む第2昇降ウインチ11bと第3昇降ウインチ11cは、対応する上記第1着底検知センサ10aと第2着底検知センサ10bが着底するまで駆動(RUN)して、対応するカーテン部分の下端が下がり、上記第1着底検知センサ10aと第2着底検知センサ10bが着底を検知したときに、上記第8昇降ウインチ11h、第1昇降ウインチ11a、第2昇降ウインチ11b、第3昇降ウインチ11cが停止するようになる。
【0055】
なお、図6及び図7は、着底検知センサ10をカーテンの下端の4隅に加えて、カーテンの下端の各辺の中間部に更に着底検知センサ10を設けて、計8個の着底検知センサ11a〜11hとした場合を示す。
【0056】
この場合も上記と同様に、上記各着底検知センサ11a〜11hに応じて、対応する各昇降ウインチが作動され、例えば、第5着底検知センサ10e付近の海底が掘削により沈下した場合には、上記第5着底検知センサ10eが着底検知しなくなるから、上記第5着底検知センサ10eを挟む第1昇降ウインチ11aと第2昇降ウインチ11bのみが駆動(RUN)して、上記昇降ウインチ11a,11bに対応するカーテン部分の下端が下降し、上記第5着底検知センサ10eが着底を検知したときに、上記第1昇降ウインチ11aと第2昇降ウインチ11bが停止する。
【0057】
本発明の着底式汚濁防止装置によれば、潮位や、海底面の形状に応じて、自動で、着底式汚濁防止装置の下端が水底に着底して、汚濁の外部への拡散を常時防ぐことができるので、作業員が常時、潮位を監視することが不要になるという大きな利益がある。
【0058】
また、海底面に傾斜があっても、自動で、汚濁防止カーテンの全域における下端が水底に着底でき、また、海底の掘削を行っている途中で、一部の海底が崩れても、自動でカーテンの下端が水底に着底するようになる。また、カーテンがだぶついて、グラブに巻きつくことがない。
【0059】
なお、上記浮体7に上記記憶演算処理装置15を設ける代わりに、船や地上に設置し、上記浮体7に送受信機を設けて、各昇降ウインチを操作せしめるようにしても良い。
【0060】
また、上部浮体7を環状とせずに、工事区域の一部のみを囲むような形状としても良い。
【0061】
また、各着底検知センサの数や各昇降ウインチの数を増減して、各着底検知センサと各昇降ウインチを任意の組み合わせで連動せしめて、上記着底検知センサの情報に基づいて、複数の各昇降ウインチを所望量昇降せしめても良い。
【0062】
なお、浮体7が矩形の場合には、カーテン下端の少なくとも4隅に着底検知センサを設けるのが好ましい。
【符号の説明】
【0063】
1 浮体
2 汚濁防止カーテン
3 チェーン
4 昇降ウインチ
5 昇降ワイヤー
6 水底
7 浮体
8 汚濁防止カーテン
9 チェーン
10 着底検知センサ
11 昇降ウインチ
12 昇降ワイヤー
13 繰出長計測器
14 潮位計測装置
15 記憶演算処理装置
16 送受信機
17 送受信機
18 着底検知灯
19 円板部分
20 収納器
21 磁石
22 近接センサ
23 近接センサ支持具
24 ワイヤ
25 傾動部材
26 傾斜スイッチ
27 ストッパー
28 シャックル
29 取付金具
29a 折片
29b 水平部
30 フレーム部
31 貫通孔
32 吊金具
33 L形鋼
33a 折片
34 棒状部材
35 着底用プレート
36 ウエイト
37 枢支軸
38 固定バンド
39 ケーブル
40a ワイヤー
40b ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事区域の海面部分を囲む浮体と、この浮体から垂下した汚濁防止カーテンと、上記汚濁防止カーテンの下端に設けたカーテン着底検知手段と、上記汚濁防止カーテンの長さ調整手段と、潮位計測手段と、上記カーテン着底検知手段からの着底・非着底情報と上記潮位計測手段からの潮位情報とから、上記汚濁防止カーテンの繰出繰入量を演算せしめる記憶演算処理装置とよりなることを特徴とする着底式汚濁防止装置。
【請求項2】
上記着底検知手段と上記カーテン長さ調整手段とがそれぞれ複数あり、上記各着底検知手段を1又は2以上の上記長さ調整手段に連動せしめることを特徴とする請求項1記載の着底式汚濁防止装置。
【請求項3】
上記カーテン着底検知手段が、汚濁防止カーテンの下端に設けた、鉛直方向において傾動自在な傾動部材と、上記傾動部材に固定した傾斜スイッチと、上記傾動部材を所望量以上傾斜しないよう規制する傾動規制手段とよりなることを特徴とする請求項1または2記載の着底式汚濁防止装置。
【請求項4】
工事区域の海面部分を囲む浮体と、この浮体から垂下した汚濁防止カーテンと、上記汚濁防止カーテンの下端に設けたカーテン着底検知手段と、上記汚濁防止カーテンの長さ調整手段と、潮位計測手段と、上記カーテン着底検知手段からの着底・非着底情報と上記潮位計測手段からの潮位情報とから、上記汚濁防止カーテンの繰出繰入量を演算せしめる記憶演算処理装置とよりなる着底式汚濁防止装置の上記汚濁防止カーテンの長さを上記長さ調整手段を操作して長くし、上記カーテンの下端を下降せしめる第1の工程と、
所望時間経過後に、上記カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかしていないかを検知し、
着底していると判断された場合には、上記長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、
着底していないと判断された場合には、所望時間経過後に、再度上記カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかしていないかを検知し、これをカーテンの下端が着底していると判断されるまで繰り返し、着底していると判断された時に、上記長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめる第2の工程と、
所望時間経過後に、上記カーテン着底検知手段により、上記カーテンの下端が着底しているかしていないかを検知し、
着底していると判断された場合には、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第二の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、上記記憶演算処理装置により、上記記憶した第一の潮位情報と上記第二の潮位情報とから上記カーテンの繰出繰入量を演算し、この演算に基づき上記長さ調整手段を操作せしめ、
着底していないと判断された場合には、上記第1の工程と上記第2の工程を行なう第3の工程と、
上記第3の工程を繰り返す第4の工程と
よりなることを特徴とする着底式汚濁防止装置の汚濁防止カーテンの長さ調整方法。
【請求項5】
工事区域の海面部分を囲む浮体と、この浮体から垂下した汚濁防止カーテンと、上記汚濁防止カーテンの下端に設けた複数のカーテン着底検知手段と、上記各カーテン着底検知手段にそれぞれ連動せしめた、上記汚濁防止カーテンの対応するカーテン部分の長さを調整せしめる1又は複数のカーテン長さ調整手段と、潮位計測手段と、上記各カーテン着底検知手段からの着底・非着底情報と上記潮位計測手段からの潮位情報とから、上記各カーテン着底検知手段に対応する上記長さ調整手段のカーテン部分の繰出繰入量を演算せしめる記憶演算処理装置とよりなる着底式汚濁防止装置の上記汚濁防止カーテンの各カーテン部分の長さを上記長さ調整手段を操作して長くし、上記カーテン部分の下端を下降せしめる第1の工程と、
所望時間経過後に、上記各カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかいないかを検知し、
着底していると判断した着底検知手段がある場合には、この着底検知手段に対応する長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、
着底していないと判断した着底検知手段がある場合には、その着底検知手段及びこれに対応するカーテン部分について、所望時間経過後に、再度上記カーテン着底検知手段によりカーテンの下端が着底しているかいないかを検知し、これをカーテン部分の下端が着底していると判断されるまで繰り返し、着底していると判断された時に、上記対応する長さ調整手段を停止せしめ、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第一の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめる第2の工程と、
所望時間経過後に、上記各カーテン着底検知手段により、上記カーテンの下端が着底しているかいないかを検知し、
着底していると判断した着底検知手段がある場合には、上記潮位計測手段により潮位を測定し、この潮位を第二の潮位情報として上記記憶演算処理装置に記憶せしめ、上記記憶演算処理装置により、上記記憶した第一の潮位情報と上記第二の潮位情報とから、上記着底検知手段の対応するカーテン部分の繰出繰入量を演算し、この演算に基づき上記長さ調整手段を操作せしめ、
着底していないと判断した着底検知手段がある場合には、その着底検知手段及びこれに対応するカーテン部分について、上記第1の工程と上記第2の工程を行なう第3の工程と、
上記第3の工程を繰り返す第4の工程と
よりなる事を特徴とする着底式汚濁防止装置の汚濁防止カーテン長さ調整方法。
【請求項6】
上記カーテン着底検知手段が、汚濁防止カーテンの下端に設けた、鉛直方向において傾動自在な傾動部材と、上記傾動部材に固定した傾斜スイッチと、上記傾動部材を所望量以上傾斜しないよう規制する傾動規制手段とよりなることを特徴とする請求項4または5記載の着底式汚濁防止装置の汚濁防止カーテンの長さ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−47028(P2012−47028A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219077(P2010−219077)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】