説明

着弾観測システム

【課題】着弾点を含む領域の状況を即時に観測することができるようにする。
【解決手段】飛翔体10に格納され、かつ、着弾前に外部に放出される観測装置20に、この観測装置20の降下速度を飛翔体10の降下速度よりも遅くするための減速機構、その飛翔体10の着弾点を含む領域を撮影するための撮影部、及び撮影データを無線送信する無線送信部とを搭載し、また、観測装置20から無線送信された撮影データを受信して表示する受信表示装置41とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロケット弾等の着弾点を含む領域の状況を観測する着弾観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射撃したロケット弾等の着弾効果を確認するために、着弾後に前進観測者を着弾点に前進させて観測することや、UAV等を用いた無人観測システムが知られているが、新無人偵察機システムという名称で、非特許文献1に開示された構成のものがある。
【0003】
その新無人偵察機システムは、ヘリコプタ型の無人機、発射回収装置、追随装置や統制装置等を含む構成のものであり、その無人機を例えば偵察地点に飛行させて、撃破の効果を偵察するというものである。
【非特許文献1】経理装備局技術計画官,平成18年度政策評価書(事後の事業評価),新無人偵察機システム,[ONLINE],[平成20年7月14日検索],インターネット<http://www.mod.go.jp/j/info/hyouka/18/jigo/sankou/jigo08_sankou.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記新無人偵察機システムにおいては、着弾後に、無人偵察機を発進させて着弾点の状況を確認しているので、その状況を確認するまでに時間を要し、従ってまた、次弾の射撃の要否の判断を適時に行うことが難しいという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、着弾点を含む領域の状況を即時に観測することができる着弾観測システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、飛翔体に格納され、かつ、着弾前に外部に放出される観測装置に、この観測装置の降下速度を飛翔体の降下速度よりも遅くするための減速機構、その飛翔体の着弾点を含む領域を撮影するための撮影部、及び撮影データを無線送信する無線送信部とを搭載していること、観測装置から無線送信された撮影データを受信して表示する受信表示装置とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着弾点を含む領域の状況を着弾直前から即時に観測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る着弾観測システムの概略構成を示す説明図、図2は、図1に示す飛翔体のI‐I線に沿う概略断面図、図3は、観測装置の概略構成図である。
本発明の一実施形態に係る着弾観測システムAは、飛翔体10、この飛翔体10を発射するための発射装置30、及び基地局40を有して構成されている。
【0009】
発射装置30は、これに搭載した単発又は複数発の飛翔体10を発射できるものである。
飛翔体10は、推進剤である火薬の燃焼や圧縮ガスの噴出によって推力を得て、自力で飛行する能力のあるロケット弾やミサイルを含むものであり、本実施形態においては、飛翔体10の胴体11内に、図2に示すようにして、2つの観測装置20,20を格納している。
【0010】
飛翔体10に格納する観測装置20の個数は、上記した2つに限るものではなく、1つ又は3つ以上としてもよい。すなわち、観測装置の個数は、後記する撮影部の性能や撮影領域の広狭等により適宜増減設定すればよいものである。
【0011】
観測装置20は、例えば図2に示すように、胴体11の軸線O1を中心とする両側位置に対称にして配設されており、例えばガス発生装置により膨出するエアバッグ(いずれも図示しない)等によって、軸線O1を中心とする半径方向に放出されるようになっている。
放出する距離は、観測装置の個数、観測装置20に搭載した撮影部の性能や撮影領域の広狭等により適宜設定する。
【0012】
観測装置20は、図3に示すように、装置本体21内に無線送信部22を配設するとともに、その装置本体21の一端部21aに減速機構23を、また、他端部21bに撮影部24を配設している。
【0013】
減速機構23は、観測装置20自体の降下速度を飛翔体10の降下速度よりも遅くするためのものであり、本実施形態においては膨張式のバリュート25と、観測装置20を飛翔体10から放出した後、そのバリュート25を所定のタイミングで外部に放出して膨張させるためのバリュート放出部26とを有して構成されている。
【0014】
バリュート25は、放出された後に次第に膨張する空気抵抗の大きい気球であるが、このバリュートに限るものではなく、飛び出し式の金属製フィンやパラシュート等を採用することができる。
【0015】
本実施形態に示す観測装置20,20の減速機構23,23は、各観測装置20を互いに同一の降下速度となるように設定されている。具体的には、同一のバリュートを用いている。
なお、図1において、(ウ)で示すバリュート25は膨張途中のもの、また、(エ)は、膨張完了したものを示している。
【0016】
装置本体21は円筒形に形成されており、これの内部に、着弾点Pを含む領域aを撮影するための撮影部24、及び撮影データを無線送信するための無線送信部22、及び図示しない電源を配設している。
撮影部24は、静止画データや動画データを撮影するIRカメラ等を用いることができ、装置本体21の他端部(下端部)にレンズ24aを配設している。
【0017】
すなわち、降下する観測装置20は、装置本体21の一端部21aがバリュート25によって常時上向きとなり、従ってまた、他端部が常時下向きとなるために、その他端部にレンズ24aを配設することにより、降下するときにレンズ24aが常時地表を向いた姿勢となるようにしている。なお、レンズ24aとして広角レンズを採用すると、より広い領域を撮影できる。
【0018】
無線送信部22は、撮影部24によって撮影した撮影データを、下記の受信表示装置41に向けて無線送信する機能を有するものである。
【0019】
基地局40には、受信表示装置41を設けている。
受信表示装置41は、上記した飛翔体10の無線送信部22から無線送信された静止画データや動画データ等の撮影データを受信する受信部と、受信した撮影データを表示するディスプレイ(いずれも図示しない)とを有する構成のものである。なお、図1において42はアンテナである。
【0020】
以上の構成からなる着弾観測システムの動作について説明する。
まず、発射装置30から飛翔体10が発射された後、例えば(ア)で示す位置においてロケットモータの燃料が終了すると、その後、飛翔体10は弾道飛翔し、(イ)で示す着弾前の所定の高度において、観測装置20,20が放出される。
【0021】
観測装置20,20が放出されると、これに配設されているバリュート25,25が膨張し始め、その膨張とともに観測装置20の降下速度が、飛翔体10の降下速度よりも小さくなり、観測装置20…よりも先に飛翔体10が着弾する。
【0022】
すなわち、飛翔体10が着弾してから観測装置20,20が着弾するまでの間、観測装置20…に搭載した撮影部24によって、着弾直前から、着弾後の飛翔体10の着弾点Pを含む広い領域aが撮影され、その撮影した撮影データは無線送信部22によって基地局40に無線送信される。
基地局40では、オペレータがディスプレイ(図示しない)に表示されている飛翔体10が着弾点Pを含む領域aの画像を見ながら、次弾の発射を行うか否かを判断することになる。
【0023】
以上の構成からなる本発明の一実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
・飛翔体の着弾前から着弾点を含む広い領域の状況を確実に観測して把握することができる。
・飛翔体から複数の観測装置を放出しているので、着弾点を含むより広い領域、又は着弾点の周辺の領域を撮影することができる。
・減速機構としてバルートを使用しているので、飛翔体から放出した後、風による影響を低めて、着弾点を含む領域を確実に撮影することができる。
【0024】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・上記した実施形態においては、各観測装置を互いに同一の降下速度となるように各減速機構を設定した例について説明したが、各観測装置を互いに異なる降下速度となるように各減速機構を設定してもよい。これにより、撮影時間を長くすることができる。
【0025】
・上記した実施形態においては、装置本体に撮影部を固定した構成について説明したが、撮影部又は観測装置全体に俯角を持たせて旋回させる俯角旋回機構部を設けた構成にしてもよい。これにより、広範囲を走査して撮影できるので、着弾点を含めたより広い範囲の状況をさらに確認しやすくなる。
【0026】
・一つの観測装置に、互いに異なる領域を撮影するように配置した複数の撮影部を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る着弾観測システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示すI‐I線に沿う概略断面図である。
【図3】観測装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0028】
10 飛翔体
20 観測装置
22 無線送信部
23 減速機構
24 撮影部
41 受信表示装置
P 着弾点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体に格納され、かつ、その飛翔体の着弾前に外部に放出される観測装置に、この観測装置の降下速度を飛翔体の降下速度よりも遅くするための減速機構、その飛翔体の着弾点を含む領域を撮影するための撮影部、及び撮影データを無線送信する無線送信部とを搭載していること、
観測装置から無線送信された撮影データを受信して表示する受信表示装置とを有することを特徴とする着弾観測システム。
【請求項2】
観測装置は、装置本体に無線送信部を内設するとともに、その装置本体の一端部に減速機構を、また、他端部に撮影部を配設していることを特徴とする請求項1に記載の着弾観測システム。
【請求項3】
飛翔体に複数の観測装置を格納していることを特徴とする請求項1又は2に記載の着弾観測システム。
【請求項4】
各観測装置を互いに同一の降下速度となるように各減速機構を設定していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の着弾観測システム。
【請求項5】
撮影部又は観測装置全体に俯角を持たせて旋回させる俯角旋回機構部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の着弾観測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−85040(P2010−85040A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255907(P2008−255907)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【Fターム(参考)】