説明

着脱可能なハンドル装置

【課題】 扉のハンドルを着脱可能にすると共に、安全性を高め、また、使い勝手を向上させる。
【解決手段】 扉の表面に基板1装着し、この基板に、内端にハンドル軸と係合する第1凹陥部13を形成した駆動軸11及びハンドル受18を相互に独立に回動できるように支承すると共に、ハンドル受18を化粧カバー32で覆い、更に、化粧カバー32及びハンドル受18に、その半径方向から、ハンドル16が差し通される第2逃げ溝6を形成すると共に、ハンドル受18及び駆動軸11の所定の相対角度位置において第2逃げ溝6と整合する駆動軸19の外側面に、ハンドルの先端部と係合する受穴15を形成し、また、ハンドルを施錠角度位置及び解錠角度位置の2ヶ所で抜き外すことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着脱可能なハンドル装置(以下単にハンドル装置という)に係り、特に、安全性を高めると共に、使い勝手をも向上させたハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、下記特許文献1を以て、新規なハンドル装置を提案した。
このハンドル装置は、例えば劇場や音楽ホール等において、防音扉を観客が自由に開け閉めしては都合が悪い場合があるので、自由に開け閉めできないように、グレモン錠等の錠前を施解錠するハンドルを着脱できるようにしたものである。
【0003】
そして、上記ハンドル装置は、中央部に駆動軸が貫通する挿通孔を開口させた板状体で、この挿通孔を錠箱の軸孔と同軸にして扉の表面に装着される基板と、内端面にハンドル軸と係合する異形の第1凹陥部を形成し、内端部を基板の挿通孔と嵌合させた状態で、基板に回動自在に支承された駆動軸と、この駆動軸と回動可能に嵌合する厚板状のハンドル受と、このハンドル受及び駆動軸の嵌合部を覆うようにハンドル受に装着されたカップ状の化粧カバーと、先細にした先端部裏面側にピン状のストッパーを植設した細長い板状体であるハンドルとを有し、化粧カバー及びハンドル受にその半径方向から、ハンドルが差し通されるガイド溝及びストッパーとの干渉を避けるための逃げ溝を形成すると共に、ハンドル受及び駆動軸の所定の相対角度位置においてガイド溝と整合する駆動軸の外側面に、ハンドルの先端部と係合する受穴を形成し、更に、上記基板の所定の角度位置に、半径方向に延在するストッパーの導入溝と上記基板の挿通孔の開口端縁に沿うストッパーの移動角度規制溝とを連結した全体の形状が略Y字形の第2凹陥部を形成し、ハンドル受にハンドルを差込まない状態ではハンドル受が空回りし、ストッパーの導入溝とハンドル受の逃げ溝の角度位置が合致したとき、ガイド溝にハンドルの先端部を挿入して駆動軸とハンドル受とをハンドルを介して一体に連結すると共に、ストッパーを上記第2凹陥部の移動角度規制溝に導入して、ハンドルの回動角度を規制する一方、ハンドルがガイド溝から抜脱することを防止するようにしたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4181946号に係る特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたハンドル装置は、ハンドル受にハンドルを挿入して所定の方向に所定の角度ハンドルを回すことにより錠前を解錠し、その回動角度位置において防音扉を開放して観客等の退出を待ち、退出後ハンドルを挿入角度位置にまで戻して錠前を施錠すると共に、ハンドル受からハンドルを抜き外す構造である。
【0006】
しかして、上記特許文献1に記載されたハンドル装置は、ハンドル受からハンドルを抜き外すには錠前を施錠しなければならず、錠前を解錠して防音扉を開いた状態で劇場や音楽ホールなどの清掃をするにはハンドルをハンドル受に挿入しておかなければならない。
【0007】
この場合例えば悪戯等によるハンドルの抜き外し、及び持ち去りの心配があるので、上記ハンドル装置は使い勝手上未だ改良の余地がある。
【0008】
そこで、この発明は、錠前の施錠及び解錠の如何に拘らずハンドルをハンドル受から抜き外して安全な場所に保管しておくことができる新規なハンドル錠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、中央部に駆動軸が貫通する挿通孔を開口させた板状体で、その正面形の下方に、第1乃至第3逃げ溝を、第2逃げ溝を中心にしてその両側に第1及び第3逃げ溝を対称的に形成すると共に、上記挿通孔を錠箱の軸孔と同軸にして扉の表面に装着される基板と、内端面にハンドル軸と係合する異形の第1凹陥部を形成し、内端部を基板の挿通孔と嵌合させた状態で、基板に回動自在に支承された駆動軸と、この駆動軸と回動可能に嵌合する厚板状のハンドル受と、このハンドル受及び駆動軸の嵌合部を覆うようにハンドル受に装着されたカップ状の化粧カバーと、先端部裏面側にピン状のストッパーを植設した細長い板状体であるハンドルとを有し、化粧カバー及びハンドル受に、その半径方向からハンドルが差し通されるガイド溝及びストッパーとの干渉を避けるための第4逃げ溝を形成すると共に、ハンドル受及び駆動軸の所定の相対角度位置においてガイド溝と整合する駆動軸の外側面に、ハンドルの先端部と係合する受穴を形成し、ハンドル受にハンドルを差込まない状態ではハンドル受が空回りし、基板の第2逃げ溝とハンドル受の第4逃げ溝の角度位置が合致したとき、ガイド溝にハンドルの先端部を挿入して駆動軸とハンドル受とをハンドルを介して一体に連結すると共に、基板の段部によってハンドルの回動角度を規制し、一方、ハンドルを第1及び第3逃げ溝の一方における角度位置で外方に引き抜くことにより、錠前を解錠状態に保った状態でハンドルを安全な場所に保管することができるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるハンドル装置は、錠箱の軸孔を駆動軸及び化粧カバーで覆う構造なので、正規の構造のハンドルをガイド溝に差し通し、その先端部を駆動軸の受穴に係合させない限り駆動軸及び錠箱のハンドル軸を回動させることができず、したがって錠前の安全性が向上する。
【0011】
また、ハンドルをハンドル受のガイド溝に差込まない常態においては、ハンドル受及び化粧カバーは空回りするので、通常の工具では錠箱の回転作用軸を回すことができず、ハンドル装置の安全性が更に向上する。
【0012】
更にまた、施錠状態においてハンドルをハンドル受けに差し入れ、錠前を解錠したハンドルの角度位置においてハンドルをハンドル受から引き抜くことができるので、錠前を解錠状態に保った状態でハンドルを安全な場所に保管することができる、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】基板の正面図。
【図2】錠箱の側面図。
【図3】駆動軸の側面図。
【図4】駆動軸の内端面図。
【図5】駆動軸の受穴部分の断面図。
【図6】この発明の一実施例によるハンドル装置の断面図。
【図7】ハンドル受の裏面図。
【図8】ハンドル受の下面図。
【図9】化粧カバーを外して示すハンドル装置の正面図。
【図10】この発明の一実施例によるハンドル装置の下面図。
【図11】この発明の一実施例によるハンドル装置の正面図。
【図12】ハンドルを解錠角度位置にまで回した状態を示す図9と同様の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
錠箱の回転作用軸とハンドルとを常態では空回りするハンドル受で連結し、通常の工具では錠箱の回転作用軸を回すことができないようにすると共に、ハンドル受とハンドルの抜き差しの角度位置を2ヶ所設け、錠前の施錠時及び解錠時の両方においてハンドルを抜き外し、これを安全な場所に保管できるようにした。
【実施例1】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の一実施例によるハンドル装置について説明する。
図1において符号1は基板を示し、この基板1は、全体の形状が蛇の目状の板状体で、その中央には、後に詳述する駆動軸が貫通する挿通孔2が開口している。
【0016】
上記基板1の正面形の図1における下方は、段部3、3を境にして一段低くなっており、この低くなっている部分の外周部には一対の略茄子型の突出部4、4が島状に形成されている。
【0017】
そのため、上記基板1の下方には、第1乃至第3逃げ溝5〜7が形成されることになる。
【0018】
そして、前記特許文献1に記載された発明と本願発明との大きな相違は、特許文献1に記載された発明における1本の逃げ溝(導入溝15)が、本願発明においては3本であることで、他の構成は本願発明と大同小異である。
【0019】
上記のように構成された基板1は、その周辺に開口した付番しない皿付のビス穴を挿通する図示しない止めねじにより、上記挿通孔2を錠箱8の軸孔9(図2参照)と同軸にして、扉の表面にねじ止めされる。
【0020】
一方、図3において符号11は駆動軸を示し、この駆動軸11は、外端にフランジ12を一体に形成した短円柱体で、その内端面には、図4に示すように、異形の第1凹陥部13が形成されている。
【0021】
なお、この第1凹陥部13の断面形状は、図4に示すように、断面方形のハンドル軸14(図2参照)と係合角度位置を3種類に調節可能な形状であるが、この形状は本発明の必須の構成要件ではない。
【0022】
また、この駆動軸11のフランジ12付近の外側面に、後述するハンドルの先端と係合する受穴15(図3及び図5参照)が形成されている。
【0023】
図示の実施例における受穴15の断面形状は、細長い矩形の先端部を円弧状に成形したハンドル16(図6参照)の先端の形状に合せた同形になっているが、この受穴の断面形状はこの発明の必須の構成要件ではない。
【0024】
更にまた、駆動軸11の内端部外周面には、雄ねじ部(図3及び図6参照)が形成されている。
【0025】
他方、図7及び図8において符号18はハンドル受を示し、このハンドル受18は、外形が例えばギターの胴を思わせる形状の厚板体で、その中央部には駆動軸の外端部と嵌合し得る嵌合孔19が形成されている。
【0026】
そして、この嵌合孔19の外端部には、駆動軸の前記フランジ12を収納できる止め段部21が形成されている。
【0027】
また、ハンドル受18の図7における下方には、上記嵌合孔19の半径方向から、細長い厚板であるハンドル16(図6)が差し通されるガイド溝22と、ハンドルの裏面に植設されたピン状のストッパー23(図6参照)との干渉を避けるための第4逃げ溝24とが、断面T字形に交差する態様で連設されている(図8参照)。
【0028】
なお、図7において、符号25は後述のクリックボール26及びクリックばね27(図9参照)を収納するボール収納孔を示す。
【0029】
上記のように構成されたハンドル受18及び駆動軸11は、図6に示すように、その内端部を基板1の挿通孔2と嵌合させ、基板1の裏側に突き出た駆動軸11の内端部にワッシャー28を嵌め、更に、その内側にリング状の固定環29を螺着して、セットビス31で固定する。
【0030】
そして、図9に示すようにハンドル受18及び駆動軸11を坦持した基板1を扉の表面にねじ止めし、図6に示すように、ハンドル受18及び駆動軸11の外面における嵌合部を覆うようにカップ状の化粧カバー32を装着する。
【0031】
この化粧カバー32をハンドル受18に装着するには、例えば、図8においてハッチングを施したハンドル受の部分にタップを立て、図10に示すように、カップ状の化粧カバー32をねじ止めする。
【0032】
なお、化粧カバー32の図6における下方の部分をハンドルとの干渉を避けるために切り欠くものとし、更に、図8におけるハッチングはタップを立てる部分を明瞭にするためであって、実際にハッチングが施されているわけではない。
【0033】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるハンドル装置は、図12に示すように、第1凹陥部13を錠箱のハンドル軸と嵌合させた駆動軸11は、錠前の施解錠に応じて所定の角度位置をとり、その角度位置を保持する。
【0034】
したがって、固定された駆動軸11に対し、これと回動可能に嵌合するハンドル受18は常態、すなわちハンドルを差し込まない状態では空回りする。
【0035】
一方、図9及び図10に示すように基板の第2逃げ溝6(図1参照)及びハンドル受の第4逃げ溝24(図7参照)の角度位置が合致したとき、ガイド溝22にハンドル16の先端部を挿入することが可能になる。
【0036】
このときには、ストッパー23が第2逃げ溝6及び第4逃げ溝24に共通に係合及び摺接しつつハンドル受18の内方に進入する。
【0037】
そして、ハンドル16を一杯に差し込んだとき、図9に示すように、駆動軸11とハンドル受18とはハンドル16を介して一体的に連結され、同時に、クリックボール26がハンドルの先端部側端縁に形成されたクリック溝(付番せず)に落ち込み、挿入されたハンドルの先端部を準安定的にハンドル受18に固定する。
【0038】
この状態では、ハンドル24を操作してのハンドル軸5の駆動が可能になり、扉の開け閉めを行うことができる。
【0039】
また、このときストッパー23が基板1の段部3、3(図1参照)に衝止されるから、ハンドル16は過大に回動できず、したがってハンドル軸及びこれに連結された操作部材に過大な力が掛からない。
【0040】
ハンドルを外すときには、第2逃げ溝6と第4逃げ溝24とを角度的に整合させた後ハンドル16を外方に引くと、クリックボールとクリック溝との係合が外れ、ハンドルをハンドル受18から外すことができる。
【0041】
また、このハンドル装置を例えばグレモン錠などの錠前と組み合わせて用いる場合には、グレモン錠のハンドル軸は施錠角度位置、及び解錠角度位置において安定してその角度位置を保つことができる。
【0042】
したがって、これらの施解錠角度位置の関係角度をα(図1に示す実施例においてはα=60度)とし、図1の第2及び第3逃げ溝6、7の関係角度を同じαとすると、錠前が施錠状態のとき第2逃げ溝6からハンドルを差し込み、ハンドルを反時計方向にα回して解錠し、其の儘ハンドルを外方に引けば、錠前を解錠状態にしたままハンドル16をハンドル受18から抜き外して安全な場所に確保しておくことができる。
【0043】
なお、図1においては、第2逃げ溝6に関し第3逃げ溝7と対称的な角度位置に第1逃げ溝5が形成されているが、これはハンドルが3つの角度位置をとるという意味ではなく、第1及び第3逃げ溝5、7の一方は扉の左右勝手に応じて使用されない。
【符号の説明】
【0044】
1 基板
2 挿通孔
3 段部
4 突出部
5 第1逃げ溝
6 第2逃げ溝
7 第3逃げ溝
8 錠箱
9 軸孔
11 駆動軸
12 フランジ
13 第1凹陥部
14 ハンドル軸
15 受穴
16 ハンドル
17 雄ねじ部
18 ハンドル受
19 嵌合孔
21 止め段部
22 ガイド溝
23 ストッパー
24 第4逃げ溝
25 ボール収納孔
26 クリックボール
27 クリックばね
28 ワッシャー
29 固定環
31 セットビス
32 化粧カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に駆動軸が貫通する挿通孔を開口させた板状体で、その正面形の下方に、第1乃至第3逃げ溝を、第2逃げ溝を中心にしてその両側に第1及び第3逃げ溝を対称的に形成すると共に、上記挿通孔を錠箱の軸孔と同軸にして扉の表面に装着される基板と、内端面にハンドル軸と係合する異形の第1凹陥部を形成し、内端部を基板の挿通孔と嵌合させた状態で、基板に回動自在に支承された駆動軸と、この駆動軸と回動可能に嵌合する厚板状のハンドル受と、このハンドル受及び駆動軸の嵌合部を覆うようにハンドル受に装着されたカップ状の化粧カバーと、先端部裏面側にピン状のストッパーを植設した細長い板状体であるハンドルとを有し、化粧カバー及びハンドル受に、その半径方向からハンドルが差し通されるガイド溝及びストッパーとの干渉を避けるための第4逃げ溝を形成すると共に、ハンドル受及び駆動軸の所定の相対角度位置においてガイド溝と整合する駆動軸の外側面に、ハンドルの先端部と係合する受穴を形成し、ハンドル受にハンドルを差込まない状態ではハンドル受が空回りし、基板の第2逃げ溝とハンドル受の第4逃げ溝の角度位置が合致したとき、ガイド溝にハンドルの先端部を挿入して駆動軸とハンドル受とをハンドルを介して一体に連結すると共に、基板の段部によってハンドルの回動角度を規制し、一方、ハンドルを第1及び第3逃げ溝の一方における角度位置で外方に引き抜くことにより、錠前を解錠状態に保った状態でハンドルを安全な場所に保管することができるようにしたことを特徴とする着脱可能なハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−211435(P2012−211435A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76350(P2011−76350)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)