説明

睡眠状態判定装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は睡眠状態を判定する睡眠状態判定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来この種の睡眠状態判定装置は、ポリグラフに代表されるように各種の電極を人体に装着し脳波や眼球運動、筋電位を検出して検出信号の波形処理を行なって睡眠状態を判定するものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の睡眠状態検出装置では、脳波や眼球運動、筋電位の測定結果を目視作業で分析したり、複雑な信号処理を行なって解析したりするといった煩雑な作業が必要であり、そのために、大きな労力やコストがかかるといった課題があった。
【0004】睡眠状態を簡単にかつ低コストで検出できれば寝室の環境制御や居眠り防止等といった製品分野への応用が実現でき、社会生活への貢献も大なるものがあり、そのためにも実用的な睡眠状態検出装置が望まれていた。
【0005】本発明は睡眠状態を簡単にかつ低コストで検出する実用的な睡眠状態判定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、人体の体動により変形を受ける圧電素子と、前記圧電素子の出力があらかじめ定められた第1の設定値未満である場合は人体が不在であると判定し、前記前記体動検出手段の出力が前記第1の設定値以上であり、かつ、あらかじめ定められた第2の設定値未満である場合は人体が安静状態で存在すると判定し、前記前記体動検出手段の出力が前記第2の設定値以上である場合は人体が体動を生起したと判定する比較器とを備えた体動検出手段と、前記比較器で在床が判定されると計時動作を開始し、前記比較器で不在または体動が判定されると計時動作をリセットするタイマーと、前記タイマーからの出力を入力としてファジィ推論により睡眠状態を判定するファジィ推論手段と、前記ファジィ推論のための判定規則を記憶する判定規則記憶手段とを備えたものである。
【0007】
【作用】本発明は上記構成によって以下のように作用する。体動検出手段により人体に体動が起っているかどうかが検出されると、タイマーにより体動が起こっていない状態の継続時間すなわち体動静止時間が計時される。この体動静止時間を入力としてファジィ推論手段では判定規則記憶手段に記憶された判定規則を参照してファジィ推論により睡眠状態を判定する。
【0008】
【実施例】以下本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本実施例をベッドに応用した際の外観斜視図、図2はブロック図である。図1および図2において、1は人体の体動を検出する体動検出手段で、圧電素子2、フィルター3、増幅器4、整流器5、平滑器6、比較器7から構成される。圧電素子2はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の高分子圧電材料を薄膜状にし両面に可とう性の電極膜を付着させテープ状に成形されたもので、ここではマットレス8の表面に装着されている。9は体動検出手段1の出力に基づき体動の静止時間を計時するタイマーである。10は判定規則記憶手段で、体動静止時間Tから睡眠状態を推論するための判定規則を記憶している。ここでいう判定規則とは、例えば「もし、体動静止時間Tが長いならば(条件部)、入眠している確率が高い(出力部)」「もし、体動静止時間Tが短いならば(条件部)、入眠している確率は低い(出力部)」等のif〜then〜形式で記述される。ここで「長い」あるいは「短い」という変数は例えば図4R>4に示すメンバーシップ関数で定義される。判定規則記憶手段10は、上記のような判定規則の条件部を記憶する条件記憶手段10aと、判定規則の出力部を記憶する出力部記憶手段10bとから構成される。11はファジィ推論手段で、体動静止時間Tと上記判定規則とから推論を行い睡眠状態を判定する。ここで、ファジィ推論手段11は、体動検出手段1と条件記憶手段10aとから体動静止時間Tの判定規則の条件部への適合度を求める適合度演算手段11aと、求めた適合度と出力部記憶手段10bの出力信号とで判定規則の出力部に重み付けを行なう重み付け演算手段11bと、重み付け演算手段11bにより重み付けされた判定規則の出力部から重心演算で睡眠状態を求める重心演算手段11cとから構成される。
【0009】またフィルター3、増幅器4、整流器5、平滑器6、比較器7、タイマー9、判定規則記憶手段10、ファジィ推論手段11、は回路ユニット12に内蔵されている。圧電素子2と回路ユニット12とはシールド線13で接続されている。
【0010】上記構成において、人体の体動により圧電素子2が変形を受けると、その変形の程度に応じて圧電素子2より電圧が発生する。この出力信号はフィルター3によりろ波され、増幅器4により増幅され、さらに整流器5により整流され、平滑器6により平滑化される。図3に実際の就寝の際の平滑器6の出力波形を示す。図より入床、寝返り、離床といった粗大な体動の場合は圧電素子2は大きな変形を受け平滑器6から大きな出力がでる。また、人体が安静状態であれば人体の心臓の活動や呼吸活動により伝搬される身体の微小な体動により平滑器6からは比較的低いレベルの出力がでる。人体が不在の場合は平滑器6の出力はゼロである。比較器7では平滑器6の出力Vとあらかじめ定めされた2つの設定値Va、Vbとを以下のように比較、判定する。V<Vaならば人体が不在であると判定する。Va≦V<Vbならば人体が安静状態で存在すると判定する。さらにVb<Vならば人体が体動を生起したと判定する。そして、タイマー9では比較器7で在床が判定された場合に計時動作が開始される。ただし、この計時動作は比較器7で不在または体動が判定されるとリセットされる。すなわち、タイマー9では体動静止時間が計測される。
【0011】この体動静止時間T=Toを入力としてファジィ推論手段11では判定規則記憶手段10に記憶された判定規則を参照して以下のようにしてファジィ推論により睡眠状態を判定する。まず、適合度演算手段11aでは体動静止時間Tが条件部記憶手段10aの判定規則の条件部に入力され、適合度が求められる。例えば図4の横軸上のToに垂線を立て各関数との交点が適合度ωになる。今、表1のようになったと仮定する。
【0012】
【表1】


【0013】次に、求めた適合度ωを用い重み付け演算手段11bにより出力部記憶手段10bの判定規則の出力部に重み付け演算が行なわれる。その結果を表2に示す。
【0014】
【表2】


【0015】次に重心演算手段11cにより重み付けされた判定規則の出力部の関数が合成されその重心が求められる。これが入力された体動静止時間Toに対する睡眠状態Sになる。結果を図5に示す。
【0016】このように人体に体動が起こった場合には前述の演算を繰り返し、睡眠状態を判定する。比較器7で人体の不在が判定された場合は睡眠状態の判定は行なわない。これにより、人体の体動といった簡単な指標により睡眠状態を判定することができるといった実用的な睡眠状態判定装置を提供できる。
【0017】上記実施例では睡眠状態として入眠している確率すなわち睡眠段階でいうstage2である確率をとったが、判定規則を適宜変更することにより徐波睡眠(stage3&4)である確率、覚醒または、うとうとしている(stage1)確率、レム睡眠である確率等も判定することができる。これにより、例えば、入眠を促進し、起床を促進するといった寝室における環境制御や居眠り防止用の製品へ応用ができ、したがって社会生活へ利用されてその貢献度が高くなるというメリットがある。
【0018】圧電素子2は複数個使用してもよく体動を検出する精度が向上する。また、圧電素子2はマットレスの体軸方向(頭部〜足部方向)に装着してもよい。
【0019】また、体動を検出できれば圧電素子の代わりに容量センサや重量センサといった他の感圧センサを使用してもよい。
【0020】また、圧電素子の代わりに、図6に示すような赤外線センサ14で体動を検出したり、超音波センサ、光センサ等により体動を検出する構成としてもよい。
【0021】さらに、判定の精度を向上させるために、体動静止時間と他の変数、例えば人体が存在してからの経過時間と平滑器の出力レベルとの2変数を入力して睡眠状態でファジィ推論するといった構成としても良い。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明の睡眠状態検出装置によれば、人体の体動といった簡単な指標により睡眠状態を簡単にかつ低コストで検出できるといった効果があり、寝室の環境制御や居眠り防止等といった製品分野への応用が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における睡眠状態検出装置の外観斜視図
【図2】同装置のブロック図
【図3】同装置の平滑器からの出力を示す波形図
【図4】同装置の判定規則記憶手段に用いるメンバーシップ関数を示す図
【図5】同装置の重心演算手段の演算結果を示す図
【図6】本発明の他の実施例における睡眠状態検出装置の外観斜視図
【符号の説明】
1 体動検出手段
9 タイマー
10 判定規則記憶手段
11 ファジィ推論手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】人体の体動により変形を受ける圧電素子と、前記圧電素子の出力があらかじめ定められた第1の設定値未満である場合は人体が不在であると判定し、前記前記体動検出手段の出力が前記第1の設定値以上であり、かつ、あらかじめ定められた第2の設定値未満である場合は人体が安静状態で存在すると判定し、前記前記体動検出手段の出力が前記第2の設定値以上である場合は人体が体動を生起したと判定する比較器とを備えた体動検出手段と、前記比較器で在床が判定されると計時動作を開始し、前記比較器で不在または体動が判定されると計時動作をリセットするタイマーと、前記タイマーからの出力を入力としてファジィ推論により睡眠状態を判定するファジィ推論手段と、前記ファジィ推論のための判定規則を記憶する判定規則記憶手段とからなる睡眠状態判定装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【特許番号】第2768048号
【登録日】平成10年(1998)4月10日
【発行日】平成10年(1998)6月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−119726
【出願日】平成3年(1991)5月24日
【公開番号】特開平4−347139
【公開日】平成4年(1992)12月2日
【審査請求日】平成8年(1996)3月13日
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】特開 平2−148182(JP,A)
【文献】特開 平3−24627(JP,A)