説明

睡眠覚醒障害の治療

【課題】睡眠覚醒障害の治療の提供
【解決手段】本発明は、対象者における日中の過度の眠気(EDS)を治療する方法であって、式(I)
【化1】


(I)
[式中、Rは水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、1ないし3個の炭素原子を含むアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及び1ないし3個の炭素原子を含むチオアルコキシ基からなる群より選択された一つを表し;
xは1ないし3の整数を表すが、但し、xが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なり得;
1及びR2は互いに同一又は異なって、水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基からなる群より独立して選択され;R1及びR2は結合して、水素原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された一つで置換された5ないし7員の複素環(ここで該環状化合物は1ないし2個の窒素原子及び0ないし1個の酸素原子を含み得、ここで前記窒素原子は互いに又は前記酸素原子と直接的に結合しない。)を形成し得る。]で表される化合物:式(I)又はその医薬的に許容される塩又はそのエステルの治療有効量を投与する段階を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、薬理学、神経学及び精神医学に関し、また、睡眠覚醒障害の治療方法に関する。より特には、本発明は、日中の過度の眠気及び病的な眠気を含む睡眠覚醒障害の治療のための特定のカルバメート化合物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
日中の過度の眠気(EDS)又は病的な眠気は、多種の睡眠及び覚醒状態の障害と関連する日中の過度の眠気を言及する。これらの障害は、ナルコレプシーのような原発性の睡眠障害であり得るか、又は、それらは睡眠パターンに副作用を及ぼす幾つかの他の病状の結果であり得る。
【0003】
日中の過度の眠気(EDS)は、睡眠専門クリニックにおいて観られる患者の主要な病状であるが、一般人口の12%までを侵している。EDSの作用は、消耗性であり得、また、生死にかかわることでさえあり得る。EDSを有する患者は、心理社会的苦痛、仕事又は学校実績の低下及び事故の危険性の増大を呈し得る。EDSの鑑別診断は、睡眠ポリグラフ計及び多睡眠潜伏検査のような客観的評価を必要とする。
【0004】
4つの主なEDSの原因が存在する:(1)ナルコレプシー及び特発性CNS過眠症のような中枢神経系(CNS)の病理学的異常;(2)質的及び量的な睡眠不足、例えば、睡眠時無呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸、及び、パーキンソン病、尿失禁、多発性硬化症、疲労、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、大うつ病、双極性障害病及び心虚血を含む種々の病状からの結果として生じる、例えば慢性及び急性疼痛に起因する夜間睡眠不足;(3)環境と体内時計の不整合(例えば、時差ぼけ又は交代勤務);及び(4)治療的に又は副作用として眠気を増大し得る薬剤。
【0005】
病因に依存して、EDSのための管理戦略は、就寝時間の延長、仮眠、手術、種々の医療用機器(例えば、口腔装置、持続的気道陽圧法)及び薬物療法を含む。
【0006】
疲労及び過度の眠気はまた、主な抑うつ障害及び双極性障害のような他の気分障害の一般症状であり、抗うつ薬療法に関連する副作用であり得るか又は抗うつ薬療法での不十分な治療の際、残った症状であり得る。
【0007】
ナルコレプシーは、EDSの一般的な原因であり、118年前にGelineau,J.B.により最初に認められた日常生活に支障をきたすほどの神経学的な障害である(De la narcolepsy,Gazette des Hopitaux Paris(1880)53:626−628)。ナルコレプシーは、断続的な睡眠発作、持続性の、日中の過度の眠気、並びに入眠REM期、脱力発作、睡眠麻痺及び入眠時幻覚のような異常な急速眼球運動(“REM”)睡眠発現、またはその両方により特徴付けられる。ナルコレプシー患者の殆どが、夜間の睡眠障害も有する。
【0008】
ナルコレプシーの再検討のために、一般的に、Chokroverty,S.(編),Sleep Disorders Medicine:Basic Science,Technical Considerations,and Clinical Aspects,第22版,Butterworth Heinemann,アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、ボストン、1999;Aldrich,M.,Sleep Medicine,Oxford University Press,アメリカ合衆国、ニューヨーク州、ニューヨーク;Vgnotzas,A.N.等.,Annu.Rev.Me
d.(1999)50:387−400;及びGuillenminault,C.,Narcolepsy Syndrome in Principles and Practice of Sleep Medicine,第2版(Kryger,M.H.,等(編),(W.B.Saunders アメリカ合衆国、ペンシルベニア州、フィラデ
ルフィア、1989),338−246頁)参照。
【0009】
ナルコレプシーの症状は、日中の過度の眠気(EDS)、入眠時及び覚醒時幻覚(それぞれ入眠への移行及び覚醒への移行間の幻覚)、脱力発作(筋緊張の急激な及び可逆的な損失)、睡眠麻痺(入眠時及び覚醒時の運動不能)及び入眠時のREM睡眠(Guilleminault,C.1989)を含む。ナルコレプシーにおいて、睡眠は不適切な時間に及び危険で厄介な状況において起る。総睡眠時間は正常に近いものの、夜間睡眠は頻繁する目覚めにより中断される(Mitler,M.等、Psych Clin.N.Amer.(1987)10:593−606)。
【0010】
脱力発作、損なわれていない意識を伴う、筋緊張の急激な損失による、一時的な、部分的な又は完全な麻痺は、典型的には、笑い、怒り及び狼狽を伴うような急激な強い感情により引き起こされる。ある患者において、脱力状態又は筋緊張の反復的な期間が生じ、数時間又は数日続き得る。
【0011】
ナルコレプシーはまた、他の動物においても発生することが報告されており、犬において最も集中的に研究されてきた(Foutz,A.S.,等、(1979)Sleep 1:413−421;Nishino,S.及びMignot,E.(1997)Prog.Neurobiol.52:27−78;Cederberg,R.,等、(1998)Vet.Rec.142,31−36)。ドーベルマン ピンシェル及びラブラドール レトリバーにおける犬のナルコレプシーは、明確に、完全な浸透度を伴う単遺伝子常染色体の劣性形質canarc−1として遺伝される(Foutz,A.S.,等、(1979)Sleep 1:413−421;Baker,T.L.及びDement,W.C.(1985)、Canine narcolepsy−cataplexy syndrome:evidence for an inherited monoaminergic−cholinergic imbalance in Brain Mechanisms of Sleep,D.J.McGinty,R.Drucker−Colin,A.Morrison,及びP.L.Parmeggiani編集.(ニューヨーク州:Raven Press)、199−233頁)。
【0012】
多数の生理学的及び薬理学的研究は、ヒトと犬のナルコレプシー間における緊密な類似性を提示している(Baker,T.L.及びDement,W.C.(1985)及びNishino,S.及びMignot,E.(1997))。これらの動物は、脱力発作の発現を含む、ヒトのナルコレプシーで言及される主な症状の全てを有している。
【0013】
犬のナルコレプシーはまた、日中の過度の眠気及び睡眠期間の中断を示す(Kaitin,K.I.等、Electroenceph.Clin.Neurophysiol.(1986)64:447−454)。抗コリン薬は犬及びヒトのナルコレプシーの両方において脱力発作を阻害する(Delashaw等、(1979)Exp.Neurology 66:745−757)。α1阻害薬(プラゾシンのような)は、犬及びヒトにおいて脱力発作を悪化させ、両方の種において脱力状態を出現させ得る(Mignot等、(1988)Brain Res.444:184−188;Guilleminault等、(1988)The Lancet 2:511)。
【0014】
ヒトにおける脱力発作及び過度の眠気を治療するために使用される薬剤はまた、ナルコレプシーの犬にも効果的である(Baker及びDement,1985)。ナルコレプ
シーは通常、ヒトにおいて思春期になるまで発現しないが、早ければ3歳で又は遅ければ45歳若しくはより高齢で見られ得る(Yoss及びDaly,(1960)Pediatrics 25:1025−1033;Billiard,(1985)Ann.Clin.Res.17:220−226)。ナルコレプシー/脱力発作の発現の代理変数(proxy variable)として、脱力発作の姿は、犬のナルコレプシーで、4ないし24週齢の間に発現する。
【0015】
おおよそ250,000人のアメリカ人がナルコレプシーを有している(Aldrich,M.S.,New Eng.J.Med.(1990)323:389−394)。ナルコレプシーの家族性症例が報告されたが、殆どのヒトでの発現は散発性であり、該障害は一般的に、多遺伝子的に及び環境的に影響されると信じられている(Honda,Y.,及びMatsuki,K.,Genetic Aspects of Narcolepsy in Handbook of Sleep Disorders,M.Thorpy(編)(Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク州、ニューヨーク、1990)、217−234頁)。一つの誘発遺伝因子は、特異的HLA−DQ対立遺伝子、HLA−DQB1*0602である(Matsuki,K.等、(1992)L
ancet 339:1052.Mignot,E.等(1994)Sleep 17:S60−S67;Mignot,E.(1998)Neurology 50:S16−S22)。一般人口の30%だけがこのHLAハプロタイプを有しているのに比して、ナルコレプシー患者のおおよそ95%が有している(Aldrich,M.S.,New Eng. J Med.(1990)323:389−394)。
【0016】
自己免疫機序が、若年性糖尿病、セリアック病、全身性エリテマトーデス及び関節リウマチのような幾つかのHLA関連疾患において報告されている(Sinha,A.等、Science(1990)248:1380−1388);しかし、ナルコレプシーの自己免疫仮説をテストするための今までの全ての試みは失敗した(Mignot,E.等、Adv.Neuroimmunol(1995)5:23−37)。
【0017】
ナルコレプシーが、新規に発見されたハイポクレチン(Hcrt)(オレキシン)ペプチド系の機能障害と関連することが、最近報告された。この報告は、ナルコレプシーのドーベルマンとラブラドールにおけるハイポレクチン受容体2(Hcrtr2)遺伝子の転写物の欠失に基づく(Lin,L.等、Cell(1999)97:365−376)。Chemelli等は、ナルコレプシーの特徴と類似する睡眠制御の異常を有するHcrtノックアウトマウスをも創出した(Chemelli,R.M.等、Cell(1999)98:437−451)。
【0018】
ナルコレプシーは、症状の長期間の管理を必要とする(Fly,J.,Neurology(1998)50(2追補1):S8−15)。診療は、生活様式の変化のような非薬物的なもの及び日中の眠気、脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚及び/又は覚醒時幻覚の緩和のための薬物的なものであり得る。
【0019】
ナルコレプシーの薬物的治療は、覚醒状態を増加させるために、又は、脱力発作又は入眠時幻覚の回数及び重症度を減少させるために中枢神経系(CNS)刺激剤の使用に依存する。CNS刺激剤はナルコレプシーの眠気を軽減するのに有効であり得る;しかし、正常レベルに覚醒を回復させるためには極端に高い投与量が必要である(Mitler,M.等、Sleep(1993)16:306−317)。そのよう投与量は非常に危険な副作用を有し得る。
【0020】
それらの副作用のために、殆どのナルコレプシー患者は、確実に必要とされるか又は低レベル投与量の連続的な使用では、正常な覚醒レベルを回復できない場合にのみ刺激剤を
使用する。定期的な“休薬期間”は、刺激剤の有効性を維持するために時々採用され得る(Mitler,M.S.Sleep(1994)17:S103−S106)。頻繁なうたた寝は、覚醒の許容期間において有効であり得る(Aldrich,M.S.,Neurology(1992)42(S6):34−43)。脱力発作は、他の医薬の中で、三環系抗うつ薬又は選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI類)で、時々成功裏に治療され得る。、三環系抗うつ薬及びSSRI類は両方共、全てノルアドレナリンの受容体を活性化する代謝物を産生することにより作用するように思われる(Nishino,S.等、Sleep(1993)16:706−712;Mignot,E.等、Psychopharmacology(1993)113:76−82)。これらの治療を用いても、眠気及び脱力発作による災害は日常的であり、ナルコレプシーにおいては顕著に専門的な及び教育的な達成が低下している(Broughton,W.A.及びBroughton,R.J.,Sleep(1994)17:S45−S49)。
【0021】
意図しない睡眠、注意減少及び遂行エラーの出来事を引き起こすため、ナルコレプシー又は他の原因の何れかによる日中の過度な眠気(EDS)又は病的な眠気は、支障をきたし及び潜在的に危険である。原因とは無関係に、EDSは種々の交通事故及び労働災害に関係し、業務遂行能力の減少及びかなりの主観的な苦悩を引き起こす。EDSを減少又は解消する治療剤は、個々の患者のためだけでなく、公衆衛生及び安全のためにも重要な関りを有する。
【非特許文献1】Gelineau,J.B.,De la narcolepsy,Gazette des Hopitaux Paris(1880)53:626−628
【非特許文献2】Chokroverty,S.(編),Sleep Disorders Medicine:Basic Science,Technical Considerations,and Clinical Aspects,第22版,Butterworth Heinemann,アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、ボストン、1999
【非特許文献3】Aldrich,M.,Sleep Medicine,Oxford University Press,アメリカ合衆国、ニューヨーク州、ニューヨーク、1999
【非特許文献4】Vgnotzas,A.N.等.,Annu.Rev.Med.(1999)50:387−400
【非特許文献5】Guillenminault,C.,Narcolepsy Syndrome in Principles and Practice of Sleep Medicine,第2版(Kryger,M.H.,等(編),(W.B.Saunders アメリカ合衆国、ペンシルベニア州、フィラデルフィア、1989),338−246頁
【非特許文献6】Mitler,M.等、Psych Clin.N.Amer.(1987)10:593−606
【非特許文献7】Foutz,A.S.,等、(1979)Sleep 1:413−421
【非特許文献8】Nishino,S.及びMignot,E.(1997)Prog.Neurobiol.52:27−78
【非特許文献9】Cederberg,R.,等、(1998)Vet.Rec.142,31−36
【非特許文献10】Baker,T.L.及びDement,W.C.(1985)、Canine narcolepsy−cataplexy syndrome:evidence for an inherited monoaminergic−cholinergic imbalance in Brain Mechanisms of Sleep,D.J.McGinty,R.Drucker−Colin,A.Morrison,及びP.L.Parmeggiani編集.(ニューヨーク州:Raven Press)、199−233頁
【非特許文献11】Kaitin,K.I.等、Electroenceph.Clin.Neurophysiol.(1986)64:447−454
【非特許文献12】Delashaw等、(1979)Exp.Neurology 66:745−757
【非特許文献13】Mignot等、(1988)Brain Res.444:184−188
【非特許文献14】Guilleminault等、(1988)The Lancet 2:511
【非特許文献15】Yoss及びDaly,(1960)Pediatrics 25:1025−1033
【非特許文献16】Billiard,(1985)Ann.Clin.Res.17:220−226
【非特許文献17】Aldrich,M.S.,New Eng.J.Med.(1990)323:389−394
【非特許文献18】Honda,Y.,及びMatsuki,K.,Genetic Aspects of Narcolepsy in Handbook of Sleep Disorders,M.Thorpy(編)(Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク州、ニューヨーク、1990)、217−234頁
【非特許文献19】Matsuki,K.等、(1992)Lancet 339:1052
【非特許文献20】Mignot,E.等(1994)Sleep 17:S60−S67
【非特許文献21】Mignot,E.(1998)Neurology 50:S16−S22
【非特許文献22】Sinha,A.等、Science(1990)248:1380−1388
【非特許文献23】Mignot,E.等、Adv.Neuroimmunol(1995)5:23−37
【非特許文献24】Lin,L.等、Cell(1999)97:365−376
【非特許文献25】Chemelli,R.M.等、Cell(1999)98:437−451
【非特許文献26】Fly,J.,Neurology(1998)50(2追補1):S8−15
【非特許文献27】Mitler,M.等、Sleep(1993)16:306−317
【非特許文献28】Mitler,M.S.Sleep(1994)17:S103−S106
【非特許文献29】Aldrich,M.S.,Neurology(1992)42(S6):34−43
【非特許文献30】Nishino,S.等、Sleep(1993)16:706−712
【非特許文献31】Mignot,E.等、Psychopharmacology(1993)113:76−82
【非特許文献32】Broughton,W.A.及びBroughton,R.J.,Sleep(1994)17:S45−S49
【発明の開示】
【0022】
発明の詳細
本発明は、対象者における日中の過度な眠気(EDS)又は病的な眠気を含む睡眠障害を治療する方法であって、式(I)
【化1】

[式中、Rxは水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、F、Cl、Br及び
Iから選択されるハロゲン原子、1ないし3個の炭素原子を含むアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及び1ないし3個の炭素原子を含むチオアルコキシ基からなる群より選択された一つを表し;
xは1ないし3の整数を表すが、但し、xが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なり得;
1及びR2は互いに同一又は異なって、水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基からなる群より独立して選択され;R1及びR2は結合して、水素原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された一つで置換された5ないし7員の複素環(ここで該環状化合物は1ないし2個の窒素原子及び0ないし1個の酸素原子を含み得、ここで前記窒素原子は互いに又は前記酸素原子と直接的に結合しない。)を形成し得る。]で表される化合物又はその医薬的に許容される塩又はエステルの治療有効量を、そのような治療が必要な対象者へ投与することを含む方法を対象とする。
【0023】
本発明の態様は、対象者における日中の過度の眠気(EDS)を治療する方法であって、他の光学異性体が実質的に存在しない式(I)
【化2】

[式中、Rxは水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、F、Cl、Br及び
Iから選択されたハロゲン原子、1ないし3個の炭素原子を含むアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及び1ないし3個の炭素原子を含むチオアルコキシ基からなる群より選択された一つを表し;
xは1ないし3の整数を表すが、但し、xが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なり得;
1及びR2は互いに同一又は異なって、水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基からなる群より独立して選択され;R1及びR2は結合して、水素原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された一つで置換された5ないし7員の複素環(ここで該環状化合物は1ないし2個の窒素原子及び0ないし1個の酸素原子を含み得、ここで前記窒素原子は互いに又は前記酸素原子と直接的に結合しない。)を形成し得る。]の光学異性体であるか、又は式(I)の1種の光学異性体が優位を占める光学異性体混合物、或いはその医
薬的に許容される塩又はエステルの治療有効量を、そのような治療が必要な対象者へ投与することを含む方法を含む。好ましくは、Rx、R1及びR2は全て水素原子から選択され
る。好ましくは、式(I)からなる群より選択された1種の光学異性体は、約90%以上の量で優位を占める。
【0024】
より好ましくは、式(I)からなる群より選択された1種の光学異性体は、約98%以上の量で優位を占める。
【0025】
本発明の態様は、EDSを治療する薬剤を製造するための、式(I)
【化3】

[式中、Rxは水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、F、Cl、Br及び
Iから選択されたハロゲン原子、1ないし3個の炭素原子を含むアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及び1ないし3個の炭素原子を含むチオアルコキシ基からなる群より選択された一つを表し;
xは1ないし3の整数を表すが、但し、xが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なり得;
1及びR2は互いに同一又は異なって、水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基からなる群より独立して選択され;R1及びR2は結合して、水素原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された一つで置換された5ないし7員の複素環(ここで該環状化合物は1ないし2個の窒素原子及び0ないし1個の酸素原子を含み得、ここで前記窒素原子は互いに又は前記酸素原子と直接的に結合しない。)を形成し得る。]からなる群より選択される光学異性体又はその医薬的に許容される塩又はそのエステルの使用を含む。
【0026】
本発明の態様は、式(Ib)
【化4】

式(Ib)
の光学異性体(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート又は(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)である他の光学異性体が実質的に存在しない式(I)の光学異性体であるか、或いは式(Ib)の学異性体(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート又は(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)が優位を占める光学異性体混合物の使用を含む方法を含む。
【0027】
式(Ib)の光学異性体(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート又は(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)が約90%以上の量で優位を占めるところの式(Ib)(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート又は(O
−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)。より好ましくは、式(Ib)の光学異性体(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート又は(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)は、約98%以上の量で優位を占める。
【0028】
本発明の態様は、EDSの原因が、中枢神経系(CNS)の病理学的異常、脳梗塞、ナルコレプシー、特発性CNS過眠症;睡眠不足、睡眠時無呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸、夜間睡眠不足、慢性疼痛、急性疼痛、パーキンソン病、尿失禁、多発性硬化性疲労、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、大うつ病、双極性障害、心虚血;環境と体内時計の不整合、時差ぼけ、交代勤務;及び鎮静薬からなる群より選択されるところの方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の詳細な記載
本発明は、一つには、式(I)で表されるフェニルアルキルアミノカルバメートが新規で唯一の薬理学的特性を有することを発見したことに基づく。これらの化合物は、動物モデル及びヒトの研究の両方において、活性化する又はエネルギーを与える効果を有することが示された。作用の正確な機構は完全には理解されていないものの、これらの化合物は、それらの活性化する又はエネルギーを与えるような効果を生ずるにあたり、殆どの他の既知の刺激剤と同様の機構により作用するものではないと確信される。しかし、動物において、30mg/kgの式(I)で表されるフェニルアルキルアミノカルバメートを用いた治療は、投与後の最初の3ないし4時間の間の、浅い睡眠、深い睡眠及びREM睡眠に費やされる時間を代償に、活動的な覚醒状態を強力に増加させた。その後数時間内に徐々に減少する、深い睡眠に費やされた時間の増加として、リバウンド作用が該化合物の投与後4ないし10時間の間に見られた。更に、式(I)で表される化合物は他の睡眠−覚醒パラメーターに影響した;より特には、浅い睡眠及びREM睡眠から覚醒状態への移行の数を顕著に増加し、同様に、REM睡眠開始の待ち時間を延ばした。
【0030】
これらの二つの理由から、式(I)で表される化合物は、特に、EDS及び患者が起きて費やす時間の量が増加するのが望ましい他の障害のための治療としての使用に好適である。そのため、これらの化合物は、この目的のために安全に使用することができ、睡眠障害に内在する正確な病因に関係なく有効なEDSの治療を提供する。
【0031】
典型的には、式(I)で表される化合物の投与量は、10ないし25mg/日で開始され、最大投与量が500mg/日ないし2000mg/日の範囲で、副作用が介入するか又は適切な応答が得られるまで、1週間当たり約10ないし25mg/日の増加量で増加される。
式(I)で表される1種の化合物は、Rx=R1=R2=水素原子であるところの以下に
示される構造の(D)光学異性体からなり、以下に示される構造において、アミノ基は紙面より下方を向いている。
【化5】

この化合物は構造により命名する場合、(R)光学異性体であり、従って、(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメートとなる。この化合物は右旋性の光学異性体であり、そのため、O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノールとも命名することができ、そして明細書中では“試験化合物”として言及される。該2種の化学名は本明細
書中において互いに交換可能なものとして使用され得る。
【0032】
この化合物は種々の動物モデル及びヒトにおいて試験され、投与後の最初の3ないし4時間の間の、浅い睡眠、深い睡眠及びREM睡眠に費やされる時間を代償に、活動的な覚醒状態を強力に増加させることを含む効果を提示した。加えて、この化合物は、浅い睡眠及びREM睡眠から覚醒状態への移行の数を顕著に増加し、同様に、REM睡眠開始の待ち時間を延ばす。この化合物はまた、マウス及びラットモデルの任意の自発運動(Spontaneous Locomotor Activity)において刺激又はエネルギーの付与効果を示す。
【0033】
そのため、幾つかの態様において、本発明はEDSを予防するか又は重症度を減少するための方法を対象とする。
該方法は式(I)
【化6】

[式中、Rxは水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、F、Cl、Br及び
Iから選択されたハロゲン原子、1ないし3個の炭素原子を含むアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及び1ないし3個の炭素原子を含むチオアルコキシ基からなる群より選択された一つを表し;
xは1ないし3の整数を表すが、但し、xが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なり得;
1及びR2は互いに同一又は異なって、水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基からなる群より独立して選択され;R1及びR2は結合して、水素原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された一つで置換された5ないし7員の複素環(ここで該環状化合物は1ないし2個の窒素原子及び0ないし1個の酸素原子を含み得、ここで前記窒素原子は互いに又は前記酸素原子と直接的に結合しない。)を形成し得る。]で表されるフェニルアルキルアミノカルバメートからなる群より選択される化合物又はその光学異性体、立体異性体、ラセミ体又はそれらの混合物或いはその医薬的に許容される塩又はエステルの治療有効量を、そのような治療が必要な対象者へ投与することを含む。
【0034】
本発明の方法はまた、Rx、R1及びR2が好ましくは水素原子から選択されたところの
式(I)、即ち以下の式(Ia);
【化7】

からなる群より選択される化合物の使用を含む
【0035】
本発明の方法はまた、式(1)からなる群より選択されるD光学異性体又は式(1a)
からなる群より選択されたD光学異性体が優位を占める光学異性体混合物の使用を含むが、ここで、Rx、R1及びR2は好ましくは水素原子から選択され、これはO−カルバモイ
ル−(D)−フェニルアラニノールである。以下の式(Ib);(式(Ib)において、即ち、提示されたD光学異性体において、不斉炭素上のアミノ基は、紙面の内側に向けられることに注目されたし。)
【化8】

【0036】
式(1)からなる群より選択された1種の光学異性体が優位を占める光学異性体混合物のために、好ましくは、式(1)からなる群より選択された光学異性体は、約90%以上の量で優位を占める。より好ましくは、式(1)からなる群より選択される光学異性体は、約98%以上の量で優位を占める。
【0037】
式(I)で表される化合物は、当業者に既知の方法で製造し得る。式(I)で表される化合物の塩及びエステルは、該化合物を好適な溶媒中で好適な無機又は有機酸(HX)で処理することによって又は当業者に既知の他の方法によって製造され得る。
【0038】
式(I)で表される化合物を合成するための上記の反応スキームの詳細並びに特定の化合物の調製における代表的な例は、全て、その全体が参照としてここに組み込まれる米国特許第5705640号明細書、米国特許第5756817号明細書、米国特許第5955499号明細書、米国特許第6140532号明細書中に記載されている。
【0039】
式(I)から、本発明の化合物の幾つかが少なくとも1個及び場合によりそれ以上の不斉炭素原子を有するのは明らかである。本発明は、その範囲内に、上記化合物の立体化学的に純粋な異性体形態並びにそれらのラセミ体を含むことが意図される。立体化学的に純粋な異性体形態は既知の技術原理を適用することにより得られ得る。立体異性体は分別結晶化及びクロマトグラフィー技術のような物理的な分離手法により分離することができ、また、光学異性体は、光学活性な酸又は塩基とのジアステレオマー塩の選択的結晶化によって又はキラルクロマログラフィーによって互いに分離され得る。純粋な立体異性体はまた、適当な立体化学的に純粋な出発物質から又は立体選択的反応を用いることにより合成的に製造され得る。
【0040】
本発明の化合物の全ての製造方法において、如何なる関連する分子上においても敏感な又は反応性の基を保護することは必要及び/又は望ましいものであり得る。これは、Protective Group in Organic Chemistry,編者、J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973;及びT.W.Green&P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版、John Wiley&Sons,1999中に記載されたような、慣用の保護基の手段により達成され得る。
【0041】
本発明の他の態様は、EDSを治療するための医薬の製造のための、上述の化合物若しくは光学異性体の1種又はは光学異性体の混合物或いはその医薬的に許容される塩又はエステルの使用を含む。
【0042】
本発明に使用される化合物に関連して上述された全ての米国特許は、参照としてここに
組み込まれる。
【0043】
定義
便宜のために、本明細書、実施例及び添付された請求項中で使用される特定の用語を、ここに纏めた。本発明は、特定の方法論、手順、動物の種又は属及び記載された試薬、それらは変わり得るので限定されないと理解されるべきである。ここで使用されている専門用語もまた、特定の態様を記載する目的のためだけのものであり、添付の請求項によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものでないと理解されるべきである。
【0044】
ここで使用される用語“日中の過度の眠気”(EDS)は用語“病的な眠気”と交換可能に用いられ、個人が十分な夜間の睡眠を得たか否かに関係なく、日中、個人が非常に眠いと感じ、また、寝入る衝動に抵抗することが困難である状態を意味するものとする。過度な眠気は、個人が起きて機敏に動いているはずの状況において発生する眠気として定義される。臨床的にEDSの症状は、多睡眠潜伏検査(Multiple Sleep Latency Test)(MSLT)(Carskadom MA及びDement WC、Sleep 1982;5 追補2:S67−72参照)、覚醒状態維持検査(Maintenance of Wakefulnass Test)(MWT)(Mitler MM等、Electroencephalogr Clin Neurophysiol,1982;53(6):658−61参照)又はスタンフォード眠気尺度(Stanford Sleepiness Scale)(SSS)(Hoddes E等、Psychophysiology,1973;10(4):431−6参照)(Arand D等、Sleep,2005;28(1):123−144も参照)を含むが、限定されない種々の方法で定量化及び測定し得る。EDSの原因は多様であり、ここでの用語EDSの使用は、何れかの特定の原因又は病因を暗示することを意図するものでない。EDSである人々は、十分に起きて機敏に動くことを要求されるか又は望む状況において、頻繁に仮眠、うたた寝又は居眠りをする。診断はEDSの症状が、仕事、家族への責任、車の運転又は他の危険な機械の操作のような日課及び日常業務、或いは全般的な生活の質に専念及び達成する個人の能力を顕著に妨げる場合になされ得る。
【0045】
ここで使用されるように、用語“精神障害”及び“精神病”は、精神疾患の分類と診断の手引(DSM IV)米国精神医学会(APA)中で規定されるものを言及する。これらの精神障害は、限定されないが、情動障害、大うつ病及び関連する抑うつ障害を含む。情動障害の例は、気分障害、躁病、大うつ病性障害及び双極性情動障害を含む。気分障害は、精神病性特徴を伴うか又は伴わない大うつ病、気分変調性障害、双極性障害(I及びII)及び気分循環性障害を含む抑うつ障害を含むがこれに限定されない。
【0046】
ここで使用されるように、用語“対象者”は、治療、観察又は実験の対象となる動物、好ましくは哺乳動物及び最も好ましくはヒトを言及する。
【0047】
ここで使用される用語“治療有効量”は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医により考察される、組織系、動物又はヒトにおける、治療している疾患又は障害の兆候又は症状の1つ以上の緩和を含む、生物学的又は薬効の応答を引き出す活性化合物又は医薬品の量を意味する。
【0048】
用語“予防有効量”は、組織、系、動物又はヒトにおいて、研究者、獣医、医師又は他の臨床医により予防が求められている、生物学的又は医学的事象の発生の危険を予防又は減少する医薬品の量を意味することを意図する。
【0049】
用語“医薬的に許容される塩又はエステル”は、通常、遊離酸を好適な有機又は無機塩
基と反応させるか或いは遊離塩基を好適な有機又は無機酸と反応させることにより製造される、本発明において使用される化合物の無毒性塩又はエステルを意味する。そのような塩の例は、限定されないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酸性酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウム、エデト酸カルシウム塩、カミシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グルコリルアルサリル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトン酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムケート、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド、吉草酸塩を含む。
【0050】
用語“対象者(subject)”又は“患者(patient)”は、ここで交換可能に用いられ、ここで使用されるように、本発明の組成物が投与され得るヒトの患者又は対象者を含む人間を含むがこれに限定されない、如何なる動物をも意味する。用語“哺乳動物”は、ヒト患者及びヒト以外の霊長類、並びに、ウサギ、ラット及びマウスのような実験動物及び他の動物を含む。
【0051】
ここで使用される用語“治療が必要な患者”は、覚醒状態が要求されるか又は望まれる日中の間に、対象者が睡眠状態で過度の量の時間を費やすか又は十分な覚醒の程度を維持できないところの何れかの状態又は障害、或いは式(I)で表される化合物の1種以上の
単独投与又は別の薬物を含むがそれに限定されない別の治療的診断行為と組み合わせた投与により、患者の現在の臨床的状態又は臨床予後の益になるところの何れかの他の障害を含む、上記の症候群又は障害の何れかを現在有しているか又は発現し得る如何なる対象者又は患者をも言及する。
【0052】
ここで使用される用語“治療する”又は“治療”は、軽減;寛解;症状の減少或いは傷害、病状又は状態を患者により耐えられるものとすること;病気の変性若しくは減退又は悪化の速度の減速;悪化の終点をより減弱性でなくすること;又は対象者の身体的及び精神的健康状態を改善することのような如何なる客観的又は主観的パラメーターも含む、傷害、病状又は状態の予防又は改善における成功の如何なる兆候をも言及する。症状の治療又は改善は、身体的試験、睡眠研究、神経学的試験及び/又は精神医学的評価の結果を含む客観的又は主観的パラメーターに基づき得る。従って、用語“治療する”又は“治療”は、意識レベルを上げる又は睡眠の要求若しくは欲求を減少させるための、本発明の化合物又は薬剤の投与を含む。場合によっては、本発明の化合物を用いた治療は、意識レベルを上げる又は睡眠の要求若しくは欲求を減少させるために或いはEDSの進行を防止、抑制又は止めるために、他の化合物と組み合わせて行われ得る。
【0053】
ここで使用される用語“治療効果”は上記作用を有効にもたらすことを言及する。
【0054】
ここで使用される用語“治療有効量”は、本発明の化合物の1種以上の、神経防護治療が必要な対象者又は患者において上記のような治療効果を出現させるために十分な量を意味する。
【0055】
ここで使用されるように、本発明の化合物と、化合物、治療剤又は既知薬剤との、用語“同時投与”又は“併用投与”は、既知の医薬又は薬剤と、更に、本発明の化合物の1種以上の、前記既知薬剤と本発明の化合物の両方が治療効果を有し得る時点における投与を
意味する。幾つかの場合において、この治療効果は相乗的であり得る。このような同時投与は、本発明の化合物の投与に関して、既知化合物の同時(即ち、一緒の時間)の、先の又は後の投与を含み得る。当業者は、特定の化合物と本発明の化合物の投与の好適な時期、順序及び用量を決定するのに何の困難性もない。
【0056】
加えて、幾つかの態様において、本発明の化合物は、EDS又は関連する状態の治療を必要とする対象者又は患者への、該治療の提供を目的とする医薬を製造するために、単独で又は互いの組み合わせにおいて又は上記のような1種以上の他の治療薬物との組み合わせにおいて或いはそれらの塩又はエステルの何れかで使用され得る。
【0057】
ここで使用されるように、用語“炭素原子数1ないし4のアルキル基”は、1ないし4個の炭素原子有する置換されるか又は未置換の脂肪族炭化水素を言及する。“アルキル基”の定義の中に具体的に含まれるものは、所望により置換された脂肪族炭化水素である。本発明の好ましい態様において、該炭素原子数1ないし4のアルキル基は、未置換であるか又はフェニル基により置換されている。
【0058】
ここで使用されるように、用語“試験化合物”(tc)又は“試験化合物”(TC)は、O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノールとも命名され得る(R)−(β−アミノベンゼンプロピル)カルバメートの塩酸塩を意味する。この化合物は、構造的に、式(Ib)として示される(R)光学異性体であり、また、右旋性の光学異性体でもある。試験化合物はまた、表1ないし4の説明文におけるR228060としても言及される。
【0059】
ここで使用される用語“フェニル基”は、単独で使用されようと又は他の基の一部として使用されようと、6個の炭素原子を有する置換されたか又は未置換の芳香族炭化水素環基として定義される。“フェニル基”の定義に具体的に含まれるものは、所望により置換されたフェニル基である。例えば、本発明の好ましい態様において、該“フェニル基”は、未置換であるか、又はハロゲン原子、炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基又はシアノ基で置換されている。
【0060】
本発明の医薬組成物のための治療有効量又は予防有効用量の決定のための方法は、本技術分野において既知である。例えば、EDSの治療としての使用のために、本発明の化合物は、平均的な成人のために、通常1日に1ないし3回の投薬計画で、約0.1mgないし1000mgの範囲の1日の用量において使用され得る。有効量は、しかしながら、使用される特定の化合物、投与形態、配合物の強度、投与形態及び疾患状態の進行度に依存して変化し得る。加えて、患者の年齢、食習慣及び投与期間を含む、治療される特定の患者に関係する要因は、結果として投与量を調整することを必要とし得る。
【0061】
本化合物は、静脈内、経口、皮下、筋肉内、皮内及び非経口を含むがそれらに限定されない如何なる慣用の投与経路においても対象者に投与し得る。投与経路に依存して、式(I)で表される化合物は、如何なる形態にも構成され得る。例えば、経口投与のために好適な形態は、丸薬、ジェルキャップ、錠剤、カプレット、カプセル(それぞれ、即放型、持限放出型及び持続放出型の製剤を含む)、顆粒、粉末のような固体形態を含む。経口投与のために好適な形態はまた、溶液、シロップ、エリキシル剤、エマルジョン及び懸濁液のような液体形態も含む。加えて、非経口投与のために有用な形態は、滅菌溶液、エマルジョン及び懸濁液を含む。
【0062】
本発明の医薬組成物を製造するために、活性成分としての1種以上の式(I)で表される化合物又はその塩は、慣用の医薬配合技術に従う医薬キャリアとともに緊密に混合される。キャリアは、結合剤、懸濁化剤、滑剤、香味剤、甘味料、保存料、染料及び被覆剤を含むがそれらに限定されない、必要かつ不活性な医薬品賦形剤である。経口投与形態の組
成物の製造において、如何なる通常の医薬キャリアをも使用し得る。例えば、液体の経口配合物のためには好適なキャリア及び添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存料、着色剤等を含み;固体の経口配合物のためには、好適なキャリア及び添加剤は、澱粉、糖、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤等を含む。
【0063】
非経口使用のためには、キャリアは通常、滅菌水又は生理食塩溶液を含むが、例えば、溶解性を補助するような目的のための又は保存のための他の成分を含み得る。注入可能な懸濁剤が製造され得、その場合、適当な液体キャリア、懸濁剤等が使用され得る。
【0064】
投与におけるそれらの容易さから、錠剤及びカプセルは、最も有利な経口投与単位形態を示すが、この場合において、固体医薬キャリアが明らかに使用される。もし望むならば、錠剤は、標準技術により、糖衣又は腸溶コーティングされ得る。座薬が製造され得、その場合、ココアバターがキャリアとして使用され得る。錠剤又は丸剤は、持続性作用の利点が得られる投与形態を提供するために、コーティングされ得るか、さもなくば配合され得る。例えば、錠剤又は丸剤は内部投与成分及び外部投与成分を含むことができ、後者は前者上に外皮の形で存在する。該2種の成分は腸溶層により分離され得るが、該層は、胃の中での崩壊に抵抗して内部成分が十二指腸内へ無傷で通過することを可能にするよう、又は、放出を遅延させるよう作用する。種々の材料が、そのような腸溶層又は腸溶コーティングに使用でき、そのような材料は、セラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースのような材料を伴う多種の多価酸を含む。
【0065】
活性薬剤はまた、化合物分子が結合された個々のキャリアとしてのモノクローナル抗体の使用により供給され得る。活性薬剤はまた、目標設定可能な薬剤キャリアとしての可溶性ポリマーと結合され得る。そのようなポリマーは、ポリビニル−ピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ−プロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチル−アスパルタミド−フェノール又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンを含み得る。更に、活性薬剤は、薬剤の制御された放出を達成することに有用な生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリグリコール酸のコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタル、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及び架橋されているか又は両親媒性のハイドロゲルのコポリマーの1群と結合し得る。
【0066】
好ましく、はこれらの組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下又は直腸投与のための或いは吸入又は注入による投与のための、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、滅菌の非経口溶液又は懸濁液、定量エアロゾル又は液状スプレー、ドロップ、アンプル、自動注入装置又は座薬のような単位投与形態にある。
【0067】
もう一つの方法として、組成物は、週1回投与又は月1回投与のために好適な形態において提示し得る;例えば、デカン酸塩のような活性化合物の不溶性塩は、筋肉注射のためのデポー製剤を提供するのに適応させ得る。
【0068】
ここでの医薬組成物は、投与単位当り、例えば、錠剤、カプセル、粉末、注射、ティースプーンフル、座薬等で、上記のような有効投与量を供給するために必要な活性成分の量を含み得る。例えば、ここでの医薬組成物は、投与単位当り、活性成分の約10ないし約1000mgを含み得る。好ましくは、前記範囲は、活性成分の約25ないし約200mgである。
【0069】
本発明の幾つかの態様において、この発明の実施における使用のために好適なカルバメート化合物は単独で、或いは、少なくとも1種以上の他の化合物又は治療剤、例えば、目覚め又は意識レベルを上げる傾向にある他の薬剤と同時に投与され得る。これらの態様に
おいて、本発明は、患者におけるEDSを治療するか又は予防するための方法を提供する。該方法は、以下の段階;治療が必要な患者に、本発明の化合物の活性化効果を増大する能力のような有利な組み合わせ効果をもたらす能力を有する1種以上の他の化合物又は治療剤の有効量との組み合わせにおいて、ここに開示された1種以上のカルバメート化合物の有効量を投与することを含む。
【0070】
本発明の化合物における置換基及び置換様式は、化学的に安定で且つ本技術分野において既知の技術により並びにここで提供された方法により容易に合成し得る化合物を提供するために当業者により選択され得ると理解される。
【0071】
本発明は、式(I)で表される単離された光学異性体の使用を含む。一つの好ましい態様において、式(I)の単離されたS−光学異性体を含む医薬組成物が患者への治療を提供するために使用される。別の好ましい態様において、式(I)の単離されたR−光学異性体を含む医薬組成物が患者への治療を提供するために使用される。
【0072】
本発明はまた、式(I)で表される光学異性体の混合物の使用を含む。本発明の一つの観点において、1種の光学異性体が優位を占める。混合物中で優位を占める光学異性体は、混合物中に存在する全ての他の光学異性体よりも多い量、例えば、50%よりも多い量で混合物中に存在する1種である。一つの観点において、1種の光学異性体は90%までの量又は91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%或いはそれを超える量までの優位を占める。一つの好ましい態様において、式(I)で表される化合物を含む組成物中で優位を占める光学異性体は、式(I)のS−光学異性体である。
【0073】
本発明は、式(I)により表される化合物の光学異性体及び光学異性体の混合物を使用する方法を提供する。式(I)のカルバメート光学異性体は、フェニル環に隣接する2番目の脂肪族炭素原子であるベンジル位に非対称の不斉炭素原子を含む。
【0074】
単離された光学異性体は、対応する光学活性体が実質的に存在しない1種の光学異性体である。そのため、単離された光学異性体は、分離技術を介して分離されるか又は対応する光学異性体の存在なしに製造された化合物を言及する。
【0075】
ここで使用される“実質的に存在しない”は、その化合物が、顕著に多い比率の1種の光学異性体で作り上げられていることを意味する。好ましい態様において、該化合物は、好ましい光学異性体を少なくとも約90質量%含む。本発明の他の態様において、好ましい光学異性体を少なくとも約99質量%含む。好ましい光学異性体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び不斉塩の形成及び結晶化を含む当業者に既知の何れかの方法によりラセミ混合物から単離し得るか、又は好ましい光学異性体はここに記載された方法により製造され得る。
【0076】
医薬品としてのカルバメート化合物
本発明は、医薬品としての式(I)で表されるラセミ混合物、光学異性体混合物及び単離された光学異性体を提供する。カルバメート化合物は、対象者におけるEDS及び関連する状態のための治療を提供するために医薬品として製剤化される。一般に、本発明のカルバメート化合物は、経口、口腔内、局所、全身(例えば、経皮、経鼻又は座薬により)又は非経口(例えば、筋肉内、皮下又は静脈内注射)を含む治療薬を投与するための本技術分野において既知の何れの方法によっても、医薬組成物として投与され得る。直接神経系への化合物の投与は、例えば、ポンプ機器を用いるか又は用いない頭蓋内又は脊椎内のニードル又はカテーテルを介する送達による、大脳内、脳室内、脳室内(intracerebealventricar)、髄室内、嚢内、脊髄内への投与又は脊髄周辺経路の投与を含む。
【0077】
組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、半固体、粉末、持続放出製剤、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル剤、エアロゾル又は他の何れかの好適な組成物の形態をとりえ;また、少なくとも1種以上の医薬的に許容される賦形剤と組み合わせて、少なくとも1種以上の本発明の化合物を含む。好適な賦形剤は、当業者によく知られており、それら及び組成物の製剤化の方法は、その開示が全部及び全ての目的における参照としてここに組み込まれるAlfonso AR:Remington´s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton PA,1985のような標準的文献中に見い出される。好適な液体キャリア、特に、注入可能溶液のための液体キャリアは、水、水性生理食塩溶液、水性デキストロース溶液及びグリコールを含む。
【0078】
カルバメート化合物は水性懸濁液として提供され得る。本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造のために好適な賦形剤と混合して、カルバメート化合物を含む。そのような賦形剤は、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴムのような懸濁化剤及び天然由来のリン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレン オキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)のような分散剤又は湿潤剤を含む。
【0079】
水性懸濁液はまた、エチル又はn−プロピル p−ヒドロキシベンゾエートのような1種以上の保存剤、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤及びスクロース、アスパルテーム又はサッカリンのような1種以上の甘味料も含み得る。製剤は、浸透圧を調整され得る。
【0080】
本発明の方法に使用するための油懸濁液は、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、又はココナツ油のような植物油中或いは液状パラフィンのような鉱油中又はそれらの混合物中にカルバメート化合物を懸濁することにより製剤化され得る。油懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールのような増粘剤を含み得る。甘味量は、味の良い経口配合物を提供するために添加され得るものであり、例えば、グリコール、ソルビトール又はスクロースである。これらの製剤は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存され得る。注入可能な油性ビヒクルの例として、Minto,J.,Pharmacol.Exp.Ther.281:93−102,1997が参照される。本発明の医薬製剤はまた、水中油エマルジョンの形態であり得る。油層は、上述の植物油又は鉱油或いはこれらの混合物であり得る。
【0081】
好適な乳化剤は、アラビアゴム及びトラガカントゴムのような天然由来のゴム、大豆レシチンのような天然由来のリン脂質、ソルビタンモノオレエートのような脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されたエステル又は部分エステル、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物を含む。エマルジョンはまた、シロップ及びエリキシル剤の製剤によりなるように甘味料及び香味剤も含み得る。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存剤又は着色剤も含み得る。
【0082】
選択された化合物は、単独で又は他の好適な成分との組み合わせで、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤(即ち、それらは“噴霧状”であり得る)にされ得る。エアロゾル製剤には、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等のような加圧可能な推進剤に入
れられ得る。
【0083】
例えば、関節内(関節の中に)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内及び皮下経路によるような非経口投与のために好適な本発明の製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬及びその製剤を対象とする受益者の血液と等浸透性にさせる溶質を含有し得る水性の及び非水性の等浸透性の滅菌注射溶液、及び、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含み得る水性の及び非水性の滅菌懸濁液を含み得る。許容されるビヒクル及び溶媒の中で、使用され得るものは、水及びリンガー溶液、等浸透性塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌された固定油が溶媒又は懸濁媒体として慣用的に使用され得る。この目的のために、合成モノ−又はジグルセリドを含む何れの無菌性の固定油も使用し得る。加えて、オレイン酸のような脂肪酸も同様に注入可能な配合物中に使用し得る。これらの溶液は滅菌性であり、一般に望ましくない物を含んでいない。
【0084】
化合物が十分に溶解性である場合、それらは、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールのような好適な有機溶媒の使用して、又は使用せずに、通常の生理食塩水中に直接溶解し得る。微細に分割された化合物の懸濁液は水性の澱粉又はナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液中で、又はラッカセイ油のような好適な油中で作り上げられ得る。これらの製剤は、慣用の、周知の滅菌化技術により滅菌され得る。製剤は、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等のような、生理学的条件に近づけるために必要な医薬的に許容される補助剤を含み得る。
【0085】
これらの製剤におけるカルバメート化合物の濃度は、広範囲に変化し得、及び、選択された特定の投与形態及び患者のニーズに従って、主に、液量、粘度、体重等に基づいて選択され得る。IV投与のために、製剤は、滅菌の注入可能な水性懸濁液又は油性懸濁液のような滅菌の注入可能な配合物であり得る。この懸濁液は、これらの好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用し、公知の技術に従って製剤化し得る。滅菌の注入可能な配合物はまた、1,3−ブタンジオールの溶液ような無毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒における滅菌の注入可能な溶液又は懸濁液であり得る。推奨される製剤は、アンプル及びバイアルのような単位投与又は複数投与の密閉された容器として存在し得る。注射溶液及び懸濁液は、既に記載の滅菌された粉末、顆粒及び錠剤から製造され得る。
【0086】
本発明の実施における使用のために好適なカルバメート化合物は、経口的に投与され得、また、好ましくは経口的に投与される。組成物中の本発明の化合物の量は、組成物のタイプ、単位用量のサイズ、賦形剤の種類及び当業者に周知の他の要因に依存して広範囲に変化し得る。一般に、最終組成物は、例えば、0.000001質量%(%w)ないし50質量%のカルバメート化合物、好ましくは0.00001質量%ないし25質量%を含み得、残部は賦形剤である。
【0087】
経口投与のための医薬製剤は、経口投与のための好適な用量において、本技術分野で周知の医薬的に許容されるキャリアを使用して製剤化し得る。そのようなキャリアは、医薬製剤を、患者による摂取のために好適な、錠剤、丸薬、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、トローチ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として単位投与形態で製剤化することを可能にする。
【0088】
経口投与のために好適な製剤は、(a)水、生理食塩水又はPEG400のような希釈剤中に懸濁された有効量の医薬製剤のような液体溶液;(b)それぞれ液体、固体、顆粒又はゼラチンとして、所定量の活性成分を含むカプセル、サシェ又は錠剤;(c)適当な液体における懸濁液;及び(d)好適なエマルジョンからなり得る。
【0089】
経口使用のための医薬配合物は、本発明の化合物と固体の賦形剤との組み合わせ、所望により結果として得られた混合物の粉砕、及び、所望により錠剤又は糖衣核を得るために、好適な更なる化合物の添加後、顆粒の混合物の加工を介して得られ得る。好適な固体賦形剤は、炭化水素又はタンパク質充填剤であり、及び、ラクトース、スクロース、マニトール又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ又は他の植物からの澱粉;メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はナトリウムカルボキシメチルセルロース;及びアラビアゴムとトラガカントゴムを含むゴム;並びにゼラチン及びコラーゲンのようなタンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0090】
所望ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような、崩壊剤又は可溶化剤を添加し得る。錠剤形態はラクトース、スクロース、マニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及び他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、保存剤、香味剤、染料、崩壊剤及び医薬的に相溶性のキャリアの1種以上を含み得る。トローチ剤(Lozenge)は、香味剤、例えば、スクロース中に活性成分を含み得、同様に、トローチ剤(pastilles)は、ゼラチン及びグリセリンのような不活性基材中の活性成分を含むか、或いは活性成分に加えて本技術分野で既知のキャリアを含むスクロース又はアカシアエマルジョン、ゲル等を含む。
【0091】
本発明の化合物はまた、薬剤の直腸投与のための座剤の形態で投与され得る。これらの製剤は、薬剤と、通常の温度では固体で、しかし大腸の温度では液体であり、そのため大腸内で溶解して薬剤を放出し得る好適な非刺激性の賦形剤との混合により製造され得る。そのような材料はココアバター及びポリエチレングリコールである。
【0092】
本発明の化合物はまた、座剤、腹腔、粉末及びエアロゾル製剤を含む鼻腔内、眼内、膣内及び大腸内経路により投与され得る(ステロイド吸入の例は、Rohatagi,J.Clin.Pharmacol.35:1187−1193,1995;Tjwa,Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107−111,1995参照)。
【0093】
本発明の化合物は、塗布スティック、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末及びエアロゾルとして製剤化され、局所経路により経皮的に送達され得る。
【0094】
カプセル化される材料もまた、本発明の化合物と共に使用することができ、用語“組成物”は、他のキャリアを伴うか又は伴わない、製剤として活性成分とカプセル化される材料との組み合わせを含み得る。例えば、本発明の化合物はまた、体内におけるゆっくりとした放出のためのミクロスフェアとして送達され得る。1つの態様において、ミクロスフェアは薬剤(例えば、ミフェプリストン)含有ミクロスフェアの皮内注入を介して投与され得るが、該ミクロスフェアは;崩壊可能で且つ注入可能なゲル製剤(例えば、Gao,Pharm.Res.12:857−863,1995参照)として、皮下的にゆっくりと放出し(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623−645,1995参照);或いは経口投与のためのミクロスフェアとして投与され得る(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669−674,1997参照)。経皮及び皮内経路はどちらも、数週間又は数ヶ月の間、定常的な送達を提供する。カプセルはまた、本発明の化合物の送達において使用され得る。
【0095】
別の態様において、本発明の化合物は、細胞膜に結合するか又はエンドサイトーシスさ
れるリポソームの使用により、即ち、結果としてエンドサイトーシスを生じる細胞の表面の膜タンパク質受容体に結合するリポソームに結合したリガンドを使用することにより送達され得る。活性薬剤はまた、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル及び多層ベシクルのような、リポソーム送達系の形態において投与され得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンのような種々のリン脂質から形成され得る。
【0096】
リポソームの使用により、特に、リポソーム表面が標的細胞に対して特異的なリガンドを運ぶか、さもなくば、好ましくは、特異的な器官へ向けられる場合、インビボにおける標的細胞中へのカルバメート化合物の送達が着目され得る(例えば、Al−Muhammed,J.Microencapsul.13:293−306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698−708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576−1587,1989参照)。
【0097】
本発明の医薬製剤は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸等を含むがそれらに限定されない、多くの酸と形成し得る塩として提供され得る。塩は、水性溶媒又は対応する遊離塩基形態である他のプロトン性溶媒中でより可溶性となる傾向がある。他の場合において、好ましい配合物は、例えば、以下に示す何れか又は全てを含み得る凍結乾燥された粉末であり得る;ヒツチジン1mM−50mM、スクロース0.1%−2%、マニトール2%−7%、pH範囲4.5ないし5.5、それは使用する前に緩衝溶液と合わせられる。
【0098】
医薬的に許容される塩及びエステルは、医薬的に許容可能であり且つ望まれる薬理学的特性を有するところの塩及びエステルを言及する。そのような塩は、化合物中に存在する酸性プロトンが無機塩基又は有機塩基と反応できる場合に形成され得る。好適な無機塩は、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムと形成されたものを含む。好適な有機塩は、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等のような有機塩基と形成されるものを含む。医薬的に許容される塩はまた、母化合物中のアミン部分と無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)との及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸及びメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸のようなアルカン−及びアレーン−スルホン酸)との反応から形成される酸付加塩を含み得る。医薬的に許容されるエステルは、化合物中に存在するカルボキシ基、スルホニルオキシ基及びホスホノキシ基から形成されるエステルを含む。2個の酸性基が存在する場合、医薬的に許容される塩又はエステルは、1酸−1塩若しくは1酸−1エステル又は2−塩若しくは2−エステルであり得;及び同様に2個を超える酸性基が存在する場合、それらの基の幾つか又は全てが塩化又はエステル化され得る。
【0099】
本発明中で名を挙げられた化合物は、塩化されないか又はエステル化されない形態で或いは塩化された及び/又はエステル化された形態で存在し得、そのような化合物の指定は、本来の化合物(塩化されない及びエステル化されない)及びその医薬的に許容される塩及びエステルの両方を含むことが意図される。本発明は、式(I)の医薬的に許容される塩及びエステル形態を含む。式(I)の光学異性体の1種を越える結晶形が存在し得、そのようなものもまた、本発明に含まれる。
【0100】
本発明の医薬組成物は、カルバメート化合物に加えて、少なくとも1種のEDSの治療において有用な他の治療剤を所望により含み得る。例えば、式(I)で表されるカルバメート化合物は、それらの投与を単純化するための固定投与量の組み合わせで、他の活性化化合物又は刺激剤化合物と共に物理的に混合され得る。
【0101】
医薬組成物の製剤化方法は、その開示が、全体として及び全ての目的のために、参照としてここに組み込まれる、Marcel Dekker,Incによって公開された、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets.第2版.Revised and Expanded.1−3巻、Liemermann等編集;Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications.1−2巻、Avis等編集;及びPharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems.1−2巻、Lieberman等編集のような多数の刊行物中に記載されている。
【0102】
医薬組成物は、一般に、滅菌の、実質的に等浸透性のものとして及びアメリカ食品医薬品局の全ての適正製造基準(GMP)の全面順守において製剤化され得る。
【0103】
用量レジュメ
本発明は、カルバメート化合物を用いる哺乳動物におけるEDS及び関連する状態の治療を行う方法を提供する。EDS及び関連する状態の治療を行うために必要なカルバメート化合物の量は、治療的に又は医薬的に有効な投与量として規定される。この使用のための投薬スケジュール及びこの用途のために有効な量、即ち、投薬法又は用量レジュメは、疾患の病期、患者の身体状況、年齢等を含む種々の要因に依存し得る。患者の用量レジュメの計算においては、投与形態もまた考慮される。
【0104】
当業者は、過度の実験なしに、その技能と本願の開示を考慮して、本発明の実施のために特定の置換されたカルバメート化合物の治療有効量を決定することができる(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(1−3巻、1992);Lloyd,1999,The art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding;及びPicker,1999,Dosage Calculations参照)。治療有効投与量はまた、臨床的見地から、治療的に有益な効果が活性薬剤の何れの毒性又は有害な副作用にも勝るところのものである。それぞれの特定の対象者のために、特定の用量レジュメを、長期にわたり、個々の必要性及び化合物を投与しているか投与を管理している人の専門的判断に従って評価及び調整するべきであることを更に留意するべきである。
【0105】
治療目的のために、ここで開示された組成物又は化合物は、長期にわたる連続供給を介する、又は繰り返しの投与プロトコール(例えば、時間ごとの、日ごとの又は週ごとの繰り返しの投与プロトコール)における単位ボーラス送達で患者に投与し得る。本発明の医薬製剤は、例えば、1日当り1回以上、1週当り3回又は週ごとに投与され得る。本発明の一つの態様において、本発明の医薬製剤は、1日当り1回又は2回投与される。
【0106】
これに関連して、生物学的活性薬剤の治療有効用量は、EDS及び関連する状態の治療をもたらすことについて臨床的に顕著な結果を与える長期治療レジュメにおける繰り返し投与を含む。この関連における有効用量の決定は、典型的には、ヒトの臨床試験により検証される動物モデル研究に基づき、そしてそれは、対象者における標的となる露呈した症状又は状態の発生又は重症度を顕著に減少する有効用量及び投与プロトコールを決定することにより導かれる。これに関連する好適なモデルは、例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、ヒト以外の霊長類及び本技術分野において既知の他の許容される対象動物モデルを含む。さもなくば、有効用量はインビトロモデル(例えば、免疫学的及び組織病理学的アッセイ)を用いて決定され得る。
【0107】
そのようなモデルの使用は、生物学的に活性な薬剤の治療有効量を投与するための適当な濃度及び薬量を決定するために、典型的には普通の計算と調整しか必要としない(例えば、望まれる応答を導くための、経鼻的に有効な、経皮的に有効な、静注的に有効な又は
筋注的に有効な量)。
【0108】
本発明の例示的な態様において、化合物の単位用量形態は、標準的な投与レジュメで調製される。このような方法で、組成物は、医師の方針で容易により少ない投与量へ細分化され得る。例えば、単位用量は、包装された粉末、バイアル又はアンプル及び好ましくはカプセル又は錠剤の形態に作り上げられ得る。
【0109】
組成物のこれらの単位用量形態中に存在する活性化合物は、患者の特定の必要性に従って、1日当り単一投与又は複数投与のために、例えば、約10mgないし約1g以上の量で存在し得る。約1gの1日当りの最小投与量で治療レジュメを開始し、投与量をより増やすのか又は減らすのかを決定するために、カルバメート化合物の血中濃度が用いられ得る。
【0110】
本発明のカルバメート化合物の効果的な投与は、例えば、約0.01mg/kg/投与ないし約150mg/kg/投与の経口又は非経口投与量で投与され得る。好ましくは、投与は約0.1mg/kg/投与ないし約25mg/kg/投与、より好ましくは約0.2ないし約18mg/kg/投与である。従って、ここに記載されるように、用量単位当りに含まれる活性成分の治療有効量は、例えば、70kgの平均体重を有する対象者のために、例えば、約1mg/日ないし約7000mg/日であり得る。
【0111】
本発明の方法はまた、EDS及び関連する状態の治療の提供における使用のためのキットを提供する。治療的利点を有する1種以上の他の化合物の可能な添加を伴って、本発明の1種以上のカルバメート化合物を含む医薬組成物が好適なキャリア中で製剤化された後、EDS及び関連する状態の治療の提供のために、適当な容器中に置かれ、ラベルが付され得る。加えて、少なくとも1種の他の治療剤を含む別の医薬組成物が、同様に該容器中に置かれ得、及び指示された疾患の治療のためにラベルが付され得る。そのようなラベルは、例えば、各医薬品の量、投与頻度及び投与方法に関する説明を含み得る。
【0112】
前述の発明は、理解を明確にする目的のため、例示することにより詳細に記載されているものの、特定の変更物及び変形物は開示内容により理解され、限定されない説明の方法で示された添付の請求の範囲内で、更なる実験なしに実施され得ることが当業者に明白である。以下に示す実施例は、本発明の特定の観点を説明するために提供されるものであり、限定を意味するものではない。
【実施例】
【0113】
実施例
研究目的
この研究は、“試験化合物”としてここで言及される、式(I)で表されるフェニルアルキルアミノカルバメートの(D)又は(R)光学異性体、特に、上記の式(Ib)で示される(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメートとも命名され得るO−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノールのアンフェタミン及びコカインに対する直接比較における、試験化合物の急速投与後のラットにおける睡眠覚醒機構への効果を決定するために行った。
【0114】
ラットの睡眠覚醒機構における試験化合物の活性のプロファイルを特徴付けるために、動物は、皮質の脳電図、電気的な頸筋活性及び眼球移動を記録するために、電極を長期間移植され、一方、全ての身体の動きの程度が同時に記録された、第二に、効果は、2種の対照精神刺激薬、コカイン及びアンフェタミンから得られた効果と比較された。睡眠覚醒機構における変化はそのような睡眠ポリグラフ記録に基づいて確実に検出され得る。それに続く変化のパターンの解析は、調査中の化合物に最も酷似している向精神薬の類を予測
するために有効である(Ruigh,GS等、(1993)Neuropsychobiology;28(3):138−153参照)。
【0115】
材料及び方法
動物
実験は、手術時に240ないし260gの体重のHarlan(ボルヘン、ドイツ国)により供給された雄の成熟SDラット(Sprague Dawley rats)で行われた。動物は、音響減衰チャンバー内に設置されたIVC−ラック(独立して換気されたケージ)に適合した全体が見えるプレキシグラスケージ(25×33×18cm)内に収容された。ラットは、同定目的のためのマイクロチップが備えられ、不断給餌で得られる標準実験食及び水道水を伴い、この研究を通じて、外気温22±2℃、相対湿度60%、12:12の明−暗サイクル(12:00時から00:00時まで照明;光度〜100ルクス)の管理された環境条件下に維持された。全ての動物処置が制度上の動物管理及び使用は委員会に認可された。
【0116】
手術
イソフルランの吸入麻酔下で、ラットを定位固定装置に取り付けた。頭皮の楕円領域を切除し、カバーされていない頭蓋から骨膜を取り除いた。3つの小さな空洞を、前骨のポリグラフ記録及び頭頂の脳電図(EEG)のために3枚の固定ステンレス鋼羽(直径1mm)を収容するために、硬膜に穴をあけることなく頭蓋骨にドリルであけた。2つの電極を矢状縫合(AP+2mm、L−2mm;及びブレグマからAP−6mm、L−3mm)のそれぞれの側面に定位固定して設置し、一方、3つめの電極(対照)は、小脳の上方にねじで止められた。Paxinos G.& Watson C.The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates,Academic Press,サンディエゴ、カルフォルニア州、米国(1998)の定位固定アトラスに従って、切歯バー(incisor bar)はイヤーバーの中央下−5mmとした。
【0117】
眼電図(EOG)及び筋電図(EMG)の記録のために、ステンレス鋼ワイヤーを、それぞれ、眼窩周囲中に設置し、項筋中に挿入した。小さな挿入部(トラックピン;Dataflex:TRP−1558−0000)を有するピン(Future Electronics:0672−2−15−30−27−10−0)に結合された、電極(ステンレス鋼ワイヤー、7N51465T5TLT、51/46 Teflon Bilaney,ドイツ国)は、8穴コネクターに適合した。最後に、電極は頭蓋に歯科用セメントで固定された。動物は個々に収容され、少なくとも1週間回復させた。
【0118】
睡眠記録手順及び薬理試験
手術後10日、記録方法のために、動物をそれらのホームケージの内で2週間慣らした。ラットは、EEG,EOG及びEMG活性を監視しながら、定期的な間隔で、自由運動を可能にする回転するスイベルにケーブルで結合した。
【0119】
要求される基準を満たすラットのみが試験時に使用され、即ち、動物の体重300ないし700g、良好なポリグラフにおけるシグナルの質を有し、対象ラットを再使用する場合においては、少なくとも14日間のウオッシュ・アウト期間、2種の連続した試験セッションにおいて衰弱しないものが使用された。それぞれの化合物のために、二つのEEG記録セッションが、無作為に4種の治療条件に割り当てられた32匹の手術された動物において行われた(1条件当りn=8のラット)。
【0120】
最初の記録セッションは14:00時に始まり、生理食塩水の投与後16時間続いた(n=32のラット)。第二の記録セッションは、生理食塩水と、異なった投与量における試験化合物(1、3及び10mg/kg)、コカイン(3,10及び30mg/kg、腹
腔内)又はアンフェタミン(3,10,30mg/kg、腹腔内)の投与に続く同様の継続時間で行った。全ての化合物は、生理食塩水に溶解され、体重kg当り10mLの体積で投与された。生理食塩水の等体積が対照条件において投与された。EEG,EGO,EMGシグナル及び身体運動活性は、16時間監視された。データの取得は、200Hzのサンプルレートで行った。全てのシグナルは、MedCare(アイスランド)により開発された双極性記録システム(Embla)を経てコンピューターへ回され、コンピューターを信号記録のためのポリグラフ記録(polygraphic)ワークステーション(workstation)として使用することができるようにするソフトウェアパッケージ(Somnologica、MedCare、Iceland)により管理された。
【0121】
睡眠覚醒機構分析
自動化されたラット睡眠分析システムを、化合物の注入後、連続して16時間の間適用した。オフラインで上記睡眠覚醒段階化は、5EEG周波数領域値(δ:0.4−4Hz、θ:4.2−8Hz、α:8.2−12Hz、σ:12.2−14Hz、β:14.2−30Hz)、統合された(integrated)EMG、EOG及び体の活動水準に基づいて、自動化された様式で2秒間(2−second epochs)、そして30分間の平均で行われた。
【0122】
上記識別分析は、各々の特定EEG期間の最終睡眠段階指定のための分類規則を使用する。各六つの睡眠段階は、能動覚醒状態(active wakefulness、AW)、受動覚醒状態(passive wakefulness、PW)、浅い徐波睡眠(light slow wave sleep、ISWS)、深い徐波睡眠(dSWS)、中間段階(IS)または急速眼球運動睡眠(rapid eye movement sleep、REMS)の何れかを示すものに分類される。要約すると、上記異なる状態は下記のように特徴付けられる:AW、低―電圧速波EEG活動、高いEMG活動、様々な眼球運動及び高い身体活動;PW、低―電圧速波EEG活動、高い乃至中間のEMG活動、様々な眼球運動、及び身体活動の欠如;ISWS、低―電圧速波により中断された高―電圧遅い大脳皮質の波及び減少したEMG活動;dSWS、EMG、EOG及び身体活動のないEEGで連続的な高−振幅の遅い−波活動;IS:EOG及び身体活動のない、シータリズムを有する一時的なスピンドル活動(transient spindle activity);REMS:定期的なシータリズムを有する低―電圧速波大脳皮質の波、速い眼球運動があり、筋肉及び身体運動がない。
【0123】
点数は、EEG信号と同時に記録され上記システムが自動に、各状態において費やされた時間の量、各状態における出来事の数及び持続時間、ISWS、dSWS及びREMSの潜伏期、及び一つの状態から別の状態へ転換した数のような異なる睡眠覚醒のパラメーターを計算した。各睡眠状態において、潜伏期は記録が始まる時間と少なくとも30秒間持続される一番目の睡眠期間が出現する時間との間の時間と定義される。
【0124】
統計学的分析
各不眠状態(AW、PW、ISWS、dSWS、IS及びREMS)において費やされた時間を記録時間の百分率で表現した。獲得したデータの統計学上の分析は、対照群との比較におけるWilcoxon−Mann−Whitney順位和検定を伴う、30分ごとの差異の非パラメータ分析により行われた。
【0125】
試験化合物の効果
試験化合物の投与は、睡眠覚醒状態の分布に顕著な変化をもたらした。
【0126】
睡眠覚醒構造の僅かな変形が、化合物の最少投与量(3mg/kg i.p.)の投与後、16時間の記録期間の間観察された。浅い睡眠(light sleep)総計の増
加(+26%、p≦0.05)及び浅い睡眠からだけでなく深い睡眠からの覚醒への増加(+46%、p≦0.001;+15%、p≦0.005;夫々)が観察され、化合物の投与後、睡眠崩壊の傾向(p≦0.005)を示した(表4参照)。
【0127】
10mg/kg i.p.投与量の試験化合物は、浅い睡眠の総持続時間での顕著な増加(+24%、p≦0.05)と、REM睡眠から能動覚醒状態への転換での顕著な増加(+16%、p≦0.05)と関わる睡眠覚醒機構の変化を引き起こした(表2及び4参照)。記録期間の最初の90分の間に、能動覚醒状態に費やされた時間を増加させて、深い眠りの持続時間の顕著な減少が観察された(p≦0.05)。
【0128】
試験化合物の最高投与量(30mg/kg i.p.)は、睡眠覚醒周期分布で顕著な変化を引き起こした。注入後、16時間の記録期間にわたって能動覚醒状態で費やされた総時間の目立った増加(+19%、p≦0.05)、受動覚醒状態(−29%、p≦0.05)、浅い睡眠(−20%、p≦0.05)、同様に、REM睡眠(−25%、p≦0.05)に費やされた総時間の減少が観察された(表2参照)。さらに、総睡眠時間と比べると、試験化合物は深い睡眠時間の増加及びREM睡眠時間の減少を誘導した(p≦0.05)(表4参照)。
【0129】
試験化合物投与後、最初3時間の間に能動覚醒状態の顕著な向上が観察された(p≦0.01)。同時に、睡眠時間が例えば、浅い睡眠(p≦0.01)、深い睡眠(p≦0.01)及びREM睡眠(p≦0.01)が大きく減少したのに続いて、特に試験化合物投与3時間後に、深い睡眠が増加するリバウンド効果(rebound effect)が生じた。後者の効果は、照明期間の記録の間約7時間持続された。試験化合物活性の開始は、直ちに、即ち、投与後最初の30分前後であった。
【0130】
総能動覚醒状態に費やされる総時間の大きな増加及び受動覚醒状態、浅い睡眠及びREM睡眠の減少は、各々このような睡眠覚醒段階の期間(epochs)数の増加(+19%、p≦0.05)、及び減少(−30%、p≦0.05;−23%、p≦0.05;−24%、p≦0.01)による。しかし、このような睡眠覚醒状態の平均持続時間は変更されなかった。上述(表4参照)のように30mg/kgの試験化合物は、浅い睡眠及びREM睡眠から覚醒状態への転換の数を増加し(p≦0.05)、従って、睡眠崩壊の徴候を示した。睡眠潜伏期の実験は、試験化合物の投与後に顕著な変化を示した(表1参照)。10及び30mg/kgの試験化合物は、REM睡眠開始の潜伏期の著しい延長を引き起こした。
【0131】
コカインの効果
試験した最高投与量のコカイン投与後の睡眠構造における大きな変化、即ち、処理後、16時間に亘る記録の間、能動覚醒状態の総持続時間を増加(+14%)させて、REM睡眠に費やされた総時間の減少(−18%)が観察された。さらに、異なる投与量でのコカインの効果は、総睡眠時間並びに睡眠から覚醒状態への転換数において観察されなかった。
【0132】
10mg/kg投与量におけるコカインは、処理後3時間に亘って能動覚醒状態の持続時間において顕著な増加を引き起こした(0.5時間:+111%、p≦0.001;1時間:+500%、p≦0.001;1.5時間:+312%、p≦0.001;2時間:+120%、p≦0.001;2.5時間:+166%、p≦0.001;3時間:+77%、p≦0.001)。同時に、浅い睡眠並びに深い睡眠に費やされる時間は、記録時間の最初の2時間の間減少した(各々0.5時間:−100%及び90%、p≦0.001;1時間:−99%及び−100%、p≦0.001;1.5時間:−87%及び−99%、p≦0.001;2時間:−25%及び−70%、p≦0.05及びp≦0.0
01)。さらに、REM睡眠の持続時間は、投与後の最初の3時間の間、顕著に減少した(0.5時間、1時間、1.5時間:各々−100%、p≦0.001;2時間:−87%、p≦0.001;−2.5時間:−47%、p≦0.001;3時間;−78%、p≦0.001)。
【0133】
投与量10mg/kgのコカインの投与に続く能動覚醒状態の増加量は、期間の数の増加(0.5時間:+111%、p≦0.001;1時間:+500%、p≦0.001;1.5時間:+312%、p≦0.001;2時間:+119%、p≦0.001;2.5時間:+166%、p≦0.05;3時間:+77%、p≦0.001)に起因したが、一方、この状態の持続時間は影響されなかった。
【0134】
記録期間の最初の2時間の間の、浅い睡眠及び深い睡眠に費やされる時間の減少は、これらの段階の期間(epoch)の数の減少に起因した(各々、0.5時間:−100%及び−100%、p≦0.001;1時間:−99%及び−100%、p≦0.001;1.5時間:−87%及び−100%、p≦0.001;2時間:−22%及び−38%、p≦0.05)。同様に、最初の3時間の間の、REM睡眠に費やされる持続時間の減少は、各々この状態の期間(epoch)の数の減少から誘導された(0.5時間、1時間、1.5時間:それぞれ−100%、p≦0.001;2時間:−87%、p≦0.001;2.5時間:−47%、p≦0.001;3時間:−78%、p≦0.001)。
【0135】
表1に示された通り、REM睡眠開始の潜伏期は、用量依存的に影響を受けた(p≦0.05)。
【0136】
アンフェタミンの影響
16時間の総記録期間の間、アンフェタミンの1、3、及び10mg/kgは、睡眠覚醒機構に顕著な変化を引き起こした。アンフェタミンは投与量依存的に能動覚醒状態(+27%、p≦0.05;+47%、p≦0.001;+66%、p≦0.001)、深い(リバウンド)睡眠(+73%、p≦0.05;+91%、p≦0.05;+66%、p≦0.001)に費やされた総時間を増加させ、浅い睡眠(−35%、p≦0.05;−49%、p≦0.05;−51%、p≦0.001)及びREM睡眠(−4%;−22%、p≦0.05;−41%、p≦0.001)に費やされた総時間を各々減少させた(表2参照)。さらに、ビヒクルと比較した場合、アンフェタミンの3乃至10mg/kgは、比例的に総睡眠時間(p≦0.001)及び浅い睡眠に費やされた時間を減少させた反面、該化合物は総睡眠時間に比して、深い睡眠の比率を増加させた(p≦0.05)(表3参照)。アンフェタミンの1、3、及び10mg/kg投与に続く能動覚醒状態及び深い睡眠における大きな増加は、能動覚醒期間(epoch)(各々+27%、p≦0.05;+47%、p≦0.001;+66%、p≦0.001)及び深い睡眠期間(+73%、p≦0.001;+91%、p≦0.001;+66%、p≦0.001)の数の増加に起因する。能動覚醒の平均持続時間が上記化合物の異なる投与量により変更されない反面、深い睡眠段階の平均持続時間は、上記化合物の3及び10mg/kgに従って減少する。(−19%、p≦0.05;−30%、p≦0.05)。
【0137】
アンフェタミンの1、3、及び10mg/kg投与後の浅いSWS及びREM睡眠の総時間の減少は、浅い睡眠期間(各々−35%、p≦0.05;−49%、p≦0.001;−51%、p≦0.001)及びREM睡眠期間(各々−4%;−22%、p≦0.05;−41%、p≦0.001)の数の減少に起因する。REM睡眠段階の平均持続時間は減少する反面(各々−16%、p≦0.05;−23%、p≦0.05;−36%、p≦0.05)、このパラメーターは、浅い睡眠では顕著に変化しななかった。アンフェタミンは、3、4、及び6時間の間、明確な投与量依存様式で能動覚醒状態を増進させた(各々1、3、及び10mg/kg;p≦0.05)。同時に、浅い、深い及びREM睡眠
の持続時間において投与量依存的な減少が、投与後3、4、6時間にわたって観察された(各々、p≦0.05)。
【0138】
アンフェタミンは、深い睡眠段階に費やされた時間において、二相性の効果を有し、即ち、投与後3−6時間の間は大きく減少し、その後、記録の照明期間の間、リバウンドとみなされる効果が増加した。
【0139】
表1に示されるように、アンフェタミンは睡眠段階の開始潜伏期を延長することにより睡眠パラメーターに顕著に影響した(p≦0.001)。
【0140】
結果:
投与量3及び10mg/kgでの試験化合物の投与後、不眠状態の小さいな変化が観察された。しかし、30mg/kgの試験化合物処理は、投与後の最初の3乃至4時間の間の、浅い睡眠、深い睡眠及びREM睡眠に費やされる時間を犠牲にして、能動覚醒状態を強力に増加させた。化合物の投与後4−10時間の間に、その後数時間の間に徐々に減少するところの、深い睡眠に費やされる時間の増加として、リバウンド効果が見られた。さらに、試験化合物は、他の睡眠覚醒の変数に影響を及ぼした;より特には、それは、浅い睡眠及びREM睡眠から覚醒状態へ転換する数を顕著に増加させ、同様に、REM睡眠開始の潜伏期を延長させた。
【0141】
投与量1及び3mg/kgで投与されたコカインは、睡眠覚醒機構に僅かにしか影響を及ぼさなかった。対照的に、コカイン10mg/kgは、該化合物の注入後の最初の3乃至4時間の間、能動覚醒状態を顕著に向上させ、徐波睡眠及びREM睡眠を減少させた。全ての睡眠潜伏期が増加された。アンフェタミンは、投与後3乃至8時間の間、投与量依存的に覚醒状態を増加させ、全ての睡眠段階を減少させた。明確な投与量依存的なリバウンド効果が深い睡眠において観察された。さらに、すべての睡眠段階の潜伏期が顕著に増加した。
【0142】
結論
本知見は、腹腔内注射後ほとんどすぐに試験化合物が、投与後2時間辺りを効果のピークとして少なくとも4時間の間、中枢的に活性であることを示した。3mg/kgの最少投与量試験で、睡眠覚醒体制における小さい効果しか観察されなかった。睡眠のパラメーターにおける変化は、中間(10mg/kg)において、より特には、試験された30mg/kgのより高い投与量において観察された。記録期間の最初の3時間の間が最も明確である睡眠覚醒分布の変化は、能動覚醒状態に費やされた時間の大きな増加の一方で、受動覚醒状態、浅い睡眠、深い睡眠及びREM睡眠に費やされた時間が減少したことにより特徴付けられた。興味深いことに、試験化合物は、7時間までのこの段階に費やされた時間の著しい増加に関連する、深い睡眠を回復するリバウンド効果を引き起こした。
【0143】
この比較研究で観察された効果は、試験化合物の30mg/kgは、投与の初期において精神刺激剤様の特性を有する反面、それに続いて、睡眠恒常性に対する潜在的な間接効果に向かう深い睡眠向上点で示されるように睡眠傾向を増加させることを明確に示唆した。
【0144】
30mg/kgの効果における総合的な試験化合物プロフィルは、効果パターン、大きさ及び持続時間に関して、1mg/kgの最少投与量で試験されたアンフェタミンの投与に続いて観察されたプロフィルと著しく似ていた。
【0145】
従って、試験化合物は、ラットにおいて、腹腔内(i.p.)投与2時間後辺りで、効果の機能的なピークを伴う睡眠覚醒体制の変化として明示された注射後すぐの中枢的な活
性を示した。該知見は試験化合物が二相性(biphasic)効果、即ち、初期における覚醒の増加及び睡眠の減少、それに続く4−10時間持続する、多分リバウンド効果と思われる、(深い)睡眠の増加を示した。このような知見は、精神刺激薬、最も特には、試験した最少投与量(即ち、1mg/kg i.p.)のアンフェタミンの投与に続いて観察された睡眠覚醒体制における効果と非常に類似する。従って、結果は、試験化合物が投与後直ちに刺激剤様の特性をもたらすだろうことを示唆する。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0146】
引用した参考文献
ここに引用された全ての参考文献は、各公報、または特許、または特許出願が特定的にそして個別的にその全体内容及び目的において参照として組み込まれる場合と同一程度に、その全体内容及び全ての目的が参照としてここに組み込まれる。
【0147】
ここにおける参考文献の論議は、その著者によりなされた主張を要約するためにのみ意図されており、何れかの参考文献が公知技術を構成すると認めたものではない。出願人は引用された参考文献の正確性及び適切性に異議を申し立てる権利を保有する。
【0148】
本発明は、本願明細書に記載された特定の実施態様により制限されるものでなく、該実施態様は、発明の個々の観点の一つの説明として意図される。本発明の多くの修正物及び変更物がその精神及び範囲を逸脱することなくなされ得、また、当業者に明確である。本
明細書に列挙された本発明の範囲内における方法及び装置、加えて、該方法及び装置に機能的に等価なものは、上記の記載及び添付された図面から当業者に明白である。そのような修正物及び変更物は付属の請求の範囲内であることが意図される。本発明は、付属の請求の範囲が与えられる等価物の全ての範囲と共に、そのような請求の範囲の用語によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における日中の過度の眠気(EDS)を治療する方法であって、式(I)
【化1】

[式中、Rは水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、1ないし3個の炭素原子を含むアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及び1ないし3個の炭素原子を含むチオアルコキシ基からなる群より選択された一つを表し;
xは1ないし3の整数を表すが、但し、xが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なり得;
1及びR2は互いに同一又は異なって、水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基からなる群より独立して選択され;R1及びR2は結合して、水素原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された一つで置換された5ないし7員の複素環(ここで該環状化合物は1ないし2個の窒素原子及び0ないし1個の酸素原子を含み得、ここで前記窒素原子は互いに又は前記酸素原子と直接的に結合しない。)を形成し得る。]で表される化合物又はその医薬的に許容される塩又はエステルの治療有効量を、そのような治療が必要な対象者へ投与することを含む方法。
【請求項2】
Rが水素原子を表し且つxが1を表す請求項1記載の方法。
【請求項3】
R、R1及びR2が全て水素原子から選択され且つxが1を表す請求項1記載の方法。
【請求項4】
対象者における日中の過度の眠気(EDS)を治療する方法であって、他の光学異性体が実質的に存在しない式(I)
【化2】

[式中、Rは水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、1ないし3個の炭素原子を含むアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及び1ないし3個の炭素原子を含むチオアルコキシ基からなる群より選択された一つを表し;
xは1ないし3の整数を表すが、但し、xが2又は3を表す場合、Rは同一又は異なり得;
1及びR2は互いに同一又は異なって、水素原子、炭素原子数1ないし8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、炭素原子数3ないし7のシクロアルキル基からな
る群より独立して選択され;R1及びR2は結合して、水素原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された一つで置換された5ないし7員の複素環(ここで該環状化合物は1ないし2個の窒素原子及び0ないし1個の酸素原子を含み得、ここで前記窒素原子は互いに又は前記酸素原子と直接的に結合しない。)を形成し得る。]の光学異性体であるか、又は式(I)の1種の光学異性体が優位を占める光学異性体混合物、或いはその医薬的に許容される塩又はエステルの治療有効量を、そのような治療が必要な対象者へ投与する段階を含む方法。
【請求項5】
xが水素原子を表す請求項4記載の方法。
【請求項6】
x、R1及びR2が全て水素原子から選択される請求項4記載の方法。
【請求項7】
式(I)からなる群より選択された1種の光学異性体が約90%以上の量で優位を占める請求項4記載の方法。
【請求項8】
式(I)からなる群より選択された1種の光学異性体が約98%以上の量で優位を占める請求項4記載の方法。
【請求項9】
式(I)からなる群より選択された光学異性体が式(Ia)
【化3】

式(Ia)
からなる群より選択された光学異性体又はその医薬的に許容される塩又はエステルである請求項4記載の方法。
【請求項10】
式(Ia)からなる群より選択された光学異性体が、(R)又は(D)光学異性体である請求項9記載の方法。
【請求項11】
式(Ia)からなる群より選択された光学異性体が、(S)又は(L)光学異性体である請求項9記載の方法。
【請求項12】
式(Ia)からなる群より選択された1種の光学異性体が、約90%以上の量で優位を占める請求項9記載の方法。
【請求項13】
式(Ia)からなる群より選択された1種の光学異性体が、約98%以上の量で優位を占める請求項9記載の方法。
【請求項14】
他の光学異性体が実質的に存在しない式(I)の光学異性体が、式(Ib)
【化4】

式(Ib) (R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)
の(D)又は(R)光学異性体であるか、或いは式(Ib)の(D)又は(R)光学異性体が優位を占める光学異性体混合物である請求項4記載の方法。
【請求項15】
式(Ib)の光学異性体(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)が約90%以上の量で優位を占める請求項14記載の方法。
【請求項16】
式(Ib)の光学異性体(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)が約98%以上の量で優位を占める請求項14記載の方法。
【請求項17】
EDSの原因が、中枢神経系(CNS)の病理学的異常、脳梗塞、ナルコレプシー、特発性CNS過眠症;睡眠不足、睡眠時無呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸、夜間睡眠不足、慢性疼痛、急性疼痛、パーキンソン病、尿失禁、多発性硬化性疲労、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、大うつ病、双極性障害、心虚血;環境と体内時計の不整合、時差ぼけ、交代勤務;及び鎮静薬からなる群より選択される請求項14記載の方法。
【請求項18】
EDSの原因がナルコレプシーである請求項14記載の方法。
【請求項19】
光学異性体(R)−(β−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメート又は(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)の治療的有効量が約0.01mg/kg/投与ないし約300mg/kg/投与である請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2008−545795(P2008−545795A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515949(P2008−515949)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/022407
【国際公開番号】WO2006/133393
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(308035391)
【出願人】(308035405)
【出願人】(308035416)
【出願人】(308035427)
【出願人】(303024622)エスケー ホルディングス カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】