説明

睡眠誘導装置

【課題】振動体の振動音を抑制しながら、振動体の振動によって人体の頭頚部を刺激する頭頚部刺激ユニットを提供する。
【解決手段】筐体(1)と、両端が前記筐体に挟み込まれた、弾性かつ磁性を有する振動体(3、4)と、前記振動体に対して前記挟み方向に並んで配置される、コイル(5b)を巻き回したボビン(5)とを有し、前記振動体は、前記コイルに対して通電すると、前記ボビンに吸引されて前記挟み方向のうち一方向に弾性変形し、該一方向に弾性変形した状態で前記コイルへの通電を絶つと、弾性力により前記一方向とは反対の他方向に弾性変形し、前記振動体は、前記一方向に弾性変形した前記振動体の弾性力により、前記ボビンへの吸着が阻止されることを特徴とする頭頚部刺激ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具に設けられた振動体を振動させることにより使用者を睡眠に導く睡眠誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不眠状態を解消するために様々な提案がなされており、例えば、ストレスパターン、疲労パターン及び健康パターンのいずれかのパターンで振動する振動体をマットレスに内蔵した睡眠誘導装置が提案されている(特許文献1参照)。この睡眠誘導装置によれば、各個人の生体の状態に応じて、ストレスパターン、疲労パターン及び健康パターンのいずれかの刺激パターンを選択することができる。
【0003】
また、別の睡眠誘導装置として、ホワイトノイズ回路と、このホワイトノイズを入力としてパワースペクトルが1/f特性を有する音声フィルタと、音声出力を時間経過と共に変化させる制御回路とを備えた入眠装置が組み込まれた枕が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第2542334号明細書
【特許文献2】特開昭62−266076号公報
【特許文献3】特開2000−106998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
寝具に睡眠誘導装置としての振動体を組み込む場合には、振動体の振動音が異音となって直接聴覚に伝達されるため、高い入眠効果を得るためには、振動体の振動音を抑制する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の入眠装置は、振動体の振動音を抑制する方法について何ら考慮されていない。
【0005】
さらに、特許文献3には、20HZ以下の周期で振動する機械的振動子を両耳の間の後頭部に対応した位置に配置されるように装着した睡眠枕が開示されているが、振動音を抑える機械的構成について開示がない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明の睡眠誘導装置は、寝具に設けられた振動体を振動させることにより使用者を睡眠に導く睡眠誘導装置であって、第1の鉄板と、筒状にコイルが巻き回されたコイル部材と、第2の鉄板と、非磁性部材と、永久磁石とを並設してなる前記振動体と、前記振動体の前記並設方向における一端側から他端側に延びる貫通路内を移動可能な可動鉄芯と、前記コイルへの通電を制御する通電制御回路とを有し、前記可動鉄芯は、前記通電制御回路により前記コイルへの通電を禁止した場合には、前記永久磁石に吸引されることにより、前記永久磁石に形成された前記貫通路内の第1の位置に向かって前記振動体に対して相対移動し、前記通電制御回路により前記コイルへの通電を許可した場合には、前記永久磁石に反発して、前記第1の鉄板に形成された前記貫通路内の第2の位置に向かって前記振動体に対して相対移動することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記可動鉄芯は、大径部と、この大径部よりも径の小さい第1の小径部と、この第1の小径部よりも前記第2の鉄板に近い領域に形成され、前記大径部よりも径の小さい第2の小径部とを含み、前記第1の位置に前記可動鉄芯が位置する状態で、前記第2の小径部は、前記第2の鉄板よりも前記第1の鉄板に近い領域に位置しており、前記第2の位置に前記可動鉄芯が位置する状態で、前記第1の小径部は、前記第1の鉄板よりも前記第2の鉄板に近い領域に位置している。
【0008】
前記コイル部材の前記貫通路は、前記コイル部材の外側に突出する筒状のボビンによって構成されており、前記第2の鉄板、前記非磁性部材及び前記永久磁石に形成された前記貫通路内に前記ボビンを挿入することにより、前記第2の鉄板、前記非磁性部材及び前記永久磁石を位置決めすることができる。
【0009】
前記可動鉄芯の前記大径部は、前記ボビンの内径よりも径寸法を小さくするのが好ましい。また、前記可動鉄芯と前記ボビンとの間に液状のシリコンを介在させるとよい。
【0010】
前記可動鉄芯の表面に、前記可動鉄芯よりも摩擦係数の低い低摩擦部材を形成するとよい。前記低摩擦部材としては、フッ素樹脂を例示できる。
【0011】
前記第1の鉄板は、前記コイル部材、前記第2の鉄板、前記非磁性部材及び前記永久磁石を収容する収容ケース体の一部を兼ねている。
【0012】
前記通電制御回路は、脳波のデルタ波帯域に属する第1の周波数から該第1の周波数よりも低い第2の周波数まで連続的に漸減する第1の出力信号と、1HZよりも周波数が低い特定の第2の出力信号と、第1の時間だけ前記コイルへ通電し、該第1の時間が経過した後に該第1の時間よりも長い第2の時間だけ前記コイルへの通電を停止し、該第2の時間が経過した後に該第1の時間と同じ第3の時間だけ前記コイルへ通電し、該第3の時間が経過した後に該第2の時間よりも長い第4の時間だけ前記コイルへの通電を停止する周期パターンを有する第3の出力信号とを出力可能であり、前記第1、第2及び第3の出力信号を選択的に切替可能な切替部を有することを特徴とする。
【0013】
上記睡眠誘導装置は寝具の中に組み込むことにより使用され、前記寝具としては、枕、布団、シートを例示することができる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、可動鉄芯を停止部材に当接させることなく、第1の位置と第2の位置との間で移動させることができるため、振動体を静かに振動させることができる。これにより、入眠効果の高い睡眠誘導装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施形態】
【0016】
図1は寝具の平面図であり、図2は睡眠誘導装置の斜視図であり、図3は睡眠誘導装置の分解斜視図であり、図4は図2の睡眠誘導装置のA−A´断面図であり、図5は睡眠誘導装置の動作説明図である。
【0017】
図1において、1は敷布団(寝具)であり、この敷布団1の上には枕(寝具)2が載置されている。使用者3は、枕2に後頭部を当接させた状態で上向きに寝ている。
【0018】
敷布団1における使用者3の上腕部に対応した位置には、一対の睡眠誘導装置4が組み込まれている。
【0019】
次に、図2乃至図5を参照しながら、睡眠誘導装置4の構成について説明する。11は第1の鉄板(第1の鉄板)11aと、この第1の鉄板11aの端面からX軸方向(可動鉄芯17の移動方向)に延びる一対の上下板11bとからなるコの字状のケース体である。第1の鉄板11a及び上下板11bは一体形成されており、第1の鉄板11aの略中央にはケース貫通穴111aが形成されている。ケース体11の資材としては、鉄を使用している。
【0020】
12はコイル部材であり、このコイル部材12のコイル12bは筒管12aの外周面に巻き回されている。コイル12bは後述する制御回路141に対して電気的及び機械的に接続されている。
【0021】
筒管12aの一端面及び他端面(X軸方向の端面)にはそれぞれ、筒管12aよりも径寸法の大きい第1及び第2のフランジ部12d、12eが形成されている。
【0022】
コイル部材12の内径部(貫通路)には、コイル部材12の内径と外径が略等しい筒状のボビン12cが圧入されている。このボビン12cのX軸方向の寸法は筒管12aよりも長く設定されており、ボビン12cは、第1の鉄板11aの板厚寸法分だけ第1のフランジ部12dから突出しており、第2の鉄板13、非磁性部材14、永久磁石15及び固定板16の総厚み寸法分だけ第2のフランジ部12eから突出している。
【0023】
第1のフランジ部12dから突出したボビン12cの突出部分は、ケース貫通穴111a内に挿入されており、第1のフランジ部12dは第1の鉄板11aのケース体11内側の面に接触している。
【0024】
第1のフランジ部12d及び第2のフランジ部12eの直径寸法(Z軸方向の寸法)は、一対の上下板11bの間隔よりも短く設定されている。したがって、コイル部材12は、一対の上下板11bの間の空間内に中空支持された状態となっている。
【0025】
第2の鉄板13の中央には、径寸法がボビン12cの外径寸法よりも僅かに大きい鉄板開口部13aが形成されている。この鉄板開口部13aには第2のフランジ部12eから突出したボビン12cの突出部分が挿入されている。
【0026】
このように、鉄板開口部13a内にボビン12cを挿入させることにより、第2の鉄板13に対してボビン12cの長手方向に直交する方向(X軸に直交する方向)から外力が加わった際に、鉄板開口部13aの壁部にボビン12cを当接させることができるため、第2の鉄板13の位置ずれを確実に防止できる。
【0027】
第2の鉄板13のコイル部材12側の端面は第2のフランジ部12eに接触している。
【0028】
第2の鉄板13及び第1の鉄板11aのY軸方向(Z軸に直交する方向)の寸法は同じに設定されている。したがって、第2の鉄板13及び第1の鉄板11aのY軸方向の端面は同一面内に位置する。第2の鉄板13のZ軸方向の寸法と、一対の上下板11bの間隔とは同じに設定されている。したがって、第2の鉄板13のZ軸方向の端面は、上下板11bにおけるケース体11内側の面に接触している。
【0029】
非磁性部材14の中央には、内径寸法がボビン12cの外径寸法よりも僅かに大きく設定された非磁性部材開口部14aが形成されている。この非磁性部材開口部14aには第2のフランジ部12eから突出したボビン12cの突出部分が挿入されている。非磁性部材14の第2の鉄板13側端面は第2の鉄板13に接触している。非磁性部材14は、磁性材料以外の材料で構成されており、本実施形態では真鍮を使用している。
【0030】
このように非磁性部材開口部14a内にボビン12cを挿入させることにより、非磁性部材14に対してボビン12cの長手方向に直交する方向(X軸に直交する方向)から外力が加わった際に、非磁性部材開口部14aの壁部にボビン12cを当接させることができるため、非磁性部材14の位置ずれを確実に防止することができる。
【0031】
非磁性部材14及び第1の鉄板11aのY軸方向の寸法は同じに設定されている。したがって、非磁性部材14及び第1の鉄板11aのY軸方向の端面は同一面内に位置する。非磁性部材14のZ軸方向の寸法と、一対の上下板11bの間隔とは同じに設定されている。したがって、非磁性部材14のZ軸方向の端面は、上下板11bのケース体11内側の面に接触している。
【0032】
永久磁石15の中央には、内径寸法がボビン12cの外径寸法よりも僅かに大きく設定された永久磁石開口部15aが形成されている。この永久磁石開口部15aには第2のフランジ部12eから突出したボビン12cの突出部分が挿入されている。
【0033】
このように永久磁石開口部15a内にボビン12cを挿入させることにより、永久磁石15に対してボビン12cの長手方向に直交する方向(X軸に直交する方向)から外力が加わった際に、永久磁石開口部15aの壁部にボビン12cを当接させることができるため、永久磁石15の位置ずれを確実に防止できる。
【0034】
永久磁石15の非磁性部材14側の端面は非磁性部材14に接触している。永久磁石15及び第1の鉄板11aのY軸方向の寸法は同じに設定されている。
【0035】
したがって、永久磁石15及び第1の鉄板11aのY軸方向の端面は同一面内に位置する。永久磁石15のZ軸方向の寸法と、一対の上下板11bの間隔とは同じに設定されている。したがって、永久磁石15のZ軸方向の端面は、上下板11bにおけるケース体11内側の面に接触している。
【0036】
図3に図示するように、永久磁石15は、N極に磁化されたハッチングで示すN極部15b(永久磁石開口部15aを含む)と、S極に磁化されたS極部15cとから形成されている。
【0037】
固定板16の中央には、内径寸法がボビン12cの外径寸法よりも僅かに大きく設定された固定板開口部16aが形成されており、この固定板開口部16aには第2のフランジ部12eから突出したボビン12cの突出部分が挿入されている。
【0038】
このように固定板開口部16a内にボビン12cを挿入させることにより、固定部材16に対してボビン12cの長手方向に直交する方向(X軸に直交する方向)から外力が加わった際に、固定板開口部16aの壁部にボビン12cを当接させることができるため、固定板16の位置ずれを確実に防止できる。
【0039】
固定板16の永久磁石15側の端面は永久磁石15に接触している。
【0040】
固定板16及び第1の鉄板11aのY軸方向の寸法は同じに設定されている。したがって、固定板16及び第1の鉄板11aのY軸方向の端面は同一面内に位置する。
【0041】
固定板16のZ軸方向の寸法と、一対の上下板11bの間隔とは同じに設定されている。したがって、固定板16のZ軸方向の端面は、上下板11bにおけるケース体11内側の面に接触している。また、固定板16の永久磁石15とは反対側の面は、上下板11bのX軸方向の端面と同一平面に位置する。
【0042】
固定板16は一対の上下板11bに対して、カシメられて固定されている。これにより、コイル部材12、第2の鉄板13、非磁性部材14及び永久磁石15をケース体11内に固定した状態で収容することができる。
【0043】
これらのケース体11、コイル部材12、第2の鉄板13、非磁性部材14及び永久磁石15により睡眠誘導装置4の振動体が構成される。
【0044】
17は可動鉄芯であり、この可動鉄芯17はボビン12c内を移動する。可動鉄芯17には、第1の小径部17bと、第2の小径部17cとが形成されており、可動鉄芯17がボビン12c内に位置する状態で(図4参照)、第1の小径部17bは第2の小径部17cよりも第1の鉄板11aに近い領域に位置している。
【0045】
なお、可動鉄芯17のうち、第1及び第2の小径部17b、17cを除いた部分は、これらの小径部17b、17cよりも径寸法の大きい大径部17aにより形成されている
可動鉄芯17cの大径部17aの径寸法は、ボビン12cの内径寸法よりも小さく設定されており、可動鉄芯17c及びボビン12cの間に形成された領域には、シリコンオイルを介在させている。また、可動鉄芯17の外周面には、フッ素樹脂からなる低摩擦被膜が形成されている。
【0046】
次に、図6を参照して、コイル12bへの通電を制御する制御回路(通電制御回路)141について説明する。ここで、図6はコイル12bへの通電を制御する制御回路のブロック図である。141aはコイル12bへの通電を制御するCPUであり、141bは所定周波数のクロック信号をCPU141aに供給する発振子である。141cはCPU141aからの制御信号に基づきコイル12bに電流を出力する出力回路である。
【0047】
141dはリセット回路であり、電源をオンする場合に、電源電圧が正常に立ち上がり更に周辺回路が安定するまでCPU141aをリセット状態に保持する。また、電源オフ時には瞬時にCPU141aや周辺ロジックを初期状態に戻す。141eは電源電圧を、CPU141a、出力調整回路141f及び出力回路141cに分配する電源制御回路である。141cは出力調整回路であり、無段階ボリュームで出力の大きさを設定する。
【0048】
141gは動作モード選択スイッチであり、この動作モード選択スイッチ141gを操作することにより、睡眠誘導装置4の振動パターンを選択することができる。
【0049】
本実施形態では、デルタ帯域に属する信号を出力するデルタモードと、母親が赤子を寝かしつける時のたたき振動を擬似的に表現したマザーモードと、列車に揺られている時の心地よいレールの響きを擬似的に表現したトレインモード、これらの3つの振動パターンを選択できるようにしている。
【0050】
各振動パターンの波形を図7に示しており、(a)がデルタモードであり、(b)がマザーモードであり、(c)がトレインモードである。デルタモードに設定された場合、出力される信号が脳波のデルタ波帯域に属する3.5HZから0.75HZまで180秒の周期で漸減(第1の出力信号)するようになっている。
【0051】
マザーモードに設定された場合、0.75HZの固定周波数の信号を出力(第2の出力信号)する。これにより、赤子を寝かしつける時の手の摩りに似た振動を使用者に与えている。
【0052】
トレインモードに設定された場合、列車に乗車した時の間欠的な振動状態を擬似的に表現するために、コイル12bに150ms通電→300ms停止→コイル12bに150ms通電→1000ms停止、といった周期パターンでコイル12bに通電するようになっている。
【0053】
これにより、使用者3は目的や体調に応じた最適な振動パターンを選択することができる。なお、上記信号に1/fゆらぎのパターンで振動する1/fゆらぎ信号を重畳してもよい。また、本明細書において、「脳波のデルタ波帯域」とは、0.5HZから4.0HZまでの帯域を意味する。
【0054】
141hはCPU141aに対して動作開始及び停止を指示する動作開始/停止スイッチである。141iは動作時間選択スイッチであり、睡眠誘導装置4を振動させる時間を、30分、15分の2段階に調整できるようにしている。
【0055】
次に、図5を参照しながら、睡眠誘導装置4の動作を説明する。まず、コイル12bに電流を流す前の通電禁止状態における、可動鉄芯17の位置を説明する。通電禁止状態において、可動鉄芯17は第2の鉄板13と固定板16との間に生じる磁界により、永久磁石15に吸引される(図5(a)参照)。
【0056】
このとき、第2の小径部17cは第2の鉄板13よりも左側、つまり第1の鉄板11a側に位置しており、第2の小径部17cの右側の端部と第2の鉄板13の左側の端面(第2のフランジ部12eに接触している面)とが同一面内に位置している。
【0057】
可動鉄芯17の左側の端部は、第1の鉄板11aよりも右側、つまり第2の鉄板13に近い領域に位置している。この図5(a)に図示する可動鉄芯17の位置が特許請求の範囲に記載の第1の位置に相当する。
【0058】
図5(a)に図示する状態で、コイル12bに対して通電すると(通電を許可すると)、可動鉄芯17の永久磁石15側の端部がN極になり、可動鉄芯17と永久磁石15との間に生じる反発力とケース体11と第2の鉄板13との間に生じる吸引力とにより、可動鉄芯17はボビン12c内を矢印A方向(第1の鉄板11a側)に移動する。
【0059】
このとき、反作用によりケース体11が振動し(可動鉄芯17がケース体11に対して相対移動し)、敷布団1を介して使用者3に振動を伝達することができる。この振動パターンは、図7の出力パターンに対応しているため、使用者3を睡眠に導く効果を得ることができる。
【0060】
ここで、ケース体11が振動したり、使用者3から睡眠誘導装置4に外力が加わることにより、ボビン12cの周壁部に可動鉄芯17が当接することもある。この場合、可動鉄芯17とボビン12cとの間にシリコンオイルを介在させているため、当接時に発生する当接音を抑制して、可動鉄芯17をスムーズに動かすことができる。
【0061】
また、同様に可動鉄芯17の外周面をフッ素樹脂で覆っているため、当接時に発生する当接音を抑制して、可動鉄芯17をスムーズに動かすことができる。これにより、当接音が睡眠の妨げとなる異音となって使用者3の聴覚に入音するのを防止できる。
【0062】
矢印A方向に移動した可動鉄芯17は、図5(b)に図示する位置に停止する。この図5(b)に図示する位置が特許請求の範囲に記載の第2の位置に相当する。
【0063】
具体的には、第1の小径部17bの左側の端部は第1の鉄板11aよりも右側に位置しており、可動鉄芯17の左側の端部(大径部aの左側の端部)はボビン12c内に位置している(つまり、ケース体111aから突出していない)。
【0064】
次に、図8を参照しながら、可動鉄芯17の抜けを防止する防止機能について説明する。ここで、図8は可動鉄芯の抜け防止機能を模式的示した模式図である
図8(b)に図示するように、可動鉄芯17が第2の位置に停止せずに、さらに左側に移動する場合(点線で示す)がある(例えば、使用者3により睡眠誘導装置4に外力が加わった場合が該当する)。この場合、第2の位置に可動鉄芯17が位置する場合よりも、可動鉄芯17と第1の鉄板11aとの間隔が拡大して、磁気抵抗が増加するため、可動鉄芯17は第2の位置に復帰する。
【0065】
このように、本実施形態では第1の小径部17bを設けることにより可動鉄芯17のボビン12cからの抜けを防止している。また、通常のソレノイドのように、駆動端に可動鉄芯17を停止させるための当接部材が無いため、睡眠の妨げとなる異音の発生を阻止することができる。
【0066】
また、図8(a)に図示するように第1の位置に移動する可動鉄芯17が第1の位置で停止せずに、さらに右側に移動する場合(点線で示す)もある(例えば、使用者3により睡眠誘導装置4に外力が加わった場合が該当する)。この場合、第1の位置に可動鉄芯17が位置する場合よりも、可動鉄芯17と第2の鉄板13との間隔が拡大して、磁気抵抗が増加するため、可動鉄芯17は第1の位置に復帰する。これにより、図8(b)の場合と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、睡眠誘導装置4を敷布団1に内在させたが、枕(寝具)2に内在させてもよい。さらに、睡眠誘導装置4を組み込んだシート体(寝具)を脚の下に敷いたり、脚に巻きつけたり、敷布団1と枕2との間に介在させてもよい。この場合シート体の位置を変えるだけで簡単に振動位置を変えることができる。したがって、各使用者3に適した振動位置を選択することができる。
(実施例)
実施例を示して、本発明の内容を具体的に説明する。表1に示すように、10名の被験者(男性6名、女性4名、平均年齢35.6歳)を対象として睡眠潜時試験を行った。本発明の睡眠誘導装置4を組み込んだマットレスの上に各被験者を寝せて、PSG(睡眠ポリグラフ)記録装置ポリメイトを用いて睡眠潜時を測定した。記録方法と睡眠潜時の判定方法は、睡眠潜時反復試験(MSLT)に準じた。比較例は無振動の場合を示しており、実施例1は上述のリラックスモードを示しており、実施例2は上述のマザーモードを示しており、実施例3は上述のトレインモードを示している。
【0067】
【表1】

【0068】
各振動パターンごとの10名の平均入眠潜時を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
比較例が12.8分であり、実施例1が8.0分であり、実施例2が9.2分であり、実施例3が9.4分であった。これにより、本発明の睡眠誘導装置を用いることにより、高い入眠効果を得られることがわかった。グリンハウス−ガイザー修正を行った、繰り返しのある分散分析では、本睡眠誘導装置による入眠潜時への影響は有意で(p<0.05)、t検定によるその後検定では比較例と比較しリラックスモード(p<0.01)、トレインモード(p<0.05)で有意に入眠潜時が短縮していた。すなわち、危険率p=0.01又は0.05で有意と認められ、高い入眠効果を得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】寝具の平面図である。
【図2】睡眠誘導装置の斜視図である。
【図3】睡眠誘導装置の分解斜視図である。
【図4】図2の睡眠誘導装置のA−A´断面図である。
【図5】睡眠誘導装置の動作説明図である。
【図6】コイルへの通電を制御する制御回路のブロック図である。
【図7】出力波形を示す波形図であり(a)がデルタモードであり、(b)マザーモードであり、(c)がトレインモードである。
【図8】可動鉄芯の抜け防止機能を模式的示した模式図である。
【符号の説明】
【0072】
1 敷布団
2 枕
3 使用者
4 睡眠誘導装置
11 ケース体
11a 第1の鉄板
11b 上下板
12 コイル部材
12a 筒管
12b コイル
12c ボビン
12d 第1のフランジ部
12e 第2のフランジ部
13 第2の鉄板
13a 鉄板開口部
14 非磁性部材
14a 非磁性部材開口部
15 永久磁石
15a 永久磁石開口部
15b N極部
15c S極部
16 固定板
16a 固定板開口部
17 可動鉄芯
17a 大径部
17b 第1の小径部
17c 第2の小径部
111a ケース貫通穴
141 制御回路
141a CPU
141b 発振子
141c 出力回路
141d リセット回路
141e 電源制御回路
141f 出力調整回路
141g 動作モード選択スイッチ
141h 動作開始/停止スイッチ
141i 動作時間選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具に設けられた振動体を振動させることにより使用者を睡眠に導く睡眠誘導装置であって、
第1の鉄板と、筒状にコイルが巻き回されたコイル部材と、第2の鉄板と、非磁性部材と、永久磁石とを並設してなる前記振動体と、
前記振動体の前記並設方向における一端側から他端側に延びる貫通路内を移動可能な可動鉄芯と、
前記コイルへの通電を制御する通電制御回路とを有し、
前記可動鉄芯は、前記通電制御回路により前記コイルへの通電を禁止した場合には、前記永久磁石に吸引されることにより、前記永久磁石に形成された前記貫通路内の第1の位置に向かって前記振動体に対して相対移動し、前記通電制御回路により前記コイルへの通電を許可した場合には、前記永久磁石に反発して、前記第1の鉄板に形成された前記貫通路内の第2の位置に向かって前記振動体に対して相対移動することを特徴とする睡眠誘導装置。
【請求項2】
前記可動鉄芯は、大径部と、この大径部よりも径の小さい第1の小径部と、この第1の小径部よりも前記第2の鉄板に近い領域に形成され、前記大径部よりも径の小さい第2の小径部とを含み、
前記第1の位置に前記可動鉄芯が位置する状態で、前記第2の小径部は、前記第2の鉄板よりも前記第1の鉄板に近い領域に位置しており、
前記第2の位置に前記可動鉄芯が位置する状態で、前記第1の小径部は、前記第1の鉄板よりも前記第2の鉄板に近い領域に位置していることを特徴とする請求項1に記載の睡眠誘導装置。
【請求項3】
前記コイル部材の前記貫通路は、前記コイル部材の外側に突出する筒状のボビンによって構成されており、
前記第2の鉄板、前記非磁性部材及び前記永久磁石に形成された前記貫通路内に前記ボビンを挿入することにより、前記第2の鉄板、前記非磁性部材及び前記永久磁石を位置決めしていることを特徴とする請求項2に記載の睡眠誘導装置。
【請求項4】
前記第1の鉄板は、前記コイル部材、前記第2の鉄板、前記非磁性部材及び前記永久磁石を収容する収容ケース体の一部を兼ねていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の睡眠誘導装置。
【請求項5】
前記通電制御回路は、脳波のデルタ波帯域に属する第1の周波数から該第1の周波数よりも低い第2の周波数まで連続的に漸減する第1の出力信号と、1HZよりも周波数が低い特定の第2の出力信号と、第1の時間だけ前記コイルへ通電し、該第1の時間が経過した後に該第1の時間よりも長い第2の時間だけ前記コイルへの通電を停止し、該第2の時間が経過した後に該第1の時間と同じ第3の時間だけ前記コイルへ通電し、該第3の時間が経過した後に該第2の時間よりも長い第4の時間だけ前記コイルへの通電を停止する周期パターンを有する第3の出力信号とを出力可能であり、前記第1、第2及び第3の出力信号を選択的に切替可能な切替部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の睡眠誘導装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の睡眠誘導装置を有する寝具。
【請求項7】
前記寝具は、枕、布団及びシートのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の寝具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−194226(P2008−194226A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32404(P2007−32404)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(390018913)株式会社ホーマーイオン研究所 (10)
【Fターム(参考)】