説明

瞬間脱衣型衣服

【課題】瞬時に脱衣でき、再度の組立も容易な防護衣を組立てる。
【解決手段】前身頃11と、後身頃12と、左側腹帯13と、右側腹帯14と、脱衣用ベルト15とから、まず、左側腹帯13と右側腹帯14の腹帯部132、142を後身頃12の腹部スリット122bから帯集約部121Aまで挿入し、纏めヒモ121aで腹帯部の孔13b、14bへ挿通し、さらに、前身頃11の左右の肩帯11aを後身頃12の肩部スリット122aから帯集約部121Aまで挿入し、纏めヒモ121aで肩帯11aの孔11bへ挿通し、続いて、脱衣用ベルト15を後身頃12の肩部スリット122aから帯集約部121Aまで挿入し、纏めヒモ121aの環内へ挿通し、最後に、左側腹帯13と右側腹帯14の面ファスナー13a、14aを前身頃11の面ファスナー112へ接着して防護衣1を組立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隊員の着水、受傷、着火等の緊急時等に瞬時に脱衣することが可能な瞬間脱衣型衣服であって、特に、このような特徴を有する防弾衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記特許文献1に提案のように、着用することにより弾丸や砲弾の破片に対する防護性を発揮する防弾衣として、被着者の身体の前面を被覆する前防護部と、背面を被覆する背面防護部とを、着用者の肩に対応する位置で化だ部により分離可能に係止し、かつ、前防護部に設けた面ファスナーに背面防護部に設けた止着バンドを止着して着用者の胴部を覆うように一体化するものが知られている。
【0003】
しかし、このような防弾着は、前防護部と背面を被覆する背面防護部とが、着用者の肩に対応する位置で化だ部により分離可能に係止する構造により、被着者の身体サイズに対応して防弾衣を調整して着用するもので、前防護部と背面防護部とを完全に分離するものではなく、背面防護部に設けた止着バンドも背面防護部から分離するものではなく、着水、受傷、着火等の緊急時に、防弾着を即座に脱ぎ捨てることがでず、脱ぎ捨てるのに時間を要するという問題があった。
【0004】
また、下記特許文献2に係る防護衣服の発明では、防護手段を有する前部防護衣と、防護手段を有する後部防護衣と、前部防護衣および後部防護衣の肩部を連結可能に前部防護衣および/または後部防護衣の左右の肩部に備えた肩部繋止帯と、前部防護衣および後部防護衣との下縁を締付可能な腰帯体とを備え、前部防護衣と後部防護衣とを肩部繋止帯を介して分離可能に設けたベスト状の防護衣服において、一端側を1まとめに配索された4本の索状体のうち、2本を前部防護衣と後部防護衣との肩部繋止帯の接続個所に第1接続手段を介して接続可能に配索し、残りの2本を背部防護衣と腰帯体との接続個所に第2接続手段を介して接続可能に配索し、索状体を引き抜くことにより前部防護衣と後部防護衣と腰帯体とを分離可能に接続したものが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献2に開示の内容から、着水、受傷、着火等の緊急時に、簡単な取扱操作により前部防護衣、後部防護衣、腰帯体等の複数個の構成部材の接続を解いて脱ぎ捨てることができるものと示唆されるが、一度分離した構成部材について再度、4本の索状体のうち2本を前部防護衣と後部防護衣との肩部繋止帯の接続個所に第1接続手段を介して接続可能に配索し、残りの2本を背部防護衣と腰帯体との接続個所に第2接続手段を介して接続可能に配索し、これらを1まとめに配索して組立てることが容易ではなく、防護衣服が用いられる場面を鑑みると、このような防護衣服では、再度の使用に困難性が生じるといわざるを得ないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3067817号公報
【特許文献2】実用新案登録第3121772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、公知の防護衣または防護衣服では、着水、受傷、着火等の緊急時に、防弾衣を脱ぎ捨てるのに時間を要するという問題があったり、瞬時に脱ぎ捨てることが可能であっても、再利用のための組立に困難性を伴うという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、着水、受傷、着火等の緊急時等に瞬時に脱衣することを可能にし、再度の組立も容易な瞬間脱衣型衣服や防弾衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の孔を備えた肩帯が左右の肩部からそれぞれ延設されるとともに、正面に腹帯を連結するための腹帯連結部材が取り付けられた前身頃と、二層構造を有し、第一層の背面側に柔軟な環状部材を備えた帯集約部が設けられ、第二層の両肩部に前記第一層の背面側に通じる肩部スリットが、両脇腹部に前記第一層の背面側に通じる腹部スリットがそれぞれ形成された後身頃と、複数の孔を備えた帯部と前記前身頃へ連結するための前身頃連結部材が取り付けられた本体部とからなる腹帯と、一端に取っ手部材が設けられた脱衣用ベルトと、から構成される瞬間脱衣型衣服であって、前記腹帯の本体部の上に、前記後身頃の第一層側を載置するとともに、前記腹帯の腹帯部を、前記後身頃の腹部スリットから帯集約部まで挿入し、前記帯集約部の環状部材を直線状にして前記腹帯部の孔へ挿通し、前記前身頃の左右の肩部から延設された肩帯をそれぞれ、前記後身頃の肩部スリットから帯集約部まで挿入し、前記帯集約部の環状部材を直線状にして前記肩帯の孔へ挿通し、前記脱衣用ベルトの取っ手が設けられていない他端を、前記後身頃の両肩部の肩部スリットの何れか一方から帯集約部まで挿入するとともに、前記帯集約部の環状部材の環内へ挿通し、前記腹帯の本体部の前身頃連結部材を、前記前身頃の正面の腹帯連結部材へ連結してなり、前記脱衣用ベルトを引くことで瞬時に脱衣可能となる、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、瞬間脱衣型衣服が防弾衣であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、複数の孔を備えた肩帯が左右の肩部からそれぞれ延設されるとともに、正面に腹帯を連結するための腹帯連結部材が取り付けられた前身頃と、二層構造を有し、第一層の背面側に柔軟な環状部材を備えた帯集約部が設けられ、第二層の両肩部に第一層の背面側に通じる肩部スリットが、両脇腹部に第一層の背面側に通じる腹部スリットがそれぞれ形成された後身頃と、複数の孔を備えた帯部と前身頃へ連結するための前身頃連結部材が取り付けられた本体部とからなる腹帯と、一端に取っ手部材が設けられた脱衣用ベルトと、から構成される瞬間脱衣型防護衣服であって、腹帯の本体部の上に、後身頃の第一層側を載置するとともに、腹帯の腹帯部を、後身頃の腹部スリットから帯集約部まで挿入し、帯集約部の環状部材を直線状にして腹帯部の孔へ挿通し、前身頃の左右の肩部から延設された肩帯をそれぞれ、後身頃の肩部スリットから帯集約部まで挿入し、帯集約部の環状部材を直線状にして肩帯の孔へ挿通し、脱衣用ベルトの取っ手が設けられていない他端を、後身頃の両肩部の肩部スリットの何れか一方から帯集約部まで挿入するとともに、帯集約部の環状部材の環内へ挿通し、腹帯の本体部の前身頃連結部材を、前身頃の正面の腹帯連結部材へ連結してなり、脱衣用ベルトを引くという簡単な取扱操作により、前身頃および腹帯と、後身頃とに瞬時に分離することができるので、例えば、瞬時に脱衣することが求められる緊急時に使用することが可能な瞬間脱衣型衣服として提供することができる。さらに、環状部材を腹帯、肩帯の孔へ挿通すること、前身頃連結部材と腹帯連結部材を接着すること等、簡便な操作で瞬間脱衣型衣服を組立てることが可能であるので、例えば、自衛隊員等が防護衣として使用する場面を鑑みても、再度の使用が容易に行える瞬間脱衣型衣服として提供することができる。
【0012】
また、本発明は、上述の瞬間脱衣型衣服が防護衣であるので、隊員の着水、受傷、着火等の緊急時等に瞬時に脱衣することが可能な防護衣として提供することができ、さらに、このような防護衣が用いられる場面を鑑みても、再度の使用が容易に行えるものとして提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の瞬間脱衣型衣服に用いる前身頃の概略正面図である。
【図2】本発明の瞬間脱衣型衣服に用いる後身頃の概略背面図である。
【図3】本発明の瞬間脱衣型衣服に用いる左右の腹帯の概略正面図である。
【図4】本発明の瞬間脱衣型衣服に用いる脱衣用ベルトの概略正面図である。
【図5】(A)は、左側腹帯と右側腹帯の上に、後身頃の第一層側を載置するとともに、左側腹帯と右側腹帯の腹帯部をそれぞれ、後身頃の腹部スリットから帯集約部まで挿入し、帯集約部の環状部材を直線状にして腹帯部の孔へ挿通する工程を説明する概略説明図であり、(B)は、(A)の要部拡大図である。
【図6】(A)は、前身頃の左右の肩部から延設された肩帯をそれぞれ、後身頃の肩部スリットから帯集約部まで挿入し、帯集約部の環状部材を直線状にして肩帯の孔へ挿通する工程を説明する概略説明図であり、(B)は、(A)の要部拡大図である。
【図7】(A)は、脱衣用ベルトの取っ手が設けられていない他端を、後身頃の両肩部のスリットの何れか一方から帯集約部まで挿入するとともに、帯集約部の環状部材の環内へ挿通する工程を説明する概略説明図であり、(B)は、(A)の要部拡大図である。
【図8】腹帯の本体部の前身頃連結部材を、前身頃の正面の腹帯連結部材へ連結する工程を説明する概略説明図である。
【図9】本発明の瞬間脱衣型衣服(防護衣)の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、図1に示すような前身頃11と、図2に示すような後身頃12と、図3に示すような腹帯としての左側腹帯13および右側腹帯14と、図4に示すような脱衣用ベルト15とで構成され、後述して説明する所定の工程を経て組み立ててなる瞬間脱衣型衣服である。以下、本発明の瞬間脱衣型衣服のうち、図9に示すような防護衣1に関し、図面に基づいて詳述する。
【0015】
まず、本発明に係る瞬間脱衣型衣服に用いる各構成部品について図1〜図4に基づいて説明する。
【0016】
防護衣1における前身頃11は、図1に示すように、長さを調節するための複数の孔11bを先端部側に備えた帯状の肩帯11aが、左右の肩部111からそれぞれ延設され、左右の肩部111に、図5に示すような脱衣用ベルト15を挿通させるとともに脱衣用ベルト15の取っ手部151を引っ掛け可能な、両端のみが縫製されたテープ部111Aが備え付けられ、正面の腹部に、図3に示すような左側腹帯13、右側腹帯14を連結する腹帯連結部材としての面ファスナー112が取り付けられ、この面ファスナー112を覆うように開閉可能なカバー1121も設けられて構成されている。
また、帯状の肩帯11aの先端には、脱衣用ベルト15のベルト部152の先端を挿入するための両端のみが縫製された先端テープ部11cが設けられている。
【0017】
防護衣1における後身頃12は、図2に示すように、二層構造を有し、第一層121の背面側に、柔軟かつ弾性のある環状部材としての纏めヒモ121aを取り付けた帯集約部121Aが設けられ、第二層122の両肩部122Aおよび両腹部122Bに、それぞれ第一層121の背面側に通じる肩部スリット122a、腹部スリット122bが形成されるとともに、第一層121の帯集約部121Aを覆って開閉可能なカバー122Cが設けられて構成されている。
また、後身頃12には、搬送時に便宜なように、第二層122の両肩部122Aの間に、手でもって運ぶためのハンドル部122Dが備え付けられている。
【0018】
防護衣1における腹帯としての、例えば、左側腹帯13は、図3に示すように、長さを調節するための複数の孔13bを先端部側に備えた帯状の腹帯部132と、図1に示すような前身頃11の面ファスナー112へ連結する前身頃連結部材としての面ファスナー13aが備え付けられた本体部131とからなり、面ファスナー13aの面積を大きくするように、本体部131の幅を腹帯部132より大きくして構成されている。なお、図3に示すように、右側腹帯14は、左側腹帯13と同様に構成すればよいものであって、説明のために便宜的に区別した限りである。
【0019】
防護衣1における脱衣用ベルト15は、図4に示すように、一端側に金属製又は合成樹脂製のリング状の取っ手が設けられた取っ手部151と帯状のベルト部152とから構成されている。なお、ベルト部152の幅は、纏めヒモ121aの環内を挿通することが可能な幅にすることが必要である。また、取っ手部151は、指を引っかけることが可能な形状であればよく、必ずしもリング状の形状である必要はない。
【0020】
以下、本発明に係る瞬間脱衣型衣服における所定の組立工程を、図5〜図8に基づいて説明する。
【0021】
まず、図5(A)に示すように、腹帯の本体部の上に、後身頃の第一層側を載置するとともに、腹帯の腹帯部を、後身頃の腹部スリットから帯集約部まで挿入し、帯集約部の環状部材を直線状にして腹帯部の孔へ挿通する工程(後身頃−腹帯連結工程)により、面ファスナー13a、14aのある側を上向きにして、本体部131、141側を対向させた左側腹帯13と右側腹帯14の上に、後身頃12の第一層121側を下にして(即ち、組立後に防護衣1の背面となる側を上にして)載置するとともに、左側腹帯13と右側腹帯14の腹帯部132、142をそれぞれ、後身頃12の第一層121の背面側に通じる腹部スリット122bから帯集約部121Aまで挿入し、帯集約部121Aの纏めヒモ121aを直線状にして腹帯部132、142の孔13b、14bへ、腹回りの長さを調節しつつ挿通する。図5(B)は、図5(A)の要部拡大図であって、このように帯集約部121Aの纏めヒモ121aが直線状になって腹帯部132、142の孔13b、14bへ挿通され、左側腹帯13と右側腹帯14の腹帯部132、142が帯集約部121Aに纏められた形態を概略的に示している。
そうすると、後身頃−腹帯連結工程により、帯集約部121Aの纏めヒモ121aに、左側腹帯13と右側腹帯14の腹帯部132、142の孔13b、14bが纏められ、左側腹帯13と右側腹帯14のそれぞれ先端部が帯集約部121Aに集約した形態となる。
【0022】
次に、図6(A)に示すように、前身頃の左右の肩部から延設された肩帯をそれぞれ、後身頃の肩部スリットから帯集約部まで挿入し、帯集約部の環状部材を直線状にして肩帯の孔へ環状部材を直線状にして挿通する工程(後身頃−前身頃連結工程)により、前身頃11の左右の肩部111から延設された肩帯11aをそれぞれ、後身頃12の第一層121の背面側に通じる肩部スリット122aから帯集約部121Aまで挿入し、帯集約部121Aの纏めヒモ121aを直線状にして肩帯11aの孔11bへ、着用者の胴部位置を考慮しつつ挿通する。このとき、左右の肩部11の肩帯11aを後身頃12の肩部スリット122aへ挿入する際、前身頃11の正面側(面ファスナー112を備える側)が組立後も外側へ向くように留意する。図6(B)は、図6(A)の要部拡大図であって、このように帯集約部121Aの纏めヒモ121aが直線状になって肩帯11aの孔11bへ挿通され、左右の肩帯11aが帯集約部121Aに纏められた形態を概略的に示している。
そうすると、後身頃−前身頃連結工程により、左側腹帯13と右側腹帯14のそれぞれ先端部が集約した帯集約部121Aに、さらに、左右の肩帯11aの先端部が集約した形態となる。
【0023】
次に、図7(A)に示すように、脱衣用ベルトの取っ手が設けられていない他端を、後身頃の両肩部の肩部スリットの何れか一方から帯集約部まで挿入するとともに、帯集約部の環状部材の環内へ挿通する工程(脱衣用ベルト連結工程)により、取っ手部151が設けられていない他端側(ベルト部152側)を、まず、前身頃11の左右何れか一方のテープ部111Aへ挿通し、さらに、挿通したテープ部111Aと同じ側の後身頃12の肩部スリット122aから帯集約部121Aまで挿入するとともに、帯集約部121Aの纏めヒモ121aの環内へ挿通する。続いて、帯集約部121Aに纏められている左右の肩帯11aの先端テープ部11cの何れか一方へ、ベルト部152の先端を挿入する。
ここで、脱衣用ベルト15のベルト部152側を、後身頃12の肩部スリット122aの左右何れか一方から挿入するとしたのは、着用者が右利きであれば、左側の肩部スリット122に挿入し、左利きであれば、右側の肩部スリット122aに挿入することを意味する。これにより、着用者は、緊急時に取っ手ベルト15を引っ張りやすくなる。また、脱衣用ベルト15を左側の肩部スリット122に挿入した場合には左側の肩帯11aの先端テープ部11cへ、脱衣用ベルト15を右側の肩部スリット122に挿入した場合には右側の肩帯11aの先端テープ部11cへ、それぞれベルト部152の先端を挿入することが、脱衣用ベルト15の帯集約部121Aへの纏め方としてスムーズな方法となる。
図7(B)は、図7(A)の要部拡大図であって、このように帯集約部121Aの纏めヒモ121aが環状になって、この纏めヒモ121aの環内へ脱衣用ベルト15のベルト部152側が挿通され、さらに、ベルト部152の先端が、帯集約部121Aに纏められている肩帯11aの先端テープ部11cに挿入され、脱衣用ベルト15が帯集約部121Aに纏められた形態を概略的に示している。
そうすると、脱衣用ベルト連結工程により、左側腹帯13と右側腹帯14の先端部および左右の肩帯11aの先端部が集約した帯集約部121Aに、さらに、脱衣用ベルト15のベルト部152の先端部が集約した形態となる。また、防護衣1へ外部から衝撃を受けても、脱衣用ベルト15のベルト部152は、先端が肩帯11aの先端テープ部11cに挿入されるとともに、先端部が帯集約部121Aの纏めヒモ121aの環内へ挿通されているので、孔11b、13b、14bへ挿通されることで纏めヒモ121aに纏められた左側腹帯13と右側腹帯14の先端部および左右の肩帯11aの先端部が、纏めヒモ121aから外れることがない。
その後、帯集約部121Aを後身頃12の第二層122に設けられた開閉可能なカバー122Cで覆う。
【0024】
最後に、図8に示すように、腹帯の本体部の前身頃連結部材を、前身頃の正面の腹帯連結部材へ連結する工程(前身頃−腹帯連結工程)により、左側腹帯13と右側腹帯14の面ファスナー13a、14aをそれぞれ、前身頃11の正面の面ファスナー112へ連結する。続いて、前身頃11の正面の面ファスナー112を開閉可能なカバー1121で覆うと、図9に示すような瞬間脱衣型衣服としての防護衣1が完成する。
【0025】
なお、上記一実施形態では、後身頃−腹帯連結工程、後身頃−前身頃連結工程、脱衣用ベルト連結工程、前身頃−腹帯連結工程の順に防護衣1を組み立てる工程を例示して説明したが、適宜、順序を変えても、防護衣1を組み立てることができる。例えば、後身頃−前身頃連結工程の後に後身頃−腹帯連結工程を経てもよく、前身頃−腹帯連結工程の後に脱衣用ベルト連結工程を経てもよい。
【0026】
このようにして組立てられた防護衣1は、緊急時等に、脱衣用ベルト15の取っ手部151を引っ張ることにより、帯集約部121Aの纏めヒモ121aから脱衣用ベルト15のベルト部152の先端部が外れ、これによって左側腹帯13と右側腹帯14の先端部および左右の肩帯11aの先端部は、孔11b、13b、14bに纏めヒモ121aが挿通されただけの状態となるので、少しの力、例えば、前身頃11を前方へ軽く押し出す力のみで、纏められた左側腹帯13、右側腹帯14および左右の肩帯11aを纏めヒモ121aから外すことができ、前身頃11、左側腹帯13および右側腹帯14と、後身頃12との2つに瞬時に分離することができる。なお、防護衣1はその性質上、自重の大きなものであるので、帯集約部121Aの纏めヒモ121aから脱衣用ベルト15のベルト部152の先端部が外れると、それ自体でも分離する方向に力が働くため、前身頃11、左側腹帯13および右側腹帯14と、後身頃12との2つに分離することはさらに容易かつ迅速に行うことができるものである。
【0027】
また、一度分離した防護衣1についても、左側腹帯13と右側腹帯14の面ファスナー13a、14aと前身頃11の正面の面ファスナー112の連結をそれぞれ外し、上述した工程を経ることで、容易に再度組立てることができる。
【0028】
したがって、本発明では、瞬時に脱衣することが求められる緊急時に使用することが可能な瞬間脱衣型衣服、特に、防護衣1として提供することができる。さらに、纏めヒモ121aを左側腹帯13と右側腹帯14の孔13b、14b、肩帯11aの孔11bへ挿通すること、面ファスナー13a、14aと前身頃11の正面の面ファスナー112とを接着すること等、簡便な操作で防護衣1を組立てることが可能で、自衛隊員等が防護衣1として使用する場面を鑑みても、再度の使用が容易に行える防護衣1として提供することができる。そして、本発明は、隊員の着水、受傷、着火等の緊急時等に瞬時に脱衣することが可能な防護衣1として提供することができ、さらに、このような防護衣1が用いられる場面を鑑みても、再度の使用が容易に行えるものとして提供することができる。
【0029】
以上、本発明に係る一実施形態について詳述したが、本発明は、上記一実施形態に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。また、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱しなければ、本発明を構成する要素(例えば、前身頃連結部材、腹帯連結部材)についても、公知または周知のものを使用できることはいうまでもない。
【0030】
さらに、上記一実施形態においては、前身頃11の腹帯連結部材を覆うカバー1121や後身頃12の帯集約部121Aを覆うカバー122Cを有する形態を説明したが、これらは必ずしも必須の要素ではなく、前身頃連結部材、腹帯連結部材を面ファスナー以外の連結部材で構成した場合等において、防護衣1のデザインとの関係で省略することが可能である。このほか、本発明に係る瞬間脱衣型衣服(防護衣)は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、様々な備品を取り付けることも可能であり、前身頃や後身頃に適宜、収納ポケットなどを設けることもできる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・・防護衣
11・・・前身頃
111・・肩部
111A・テープ部
11a・・肩帯
11b・・孔
11c・・先端テープ部
112・・面ファスナー
1121・カバー
12・・・後身頃
121・・第一層
121A・帯集約部
121a・纏めヒモ
122・・第二層
122A・両肩部
122a・肩部スリット
122B・両脇腹部
122b・腹部スリット
122C・カバー
122D・ハンドル部
13・・・左側腹帯
131・・本体部
132・・腹帯部
13a・・面ファスナー
13b・・孔
14・・・右側腹帯
141・・本体部
142・・腹帯部
14a・・面ファスナー
14b・・孔
15・・・脱衣用ベルト
151・・取っ手部
152・・ベルト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔を備えた肩帯が左右の肩部からそれぞれ延設されるとともに、正面に腹帯を連結するための腹帯連結部材が取り付けられた前身頃と、
二層構造を有し、第一層の背面側に柔軟な環状部材を備えた帯集約部が設けられ、第二層の両肩部に前記第一層の背面側に通じる肩部スリットが、両脇腹部に前記第一層の背面側に通じる腹部スリットがそれぞれ形成された後身頃と、
複数の孔を備えた帯部と前記前身頃へ連結するための前身頃連結部材が取り付けられた本体部とからなる腹帯と、
一端に取っ手部材が設けられた脱衣用ベルトと、
から構成され、
前記腹帯の本体部の上に、前記後身頃の第一層側を載置するとともに、前記腹帯の腹帯部を、前記後身頃の腹部スリットから帯集約部まで挿入し、前記帯集約部の環状部材を直線状にして前記腹帯部の孔へ挿通し、
前記前身頃の左右の肩部から延設された肩帯をそれぞれ、前記後身頃の肩部スリットから帯集約部まで挿入し、前記帯集約部の環状部材を直線状にして前記肩帯の孔へ挿通し、
前記脱衣用ベルトの取っ手が設けられていない他端を、前記後身頃の両肩部の肩部スリットの何れか一方から帯集約部まで挿入するとともに、前記帯集約部の環状部材の環内へ挿通し、
前記腹帯の本体部の前身頃連結部材を、前記前身頃の正面の腹帯連結部材へ連結してなり、
前記脱衣用ベルトを引くことで瞬時に脱衣可能となる、
ことを特徴とする瞬間脱衣型衣服。
【請求項2】
前記瞬間脱衣型衣服が防弾衣である、
ことを特徴とする請求項1に記載の瞬間脱衣型衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−80174(P2011−80174A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235195(P2009−235195)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(390025531)三信製織株式会社 (5)
【Fターム(参考)】