説明

瞳孔の位置に対する眼鏡レンズの相対位置を調整する装置および方法

【課題】人物の瞳孔の眼鏡フレームに対する正確な相対位置を求めることが出来るようにする。
【解決手段】眼鏡16の少なくとも1つの眼鏡レンズの、この眼鏡レンズに対応する人物12の眼の瞳孔の位置に対する相対位置を調整するための装置および方法。前記装置は、まだレンズを装填していない眼鏡フレーム18を装着した人物12の眼の領域61に対する照明装置24を有する。更に眼の領域61の映像60を生成するための少なくとも1台のカメラ22も備えられている。映像60の中における瞳孔の位置にマーキングが行われる。前記照明装置24は、ある波長範囲内で作動する少なくとも1つの光源26,50を有し、それが発生する光42,52は眼14の網膜46によって高い反射率で反射される。カメラ22の感度は、光源26が発生する光42の波長に対して最適化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡の少なくとも1つのレンズの、人物の眼の瞳孔の位置に対する相対位置を調整する装置に関し、前記眼は前記眼鏡に関連させられており、まだレンズを装填してない眼鏡フレームを装着した人物の眼の領域に対する照明装置と、前記眼の領域の映像を生成する少なくとも1台のカメラと、前記映像内での瞳孔の位置をマーキングする手段とを有する。
【0002】
本発明はまた、眼鏡の少なくとも1つのレンズの、人物の眼の瞳孔の位置に対する相対位置を調整する方法に関し、前記眼は前記眼鏡レンズに関連させられており、レンズをまだ装填してない眼鏡フレームを装着した人物の眼の領域が第一の照明装置によって照明され、前記眼の領域の映像が生成され、そして前記映像内での瞳孔の位置がマーキングされる。
【背景技術】
【0003】
前に述べたタイプの装置および方法は、例えば本出願人の装置「Video Infral System II」によって知られている。
眼鏡、特に累進屈折力レンズ付きの眼鏡を適合させるためには、眼鏡技術者(検眼士)は客が頭と身体とを正常な姿勢に保持した状態で、使おうとする眼鏡フレームに対する客の瞳孔中心の相対的な位置を求めなければならない。それを行う際に客が、例えば眼鏡技術者が客の目の近くをいじったりすることにより横を見たりせず、真っ直ぐ前方を見ているときに瞳孔中心の位置を求めるように、注意しなければならない。
【0004】
最初に述べたタイプの従来のシステムでは、この測定が例えば5mのような長い距離から行われている。まだレンズを装填してない眼鏡フレームを客に装着して、客の目の領域を前記のような遠い距離で測定している。その目的のために、従来のシステムはビデオカメラを利用する。客の目の領域の映像が記録され、コンピュータの画面に表示される。通常のカーソル操作により、眼鏡技術者は映像の中の瞳孔中心にマーキングをして、眼鏡フレームの位置に対するある種の基準線を設定できる。
【0005】
従来のシステムの不利な点は、記録された映像の瞳孔部分でのコントラストが低い場合に、瞳孔中心の正確な位置に関して間違った測定が行われる可能性があり、その場合に眼鏡技術者はビデオ映像内での瞳孔中心の正確な位置を求めてマーキングすることができなくなるということである。虹彩が黒い客の場合、虹彩と瞳孔とのコントラストが小さいので、特にこのことが問題となる。検査室内全体の照明が非常に明るい場合、それに加えて客の瞳孔が自然に小さくなるということが起きる。
【0006】
最初に述べたタイプの装置では、下記特許文献1から知られているように、開示されていない設計の環状光源を使用して、人物と眼鏡フレームとを照明している。下記特許文献2による別のそのような装置では、同様に開示されていない設計の光源が使用され、該光源は白熱電球として示されている。最後に、下記特許文献3は、同様に開示されていない設計のスポット光源を利用する別の装置を開示している。
【0007】
従ってこれらの従来の装置も通常の光、すなわち白色の周囲光を発生する光源を使用している。
【特許文献1】独国特許出願公開第10033983号明細書
【特許文献2】西独国実用新案第8812095号明細書
【特許文献3】仏国実用新案証公開第2663528号明細書
【特許文献4】独国特許発明第19649542号明細書
【特許文献5】米国特許第5150137号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、最初に述べたタイプの装置および方法を更に改良し、通常の一般的な照明条件の下では人物の瞳孔のコントラストの低い映像しか得られない場合でも、人物の瞳孔の眼鏡フレームに対する正確な相対位置を求めることが出来るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
眼鏡技術者の手動による位置のマーキングおよびそれに伴うあらゆる誤差の原因を回避するために、瞳孔中心の位置がシステム自体によって求められ、かつマーキングされる程度に正確であるように、この測定は適合される。
最初に述べたタイプの装置において、照明装置が、眼の網膜によって高い反射率で反射される光を発生するある波長範囲内で作動する少なくとも1つの光源を有し、該光源が発する光の波長に対してカメラの感度が最適化されていることにより、この目的は達成される。
【0010】
最初に述べたタイプの方法において、眼の網膜によって高い反射率で反射される波長範囲の光で眼の領域が照明され、その光の波長に対して最適化された感度で眼の映像が生成されていることにより、この目的は達成される。
これにより、本発明の課題は完全に解決される。
所定の波長範囲内の光で人物の目の部分を照明することにより、眼の網膜はかかる光を反射することで周囲の虹彩から高いコントラストで区別されることになる。この波長に対して最適化されたカメラを使用することにより、光の強度が低くても明瞭かつ高コントラストの映像が得られるという利点が実現される。
【0011】
これにより眼鏡技術者は、カーソルを使用して手動でマーキングを行うことにより、瞳孔中心の位置を信頼性高く決定することが出来る。しかしこの手動での操作の代わりに、通常の画像処理技術により瞳孔中心の位置を自動的に決定できれば、より有利である。そのようにすることで、手動操作に伴う誤差のその他全ての原因が解消される。更にこの方法は従来の方法と異なり、その実行を非常に単純化できるので、誤った測定をもたらす影響を完全に除去するために何度も繰り返すことが出来る。かかる影響としては、例えば人物の目の動きが偶然やぶにらみ状態になってしまうようなことがある。
【0012】
上記特許文献4から、瞳孔を赤外線で照明するという瞳孔の測定方法が知られているが、この場合の赤外線(見えない光)の使用は、検査対象の患者の不快感を無くすと言う唯一つの目的を有するものである。この出願は、瞳孔全体を光らせてしまう網膜からの反射を考慮に入れていない。照明の方向と観察する方向との間に角度があるために、その様な反射そのものが起きないのである。
【0013】
上記特許文献5は、瞳孔に対する機能的な測定を行うシステムを開示している。1つの開示された実施形態(図34)では、観測装置が眼に向けられる方向と同じ光軸に沿って、測定光を赤外線ダイオードが放出する装置が提供される。しかしこの従来のシステムでは、1つの眼だけが小さな距離で検査されるので、最初に述べた問題は発生しない。
本発明による装置の好適な実施形態では、光源は赤色から赤外線にかけての光を放射するが、この光源は好適には1個の発光ダイオードまたは複数の発光ダイオードのアレイである。
【0014】
これらの手段には、市販の部品を使用して信頼性が高く生産コストの低い装置を製造できるという利点がある。
照明装置は、光源から放射された光を必要に応じて集光するためのレンズを含むことが有利である。
本発明のある実施形態においては、カメラは複数のカラーチャンネルを有し、光源から放射される光に最も近いスペクトルを有する1つのカラーチャンネルの画像信号、特に赤色のチャンネルの信号は、独立して処理されて映像を形成するように適合されている。
【0015】
この手段は、赤色のチャンネルを有する市販のビデオカメラを使用することができ、それぞれの画像信号を別々に処理することで、網膜からの赤い光が特によく見える画像を形成できるという利点を有する。
これとは別に、少なくとも2台のカメラを備え、その一方の感度を光源から放射された光の波長に対して最適化することもできる。
【0016】
この手段もまた、通常の光による映像だけでなく、ここで述べた特定の光による映像も生成できるという利点を有するが、これについては以下で詳しく説明する。
本発明の特に好適な実施形態では、カメラと光源とは基本的に同じ光軸に沿って眼の方に向けて配設されている。それを行う際、カメラと光源とは2°未満、好適には1°未満の角度で互いに傾斜させらている。
【0017】
この手段には、少なくとも視力に問題のある人物の場合、眼に照射された光は、網膜によって反射され、余り広がらない細いビームとなるので、網膜からの光がカメラによって特に良好に捉えられるという利点がある。
本実施形態を実際に実現する場合、光源の光におけるカプリングのために、カメラと眼との間の光路の中にビームスプリッタが配設され、前記ビームスプリッタは、光をカメラの光軸に沿ってカメラから離れる方向に反射する。
【0018】
この手段は、一方ではカメラの上述の同軸的な向きと、他方では光源が単純な設計で実現するという利点を有する。
本実施形態の好適な改良においては、ビームスプリッタは、眼によって反射された光に対して50%よりも低い、好適には8%と40%との間の反射率を有する。
反射率50%のハーフミラーが一般に最適とされているので、この手段はエネルギーの点から最適ではないが、上記の範囲の反射率が実際的な理由により最適である。すなわち、本実施形態の更に別の改良において、照明装置によって放射される光の波長範囲の外の波長に対する反射率はもっと低い。
【0019】
これらの手段には、人物の顔の前の眼鏡フレームも信頼性高く検出することができ、更にまた皮膚の色が黒い人物の場合に起きる可能性のある誤測定が回避されるという利点がある。
更に、本実施形態の文脈において、ビームスプリッタの光源とは反対の側に光トラップを配設することが好適である。
【0020】
この手段は、光源によって放射された光が、ビームスプリッタにおいてカメラから離れるように曲げられない限り、それは確実に吸収されるという利点がある。
別の特に好適な実施形態のグループでは、追加の光源(複数)が光軸の外に備えられ、前記追加の光源は眼の領域に向けられている。
この手段には、視力に甚だしい異常があり、光軸に沿って放射された光源からの光が細いビーム、すなわち余り広がらないビームとして反射されないような人物にも、本発明が使用できるという利点がある。この手段によって、そのような視力に甚だしい異常がある(特に近視)場合でも、網膜からの信号がカメラに捕らえられるが、その方向は前記の軸に沿ったまま変わらない。
【0021】
その場合、追加の光源が光軸に対して傾いており光軸の周りに等間隔で、すなわち環状に配設されていることが特に好適である。
本発明の装置において、従来と同様に、一方のカメラおよび照明装置と、他方の眼との間の光路が数メートル、好適には2m〜8mの範囲の長さを有することが好ましい。
検査室内の条件によってその様な距離をとることができない場合は、通常の仕方で光路を折り返すことが好ましい。
【0022】
別の実施形態のグループでは、前記照明装置とは別に、眼の領域のための一般的な照明が備えられ、またカメラを制御するための手段が備えられ、光源を消灯しているときの一般的な照明だけを使用した第一の映像と、光源を点灯しているときの第二の映像を、カメラが交互に記録するようにする。
この手段は、一方では人物の目の領域の第一の通常の映像と、第一の映像と違って瞳孔が光って見える第二の映像が別々の操作で記録されるという利点がある。画像処理方法の助けにより2つの映像の差の画像内で、瞳孔の位置を容易に見つけることができ、次に瞳孔が光って見える第二の映像の中で、瞳孔の位置を正確に決定することができる。
【0023】
本実施形態の好適な変形では、カメラは一般的な照明を消灯した状態で第二の映像を記録する。
この手段には、第二の映像を記録する際の一般的な照明による干渉が避けられるという利点がある。
それに関して、カメラが第一の映像と第二の映像とを交互にすばやく記録することが、特にカメラがいわゆるインターレース方式のカメラである場合に好適であり、またカメラが第一の映像と第二の映像とを全映像の半分の映像として記録することが好ましい。
【0024】
これらの手段には、一連の行動、すなわちいわゆるインターレース法に戻ることができるという利点がある。
本発明による装置の実施形態に関して前で説明したものと同じ利点が、本発明による方法の実施形態についても、必要な変更を加えれば成り立つ。
更なる利点が、以下の説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【0025】
上で述べた特徴および以下に説明する特徴が、ここに示した特定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲から外れない限り他の組み合わせまたは単独で使用可能であることは、言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態を、図面で示し、それに続く記述で更に詳細に説明する。
図1において、参照符号10は、全体として、少なくとも1つの眼鏡レンズ、特に眼鏡の累進屈折力レンズの、人物の眼の瞳孔の位置に対する相対的な位置を調整する装置を示しており、この眼が眼鏡のレンズに関連付けられている。
図1において、人物が全体として12で示され、眼14および眼鏡16または眼鏡フレーム18のみが示されている。
【0027】
全体として20で示される記録システムは、数メートル、好適には2m〜8mの距離Dに位置する。
記録システム20は、その光軸が参照符号23で示されるカメラ22を有する。
照明装置24は軸23に対して直角に備えられている。照明装置24は光源26、特に赤色または赤外線領域で作動する発光ダイオード(LED)を備えている。光源26はそれと関連付けられたレンズ28を有する。光源26はビームスプリッタ30に向けられている。ビームスプリッタ30の反対側には、光トラップ32が配設されている。
【0028】
最後に、記録システム20は通常の白色光の一般的な照明装置34を有する。
図1において、参照符号40aおよび40bは光源26から放出される光42の両端の光線を示す。光42と両端の光線40aおよび40bとは、ビームスプリッタ30で反射され、人物12の眼14に向けられる。光42は眼のレンズ44を介して眼14に入り、映像48が形成される網膜46に入射する。人物12が正常な視力を有している場合、映像48は焦点を合わされた映像であり、一方、人物12の視力に問題がある場合は、後に説明するように焦点が合っていない映像が形成される。
【0029】
参照符号49は網膜46で反射された光を示す。光49は、次に、ビームスプリッタ30に入射し、部分的にカメラ32に入る。
ビームスプリッタ30は好適には、不十分に透明な(半透過性の)鏡として構成されている。これは例えばガラスで製造された平行平面を有する透明板で、一方の側が処理されてないかまたは不十分な反射性を有し、他方が無反射性である。
【0030】
鏡の反射率は50%であってもよい。反射率をこのように選定することにより、最大限の反射光49がカメラ22に向けられる。光源26から放出される光42は同じ反射率で鏡によって反射され、眼14に向けられてそこで戻される。戻された光49の一部はビームスプリッタ30を透過してカメラ22に入る。
従ってエネルギーの観点からは、50%という反射率が最適である。しかし実際的な理由から、その値から大幅にはずれ、8%から40%の間の反射率を使用する。
【0031】
更に、光42の強度がゼロかまたは小さくなる波長に対しては、更に低い反射率を有する鏡のコーティングを選択することが好ましい。更にまた、人物12の顔の前にある眼鏡フレーム18を検出しなければならないので、上で述べた50%よりも低い反射率は特に有用である。もしも人物12の皮膚の色が黒い場合は、この手段の利点は特に大きくなる。
【0032】
既に述べたように、光源26は好適には赤色または赤外線領域で動作する発光ダイオードである。1個の発光ダイオードの代わりに、かかるダイオードを複数個束にして使用することもできるが、その場合はレンズ28もそれに対応するハニカム構造に構成しなければならないであろう。
図1では模式的に示しただけの光トラップ32は、反射されずにビームスプリッタ30を通過した光42を吸収するために備えられている。黒い厚紙、煤で覆った金属板、または黒いベルベットを貼り付けた表面を、光トラップ32として使用できる。かかる光トラップはまた、いわゆる「ブラックバッグ」として構成してもよい。
【0033】
図3はカメラ22によって記録された映像60を示す。人物12の眼の領域61が見られる。人物12の右の瞳孔と左の瞳孔とがそれぞれ62r、62lと示されている。瞳孔62r、62lは、それぞれ、虹彩64r、64lに対応する。虹彩64r、64lのそれぞれの中心は、図3では2本の1点鎖線の交点として示されている。
眼鏡フレーム18rおよび18lの基準線を鉛直線66r、66lおよび水平線68r、68lとして示す。
【0034】
虹彩64r、64lのそれぞれの中心の正確な位置、ならびに眼鏡フレーム18rおよび18lの正確な位置もまた、通常の画像処理技術により映像60から自動的に求めることができるということが、図3から明らかであろう。映像60の中でこれらの点と線とをカーソルを使用して指定し、マーキングすることは、いつでも手動で行うことができる。
光42の選択された波長によって、瞳孔62r、62lの背後の網膜46が明るく輝き、それぞれの周囲の虹彩64r、64lとの明確なコントラストで瞳孔62r、62lが区別される。このことは、虹彩64r、64lの色が比較的黒い場合に特に顕著である。
【0035】
図4に、特に、人物12が近視のために短い距離、例えば点70まで接近した場合を示す。点70では、眼14の中の網膜46の実像が生じる。
その場合でも適切に測定を行えるようにするために、図2の実施形態では、追加の光源50a、50bが軸23の周囲に、特にリング状に配設されている。図2に示された端の光線52a、52bが、追加の光源50a、50bによって放出された光を特徴付ける。この光は人物の瞳孔中心に向かって進む。視力に問題があるために、追加の光源50a、50bの焦点の合っていない像が眼14の網膜46上に生じる。端の光線52a、52bに沿っての幾何的な投影点の周囲での強度分布を、図4の右側の部分的なグラフ72a〜72cに示す。図4において、端の光線52a、52bと軸23との間の角度は非常に誇張して描かれており、実際よりもかなり大きくなっていることは言うまでもない。
【0036】
グラフ72a〜72cからわかるように、外側の強度分布72b、72cの周辺部分は中央の強度分布72aと重なり、全体としてみると重ね合わせた強度分布が図5において別個に74で示されるようになる。
これらを合成すると、広がって焦点の合っていない像が網膜46上で光り、中央の強度分布72a単独の部分的な焦点の合っていない像よりもかなり明るくなる。眼のレンズ44は、焦点の合っていない像が光る網膜46上の実際の空中像を生成する。
【0037】
図6に本発明の好適な実施形態による装置の制御に関する模式的なブロック図を示す。
光源26および50の制御装置82にコンピュータ80が接続されている。コンピュータ80はまた、カメラ22が結合された撮像ユニット84にも接続されている。
測定中に、例えば図7に示すような時系列で事象が発生する。図7はいわゆるインターレース方式の通常のカメラの場合を示す。この方式では、2つの半分の映像が相次いで生成され、それらを組み合わせることで全画像が得られる。ただし本発明では、全画像モードのみで作動するカメラも使用できることは言うまでもない。
【0038】
図7のタイムチャートa)およびb)において、カメラが半画像に対して感度を有する時間間隔(積分時間)は、2つの半画像に対してパルス90および92として示されている。それに対してタイムチャートc)およびd)では、照明パルス94と制御パルス96を示す。
制御パルス96によって測定が開始され、すると第一の半画像90と第二の半画像92とが生成される。図7から、2つの半画像が重なり合う範囲x、すなわちその時間の間両方の半画像が光を感じているような時間間隔を有していることが明確に理解できる。
【0039】
第一のサイクルIでは、2つの半画像は一般的な照明装置34が点灯した状態で記録される。
次のサイクルIIでは、光源26および50は光のパルス94で示されるように短時間の間、例えば両方の半画像が光を感じている短い時間だけ点灯する。
ここでコンピュータ80は、一般的な照明装置だけを点灯して得たサイクルIからの2つの半画像と、光源26および50を点灯したサイクルIIからの2つの半画像とを有する。サイクルIIの間は、一般的な照明装置34は消灯していてよい。
【0040】
これを行うことにより2つの全画像が得られるが、その最初のものは一般的な照明装置34だけで記録されたものであり、2番目のものは光源26および50で記録されたものである。
あるいはその代わりに、第一の半画像が一般的な照明装置だけで記録され、第二の半画像はそれに加えて光源も使うか、または光源だけで記録するような手順を2つの半画像の期間中に生成することもできる。本発明は限定されない。
【0041】
その様にして記録された画像(図3参照)から、所望の位置を既に述べた手動または自動的な仕方で求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による装置の第一の実施形態の非常に模式的な側面図である。
【図2】図1の実施形態の変形例を示す。
【図3】図1または図2の装置で記録される人物の目の領域の映像である。
【図4】図2の装置の機能を詳しく示す図である。
【図5】図4との関連で図2の装置の動作を説明する別の詳細図である。
【図6】図1または図2の装置のための電子制御を示すブロック図である。
【図7】図6のブロック図を説明するパルス図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡(16)の少なくとも1つの眼鏡レンズの、当該眼鏡レンズに対応する人物(12)の眼(14)の瞳孔(62r、62l)の位置(x、y、x、y)に対する相対位置を調整する装置であって、
まだレンズを装填してない眼鏡フレーム(18)を装着した人物(12)の眼の部分(61)に対する照明装置(24)と、
前記眼の部分(61)の映像(60)を生成する少なくとも1つのカメラ(22)と、
前記映像(60)内で瞳孔(62r、62l)の位置(x、y、x、y)のマーキングをする手段とを含み、
前記照明装置(24)が、ある波長範囲内で作動する少なくとも1つの光源(26,50)を有し、前記照明装置(24)の光(42,52)が眼(14)の網膜(46)によって高い反射率で反射され、前記カメラ(22)の感度が、前記光源(26)が発生する光(42)の波長に対して最適化されている装置。
【請求項2】
前記光源(26)が、赤色から赤外線領域にかけての光(42)を放射する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記光源(26)が、発光ダイオードである、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記光源(26)が、複数の発光ダイオードのアレイである、請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
前記照明装置(24)が、レンズ(28)を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記カメラ(22)が、複数のカラーチャンネルを有し、1つの前記カラーチャンネルの画像信号が前記光源(26)から放射される光(42)に最も近いスペクトルを有し、特に赤色の前記チャンネルの信号は、独立して処理されて映像を形成するように適合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
少なくとも2台の前記カメラ(22)が備えられ、その一方の感度が前記光源(26)から放射される光(42)の波長に対して最適化されている、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記カメラ(22)と前記光源(26)とが、基本的に同じ光軸(23)に沿って眼(14)に向かうように配設されている、請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記カメラ(22)と前記光源とが、2°未満、好適には1°未満の角度で互いに傾斜させられている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記カメラ(22)と眼(14)との間の光路内に、前記光源(26)の光(42)内でのカップリングのためにビームスプリッタ(30)が配設されており、このビームスプリッタ(30)は光(42)を前記カメラ(22)から離れるように前記カメラ(22)の前記光軸(23)の方向に反射する、請求項8または9記載の装置。
【請求項11】
前記ビームスプリッタ(30)が、眼(14)によって戻された光(49)に対して50%よりも低く、好適には8%と40%との間の反射率を有する、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記照明装置(24)によって放射される光(42)の波長範囲の外の波長に対する反射率がより低い、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記ビームスプリッタ(30)の前記光源(26)と反対の側に、光トラップ(32)が配設されている、請求項10〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
追加の光源(50)が前記光軸(23)の外側に備えられており、前記追加の光源(50)が前記眼の領域(61)に向けられている、請求項8〜13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記追加の光源(50a、50b)が前記光軸(23)に対して傾いており、前記光軸の周りに等間隔で配設されている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
一方の前記カメラ(22)および前記照明装置(24)と、他方の眼(14)との間の光路の長さ(D)が数メートル、好適には2m〜8mの範囲である、請求項1〜15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記光路が折り返されている、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記照明装置(24,50)とは別に、前記眼の領域(61)のための一般的な照明装置(34)が備えられ、また前記カメラ(22)を制御するための手段が備えられ、光前記源(26)を消灯しているときの前記一般的な照明装置(34)だけによる第一の映像(60)と、前記光源(26,50)を点灯しているときの第二の映像(60)とを、前記カメラ(22)が交互に記録するようになされている、請求項1〜17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記カメラ(22)が、前記一般的な照明装置(34)を消灯した状態で前記第二の映像(60)を記録する、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記カメラ(22)が、前記第一および第二の映像(60)を交互にすばやく記録する、請求項18または19記載の装置。
【請求項21】
前記カメラ(22)がラインカメラであり、前記カメラ(22)が前記第一および第二の映像(60)を全画像の半画像として記録する、請求項20記載の装置。
【請求項22】
眼鏡(16)の少なくとも1つの眼鏡レンズの、当該眼鏡レンズに対応する人物(12)の眼(14)の瞳孔(62r、62l)の位置(x、y、x、y)に対する相対位置を調整する方法であって、
まだレンズを装填してない眼鏡フレーム(18)を装着した人物(12)の眼の領域(61)を第一の光源(26)によって照明し、前記眼の領域(61)の映像(60)を生成し、前記映像(60)内で瞳孔(62r、62l)の位置(x、y、x、y)をマーキングする方法であり、眼(14)の網膜(46)によって高い反射率で反射される波長範囲の光(42,52)で前記眼の領域(61)を照明し、そして光(42,52)の波長に対して最適化された感度をもって前記眼の領域(61)の映像(60)を生成する方法。
【請求項23】
赤色から赤外線にかけての範囲内の前記光(42)が放射させられる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記映像(60)が、基本的に前記眼の領域(61)が照明されるのと同じ光軸(23)に沿って記録される、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
前記眼の領域(61)が、前記光軸(23)の外側の少なくとも1つの方向からの追加の照明を受ける、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記眼の領域(61)が、第二の光源(50a、50b)によっていくつかの方向から追加の照明を受け、前記方向が前記光軸(23)の周りに等間隔に配置され、かつ前記光軸に対して傾斜している、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記光源 (26,50)とは別に、前記眼の領域(61)が一般的な照明装置(34)によって更に照明され、前記光源(26、50)が消灯された状態で前記一般的な照明(34)だけで第一の映像(60)を記録することと、前記光源(26,50)が点灯された状態で第二の映像(60)を記録することとが交互に行われる、請求項22〜26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
前記第二の映像(60)が、前記一般的な照明(34)が消灯された状態で記録される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記第一および第二の映像(60)が、すばやく交互に記録される、請求項27または28記載の方法。
【請求項30】
前記第一および第二の映像(60)が、ラインの全画像の半画像として記録される、請求項29記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−516752(P2006−516752A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501596(P2006−501596)
【出願日】平成16年1月24日(2004.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000600
【国際公開番号】WO2004/068216
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505152295)カール ツァイス ビジョン ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】