瞳孔径計測装置
【課題】 撮像装置との距離等を調整することなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる瞳孔径計測装置を提供する。
【解決手段】 被験者の瞳孔付近に指標を照射する指標照射部3と、指標及び瞳孔を含む撮像画像を取得するカメラ部1とを備え、撮像画像から指標画像を抽出し、撮像画像内における指標画像の実寸を算出し、撮像画像から瞳孔画像を抽出し、算出された指標画像の実寸を用いて、被験者の瞳孔の実寸を算出する。
【解決手段】 被験者の瞳孔付近に指標を照射する指標照射部3と、指標及び瞳孔を含む撮像画像を取得するカメラ部1とを備え、撮像画像から指標画像を抽出し、撮像画像内における指標画像の実寸を算出し、撮像画像から瞳孔画像を抽出し、算出された指標画像の実寸を用いて、被験者の瞳孔の実寸を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実際の瞳孔径を計測する瞳孔径計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、瞳孔を計測する技術としては、下記の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この特許文献1には、一般の健常者等の被験者が自分自身の生体指標としての瞳孔を測定するものである。この特許文献1には、自分の瞳孔の像を観察することを可能とする反射機能を有する反射面、被験者の瞳孔をアライメントするアライメントマーク、反射面を挟んで被験者の瞳孔と対向配置されている赤外線撮像素子、被験者の瞳孔を照明する赤外線照明手段、外線撮像素子の撮像面上に被験者の瞳孔の像を投影する投影光学系を備え、赤外線撮像素子から送られてくる瞳孔像情報に基づいて瞳孔の大きさの演算解析を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−144113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した瞳孔径測定装置では、瞳孔から赤外線撮像素子までの距離や赤外線撮像素子の撮像範囲内の実寸を正確に決定する必要がある。このため、この瞳孔径計測装置は、当該距離や撮像範囲のキャリブレーションを実施しなければ正確に瞳孔径を算出することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、撮像装置との距離等を調整することなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる瞳孔径計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する第1の発明に係る瞳孔径計測装置は、被験者の瞳孔径を計測する瞳孔径計測装置であって、前記被験者の瞳孔付近に指標を照射する指標照射部と、前記指標及び瞳孔を含む撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像から指標画像を抽出し、前記撮像画像内における指標画像の実寸を算出する指標寸法算出部と、前記撮像画像から瞳孔画像を抽出し、前記指標寸法算出部により算出された指標画像の実寸を用いて、前記被験者の瞳孔の実寸を算出する瞳孔径算出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第2の発明は、前記指標照射部は、予め決定された間隔で複数の指標を照射し、前記指標寸法算出部は、前記予め決定された間隔と、前記撮像画像内における指標画像の間隔とを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、前記瞳孔径算出部は、前記1ピクセル当たりの実寸と前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出することを特徴とする。
【0009】
第1の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第3の発明は、前記指標照射部は、予め決定された大きさの前記指標を照射し、前記指標寸法算出部は、前記予め決定された大きさと、前記撮像画像内における指標画像の大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、前記瞳孔径算出部は、前記指標寸法算出部により算出された1ピクセル当たりの実寸と、前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出することを特徴とする。
【0010】
第2又は第3の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第4の発明は、前記指標照射部は、2つ以上の指標を照射し、前記指標寸法算出部は、前記被験者に照射された実際の指標の大きさ又は指標間の間隔と、前記撮像画像内における複数の指標画像の大きさ又は指標画像間の間隔とを比較して、大きさごと又は間隔ごとに、1ピクセル当たりの実寸を算出することを特徴とする。
【0011】
第4の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第5の発明は、前記指標照射部は、縦方向又は横方向の少なくとも一方向に配置して複数の指標を照射することを特徴とする。
【0012】
第5の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第6の発明は、前記指標照射部は、グリッド状に配置して複数の指標を照射することを特徴とする。
【0013】
第3乃至第5の何れかの発明に係る瞳孔径計測装置であって、第7の発明は、第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の指標の大きさ又は指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、前記第1実寸と前記第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出することを特徴とする。
【0014】
第7の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第8の発明は、前記指標寸法算出部は、第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の第1指標の大きさ又は第1指標画像間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1の実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2の実寸とを、曲線により補間することを特徴とする。
【0015】
第1乃至第8の何れかの発明に係る瞳孔径計測装置であって、第9の発明は、前記指標は、プルキニエ像であることを特徴とする。
【0016】
第1乃至第9の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第10の発明は、前記被験者の瞳孔に対向して配置された反射部を備え、前記指標照射部は、前記反射部によって指標を反射させて、前記被験者の瞳孔付近に指標を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、瞳孔付近に指標を照射し、撮像画像から指標画像を抽出して指標画像の実寸を算出し、撮像画像から瞳孔画像を抽出して指標画像の実寸を用いて被験者の瞳孔の実寸を算出するので、瞳孔径計測条件のキャリブレーションを行うことなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射する構成のブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射したときに取得した撮像画像を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射する構成のブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射したときに取得した撮像画像を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、実際の指標と、撮像画像上の指標と画像範囲の実寸との関係を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、指標が欠けて照射又は抽出されたときの、単一の指標照射時の影響及び複数の指標照射時の影響を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、プルキニエ像を照射したときの様子を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標の照射タイミングを制御して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標の照射タイミングを制御して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、(a)は指標を含む領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を変更する説明図であり、(b)は指標の間隔を含む領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を変更する説明図である。
【図15】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、(a)は指標を含む隣接する領域の1ピクセル当たりの実寸を補間する説明図であり、(b)は指標の間隔を含む隣接する領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を補間する説明図である。
【図16】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、(a)は指標を含む隣接する領域の1ピクセル当たりの実寸を曲線補間する説明図であり、(b)は指標の間隔を含む隣接する領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を曲線補間する説明図である。
【図17】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、眼球に複数の指標を照射した状態を示す上面図である。
【図18】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標をグリッド状に配置した状態を示す図である。
【図19】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、2つの指標により形成される間隔をグリッド状に配置した状態を示す図である。
【図20】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射するLEDを円形に配置した状態を示す図である。
【図21】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、2つの指標により形成される間隔を円形にするためのLEDの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本発明を適用した瞳孔径計測装置は、瞳孔径の計測を行うために、瞳孔とカメラ位置との距離等のキャリブレーションを必要とせず、計測精度の向上するものである。このために、瞳孔径計測装置は、瞳孔周辺や顔などに照射した指標を撮像し、撮像範囲の実寸を計算する。以下に説明する。
【0021】
[瞳孔径計測装置の基本的な構成]
この瞳孔径計測装置は、例えば図1及び図2に示すように構成されている。瞳孔径計測装置は、カメラ部1A,1B(以下、総称する場合には単に「カメラ部1」と呼ぶ。)、ハーフミラー2、指標照射部3A,3B(以下、総称する場合には単に「指標照射部3」と呼ぶ。)、頭部ホルダ4、顎部ホルダ5を有する。
【0022】
カメラ部1は、被験者の右眼の眼球を撮像範囲として含む右眼用のカメラ部1Aと、被験者の左眼の眼球を撮像範囲として含む左眼用のカメラ1Bからなる。カメラ部1は、ハーフミラー2を介して受光した光によって瞳孔及び指標を含む撮像画像を生成する。
【0023】
ハーフミラー2は、被験者の瞳孔と対向した位置に設けられる。ハーフミラー2は、被験者が頭部ホルダ4及び顎部ホルダ5によって眼球を固定している状態で、被験者が正視した状態で外界が見えるようにしている。これにより、瞳孔径計測装置は、被験者が視界を大きく遮られることなく、周囲が明るい状態の所謂日常視の状態における瞳孔径を計測可能としている。
【0024】
ハーフミラー2は、指標照射部3がハーフミラー2に向けて配置されている場合には、当該指標照射部3から照射された指標光を瞳孔付近に反射する。なお、ハーフミラー2は、可視光透過し、赤外光全反射するミラーであることが望ましいが、実際には、10%程度の可視光の反射、赤外光の透過がある。
【0025】
本実施形態では、ハーフミラー2を備えた構成を示しているが、ハーフミラー2を備えていなくても、被験者の略正面にカメラ部1を設置して、被験者の瞳孔を撮像しても良い。
【0026】
指標照射部3は、IR−LEDやレーザーで構成され、指向性が高く拡散性の少ない指標光を照射する。これにより、LED3aは、被験者の瞳孔付近又は顔に、予め寸法が設定された指標、又は、予め間隔が設定された複数の指標を照射することができる。なお、指標照射部3は、瞳孔検出用のIR-LEDと併用しても良い。
【0027】
この指標照射部3は、被験者の眼球に対して斜め上方の指標照射部3A及び斜め下方の指標照射部3Bを有する。各指標照射部3A,3Bは、棒状の筐体内に複数のLED3aが内蔵されている。各LED3aは、その照射方向が、カメラ部1の撮像範囲となっている被験者の瞳孔又は顔付近と位置決めされている。指標照射部3は、被験者の視界に入らないことが望ましい。指標照射部3は、例えば、視野内の上下方向において120度以上の範囲に入らないよう配置することが望ましい。
【0028】
なお、LED3aは、JIS C 6802におけるクラス分けで、クラス1に位置づけられるレーザーであることが望ましい。すなわち、LED3aは、被験者の瞳孔付近に照射するものであり、合理的に予見可能な運転状況下で安全であるレーザーであって、どのような光学系で集光しても、眼に対して本質的に安全なレベルのレーザーであることが必要である。
【0029】
また、指標照射部3の各LED3aは、指標寸法・瞳孔径算出部12によって、オンとオフとの切り替え等の照射タイミングが制御される。これによって、単一の指標、又は、複数の指標を選択して被験者の瞳孔付近に照射できる。更に、指標照射部3は、後述するように複数の指標の配置のうち、何れかの配置で指標を照射できる。
【0030】
このような瞳孔径計測装置は、被験者の目前にハーフミラー2等の反射部を設け、指標照射部3から照射された指標を反射部で反射させて、被験者の瞳孔付近に導く。これによって、瞳孔前面に指標照射部3が配置されることがなくなり、省スペース化が可能となる。また、反射部としてハーフミラー2を用いた場合は、眼前が開放された状態の日常に近い状態で瞳孔径を計測することができる。これによって、被験者の眼前が覆われていることによって、眼球付近が暗くなって瞳孔径が大きくなり、照明などで明るさを調節しないと日常の瞳孔径が計測できないという高コスト化を回避できる。
【0031】
以下、上述した構成を有する瞳孔径計測装置が瞳孔径を計測する具体例を、図3乃至図9を参照して説明する。
【0032】
[単一の指標を用いた瞳孔径計測装置]
上述の瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射するものの構成を図3に示す。
【0033】
この瞳孔径計測装置は、単一の光源としての指標照射部3を備える。指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12の制御信号に従って、単一の指標20を照射する。なお、指標照射部3は、複数のLED3aのうち、単一又は複数のLED3aによって予め大きさが設定された単一の指標20を照射できればよい。これによって、単一の指標20は、瞳孔101及び虹彩102の周囲の顔に照射される。なお、指標20の照射は、計測中に常に行っている必要はなく、瞳孔径を計測する直前のタイミングでのみ行っても良い。
【0034】
カメラ部1は、指標照射部3によって単一の指標20を撮像して、図4に示すような撮像画像111を生成する。この撮像画像111には、瞳孔画像101A、虹彩画像102A及び指標画像20Aが含まれる。
【0035】
瞳孔径計測装置は、瞳孔・指標抽出部11と、指標寸法・瞳孔径算出部12とを備えている。瞳孔・指標抽出部11及び指標寸法・瞳孔径算出部12は、図示しないパーソナルコンピュータ等に処理によって実現される。
【0036】
瞳孔・指標抽出部11は、カメラ部1により撮像された撮像画像111から、瞳孔画像101A及び指標画像20Aを抽出する。このとき、瞳孔・指標抽出部11は、撮像画像111内の輝度に基づいて瞳孔画像101A及び指標画像20Aを抽出する。瞳孔画像101A及び指標画像20Aを抽出する2値化閾値は、予め設定されている。例えば、撮像画像111内で最も暗い輝度の円領域を瞳孔画像101Aとして抽出し、撮像画像111内で最も明るい輝度の円領域を指標画像20Aとして抽出する。
【0037】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、瞳孔・指標抽出部11により抽出された瞳孔画像101A及び指標画像20Aを用いて、瞳孔画像101Aの実寸を算出する。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさ(例えば、径)の実寸を算出し、当該算出された指標画像20Aの大きさの実寸を用いて、被験者の瞳孔101の径の実寸を算出する。
【0038】
具体的には、指標寸法・瞳孔径算出部12は、被験者に照射された指標20の実際の大きさと、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出する。この1ピクセル当たりの実寸は、瞳孔画像の大きさ[ピクセル]を、実際の瞳孔の大きさ[mm]に変換する係数となる。例えば、撮像画像111内において、指標照射部3が照射した単一の指標20の寸法がa[mm]であり、指標画像20Aがs[ピクセル]であった場合、撮像画像111における1ピクセル当たりの寸法は、a/s[mm]となる。
【0039】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該算出された1ピクセル当たりの実寸[mm]と、瞳孔画像101Aの径に相当するピクセル数とを乗算して、被験者の瞳孔101の実寸[mm]を算出する。例えば、図7の上段に示すように、撮像画像111内における瞳孔画像101Aの径がx[ピクセル]である場合、瞳孔径は、ax/s[mm]で求めることができる。
【0040】
以上のように、この瞳孔径計測装置によれば、予め決めておいた大きさの指標20を照射し、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさ[ピクセル]から撮像画像111の1ピクセル当たりの実寸[mm]を求めることができる。これによって、この瞳孔径計測装置によれば、1ピクセル当たりの実寸を用いて、瞳孔画像101Aのピクセル数を瞳孔径の実寸[mm]に変換できる。
【0041】
したがって、この瞳孔径計測装置によれば、瞳孔径計測条件のキャリブレーションを行うことなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる。
【0042】
[複数の指標を用いた瞳孔径計測装置]
つぎに、上述の瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射するものの構成を、図5に示す。
【0043】
この瞳孔径計測装置は、図1及び図2に示した指標照射部3のように、複数のLED3aによって複数の指標20を照射する。このとき、指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12の制御信号に従って、どのLED3aをオンとするかが制御される。これによって、複数の指標20は、予め決定されている間隔で、瞳孔101及び虹彩102の周囲の顔に照射される。なお、指標20の照射は、計測中に常に行っている必要はなく、瞳孔径を計測する直前のタイミングでのみ行っても良い。
【0044】
また、複数の指標20は、例えば図9に示すように、プルキニエ像として照射することが望ましい。プルキニエ像とは、点光源照明を角膜に照射した際に明るく現れる角膜反射像である。このプルキニエ像は、例えば眼球運動を計測する角膜反射法で用いられることが知られている。
【0045】
指標照射部3の光源としてIR-LEDを使うと、瞳孔部分の黒が強調される。そして、眼付近の照明と兼用としているため、真ん中の輝度が極端に明るいためLED3aの位置に対応したプルキニエ像が明確に現れることとなる。なお、このようにプルキニエ像を照射することは、上述の単一の指標を照射する場合でも実現可能なことは勿論である。
【0046】
カメラ部1は、指標照射部3によって複数の指標20を撮像して、図6に示すような撮像画像111を生成する。この撮像画像111には、瞳孔画像101A、虹彩画像102A、指標画像20A及び指標画像20Bが含まれる。
【0047】
瞳孔・指標抽出部11は、カメラ部1により撮像された撮像画像111から、瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを抽出する。このとき、瞳孔・指標抽出部11は、撮像画像111内の輝度に基づいて瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを抽出する。瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを抽出する2値化閾値は、予め設定されている。例えば、撮像画像111内で最も暗い輝度の円領域を瞳孔画像101Aとして抽出し、撮像画像111内で最も明るい輝度の円領域を指標画像20A及び指標画像20Bとして抽出する。
【0048】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、瞳孔・指標抽出部11により抽出された瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを用いて、瞳孔画像101Aの実寸を算出する。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、撮像画像111内における指標画像20Aと指標画像20Bとの間隔の実寸を算出し、当該算出された指標画像20Aと指標画像20Bとの間隔の実寸を用いて、被験者の瞳孔101の径の実寸を算出する。
【0049】
具体的には、指標寸法・瞳孔径算出部12は、被験者に照射された指標20の実際の間隔と、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出する。例えば、図7の下段に示すように、撮像画像111内において、指標照射部3が照射した2つの指標20の間隔がb[mm]であり、指標画像20Aと指標画像20Bとの間隔がs[ピクセル]であった場合、撮像画像111における1ピクセル当たりの寸法は、b/s[mm]となる。
【0050】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該算出された1ピクセル当たりの実寸[mm]と、瞳孔画像101Aの径に相当するピクセル数とを乗算して、被験者の瞳孔101の実寸[mm]を算出する。例えば、撮像画像111内における瞳孔画像101Aの径がx[ピクセル]である場合、瞳孔径は、bx/s[mm]で求めることができる。
【0051】
したがって、この瞳孔径計測装置によれば、単一の指標を用いた瞳孔径計測装置と同様に、瞳孔径計測条件のキャリブレーションを行うことなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる。
【0052】
また、上述したように指標20の大きさを用いた場合には、図8の左欄に示すように、指標20の一部が欠けて照射又は抽出されると、本来の指標20の大きさDとは異なる大きさD’によって瞳孔径を計測してしまう。すると、指標画像に基づいて決定する1ピクセル当たりの実寸に誤差が生じ、瞳孔画像から正確な瞳孔の実寸に換算できない。
【0053】
しかし、この瞳孔径計測装置によれば、指標20間の間隔を用いているので、図8の右欄に示すように、指標20が欠けた場合であっても本来の間隔Dと実際の間隔D’との差が小さく、実寸換算精度の影響を受けにくい。したがって、この瞳孔径計測装置によれば、単一の指標を用いた瞳孔径計測装置と比べて、瞳孔径の実寸換算精度を高めることができる。
【0054】
また、この瞳孔径計測装置によれば、指標20としてプルキニエ像を用いることにより、計測対象の瞳孔径位置に対して、瞳孔のより近傍で1ピクセル当たりの実寸を算出することができる。これにより、この瞳孔径計測装置によれば、より高い精度で瞳孔径を計測できる。また、この瞳孔径計測装置によれば、指標照射部3を、瞳孔径を計測するための光源と併用でき、システム構成を簡略化できる。
【0055】
[瞳孔径計測装置の動作手順]
つぎに、上述した瞳孔径計測装置における動作手順について、図10乃至図13を参照して説明する。
【0056】
図10は、単一の指標を用いた瞳孔径計測装置による動作手順を示すものである。
【0057】
この瞳孔径計測装置は、先ずステップS1において、指標照射部3から単一の指標20を被験者の瞳孔付近に照射する。
【0058】
次のステップS2において、カメラ部1は、ステップS1にて照射された指標20及び瞳孔を含む撮像範囲で撮像画像を取得する。
【0059】
次のステップS3において、瞳孔・指標抽出部11は、ステップS2にてカメラ部1が取得した撮像画像から指標画像を抽出する。
【0060】
次のステップS4において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS3にて抽出した指標画像の大きさとして、撮像画像のピクセル数を計測する。
【0061】
次のステップS5において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、予め決定しておいた実際の指標の大きさ[mm]と、撮像画像上の指標画像の大きさ[ピクセル]の関係から、撮像画像上の1ピクセル当たりの実寸を算出する。
【0062】
次のステップS6において、瞳孔・指標抽出部11はステップS2にて取得した瞳孔画像を抽出し、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該瞳孔画像のピクセル数を計測する。
【0063】
次のステップS7において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS6にて計測した瞳孔画像のピクセル数にステップS5にて算出した1ピクセル当たりの実寸を乗算して、瞳孔径の実寸を算出する。
【0064】
これにより、瞳孔径計測装置は、単一の指標を照射して、高い精度で瞳孔径を計測できる。
【0065】
図11は、複数の指標を用いた瞳孔径計測装置による動作手順を示すものである。
【0066】
この瞳孔径計測装置は、先ずステップS1において、指標照射部3から単一の指標20を被験者の瞳孔付近に照射し、ステップS2において、カメラ部1は、ステップS1にて照射された指標20及び瞳孔を含む撮像範囲で撮像画像を取得する。
【0067】
次のステップS3’において、瞳孔・指標抽出部11は、ステップS2にてカメラ部1が取得した撮像画像から複数の指標画像を抽出する。
【0068】
次のステップS4’において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS3’にて抽出した指標画像間の間隔として、撮像画像のピクセル数を計測する。
【0069】
次のステップS5’において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、予め決定しておいた実際の指標の間隔[mm]と、撮像画像上の指標画像の間隔[ピクセル]の関係から、撮像画像上の1ピクセル当たりの実寸を算出する。
【0070】
次のステップS6において、瞳孔・指標抽出部11はステップS2にて取得した瞳孔画像を抽出し、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該瞳孔画像のピクセル数を計測する。
【0071】
次のステップS7において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS6にて計測した瞳孔画像のピクセル数にステップS5’にて算出した1ピクセル当たりの実寸を乗算して、瞳孔径の実寸を算出する。
【0072】
これにより、瞳孔径計測装置は、複数の指標を照射して、高い精度で瞳孔径を計測できる。
【0073】
また、上述した瞳孔径計測装置の動作において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、指標照射部3の指標照射タイミングを制御することが望ましい。この瞳孔径計測装置は、単一の指標を用いるときの動作を図12に示し、複数の指標を用いる動作を図13に示す。
【0074】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、先ずステップS10において、瞳孔径の計測を実施するか否かを判定する。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、図示しない計測開始ボタンが押されたことなどの入力動作が有った場合には、瞳孔径の計測を実施すると判定して、ステップS1に処理を進める。
【0075】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、指標照射部3を制御してステップS1の指標の照射を行わせ、その直後のタイミングで、カメラ部1を制御してステップS2の撮像画像の取得を行わせる。これにより、指標照射部3から指標を照射するタイミングを、カメラ部1によって撮像画像を取得する直前にできる。
【0076】
以上より、この瞳孔径計測装置によれば、前回の瞳孔径の計測と今回の瞳孔径の計測との間で、カメラ部1と瞳孔との距離が変わり、1ピクセル当たりの実寸が変化した場合であっても、高い精度で瞳孔径を計測できる。また、この瞳孔径計測装置によれば、常に指標を照射する場合に比べて、瞳孔径の計測が被験者の日常視の邪魔にならないことや、照射に要する省電力といった利点もある。
【0077】
[1ピクセル当たりの実寸を測定する具体例]
つぎに、上述した瞳孔径計測装置において、2つ以上の指標の大きさ、又は、2つ以上の指標の間隔を用いて、1ピクセル当たりの実寸を決定する具体例を説明する。
【0078】
瞳孔径計測装置は、指標照射部3によって、2つ以上の指標を照射し、指標寸法・瞳孔径算出部12によって、被験者に照射された指標間ごとの実際の大きさと、撮像画像内における指標画像間ごとの複数の大きさとを比較して、指標ごとに1ピクセル当たりの実寸を算出する。又は、瞳孔径計測装置は、指標照射部3によって、3つ以上の指標を照射し、指標寸法・瞳孔径算出部12によって、被験者に照射された指標間ごとの実際の間隔と、撮像画像内における指標画像間ごとの複数の間隔とを比較して、指標間の間隔ごとに1ピクセル当たりの実寸を算出する。
【0079】
このとき、指標照射部3は、縦方向又は横方向の少なくとも一方向に配置して複数の指標を照射する。
図14(a)に示すように、指標20a,20bといったように2つの指標を照射し、それぞれの指標の大きさに基づいて1ピクセル当たりの実寸を求める場合を考える。
【0080】
この場合において、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像の大きさがa[mm]であったが、撮像画像上では、指標20aはS1[ピクセル]、指標20bはS2[ピクセル]となったとする。
【0081】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該指標20aと指標20bとのピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20aを含む画像領域201と、指標20bを含む画像領域202とを設定する。この画像領域201と画像領域202とは、指標20aの中心点と指標20bの中心点との中点を境界として設定される。
【0082】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、a/S1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、a/S2[mm]に設定する。
【0083】
これにより、瞳孔径計測装置は、瞳孔画像が画像領域201と画像領域202とに跨って撮像画像内に現れていても、瞳孔画像のうちの画像領域201に含まれる画素と、画像領域202に含まれる画素とで、1ピクセル当たりの実寸を変更して、当該1ピクセル当たりの実寸を瞳孔画像のピクセル数に乗算できる。
【0084】
以上より、この瞳孔径計測装置によれば、少なくとも2つ以上の指標を照射し、隣接する指標毎に、1ピクセル当たりの実寸を最適化することで、瞳孔径の計測精度を高めることができる。
【0085】
また、指標間の間隔を用いる瞳孔径計測装置の場合、図14(b)に示すように、2つの間隔を取得するために3つの指標20a,20b,20cを照射する。
【0086】
この場合において、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像の間隔がb[mm]であったが、撮像画像上では、指標20a、20b間はt1[ピクセル]、指標20b、20c間はt2[ピクセル]となったとする。
【0087】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、間隔t1,t2のピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20a、20bを含む画像領域201と、指標20b、20cを含む画像領域202とを設定する。この画像領域201と画像領域202とは、指標20bの中心点を境界として設定される。
【0088】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、b/t1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、b/t2[mm]に設定する。
【0089】
これにより、瞳孔径計測装置は、瞳孔画像が画像領域201と画像領域202とに跨って撮像画像内に現れていても、画像領域201と画像領域202とで1ピクセル当たりの実寸を変更して、当該1ピクセル当たりの実寸を瞳孔画像のピクセル数に乗算できる。
【0090】
以上より、この瞳孔径計測装置によれば、少なくとも2つ以上の指標を照射し、隣接する指標毎に、1ピクセル当たりの実寸を最適化することで、瞳孔径の計測精度を高めることができる。
【0091】
また、瞳孔径計測装置は、隣接する画像領域で決定した1ピクセル当たりの実寸を補間することが望ましい。このため、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の大きさと実際の第1指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさと実際の第2指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、第1実寸と第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出する。又は、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の間隔と実際の第1指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の間隔と実際の第2指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、第1実寸と第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出する。
【0092】
具体的には、図15(a)に示すように、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像の大きさがa[mm]であったが、撮像画像上では、指標20aはS1[ピクセル]、指標20bはS2[ピクセル]となったとする。
【0093】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該指標20aと指標20bとのピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20aの中心点から左側の領域を含む画像領域201と、指標20aの中心点から指標20bの中心点までの領域を含む画像領域202と、指標20bの中心点から右側の領域を含む画像領域203とを設定する。
【0094】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、a/S1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸を、a/S2[mm]に設定する。更に、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸a/S1と、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸a/S2との補間値にする。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、1ピクセル当たりの実寸a/S1と1ピクセル当たりの実寸a/S2とを線形補間する。
【0095】
この線形補間は、例えば、画像領域202の実寸を、画像領域201での実寸a/S1と画像領域203の実寸a/S2とが直線的な傾きで次第に変化するようにすることが挙げられる。
【0096】
また、図15(b)に示すように、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像間の間隔がb[mm]であったが、撮像画像上では、指標20a、20b間がt1[ピクセル]、指標20b、20c間がt2[ピクセル]となったとする。
【0097】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該指標20a、20b間の間隔と指標20b、20c間の間隔とのピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20a、20bの中点から左側の領域を含む画像領域201と、指標20a、20b間の中点から指標20b、20c間の中点までの領域を含む画像領域202と、指標20b、20c間の中点から右側の領域を含む画像領域203とを設定する。
【0098】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、b/t1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸を、b/t2[mm]に設定する。更に、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸b/t1と、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸b/t2との補間値にする。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、1ピクセル当たりの実寸b/t1と1ピクセル当たりの実寸b/t2とを線形補間する。
【0099】
これにより、瞳孔径計測装置は、隣接する画像領域間で1ピクセル当たりの実寸が段階的に変わってしまうことなく、撮像画像内に現れた瞳孔画像の位置ごとに1ピクセル当たりの実寸を変更できる。したがって、この瞳孔径計測装置によれば、1ピクセル当たりの実寸を最適化することで、瞳孔径の計測精度を高めることができる。
【0100】
更に、この瞳孔径計測装置において、隣接する画像領域間で補間するときに、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の大きさと実際の第1指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさと実際の第2指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを、曲線により補間することが望ましい。又は、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の間隔と実際の第1指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の間隔と実際の第2指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを、曲線により補間することが望ましい。
【0101】
例えば、図15(a)のように画像領域201〜203を設定した場合、指標寸法・瞳孔径算出部12は、図16(a)のように、画像領域202の1ピクセル当たりの実寸を、1ピクセル当たりの実寸a/S1と1ピクセル当たりの実寸a/S2とを曲線補間した値にする。また、図15(b)のように画像領域201〜203を設定した場合、指標寸法・瞳孔径算出部12は、図16(b)のように、画像領域202の1ピクセル当たりの実寸を、1ピクセル当たりの実寸b/t1と1ピクセル当たりの実寸b/t2とを曲線補間した値にする。
【0102】
曲線補間の方法は、隣接する画像領域間の間隔の相違に基づく1ピクセル当たりの実寸b/tの相違に基づいて行う。具体的には、被験者の眼球は、指標光の入射側から見たときに凸面となっており、当該凸面となっている分だけカメラ部1の位置と眼球における各位置との距離が異なる。したがって、等間隔で指標を照射しても、実際には、図17に示すように、指標間の間隔a〜iのうち、中央部分の間隔eが最も長く、端部の間隔となるほど短くなることが想定される。そこで、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該間隔の相違に応じた1ピクセル当たりの実寸の変化を吸収するよう、隣接する間隔間で曲線補間する。
【0103】
これにより、瞳孔径計測装置は、直線補間した場合よりも1ピクセル当たりの実寸をより最適化することで、瞳孔径の計測精度を更に高めることができる。
【0104】
[複数の指標の配置例]
つぎに、上述した瞳孔径計測装置において、複数の指標の配置例について説明する。
【0105】
瞳孔径計測装置は、指標照射部3によって、グリッド状に配置して複数の指標を照射しても良い。
【0106】
指標の大きさを用いる瞳孔径計測装置は、図18に示すように、例えば、縦方向及び横方向の2方向に亘って2つづつ、指標を配置する。指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12によって指定された複数のLED3aがオンとされ、予め決定された大きさa[mm]となるように各指標を照射して、グリッド状に各指標を配置できる。
【0107】
指標間の間隔を用いる瞳孔径計測装置は、図19に示すように、縦方向で1つの間隔を取得でき、横方向で2つの間隔を取得できるよう、例えば、6個の指標を配置する。なお、図19では、6個の指標を照射した一例を示したが、縦方向の間隔及び横方向の間隔、又は任意の複数の方向における間隔を取得するよう複数の指標を照射できればよい。指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12によって指定された複数のLED3aがオンとされ、縦方向及び横方向共に、予め決定された間隔b[mm]となるように各指標を照射して、グリッド状に各指標を配置できる。
【0108】
このように瞳孔径計測装置は、指標をグリッド状に配置することで、隣接する指標間毎に1ピクセル当たりの実寸を求め、隣接する間隔ごとの1ピクセル当たりの実寸のうち、瞳孔画像に最も近い1ピクセル当たりの実寸を用いて瞳孔の実際の寸法を求めることができる。したがって、瞳孔径の計測精度を更に高めることができる。すなわち、上述した図14乃至図17では、一方向のみに指標を配置したが、グリッド状に配置することによって、縦方向又は横方向の2方向に亘って1ピクセル当たりの実寸を取得できる。
【0109】
更に、この瞳孔径計測装置は、上述したように1ピクセル当たりの実寸を線形補間又は曲線補間しても良いことは勿論である。また、グリッド状に配置することによって、実際の眼球形状に沿って曲線補間するときの補間精度も向上できる。
【0110】
なお、グリッド状に配置するためには少なくとも3つの指標があればよく、三角形状に配置しても良い。
【0111】
更に、他の指標の配置例としては、円状が考えられる。このため、瞳孔径計測装置は、カメラ部1の周囲を円状に囲うように指標照射部3のLED3aを配置する。これにより、瞳孔径計測装置は、指標照射部3がカメラ部1を回避しながら、一方向だけでなく二次元的に指標を配置することができ、瞳孔径計測の精度を高めることができる。
【0112】
具体的には、図20に示すように、a[mm]の大きさの指標を照射できるようLED3aを配置したり、図21に示すように、b[mm]の間隔で指標を照射できるようLED3aを配置する。
【0113】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0114】
1 カメラ部
2 ハーフミラー
3 指標照射部
3a LED
4 頭部ホルダ
5 顎部ホルダ
11 瞳孔・指標抽出部
12 指標寸法・瞳孔径算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、実際の瞳孔径を計測する瞳孔径計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、瞳孔を計測する技術としては、下記の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この特許文献1には、一般の健常者等の被験者が自分自身の生体指標としての瞳孔を測定するものである。この特許文献1には、自分の瞳孔の像を観察することを可能とする反射機能を有する反射面、被験者の瞳孔をアライメントするアライメントマーク、反射面を挟んで被験者の瞳孔と対向配置されている赤外線撮像素子、被験者の瞳孔を照明する赤外線照明手段、外線撮像素子の撮像面上に被験者の瞳孔の像を投影する投影光学系を備え、赤外線撮像素子から送られてくる瞳孔像情報に基づいて瞳孔の大きさの演算解析を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−144113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した瞳孔径測定装置では、瞳孔から赤外線撮像素子までの距離や赤外線撮像素子の撮像範囲内の実寸を正確に決定する必要がある。このため、この瞳孔径計測装置は、当該距離や撮像範囲のキャリブレーションを実施しなければ正確に瞳孔径を算出することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、撮像装置との距離等を調整することなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる瞳孔径計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する第1の発明に係る瞳孔径計測装置は、被験者の瞳孔径を計測する瞳孔径計測装置であって、前記被験者の瞳孔付近に指標を照射する指標照射部と、前記指標及び瞳孔を含む撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像から指標画像を抽出し、前記撮像画像内における指標画像の実寸を算出する指標寸法算出部と、前記撮像画像から瞳孔画像を抽出し、前記指標寸法算出部により算出された指標画像の実寸を用いて、前記被験者の瞳孔の実寸を算出する瞳孔径算出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第2の発明は、前記指標照射部は、予め決定された間隔で複数の指標を照射し、前記指標寸法算出部は、前記予め決定された間隔と、前記撮像画像内における指標画像の間隔とを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、前記瞳孔径算出部は、前記1ピクセル当たりの実寸と前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出することを特徴とする。
【0009】
第1の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第3の発明は、前記指標照射部は、予め決定された大きさの前記指標を照射し、前記指標寸法算出部は、前記予め決定された大きさと、前記撮像画像内における指標画像の大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、前記瞳孔径算出部は、前記指標寸法算出部により算出された1ピクセル当たりの実寸と、前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出することを特徴とする。
【0010】
第2又は第3の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第4の発明は、前記指標照射部は、2つ以上の指標を照射し、前記指標寸法算出部は、前記被験者に照射された実際の指標の大きさ又は指標間の間隔と、前記撮像画像内における複数の指標画像の大きさ又は指標画像間の間隔とを比較して、大きさごと又は間隔ごとに、1ピクセル当たりの実寸を算出することを特徴とする。
【0011】
第4の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第5の発明は、前記指標照射部は、縦方向又は横方向の少なくとも一方向に配置して複数の指標を照射することを特徴とする。
【0012】
第5の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第6の発明は、前記指標照射部は、グリッド状に配置して複数の指標を照射することを特徴とする。
【0013】
第3乃至第5の何れかの発明に係る瞳孔径計測装置であって、第7の発明は、第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の指標の大きさ又は指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、前記第1実寸と前記第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出することを特徴とする。
【0014】
第7の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第8の発明は、前記指標寸法算出部は、第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の第1指標の大きさ又は第1指標画像間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1の実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2の実寸とを、曲線により補間することを特徴とする。
【0015】
第1乃至第8の何れかの発明に係る瞳孔径計測装置であって、第9の発明は、前記指標は、プルキニエ像であることを特徴とする。
【0016】
第1乃至第9の発明に係る瞳孔径計測装置であって、第10の発明は、前記被験者の瞳孔に対向して配置された反射部を備え、前記指標照射部は、前記反射部によって指標を反射させて、前記被験者の瞳孔付近に指標を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、瞳孔付近に指標を照射し、撮像画像から指標画像を抽出して指標画像の実寸を算出し、撮像画像から瞳孔画像を抽出して指標画像の実寸を用いて被験者の瞳孔の実寸を算出するので、瞳孔径計測条件のキャリブレーションを行うことなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射する構成のブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射したときに取得した撮像画像を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射する構成のブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射したときに取得した撮像画像を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、実際の指標と、撮像画像上の指標と画像範囲の実寸との関係を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、指標が欠けて照射又は抽出されたときの、単一の指標照射時の影響及び複数の指標照射時の影響を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、プルキニエ像を照射したときの様子を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標の照射タイミングを制御して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、複数の指標の照射タイミングを制御して瞳孔径を計測する動作手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、(a)は指標を含む領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を変更する説明図であり、(b)は指標の間隔を含む領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を変更する説明図である。
【図15】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、(a)は指標を含む隣接する領域の1ピクセル当たりの実寸を補間する説明図であり、(b)は指標の間隔を含む隣接する領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を補間する説明図である。
【図16】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、(a)は指標を含む隣接する領域の1ピクセル当たりの実寸を曲線補間する説明図であり、(b)は指標の間隔を含む隣接する領域ごとに1ピクセル当たりの実寸を曲線補間する説明図である。
【図17】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、眼球に複数の指標を照射した状態を示す上面図である。
【図18】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標をグリッド状に配置した状態を示す図である。
【図19】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、2つの指標により形成される間隔をグリッド状に配置した状態を示す図である。
【図20】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射するLEDを円形に配置した状態を示す図である。
【図21】本発明の一実施形態として示す瞳孔径計測装置において、2つの指標により形成される間隔を円形にするためのLEDの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本発明を適用した瞳孔径計測装置は、瞳孔径の計測を行うために、瞳孔とカメラ位置との距離等のキャリブレーションを必要とせず、計測精度の向上するものである。このために、瞳孔径計測装置は、瞳孔周辺や顔などに照射した指標を撮像し、撮像範囲の実寸を計算する。以下に説明する。
【0021】
[瞳孔径計測装置の基本的な構成]
この瞳孔径計測装置は、例えば図1及び図2に示すように構成されている。瞳孔径計測装置は、カメラ部1A,1B(以下、総称する場合には単に「カメラ部1」と呼ぶ。)、ハーフミラー2、指標照射部3A,3B(以下、総称する場合には単に「指標照射部3」と呼ぶ。)、頭部ホルダ4、顎部ホルダ5を有する。
【0022】
カメラ部1は、被験者の右眼の眼球を撮像範囲として含む右眼用のカメラ部1Aと、被験者の左眼の眼球を撮像範囲として含む左眼用のカメラ1Bからなる。カメラ部1は、ハーフミラー2を介して受光した光によって瞳孔及び指標を含む撮像画像を生成する。
【0023】
ハーフミラー2は、被験者の瞳孔と対向した位置に設けられる。ハーフミラー2は、被験者が頭部ホルダ4及び顎部ホルダ5によって眼球を固定している状態で、被験者が正視した状態で外界が見えるようにしている。これにより、瞳孔径計測装置は、被験者が視界を大きく遮られることなく、周囲が明るい状態の所謂日常視の状態における瞳孔径を計測可能としている。
【0024】
ハーフミラー2は、指標照射部3がハーフミラー2に向けて配置されている場合には、当該指標照射部3から照射された指標光を瞳孔付近に反射する。なお、ハーフミラー2は、可視光透過し、赤外光全反射するミラーであることが望ましいが、実際には、10%程度の可視光の反射、赤外光の透過がある。
【0025】
本実施形態では、ハーフミラー2を備えた構成を示しているが、ハーフミラー2を備えていなくても、被験者の略正面にカメラ部1を設置して、被験者の瞳孔を撮像しても良い。
【0026】
指標照射部3は、IR−LEDやレーザーで構成され、指向性が高く拡散性の少ない指標光を照射する。これにより、LED3aは、被験者の瞳孔付近又は顔に、予め寸法が設定された指標、又は、予め間隔が設定された複数の指標を照射することができる。なお、指標照射部3は、瞳孔検出用のIR-LEDと併用しても良い。
【0027】
この指標照射部3は、被験者の眼球に対して斜め上方の指標照射部3A及び斜め下方の指標照射部3Bを有する。各指標照射部3A,3Bは、棒状の筐体内に複数のLED3aが内蔵されている。各LED3aは、その照射方向が、カメラ部1の撮像範囲となっている被験者の瞳孔又は顔付近と位置決めされている。指標照射部3は、被験者の視界に入らないことが望ましい。指標照射部3は、例えば、視野内の上下方向において120度以上の範囲に入らないよう配置することが望ましい。
【0028】
なお、LED3aは、JIS C 6802におけるクラス分けで、クラス1に位置づけられるレーザーであることが望ましい。すなわち、LED3aは、被験者の瞳孔付近に照射するものであり、合理的に予見可能な運転状況下で安全であるレーザーであって、どのような光学系で集光しても、眼に対して本質的に安全なレベルのレーザーであることが必要である。
【0029】
また、指標照射部3の各LED3aは、指標寸法・瞳孔径算出部12によって、オンとオフとの切り替え等の照射タイミングが制御される。これによって、単一の指標、又は、複数の指標を選択して被験者の瞳孔付近に照射できる。更に、指標照射部3は、後述するように複数の指標の配置のうち、何れかの配置で指標を照射できる。
【0030】
このような瞳孔径計測装置は、被験者の目前にハーフミラー2等の反射部を設け、指標照射部3から照射された指標を反射部で反射させて、被験者の瞳孔付近に導く。これによって、瞳孔前面に指標照射部3が配置されることがなくなり、省スペース化が可能となる。また、反射部としてハーフミラー2を用いた場合は、眼前が開放された状態の日常に近い状態で瞳孔径を計測することができる。これによって、被験者の眼前が覆われていることによって、眼球付近が暗くなって瞳孔径が大きくなり、照明などで明るさを調節しないと日常の瞳孔径が計測できないという高コスト化を回避できる。
【0031】
以下、上述した構成を有する瞳孔径計測装置が瞳孔径を計測する具体例を、図3乃至図9を参照して説明する。
【0032】
[単一の指標を用いた瞳孔径計測装置]
上述の瞳孔径計測装置において、単一の指標を照射するものの構成を図3に示す。
【0033】
この瞳孔径計測装置は、単一の光源としての指標照射部3を備える。指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12の制御信号に従って、単一の指標20を照射する。なお、指標照射部3は、複数のLED3aのうち、単一又は複数のLED3aによって予め大きさが設定された単一の指標20を照射できればよい。これによって、単一の指標20は、瞳孔101及び虹彩102の周囲の顔に照射される。なお、指標20の照射は、計測中に常に行っている必要はなく、瞳孔径を計測する直前のタイミングでのみ行っても良い。
【0034】
カメラ部1は、指標照射部3によって単一の指標20を撮像して、図4に示すような撮像画像111を生成する。この撮像画像111には、瞳孔画像101A、虹彩画像102A及び指標画像20Aが含まれる。
【0035】
瞳孔径計測装置は、瞳孔・指標抽出部11と、指標寸法・瞳孔径算出部12とを備えている。瞳孔・指標抽出部11及び指標寸法・瞳孔径算出部12は、図示しないパーソナルコンピュータ等に処理によって実現される。
【0036】
瞳孔・指標抽出部11は、カメラ部1により撮像された撮像画像111から、瞳孔画像101A及び指標画像20Aを抽出する。このとき、瞳孔・指標抽出部11は、撮像画像111内の輝度に基づいて瞳孔画像101A及び指標画像20Aを抽出する。瞳孔画像101A及び指標画像20Aを抽出する2値化閾値は、予め設定されている。例えば、撮像画像111内で最も暗い輝度の円領域を瞳孔画像101Aとして抽出し、撮像画像111内で最も明るい輝度の円領域を指標画像20Aとして抽出する。
【0037】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、瞳孔・指標抽出部11により抽出された瞳孔画像101A及び指標画像20Aを用いて、瞳孔画像101Aの実寸を算出する。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさ(例えば、径)の実寸を算出し、当該算出された指標画像20Aの大きさの実寸を用いて、被験者の瞳孔101の径の実寸を算出する。
【0038】
具体的には、指標寸法・瞳孔径算出部12は、被験者に照射された指標20の実際の大きさと、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出する。この1ピクセル当たりの実寸は、瞳孔画像の大きさ[ピクセル]を、実際の瞳孔の大きさ[mm]に変換する係数となる。例えば、撮像画像111内において、指標照射部3が照射した単一の指標20の寸法がa[mm]であり、指標画像20Aがs[ピクセル]であった場合、撮像画像111における1ピクセル当たりの寸法は、a/s[mm]となる。
【0039】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該算出された1ピクセル当たりの実寸[mm]と、瞳孔画像101Aの径に相当するピクセル数とを乗算して、被験者の瞳孔101の実寸[mm]を算出する。例えば、図7の上段に示すように、撮像画像111内における瞳孔画像101Aの径がx[ピクセル]である場合、瞳孔径は、ax/s[mm]で求めることができる。
【0040】
以上のように、この瞳孔径計測装置によれば、予め決めておいた大きさの指標20を照射し、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさ[ピクセル]から撮像画像111の1ピクセル当たりの実寸[mm]を求めることができる。これによって、この瞳孔径計測装置によれば、1ピクセル当たりの実寸を用いて、瞳孔画像101Aのピクセル数を瞳孔径の実寸[mm]に変換できる。
【0041】
したがって、この瞳孔径計測装置によれば、瞳孔径計測条件のキャリブレーションを行うことなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる。
【0042】
[複数の指標を用いた瞳孔径計測装置]
つぎに、上述の瞳孔径計測装置において、複数の指標を照射するものの構成を、図5に示す。
【0043】
この瞳孔径計測装置は、図1及び図2に示した指標照射部3のように、複数のLED3aによって複数の指標20を照射する。このとき、指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12の制御信号に従って、どのLED3aをオンとするかが制御される。これによって、複数の指標20は、予め決定されている間隔で、瞳孔101及び虹彩102の周囲の顔に照射される。なお、指標20の照射は、計測中に常に行っている必要はなく、瞳孔径を計測する直前のタイミングでのみ行っても良い。
【0044】
また、複数の指標20は、例えば図9に示すように、プルキニエ像として照射することが望ましい。プルキニエ像とは、点光源照明を角膜に照射した際に明るく現れる角膜反射像である。このプルキニエ像は、例えば眼球運動を計測する角膜反射法で用いられることが知られている。
【0045】
指標照射部3の光源としてIR-LEDを使うと、瞳孔部分の黒が強調される。そして、眼付近の照明と兼用としているため、真ん中の輝度が極端に明るいためLED3aの位置に対応したプルキニエ像が明確に現れることとなる。なお、このようにプルキニエ像を照射することは、上述の単一の指標を照射する場合でも実現可能なことは勿論である。
【0046】
カメラ部1は、指標照射部3によって複数の指標20を撮像して、図6に示すような撮像画像111を生成する。この撮像画像111には、瞳孔画像101A、虹彩画像102A、指標画像20A及び指標画像20Bが含まれる。
【0047】
瞳孔・指標抽出部11は、カメラ部1により撮像された撮像画像111から、瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを抽出する。このとき、瞳孔・指標抽出部11は、撮像画像111内の輝度に基づいて瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを抽出する。瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを抽出する2値化閾値は、予め設定されている。例えば、撮像画像111内で最も暗い輝度の円領域を瞳孔画像101Aとして抽出し、撮像画像111内で最も明るい輝度の円領域を指標画像20A及び指標画像20Bとして抽出する。
【0048】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、瞳孔・指標抽出部11により抽出された瞳孔画像101A、指標画像20A及び指標画像20Bを用いて、瞳孔画像101Aの実寸を算出する。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、撮像画像111内における指標画像20Aと指標画像20Bとの間隔の実寸を算出し、当該算出された指標画像20Aと指標画像20Bとの間隔の実寸を用いて、被験者の瞳孔101の径の実寸を算出する。
【0049】
具体的には、指標寸法・瞳孔径算出部12は、被験者に照射された指標20の実際の間隔と、撮像画像111内における指標画像20Aの大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出する。例えば、図7の下段に示すように、撮像画像111内において、指標照射部3が照射した2つの指標20の間隔がb[mm]であり、指標画像20Aと指標画像20Bとの間隔がs[ピクセル]であった場合、撮像画像111における1ピクセル当たりの寸法は、b/s[mm]となる。
【0050】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該算出された1ピクセル当たりの実寸[mm]と、瞳孔画像101Aの径に相当するピクセル数とを乗算して、被験者の瞳孔101の実寸[mm]を算出する。例えば、撮像画像111内における瞳孔画像101Aの径がx[ピクセル]である場合、瞳孔径は、bx/s[mm]で求めることができる。
【0051】
したがって、この瞳孔径計測装置によれば、単一の指標を用いた瞳孔径計測装置と同様に、瞳孔径計測条件のキャリブレーションを行うことなく、高い精度で瞳孔径を計測することができる。
【0052】
また、上述したように指標20の大きさを用いた場合には、図8の左欄に示すように、指標20の一部が欠けて照射又は抽出されると、本来の指標20の大きさDとは異なる大きさD’によって瞳孔径を計測してしまう。すると、指標画像に基づいて決定する1ピクセル当たりの実寸に誤差が生じ、瞳孔画像から正確な瞳孔の実寸に換算できない。
【0053】
しかし、この瞳孔径計測装置によれば、指標20間の間隔を用いているので、図8の右欄に示すように、指標20が欠けた場合であっても本来の間隔Dと実際の間隔D’との差が小さく、実寸換算精度の影響を受けにくい。したがって、この瞳孔径計測装置によれば、単一の指標を用いた瞳孔径計測装置と比べて、瞳孔径の実寸換算精度を高めることができる。
【0054】
また、この瞳孔径計測装置によれば、指標20としてプルキニエ像を用いることにより、計測対象の瞳孔径位置に対して、瞳孔のより近傍で1ピクセル当たりの実寸を算出することができる。これにより、この瞳孔径計測装置によれば、より高い精度で瞳孔径を計測できる。また、この瞳孔径計測装置によれば、指標照射部3を、瞳孔径を計測するための光源と併用でき、システム構成を簡略化できる。
【0055】
[瞳孔径計測装置の動作手順]
つぎに、上述した瞳孔径計測装置における動作手順について、図10乃至図13を参照して説明する。
【0056】
図10は、単一の指標を用いた瞳孔径計測装置による動作手順を示すものである。
【0057】
この瞳孔径計測装置は、先ずステップS1において、指標照射部3から単一の指標20を被験者の瞳孔付近に照射する。
【0058】
次のステップS2において、カメラ部1は、ステップS1にて照射された指標20及び瞳孔を含む撮像範囲で撮像画像を取得する。
【0059】
次のステップS3において、瞳孔・指標抽出部11は、ステップS2にてカメラ部1が取得した撮像画像から指標画像を抽出する。
【0060】
次のステップS4において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS3にて抽出した指標画像の大きさとして、撮像画像のピクセル数を計測する。
【0061】
次のステップS5において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、予め決定しておいた実際の指標の大きさ[mm]と、撮像画像上の指標画像の大きさ[ピクセル]の関係から、撮像画像上の1ピクセル当たりの実寸を算出する。
【0062】
次のステップS6において、瞳孔・指標抽出部11はステップS2にて取得した瞳孔画像を抽出し、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該瞳孔画像のピクセル数を計測する。
【0063】
次のステップS7において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS6にて計測した瞳孔画像のピクセル数にステップS5にて算出した1ピクセル当たりの実寸を乗算して、瞳孔径の実寸を算出する。
【0064】
これにより、瞳孔径計測装置は、単一の指標を照射して、高い精度で瞳孔径を計測できる。
【0065】
図11は、複数の指標を用いた瞳孔径計測装置による動作手順を示すものである。
【0066】
この瞳孔径計測装置は、先ずステップS1において、指標照射部3から単一の指標20を被験者の瞳孔付近に照射し、ステップS2において、カメラ部1は、ステップS1にて照射された指標20及び瞳孔を含む撮像範囲で撮像画像を取得する。
【0067】
次のステップS3’において、瞳孔・指標抽出部11は、ステップS2にてカメラ部1が取得した撮像画像から複数の指標画像を抽出する。
【0068】
次のステップS4’において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS3’にて抽出した指標画像間の間隔として、撮像画像のピクセル数を計測する。
【0069】
次のステップS5’において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、予め決定しておいた実際の指標の間隔[mm]と、撮像画像上の指標画像の間隔[ピクセル]の関係から、撮像画像上の1ピクセル当たりの実寸を算出する。
【0070】
次のステップS6において、瞳孔・指標抽出部11はステップS2にて取得した瞳孔画像を抽出し、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該瞳孔画像のピクセル数を計測する。
【0071】
次のステップS7において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、ステップS6にて計測した瞳孔画像のピクセル数にステップS5’にて算出した1ピクセル当たりの実寸を乗算して、瞳孔径の実寸を算出する。
【0072】
これにより、瞳孔径計測装置は、複数の指標を照射して、高い精度で瞳孔径を計測できる。
【0073】
また、上述した瞳孔径計測装置の動作において、指標寸法・瞳孔径算出部12は、指標照射部3の指標照射タイミングを制御することが望ましい。この瞳孔径計測装置は、単一の指標を用いるときの動作を図12に示し、複数の指標を用いる動作を図13に示す。
【0074】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、先ずステップS10において、瞳孔径の計測を実施するか否かを判定する。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、図示しない計測開始ボタンが押されたことなどの入力動作が有った場合には、瞳孔径の計測を実施すると判定して、ステップS1に処理を進める。
【0075】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、指標照射部3を制御してステップS1の指標の照射を行わせ、その直後のタイミングで、カメラ部1を制御してステップS2の撮像画像の取得を行わせる。これにより、指標照射部3から指標を照射するタイミングを、カメラ部1によって撮像画像を取得する直前にできる。
【0076】
以上より、この瞳孔径計測装置によれば、前回の瞳孔径の計測と今回の瞳孔径の計測との間で、カメラ部1と瞳孔との距離が変わり、1ピクセル当たりの実寸が変化した場合であっても、高い精度で瞳孔径を計測できる。また、この瞳孔径計測装置によれば、常に指標を照射する場合に比べて、瞳孔径の計測が被験者の日常視の邪魔にならないことや、照射に要する省電力といった利点もある。
【0077】
[1ピクセル当たりの実寸を測定する具体例]
つぎに、上述した瞳孔径計測装置において、2つ以上の指標の大きさ、又は、2つ以上の指標の間隔を用いて、1ピクセル当たりの実寸を決定する具体例を説明する。
【0078】
瞳孔径計測装置は、指標照射部3によって、2つ以上の指標を照射し、指標寸法・瞳孔径算出部12によって、被験者に照射された指標間ごとの実際の大きさと、撮像画像内における指標画像間ごとの複数の大きさとを比較して、指標ごとに1ピクセル当たりの実寸を算出する。又は、瞳孔径計測装置は、指標照射部3によって、3つ以上の指標を照射し、指標寸法・瞳孔径算出部12によって、被験者に照射された指標間ごとの実際の間隔と、撮像画像内における指標画像間ごとの複数の間隔とを比較して、指標間の間隔ごとに1ピクセル当たりの実寸を算出する。
【0079】
このとき、指標照射部3は、縦方向又は横方向の少なくとも一方向に配置して複数の指標を照射する。
図14(a)に示すように、指標20a,20bといったように2つの指標を照射し、それぞれの指標の大きさに基づいて1ピクセル当たりの実寸を求める場合を考える。
【0080】
この場合において、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像の大きさがa[mm]であったが、撮像画像上では、指標20aはS1[ピクセル]、指標20bはS2[ピクセル]となったとする。
【0081】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該指標20aと指標20bとのピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20aを含む画像領域201と、指標20bを含む画像領域202とを設定する。この画像領域201と画像領域202とは、指標20aの中心点と指標20bの中心点との中点を境界として設定される。
【0082】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、a/S1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、a/S2[mm]に設定する。
【0083】
これにより、瞳孔径計測装置は、瞳孔画像が画像領域201と画像領域202とに跨って撮像画像内に現れていても、瞳孔画像のうちの画像領域201に含まれる画素と、画像領域202に含まれる画素とで、1ピクセル当たりの実寸を変更して、当該1ピクセル当たりの実寸を瞳孔画像のピクセル数に乗算できる。
【0084】
以上より、この瞳孔径計測装置によれば、少なくとも2つ以上の指標を照射し、隣接する指標毎に、1ピクセル当たりの実寸を最適化することで、瞳孔径の計測精度を高めることができる。
【0085】
また、指標間の間隔を用いる瞳孔径計測装置の場合、図14(b)に示すように、2つの間隔を取得するために3つの指標20a,20b,20cを照射する。
【0086】
この場合において、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像の間隔がb[mm]であったが、撮像画像上では、指標20a、20b間はt1[ピクセル]、指標20b、20c間はt2[ピクセル]となったとする。
【0087】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、間隔t1,t2のピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20a、20bを含む画像領域201と、指標20b、20cを含む画像領域202とを設定する。この画像領域201と画像領域202とは、指標20bの中心点を境界として設定される。
【0088】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、b/t1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、b/t2[mm]に設定する。
【0089】
これにより、瞳孔径計測装置は、瞳孔画像が画像領域201と画像領域202とに跨って撮像画像内に現れていても、画像領域201と画像領域202とで1ピクセル当たりの実寸を変更して、当該1ピクセル当たりの実寸を瞳孔画像のピクセル数に乗算できる。
【0090】
以上より、この瞳孔径計測装置によれば、少なくとも2つ以上の指標を照射し、隣接する指標毎に、1ピクセル当たりの実寸を最適化することで、瞳孔径の計測精度を高めることができる。
【0091】
また、瞳孔径計測装置は、隣接する画像領域で決定した1ピクセル当たりの実寸を補間することが望ましい。このため、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の大きさと実際の第1指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさと実際の第2指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、第1実寸と第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出する。又は、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の間隔と実際の第1指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の間隔と実際の第2指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、第1実寸と第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出する。
【0092】
具体的には、図15(a)に示すように、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像の大きさがa[mm]であったが、撮像画像上では、指標20aはS1[ピクセル]、指標20bはS2[ピクセル]となったとする。
【0093】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該指標20aと指標20bとのピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20aの中心点から左側の領域を含む画像領域201と、指標20aの中心点から指標20bの中心点までの領域を含む画像領域202と、指標20bの中心点から右側の領域を含む画像領域203とを設定する。
【0094】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、a/S1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸を、a/S2[mm]に設定する。更に、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸a/S1と、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸a/S2との補間値にする。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、1ピクセル当たりの実寸a/S1と1ピクセル当たりの実寸a/S2とを線形補間する。
【0095】
この線形補間は、例えば、画像領域202の実寸を、画像領域201での実寸a/S1と画像領域203の実寸a/S2とが直線的な傾きで次第に変化するようにすることが挙げられる。
【0096】
また、図15(b)に示すように、予め決定しておいて指標照射部3から照射した実際の指標画像間の間隔がb[mm]であったが、撮像画像上では、指標20a、20b間がt1[ピクセル]、指標20b、20c間がt2[ピクセル]となったとする。
【0097】
指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該指標20a、20b間の間隔と指標20b、20c間の間隔とのピクセル数の相違を検出すると、撮像画像のうち指標20a、20bの中点から左側の領域を含む画像領域201と、指標20a、20b間の中点から指標20b、20c間の中点までの領域を含む画像領域202と、指標20b、20c間の中点から右側の領域を含む画像領域203とを設定する。
【0098】
そして、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸を、b/t1[mm]に設定する。一方、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸を、b/t2[mm]に設定する。更に、指標寸法・瞳孔径算出部12は、画像領域202における1ピクセル当たりの実寸を、画像領域201における1ピクセル当たりの実寸b/t1と、画像領域203における1ピクセル当たりの実寸b/t2との補間値にする。このとき、指標寸法・瞳孔径算出部12は、1ピクセル当たりの実寸b/t1と1ピクセル当たりの実寸b/t2とを線形補間する。
【0099】
これにより、瞳孔径計測装置は、隣接する画像領域間で1ピクセル当たりの実寸が段階的に変わってしまうことなく、撮像画像内に現れた瞳孔画像の位置ごとに1ピクセル当たりの実寸を変更できる。したがって、この瞳孔径計測装置によれば、1ピクセル当たりの実寸を最適化することで、瞳孔径の計測精度を高めることができる。
【0100】
更に、この瞳孔径計測装置において、隣接する画像領域間で補間するときに、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の大きさと実際の第1指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさと実際の第2指標の大きさとから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを、曲線により補間することが望ましい。又は、指標寸法・瞳孔径算出部12は、第1指標画像の間隔と実際の第1指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の間隔と実際の第2指標の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを、曲線により補間することが望ましい。
【0101】
例えば、図15(a)のように画像領域201〜203を設定した場合、指標寸法・瞳孔径算出部12は、図16(a)のように、画像領域202の1ピクセル当たりの実寸を、1ピクセル当たりの実寸a/S1と1ピクセル当たりの実寸a/S2とを曲線補間した値にする。また、図15(b)のように画像領域201〜203を設定した場合、指標寸法・瞳孔径算出部12は、図16(b)のように、画像領域202の1ピクセル当たりの実寸を、1ピクセル当たりの実寸b/t1と1ピクセル当たりの実寸b/t2とを曲線補間した値にする。
【0102】
曲線補間の方法は、隣接する画像領域間の間隔の相違に基づく1ピクセル当たりの実寸b/tの相違に基づいて行う。具体的には、被験者の眼球は、指標光の入射側から見たときに凸面となっており、当該凸面となっている分だけカメラ部1の位置と眼球における各位置との距離が異なる。したがって、等間隔で指標を照射しても、実際には、図17に示すように、指標間の間隔a〜iのうち、中央部分の間隔eが最も長く、端部の間隔となるほど短くなることが想定される。そこで、指標寸法・瞳孔径算出部12は、当該間隔の相違に応じた1ピクセル当たりの実寸の変化を吸収するよう、隣接する間隔間で曲線補間する。
【0103】
これにより、瞳孔径計測装置は、直線補間した場合よりも1ピクセル当たりの実寸をより最適化することで、瞳孔径の計測精度を更に高めることができる。
【0104】
[複数の指標の配置例]
つぎに、上述した瞳孔径計測装置において、複数の指標の配置例について説明する。
【0105】
瞳孔径計測装置は、指標照射部3によって、グリッド状に配置して複数の指標を照射しても良い。
【0106】
指標の大きさを用いる瞳孔径計測装置は、図18に示すように、例えば、縦方向及び横方向の2方向に亘って2つづつ、指標を配置する。指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12によって指定された複数のLED3aがオンとされ、予め決定された大きさa[mm]となるように各指標を照射して、グリッド状に各指標を配置できる。
【0107】
指標間の間隔を用いる瞳孔径計測装置は、図19に示すように、縦方向で1つの間隔を取得でき、横方向で2つの間隔を取得できるよう、例えば、6個の指標を配置する。なお、図19では、6個の指標を照射した一例を示したが、縦方向の間隔及び横方向の間隔、又は任意の複数の方向における間隔を取得するよう複数の指標を照射できればよい。指標照射部3は、指標寸法・瞳孔径算出部12によって指定された複数のLED3aがオンとされ、縦方向及び横方向共に、予め決定された間隔b[mm]となるように各指標を照射して、グリッド状に各指標を配置できる。
【0108】
このように瞳孔径計測装置は、指標をグリッド状に配置することで、隣接する指標間毎に1ピクセル当たりの実寸を求め、隣接する間隔ごとの1ピクセル当たりの実寸のうち、瞳孔画像に最も近い1ピクセル当たりの実寸を用いて瞳孔の実際の寸法を求めることができる。したがって、瞳孔径の計測精度を更に高めることができる。すなわち、上述した図14乃至図17では、一方向のみに指標を配置したが、グリッド状に配置することによって、縦方向又は横方向の2方向に亘って1ピクセル当たりの実寸を取得できる。
【0109】
更に、この瞳孔径計測装置は、上述したように1ピクセル当たりの実寸を線形補間又は曲線補間しても良いことは勿論である。また、グリッド状に配置することによって、実際の眼球形状に沿って曲線補間するときの補間精度も向上できる。
【0110】
なお、グリッド状に配置するためには少なくとも3つの指標があればよく、三角形状に配置しても良い。
【0111】
更に、他の指標の配置例としては、円状が考えられる。このため、瞳孔径計測装置は、カメラ部1の周囲を円状に囲うように指標照射部3のLED3aを配置する。これにより、瞳孔径計測装置は、指標照射部3がカメラ部1を回避しながら、一方向だけでなく二次元的に指標を配置することができ、瞳孔径計測の精度を高めることができる。
【0112】
具体的には、図20に示すように、a[mm]の大きさの指標を照射できるようLED3aを配置したり、図21に示すように、b[mm]の間隔で指標を照射できるようLED3aを配置する。
【0113】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0114】
1 カメラ部
2 ハーフミラー
3 指標照射部
3a LED
4 頭部ホルダ
5 顎部ホルダ
11 瞳孔・指標抽出部
12 指標寸法・瞳孔径算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の瞳孔径を計測する瞳孔径計測装置であって、
前記被験者の瞳孔付近に指標を照射する指標照射部と、
前記指標及び瞳孔を含む撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から指標画像を抽出し、前記撮像画像内における指標画像の実寸を算出する指標寸法算出部と、
前記撮像画像から瞳孔画像を抽出し、前記指標寸法算出部により算出された指標画像の実寸を用いて、前記被験者の瞳孔の実寸を算出する瞳孔径算出部と
を備えることを特徴とする瞳孔径計測装置。
【請求項2】
前記指標照射部は、予め決定された間隔で複数の指標を照射し、
前記指標寸法算出部は、前記予め決定された間隔と、前記撮像画像内における指標画像の間隔とを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、
前記瞳孔径算出部は、前記1ピクセル当たりの実寸と前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項3】
前記指標照射部は、予め決定された大きさの前記指標を照射し、
前記指標寸法算出部は、前記予め決定された大きさと、前記撮像画像内における指標画像の大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、
前記瞳孔径算出部は、前記指標寸法算出部により算出された1ピクセル当たりの実寸と、前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項4】
前記指標照射部は、2つ以上の指標を照射し、
前記指標寸法算出部は、前記被験者に照射された実際の指標の大きさ又は指標間の間隔と、前記撮像画像内における複数の指標画像の大きさ又は指標画像間の間隔とを比較して、大きさごと又は間隔ごとに、1ピクセル当たりの実寸を算出すること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項5】
前記指標照射部は、縦方向又は横方向の少なくとも一方向に配置して複数の指標を照射することを特徴とする請求項4に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項6】
前記指標照射部は、グリッド状に配置して複数の指標を照射することを特徴とする請求項5に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項7】
第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の指標の大きさ又は指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、前記第1実寸と前記第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出することを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか一項に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項8】
前記指標寸法算出部は、第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の第1指標の大きさ又は第1指標画像間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1の実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2の実寸とを、曲線により補間することを特徴とする請求項7に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項9】
前記指標は、プルキニエ像であることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項10】
前記被験者の瞳孔に対向して配置された反射部を備え、
前記指標照射部は、前記反射部によって指標を反射させて、前記被験者の瞳孔付近に指標を照射することを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項1】
被験者の瞳孔径を計測する瞳孔径計測装置であって、
前記被験者の瞳孔付近に指標を照射する指標照射部と、
前記指標及び瞳孔を含む撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から指標画像を抽出し、前記撮像画像内における指標画像の実寸を算出する指標寸法算出部と、
前記撮像画像から瞳孔画像を抽出し、前記指標寸法算出部により算出された指標画像の実寸を用いて、前記被験者の瞳孔の実寸を算出する瞳孔径算出部と
を備えることを特徴とする瞳孔径計測装置。
【請求項2】
前記指標照射部は、予め決定された間隔で複数の指標を照射し、
前記指標寸法算出部は、前記予め決定された間隔と、前記撮像画像内における指標画像の間隔とを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、
前記瞳孔径算出部は、前記1ピクセル当たりの実寸と前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項3】
前記指標照射部は、予め決定された大きさの前記指標を照射し、
前記指標寸法算出部は、前記予め決定された大きさと、前記撮像画像内における指標画像の大きさとを比較して1ピクセル当たりの実寸を算出し、
前記瞳孔径算出部は、前記指標寸法算出部により算出された1ピクセル当たりの実寸と、前記瞳孔画像のピクセル数とを乗算して、前記被験者の瞳孔の実寸を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項4】
前記指標照射部は、2つ以上の指標を照射し、
前記指標寸法算出部は、前記被験者に照射された実際の指標の大きさ又は指標間の間隔と、前記撮像画像内における複数の指標画像の大きさ又は指標画像間の間隔とを比較して、大きさごと又は間隔ごとに、1ピクセル当たりの実寸を算出すること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項5】
前記指標照射部は、縦方向又は横方向の少なくとも一方向に配置して複数の指標を照射することを特徴とする請求項4に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項6】
前記指標照射部は、グリッド状に配置して複数の指標を照射することを特徴とする請求項5に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項7】
第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の指標の大きさ又は指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2実寸とを補間して、前記第1実寸と前記第2実寸との間における1ピクセル当たりの寸法を算出することを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか一項に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項8】
前記指標寸法算出部は、第1指標画像の大きさ又は第1指標画像間の間隔と実際の第1指標の大きさ又は第1指標画像間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第1の実寸と、第2指標画像の大きさ又は第2指標画像間の間隔と実際の第2指標の大きさ又は第2指標間の間隔とから算出した1ピクセル当たりの第2の実寸とを、曲線により補間することを特徴とする請求項7に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項9】
前記指標は、プルキニエ像であることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の瞳孔径計測装置。
【請求項10】
前記被験者の瞳孔に対向して配置された反射部を備え、
前記指標照射部は、前記反射部によって指標を反射させて、前記被験者の瞳孔付近に指標を照射することを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の瞳孔径計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−130434(P2012−130434A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283549(P2010−283549)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
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