説明

石油燃焼器

【課題】小さい正面通気口でも炎が押し下げられない石油燃焼器を提供する。
【解決手段】
その中心が石油燃焼器本体の中心とずれた位置に設けられた燃焼筒10を備え、前面板2と置台6との間に正面通気口18を形成し、置台6の両端の段部21と置台整流板19とにより形成した通気案内部22により、正面通気口18から流入した空気を芯内筒10底部まで案内するので、正面通気口18が小さくなっても芯内筒下部から上部に向けて充分な空気が供給され、燃焼筒の下方からの空気不足による燃焼芯の炎の押し下げを防止できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石油燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものに於いては、石油燃焼器前面からの風が燃焼筒上部から下方に向かって流れるものと、石油燃焼器前面下部の空気取入口から燃焼筒下部から上方に向かって流れるものがあり、この二つの風の流れにより石油燃焼器前面からの風の影響を相殺して、燃焼筒に炎が正常に位置するもので、燃焼筒上部から下方に向かって流れる空気よりも燃焼筒下部から上方に向かって流れる空気のほうが弱いので、例えば燃焼筒の下部に耐風板を備え、それにより燃焼筒下部からの空気を燃焼筒に押し上げて、上下の風の流れの影響を相殺していた。
(例えば、特許文献1参照)
【0003】
ところでこの従来のものでは、燃焼筒での未燃ガスの発生をより抑えるため、燃焼リングを高くし、内筒上部と燃焼リングとで二次燃焼室を形成した燃焼筒を使用すると、燃焼筒の開口部が大きくて燃焼筒上部から下方に向かって流れる空気が多くなり、耐風板だけでは燃焼筒下部から上方に向かって流れる空気が足りず、炎が芯案内パイプに押し下げられて器具下部背面から出炎してしまうことがあった。
【0004】
またこの従来のものでは、石油燃焼器の本体内に燃焼筒を有する燃焼部とカートリッジ式給油タンクを内蔵するが、本体をより小型化すると、カートリッジ式給油タンクのスペースの分だけ本体中心に対して燃焼筒の位置がずれ、例えば本体正面に対して右側にカートリッジ式給油タンクを収納すると、燃焼筒の位置は本体中心に対して左側にずれ、その結果として器具正面に対して左右60度の角度からの風が充分燃焼筒下部に流れず、炎が芯案内パイプに押し下げられるものであった。
【0005】
そこで出願人は、芯内筒の底部に集風板を設けると共に、該集風板の前方の位置に風向板を設けた石油燃焼器を先に出願した。
(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−66017号公報
【特許文献2】特願2009−73916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところでこの従来のものでは、石油燃焼器の正面に対して燃焼筒のずれている側から斜めの風が吹き込んだ時、燃焼筒の下にある芯内筒の底部に流れ込む空気が不足しないように、風を風向板に衝突させて集風板に案内し、それにより芯内筒の下部から上部に向かって充分な空気が供給され、燃焼筒の上方からの空気よりも燃焼筒の下方からの空気が少なくなって燃焼芯の炎が押し下げられるのを防止していたが、石油燃焼器に差し込むカートリッジ式給油タンクを大型のものにするため、石油燃焼器本体の高さを高くすると共に、石油燃焼器がより転倒しにくいように置台の大きさや形状を変更した結果、石油燃焼器正面下部の正面通気口が小さくしたため、燃焼筒の上方からの空気は多くなり、燃焼筒の下方からの空気が少なくなり、そのため燃焼芯の炎が押し下げられてしまうものであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明はこの点に着目し上記課題を解決する為、特にその構成を請求項1では、前面上部を開放し前面下部を取り外し自在な前面板により構成された本体枠と、該本体枠が取り付けられる置台と、該置台に配置されカートリッジ式給油タンクが上方に載置されて該カートリッジ式給油タンクより給油される油タンク部と、前記置台に配置され油タンク部から油を供給されて燃焼する燃焼部とを有し、前記燃焼部は、該燃焼部内に立設した芯内筒と、該芯内筒を内包し芯内筒との隙間に燃焼芯が配置される芯外筒と、前記芯内筒及び芯外筒の上部に設け、その中心が石油燃焼器本体の中心とずれた位置に設けられた燃焼筒を備えると共に、前記前面板と置台との間に正面通気口が形成され、該正面通気口から芯内筒底部まで通気部が形成された石油燃焼器に於いて、前記置台の両端に形成された段部と、両方の段部の上面に両端が接するように設けた置台整流板とにより、正面通気口から流入した空気を通気部まで案内する通気案内部を形成したものである。
【0009】
又請求項2に係る石油燃焼器では、特にその構成を請求項1において、前記置台整流板には、燃焼筒の中心から石油燃焼器本体の中心よりの位置に、正面通気口に対して長手方向が平行となるように風向板を設けたものである。
【0010】
又請求項3に係る石油燃焼器では、特にその構成を請求項2において、前記芯内筒の底部に集風板が設けられると共に、該集風板は、芯内筒の底部に差し込まれる円筒状の差し込み部と、該差し込み部の下部に形成され、芯内筒の底部と置台との間に形成されている通気部から流入する空気を芯内筒底部に案内する案内片を芯内筒の底部に対して左右に長く形成した集風部とからなるものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の請求項1によれば、置台の両端に形成された段部と、両方の段部の上面に両端が接するように設けた置台整流板とにより、正面通気口から流入した空気を通気部まで案内する通気案内部を形成したので、正面通気口から流入した空気は全て通気案内部を通過して通気部に流れていくので、従来よりも正面通気口が小さくても、従来よりも多くの空気を芯内筒の下部から上部に向かって内部空間を上昇して燃焼筒に供給でき、石油燃焼器本体の高さを高くして燃焼筒の上方からの空気が多くなっても、石油燃焼器正面の上部より燃焼筒に流入する空気と、石油燃焼器正面下部の正面通気口から流入して芯内筒の下部から上部に向かって内部空間を上昇して燃焼筒に供給される空気のバランスがとれて、正常な燃焼を行うことができるものである。
【0012】
又本発明の請求項2に記載の石油燃焼器によれば、請求項1に於いて、前記置台整流板には、燃焼筒の中心から石油燃焼器本体の中心よりの位置に、正面通気口に対して長手方向が平行となるように風向板を設けたので、風向板を燃焼筒の中心から石油燃焼器本体の中心よりの位置に設けたことで、石油燃焼器の正面に対して燃焼筒のずれている側から斜めに吹き込んだ風に対しての正面通気口を広くしたと同様の効果があり、風向板がなければ芯内筒の底部に流れずに石油燃焼器の下部周辺にある孔などから石油燃焼器外に流れる左側からの斜めの空気を、より多く風向板に衝突させて芯内筒の底部に案内し、石油燃焼器の正面に対して左側から斜めの強い風が吹き込んでも、石油燃焼器正面の上部より燃焼筒に流入する空気と、石油燃焼器正面下部の正面通気口から流入して芯内筒の下部から上部に向かって内部空間を上昇して燃焼筒に供給される空気のバランスがとれて、正常な燃焼を行うことができるものである。
【0013】
又、風向板を正面通気口に対して長手方向が平行となるように設けたので、石油燃焼器の正面に対して燃焼筒のずれている側から斜めに吹き込んだ風をより多く芯内筒の底部にに案内できると共に、石油燃焼器の正面に対して燃焼筒のずれている側の反対側の斜めから吹き込んだ風が芯内筒の底部に流れる妨げになる影響を少なくすることができるものである。
【0014】
又本発明の請求項3に記載の石油燃焼器によれば、請求項2に於いて、前記芯内筒の底部に集風板が設けられると共に、該集風板は、芯内筒の底部に差し込まれる円筒状の差し込み部と、該差し込み部の下部に形成され、芯内筒の底部と置台との間に形成されている通気部から流入する空気を芯内筒底部に案内する案内片を芯内筒の底部に対して左右に長く形成した集風部とからなるので、芯内筒底部に差し込み部を差し込んで集風板を固定することにより、集風板が外れることが防止され、また集風板の集風部の案内片を左右に長く形成したことにより、より多くの空気を芯内筒に案内することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施例を付した石油燃焼器を示す正面要部断面図。
【図2】同側面要部断面図。
【図3】同集風板の平面図。
【図4】同集風板の正面図。
【図5】同置台整流板の斜視図。
【図6】従来の石油燃焼器を示す側面要部断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は前面上部を開放した本体枠で、前面下部を取り外し自在な前面板2により構成しており、前記前面板2の中央には、回動することにより燃焼芯3が上下に動作すると共に、点火位置まで回動してその位置を保持することで点火動作を行う芯上下つまみ4と、該芯上下つまみ4の上部には押し込むことにより耐震自動消火装置(図示せず)を作動させて瞬時に芯を消火位置まで下降させることにより消火を行う消火ボタン5が設けられているものである。
【0017】
6は本体枠1が取り付けられる置台で、該置台6にはカートリッジ式給油タンク7が上方に載置されて該カートリッジ式給油タンク7より給油される油タンク部8と、該油タンク部8から油を供給されて燃焼する燃焼部9が配置されているものである。
【0018】
10は燃焼部9内に立設した芯内筒、11は芯内筒10を内包し、芯内筒10との隙間に燃焼芯3が配置される芯外筒、12は芯内筒10及び芯外筒11の上部に設けた燃焼筒で、芯上下つまみ4によって燃焼芯3の上端を燃焼筒12に突出させて点火すると、燃焼空気が芯内筒10の内部空間を上昇して燃焼筒12に供給され、燃焼芯3で吸上げられた油タンク部8の燃料が燃焼筒12の内部で燃焼を開始するものである。
【0019】
13は集風板で、芯内筒10の底部に差し込まれる円筒状の差し込み部14と、該差し込み部14の下部に形成され、芯内筒10の底部と置台6との間に形成されている通気部15から流入する空気を芯内筒10底部に案内する案内片16を芯内筒10の底部に対して左右に長く形成した集風部17とからなり、前面板2と置台6との間に横長に形成された正面通気口18から流入し通気部15を流れる空気を芯内筒10底部に案内するものである。
【0020】
それにより芯内筒10の底部に差し込み部14を差し込んで集風板13を固定することにより、集風板13が外れることが防止され、また集風部17の案内片16を左右に長く形成したことにより、より多くの空気を芯内筒10に案内することができるものである。
【0021】
19は平板からなる置台整流板で、燃焼筒12の中心から若干本体枠1の中心よりの位置に正面通気口18に対して長手方向が平行となるように風向板20が設けられ、両端が置台6の両端部分に形成された凸状の段部21と接して設けられていることで、正面通気口18より流入した空気を通気部15に案内する閉空間である通気案内部22を形成するものである。
【0022】
次にこの一実施形態の作動について説明する。
芯上下つまみ4を点火位置まで回動してその位置を保持すると、燃焼芯3が着火位置まで上昇し、油タンク部8の燃料を吸上げた燃焼芯3を点火装置(図示せず)により着火する。
【0023】
通常では、石油燃焼器正面の上部より燃焼筒12に流入する空気と、石油燃焼器正面下部の正面通気口18から流入して通気案内部22を通過して芯内筒10の下部から上部に向かって内部空間を上昇して燃焼筒12に供給される空気のバランスがとれて、正常な燃焼が行われるものである。
【0024】
この時、従来では正面通気口18から流入した空気の一部が、通気部15に行かずに石油燃焼器内の上方に流れてしまっていたが、本発明では正面通気口18から流入した空気は全て通気案内部22を通過して通気部15に流れていくので、従来よりも正面通気口18が小さくても、従来よりも多くの空気を芯内筒10の下部から上部に向かって内部空間を上昇して燃焼筒12に供給できるので、石油燃焼器本体の高さを高くして燃焼筒の上方からの空気が多くなっても、石油燃焼器正面の上部より燃焼筒12に流入する空気と、石油燃焼器正面下部の正面通気口18から流入して芯内筒10の下部から上部に向かって内部空間を上昇して燃焼筒12に供給される空気のバランスがとれて、正常な燃焼が行われるものである。
【0025】
又、この正常な燃焼状態で、石油燃焼器前面に斜めから風が吹き込んだ場合、石油燃焼器の正面に対して右側からの斜めの風は、燃焼筒12の中心(図1のBB線)が石油燃焼器の中心(図1のAA線)に対して左側にずれていることで、燃焼筒12の中心に対して、右側からの斜めの風は正面通気口18が広く、また斜めより吹き込んだその先に集風板13が位置するので、芯内筒10の下部から上部に向かって充分な空気が供給される。
【0026】
逆に、石油燃焼器の正面に対して左側からの斜めの風は、燃焼筒12の中心に対して、左側からの斜めの風は正面通気口18が狭く、また斜めより吹き込んだその先に集風板13が位置しないので、そのままだと芯内筒10の下部から上部に向かって充分な空気が供給されず、そのままでは石油燃焼器正面の上部より燃焼筒12に流入する空気のほうが多くなって、炎が押し下げられてしまうことになる。
【0027】
そこで、集風板13の前方にある置台整流板19に風向板20を設けたことにより、石油燃焼器の正面に対して左側からの斜めの風は、この風向板20に衝突して集風板13に案内されるため、正面通気口18が狭く、また斜めより吹き込んだその先に集風板13が位置しなくとも、芯内筒10の下部から上部に向かって充分な空気が供給されるものである。
【0028】
また、集風板13の前方に風向板20を配置することにより、正面通気口18から異物が侵入しても風向板20がその異物と接触して異物を集風板13まで侵入させず、それにより芯内筒10底部の空気の流入口を常に確保して不完全燃焼の発生を防止できるものである。
【0029】
更に風向板20は、燃焼筒12の中心よりも石油燃焼器の中心よりの位置に設けられていることにより、左側からの斜めの風に対しての正面通気口18を広くしたと同様の効果があり、風向板20がなければ集風板13に流れずに石油燃焼器の下部周辺にある孔などから石油燃焼器外に流れる左側からの斜めの空気を、より多く風向板20に衝突させて集風板13に案内し、石油燃焼器の正面に対して左側から斜めの強い風が吹き込んでも、石油燃焼器正面の上部より燃焼筒12に流入する空気と、石油燃焼器正面下部の正面通気口18から流入して芯内筒10の下部から上部に向かって内部空間を上昇して燃焼筒12に供給される空気のバランスがとれて、正常な燃焼が行われるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 本体枠
2 前面板
3 燃焼芯
6 置台
7 カートリッジ式給油タンク
8 油タンク部
9 燃焼部
10 芯内筒
11 芯外筒
12 燃焼筒
15 通気部
18 正面通気口
19 置台整流板
21 段部
22 通気案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面上部を開放し前面下部を取り外し自在な前面板により構成された本体枠と、該本体枠が取り付けられる置台と、該置台に配置されカートリッジ式給油タンクが上方に載置されて該カートリッジ式給油タンクより給油される油タンク部と、前記置台に配置され油タンク部から油を供給されて燃焼する燃焼部とを有し、前記燃焼部は、該燃焼部内に立設した芯内筒と、該芯内筒を内包し芯内筒との隙間に燃焼芯が配置される芯外筒と、前記芯内筒及び芯外筒の上部に設け、その中心が石油燃焼器本体の中心とずれた位置に設けられた燃焼筒を備えると共に、前記前面板と置台との間に正面通気口が形成され、該正面通気口から芯内筒底部まで通気部が形成された石油燃焼器に於いて、前記置台の両端に形成された段部と、両方の段部の上面に両端が接するように設けた置台整流板とにより、正面通気口から流入した空気を通気部まで案内する通気案内部を形成したことを特徴とする石油燃焼器。
【請求項2】
前記置台整流板には、燃焼筒の中心から石油燃焼器本体の中心よりの位置に、正面通気口に対して長手方向が平行となるように風向板を設けたことを特徴とする請求項1記載の石油燃焼器。
【請求項3】
前記芯内筒の底部に集風板が設けられると共に、該集風板は、芯内筒の底部に差し込まれる円筒状の差し込み部と、該差し込み部の下部に形成され、芯内筒の底部と置台との間に形成されている通気部から流入する空気を芯内筒底部に案内する案内片を芯内筒の底部に対して左右に長く形成した集風部とからなることを特徴とする請求項2記載の石油燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106781(P2011−106781A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264481(P2009−264481)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)