説明

石油類と水との分散混合燃料生成具

【課題】 灯油や軽油若しくは重油等の石油類と水とを、少ない負圧で多量に衝突、撹乱、破砕、混合せしめて、微粒化された均質分散混合燃料を生成しえる石油類と水との分散混合燃料生成具の提供。
【解決手段】 断面が円形で所要の断面積と長さを有し、一方側に供給口、他方側に供出口を有するハウジングと、該ハウジング内に略その内径に等しく且所要のピッチ間隔と前傾斜角を以って、而も一周回当り4乃至16等分に所要の間隔の間断部を有する分散混合螺回刃が配置された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石油類と水の如く非相溶性素材を、微粒化と均質分散混合させて、高い燃焼性と大幅な燃費の低減化並びに排出ガスの削減化を可能とする、石油類と水との均質分散混合燃料生成具に関する。
【背景技術】
【0002】
産業活動や生活活動には、石油類やガス類からなるエネルギー源が膨大量に消費されているものであるが、これらエネルギー源は天然資源に依拠しており、且今後は先進諸国より経済規模の大きな新興国の経済成長に伴う消費量の増大化により資源の枯渇化が危惧され、加えてこれら天然資源の産油産出国の政情不安等とも相俟って価格の高騰化が進んでいる。
加えて既に今日までの先進諸国による膨大量の消費に伴い排出され続けて来た炭酸ガス等の温暖化ガスが大気圏内に蓄積され、これによる健康被害の続発はもとより異常気象化が促進されて、過剰高温や過剰低温による農作物の生育不良を初め各地に亘って集中豪雨が頻発し河川の氾濫による農地の冠水や道路及び施設等の損壊も多発している。
【0003】
かかる問題に対しては、エネルギー源たる石油類やガス類の使用低減化と共に、燃焼に伴って発生する炭酸ガスを初めとする温暖化ガスの排出削減化を図ることが、極めて重要な課題とされるに至っている。
この課題への対処策としては、古くから灯油や軽油若しくは重油等の石油類に水を混合させて燃焼させることにより、燃費の低減化や温暖化ガス等の削減化を図る研究が試みられてきたものの、石油類と水との混合物を燃焼させるうえからは、混合される石油類と水、とりわけ水を可能な限り微粒化させ、且石油類と水とを均質に分散混合させることが必須要件とされる。
【0004】
然るに石油類と水とは非相溶性のものであるから、この均質分散混合には従来より乳化剤を用いた化学的結合に依拠していたが、石油類と水との乳化剤による化学的結合所謂エマルジョン化は、却って石油と水と乳化剤とが一体的に結合されてなるため、燃焼性の向上のための水の微爆作用や気化熱の剥奪防止作用も阻害され、燃焼性はもとより安定した燃焼もなされ難い。これがため水の混合割合もせいぜい7乃至8%容量%程度とされ、従って燃費の低減化や排出ガスの削減化も十分に期待できない。
【0005】
これがため発明者等は長期に亘って鋭意研究を重ねた結果、相互に非相溶性の石油類と水とを短時且急速に衝突させ撹乱させ破砕させ、且混合分散させる均質分散混合モジュールを使用することにより、可成りの短時間内微粒化と均質分散混合が保持された分散混合燃料が生成しえるとともに、この分散混合燃料は微爆作用の積極的な発揮と、気化熱の剥奪も無く高い燃焼性と安定した燃焼がなされることを究明し、既に特願2011−33886号並びに特願2011−53529号でその内容を開示している。
【0006】
ところでかかる均質分散混合モジュールは、燃費の低減化や排出温暖化ガス等の削減化に大きく寄与しえることから、極めて広範囲に亘る燃焼装置や機器類に使用されることとなり、使用される均質分散混合燃料もその使用目的によって灯油や軽油或いは重油等それぞれに比重や粘度の異なる石油類と水との均質分散混合や、燃焼エネルギーの多寡に伴い均質分散混合燃料生成量も著しく増減化が要請され、更には近年に至って石油類に代えて都市ガスやLPG或いはLNG等のガス類と水との均質分散混合燃料も研究されつつある。
そして既に開発済の均質分散混合モジュールの如く、相互に混合された石油類と水との混合物では粘度や比重もそれぞれに異なり、これを微粒化と均質分散混合させるために、供給された混合物を略直交方向に膨大数に展開形成された微少間隙の衝突、撹乱、破砕区画部を流通させ、若しくは直交方向に分散配置された螺回流路を流通させる技術思想では混合物の組成により負圧も大きく異なり生成量の増減調整も至難である。
これがためその流通方向に沿って衝突させ撹乱させ破砕させたうえ混合させる構成により比重や粘度の相違する石油と水との混合物でも、流通負圧が少なく多量の生成と且微粒化と均質分散混合燃料が生成しえることを解明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は灯油や軽油若しくは重油等の石油類と水とを、少ない負圧で且多量に衝突、撹乱、破砕、混合せしめて微粒化された均質分散混燃料を生成しえる石油類と水との分散混合燃料生成具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明が採用した技術的手段は、断面が円形で所要の断面積と長さを有し且その一方側には石油類と水とが所要の混合割合で混合されたうえ供給する供給口と、他方側には微粒化され均質分散混合燃料を供出する供出口を有するハウジングと、該ハウジング内には略その内径に等しく且所要のピッチ間隔と前傾斜角を以って而も一周回当り4乃至16等分に所要の間隔の間断部を有する分散混合螺回刃が配置されてなる構成や、該ハウジング内に断面が円形で所要の断面積と長さで、且透水性素材からなる多数本の微粒化分散混合基体が積層されてなるとともに、この微粒化分散混合基体内には、所要のピッチ間隔と前傾斜角を以って分散混合螺回刃が配置されてなる構成、或いは該ハウジング内に装着しえる口径と所要の幅の保持環と、該保持環内には所要の断面積と且断面形状が円形、三角形、四角形若しくは多角形からなる中空状の衝突、撹乱、破砕、混合細管が積層されてなり、且この保持環が適宜数に連接充填された構成、更には該ハウジング内に、その内径に等しく且その織密度が10乃至400メッシュの金属線条で而も平織り、斜文織り、重ね織、搦み織り等からなる衝突、撹乱、破砕、混合織成材を、その粗密を適宜に組合せて積層配置させた構成に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述の如き構成からなるものであって、断面が円形で所要の断面積と長さを有し且その一方側には石油類と水とが所要の混合割合で混合されたうえ供給される供給口を有するハウジング内には、略その内径に等しく且所要のピッチ間隔と前傾斜角を以って、而も周回当り4及至16等間隔に所要の間隔の間断部を有する分散混合螺回刃が配置されてなるため、石油類と水とが所要の混合割合で混合され供給されると、該混合物は分散混合螺回刃の前傾斜角と螺回形状に沿ってハウジング内を供出口方向に流動し、且一周回当り4乃至16等分に所要の間隔の間断部が形成されてなるため、該間断部により流動する混合物が陥落流動して強度の衝突力や撹乱力、破砕力とともに混合物が創出されるとともに、積層される他の分散混合螺回刃により供出口に向って流動され、更にこれが繰返されて、石油類と水とが微粒化され均質分散混合燃料が生成される。
加えてかかる構成では、特段の負圧も付加されぬため多量の均質分散混合燃料が生成される。
【0010】
更にハウジング内には、その断面が円形で所要の断面積と長さと、且透水性素材からなる多数本の微粒化分散混合基体が積層されてなり、且その内部に所要のピッチ間隔と前傾斜角を以って分散混合螺回刃が配位された構成からなるものであるから、供給口より供給される石油類と水との混合物が多数本の微粒化分散混合基体内に分散流動されるとともに、その分散混合螺回刃毎に衝突、撹乱、破砕されたうえ該微粒化分散混合基体からは螺回流となって流出するため、全体が容易に混合分散されたうえ、その供出口より微粒化され均質分散混合燃料として生成される。
そしてかかる構成においては、微粒化分散混合基体内に配位された分散混合螺回刃の形成方向を相互に逆方向に配位すると、微粒化及び均質分散混合性が格段に向上する。
【0011】
加えてハウジング内に装着しえる口径と適宜の幅の保持環内には、所要の断面積と断面形状が円形、三角形、四角形或いは多角形からなる中空状の衝突、撹乱、破砕、混合細管が積層されたうえこの保持環を適宜数に連接充填されてなることにより、石油類と水との混合物は、極めて複雑多様に衝突、撹乱、破砕及び混合作用が強力に付加されて、微粒化と均質分散混合性の極めて優れた均質分散混合燃料が生成される。
そして、ハウジング内にその内径に等しく、且その織密度が10乃至が400メッシュに亘る金属線条で、平織りや斜文織り、重ね織り、或いは搦み織等からなる衝突、撹乱、破砕、混合織成材を、その粗密を適宜に組合せ積層させるのみで、比重や粘度の異なる石油類と水とを簡便に微粒化と均質分散混合された均質分散混合燃料が少ない負圧で多量に生成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
断面が円形で所要の断面積と長さを有し、その一方側に供給口、他方側には供出口を有するハウジング内に、該ハウジングに装着しえる口径でその長さが望ましくは10乃至20mmの保持環内に、その断面積が0.8乃至1.0mmで且その断面形状が円形、三角形、四角形、及び多角形からなる中空状の衝突、撹乱、破砕、混合細管が積層されてなり、この保持環が適宜数連接充填された構成。
【実施例1】
【0013】
以下に本発明実施例を図とともに詳細に説明すれば、図1はハウジング内に間断部を有する分散、混合、螺回刃が配置された本発明の説明図であって、ハウジング1はその断面が円形で所要の断面積と長さを有し、且その一方側には石油類と水とが所要の容量割合で混合された混合物2を供給する供給口4が設けられ、且他方側には石油類と水とを微粒化し均質分散混合燃料3を供出する供出口5が設けられている。
そして該ハウジング1の断面積及び長さは、微粒化された均質分散混合燃料3の生成量によっても異なるものであるが、一般的ボイラー等における均質分散混合燃料3の消費量が20乃至300l/min程度の消費の場合では、その直径で略60乃至70mm長さで略150乃至180mm程度の大きさとなる。
【0014】
かくしてなるハウジング1の内部には図2のAに示す如くハウジング1の内径に略等しく所要のピッチ間隔6Aが、望ましくは15乃至45mmで且形成される前傾斜角α即ち6Bが略45乃至80°程度に形成され、更にその周回当り4乃至16等分に所要の間隔の間断部6Cが形成されてなる分散混合螺回刃6が配設されている。
かかる場合に使用される石油類が灯油や軽油或いは重油によって粘度も比重も僅かずつ異なるものであって、灯油の如く低粘度のものにおいては、ピッチ間隔も広く且前傾斜角αも略45乃至60°程度で十分であるが、衝突、撹乱、破砕を促進させるうえからは、間断部6Cとしては略12乃至16等分に多数形成させたものが良い。
尚分散混合螺回刃4に形成される間断部6Cの形成幅は、石油類と水とが混合された混合物を分散混合螺回刃4に沿って、螺回流通させつつ該間断部6Cよりその一部を陥落させて衝突、撹乱、破砕及び混合作用を付加させるものであるから、実質的に石油類と水との混合物が陥落しえる幅であれば良く、実質的にはせいぜい3乃至6mm程度で十分である。尚図2のBは平面説明図である。
【実施例2】
【0015】
本発明の目的達成の手段としては上記構成の他に図3のAに示す如くハウジング1内にその断面が円形で所要の断面積と長さで且透水性素材からなる多数本の微粒化分散混合基体7Cが積層されてなるともとともに、該微粒化分散混合基体7Cの内部には所要のピッチ間隔7Aと前傾斜角β即ち7Bを以って細径分散混合螺回刃7が配位されてなるもので、該構成においては供給口5より供給される石油類と水との混合物2が多数本に積層された微粒化分散混合基体7C内を分散流動されるとともに、この細径分散混合螺回刃7に沿った螺回流動により衝突、撹乱、破砕、混合作用が付加されるとともに、同3図A若しくはBで解るように、所要のピッチ間隔7Aと前傾斜角βの細径分散混合螺回刃7の方向性を変えて配位させることにより、供出口5近傍で分散混合性が格段に向上する。尚微粒化分散混合基体7Cの素材としては粗目の金網筒やプラスチック筒が使用できる。
【実施例3】
【0016】
更に本発明の目的達成の手段として図4に示す如く、断面が円形で所要の断面積と長さを有し、ハウジング1内に装着しえる口径で、望ましくはその長さが10乃至20mm程度の保持環8内に、その断面積が0.8乃至1.0mmで且その断面形状が円形、三角形、四角形及び多角形からなる中空状の衝突、撹乱、破砕、混合細管8Aが積層されてなるもので、かかる保持環8の適宜数を積層させた構成からなるもので、供給口4からの石油類と水との混合物2は、多数本で且その断面形状も多様な中空状の衝突、撹乱、破砕、混合細管8A内を衝突され破砕されて流通し、而して連接充填される次の保持環8内に積層された多数本で且その断面形状も多様で、而も相互に整合しない衝突、撹乱、破砕、混合細管8A内を半強制流通されることにより、相互に非相溶の石油類と水とが微粒化され、且均質分散混合がなされるもので、該構成は灯油、軟油或いは重油に至る広範囲の石油類と水との微粒化や均質分散混合にも好適である。
【実施例4】
【0017】
本発明の目的を達成する手段の、いま一つ好適なものとしては図5に示す如く衝突、撹乱、破砕、混合織成材9を使用するものであって、該手段はハウジング1の内径と略等しい断面積と形状で、且十分に強靭で剛性を有する織成可能な金属線条9Aを用いて、その織成密度9Bが最大10メッシュから最少400メッシュ程度の織成密度で、ハウジング1の供給口4から供給される石油類と水との混合物2の流通に際して、十分に衝突させ撹乱させ破砕させ且均質な混合作用を付与せしめ、併せて石油類と水とを微粒化させるうえから粗目な織成密度と立体構造の織物として重ね織や搦み織が望まれ、更に均質分散混合や微粒化を促進させるうえからは、緻密な織成密度即ち平織や斜文織等が望まれる。
【0018】
そしてハウジング1内への具体的配設に際しては、石油類と水との混合物2が流通される供給口4から供出口5への流通方向に対応するよう粗目織成密度、中間織成密度、及び緻密密度となるように積層配位させることが望ましい。
無論かかる場合において、積層配位される衝突、撹乱、破砕混合織成材9や、織成のための金属線条9Aの太み、或いは織成密度9B等は、流通される石油類と水との混合物2の組成或いは所望する微粒化程度や均質分散混合度合等により適宜に決定すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0019】
所望のハウジング内に分散混合螺回刃や衝突、撹乱、破砕、混合細管等が配設のうえ石油類と水との混合物を流通させることにより比重や粘度の相違する石油類と水とを、微粒化して均質分散混合燃料を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 ハウジングの見取図である。
【図2】 分散混合螺回刃の説明図である。
【図3】 細径分散混合螺回刃の説明図である。
【図4】 衝突、撹乱、破砕、混合細管が積層された保形環の説明図である。
【図5】 衝突、撹乱、破砕、混合織成材の積層配設説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ハウジング
2 混合物
3 微粒化均質分散混合燃料
4 供給口
5 供出口
6 分散混合螺回刃
6A ピッチ間隔
6B 前傾斜角
6C 間断部
7 細径分散混合螺回刃
7A 細径分散混合螺回刃のピッチ間隔
7B 細径分散混合螺回又は前傾斜角
7C 微粒化分散混合基体
8 保持環
8A 衝突、撹乱、破砕、混合細管
9 衝突、撹乱、破砕、混合織成材
9A 金属線条
9B 織成密度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形で所要の断面積と長さを有し、一方側に石油類と水とを所要割合で混合させた混合物を供給する供給口と、他方側に微粒化と均質分散混合により生成された均質分散混合燃料を供出する供出口を有するハウジング内に、その内径に等しく且所要のピッチ間隔と前傾斜角を以って、而も一周回当り4乃至16等分で所要の間隔の間断部を有する分散混合螺回刃が配置された、石油類と水との分散混合燃料生成具。
【請求項2】
断面が円形で所要の断面積と長さを有し、一方側に石油類と水とを所要割合で混合させた混合物を供給する供給口と、他方側に微粒化と均質分散混合により生成された均質分散混合燃料を供出する供出口を有するハウジング内に、その断面が円形で所要の断面積と長さで且透水性素材からなる多数本の微粒化分散混合基体が積層され、而もこの微粒化分散混合基体内には、所要のピッチ間隔と前傾斜角を有する細径分散混合螺回刃が配位されてなる、石油類と水との分散混合燃料生成具。
【請求項3】
断面が円形で所要の断面積と長さを有し、一方側に石油類と水とを所要割合で混合させた混合物を供給する供給口と、他方側に微粒化と均質分散混合により生成された均質分散混合燃料を供出するハウジング内に、該ハウジング内に装着しえる口径で所要長さと幅の保持環内に、その断面が円形、三角形、四角形及び多角形からなり且その断面積が0.8乃至1.0mmの中空状の衝突、撹乱、破砕、混合細管が積層されてなり、この保持環が適宜数連接充填されてなる、石油類と水との分散混合燃料生成具。
【請求項4】
断面が円形で所要の断面積と長さを有し、一方側に石油類と水とを所要割合で混合させた混合物を供給する供給口と、他方側に微粒化と均質分散混合により生成された均質分散混合燃料を供出する供出口を有するハウジング内に、強靭で剛性を有する金属線条で織成密度が10乃至400メッシュに織成された衝突、撹乱、破砕、混合織成材を、供給口から供出口への流通方向に対応するよう粗目組成密度、中間織成密度及び緻密密度となるよう積層配位させてなる、石油類と水との分散混合燃料生成具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−67766(P2013−67766A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223391(P2011−223391)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(511244403)
【Fターム(参考)】