説明

石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステム

本発明は、統合制御サブシステムを備える石炭ガス化システムを提供するものである。前記システムは、概して、一つ以上の処理ゾーンおよび一つ以上のプラズマ熱源を有するガス化反応槽(もしくは変換機)と、固形残渣取り扱いサブシステムと、ガス質調整サブシステムと、総体的な石炭のエネルギー変換に関するエネルギー収支を管理し、最適な設定点において、ガス化処理のすべての側面を維持するための統合制御サブシステムとを、様々な組み合わせで備える。前記ガス化システムはまた、熱回収サブシステムおよび/または生成ガス調節サブシステムを任意に備えていてもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭のガス化に関し、特に石炭を特定の組成を有するガスへと変換するための処理および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な等級の石炭は、ガス化のための主要原料として使用することができる。これには、高硫黄含有量を有する排出物を生成するために石炭火力発電機の使用には適していない、低級の高硫黄石炭も含まれる。石炭が採鉱され、分類され、洗浄された後に残った不要な石炭粒子および沈泥もまた、ガス化に使用できる。石炭は、通常、酸素および蒸気によってガス化され、一酸化炭素、水素、二酸化炭素、気体硫黄化合物および微粒子を含んだ、いわゆる「合成ガス」を生成する。前記ガス化ステップは、通常、約650°Cから1200°Cの間の温度で、また大気圧下、あるいはより一般的には、約20から100気圧の高圧下で実行される。
【0003】
いくつかの異なるタイプの石炭があり、それぞれが地質学的歴史に起因する、異なる性質を示している。石炭の発達の程度は、石炭の「階級」として見なされる。泥炭は、石炭形成環境の成長ゾーンの直下にある植物質の層である。前記植物質は、改質がごく僅かであり、生きた植物の根を含む。褐炭は、地質学的に非常に若い(40,000年未満)。それは柔らかく、繊維質であり、大量の水分を含んでおり(通常、約70%)、エネルギー含量が低い(8−10MJ/Kg)。亜瀝青炭は、性質が褐炭から軟炭にわたる、主に蒸気発電のための燃料として使用される石炭である。等級の下端においては、くすんだ、暗褐色から黒で、軟質で、砕けやすく、等級の上端では明るく、漆黒で、硬質で、比較的強度である。亜瀝青炭は、20から30重量%の固有水分を含む。水分を含み、無鉱物質状態での亜瀝青炭の熱含量は、20から28MJ/kgにわたる。黒炭の材齢は、6500万年−1億500万年から最大2億6000万年にわたる。これらは、より硬質で、より光沢があり、3%未満の水分を含み、最大約24−28MJ/kgのエネルギーを含む。無煙炭は、実質的に水分を含まず、非常に低い揮発性成分が非常に低いため、煙をほとんどもしくは全く出さずに燃える。それは、最大約32MJ/kgのエネルギーを含む。
【0004】
1917年に開発されたハーバー・ボッシュ法によって、合成ガスは生成されている。この処理は、例えば、水素および一酸化炭素を生成するための一次反応における蒸気を伴った石炭のような炭素に反応する基本的な改質反応による。合成ガスの水素/一酸化炭素の割合は、石炭供給の性質によって、大きく異なる。しかしながら、メタン1モルが蒸気によって改質された場合、例えば、水素3モルおよび一酸化炭素1モル、すなわち、水素/一酸化炭素の割合が1/3というように、水素の多く含まれる合成ガスが生成される。一酸化炭素が蒸気と反応し、二酸化炭素および、さらに水素を形成する、水性ガス転化反応として知られる、競合二次反応もまた起こる。高温およびより低い圧力が一次反応を好むため、この水性ガス転化反応は二次反応となる。
【0005】
石炭は多くの場合硫黄化合物を含むので、例えばガス・タービンで発電するためなどの使用に先立ち、硫黄を生成燃料ガスから除去する、混じりけがない生成燃料ガスを生成するための、石炭のガス化処理を提供する試みがなされる。さらに、ガス化ゾーンからのガスは、炭塵および飛灰、気化灰やアルカリ等といった、その他多くの不純物を取り除くために、純化することができる。
【0006】
プラズマトーチ技術は、石炭ガス化処理に用いられている。地球大気圏に再び入ってきた宇宙船が経験した極度な高温状態の模擬実験をするための新規プラズマ発生器が開発された1960年代を通して、プラズマトーチ技術は大幅に改良された。 燃焼バーナー火炎と異なり、プラズマアークトーチは酸素なしで機能することができる。プラズマアークトーチは、ワーキング・ガスの電気解離およびイオン化によって作られ、プラズマアーク中心線で高温を確立する。市販プラズマトーチは、持続期間にわたって好適な高温を作業領域に発生することが可能であり、約100kWから6MWを超える出力において使用可能である。
【0007】
プラズマは、少なくとも部分的にイオン化された高温発光ガスであり、ガス原子、ガスイオン、電子から形成されている。この方法によって、プラズマはいずれのガスからも生成される。ガスが中性(例えば,アルゴン、ヘリウム、ネオン)、還元(例えば、水素、メタン、アンモニア、一酸化炭素)、または酸化(例えば、酸素、二酸化炭素)である可能性があるため、これによって、プラズマの化学反応に対して優れた制御が行われている。バルク相において、プラズマは電気的に中性である。熱プラズマは、ガスが電気アークを通過することによって形成される。電気アークは、アークを通過するマイクロ秒以内で、抵抗および放射加熱をすることによって、非常に高い温度まで
急速にガスを加熱するようになる。典型的なプラズマトーチは、管の中心に同軸上に設置された電極を備えた、ワーキング・ガスが通る細長い管から成る。当該トーチのひとつには、陽極としての中心電極の先と陰極としての外部電極の先との間のすき間にわたって、直流高電圧が加えられている。陽極と陰極との間のすき間のガスを流れる電流により、イオン化ガス分子から成る高温電磁波エネルギーのアークが形成される。空気を含んだ、一切のガスもしくはガス混合物は、プラズマトーチを通過することができる。
【0008】
米国特許番号4,141,694;4,181,504;4,208,191;4,410,336;4,472,172;4,606,799;5,331,906;5,486,269および6,200,430を含んだ、様々な用途に使用される、合成ガスの生成に関する石炭のガス化のための異なる技術に関連している特許もまた多数存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
石炭のガス化の間に生成されたガスは、非常に高温で汚れており、使用可能な製品に変換するための追加処理を必要とする。例えば、洗浄装置および乾燥ろ過作用浄水システムは、ガス化の間に生成されたガスから粒状物質および酸化ガスを取り除くために、頻繁に使用される。ガス化処理の間に生成されたガスを処理するシステムを含む、多数のガス化システムが開発されている。
【0010】
高度燃料電池技術を備えた石炭のガス化のための統合は、様々な石炭燃料の質に適用する、柔軟性があり、頑丈で、継続的に作動する改質システムを必要とする。プラズマ技術に組み込んだガス化システムは、硫黄を多く含んだ石炭を含む、多種多様の石炭供給に対応する可能性を提供する。反応槽におけるエネルギー必要量を最小化すると同時に、燃料ガス構成を最適化することによって、部分的な酸化条件を反応槽の中へ取り込むことで、最良のガス化構造の提供が見込まれている。
【0011】
合成ガスは、電気の形でガスをエネルギーへと変換、燃料電池または化学原料のような化学的な応用など、様々な用途に利用することができる。合成ガスを直接電気へと変換するために使用される機器は、一般的にガス・タービンおよびガスエンジンを備えている。これらの機械は、非常に厳密な特性範囲内で機能するように設計されており、多くの場合、ガス特性における変化に対して非常に敏感である。エンジン運転の効率性への影響に加え、ガス特性の逸脱はエンジン運転において悪影響である場合さえある。例えば、ガス特性における変化は、エンジン内の潤滑油防腐特性と同様に、排気、効率、ノック、燃焼安定性にも影響する可能性がある。従って、これらの合成ガスを利用した機械は、ガスの特性が指定限界内で維持されているときに、最も効果的に機能する。
【0012】
この背景情報は、本発明と潜在的な関連性があると出願者によって考えられている周知の情報を明らかにすることを目的として、提供されている。必ずしも、承認が意味されるというわけではなく、また、これまでの情報のいずれかが本発明に対して不利な従来技術を構成すると解釈すべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステムを提供することであって、一つ以上の処理ゾーンと、一つ以上のプラズマ熱源と、調整可能な供給速度で石炭をガス化反応槽に加えるための、一つ以上の石炭入力手段と、調整可能な供給速度で処理添加物をガス化反応槽に加えるための、一つ以上の処理添加物入力手段と、出力ガスのための一つ以上の排気口と、固形残渣取り扱いサブシステムとを備えたガス化反応槽と、ガス質調整サブシステムと、データを生成するための一つ以上のシステムパラメータを測定するためのシステム監視手段と、前記システム監視手段によって生成された前記データを収集および分析するための演算手段と、システム全体に配置されている一つ以上のシステム調整装置に変化をもたらすように、適切な信号を送るための出力手段とを有し、前記制御システムパラメータを監視し、前記一つ以上のシステム調整装置に変化をもたらすように、前記適切なシステム調整装置へと信号を送り、それによって特定の構成の生成ガスを作り出す、石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステムとを備えた、統合制御システムとを備える。
【0014】
本発明の一実施例において、前記ガス化システムはまた、熱回収サブシステムおよび/または生成ガス調節サブシステムを任意に備えていてもよい。
【0015】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付図に対して参照されている以下の詳細説明において、より明白になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
定義されないかぎり、ここに使用される全ての技術および科学的用語は、本発明に属する当業者により一般的に理解される同等の意味を有する。
【0017】
本明細書では、「約」という用語は、通常値の+/−10%の差異を言う。そのような差異は、特別に記載されているかどうかにかかわらず、ここに定義されるいかなる任意の値にそのような差異が常に含まれると理解されるものである。
【0018】
本発明の目的において、「合成ガス」または「合成用ガス」の用語は、ガス化プロセスの生成物を示し、メタンや水などのガス状成分に加え、一酸化炭素、水素、二酸化炭素を含んでもよい。
【0019】
本明細書では、「原料」の用語は、これらに限定されないが、あらゆる等級の石炭(石炭火力発電機の使用に適さない低質高硫黄炭などを含む)を含む。
【0020】
「固形残渣」の用語は、石炭ガス化の固形副生成物を意味する。そのような固形残渣は、通常シリコン、アルミニウム、鉄、酸化カルシウムなどの炭素質材料に含まれる無機難燃材料を有する。固形残渣の例には、炭化物、灰、およびスラグが挙げられる。
【0021】
「スラグ」は、炭素質材料に含まれる無機難燃材料を有する未浸出(non−leachable)で無害のガラスの様な材料である。高温度状況(1300℃〜1800℃)において、鉱物質は、融解される。融解されたスラグは、急冷または冷却時に、ガラス状物質を形成する。この材料は、多くの商業用途に適している。
【0022】
本明細書において、「交換気」の用語は、本発明に従い、ガスと空気の熱交換器を用いて高温生成ガスから顕熱を用いて熱せられた後の空気をいう。
【0023】
図1から10を参照に、本発明は、通常10の数字を用いて引用され、統合制御サブシステム200、図11から図16に図式的に示されている典型的な実施例を有する石炭ガス化システムを備える。このシステムは、様々な組み合わせで、通常、図15で見られるような、一つ以上の処理ゾーンおよび一つ以上のプラズマ熱源を有するガス化反応槽14(または変換機)と、固定残渣処理サブシステム16と、ガス質調節サブシステム20と、石炭の転化の全体エネルギー収支を管理し、ガス化プロセスの全ての要素を最適な設定値で維持するための(図11から16に具体的に描写されている)統合制御サブシステム200を有する。また、ガス化システムは、熱回復サブシステム18および/または生成ガス制御サブシステム22(例:図1の実施例に見られる均質化チャンバー25、図1および2の実施例に見られるガス圧縮機21、および/または図4の実施例に見られるガス貯蔵装置23など)を随意に備える。
【0024】
統合制御サブシステム200を用いた石炭ガス化システム10の様々な実施例は、石炭を特定組成のガスへと変換する。特に、本発明は、下流側の用途に適した組成を有する生成ガスへの石炭の効果的な変換を可能にするシステムを備える。例えば、ガス・タービン(すなわち図1から7の参照24)の燃焼を介して、生成ガスを、発電に使用する目的、または、燃料電池用途(すなわち図4および6から10の参照26)に使用する目的の場合、それぞれのエネルギー発生器の燃料として使用することができる生成物を入手することが望ましい。もう一つの手段として、生成ガスが、さらなる化学的プロセス(すなわち図4のオプション28)に原料として使用される場合、組成は、特定の合成的応用に最も有用なものとなる。
【0025】
図11から16を参照に、統合制御サブシステム200は、一つ以上のシステムパラメータ(例:ガス組成(%CO、%CO、%Hなど)、ガス温度、ガス流速など)を測定し、測定したシステムパラメータ値からデータを生成するシステム監視手段202、および、システム監視手段202から得られたデータを収集および分析し、一つ以上のシステム制御装置206(すなわち図15および16の典型的な調節装置206−1、206−2、206−3、および206−4)に適切な信号を出力する(図16の典型的なロジックボックス30、32、34により具体的に描写される)演算手段204をを備える。統合制御サブシステム200は、制御手段202を通じ一つ以上のシステムパラメータを監視し、反応設定点の維持に必要な調節を行うために、適切なシステム調節装置206に、信号を送信することで石炭の転化のエネルギーを管理し、最適な設定点において処理を維持する。システム10の様々な実施例に従い、制御サブシステム200を使用することにより、特定の流量および組成を有する生成ガスの生成が可能になる。
【0026】
図12を参照し、統合制御サブシステム200、および特にその演算手段204は、通常一つ以上の演算処理装置208と、様々な監視手段202から現在のシステムパラメータ値を受信するための一つ以上のモニター入力210と、新しい、あるいは更新済システムパラメータ値を、様々な調節装置206へ伝える一つ以上の制御装置出力212から構成される。また、演算手段204は、様々な既定および/または再調節されたシステムパラメータ、セットまたは希望システム操作範囲、システム監視および制御ソフトウェア、操作データなどを記憶するための、一つ以上のローカルおよび/またはリモート記憶装置214(例:ROM、RAM、リムーバブル・メディア、ローカルおよび/、またはネットワークアクセスメディアなど)を備える。随意に、また演算手段204は、プラズマガス化プロセスシミュレーションデータ、および/または図28に典型的に示されているシステムパラメータ最適化と、モデリング手段216に、直接あるいは、様々なデータ記憶装置を介し、アクセス出来る。また、演算手段204は、制御手段200(システム更新、メンテナンス、修正、新システムモジュールおよび/または装置への適合など)への管理用アクセスのための一つ以上のグラフィカル・ユーザー・インターフェースおよび入力周辺機器218、および、データと情報を外部(例:モデム、ネットワーク接続、プリンターなど)へ送信するための様々な出力周辺機器220を備える。
【0027】
図11から14を参照に、本発明の制御サブシステム200は、石炭の異なる等級の組成、または石炭の同種の源泉におけるいかなる自然変動に関係なく、生成ガスおよびシステムの副生成物(商業スラグ、ガス回復、水蒸気発生など)の最適な生成をもたらすために、反応槽14からのガス流量とガス組成が、随意にシステム10全体を通し、所定の許容範囲内に留まることを確認する。例えば、当業者に周知である石炭の異なる等級が多くある。一つの等級内でさえ、石炭は、多様性を示す複合材料である。本発明の制御側面、はそのような多様性を補うために、それを認識し、調節を行うことが出来る。温度、流れ、および組成を含む生成ガスのパラメータは、監視され、反応物質のアークは、合成ガスの最終用途により定義される既定の許容範囲内の生成ガスのパラメータを維持するために変化する。
【0028】
本発明の統合制御サブシステム200は、補正フィードバックを提供、それにより、一つ以上の生成ガスの流速、温度、および構成を監視し、一つ以上の石炭入力レート、酸素入力レート、蒸気入力レート、およびプラズマ熱源に供給される電力量が修正される。調節は、生成ガスの流速、温度、および/または構成における測定された変更に基づき、これらが許容範囲内に留まることが出来るようにする。一般的に、生成ガスの流速、温度および/または構成の範囲は、特定の下流側の用途用のガスを最適化するために選択される。
【0029】
一実施例において、本発明の処理は、ガス化処理を行うため、また、石炭が自然変動を示す組成の場合においても、処理からのガス流量と組成が許容範囲内にとどまることを確実にするためにプラズマ熱の可制御性を同時に使用する。他の実施例において、処理により、単位時間あたりに処理される総炭素量を出来るだけ一定に保ち、単位時間あたり反応槽14に出入りする総熱量が、処理限界内に保たれることを確実にするためにプラズマ熱を利用することが可能になる。また、統合制御サブシステム200は、図14に具体的に描写されている通り、固形残渣取り扱いサブシステム16、ガス質調節サブシステム20、熱回収サブシステム18、および/または生成ガス調節サブシステム22のうちいずれかを介し生じる処理を監視、および/または調節するために設定されてよい。
【0030】
石炭のガス化は、本発明のガス化反応槽14内で行われ、その様々な実施例は、図17から23に示されている。一つ以上の処理ゾーンおよび、一つ以上のプラズマ熱源15以外に、ガス化反応槽14は、ガス化処理を最適な設定点に維持するために必要な、36に記載の石炭をガス化反応槽14内に流入する手段と、38に記載の蒸気、および酸化添加物などのプロセス添加物を追加する一つ以上の手段を有する。ガス状の生成物は、40に記載の通り、一つ以上の出力ガス出口を通り、ガス化反応槽14に出て行く。
【0031】
一実施例において、蒸気および/または酸素などのプロセス添加物の入力に併せたプラズマ熱の適用は、ガス組成の管理に役立つ。また、システム10は、石炭の気化に必要な高温熱を提供し、および/または副生成物の灰を溶解し、商品価値のあるガラスのような製品へと変化させるために、プラズマ熱を使用する。
【0032】
また、本発明の石炭ガス化システム10の様々な実施例は、ガス化プロセスの固形副生成物の制御手段を提供する。特に、本発明は、石炭からエネルギーへと変換する処理により生じる固形生成物および残渣を、低浸出性を有する陶化均質体へと変換するための固形残渣処理サブシステム16を提供する。ガス化処理の固形生成物は、炭化物、灰、スラグ、あるいはその組み合わせの形をとる。
【0033】
具体的に、固形残渣取り扱いサブシステム16は、調節チャンバー42、プラズマ熱処理手段44、スラグ出力手段46および制御手段(システム10の全体的な制御サブシステム200に動作可能に接続される場合がある)を有し、それにより、固形を溶解し、融合し、化学的に反応させ、チャンバー42から流れた際に、高密度で、未浸出なシリンコン金属固形スラグに冷却する高密度なシリコン金属ガラス質材料を形成するために、プラズマ熱が使用される。特に、本発明は、統合制御サブシステムを用いて、完全な溶融と、均質化を促進するプラズマ発熱率および固形残渣入力率を制御するために、固形残渣からスラグへの変換が最適化される固形残渣調整チャンバーを提供する。
【0034】
また、本発明の石炭ガス化システム10の様々な実施例は、高温生成ガスから熱を回収する手段を提供する。この熱回収サブシステム18(その典型的な実施例は図24から26、29、30に具体的に描写されている)は、高温生成ガスを一つ以上のガス/空気熱変換機48へ移送する手段を含み、それにより高温生成ガスが空気、または、酸素あるいは酸素富化空気などの酸化その他の酸化体を加熱するために使用される。熱風(あるいは他の酸化体)の形で、回復された熱は、それから随意にガス化処理の熱を提供するために使用され(図24および25を参照)、それにより、ガス化処理を行うために、一つ以上のプラズマ熱源により提供されなければならない熱量を減少する。また、回収された熱は、工業および住宅暖房用途に使用される。
【0035】
随意に、熱回収サブシステム18は、例えば、ガス化反応(図24および26を参照)におけるプロセス添加物として使用できる蒸気を発生させる、あるいは、発電するための蒸気タービンを回すことのできる、一つ以上の熱回収蒸気発生器(HRSG)50をさらに有する。
【0036】
また、図29および30で見られるように、熱回収サブシステム18は、プラズマ熱源冷却処理53、スラグ冷却および取り扱い処理55、GQCS冷却処理61を介してなど、他の様々なシステムの構成および処理から、熱を抽出する追加熱回収サブシステムを含む。また、熱回収システム18は、システム10を介し、エネルギー伝達を最適化するためにシステムの全体制御サブシステム200と動作可能に接続されるフィードバック制御システムを有する(例:図13および14参照)。
【0037】
また、本発明の石炭ガス化システム10の様々な実施例は、ガス質調節サブシステム(GQCS)20、または、石炭ガス処理の生成物を特定の特性の出力ガスへ変換するための、そのガス質調節手段(図1に詳細に説明された典型的な実施例)を提供する。生成ガスは、下流側の用途に必要な特性を有する出力ガスを生成するための特定の一連の処理過程の条件下で、GQCS20により誘導される。GQCS20は、例えば、粒状物質54(例:バグハウスなどを介し)、酸化ガス(例:HSの除去手段56、および見込まれる少量のHClのためのHCIスクラバー57などの随意のHCI除去手段)、および/あるいは重金属58を合成ガスから除去、あるいは、それがシステムを通る際にガスの湿度と温度を調節することを含む処理過程を行う構成を有する。処理工程の存在および順序は、石炭の構成、および、下流側の用途の出力ガスの特定の組成により決定される。また、ガス質調節システム20は、GQCS処理を適切化するために、システム10の全体の統合制御サブシステム200に動作可能になるように接続される統合制御サブシステムを有する(例:図13および14を参照)。
【0038】
また、石炭ガス化システム10の様々な実施例は、22に記載される通り、例えば生成ガスの化学的組成を均質にし、ダウンストリームの要件を満たすために、生成ガスの流量、圧力および温度などの他の特性を調節し、生成ガスを調節するための手段22を随意に提供する。この生成ガス調節サブシステム22により、定義された特性のガスの継続的で一定した流れが、ガス・タービン24または、エンジン、燃料電池応用26などの下流側の用途に送られることが可能になる。
【0039】
特に、本発明の生成ガス調節サブシステム22は、一貫した出力組成の均質ガスに到達する十分なガスの滞留時間に対応するために設計された寸法を有する均質化チャンバー25(図1)あるいは、同類のもの(図1および2の圧縮機21、図4のガス貯蔵装置など)を備える。本発明の生成ガス制御システムの他の要素は、下流側の用途の性能要件を満たすように設計されている。また、ガス調節システム22は、動作可能なように、この処理のエネルギー収支および出力を最適化するために、システム10の全体の統合制御サブシステム200と接続する統合フィードバック制御システムを備える(図13および14参照)。
【0040】
これから図5から10を参照に、当業者は、様々な実施例において、本発明のシステム10および統合制御サブシステム200が、多くのエネルギー発生および、数々の単独および/あるいは併合した下流側の用途を有する変換システムに使用されることを理解する。例えば、図5の典型的な実施例において、統合ガス化複合発電(IGCC)システムであるシステム10は、一つ以上のガス・タービン24に使用する合成ガスと、一つ以上の蒸気タービン52に使用するため、一つ以上のHRSG50を介し、ガス・タービン24に関連した合成ガスおよび排出ガスを共に冷却することにより生み出された蒸気と、を供給することにより、出力エネルギー(例:電気)を生成することができる。
【0041】
図6の典型的な実施例において、システム10は、統合ガス化複合発電(IGCC)システムと、固体酸化物燃料電池システム26Sを組み合わせ、後者は、エネルギー(例:電気)を生成するために、合成ガスの水素が豊富な副生成物を使用する。
【0042】
図7の実施例において、システム10は、統合ガス化複合発電(IGCC)システムと、溶融炭酸塩型燃料電池システム26Mを組み合わせ、後者は、図6のように、エネルギーを生成するために、合成ガスの水素豊富な副生成物を使用する。
【0043】
図8の典型的な実施例において、システム10は、図6のように、固体酸化物燃料電池システム26Sと、合成ガスおよび燃料電池出力から熱を回復する一つ以上のHRSG50により生成された蒸気により活性化された一つ以上の蒸気タービン52を組み合わせる。
【0044】
図9の典型的な実施例において、水性ガスシフト反応槽59は、固定酸化物燃料電池システム26Sに使用される水素豊富な合成ガスを提供するために、図8の実施例に追加される。
【0045】
図10の典型的な実施例において、図9の固体酸化物燃料電池システム26Sは、溶融炭酸塩型燃料電池システム26Mにより置換される。
【0046】
当業者には明らかなように、システム10の上記実施例は、他のそのようなシステム構造および組み合わせが、本発明の開示の範囲および精神から逸脱することなく提供されるものであると、当業者が理解するように、制限的な意図はない。
【0047】
統合制御サブシステム
上記に簡単に示したように、本発明システムは、統合制御サブシステム200を含む。制御サブシステム200は、データを生成するシステムパラメータを測定するためのシステム監視手段202と、システム監視手段202によって生成されたデータを収集および分析するための演算手段204(例:図16のロジックボックス30、32、34)と、システム全体に配置されている一つ以上のシステム制御装置の変化に影響する、適切な信号を送るための出力手段とを備える。(例:図15および16の制御装置206−1,206−2、206−3および206−4)。統合制御サブシステム200は、システムパラメータを監視し、適切なシステム調整装置206に信号を送って、システム10内で測定されたパラメータに関連して取得されたデータに応えて必要とされる様々な動作パラメータおよび条件に対してリアルタイム調整ができるようにする。一実施例において、統合制御サブシステム200は、石炭をエネルギーへと変換するエネルギー収支を管理するために、フィードバック制御システムを提供して、反応設定点を維持し、それによって、特定の組成を有するガスを生成するために、最適な反応条件のもとでのガス化処理の実行が可能となる。
【0048】
総体的な石炭のガス変換に関するエネルギー収支が決定され、現在のガス化システムを使用して実現される。全体エネルギー収支の決定に影響を与える幾つかの要素は、石炭のBTU値および組成、生成ガスの特定の組成、生成ガスに許可された差異の程度、および入力コスト対出力値である。反応物質(例えば、プラズマ熱源15および/または44のための電源、酸素や蒸気といった処理添加物38、石炭中の吸着剤の率)に対する継続的な調整は、設計仕様により査定および最適化された全体エネルギー収支アークによる手段で実行することができる。
【0049】
従って、本発明の制御サブシステム200は、エネルギー収支を管理し、許容範囲内で反応設定点を維持する一方で、処理が効率的な方法で行われていることを確認するために、処理のすべての側面を同時に制御するための手段を提供している。従って、リアルタイムコントローラーは、統合的な方法で、処理のすべての側面を同時に制御する能力を備えている。
【0050】
反応槽14からの生成ガスの組成および流れは、反応環境を制御することによって、所定の許容範囲内で制御される。温度は、反応槽14に注入される石炭ができるだけ安定した環境に遭遇することを確実にするため、大気圧力で制御される。本発明の制御サブシステム200は、反応槽14に投入される、蒸気、酸素の量を制御するための手段を提供している。
【0051】
設定点を維持するために調整されうる動作パラメータは、石炭供給速度、処理添加物供給速度、特定の圧力を維持するための誘導送風機への電源供給、およびプラズマ熱源への電源供給および位置を含む(例:プラズマトーチ15、44)。これらの制御側面は、各パラメータに関連してさらに検討される。
【0052】
図13および14を特に参照して、上記において簡単に検討された通り、統合制御サブシステム200は、監視手段202を介して、様々なシステムパラメータを監視し、
調節手段206を介して、エネルギー収支を管理し、特定の許容範囲内の処理の各側面を維持するために、これらのパラメータに対する様々な変更を実施するために、前記システム10全体にわたって統合されていてもよい。以下で詳細に検討されるパラメータは、一つ以上のプラズマガス化槽14、固形残渣取り扱いサブシステム16、プラズマ熱源15、およびスラグ処理熱源44、熱回収サブシステム18(例:ガス/空気熱交換器48および/またはHRSG50)とそれに関連した処理添加物入力38、一次および/または二次原料入力36、39(例:炭素を豊富に含有する添加物)、前記GQCS20、均質化チャンバー25、システム10のその他すべての処理要素またはモジュールに関連した処理から生じていてもよい。
【0053】
さらに、演算手段204の様々なローカルおよび/またはリモート記憶装置214を通して、多数の所定および/または再調整されたシステムパラメータ、システム動作範囲、システム監視および制御ソフト、操作上のデータ、および任意でプラズマガス化処理シュミレーションデータおよび/またはシステムパラメータ最適化およびモデリング手段216(例:図28参照)にアクセスすることにより、統合制御サブシステム200は、システム出力を最適化するために、さらにシステム10と相互作用する。
【0054】
システム監視手段
多数の操作上パラメータは、前記システム10が最適な設定点の中で作動しているかどうかを調べるため、定期的にもしくは継続的に、制御サブシステム200のシステム監視手段202を使用して監視することができる。本発明の一実施例において、手段202は、リアルタイムベースで監視するように提供され、それによってシステム10が設定点の許可/許容変動内で動作しているかどうかの瞬時指標を提供する。監視される可能性のあるパラメータは、化学組成、生成ガスの流速および温度、システム10内の様々な点における温度、システムの圧力、およびプラズマ熱源15、44(例:電源および/または位置)に関連した様々なパラメータを含むが、これらに限定されないものを含む。
【0055】
パラメータはリアルタイムで監視され、結果データは、例えば、(例:調節手段206−2を通して)システムに注入された蒸気/酸素(もしくはその他の酸化剤)がさらに必要かどうか、石炭入力速度は(例:制御手段206−1を通して)調整される必要があるかどうか、もしくはいずれかのシステムのコンポーネントにおいて温度または圧力が調節を必要としているかどうか、といったことを調べるために使用される。
【0056】
システム監視手段は、当該サブシステムが存在する場合、必要に応じて、GQCS20、熱回収サブシステム18、固形残渣取り扱い手段16、および生成ガス取り扱いサブシステム22のコンポーネントのいずれにも設置することができる。
【0057】
生成ガスの組成
以前に検討された通り、生成ガスが発電に使用を目的とする場合、エネルギー発電機に電源を供給するための燃料として使用される生成物を取得することが望ましい。この場合、最適なエネルギー収支は、生成されたガスを使用してエネルギーを生み出す効率によって測定される。
【0058】
反応槽14から出る際の、出力ガスの主要な組成は、 一酸化炭素、二酸化炭素、水素、および蒸気と、それより量の少ない窒素である。非常に少量のメタン、アセチレンおよび硫化水素もまた存在する可能性がある。出力ガスの中の一酸化炭素または二酸化炭素の割合は、反応槽14に注がれる酸素の量によって異なる。例えば、一酸化炭素は炭素から二酸化炭素への化学量論的な変換を防ぐために、酸素の流れが制御されるときに生成され、上記処理は主に一酸化炭素を生成するために行われる。
【0059】
生成合成ガスの組成は、特定の用途(例:発電のためのガス・タービン24および/または燃料電池用途26)のために、例えば、応用プラズマ加熱15、酸化剤および/または蒸気処理添加物38間のバランスを調整することで、最適化される。ガス化処理の間の、酸化剤および/または蒸気処理添加物の追加が、変換化学に影響するため、監視手段202において見られるような、合成ガス構成の監視手段を提供することが望ましい。合成ガスの最終用途によって定義された所定の許容範囲内に生成ガスのパラメータを維持するため、例えば、制御手段206を経由するなどして、反応物質の上記入力が変えられる。
【0060】
生成ガスの監視は、ガスモニターおよびガス流量計といったような様々な監視手段202を使用して実現される。ガスモニターは、合成ガスの水素、一酸化炭素、二酸化炭素の含量を測定するために使用され、その値は、図16の典型的なロジックボックス30および32によって説明として描かれているように、様々な制御ステップにおける使用可能である。生成ガスの組成は、概して、ガスが冷却され、粒状物質を除去するための調整ステップを経た後測定される。
【0061】
生成ガスは、当業者にとって周知の方法を使用して、サンプリングされ、分析される。生成ガスの化学構成を定義するために使用されるひとつの方法は、ガス・クロマトグラフィー(GC)分析によるものである。これらの分析のサンプル点は、システム全体にわたって配置されている。一実施例において、ガス組成は、ガスの赤外線スペクトルを測定するフーリエ変換アルゴリズム(FTIR)アナライザーを使用して測定される。
【0062】
一実施例において、温度、流速、組成といったような生成ガスのパラメータは、反応槽14の軸通気孔40に設置された監視手段202を通して監視することができる。別の実施例において、サンプリングポートはまた、生成ガス取り扱いシステムの中のどの位置に設置されてもよい。以前に検討されたように、生成ガスの最終用途によって定義された所定の許容範囲内に生成ガスのパラメータを維持するため、反応物質の入力を変化させるために、制御手段206は提供される。
【0063】
本発明の一側面は、排出物の組成を確定することにより、ガス化処理の間に添加する酸素が過剰または不足していないかどうかを調べ、それに応じて処理を調整することにある。好ましい実施例において、一酸化炭素の流れの中のアナライザー、センサー、または他の当該監視手段202は、二酸化炭素、または他の適した酸素を豊富に含む参照物質の存在および濃度を検出する。
【0064】
主として一酸化炭素が生成されているかどうかを調べるために、他の技術が使用されてもよいことが、明白であろう。ひとつの代替実施例において、一酸化炭素に対する二酸化炭素の割合を測定することができる。別の代替実施例において、センサーはプラズマ発生器の酸素量および下流の炭素量を調べるために提供されてよく、それによって、一酸化炭素および二酸化炭素の割合を計算し、その後それに応じて処理調整を行うことができる。一実施例において、COおよびHの値は、測定され、目標値または範囲と比較される。別の実施例において、生成ガス発熱量は、測定され、目標値または範囲と比較される。
【0065】
当業者は、上記または他の当該監視手段202を介して、システム10の所定の実施例全体に実行することのできる、これらおよび他の当該生成ガス組成測定が、制御手段206を介して、処理出力および効率を最大化する目的で、進行中の処理を監視・調整するために使用することができ、上記にリストされ、実例システムおよび添付図に描かれている制御サブシステム設定によって提供されている例に限定されるべきものではない、ということを理解されたい。
【0066】
システム内の様々な位置における温度
本発明の一実施例において、システム10全体を通して配置されているサイトの温度を監視するために、監視手段202に見られるような手段が提供されており、当該データは継続的もしくは断続的に取得される。反応槽14の温度を監視するための監視手段202は、例えば、反応槽14の壁の外、または反応槽14の上、中、底面の耐火物の中に配置されていてもよい。
【0067】
生成ガスの温度を監視するための監視手段202は、生成ガス出口40や、生成ガス調整システム(例:GQCS20内)全体の様々な位置に配置されていてもよい。複数の熱電温度計は、反応槽14周辺の重要な場所における温度を監視するために使用することができる。
【0068】
ガス化処理によって生成された顕熱を取り戻すためのシステムが使用される場合(熱交換器や同様の技術等)、18に見られるように、熱回収システム内の場所(例えば、冷却流動体吸気口および排気口において)での温度を監視するための監視手段202もまた組み込むことができる。一実施例において、ガス/空気熱交換器48、熱回収蒸気発生器50(HRSG)、または両方が、ガス化処理によって生成された高温ガスを取り戻すために使用される。熱交換器を使用している実施例において、温度送信機は、例えば、熱交換器の吸気口および排気口での生成ガスの温度を測定するために設置されている。温度送信機はまた、熱交換器内での加熱後の冷却剤温度を測定するために提供されている。
【0069】
これらの温度測定は、各熱交換器に入るときの生成ガスの温度が、装置の理想的使用温度を超えないことを確認するために使用される。例えば、一実施例において、ガス/空気熱交換器48のための設計温度は1050℃である場合、熱交換器48への吸気口ガス流における温度送信機は、最適な生成ガス温度を維持することを目的とし、システムを通る冷却気流速度およびプラズマ火力の両方を制御するために使用される。さらに、生成ガス出口温度の測定は、すべての熱回収段階において、生成ガスから最適な顕熱量が取り戻されたことを確認するために有効であろう。
【0070】
加熱された交換空気の温度を測定するための通気排気口に設置された温度送信機は、処理空気がガス化処理の使用に最適な温度まで加熱されたことを確かにする条件のもとで、当該処理が実行されていることを確認する。一実施例において、冷却気流排気口温度は、例えば、約625℃であり、従って、通気排気口に設置された温度送信機は、最適な生成ガス入力温度を維持するために、(たとえば図15および16の調節手段206−4を介して)システムを通る気流速度およびプラズマガス化槽14のトーチ出力のうちのひとつもしくは両方の調整がされるべきかどうか、ということを決定するためのデータを提供し、それによって、冷却気流の温度を制御するために使用することができることになる。
【0071】
本発明の一実施例によると、制御戦略は、例えば約600℃といった最適な冷却空気出力温度のための固定設定点、および、例えば約235℃といったHRSGガス出口温度のための固定値を設定する。従って、この実施例によると、生成ガス流量が減少する場合、ガス/空気熱交換機48の出口における生成ガス温度は冷却され、その結果、HRSGガス出口温度もまた固定値に設定されているため、蒸気生産の減少をもたらす。
【0072】
システムを通る気流が減少するとき、同様の概念が適用される。本発明の実施例によると、出口冷却剤温度は一定のままであり、従って、ガス/空気熱交換機48のための出口生成ガス温度は、さらに熱くなり、そのためHRSG50内にさらに蒸気を生成する。しかしながら、システムを通る気流が減少すると、生成ガス流量もまた必然的に減少するため、HRSG50に対して増加した吸気口温度は一時的に高くなるだけである。例えば、気流が50%に減少する場合、HRSG50が一時的に読み取る最大吸気口ガス温度は、約800℃であり、熱交換器設計の限界温度内である。
【0073】
本発明の一実施例において、温度を監視するための監視手段202は、必要に応じてシステム10内に設置された熱電温度計によって提供される。よって、上記の通り、当該温度測定は、図16の典型的なロジックボックス34によって実例として描かれているように、統合制御サブシステム200によって使用することができる。当業者は、上記または他の当該監視手段202を介して、システム10の所定の実施例全体にわたって実行されている他の種類の温度測定が、制御手段206を介して、処理出力および効率を最大化する目的で、進行中の処理を監視・調整するために使用することができ、上記にリストされ、実例システムおよび添付図に描かれている制御手段設定によって提供されている例に限定されるべきものではない、ということを理解されたい。
【0074】
システムの圧力
本発明の一実施例において、反応槽14内、およびシステム10全体にわたる圧力を監視するため、監視手段202が提供されており、当該データは継続的もしくは断続的に取得される。さらなる実施例において、これらの圧力監視手段202は、例えば、槽の垂直壁上に配置されている圧力変換器のような圧力センサーを含む。システム10の圧力に関連したデータは、制御サブシステム200によって使用され、プラズマ熱源電源もしくは石炭の添加速度といったパラメータの調整が必要とされるかどうかをリアルタイムで決定する(例:図15および16の制御手段206−1および206−4を介して)。
【0075】
ガス化される石炭量における変動は、急速なガス化につながり、結果として反応槽14内の圧力に著しい変化をもたらす。例えば、石炭の増加量が反応槽14に取り込まれる場合、槽14内の圧力は著しく増加することになる。継続的に圧力を監視するための監視手段202を有し、それによって、制御手段206を介してパラメータ(例えば、誘導送風機の速度)をリアルタイムで調整するのに必要なデータを、提供し、システム圧力を低下させる、といった場合においては有利になるであろう。
【0076】
さらなる実施例において、例えば,多数の圧力監視手段202を介して、システム10全体にわたる差圧の継続的な読み出しが提供される。この方法によって、各個々のコンポーネントにわたる圧力低下は、処理中に起こる問題を迅速に特定するために監視することができる。当業者は、上記および他の当該システム圧力監視および制御手段が、処理出力および効率を最大化する目的で、調節手段206を介して、進行中の処理を、監視・調整するために、上記または他の当該監視手段202を介して、システム10の様々な実施例にわたって使用することができ、上記にリストされ、実例システムおよび添付図に描かれている制御サブシステム設定によって提供されている例に限定されるべきものではない、ということを理解されたい。
【0077】
ガスの流速
本発明の一実施例において、システム10全体に配置されているサイトにおける生成ガスの流速を監視するため、監視手段202が提供されており、当該データは継続的もしくは断続的に取得される。
【0078】
異なるシステムのコンポーネントを通るガスの流速は、特定のコンポーネントにおいて、ガスの滞留時間に影響することになる。ガス化反応槽14の改質領域を通るガスの流速が速すぎる場合、ガスのコンポーネントが平衡になるための十分な時間がなく、結果として最適でないガス化処理をもたらす。当業者は、これらおよび当該気流監視制御手段が、図11から16に描かれている典型的な制御サブシステム200のような統合制御サブシステムを介した処理出力および効率を最大化する目的で、制御手段206を介して、進行中の処理を監視・調節するために、上記または他の当該監視手段202を介して、システム10の様々な実施例にわたって使用される、ということを理解されたい。
【0079】
演算手段
制御サブシステム200は、反応条件を制御し、出力ガスへの石炭の変換の化学反応およびエネルギー収支を管理する手段を備える。さらに、制御サブシステム200は、理想的、最適、またはそうではないガス化反応条件を維持するために、作動条件を決定および維持することができる。理想的な作動条件の決定は、石炭の組成および生成ガスの特定の組成のような要素を含む、処理の全体エネルギー収支による。石炭の組成は均質であってもよいし、特定の範囲まで変動してもよい。石炭の構成が異なる場合、特定のシステムパラメータが、理想的作動条件を維持するために、調節手段206により継続または定期調節を必要とする可能性がある。
【0080】
統合制御サブシステム200は多くの要素を備えることができ、その各要素は、例えば、添加物の一つの流速の制御、ガス化システムの一つ以上のプラズマ熱源(例:18、44)の一つの位置または電気出力の制御、または副生成物の回収制御のような、専用タスクを実行することを目的とすることができる。制御サブシステム200は、演算手段204の処理装置208にあるような処理システムをさらに備えることができる。
【0081】
一実施例では、処理システム204は、多くのサブ処理システムを備えることができる。各サブ処理システムは、プラズマ改質反応の少なくとも一つの側面を模倣することができる反応モデルを使用するよう、設定することができる。各反応モデルはそれぞれ特有のモデル入力およびモデル出力パラメータを持ち、モデル入力パラメータへの変化の影響としてモデル出力パラメータの変化を算出するために、使用することができる。各反応モデルは、システムの制御要素のいずれにも影響を与える前に、ガス化システムの作動条件への変化を予測するのに役立つ評価を実行するために使用することができる。各反応モデルは、模擬予測が(実際の)プラズマ改質システムの処理を十分に、正確に模倣する作動条件の所定範囲内においてのみ、使用することができることに留意する。
【0082】
処理システムはさらに、ガス化システムの反応過程の部分モデルまたは全体モデルを用いて設定することができる。全体モデルの方が勝るが、部分モデルは非常に複雑になることができ、増え続ける作動条件への変化を予測するために使用する、またはモデルが十分に正確または妥当である作動条件の範囲を拡大するために使用することができる。反応過程の説明の抽象および完全性のレベルが高いほど、処理システムの予測能力は高くなる。しかしながら、全体モデルの複雑性の増加は、ガス化システムの作動条件への特定の影響を予測するためのモデルの有用性に、影響を及ぼす可能性がある。それらの効用は、短期間に渡る影響または小さなパラメータの変化の予測に限られることがある。
【0083】
図28はかかるシステムモデルの実施例を提供し、そのシステムモデルは、システム10の様々な処理の実行において開始点として使用するための、様々な作動オペレータおよびそれらを基にした予測結果を定義するために、統合制御サブシステム200と併せて使用されることがある。一実施例では、これらおよびそのようなモデルは、システム10の様々なシステム作動範囲および/またはパラメータを継続的に再評価および/または更新するために、時々または定期的に使用される。一実施例では、NCR HYSYSシミュレーションプラットフォームが使用され、入力化学組成、熱化学の特性、湿度、供給速度、処理添加物などの任意の組み合わせでを入力として見なすことができる。モデルはまた、例えば現場および石炭の種類の詳細、エネルギー回収の最大化、排気の最小化、資本および費用の最小化などを考慮するための、様々な任意の対話型の処理の最適化を提供してもよい。最終的に、選択されたモデルオプションに基づき、モデルは、例えば様々な作動特性、達成可能な処理能力、システム設計の特性、生成ガスの特性、排気レベル、回収可能エネルギー、回収可能副生成物および最適な低コスト設計を提供してもよい。
【0084】
各反応モデルは、ハードウェアのみ、またはソフトウェアおよびハードウェアの任意の組み合わせにおいて、使用することができる。図28で説明するような反応モデルは、アルゴリズム、処理システムによって処理可能な式、または一連の式の任意の組み合わせを使用して、表すことができる。反応モデルがハードウェアでのみ使用される場合、それは処理システムの不可欠な部分となり得る。
【0085】
処理システムおよびサブ処理システムのうちのいずれも、ハードウェアのみ、またはソフトウェアおよびハードウェアの任意の組み合わせを備えることができる。サブ処理システムのいずれも、一つ以上の比例(P)、積分(I)または微分(D)制御器の任意の組み合わせ、例えば、P制御器、I制御器、PI制御器、PD制御器、PID制御器などを備えることができる。P、I、およびD制御器の理想的選択は、ガス化システムの反応過程の一部の力学および遅延時間、および組み合わせが制御することを目的とする作動条件の範囲、ならびに組み合わせ制御器の力学および遅延時間によるものとなることは、当業者には明らかとなろう。
【0086】
組み合わせ制御器の設計における重要な側面は、初期から特定値へ、それぞれの制御変数または制御パラメータを調整する際、短い遷移期、および、遷移期に、ふらつきがほとんどないことである可能性がある。これらの組み合わせは、制御変数または制御パラメータの値を、監視手段202により継続的に監視でき、実測および特定値の差異を少なくするために、調節手段204により適切な調節を行うためのそれぞれの制御要素に影響を与えるために、その値を特定値と比較することができる、アナログの、ハードウエアに組み込まれている形態で使用することができることは、当業者には明らかとなろう。
【0087】
さらに、組み合わせは、複合デジタルハードウェア/ソフトウェア環境で使用することができることは、当業者には明らかとなろう。追加選択サンプリング、データ収集およびデジタル処理の関連のある影響は、当業者には周知である。P、I、D組み合わせ制御は、フィードフォワードおよびフィードバック制御スキームで実行することができる。
【0088】
修正制御
修正またはフィードバック制御において、適切な監視手段202により監視された制御パラメータまたは制御変数の値は、特定値と比較される。制御信号は二つの値の偏差により決定され、偏差を少なくするために制御要素に提供される。例えば、出力ガスが所定のH:CO比を超える場合、演算手段204にあるようなフィードバック制御手段は、H:CO比を特定値に戻すために添加酸素の量を増加するような、入力変数の一つへの適切な調節を決定することができる。適切な調節手段206により、制御パラメータまたは制御変数への変更に影響を与える遅延時間は、時にループタイムと呼ばれる。例えば、プラズマ熱源の電力、システム内の圧力、または酸素もしくは蒸気流速を調整するためのループタイムは、30から60秒に達することがある。
【0089】
一実施例では、生成ガス組成は、上述のフィードバック制御スキームにおける比較に使用される特定値であり、そのため、生成ガス内のCOおよびHの量の固定値(または値の範囲)は、特定される。一実施例では、特定値は生成ガス発熱量の固定値(または値の範囲)である。
【0090】
フィードバック制御は、直接監視を必要とする、またはモデル予測が十分であるところの、すべての制御変数および制御パラメータに必要とされる。フィードバック制御スキームでの使用に向いているガス化システム10の制御変数および制御パラメータは多くある。直接感知および制御され、その制御は実際上他の制御変数や制御パラメータに依存しない、制御変数や制御パラメータのための制御サブシステム200の側面において、フィードバックスキームは効果的実行することができる。
【0091】
フィードフォワード制御
フィードフォワード制御処理は、制御変数および制御パラメータに監視なしで影響を与えるために、入力パラメータを処理する。ガス化システムは、一つ以上のプラズマ熱源(15、44)の一つに供給される電力の量のような、多くの制御パラメータに対して、フォードフォワード制御を使用することができる。プラズマ熱源(15、44)のアークの電気出力は、例えば、アークを維持するためにトーチに供給される電流をパルス変調する、電極間の距離を変え、トーチ電流を制限し、またはプラズマの組成、方向もしくは位置に影響を与えるといった、様々な異なる方法で制御することができる。
【0092】
ガスもしくは液体改質または粉体形における、またはスプレーあるいは、他の方法でノズルを通して注入することができるガス化反応槽14に提供することができる添加物の供給速度は、例えば、フィードフォワードの方法で、特定の制御要素により制御することができる。しかしながら、添加物の温度または圧力の効果的な制御は、監視および閉ループのフィードバック制御を必要とすることがある。
【0093】
ファジー理論制御および他の種類の制御
ファジー理論制御および他の種類の制御は、フィードフォワードおよびフィードバック制御スキームで同様に使用することができる。これらの種類の制御は、特定の結果に影響を与えるための入力変数または入力パラメータの変更方法を予測するために、プラズマ改質反応力学が模られ模倣される点で、伝統的なP、I、D組み合わせ制御から大幅に外れ得る。ファジー理論制御は通常、反応力学(一般に、システム力学)の漠然とした、もしくは実証的説明、またはシステムの作動条件のみを必要とする。ファジー理論または他の種類の制御の側面および実行上の考慮すべき事項は、当業者には周知である。
【0094】
当然のことながら、本発明の前述の実施例は典型的であり、様々に変えることができる。かかる現在および将来の変化は、本発明の精神と範囲からの逸脱と見なされるものではなく、当業者には明らかとなるようなすべてのかかる変更は、添付の請求の範囲内に含まれるよう意図される。
【0095】
本システムと共に使用するためのガス化反応槽
ここで、図1から4、および図17から23を参照して、本石炭ガス化システム10は、15にあるように一つ以上の処理ゾーンおよび一つ以上のプラズマ熱源を持つガス化反応槽14を備える。ガス化反応槽14はまた、36にあるような石炭を反応槽に入力する手段、およびガス化処理を最適な設定値で維持するために必要に応じて、38にあるような蒸気または酸素/酸化添加物のような一つ以上の処理添加物を加える手段を備える。
【0096】
本発明の一実施例では、一つ以上のプラズマ熱源15は石炭からガスへの変換処理を補助する。特に、蒸気および/または酸素処理添加物の入力38と併せたプラズマ熱源15の使用は、ガス組成の制御に役立つ。プラズマ熱はまた、ガス化処理により生じたオフガスの、それらの構成要素への完全変換を確実にし、これらの構成要素を特定の組成を持つ生成ガスへ改質するために使用されてもよい。生成ガスは次に、一つ以上の出力ガス排気口40を通して、ガス化反応槽14から排出されてもよい。
【0097】
石炭のガス化(すなわち、石炭から合成ガスへの完全変換)はガス化反応槽14で生じ、高もしくは低温度、または高もしくは低圧力で進行することができる。多くの反応は、石炭の合成ガス生成物への変換処理で生じる。石炭が反応槽でガス化される際、ガス化に必要とされる物理、化学および熱処理は、反応器設計によって順次に、または同時に発生する。
【0098】
ガス化反応槽14において石炭は加熱され、それによって石炭はいかなる残留水分も取り除くために乾燥される。乾燥石炭の温度が上昇すると、熱分解が行われる。熱分解中、揮発性成分は揮発され、石炭は炭化物に変換中、タール、フェノールおよび軽揮発炭化水素ガスを放出するために熱分解される。炭化物は、有機および無機物質から成る残留物を含む。
【0099】
得られた炭化物は、そのガス構成要素への完全変換を確実にし、後にスラグへの変換される灰副生成物を残すために、さらに加熱されてもよい。一実施例では、石炭のガス化は、実行可能な燃焼の量を最小化するために、制御された酸素量の存在下で行われる。
【0100】
乾燥、揮発および炭化物から灰への変換ステップの混合生成物は、中間オフガス生成物を提供する。この中間オフガスは、石炭の合成ガスへの変換を完了するために、通常一つ以上のプラズマ熱源によって、および制御された蒸気量の存在下でさらに加熱されてもよい。この最終ステップは、改質ステップとしても言及される。
【0101】
一つ以上のプラズマ熱源は、すべての反応が同時に起こるように位置付けるか、またはそれらが順次に起こるように反応槽内に位置付けることができる。いずれの構造においても、熱分解処理の温度は、プラズマ熱源の反応器内への封入により上昇する。
【0102】
ガス化反応は熱によって促され、それは、反応チャンバーを熱するために電気または化石燃料(例:プロパン)を加える、または反応に熱を供給する、発熱ガス化反応を促す反応物質として空気を加えることによって促すことができる。いくつかのガス化処理はまた間接加熱を利用し、ガス化反応器における供給材料の燃焼を回避し、窒素および余剰二酸化炭素による生成ガスの希釈を回避する。
【0103】
前記ガス化反応槽14は、当技術分野で周知の多くの標準反応器のうちの一つに基づくことができる。当技術分野で周知の反応器の例は、これに制限されないが、噴流床反応槽(図17〜19)、移動床反応器(図22および23)、流動床反応器(図20および21)、および回転炉反応器(図示されていない)を含み、それぞれは、36のような入力手段を通して石炭を受け入れるように適合されている。石炭は、石炭から生成ガスの完全で効率的な変換のため、最適に熱が加えられるように配置された一つ以上の注入口を通して注入される。
【0104】
一つの実施例では、前記ガス化反応槽14は、大気圧あるいは近大気圧で作動するように設計されている。他の実施例では、反応槽は、加圧下で作動し、したがって、ガス化反応は、2気圧から10気圧の圧力下で行なわれる。さらにもう一つの実施例では、ガス化反応槽は、高圧化で作動し、したがって、ガス化反応は、最大30気圧の圧力下で行なわれる。
【0105】
ガス化反応槽14は、広範な長さ対直径の比を持つことができ、垂直または水平のいずれかの向きに配置することができる。ガス化反応槽は、一つ以上のガス排気手段40および固形残渣を除去する手段(例:炭化物、灰、スラグまたはそれらの組み合わせ)16を持ち、それは、残渣が重力流を使用して除去されることを可能にするために、通常チャンバー(例:スラグチャンバー42)の底のどこかに配置される排気口である。一実施例では、ガス化反応槽は槽の底から固形残渣を除去するために、物理移動手段を使用する。例えば、外熱スクリュー(例:図20の要素60)は、灰副生成物をスラグ処理チャンバー42へ移すために使用されてもよい。スラグを処理し取り扱う手段は、後ほどさらに詳しく論じられる。ここで留意すべきは、スラグはまた、ガス化が生じる同じチャンバー(図16から19)、または図20のスラグチャンバー42にあるような別のチャンバー内で処理されてもよいことである。
【0106】
本発明によると、石炭の合成ガス生成物への変換のすべてのステップは、単一のチャンバーの反応槽で行われる。
【0107】
いくつかのガス化反応槽14の設計は、石炭の合成ガスへの変換処理が一段階の処理で行われる、すなわち、石炭の合成ガスへの変換におけるすべてのステップが槽内の一つのゾーンにおいて通常行われる。かかる一実施例では、一段階処理が反応槽14の一つのゾーン内で行われ、ガス化ステップのすべてが同じゾーンで行われると考えられる。そのような場合、ガス化反応槽14から排出される生成ガスは、合成ガス生成物となる。
【0108】
他のガス化反応槽14の設計は、石炭から合成ガスの変換処理が、チャンバー内の複数のゾーンで行われる、すなわち、ガス化および改質ステップが互いからある程度分けられ、槽内の異なるゾーンで行われる。
【0109】
本発明の一実施例では、変換処理は二つの段階で行われ、最初は石炭からオフガスへの段階、次にオフガスから合成ガス(改質)への段階が続く。かかる二つの段階処理において、単一チャンバーの反応槽内に少なくとも二つの個別ゾーン(ガス化ステップのための第一ゾーン、および改質ステップのための第二ゾーン)が必要とされる。
【0110】
複数領域のガス化反応槽において、第一、または一次ゾーンは、(残留水分がある場合)石炭を乾燥させるために石炭を加熱し、石炭の揮発性成分を抽出し、また得られた炭化物を任意で気体および灰に変換するために使用され、それによりオフガス生成物を生成し、一方で第二ゾーンは、オフガスの合成ガス生成物への完全変換を確実にするためのプラズマ熱を応用するために使用される。二つ以上のはっきりと異なるゾーンが、石炭のガス化およびオフガスから合成ガスへの変換に使用される場合、ガス化反応槽の最終領域から排出される生成ガスは合成ガスである。
【0111】
一実施例では、石炭のガス化を促すために必要な熱は、熱風により提供される。かかる実施例では、ガス化反応槽14は、ガス化ゾーンへ熱風を取り込むための、一つ以上の熱風入力手段を備える。熱風入力手段は交換気用吸気口を含む。これらの吸気口は、石炭の気体への変換を開始し促すために反応槽全体へ熱風を分配するために、反応槽内に位置付けられる。
【0112】
図22から23を参照して、その中で描写される反応槽14は、ガス化処理が槽14の第一ゾーン66で行われ、改質処理が槽14の第二ゾーン68内で生じる、複数のゾーン槽を含むと見なされる。具体的に、第一ゾーンにおいてガス化処理を開始するために必要な熱は、図23の実施例におけるプラズマ熱源70によって、および図22の実施例における代替熱源(例:熱風など)によって提供される。これらの実施例の両方において、プラズマ熱源72は、ガス排気口40によるその後の処理のために、特定の出力ガス組成に従って生成されたガスの特性を高めるために、第二ゾーンで使用される。
【0113】
図17から23を再び参照して、一つ以上のプラズマ熱源15を移動することによって、ならびに他のプラズマ熱源、他の熱源および同種のものを加えることによって、描写された層14は本開示の全般的範囲および精神からの逸脱なく、単一または複数ゾーンの反応槽14として作動されてもよいことを、当業者は理解されよう。さらに、統合制御サブシステム200のある本石炭ガス化システム10は、上記のいずれかの、または他のそのようなガス化槽構成によって実行されてもよいことを、理解されよう。実際に、特定の種類の反応槽内で実行されるガス化および/または改質処理に関連する、一つ以上の直接または間接処理パラメータを監視することにより、これらの処理が、単一チャンバーの反応槽内の一つのゾーンまたは複数のゾーンで行われるかにかかわらず、本システム10の制御サブシステム200は、調節手段206により処理出力および効率を最大化するために、進行中の処理を監視および調節するために、監視手段202を介し使用されてもよい。
【0114】
さらに、図17から23をさらに参照して、ガス化反応槽は一つ以上の処理添加物入力手段38を任意で備え、それは、酸素、空気、酸素富化空気、蒸気のようなガス、またはガス化処理に役立つ他のガスを、ガス化反応槽に添加するために提供される。処理添加物入力手段は、空気(または酸素)入力ポート、蒸気入力ポートおよび/または吸着ポートを含むことができる。これらのポートは、処理添加物の槽全体への最適な分配のために、反応槽14内に位置付けられる。処理添加物の添加は、後ほどさらに詳しく論じられる。
【0115】
また、本発明の一実施例よると、ガス化反応槽壁は耐熱材料で内側を覆われている。耐熱材料は、当技術分野で知られている伝統的な耐熱材料の一つ、または組み合わせであってよく、それらは高温(例:約100℃から1400℃の温度)非加圧反応のために、槽内での使用に適している。かかる耐熱材料の例は、高温焼成セラミック(酸化アルミニウム、窒素アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、窒化ホウ素、リン酸ジルコニウムなど)、ガラスセラミック、クロミア耐火物、ならびにアルミナ、チタニアおよび/またはクロミアを含む高アルミナ耐火物を含むが、これらに限定されない。
【0116】
当業者には理解されるように、ガス化反応槽の異なる領域は、特定の領域の温度および腐食条件に応じて、異なる耐熱材料で内側を覆われてもよい。例えば、スラグが存在する場合、非濡れ性耐熱材料を使用することは都合がよいことがある。
【0117】
上記の説明は、反応槽の種類、構成およびそれらに使用される材料の例を多く提供しているが、他の反応槽の種類、構成および/または材料は、本開示の全般的範囲および性質から逸脱することなく使用されてもよいことが、当業者にはさらに理解されよう。
【0118】
プラズマ加熱手段
これより、図1から4および17から23を参照に、本発明のシステムは、15に記載の通り、ガス化処理により生成されたオフガスを、確実に特定の組成を有する生成ガスへ完全に変換するために、一つ以上のプラズマ加熱手段を使用する。また、15に記載の通り、プラズマ加熱手段は、初期ガス化処理を行うために、石炭を加熱する目的で随意に供給される。
【0119】
本発明の一実施例において、一つ以上のプラズマ熱源15は、特定の生成ガスのオフガス変換を最適化するために位置付けられる。一つ以上のプラズマ熱源の位置は、ガス化システムの設計、例えば、システムが一段階または、二段階ガス化処理を用いるかどうかにより選択される。例えば、二段階ガス化処理を用いる一実施例において、プラズマ熱源は、オフガス吸気口に関連した位置に配置され、オフガス吸気口の方向に向けられる。一段階ガス化処理を用いる他の実施例において、一つ以上のプラズマ熱源15は、ガス化反応槽の中心に向かって伸びる。全ての場合において、プラズマ熱源の位置は、システムの要件により、またオフガスを特定の精製ガスへ最適変換するために、選択される。
【0120】
一つ以上のプラズマ熱源が用いられる場合、熱源の位置もまた、二つ以上の熱源間で確実に衝突がないように、例えば、どの熱も他から熱を直接受けない、または、ひとつのプラズマ熱源から他へアーク放電がないように選択される。
【0121】
さらに、一つ以上のプラズマ熱源の位置は、プラズマプルームで反応槽の壁への衝撃を避けるために選択され、それにより、「ホットスポット」の形成を避けることが出来る。
【0122】
適用時に、一定期間、適切に高温を生み出すことが出来る様々な市販のプラズマ熱源は、このシステムに使用することが出来る。一般的に、そのようなプラズマ熱源には、出力において100kWから、6MWを超える様々なサイズがある。プラズマ熱源あるいは、プラズマトーチは、適切なワーキング・ガスを一つあるいは組み合わせて使用する。適切なワーキング・ガスは、空気、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、メタン、アンモニア、一酸化炭素、酸素、窒素、および二酸化炭素を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施例において、プラズマ加熱手段は、オフガスを合成ガスへ変換するために必要とされる、約900から、約1100℃を超える温度を生み出すために、継続的に作動する。
【0123】
この点において、代替プラズマトーチ技術の多くは、本システムの使用に適している。例えば、誘導結合プラズマトーチ(ICP)が使用される場合があると理解される。また、適切に選択された電極材を用いて移行アークトーチおよび非移行アークトーチ(ACおよびDC両方)が使用される場合があると理解される。電極材は、銅およびその合金と、ステンレス鋼およびタングステンから選択されるが、これに限定されない。黒鉛トーチも使用される場合がある。通常の技術を有する当業者ならば、適切なプラズマ加熱手段を選択することが出来る。
【0124】
一実施例において、プラズマ熱源15は一つ以上の空気/酸素および/または、蒸気入力吸入口38に隣接して設置され、それにより空気/酸素および/または蒸気添加物がプラズマ熱源15のプラズマ放電の経路に注入される。
【0125】
さらなる実施例において、プラズマ熱源15は、可動式、固定式あるいは、そのいかなる組み合わせである。
【0126】
本発明の処理は、変換処理を行うため、また、変換機からのガス流量およびガス組成が、所定の厳しい範囲内に確実に残存するために、プラズマ加熱の可制御性を用いる。また、プラズマ加熱の制御は、異なる石炭源の構成あるいは同種の石炭源における自然変動に関係なく、生成ガスの効率的な生成に役立つ。
【0127】
一実施例において、制御サブシステム200は、反応の全体エネルギー収支を管理し、最適な設定点を維持するために、プラズマ熱源15の出力を調節するための制御手段206を有する。反応のエネルギー収支を管理するため、プラズマ熱源15への電力供給は、石炭の組成と、それに対応する蒸気と空気/酸化剤の供給率における変動にかかわらず、一定のガス化システム温度を維持するために調節される。
【0128】
制御サブシステム200は、石炭および処理添加物が、ガス化反応槽14に導入される速度、温度センサー、また、システム10全体において有利な場所にある他のそのような監視手段202により決定されるシステムの温度など、測定されたパラメータに関連してプラズマ熱源15の電力定格を制御する。プラズマ熱源15の電力定格は、例えば、ガス化反応槽14の熱損失を補うため、また石炭を効率良く処理するために十分でなければならない。
【0129】
例えば、反応槽14の温度が高すぎる場合、制御サブシステム200は、プラズマ熱源15(例:図15および16の制御手段206−4を介し)の電気定格を下げるよう指令を出し、逆に、融解温度が低すぎる場合、制御サブシステム200は、プラズマ熱源15の電気定格を上げるよう指令を出す。
【0130】
本発明の一実施例において、制御サブシステム200は、最良の高温処理ゾーンの維持を確実にするため、また、反応槽14全体の周りの有利なガス流量パターンを引き起こすために、トーチの位置を制御するための制御手段206を有する。
【0131】
また、44に記載の通り、一つ以上のプラズマ熱源44は、後述されるように、ガス化処理の固形残渣の完全処理を確実にするために、随意に提供される。
【0132】
石炭入力手段
さらに図1から4および17から23を参照に、本発明は、入力手段36などのガス化反応槽14に石炭を取り込む手段を有する。入力手段36は、最適なガス化熱源へ露出するように石炭が、確実に適切な場所に置かれるように設置される。
【0133】
一実施例において、入力手段36もまた、ガス化反応を最適な設定点で維持できる最適速度で、確実に石炭が反応槽14に送り込まれるように供給速度を調節するための制御手段206を提供する。
【0134】
一実施例において、制御サブシステム200は、反応の最終的な全体エネルギー収支を管理するために、石炭入力率を調節するための制御手段206を有する。例えば、ガス化反応槽14へ石炭の追加速度は、石炭の生成ガスへの効率的変換を促進するために調節することができる。石炭の追加速度は、特定の許容範囲内の反応設定点を維持しながら、システム10の設計仕様書に従い、システムの全体エネルギー収支を管理するために選択される。
【0135】
入力手段36の選択は、給炭の広がり、作動圧力、および石炭の粒度における要件に従って行われる。入力手段36は、ねじ錐、圧気輸送システム、プランジャシステム、ラムシステム、回転弁システム、または、トップ重力送りシステムを有する。
【0136】
また、反応槽へ取り込む前に、石炭を準備するための調節処理も使用される。例えば、石炭は、高速反応をもたらす大きさに粉砕される。一般的に、石炭は、0.75インチあるいはそれより小さい粒度でなければならない。石炭は、反応槽に取り込む前に、石炭を加熱する予熱器を介し、随意に取り入れられる。そのような予熱され粉砕された石炭は、加熱された石炭ラインを介し、加熱反応槽に取り込まれる。
【0137】
処理添加物入力手段
依然として図1から4および17から23を参照し、処理添加物は効果的な石炭から生成ガスへの効果的な変換を容易にするように反応槽14へ任意に加えられてよい。処理添加物の種類と分量は、規制当局排ガス制限に関する遵守の維持および運営費を最少化しながら、石炭の変換を最適にするように、慎重に選択される。蒸気入力は、燃料ガスおよび/または無害化合物への入力廃棄物の分解要素の変換を最大化するために十分な遊離酸素および水素を確保する。空気/酸化剤入力は、比較的費用の高いプラズマアーク入力熱を最小限に抑えながら、燃料ガスへの炭素変換の最大化(遊離炭素の最小化)および最適な処理温度維持の釣り合いを取る化学反応の処理を支援する。両添加物の分量は、処理される廃棄物に対する出力による特定に従って、設定され、非常に厳しく制御される。酸化剤の注入量は、処理全体が燃焼に関連する望ましくないどの処理特性にも近づかないことを確実にし、また地元地域の排出ガス基準に合致およびそれに勝りながら、比較的費用の高いプラズマアーク入力熱に対する最大の妥協点を確実にするため慎重に設定される。
【0138】
目標としての電気エネルギー生成を含む実施例において、高い燃料値を有するガスを生成することは有利な点である。高性質燃料ガスの生成は、反応状態を制御することによって、例えば変換処理における様々なステップで加えられる処理添加物の量を制御することによって達成され得る。
【0139】
従って、ガス化反応槽14は、ガス化処理に有用な酸素、空気、酸素富化空気、蒸気またはその他のガスなどガス添加のために提供されてよい、複数の処理添加物入力ポート38を含むことができる。処理添加物入力手段38は、空気入力ポートおよび蒸気入力ポートを含むことができる。これらのポートは、反応槽14を介して処理添加物を最適に分配するために反応槽内に位置付けられる。蒸気入力ポートは、蒸気が反応槽から出る前に高温度処理ゾーン内および周囲へ、および生成ガスの塊へ向けるために戦略的に配置される。空気/酸化剤入力ポートは、処理ゾーンへの処理添加物の全範囲適用を確実にするように反応槽内および周囲に配置されることができる。
【0140】
一実施例において、制御サブシステム200は、反応の全体エネルギー収支を管理するように反応物質を調整するための制御手段206を含む。例えば、処理添加物は、石炭の生成ガスへの効果的な変換を容易にするように反応槽14へ加えられてよい。処理添加物の種類と分量は、特定許容範囲内の反応設定点を維持しながら、システムの設計仕様に従ってシステムの全体エネルギー収支を管理するために慎重に選択される。本発明の別の実施例において、制御サブシステム200は、最適な反応設定点を維持するように処理添加物の添加を制御する制御手段206を含む。制御サブシステム200の別の実施例において、制御手段206は、反応設定点を維持するための更なる2つ以上の処理添加物を制御するように提供される。さらに別の実施例において、制御手段206は、反応設定点を維持するための更なる3つ以上の処理添加物の添加を制御するように提供される。
【0141】
一段階処理(つまり、ガス化および改質のステップが両方とも単一室ガス化反応槽14で行われる場合)を含む実施例において、処理ゾーンへの処理添加物の全範囲適用を確実にするために、添加物入力ポートをガス化反応槽14内および周囲に配置させることは有利な点である。処理が二段階で行われる(つまりガス化および改質がシステム内の不連続領域で行われる)実施例において、特定の添加物ポート(例えば、蒸気入力)をプラズマトーチまたはその他のプラズマ熱源15により改質が行われる領域の近位に配置することは利点となり得る。
【0142】
さらなる実施例において、制御サブシステム200は、様々な監視手段202および演算手段204を介して生成ガスの組成を監視および分析するステップから得られるデータに基づき添加物入力を調整するための制御手段206を含み、それによって該データは原料の見積に使用される。生成ガス組成データは、継続的あるいは断続的に取得されてよく、それにより、空気、蒸気および添加物の炭酸添加物のような添加物入力の調節がリアルタイムで行われるおこなわれることを可能にする(例えば、図15および16の制御手段206−1、206−2および206−3を経由)。生成ガス組成データは断続的に取得されてもよい。
【0143】
本発明の制御サブシステム200は、制御手段206として、様々な監視手段202により監視されながら、特定の生成ガス濃度が最適レベルではないときに、所定の目標レベルによりシステムへ添加物を導入するための手段を含む。例えば、ガスセンサーが過度の二酸化炭素を検出した場合、制御サブシステム200は変換機への酸化剤の送出を低減させて二酸化炭素の生成を低減してよい(例えば、図15および16に例示された制御手段206−3を経由)。本発明の一実施例において、処理は二酸化炭素よりもむしろ一酸化炭素を主に生成するように調整される。そのような実施例において一酸化炭素の生成を促進するために、システムはガス状出力流の量を決定するためのセンサー、分析器またはその他の該監視手段202を含む。蒸気または空気/酸化体入力からの酸素の正確な量がガス化処理において使用される場合、生成ガスは主に一酸化炭素となる。酸素が殆どない場合、相当な量の元素炭素またはカーボンブラックが形成される可能性があり、最終的に反応槽からの機器下流を埋めることとなる。システム内の酸素が多過ぎる場合、基本的に価値のない多過ぎる二酸化炭素が生成され、処理対象が燃料ガスを生成する場合には望ましくない。システム内の多過ぎる一酸化炭素に対応するには、注入される蒸気または空気/酸化剤は制御サブシステム200からの適切な信号によって減少または除去される(例えば、図15および16に例示された制御手段206−2および/または206−3を経由)。
【0144】
ガス化反応槽14内での石炭の燃料ガスへの変換は、吸熱反応であり、つまりエネルギーは、特定の燃料ガス生成への改質を可能にするように反応物質へ提供される必要がある。本発明の一実施例では、ガス化処理に必要なエネルギーの割合は、反応槽14内の最初のガス化生成物または石炭の一部の酸化によって提供される。
【0145】
反応槽14に酸化剤を取り込むことにより、反応槽14内に部分的な酸化条件を作り上げる。部分的な酸化において、石炭の中の炭素は、完全な酸化を実現するために必要とされる化学量論的酸素量未満で反応する。使用可能な酸素の量が制限される中で、そのために固体炭素は一酸化炭素および少量の二酸化炭素へと変換され、それによってガス状の形で炭素を提供する。
【0146】
当該酸化はまた、熱エネルギーを放出し、それによってプラズマ熱によってガス化反応槽へと取り込まれる必要のあるエネルギー量を減少させる。それに続き、増加した熱エネルギーは、反応槽14内に特定の反応条件を作り出すためにプラズマ熱源15により消費される電力量を減少させる。従って、発電装置(例:燃料電池用途26、ガス・タービン24など)の中で燃料ガスを電力へと変換することによって生成された電気のより多くが、酸素を添加するシステム内では、プラズマ熱源15は、より少ない当該発電装置からの電力しか必要としないため、ユーザーに提供され、もしくは電力としてエクスポートされる可能性がある。
【0147】
従って、処理添加物としての酸化剤入力を使用することで、比較的高いコストプラズマアーク入力熱を最小化する一方で、必要な、最適な処理温度を維持するために、炭素を燃料ガスへと最大限に変換することを助ける。酸化剤注入量は、ガス状の形(COおよびCO)で炭素を最大限に除去することを保証するために、非常に慎重に設定されている。同時に、炭素反応のガス化(酸素との組み合わせ)は発熱反応のため、大量の熱が生成される。全体的な処理が、燃焼に関連したいずれかの好ましくない処理特性に近似していないことを確認する一方で、比較的高いコストプラズマアーク入力熱の必要性を最小化する。本発明の一実施例において、酸化剤は空気である。
【0148】
部分的な酸化条件が存在するとき、(燃料ガスもしくは石炭の中には、酸化され、熱エネルギーを放出するために、よって、より少量の燃料ガスしか発電装置に使用できないため)反応槽内により少量の燃料ガスが生成されるが、プラズマ熱源による消費電力の減少により、電気エネルギー生産における潜在的な損失が相殺される。本発明の一実施例において、制御サブシステム200は、最適な反応設定点を維持するための処理添加物の添加を調整する手段を含む(例:図15および16の制御手段206−2、206−3)。
【0149】
本発明の一実施例において、酸化添加物は、空気、酸素、酸素富化空気、蒸気、または二酸化炭素から選択されている。酸化処理添加物として二酸化炭素を使用する実施例において、二酸化炭素は生成ガスから回収され、処理添加物ストリームへと再利用される。
【0150】
変換処理の経済的目標に準じて、適切な酸化添加物の選択がされる。例えば、経済的目標が発電である場合、所定エネルギー発生技術のための最適な出力ガス組成を提供するために、酸化添加物が選択される。生成ガスからエネルギーを発生させるためにガスエンジンを使用するそれらのシステムに対して、より高い割合の窒素は、生成ガス組成において許容範囲である。当該システムにおいて、空気は許容される酸化添加物である。しかしながら、エネルギーを発生させるために、ガス・タービン24を使用するシステムにとって、生成ガスは使用前に圧縮されなければならない。当該実施例において、生成ガスの中のより高い割合の窒素は、生成ガス圧縮に関連したエネルギーコストの増加をもたらし、その一部はエネルギー生産に寄与しない。従って、特定の実施例において、酸素や酸素富化空気のような、窒素の割合が低い酸化剤を使用することは有利である。
【0151】
ガス化処理によって生成された燃料ガスを使用した電気エネルギーの生産を最大化しようとする、本発明の実施例において、ガス化反応槽で行われる燃料ガスの酸化を最小限にすることは有利である。部分的な酸化条件による燃料ガスの生産におけるいかなる減少も相殺するために、蒸気もまた酸化添加物として使用されてもよい。処理添加物としての蒸気入力の使用により、入力石炭の分解要素を燃料ガスおよび/または無害な化合物へと変換することを最大化するために、十分な遊離酸素および水素を確保する。
【0152】
目標として電気エネルギーの生産を有する実施例に対して、高燃料値を有するガスを生産することは有利である。処理添加物としての蒸気の使用は、周知である。蒸気の存在下での石炭のガス化は、主に水素および一酸化炭素で構成された合成ガスを生成する。化学技術における当業者は、燃料ガス製品の中の水素と一酸化炭素の相対的比率が、様々な処理添加物量を変換器へと取り込むことによって操作されるということを認識されたい。
【0153】
蒸気入力ポートは、蒸気を、反応槽14から出ていく前に、高温処理ゾーンおよび/または生成ガス塊の中へ向けるために、戦略的に配置することができる。
【0154】
一実施例において、ガス化反応槽14に吸着剤を追加するための手段もまた提供されている。石炭が硫黄化合物を含むので、吸着剤(粒状マグネシウムまたはドロマイト)は石炭とともに反応槽14へと注がれ、石炭がガス化されるときに、それによって放出される硫黄を吸着する。吸着剤は、反応槽14へ添加する前に、石炭と予混合することによって、もしくは専用吸着剤ポートを通って添加される。反応槽14を用いて吸着剤使用を監視・調整するために、適切な監視手段202および制御手段206を介して、統合制御サブシステム200が使用される。
【0155】
固形残渣取り扱いサブシステム
図1から4および17から23をさらに参照すると、本石炭ガス化システムは、ガス化処理の固体生成物を管理するための手段も提供する。特に、本発明は、石炭/エネルギー変換処理に起因する固体生成物、または残留物の、低浸出性を有するガラス化した均質物質への変換のための固形残渣取り扱いサブシステム16を提供する。
【0156】
特に、本発明は、完全融解および均質化を促進するようにプラズマ発熱速度および固形残渣入力速度を制御することによって固形残渣/スラグ変換を最適化する、固形残渣取り扱いサブシステム16を提供する。一実施例において、固形残渣取り扱いサブシステムは、固形残渣吸入口を有する固形残渣調整チャンバー42(またはスラグチャンバー)と、プラズマ加熱手段と、スラグ出口と、任意で一つ以上のポートと、スラグを冷却および固体化してその最終形態にするためのダウンストリーム冷却手段とを備える。本発明の統合制御サブシステム200は、プラズマ熱源44への電力および固形残渣入力速度などの操作パラメータを制御する手段だけでなく、固形残渣取り扱いサブシステム16全体にわたって温度および圧力を監視するための監視手段202を提供することにより、固形残渣のスラグへの効果的な変換を調節するための、制御手段206も備える。
【0157】
本発明の固形残渣取り扱いサブシステム16は、石炭を異なる形態のエネルギーに変換する任意の処理から出てくる固形残渣流を処理するように適応できる。この固形残渣は、通常、粒状態であり、ガス化反応槽14および任意でガス性質調整サブシステム20等、一つ以上の源によってもたらされるものであってよい。いかなる場合でも、固形残渣は、冷却および固体化させる場合には極めて低い浸出性を呈する、ガラス化した均質物質に固体を変換するのに必要な温度まで加熱される。
【0158】
従って、固形残渣取り扱いサブシステム16は、固形残渣が、当該固形残渣を融解および均質化するのに十分な温度まで上げられることを確実にする。固形残渣取り扱いサブシステム16は、混じりけがない均質な(および、潜在的に商業的価値がある)スラグ生成物の形成だけでなく、スラグ中の汚染固体(すなわち、重金属)の捕捉も促進する。
【0159】
固形残渣の完全な処理を確実にするために、固形残渣取り扱いサブシステム16は、スラグチャンバー42内で十分な滞留時間を提供するように設計される。一実施例において、システム16は、少なくとも10分の滞留時間を提供する。別の実施例において、固形残渣取り扱いサブシステム16は、最大1時間の滞留時間を提供する。さらに別の実施例において、固形残渣取り扱いサブシステム16は、最大2時間の滞留時間を提供する。
【0160】
炭、灰、スラグ、またはそれら何らかの組み合せの形態を取り得る固形残渣は、システムの要件および除去される生成物の種類に従って、適切に適合した出口を通る一つ以上のアップストリーム処理および当業者に既知であるような移送手段から、継続的または間欠的に、除去されることになる。一実施例において、固形残渣は、ホッパーおよび移送用スクリューのシステムを通って、スラグチャンバー42へ押し込まれる。
【0161】
固形残渣は、継続的方法で、例えば、回転スクリューまたはオーガー機構を使用することによって追加され得る。例えば、図20の実施例においては、灰をスラグチャンバー42へ移送するために、スクリューコンベヤー60が用いられている。
【0162】
もう一つの方法として、固形残渣は、不連続な方式で追加され得る。本発明の一実施例において、固形残渣調整チャンバーに取り付けられた固形残渣入力手段は、ラムを搬送するシステムから成ってよい。そのような実施例においては、各ストロークによって槽に供給される材料の量を制御できるようラムストロークの長さを制御するために、リミットスイッチが用いられる。
【0163】
固形残渣入力手段は、固形残渣の入力速度が固形残渣材料の最適な融解および均質化を確実にするように制御され得るような、制御手段をさらに含むであろう。
【0164】
一実施例において、プラズマ熱源44は、灰を加熱および融解してスラグにするために用いられる。例えば約1300℃から約1700℃の温度の溶融スラグが周期的または継続的にスラグチャンバー42から排出され得、その後、冷却されて固体スラグ材料を形成する。そのようなスラグ材料は、埋め立て処分する目的であってよい。もう一つの方法として、溶融スラグを容器に注入し、インゴット、レンガタイル、または同様の建設材料を形成してよい。固体産物をさらに割って、従来の使用法のための骨材にしてもよい。
【0165】
従って、固形残渣取り扱いサブシステム16は、それを通って溶融スラグがスラグチャンバー42から排出される、スラグ出力手段を含む。出力手段は、チャンバーの外にある溶融スラグプールの自然な流れを容易にするために、通常、チャンバー42の底部またはその付近に配置されている、スラグ出口ポート46を備えてよい。溶融スラグがスラグチャンバーから流れ出る速度は、当業者には明らかであると思われる様々な手法で制御され得る。例えば、一実施例において、プラズマ加熱手段に最も近い点と出口点との間の温度差は、例えば、チャンバー内に溜まることができる固形残渣材料の容積の調節によって、溶融スラグの再固体化時間を制御するように調整され得る。
【0166】
スラグ出力手段はさらに、スラグチャンバー42を密閉されたままに保つことにより、加熱要件最小化するように適合されてよい。一実施例において、出力手段は、注ぎ口またはSトラップを備える。
【0167】
上述したように、溶融スラグの温度を維持し、全スラグ抽出時間を通してずっとスラグ出口ポート46が開いたままであることを確実にするために、一つ以上のプラズマ熱源44の柱状噴流を、スラグ出口ポート46にある、またはその周囲の、スラグプールに向けることも有利となり得る。この実践は、何らかの不完全に処理された材料が、スラグ抽出中に不注意で固形残渣取り扱いサブシステム16から外れてしまう可能性を防ぐために、スラグを可能な限り均質に維持する上でも役立つであろう。
【0168】
溶融スラグは、当業者により理解されているような多数の異なる手法で、固形残渣取り扱いサブシステムから抽出され得る。例えば、スラグは、処理時間の終了時におけるバッチ注入、または、処理の持続時間全体にわたる継続的な注入によって抽出され得る。いずれかの注入方法によるスラグは、水浴に注入されてよく、そこでは水が外部環境とガス化システムとの間のシールとして作用する。スラグは、除去用のカート内、ケイ砂床内、または金型内に滴下されてもよい。
【0169】
スラグチャンバー42の壁には、極めて高い温度(例えば、約1300℃から1800℃の温度)の非加圧反応で使用するのに適した、当該技術分野で知られている従来の耐火材料の一つまたは組み合せであってよい、耐火材料で覆われている。そのような耐火材料の例は、クロミア耐火物、ならびに、アルミナ、チタニア、および/またはクロミアを含む高アルミナ耐火物を含むがこれらに限定されない。スラグチャンバーを覆うための適切な材料の選択は、スラグの腐食性質に抵抗するそれらの能力だけでなく、それらの非常に密集した(低気孔率)微細構造を理由に、それらの化学組成に従ってなされる。腐食速度は、より低い温度または重金属汚染の削減によって減少し得る。スラグが生成される場合、非濡れ性の耐火材料を選択することが有利である。
【0170】
固形残渣調整チャンバーは、固形残渣を融解および均質化する際の、プラズマガスと固形残渣との間での高効率の熱伝達用に設計されている。従って、固形残渣調整チャンバーを設計する場合には、効率的な熱伝達、十分な加熱温度、滞留時間、溶融スラグ流れ、入力固形残渣容積、および組成等の要因が考慮される。
【0171】
上述したように、固形残渣調整チャンバーの物理的設計特性は、多数の要因によって決定される。これらの要因は、例えば、処理される固形残渣の組成および容積を含む。チャンバーに入る固形残渣は、一つを超える源から同時に収集され得る。従って、固形残渣調整チャンバーの内部配置およびサイズは、処理される入力固形残渣の操作特性によって決定付けられる。
【0172】
固形残渣調整チャンバーの設計において検討すべきもう一つの要因は、固形残渣が、当該固形残渣を融解および均質化するのに十分な温度まで上げられることを確実にするのに必要な滞留時間である。
【0173】
プラズマ加熱手段の位置および配向だけでなく、使用されるプラズマ加熱手段の種類は、固形残渣調整チャンバーの設計において検討されるべき、さらなる要因である。プラズマ加熱手段は、結果として生じる溶融固形残渣がチャンバーから流れ出るのを可能にしながら、固形残渣を、当該固形残渣を融解および均質化するために必要なレベルまで加熱するのに必要な温度を満たさなくてはならない。
【0174】
本発明の制御サブシステム200は、固形残渣取り扱いサブシステム16全体にわたって配置されている部位において、温度および任意で圧力を監視するための監視手段202を提供することによって固形残渣のスラグへの効果的な変換を制御し、そのようなデータは、継続的または間欠的に取得される。チャンバー内の温度を監視するための監視手段202は、例えば、チャンバーの外壁、または、チャンバーの頂上部、中央、および底部にある耐火物内に配置されてよい。本発明の制御サブシステム200は、熱源44への動力および固形残渣入力速度等の操作パラメータを制御するための制御手段206も提供する。
【0175】
例えば、融解の温度が高すぎる場合、制御サブシステム200は、プラズマ熱源44の電力定格の降下を命令することができ、逆に、融解の温度が低すぎる場合、制御サブシステム200は、プラズマ熱源44の電力定格の増大を命令することができる。
【0176】
一実施例において、固形残渣取り扱いサブシステム16は、熱を回収するための手段(例えば、図29、30のプラズマ熱源冷却手段53およびスラグ冷却手段55)を備えてもよく、当該手段は、生成される廃熱の量を削減することができる。そのような熱回収手段は、例えば、熱交換器を含んでよい。そのような実施例において、制御システムは、熱交換器の操作状態をさらに制御することができる。熱交換器は、例えば、多数の温度センサー、流れ制御要素、およびその他のそのような監視および制御手段202、206を有し得る。
【0177】
スラグチャンバーは、任意で必要となり得る付加的な構造要素/器具を収容するための一つ以上のポートを含んでもよい。例えば、スラグ出口46での閉塞形成の監視を含む、処理のすべての側面についてオペレータの完全な可視性を維持するための、複数の閉回路テレビポートを含み得る観察ポートである。別の実施例において、スラグチャンバーは、洗浄/清浄、維持管理、および修理のためにチャンバーに入ることを可能にするための修理点検ポートを含んでよい。そのようなポートは当該技術分野において既知であり、様々なサイズの密閉可能なポート孔を含む。
【0178】
熱回収サブシステム
ここで、図1から4、24から26、29、30を参照すると、本石炭ガス化システム10は、18のような、高温生成ガスからの熱の回収のための手段も提供する。この熱回収サブシステム18は、高温生成ガスを一つ以上のガス/空気熱交換器48に伝達するための手段を備え、それによって高温生成ガスは空気を加熱するのに使用される。続いて、(加熱された交換空気の形態で)回収された熱は、任意で、図24および25に特に示すようなガス化処理に熱を提供するために使用されてよく、それにより、ガス化処理を駆動するために必要な、一つ以上のプラズマ熱源15によって提供されなくてはならない熱の量を削減する。回収された熱を、産業用または住宅用の加熱用途において使用してもよい。
【0179】
他の一実施例において、ガス/空気熱交換器48は、酸素または酸素富化空気等の酸化剤を加熱するために用いられ、続いて任意で、ガス化処理に熱を提供するために使用され得る。
【0180】
プレート型熱交換器だけでなく、直線状の単一パス設計およびU字管、複数パス設計双方の、シェルアンドチューブ型熱交換器を含む異なる種類のガス/空気熱交換器48を本システムにおいて使用してもよい。適切な熱交換器の選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0181】
周囲空気入力温度および高温合成ガスにおける著しい差により、ガス/空気熱交換器48内の各管は、管破裂を回避するために、好ましくは個別の伸縮型送風機を有する。管破裂は、ガス混合物に侵入する空気に起因する問題による高い危険を提示するものである。管破裂は、単一チューブが詰まり、それによってもはや残りの管束と共に膨張/収縮しない場合に発生し得る。
【0182】
管漏れによる潜在的危険を最小化するために、本発明のシステムは、ガス/空気熱交換器48の生成ガス出口と関連付けられた一つ以上の個別の温度伝送器をさらに備える。これらの温度伝送器は、合成ガス導管への交換気漏れという事象における燃焼に起因する温度上昇を検出するように位置付けられる。そのような温度上昇の検出は、熱回収システムを通って冷却液を移動させる誘導空気ブロワーの自動的な運転停止を引き起こすことになる。
【0183】
ガス/空気熱交換器48は、シェル側ではなく管内に生成ガスを流すように設計される。一実施例において、生成ガスは「貫流(ワンススルー)」設計で、垂直に流れ、これによって、粒状物質による構築または浸食が発生し得る面積を最小化する。一実施例において、処理空気は、ガス/空気熱交換器48のシェル側を向流的に流れる。
【0184】
任意で、熱回収サブシステムは、蒸気を生成するために、50のような、一つ以上の熱回収蒸気発生器をさらに備え、当該蒸気は、図24および26に特に示すように、ガス化反応において処理添加物として、蒸気タービン52を駆動、または、誘導ブロワ等の回転処理機器を駆動するために使用され得る。生成ガスからの熱は、熱回収蒸気発生器(図1、3、4)または廃熱ボイラー(図24)等の熱交換手段50を使用して蒸気を生成するために、水を加熱するのに使用される。一実施例において、生成ガスからの熱を使用して作り出された蒸気は、過熱蒸気である。
【0185】
特に図24から26を参照すると、48のようなガス/空気熱交換器と50のような熱回収蒸気発生器との間の関係が、本発明の一実施例に従って描写されている。交換蒸気は、石炭の合成ガスへの変換を最大化するために、十分な遊離酸素および水素を確実にするためのガス化処理中に、処理蒸気添加物としても使用され得る。
【0186】
変換処理内で、または、回転処理機器を駆動するために使用されない蒸気は、52のような蒸気タービンの使用による、もしくは地域の加熱用途における電気の産出等、その他の商業目的のために使用されることができ、または、それらの目的のために地域産業顧客に支給されることができ、または、タール砂からの油の抽出を向上させるために使用されることができる。
【0187】
一実施例において、熱回収蒸気発生器(Heat Recovery Steam Generator;HRSG)50は、ガス/空気熱交換器48からのダウンストリームに配置されている。別の実施例において、本システムにおいて用いられるHRSG50は、シェルアンドチューブ型熱交換器である。HRSG50は、合成ガスが管を通って垂直に流れ、シェル側で水が沸騰するように設計される。
【0188】
ガス/空気熱交換器48およびHRSG50は、生成ガス中には何らかの粒状物質が存在することを理解のもとで設計されている。粒子サイズは、通常、0.5乃至350ミクロンである。一実施例において、ここでの生成ガス速度は、浸食を最小化しながら、管の自己清浄に十分高いレベルに維持もされる。
【0189】
出て行く生成ガスの温度が所定の限界を超える場合、これは、管が詰まり始めていることを示している可能性があり、そのときにシステムは維持管理のために運転を中止せねばならない。熱交換器には、必要に応じて、導管の修理および/または清浄だけでなく、器具の使用、検品、および維持管理用のポートが設けられる。
【0190】
本発明の一実施例において、システムは、間欠的に作動する、すなわち、必要に応じて、多数の起動および遮断サイクルを受ける。従って、機器は、繰り返される熱膨張および収縮に耐えるように設計されなくてはならないことが重要である。
【0191】
加熱された交換空気および熱回収システムによって作り出された蒸気だけでなく、高温生成ガスから回収され得る顕熱の量を最大化するために、コンポーネント間の導管には、任意で周囲の環境への熱損失を最小化するための手段が設けられる。熱損失は、例えば、当該技術分野では既知のもののような絶縁材料を備える導管周囲の絶縁障壁の使用によって、または、導管の長さを最小化するようにプラントを設計することによって、最小化され得る。
【0192】
図2および27を参照すると、本システム10の一実施例において、様々な蒸気タービン52(合成ガスをを冷却する(線86)ために使用されるHRSG50によって生成された蒸気で作動する蒸気タービン、ガス・タービン/エンジン24およびそれによって生成された排ガス(線88)を冷却するために使用されるHRSG50によって生成された蒸気で作動する蒸気タービン、またはそれらの任意の組み合せ)の出力から取り戻された蒸気は、さらなる熱交換器90によって冷却され、冷却塔ポンプ等によって供給される。交換機90から出ると、冷却された蒸気/水は脱気器92によって汲み上げられ、空気およびそこからの過剰な酸素を除去し、続いて処理されて、排ガスHRSG50(線94)、合成ガスHRSG50(線96)等のボイラー給水に戻るために、適切な化学物質を伴う軟水源によって供給される。
【0193】
上記で提示したように、本ガス化システム10は、システム全体にわたるエネルギーの伝達を最適化するための統合制御手段200も備え、それによって、石炭/エネルギー変換のエネルギー論を管理する。ガス化処理に戻る回収された顕熱の再生利用は、石炭を乾燥および揮発させるステップのために外部電源から必要とされるエネルギー入力の量を削減するため、石炭/エネルギー変換のエネルギー収支は、本システムを使用して最適化され得る。回収された顕熱は、特定の性質の合成ガスを実現するために必要とされるプラズマ熱の量を最小化するのにも役立ち得る。このように、本発明は効果的な石炭のガス化を可能にし、任意で、生成ガスから回収された顕熱を使用して加熱された空気によってガス化熱源が補足され得る。
【0194】
本発明の効率を最適化するために、統合制御サブシステム200は、本発明によるシステムの操作状態だけでなく、本処理が実行される状態を制御するための手段も提供する。これらの制御手段は、全体システム制御手段200に組み込まれてよく、システム全体にわたる特定の場所における温度およびガス流れ速度を含むがこれらに限定されない一つ以上のパラメータを監視し、定義されたパラメータ内にシステムを維持するよう、操作状態を適宜調整するために提供される。制御手段206を介して制御手段によって調整され得る操作状態の例は、一つ以上の交換気流れ速度、生成ガス流れ速度、石炭入力の速度、蒸気等の処理添加物の入力の速度、および、プラズマ熱源15、44への電力等を含む。
【0195】
例えば、温度伝送器(およびその他のそのような監視手段202)は、システム10の全体にわたり、特定の場所に設置され得る。温度伝送器は、HRSG吸入口および出口における生成ガスの温度だけでなく、例えばガス/空気熱交換器吸入口および出口における生成ガスの温度を測定するために、配置され得る。温度伝送器は、HRSG50を出た際の蒸気の温度を測定するだけでなく、ガス/空気熱交換器48内で加熱した後の処理空気の温度を測定するために提供されてもよい。
【0196】
これらの温度測定を使用して、それぞれの熱交換器に入る際の合成ガスの温度が、当該装置の理想的操作温度を超えないことを確実にすることができる。例えば、ガス/空気熱交換器48の設計温度が1050℃である場合、熱交換器への吸入口ガス流上にある温度伝送器を使用して、最適な合成ガス温度を維持するために、システムを通る交換気流れ速度およびプラズマ熱電力の両方を制御することができる。さらに、生成ガス出口温度の測定は、最適な量の顕熱が両方の熱回収段階で生成ガスから回収されたことを確実にするために有用となり得る。
【0197】
加熱された交換気の温度を測定するために空気出口流に設置された温度伝送器は、ガス化処理で使用するのに適した温度まで処理空気を確実に加熱する条件下で、処理が実行されることを確実にする。一実施例において、交換気出口温度は例えば約600℃であり、従って、空気出口流に設置された温度伝送器は、最適な合成ガス入力温度を維持するために、システムを通る空気流れ速度およびプラズマ改質チャンバー中のプラズマ熱源動力の一つまたは両方を制御するために使用されることになり、続いて、加熱された交換気の温度を制御するために使用され得る。
【0198】
本発明の一実施例によると、制御戦略では、HRSGガス出口温度の固定値、例えば約235℃だけでなく、最適な加熱された交換空出力温度のための固定の設定値、例えば約600℃を設定している。従って、この実施例によると、合成ガス流れが削減される場合、ガス/空気熱交換器48の出口ガス温度はより低温になり、HRSGガス出口温度も固定値に設定されていることによって、蒸気産出の減少をもたらす。
【0199】
システムを通る空気流れが削減される場合にも同じ概念が当てはまる。本発明の一実施例によると、出口交換気温度は固定されたままであるため、ガス/空気熱交換器48の出口生成ガス温度はより高温になり、従って、HRSG中により多くの蒸気を作り出す。しかしながら、システムを通る空気流れが削減されると、結果として生成ガス流れも削減することになるため、HRSG50への増大した吸入口温度が瞬間的に高くなるだけである。例えば、空気流れが50%まで削減されると、HRSG50が瞬間的に経験する最大吸入口ガス温度は約800℃となり、これは熱交換器設計の温度限界内である。
【0200】
さらに、ガス化処理に必要とされるよりも多くの空気が予熱された場合、処理空気を大気中へ放出するための自動弁を制御するための制御手段206も任意で提供され、全体システム制御手段200に組み込まれる。例えば、場合によっては、機器配慮による処理(例えば、運転停止手順を開始する際)に必要なものよりも多くのガスを加熱することが必要である。そのような場合には、必要に応じて、過剰な交換空気を放出することができる。
【0201】
システムは、最適な処理条件を維持するための修正手順を実装するために必要となり得るようなさらなる情報を提供するために、合成ガス構成、石炭入力速度、および処理添加物入力速度(図15および16参照)のうち一つ以上の監視をするための手段をさらに備えてよい。様々なそのような監視手段202が当該技術分野で知られており、本発明のシステムにおいて用いられ得る。
【0202】
図29および30を参照すると、上述した熱回収サブシステム18は、プラズマ熱源15、44(例えば、源冷却手段53)、スラグ取り扱いおよび処理手段(例えば、スラグ冷却手段55)等の冷却を提供するだけでなく、後に続くフィルタリングおよび調整ステップ、すなわちGQCS20(例えば、GQCS冷却手段61)に必要とされるような生成ガスの冷却も提供し得る。
【0203】
ガス性質調整サブシステム
ここで図1から4を参照すると、本石炭ガス化システム10は、石炭ガス化処理の生成物を特定の特性の出力ガスに変換するために、ガス性質調整サブシステム(GQCS)20、または、その他そのようなガス調整手段も提供する。
【0204】
GQCS20を通って生成ガスが通過することにより、生成ガスには化学および粒状汚染物質がないことを確実にし、従って、エネルギー生成システムまたは化学物質の製造において使用され得る。この調整ステップは、エネルギーの生成または化学物質の製造を目的として有さない本発明の実施例においても必要とされ得る。例えば、ガス性質調整サブシステム20による生成ガスの処理は、地方排ガス基準の厳守を維持しながら、排出機構を通って生成ガスが開放され得ることを確実にすることができる。
【0205】
一実施例において、本発明のガス化システム10の目的は、再生可能電気エネルギーの産出のために、ガス・タービン24に供給するのに適した特定の特性(すなわち、構成、発熱量、純度、および圧力)を持つ燃料ガスを作り出すことである。燃料は、本明細書で記載する処理を通して石炭の熱分解/ガス化によって生成されるため、ガス・タービンの正常で安全な操作に適さない、ある量の廃棄不純物、微粒子、および/または酸化ガスが存在することになる。
【0206】
生成ガスはGQCS20へ方向付けられ、そこで、ダウンストリーム用途に必要とされる特性を有する出力ガスを作り出すための、特定の一連の処理ステップに供される。上記で簡単に説明したように、GQCS20は、合成ガスからの、粒状物質54、酸化ガス(例えば、HS除去手段56、および、考えられる少量のHCl用のHCl洗浄装置57等の任意のHCl除去手段)、および/もしくは重金属58の除去、または、ガスがシステムを通過する際にその湿度および温度を調整することを含み得るがこれらに限定されない処理ステップを実行する、コンポーネントを備える。必要とされる処理ステップの存在および順序は、合成ガスの組成およびダウンストリームでの使用のための出力ガスの特定の組成によって決定される。上記で提示したように、システム10は、GQCS処理を最適化するための統合制御サブシステム200も備える。
【0207】
一実施例において、ガス化システムの誘導ファンの真空抽出条件下で、ガス化システムの出ガス出口40を介して、ガス化システムから高温生成ガスが継続的に引き抜かれる。パイプまたはその他の導管等のガス伝達手段は、ガス化チャンバー14からGQCS20へガスを伝達するために使用される。
【0208】
一次GQCSおよび二次GQCS等、一つ以上のGQCS20が使用され得ることも考えられる。この場合、二次GQCSは、一次GQCS内のガス流から除去された粒状物質および重金属等の材料を処理するために使用され得る。GQCS20からの出力ガスは、ガス貯蔵タンク23(図4)内に貯蔵され、均質化室25(図1)等のさらなる処理手段を通して供給される、あるいは、そのために設計された(すなわち、図2および3)ダウンストリームの用途に直接供給されることができる。
【0209】
上述したように、そのような調整ステップの前に高温生成ガスを冷却するための手段を提供することが有利である。冷却ステップは、システム内の熱に弱いコンポーネントへの損傷を防止するために必要とされ得る。一実施例において、冷却ステップは、熱回収サブシステム18によって実行され、それによって、生成ガスから回収された熱を任意で回収し、ガス化処理での使用に再生利用することもできる(図24から26参照)。
【0210】
別の実施例において、ガス化システムからのガスはまずクエンチャー(図示せず)等の蒸発器内における直接水蒸発によって冷却される。さらに別の実施例において、ガス化システムからGQCS20へ入る合成ガスを冷却するために蒸発冷却塔(乾式急冷)が使用され得る。蒸発冷却塔は、合成ガスの温度を約740℃から約150〜200℃に冷却することができる。この処理は、制御された方法でガス流への水の直接噴射を伴う断熱飽和を使用することによって実現され得る。蒸発冷却処理は乾式急冷処理であり、冷却されたガスに湿気がないこと、すなわち、冷却されたガスの相対湿度が、冷却された温度でも依然として100%を下回ることを確実にするために、監視され得る。
【0211】
上述したように、GQCS20は、電気を作り出すためのガス・タービン24内での燃焼、または、さらなる化学的生成処理中における原料28等、生成ガスのダウンストリーム使用に適合しないガス状汚染物質だけでなく、任意で冷却されたガスから粒状物質を除去するための、54のような手段を備えてよい。微粒子除去システム54は、変換機を出る燃料ガス中に同伴され得る微粒子を除去するために組み込まれる。微粒子除去システム54は、広く利用可能であり、例えば、ガス調整の実務者に既知である、高温度(セラミック)フィルタ、サイクロンセパレータ、ベンチュリ洗浄装置、エレクトロフィルタ、キャンドルフィルタ、直交流フィルタ、粒状フィルタ、水洗浄装置、繊維バグハウスフィルタ(図1)等を含み得る。
【0212】
当該技術分野において知られているように、微粒子は、微粒子サイズに応じて多数の手法で除去され得る。例えば、粗粒子は、サイクロンセパレータまたはフィルタを使用して除去され得る。より小さいまたは細かい粒子は、湿式ESPまたはバグハウスフィルタ(図1)を使用して除去され得る。一実施例において、それを10g/Nmほど装填した微粒子では、99.9%の効率で粒状物質を除去する物理的障壁が必要とされ得る。湿式ESPは静電場によって駆動され、酸素含有量が特定のレベルに到達したら電流を止める制御機構がないと、高酸素含有量のガス流と共に使用するには適さない場合がある。
【0213】
一実施例において、第一の粒子除去手段は粗粒子を除去するために使用され、第二の粒子除去手段はより小さいまたは細かい粒子を除去するために使用される。一実施例において、第一の粒子除去手段は、5〜10ミクロンより大きいサイズの粒子を除去することができるサイクロンフィルタである。別の実施例において、第二の粒子除去手段は、バグハウスフィルタである。
【0214】
代替的な実施例では、代替的なガス清浄装置の特性をより効率的に使用するために、様々なガス清浄化ステップの順序を変更する場合がある。しかしながら、用いられる特定の微粒子除去システムによっては、上述したような微粒子除去システムに入る前に、反応槽14を出る燃料ガスを冷却することが望ましい場合もある。バッグ型フィルタはセルロースまたは有機ポリマーベースであることが多く、極めて高い温度に耐えることができないため、燃料ガスの冷却は、微粒子除去にバッグ型フィルタが使用される場合に特に重要なものとなり得る。
【0215】
続いて、粉塵が収集され、ガス調整システム内で有害の固体廃棄物が作り出されたり、または生成されないように、ガス化反応槽へ送り返され得る。もう一つの方法として、微粒子は、洗浄装置の固体を未浸出のスラグにガラス化するために、スラグ貯留槽(図1参照)へ方向付けられ得る。場合によっては、植物配慮および地方の規制に応じて、ガス清浄化システムからの固体は、安全な廃棄のために現地外へ送られる場合がある。
【0216】
生成ガスから水銀またはその他の重金属を除去するための、58のような手段が提供される場合もある。例えば、乾式噴射システムでは、細かい重金属粒子および噴煙が活性炭表面に吸着できるような十分な滞留時間でガス流中に噴射される、計算された量の活性炭を利用する。活性炭に吸着された重金属は、バグハウスフィルタ内に捕捉され得る。もう一つの方法として、活性炭に吸着された重金属を捕捉するために、湿式ESPシステムを使用してもよい。本発明の一実施例において、活性炭に吸着された重金属粒子は、バグハウス内に捕捉される。
【0217】
酸洗浄システムも、重金属を捕捉するために効果的な技術である。このシステムでは、重金属を含有するガスの通路が、低pH(通常1〜2)溶液が循環する充填カラムを通過することが必要である。重金属および重金属化合物は、酸と反応して、安定な化合物を形成する。この技術により、循環溶液中の重金属濃度は増大し、従って、結果として生じる廃水の処理が必要となる場合がある。一実施例において、GQCS20は、重金属を除去するための酸洗浄システムを備える。
【0218】
一実施例において、活性炭水銀研磨器によって水銀除去手段が提供される。活性炭ろ床を、重金属用の最終研磨装置として使用することができる。生成ガスは、ガス流から重金属(主に水銀)を吸着する活性炭ろ床を通過する。通常、活性炭フィルタは、水銀の99.8〜99.9%を超える除去を実現するために使用され、7〜8インチのWC圧力降下を伴う最終研磨装置として使用される。
【0219】
酸回収サブシステム56は、市価を有し得る、(高硫黄石炭から)硫黄または硫酸および(塩素化炭化水素から)塩酸を回収するための、ガス調整システム20に連結される。酸除去システム56は、洗浄装置システムと、酸除去システムと、硫黄および/または酸除去システムに関連するその他の従来の機器を含み得る。
【0220】
以下の段落は、提供される新しいデータに置き換えられるであろう。石炭ガス化システム内で作り出された生成ガスは、HClおよびHS等の酸化ガスを含有することになる。生成ガス中のこれらの酸化ガスの濃度は、HClについては約0.05から約0.5%、HSについては約100ppmから約1000ppmの範囲である。一実施例において、HClの見込み濃度は約0.178%であり、HSは約666ppm(0.07%)である。HClの排出限度は約5ppmであり、一方、SOの場合は約21ppmである。
【0221】
酸化ガス除去は、乾式洗浄または湿式洗浄によって実現され得る。乾式洗浄の主なコンポーネントは、噴霧乾燥吸収装置、および、バグハウスろ過の前の、ソーダ灰または石灰粉噴射である。通常、乾式洗浄では、99%を超える酸除去効率を実現することは困難である。
【0222】
塩素の量が経済的に大きいサイズのものである場合、当該塩素は再利用され得る。塩素が多すぎる量で存在する場合、任意の適した方法(例えば、水または湿式洗浄、活性ボーキサイト吸着等)で除去される。ガスは、ガス/液体洗浄装置接触器内の塩素等の成分を除去するために処理され得る。湿式洗浄の最も大きな利点は、圧力降下がより低い、熱伝達および物質伝達のための、大きい接触面積であり、それは、ガスのサブ冷却をうながす。水酸化ナトリウムは、湿式洗浄に使用される従来型のアルカリ溶液である。一実施例において、酸化ガスを洗浄するために、充填カラムが使用される。
【0223】
硫黄化合物は、最初に再結合する化合物のうちの一つであり、硫黄元素、硫黄‐酸素化合物、または硫黄‐水素化合物のいずれかとして再結合する。硫黄化合物の量がコストを正当化する一実施例において、76のような硫黄回収施設が、熱交換器に隣接し硫黄化合物が安定となる温度に到達する場所にある、導管に沿って位置付けられる。硫黄回収施設76の種類およびサイズは、吸入口流における硫黄の見込み量によって決まる。
【0224】
石炭の低い硫黄度で見込まれるように、硫黄の予想量がかなり低い場合には、硫黄を元素鉄と反応させて硫化鉄を作り出すために、鉄ヤスリ技術が使用され得る。これは、導管内の分画と回収分画との間で鉄ペレットを循環させることによって達成され得る。
【0225】
高硫黄含有石炭の場合、第二段階の液体洗浄処理を使用して、硫黄化合物をガスから取り除く。硫黄は、給気口ストリームに含まれると想定される硫黄量に応じて、任意の適切な技術によって回復されてもよい。さらにダウンストリームで、アミンスクラバーが硫化水素および二酸化炭素をガスストリームから取り除き、ストリームが主に水素、一酸化炭素、および不活性ガスを含むようにする。そのようなアミンスクラバーは当該技術分野において知られており、一般にアミン処理を含む。ここでモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはメチルジエタノールアミンの水溶液を使用して、硫化水素を処理ガスから取り除く。硫黄を除去する他の方法には、例えば、Clausプラント(図1)、Resox還元処理、コールドプラズマ硫化水素解離処理などが挙げられる。
【0226】
さらに、硫黄の除去に適した方法には、例えば、NaOHまたはトリアジンを用いた湿気吸収、Sufatreatを用いたドライ吸着、Thiopaqなどの生物学的処理、あるいは液体レドックス(低CAT)を含む選択的酸化などが含まれる。一実施例において、硫化水素はThiopaqを用いて合成ガスから取り除かれる(図1を参照)。Thiopaqは二段階処理であり、ここで酸性ガスが弱アルカリ溶液(pH8.5〜9)で洗浄され、続いて硫黄が回復される(HS−は生物学的処理によって酸化されて硫黄元素になる)。その他の方法は、移動床チタン酸亜鉛またはフェライト吸着処理、酸化化学反応処理(例えばStretfordおよびSuLFerox)、およびSelexol酸除去処理を含むが、それらに限定されない。そのうち後者は一般に、物理的溶媒(例えばポリエチレングリコールジメチルエーテル)を高圧力(例えば300〜1000psig)で使用するステップを含む。
【0227】
さらに、触媒として作用する炭素の存在下、250℃〜350℃でダイオキシンが形成される場合もあるが、プラズマガス化状態がその形成を妨げることが知られている。ダイオキシンの形成をさらに最小化するため、一般に合成ガスを急冷器またはスプレー乾燥吸収装置において急冷して、上述の温度範囲で確実に高速急冷が行われるようにする。活性炭を合成ガスに注入することによって、炭素表面上のダイオキシンおよびフランが吸収され、その後バグハウスフィルターで除去される。
【0228】
霜取り装置または再熱器を脱湿および/または凝縮防止の目的で組み込むこともできる。熱交換器を組み入れて、ダウンストリーム発電装置に必要な吸温度度まで燃料ガスを再加熱できる。圧縮機を随意に組み込んで、ダウンストリーム発電装置に必要な吸気圧力まで燃料ガスを圧縮することもできる。
【0229】
さらに別の実施例において、湿度制御手段はGQCS20の一部である。前記湿度制御手段は、用いられるダウンストリーム用途に対して出力ガスの湿度が適切となるようにする。例えば、湿度制御手段は冷却器を装備してガスストリームを冷却し、それによっていくらかの水をガスストリームから凝縮してもよい。この水は、ガス/液体分離器によって取り除くことができる。一実施例において、そのようなガスストリーム処理によって、GQCS20から出るガスストリームが26℃で約80%の湿度を持つようにする。次にガスを(例えばガス貯蔵装置23に)保存する。
【0230】
別の実施例において、前記ガス処理サブシステムは、二酸化炭素を回復する手段および/またはアンモニアを回復する手段を含むことができる。適切な手段は、当該技術分野で知られている。
【0231】
また生成ガスをガスクロマトグラフ(GC)分析用に抽出して、化学組成を特定する。これらの分析用の抽出ポイントは、生成ガス取り扱い/汚染対策サブシステム全体に広がっている。
【0232】
一実施例において、管理サブシステム200は、GQCS20における操作状態を含む、変換システムにおける操作状態を調整する手段を含むことによって、変換処理の正味全体エネルギー収支を管理し、石炭を特定の化学および物理組成を持つ生成ガスに変換する間、反応状態に対する設定点を特定の変動範囲内に維持する。このシステムは自動化され、様々なガス化システムに適用できる。
【0233】
前記管理サブシステム200は、次の機能を提供することができる。一実施例において、管理サブシステム200は、GQCS20の処理における効率の低下または代替機能の欠如を感知して、ガスストリームをバックアップ処理またはバックアップ調整システムに迂回させることができる。別の実施例において、前記管理サブシステム200は、GQCS20のステップを微調整して、最適状態からのドリフトを最小限にする手段を提供することができる。
【0234】
本発明の管理サブシステム200は、GQCS20を通るガスストリームの化学組成、ガスの流れ、および処理の温度パラメータを分析する監視手段202と、GQCS20内の状態を調節して処理効率および出力ガスの組成を最適化する制御手段206とを含むことができる。反応物質に対する継続調節(例えば十分な滞留時間を伴う活性炭素の注入、酸性ガススクラバー用のpH制御)は、設計仕様に従って効率よく最適に処理が行われる方法で実行することができる。
【0235】
生成ガスを制御するためのサブシステム
本石炭ガス化システムは、例えば生成ガスの化学組成を均質化し、生成ガスの流れ、圧力、および温度などの他の特性をダウンストリーム要件に合うよう調整することによって生成ガスを制御する手段を随意に提供する。この生成ガス制御サブシステム22は、定義された特性を持つ連続的で安定したガスストリームが、ガス・タービン24またはエンジンなどのダウンストリームアプリケーションに送達されるようにする。
【0236】
当業者に理解されるように、前記ガス化処理は組成、温度、または流速が変動するガスを生成する可能性がある。生成ガスの特性における変動を最小化するため、一貫した特性を持つ生成ガスをダウンストリーム装置に送達するために有用な収集手段の形でガス制御システム22が提供される。
【0237】
一実施例において、本発明はガス化処理のガス状生成物を収集し、均質化室25などにおけるガス組成の化学の変動を抑えるガス制御システム22を提供する。このシステムの他の要素は、流れ、温度、および圧力といったガスの特性がダウンストリームアプリケーションに対して受け入れられる範囲内にあるよう随意に調整する。それによって、前記システムは生成ガスの特性を制御し、一貫した特性を持つガスの連続的なストリームを生成して、ガスエンジンまたはガス・タービン24などのダウンストリームアプリケーションに送達する。
【0238】
特に、本発明の任意の生成ガス制御サブシステム22は、一貫した出力組成の均質なガスを得るために十分な滞留時間に対応するよう設計された寸法を持つガス均質化室25(図1)または同種のもの(例えば図1および2のガス圧縮機21、図4のガス貯蔵装置23など)を提供する。本ガス制御システムの他の要素は、ダウンストリーム用途のガス性能要件を満たすよう設計されている。またこのシステムは管理サブシステム200を備え、処理のエネルギーおよび出力を最適化する。
【0239】
本発明の制御システム22に入る生成ガスの組成は、ガス化処理において特定される。ガス化処理中に行われる調節によって、生成ガスを特定の用途に最適化することができる(例えばガス・タービン24または発電用燃料電池アプリケーション26)。従って、使用される異なるタイプの石炭および処理添加物に基づいて、ガス化処理の操作パラメータを調整することにより、生成ガスの組成を特定のエネルギー生成技術(例えば特定のガスエンジンまたはガス・タービン24)用、および最善の全体変換効率を得るよう調整できる。
【0240】
前記ガス化システムから出る生成ガスは、定義された目標組成の範囲内であるかもしれないが、時間の経過に伴って、石炭組成および供給量などのガス化処理における可変性、および空気の流れや温度の変動のために生成ガスの特性は変動する可能性がある。
【0241】
生成ガスの組成制御と同様に、例えば監視手段202を介して、生成ガスの流速および温度を監視し、例えば調節手段206を介してガス化システム内で制御して、ガスのパラメータを最終用途に基づいて定義された許容範囲内に維持できる。こうした制御にかかわらず、生成ガスの流速および温度は時間の経過に伴って変動する。流速の場合、このような変動は秒単位で起こり、温度の場合は分単位で起こることがある。
【0242】
本発明の制御システムにおいて、生成ガスを特定の用途の装置の要件を満たす特定の組成を有するガスに変換できる。前記制御システムは、生成ガス吸気手段、調節ガス排気手段、および任意で非常用出口を持つ一つ以上のガス均質化室25を備える。
【0243】
生成ガス均質化室25は、ガス化システムで作られた生成ガスを受け取り、前記生成ガスの混合を促進して、前記均質化室25における生成ガスの化学組成の任意の変動を抑える。圧力、温度、および流速などを含む他のガス特性の変動も生成ガスの混合中に低減される。
【0244】
前記均質化室の寸法は、室のサイズをできるだけ最小化する目的で、アップストリームガス化システムの性能特性およびダウンストリーム装置の要件に従って設計される。前記ガス均質化室25は、ガス化処理から生成ガスを受け取り、特定の滞留時間ガスを保持してガスを十分に混合し、一貫した化学組成を有するガスを大量に得ることができるよう設計される。
【0245】
前記滞留時間は、生成ガスが前記ダウンストリーム装置に向けられる前に、前記均質化室25に留まる時間である。前記滞留時間は関連するガス化システムの応答時間に比例し、ガス化反応における変動の差異を訂正して、受け入れられる許容値内のガス組成が得られるようにする。例えば、前記ガス組成が、特定のダウンストリーム用途に受け入れられるガス組成の許容範囲内であるかを特定するとともに、ガス化処理に対して任意の調節を行って差異を訂正するために十分な時間、均質化室25に保持される。
【0246】
さらに、前記均質化室25における生成ガスの滞留時間は、生成ガス特性の変動量によって特定される。つまり、生成ガス特性における変動が小さいほど、その変動を訂正するために必要な均質化室25での滞留時間が短くなる。
【0247】
任意のガス制御サブシステム22は、均質化室25において十分な滞留時間を提供するよう設計される。一実施例において、前記ガス制御サブシステム22は、少なくとも1秒の滞留時間を提供する。別の実施例において、前記ガス制御サブシステム22は、2秒以内の滞留時間を提供する。さらに別の実施例において、前記ガス制御サブシステム22は、2〜10秒の滞留時間を提供する。さらに別の実施例において、前記ガス制御サブシステム22は30秒以内の滞留時間を提供する。
【0248】
本発明の任意の制御システム22を出る調節ガスは、ダウンストリームアプリケーションの仕様に適う安定した特性を持つ。一般に機械製造業者は、特定の機械に受け入れられる、当業者に周知の要件および許容範囲を提供する。
【0249】
ガス化システムの使用/処理
本発明に基づくシステムは、石炭のガス化処理を使用して石炭をガス化し、それは、一般に、石炭をガス化反応槽14に運ぶステップを含み、石炭は、加熱、乾燥され、乾燥された原料に含まれる揮発性構成要素が揮発する。本発明の一実施例において、熱せられた空気を使用して、結果として生じた炭化物をさらにそのガス状構成要素に完全変換させて、灰生成物を残す。乾燥、揮発、および燃焼ステップの複合生成物はオフガスを提供し、このオフガスはさらにプラズマ熱源15からの熱を受けて、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、および蒸気から成る熱いガス状生成物に変換される。ガス化段階および/またはオフガス変換段階において、蒸気および/または空気/酸化処理添加物38を随意に追加してもよい。
【0250】
本発明の一実施例における処理は、前記生成物灰を第二プラズマ熱源44によって加熱してスラグ生成物を形成するステップをさらに含む。
【0251】
本発明の処理は、高温生成ガスを熱交換サブシステム18に通し、前記高温ガスからの熱を冷却体に伝送するステップをさらに含む。他の一実施例において、冷却体は空気である。別の実施例において、冷却体は酸素または酸素富化空気から選択された酸化剤である。
【0252】
本発明の処理は、冷却ガス生成物を第二熱交換器18に運び、水である冷却体に冷却されたガスからの熱を移し、さらに冷却されたガス生成物および蒸気を生成するステップを随意に含む。
【0253】
本発明の処理は、消費されるべき電気量をオフセットすることによって、正味変換効率を最大化して、例えばガス化処理を駆動する熱を生成し、回転装置を駆動して、プラズマ熱源15、44に電力を供給する。発電を目的とする用途の場合、ガス化処理全体で消費されたエネルギーと、生成ガスを使用して生成されたエネルギー量(例えばガス・タービン24に電力を供給するためのエネルギー、または燃料電池技術26に含まれるエネルギー)および蒸気タービン52を駆動するための蒸気を生成する顕熱の回復を通じて生成されたエネルギー量と、を比較することによって効率を測定する。
【0254】
ガス化処理は、石炭の入力速度、生成ガスの流速、空気/酸化体および/または蒸気処理添加剤の入力速度、システムの圧力、およびプラズマ熱源に供給される電力量のうち一つ以上を、生成ガスの流速、温度、および/または組成において測定された変化に基づいて補正(またはフィードバック)制御するステップをさらに含む。このフィードバック制御ステップによって、生成ガスの流速、温度、および/または組成を許容範囲内に維持することができる。
【0255】
本発明の一実施例において、前記処理は、ガス化反応槽14への添加に先立って、石炭を事前に加熱するステップをさらに含む。
【0256】
一実施例において、本発明に基づくガス化処理は、ガス/空気熱交換器48からの熱せられた空気または他の酸化剤を使用して、ガス化反応槽14を石炭のガス化に適切な温度に加熱する。一般にシステム10の起動時に使用されるこの実施例において、空気がシステムに供給され、それにより、プラズマ熱によって加熱され、熱い起動ガスを提供し、次にガス/空気熱交換器48に入って熱せられた空気を生成する。この熱せられた空気は加熱空気吸気手段に運ばれ、ガス化反応槽14を加熱して、化石燃料を使用せずに処理全体を行えるようにする。
【0257】
ここで、特定の例を参照して本発明を説明する。次の例は本発明の実施例について説明することを意図するもので、当然のことながら、いかなる方法においても本発明は制限されない。
【0258】

一般に、本発明のシステムは、適宜プラズマ熱源15、熱せられた空気、または任意の他の熱源などの熱源からの熱とともに、石炭をガス化反応槽14に供給することによって使用される。ここで原料は十分な熱を受けてガス化反応を実現する。
【0259】
石炭の加熱によって、任意の残留水分が取り除かれ、任意の揮発性構成要素が揮発されることにより、部分的に酸化された炭化生成物が提供される。この部分的に酸化された炭化生成物をさらに加熱すると、炭化物はそのガス状構成要素に完全に変換され、灰生成物が残る。それが、その後さらに加熱されると、スラグに変換される。
【0260】
ガス化反応槽に酸素を追加注入して、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素粒子を生成する発熱反応を開始または増加させる。加熱処理された空気によって随意に提供される熱に伴う発熱反応によって、ガス化反応槽14内の処理温度が上昇する。
【0261】
一実施例において、前記処理温度は約1000℃〜約1300℃であるが、それより低い温度および高い温度も考えられる。本発明の一実施例において、処理には平均ガス化温度が採用され、反応槽内の温度は約1100℃+/−100℃である。
【0262】
改質(reformation)
前記ガス化反応槽14において形成されるオフガスは、プラズマ熱源15を用いてさらに加熱され、随意に蒸気で処理される。これらの反応は主に吸熱性である。本発明の一実施例において、特定のガス生成物への完全な変換を確実にするため、適切なレベルで反応を維持し、それと同時に、汚染を最小化できるように、温度は十分に高い範囲で維持される。一実施例において、温度範囲は約900℃〜約1300℃である。熟練者であれば、適切な温度範囲を容易に特定できる。
【0263】
改質ステップで追加される蒸気は、特定の組成を有するガス生成物を形成する一方、ガスの出口温度を下げる働きがある。一実施例において、生成ガスの出口温度は約900℃〜約1200℃の間まで低下する。別の実施例において、生成ガスが流出する際の平均温度は約1000℃+/−100℃まで下がる。
【0264】
一つの典型的な実施例において、石炭、酸素、およびプラズマ熱源15への電力量は、出口合成ガスの流速、出口温度、および組成の監視に基づいて特定することができる。
【0265】
特に図15および16に関連して、ライン100および102を介する出口ガスに含まれる一酸化炭素および二酸化炭素の流速を示す数値は、ライン104における石炭の供給速度を示す数値(例えば制御手段206−1を介して取得される)とともに、第一演算処理装置(ロジックボックス30によって示す)に入力される。前記第一演算処理装置30はガス化反応槽14に含まれる炭素量を推定し、それに基づいて石炭の供給速度を調整する。
【0266】
一酸化炭素%および二酸化炭素%を示す数値指標を提供する第一演算処理装置30からの出力は、ライン108を介する水素%の数値、およびライン110を介する蒸気(例えば制御手段206−2を介する)および酸素(例えば制御手段206−3を介する)の数値とともに、ライン106を介して第二演算処理装置(ロジックボックス32によって示す)に入力される。前記第二演算処理装置32は、新しい酸素および蒸気入力を推定して、特定のガス組成を得る。
【0267】
前記第二演算処理装置32からの出力は、ライン114を介する出口ガス温度の数値の入力表現とともに、ライン112を介して第三演算処理装置34に入力される。第三演算処理34装置は、ライン116を介して電源出力(例えば調節手段206−4に送られる)として出力する新しいプラズマ熱源電力(例えばプラズマトーチ)を計算する。
【0268】
生成物灰の溶解
本発明の一実施例において、第二プラズマ熱源44を用いて溶解することによって、炭化物燃焼ステップの固体生成物灰を任意でさらに処理する。粒子をスラグプールに取り込む場合は、十分な時間をかけてすべての揮発性および炭素が完全に取り除かれるようにする。当業者には周知のとおり、滞留時間は粒子サイズの関数である。第二プラズマ熱源44によって生成された熱はスラグを均質化し、熱いうちに抽出されるようにする。前記プラズマ熱源44は、温度が約1100℃〜約1600℃になるまでスラグを加熱する。一実施例では、温度が約1400℃〜約1650℃になるまで加熱する。温度プロファイルを操作することによって、熱、および、後にガス化反応槽14の底でスラグを急冷する水の浪費を防ぐことができる。
【0269】
本発明は特定の実施例に関連して記載されているが、添付の請求項において概説される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その様々な修正も当業者には明らかである。
【0270】
次の例は、統合ガス化複合サイクル(IGCC)発電に適した発熱量を持つ合成ガスを生成する、二種類の低級石炭、褐炭および亜瀝青炭(表1を参照)を比較するために提供されている。
【0271】
次の二つの例は、IGCCにおける使用に適した合成ガスを提供するために必要な操作パラメータを示す。ここで前記複合サイクルは、一つのガス・タービン(42MW)と一つの蒸気タービンを備える。本例では、GE MS6001B複合サイクルが両ケースの標的モデルとして選択されており、正味装置電気出力は約64MWである。本例に従って、複合サイクルの全体効率は45%以上に達しうる。これは従来の石炭火力発電機(30〜33%)よりはるかに高い。
【0272】
前記ガス化反応槽は、噴流床型または流動床型反応のいずれかに基づく。空気分離装置(ASU)は一次酸化剤として95%酸素を供給する。固形残渣は、プラズマトーチによって高温でスラグに変換される。変換機から出る生ガス(raw gas)は、微粒子および硫黄除去などのさらなるガス清浄処理に先立って冷却および洗浄される。清浄および調整された合成ガスはガス・タービンに供給され、燃焼して発電に使用される。発電能力を上げるため、蒸気タービンに蒸気を供給する高温排出燃料ガスが熱回収蒸気生成器(HRSG)に導入される。
【0273】
【表1】

【0274】
原料としての褐炭
前記ガス化反応槽は、1000℃〜1100℃の温度範囲、2気圧〜10気圧の圧力範囲で作動する。石炭入力速度は1309T/日で制御され、水分が10%になるまで事前に乾燥される。用いられる酸化剤は純度95%の酸素であり、約205SCFM(463T/日)の入力速度で供給される。冷却および清浄後の合成ガスは、水素を35.6%、一酸化炭素を31.4%含み、発熱量は9.1MJ/mである。乾燥清浄された合成ガスの体積流量率は、約47,323m/hrである。冷ガス効率は、固体燃料から合成ガスに運ばれるエネルギー量を考慮すると、約85%である。
【0275】
原料としての亜瀝青炭
前記ガス化反応槽は、平均温度1100℃、圧力範囲2気圧〜10気圧で作動する。石炭入力速度は、617T/日で制御され、水分が10%になるまで事前に乾燥される。用いられる酸化剤は純度95%の酸素であり、約85SCFM(127T/日)の入力速度で提供される。冷却および清浄後の合成ガスは、水素を45.0%、一酸化炭素を30.5%含み、発熱量は10.2MJ/mである。乾燥清浄された合成ガスの体積流量率は、約51,400m/hrである。冷ガス効率は、固体燃料から合成ガスに運ばれるエネルギー量を考慮すると、約86%である。
【0276】
前述のとおり、同様の発熱量を持つガスを生成する亜瀝青炭および褐炭のガス化を比較したところ、褐炭のガス化のほうが酸化剤として酸素をより多く消費し、ガス・タービンへの合成ガスの生成が少ないことがわかる。これは、亜瀝青炭に比べ、同量の電力を生成するにはより多くの褐炭が必要であることを意味する。また原料としての褐炭の冷ガス効率も、予想どおり亜瀝青炭より低い。しかし本例は、本ガス化システムを使用して低級の石炭をIGCC発電に適した発熱量を持つ合成ガスに変換できることを示している。
【0277】
すべての特許、公開済み特許出願を含む出版物、および本明細書で参照されるデータベースエントリーの開示は、そのような特許、出版物、およびデータベースエントリーが、それぞれを参照によって明確かつ個別に組み込まれることが示されるのと同様に、それら全体が参照することによって明確に組み込まれる。
【0278】
独占的所有権または特権が特許請求の範囲に記載されている、本発明の実施例は特許請求の範囲に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】図1は、本発明の様々な実施例による、石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステムを示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の様々な実施例による、石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステムを示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の様々な実施例による、石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステムを示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の様々な実施例による、石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステムを示す概略図である。
【図5】図5は、図1から4のシステムのための様々な下流側の用途を示す概略図である。
【図6】図6は、図1から4のシステムのための様々な下流側の用途を示す概略図である。
【図7】図7は、図1から4のシステムのための様々な下流側の用途を示す概略図である。
【図8】図8は、図1から4のシステムのための様々な下流側の用途を示す概略図である。
【図9】図9は、図1から4のシステムのための様々な下流側の用途を示す概略図である。
【図10】図10は、図1から4のシステムのための様々な下流側の用途を示す概略図である。
【図11】図11は、図1から10の前記システムと、これに動作可能となるように連動された統合システム制御サブシステムと、の間の情報の流れの監視および制御を示すフローチャートである。
【図12】図12は、図11の前記統合システム制御サブシステムを示す概略図である。
【図13】図13は、図11の統合システム制御サブシステムによって、図1から10の前記システムからそれぞれ受信され、送信される典型的な監視および制御信号を示す概略図である。
【図14】図14は、図1から10の様々な装置、モジュールおよびサブシステムに対する、図11の統合システム制御サブシステムの典型的な監視および制御アクセスポイントを示す概略図である。
【図15】図15は、図1から10のシステムのプラズマガス化槽への出力を制御するための、図11から14の統合システム制御サブシステムの一実施例を示す概略図である。
【図16】図16は、図1から10のシステムのプラズマガス化槽への出力を制御するための、図11から14の統合システム制御サブシステムの一実施例を示す概略図である。
【図17】図17は、図1から10のシステムに使用するための、様々な噴流床プラズマガス化槽を示す概略図である。
【図18】図18は、図1から10のシステムに使用するための、様々な噴流床プラズマガス化槽を示す概略図である。
【図19】図19は、図1から10のシステムに使用するための、様々な噴流床プラズマガス化槽を示す概略図である。
【図20】図20は、図1から10のシステムに使用するための、様々な流動プラズマガス化槽を示す概略図である。
【図21】図21は、図1から10のシステムに使用するための、様々な流動プラズマガス化槽を示す概略図である。
【図22】図22は、図1から10のシステムに使用するための、火床オプションを備えた移動するベッドフロープラズマガス化槽を示す概略図である。
【図23】図23は、図1から10のシステムに使用するための、火床オプションを備えた移動するベッドフロープラズマガス化槽を示す概略図である。
【図24】図24は、図1から10のシステムに使用するための、典型的な熱回収サブシステムを示す概略図である。
【図25】図25は、図24のガス/ガス熱交換器のさらなる詳細を示す概略図である。
【図26】図26は、図24のヘッドリカバリ蒸気発生器のさらなる詳細を示す概略図である。
【図27】図27は、図1から10、特に図2の熱回収蒸気発生器システムからの蒸気/水出力を処理するための任意の蒸気/水処理サブシステムを示す概略図である。
【図28】図28は、図11から16の統合制御サブシステムに任意に使用されている、プラズマガス化処理シミュレーションおよびシステムパラメータ最適化の様々なデータ入力および出力、モデリング手段を示す概略図である。
【図29】図29は、図1から10のシステムに使用するための、さらに典型的な熱回収サブシステムを示す概略図である。
【図30】図30は、図1から10のシステムに使用するための、さらに典型的な熱回収サブシステムを示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステムであって、
一つ以上の処理ゾーンと、一つ以上のプラズマ熱源と、調整可能な石炭供給速度で石炭をガス化反応槽に加えるための一つ以上の石炭入力手段と、調整可能な処理添加物供給速度で処理添加物をガス化反応槽に加えるための一つ以上の処理添加物入力手段と、出力ガスのための一つ以上の排気口とを有するガス化反応槽と、
固形残渣取り扱いサブシステムと、
ガス質調整サブシステムと、
データを生成するため一つ以上のシステムパラメータを測定するためのシステム監視手段と、前記システム監視手段によって生成された前記データを収集および分析するための演算手段と、前記システム全体に配置されている一つ以上のシステム制御装置に変化をもたらす、適切な信号を送る出力手段とを有する統合制御システムと、
を備え、
前記制御システムは、前記一つ以上のシステムパラメータを監視し、前記一つ以上のシステム制御装置に変化をもたらす、適切な前記システム制御装置へと信号を送り、それによって特定の組成の生成ガスを生成する、
石炭を特定の組成のガスへ変換するためのシステム。
【請求項2】
熱回収サブシステムであって、一つ以上のガス/空気熱交換器を含む熱回収サブシステムと、
前記生成ガスを前記一つ以上のガス/空気熱交換器へと伝送する手段であって、前記一つ以上の出力ガス排気口と流体連通する伝送手段と、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱回収サブシステムは、
一つ以上の熱回収蒸気発生器と、
前記一つ以上の熱回収蒸気発生器へ前記生成ガスを伝送するための手段と、
をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ガス質調整サブシステムは、粒状物質除去手段、酸性ガス除去手段、重金属除去手段、および、前記ガス質調整サブシステムを通る時に前記ガスの湿度および温度を調整するための手段のうちの一つ以上を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
生成ガス制御サブシステムをさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記生成ガス制御サブシステムが均質化タンクである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理添加物入力手段が、一つ以上の蒸気吸気口、一つ以上の酸化剤吸気口、もしくはその両方である、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記酸化剤が、空気、酸素、または酸素富化空気である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記固形残渣取り扱いサブシステムが、固形残渣調整チャンバー、プラズマ加熱手段、およびスラグ出力手段を含む、請求項1から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
石炭を特定の組成を有する生成ガスへ変換するための方法であって、
ある石炭入力速度で、石炭をガス化ゾーンへと運ぶステップと、
ある処理添加物入力速度で、処理添加物を前記ガス化ゾーンへと運ぶステップと、
オフガスおよび副生成物灰を提供するため、前記石炭を加熱に供するステップと、
前記オフガスを改質ゾーンへと運ぶステップと、
前記オフガスをプラズマ熱源で加熱するステップと、
前記オフガスを合成ガスへと変換するため、ある蒸気入力速度で前記オフガスに蒸気を加えるステップと、
を有する方法。
【請求項11】
前記副生成物灰を融解ゾーンへと運ぶステップと、
前記副生成物灰をスラグに変換して前記スラグを溶融状態に維持するため、前記副生成物灰をスラグ調整プラズマ熱源による加熱に供するステップと、
前記溶融スラグを前記融解ゾーンから排出するステップと、
硝子体スラグを提供するため、前記溶融スラグを冷却させるステップと、
をさらに有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生成ガスの組成を監視するステップ、前記生成ガスの流れを監視するステップ、および前記生成ガスの温度を監視するステップのうちの一つ以上を含む補正フィードバック手順をさらに有する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記補正フィードバック手順は、特定の生成ガス組成を提供するため、前記石炭入力速度、酸素入力速度、および前記蒸気入力速度のうちの一つ以上を調整するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記補正フィードバック手順は、前記合成ガスの組成における測定された変化に対処するため、前記石炭入力速度、酸素入力速度、および前記蒸気入力速度のうちの一つ以上を調整するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2008−542481(P2008−542481A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513878(P2008−513878)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000882
【国際公開番号】WO2006/128286
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(505305824)プラスコ エネルギー グループ インコーポレーテッド (2)