説明

石炭火力発電システム及び六価クロム溶出抑制方法

【課題】多額の設備投資が不要で、かつ、薬剤を使用せずに石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制することが可能な石炭火力発電システム、及び、この石炭火力発電システムにおける石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制する六価クロム溶出抑制方法を提供する。
【解決手段】石炭火力発電システムは、前記石炭灰を密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器と、前記石炭灰を前記石炭灰封入容器に供給する石炭灰供給手段と、前記熱交換ユニットから前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する排ガス移入手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電システム及び六価クロム溶出抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電システムにおいて石炭を燃焼させる方法としては種々の方式があるが、なかでも、石炭を微粉砕した粒子を炉内に吹き込んで燃焼させる、いわゆる微粉炭燃焼が主に採用されている。そして、燃焼後の残渣となる石炭灰、特に煤塵(フライアッシュ)は、資源の有効利用の観点から、コンクリートや土壌改良材等の土木建築材料として一部が使用されているが、余剰分については埋め立て処分されている。
【0003】
ところで、燃料となる石炭は炭素以外にも、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロム等の有害な元素を微量ながら含んでいる(以下、上記有害な元素を「有害微量元素」という。)。このため、環境への配慮から、石炭灰からの有害微量元素の溶出について、その許容濃度が法律で規定されている。
【0004】
特に、有害微量元素のうち六価クロムは、人体に多大な悪影響を与え、過去においては大規模な土壌汚染の原因物質となっている。このため、石炭灰からの六価クロム(以下、「六価クロム」という場合は、六価クロムの化合物を含む。)の溶出について、その許容濃度は厳しく規制されている。
【0005】
しかしながら、日本に輸出される石炭種は、年間100炭種以上あり、それらのすべてが、上記の規制値を満足するわけではない。このため、石炭灰に含まれている六価クロムの溶出濃度を規制値以下に低減するための技術が検討されている。
【0006】
例えば、亜硫酸ソーダ、重亜硫酸ソーダ、及び、亜硫酸カルシウムのいずれか一つの水溶液を含浸させた人工ゼオライトをセメントに添加して、セメントから六価クロムの溶出を抑制するための溶出抑制剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、特許文献2には、土壌環境基準を上回る六価クロム溶出量を有するセメント固化した土壌を炭酸ガスに接触させた後、炭化物及び有機物から選ばれる少なくとも一種の成分を添加して、焼成することを特徴とする六価クロム汚染土壌の処理方法が開示されている。
【0008】
更に、特許文献3には、六価クロムを含有する土壌を、還元雰囲気下において200℃〜600℃で加熱処理することを特徴とする六価クロム含有土壌の処理方法が開示されている。
【0009】
加えて、特許文献4には、六価クロムを含有するセメントクリンカを、還元雰囲気下において650℃〜1100℃で加熱処理することを特徴とするセメントクリンカ中の六価クロム低減方法が開示されている。
【0010】
特許文献2から4に記載の発明によれば、簡単な方法によって六価クロムの溶出量を土壌環境基準以下に低下させることができるとされる。
【特許文献1】特開2005−112706号公報
【特許文献2】特開2002−219451号公報
【特許文献3】特開2003−334532号公報
【特許文献4】特開2004−018339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術で使用する亜硫酸ソーダ、重亜硫酸ソーダ、及び、亜硫酸カルシウムの薬剤の購入コストは高く、火力発電所において、実際にこれらの薬剤を使用して六価クロムの溶出の抑制を図ることは困難である。また、上記薬剤の製造設備を設け、薬剤の購入コストの低減を図ろうとしても、当然ながら、製造設備の設置のためには多額な設備投資が必要となる。
【0012】
また、特許文献2及び3に記載の発明は、六価クロム汚染土壌を処理する方法であり、石炭灰の処理方法にそのまま適用できるものではない。更に、特許文献2から4に記載の発明においては、六価クロム汚染土壌やセメントクリンカを加熱処理するものであり、当該処理に大きなコストがかかるものである。
【0013】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、多額の設備投資が不要で、かつ、薬剤を使用せずに石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制することが可能な石炭火力発電システム、及び、この石炭火力発電システムにおける石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制する六価クロム溶出抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に設けられ前記石炭の燃焼によって生成する排ガス中から前記石炭の燃焼によって生成する石炭灰を捕集する集塵装置とを備え、前記燃焼ボイラは熱交換ユニットを前記燃焼ボイラの下流に有する石炭火力発電システムであって、前記石炭灰を密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器と、前記石炭灰を前記石炭灰封入容器に供給する石炭灰供給手段と、前記熱交換ユニットから前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する排ガス移入手段とを備える石炭火力発電システム。
【0015】
ここで、「石炭灰供給手段(石炭灰供給装置)」は、石炭灰を「石炭灰封入容器」に供給可能な公知の供給手段であればどのようなものでもよい。具体的には、石炭灰移送手段としては、石炭灰を移送するスクリューコンベアー、石炭灰を水に浮かせて移送する移送手段、及び、石炭灰を移送する管(パイプ)と、石炭灰を移送する動力となる送風機とから構成されている移送手段等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
(1)の発明によれば、集塵装置によって集塵された石炭灰を密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器に入れ、この石炭灰封入容器に熱交換ユニットから集塵装置までの系内を移動する排ガスを移入させることが可能となっている。熱交換ユニットから集塵装置までの系内は排ガスの酸素濃度が1%〜10%の還元雰囲気下であり、上記系内の排ガス温度は200℃〜600℃であるため、上記系内の排ガス温度は六価クロムを三価クロムに還元させやすい条件を備えている。したがって、石炭灰封入容器に入れられた石炭灰中に六価クロムが存在した場合、六価クロムは容易に三価クロムに還元される。
【0017】
以上より、本発明によれば、既存の石炭火力発電システムに石炭灰封入容器と、石炭灰供給手段と、排ガス移入手段とを設けるだけで、薬剤を必要とせず、かつ、多額の設備投資を要せずに、石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制することが可能である。
【0018】
(2) 更に、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、前記排ガス移入手段は、前記熱交換ユニットから前記脱硝装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する(1)記載の石炭火力発電システム。
【0019】
(3) 更に、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、前記排ガス移入手段は、前記脱硝装置から前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する(1)記載の石炭火力発電システム。
【0020】
(2)及び(3)の発明は、石炭灰移送手段によって石炭灰が移送される場所を具体的に規定したものである。
【0021】
熱交換ユニットから脱硝装置までの系内の排ガスの温度は350℃〜600℃であり、かつ、上記排ガスの酸素濃度は2%〜3%の還元雰囲気下であるため、(2)の発明では六価クロムを三価クロムに還元させるための好適な条件を備えている。
【0022】
また、脱硝装置から集塵装置までの系内の排ガスの温度は350℃〜200℃であり、かつ、上記排ガスの酸素濃度は2%〜3%の還元雰囲気下であるため、(3)の発明も六価クロムが三価クロムに還元されやすい条件を備えている。
【0023】
(4) 更に、前記石炭灰封入容器に接続しており、前記石炭灰封入容器中の前記排ガスを前記熱交換ユニットから前記集塵装置までの系内に戻す排ガスリターン手段を備える(1)から(3)のいずれか記載の石炭火力発電システム。
【0024】
(4)の発明によれば、排ガスは系外に放出されずに再度系内に戻されて排ガス処理が行われるため、排ガス中の硫黄酸化物のような有害物質を系外に放出することを防止することができる。
【0025】
(5) 前記石炭灰封入容器は、前記排ガス移入手段に接続されており、前記石炭灰封入容器内に前記排ガスを噴出する噴出口が形成された螺旋状の排ガス噴出管を有する(1)から(4)のいずれか記載の石炭火力発電システム。
【0026】
(6) 前記石炭灰封入容器は、前記排ガス移入手段に接続されており、前記石炭灰封入容器内に前記排ガスを噴出させる複数の噴出口が形成された排ガス噴出管を有し、前記排ガス噴出管は前記石炭灰封入容器内において複数回屈曲し、前記排ガス噴出管において隣接する屈曲部に挟まれる部位は、隣接する屈曲部に挟まれる他の部位と垂直又は水平方向に互いに略平行になるように形成されている(1)から(4)のいずれか記載の石炭火力発電システム。
【0027】
(5)及び(6)の発明は、石炭灰封入容器内に排ガスを噴出させる噴出口が形成された排ガス噴出管の形状を規定する。
【0028】
(5)の発明によれば、石炭灰封入容器は排ガスを噴出させる噴出口が形成された螺旋状の排ガス噴出管を有しており、この螺旋状の排ガス噴出管によって排ガスを効率よく石炭灰に噴出させることができる。
【0029】
(6)の発明によれば、石炭灰封入容器は排ガスを噴出させる複数の噴出口が形成された排ガス噴出管を有しており、排ガス噴出管は石炭灰封入容器において複数回屈曲し、前記排ガス噴出管において隣接する屈曲部に挟まれる部位が、隣接する屈曲部に挟まれる他の部位と垂直又は水平方向に互いに平行になるように形成されている。したがって、本発明では、排ガスを効率よく石炭灰に噴出させることができる。
【0030】
(7) 石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に設けられ前記石炭の燃焼によって生成する排ガス中から前記石炭の燃焼によって生成する石炭灰を捕集する集塵装置と、前記石炭灰を密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器とを備え、前記燃焼ボイラは熱交換ユニットを前記燃焼ボイラの下流に有する石炭火力発電システムにおいて、前記石炭灰を前記石炭灰封入容器に供給する石炭灰供給処理と、前記熱交換ユニットから前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する排ガス移入処理と、前記石炭灰供給処理及び前記排ガス移入処理後に、前記石炭灰封入容器を所定時間密閉状態にする密閉処理とを行うことにより、前記石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制する六価クロム溶出抑制方法。
【0031】
(7)の発明は、上記(1)の発明を六価クロム溶出抑制方法として捉えたものであり、上記(1)の発明と同様の効果が得られる。なお、密閉処理の前に行われる石炭灰供給処理及び排ガス移入処理は、同時に行ってもよく、また、どちらかを前処理、残りを後処理として行うようにしてもよい。
【0032】
(8) 前記石炭火力発電システムは、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、前記排ガス移入処理は、前記熱交換ユニットから前記脱硝装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する処理である(7)記載の六価クロム溶出抑制方法。
【0033】
(8)の発明は、上記(2)の発明を六価クロム溶出抑制方法として捉えたものであり、上記(2)の発明と同様の効果が得られる。
【0034】
(9) 前記石炭火力発電システムは、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、前記排ガス移入処理は、前記脱硝装置から前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する処理である(7)記載の六価クロム溶出抑制方法。
【0035】
(9)の発明は、上記(3)の発明を六価クロム溶出抑制方法として捉えたものであり、上記(3)の発明と同様の効果が得られる。
【0036】
(10) 前記石炭灰供給処理によって前記石炭灰封入容器に供給される石炭灰の平均粒径は、1μm〜100μmである(7)から(9)のいずれか記載の六価クロム溶出抑制方法。
【0037】
(10)の発明は、石炭灰からの六価クロムの溶出を効果的に抑制する石炭灰の平均粒径の範囲を規定したものである。
【0038】
(11) 前記密閉処理は、石炭灰供給処理及び前記排ガス移入処理後から、前記石炭灰封入容器を5分以上60分以下の範囲内で密閉状態にする(7)から(10)のいずれか記載の六価クロム溶出抑制方法。
【0039】
(11)の発明は、石炭灰からの六価クロムの溶出を効果的に抑制する密閉処理の時間を規定したものである。
【0040】
(12) 更に、前記密閉処理の後に、前記石炭灰封入容器に還元性ガスを封入して、5分以上60分以下反応させる、(7)から(11)に記載の六価クロム溶出抑制方法。
【0041】
(12)の発明によれば、密閉処理の後に、石炭灰封入容器に還元性ガスを封入して、一定時間以上反応させるので、六価クロムをより効果的に還元することができる。これにより、六価クロムの溶出抑制効果をより高めることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、既存の石炭火力発電システムに石炭灰封入容器と、石炭灰供給手段と、排ガス移入手段とを設けるだけで、薬剤を必要とせず、かつ、多額の設備投資を要せずに、石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の一例を示す実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設1を示すブロック図である。ここで、図1に示すように、微粉炭燃焼施設1は、石炭を供給する石炭供給部12と、供給された石炭を微粉炭にする微粉炭生成部14と、微粉炭を燃焼する微粉炭燃焼部16と、微粉炭の燃焼により生成した石炭灰を処理する石炭灰処理部18と、石炭灰中の六価クロムを還元する還元処理部20とを備える。また、図2は、微粉炭燃焼部16における火炉161付近の拡大図である。
【0044】
<A−1:石炭供給部>
石炭供給部12は、石炭を貯蔵する石炭バンカ121と、この石炭バンカ121に貯蔵された石炭を供給する給炭機122と、を備える。石炭バンカ121は、給炭機122へ供給する石炭を貯蔵する。給炭機122は、石炭バンカ121から供給された石炭を連続して石炭微粉炭機141へ供給するものである。また、この給炭機122は、石炭の供給量を調整する装置を備えており、これにより、石炭微粉炭機141に供給される石炭量が調整される。また、これら石炭バンカ121と給炭機122との境界には石炭ゲートが設けられており、これにより、給炭機からの空気が石炭バンカへ流入するのを防いでいる。
【0045】
<A−2:微粉炭生成部>
微粉炭生成部14は、石炭を微粉炭燃焼が可能な微粉炭にする石炭微粉炭機141(ミル)と、この石炭微粉炭機141に空気を供給する空気供給機142と、を備える。
【0046】
石炭微粉炭機141は、給炭機122から給炭管を介して供給された石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成するとともに、この微粉炭と、空気供給機142から供給された空気とを混合する。このように、微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させ、燃焼を容易にする。形成された微粉炭には、エアーが吹きつけられて、これにより、微粉炭燃焼部16に微粉炭を供給する。
【0047】
石炭微粉炭機141の種類としては、ローラミル、チューブミル、ボールミル、ビータミル、インペラーミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく微粉炭燃焼で用いられるミルであればよい。
【0048】
火炉(燃焼ボイラ)161は、加熱機162(熱交換ユニット)により加熱されて、石炭微粉炭機141から微粉炭管を介して供給された微粉炭を、空気供給機163から供給された空気とともに燃焼する。微粉炭を燃焼することにより石炭灰及び排ガス(燃焼ガス)が生成し、石炭灰及び排ガスは石炭灰処理部18に排出される。
【0049】
図2を参照して、火炉161について詳しく説明すると、図2において、火炉161は全体として略逆U字状をなしており、図中矢印に沿って燃焼ガスが逆U字状に移動した後、再度小さくU字状に反転し、火炉161の出口(図2における矢印の最後)は、図1における脱硝装置181に接続されている。本実施形態に係る微粉炭燃焼施設1においては、火炉161の高さは30mから70mであり、排ガスの流路の全長は300mから1000mに及ぶ。
【0050】
火炉161の下方には、火炉161内のバーナーゾーン161a’付近で微粉炭を燃焼するためのバーナ161aが配置されている。また、火炉161内のU字頂部付近には、火炉上部分割壁161b、最終過熱器161b’、第1の再熱器161f(いずれも熱交換ユニット)が配置されており、更にそこから横置き1次過熱器161c(熱交換ユニット)が続いて配置されている。更に、横置き1次過熱器161cと平行して第2の再熱器161f’が設けられており、横置き1次過熱器161cの終端付近からは、1次節炭器161d(熱交換ユニット)、2次節炭器161e(熱交換ユニット)が2段階に設けられている。ここで、節炭器(ECOとも呼ばれる)は、燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群である。なお、本実施形態においては、火炉161中、1次節炭器161dと2次節炭器161eとは、2段階に分離して設置されているが、このような形態に限定されない。即ち、火炉161は単一の節炭器のみを有するものであってもよい。
【0051】
<A−4:石炭灰処理部>
石炭灰処理部18は、微粉炭燃焼部16から排出された排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置181と、排ガス中の石炭灰のうちフライアッシュ(煤塵)を捕集(集塵)する集塵装置182と、この集塵装置182で収集されたフライアッシュを一次貯蔵する石炭灰回収サイロ183と、を備える。
【0052】
脱硝装置181は、排ガス中の窒素酸化物を除去するものである。即ち、比較的高温(300〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法が好適に用いられる。
【0053】
集塵装置182は、排ガス中のフライアッシュを電極で捕集する装置である。フライアッシュは、石炭の燃焼によって生成する石炭灰のうち残りの煤塵である。この集塵装置182により捕集されたフライアッシュは、図示しないホッパに堆積されて、石炭灰回収サイロ183に搬送される他、後述するように、石炭灰供給手段202(図1参照)によって石炭灰封入容器201に供給される。また、フライアッシュが除去された排ガスは、図示しない脱硫装置を介した後に煙突から排出される。この集塵装置182は複数段設けられていることが好ましい。
【0054】
石炭灰回収サイロ183は、集塵装置182によって捕集されたフライアッシュ、及び、後述するように、石炭灰排出手段205によって石炭灰封入容器201から排出されるフライアッシュを一時貯蔵する設備である。
【0055】
<A−5:還元処理部>
還元処理部20は、石炭灰処理部18で集塵装置182によって捕集されたフライアッシュを密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器201と、集塵装置182によって捕集されたフライアッシュを石炭灰封入容器201に供給する石炭灰供給手段202と、熱交換ユニットである節炭器付近から脱硝装置181までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に移入する排ガス移入手段203とを備える。また、還元処理部20は、石炭灰封入容器201中の排ガスを節炭器付近から脱硝装置181までの系内に戻す排ガスリターン手段204と、石炭灰封入容器201から還元処理されたフライアッシュを石炭灰回収サイロ183に排出する石炭灰排出手段205とを備える。
【0056】
石炭灰封入容器201は、石炭灰処理部18で集塵装置182によって捕集されたフライアッシュを密閉状態に封入することが可能な容器である。具体的には、石炭灰封入容器201は、密閉状態と開状態とを切替可能な容器であり、例えば、間欠的に開閉することが可能な蓋を有するようにしてもよい。即ち、石炭灰封入容器201は、移入(供給)された排ガスが一定期間容器外に流出しないようにすることが可能な構造を有している。しかし、石炭灰封入容器201はこれらに限定されるものではなく、移入された排ガス、及び、捕集されたフライアッシュ等の内容物に対して耐食性があり、上記内容物を密閉状態に封入することが可能であればどのような容器でもよい。
【0057】
また、石炭灰封入容器201は、排ガス移入手段203に接続されており、石炭灰封入容器201内に排ガスを噴出させる噴出口が形成された螺旋状の排ガス噴出管を有するようにしてもよい。更には、石炭灰封入容器201は、図3に示すように、排ガス移入手段203に接続されており、石炭灰封入容器201内に排ガスを噴出させる複数の噴出口201aが形成された排ガス噴出管201bを有し、排ガス噴出管201bは石炭封入容器内において複数回屈曲しており、排ガス噴出管201bの隣接する屈曲部に挟まれる部位が、排ガス噴出管201bの隣接する屈曲部に挟まれる他の部位と垂直又は水平方向に互いに略平行になるように形成されているものであってもよい。
【0058】
石炭灰供給手段202は、集塵装置182によって捕集されたフライアッシュを石炭灰封入容器201に供給する手段(装置)である。
【0059】
石炭灰供給手段202としては、石炭灰封入容器201に接続され、フライアッシュを上記容器に移送することが可能な管(パイプ)と、フライアッシュを上記容器に移送する動力となる送風機とから構成されている手段が挙げられる。即ち、フライアッシュを上記容器に移送する管に、フライアッシュを上記容器に移送する送風機を設けた手段である。その他の石炭灰供給手段202としては、フライアッシュを上記容器に供給するスクリューコンベアー、又は、フライアッシュを水に浮かせて上記容器に供給する手段等が挙げられる。また、石炭灰供給手段は、前もって搬送しておいたフライアッシュを、石炭灰封入容器201に供給する手段であってもよい。しかし、石炭灰供給手段はこれらに限定されるものではなく、集塵装置182によって捕集されたフライアッシュを石炭灰封入容器201に供給することが可能であればどのような供給手段(供給装置)でもよい。
【0060】
排ガス移入手段203は、熱交換ユニットである1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から集塵装置182までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に移入する手段(装置)である。具体的には、排ガス移入手段203は、熱交換ユニットである1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から集塵装置182までの系内と石炭灰封入容器201とを接続している管(パイプ)が挙げられる。この排ガス移入手段203は、排ガスを移送する送風機を有していることが好ましく、更には、間欠的に排ガスを移送することが可能な構造を有していることが好ましい。
【0061】
なお、本実施形態では、排ガス移入手段203は、1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から脱硝装置181までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に供給する手段であるが、脱硝装置181から集塵装置182までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に供給する手段であってもよい。
【0062】
排ガスリターン手段204は、石炭灰封入容器201に接続しており、石炭灰封入容器201中の排ガスを1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から集塵装置182までの系内に戻す手段である。具体的には、排ガスリターン手段204は、排ガス移入手段203と同様に、1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から集塵装置182までの系内と石炭灰封入容器201とを接続している管(パイプ)が挙げられる。この排ガス移入手段203は、排ガスを排出する送風機を有していることが好ましく、更には、間欠的に排ガスを排出することが可能な構造を有していることが好ましい。
【0063】
石炭灰排出手段205は、石炭灰封入容器201から還元処理されたフライアッシュを石炭灰回収サイロ183に排出する手段である。具体的には、石炭灰排出手段205は、石炭灰供給手段202と同様に、スクリューコンベアー等で構成されている。
【0064】
<B:本発明の六価クロム溶出抑制方法>
本発明の六価クロム溶出抑制方法は、石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に設けられ前記石炭の燃焼によって生成する排ガス中から前記石炭の燃焼によって生成する石炭灰を捕集する集塵装置182と、前記石炭灰を密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器201とを備え、前記燃焼ボイラは熱交換ユニットを前記燃焼ボイラの下流に有する石炭火力発電システムにおいて、前記石炭灰を前記石炭灰封入容器201に供給する石炭灰供給処理と、前記熱交換ユニットから前記集塵装置182までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器201に移入する排ガス移入処理と、前記石炭灰供給処理及び前記排ガス移入処理後に、前記石炭灰封入容器201を所定時間密閉状態にする密閉処理とを行うことにより、前記石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制する方法であるが、この方法を上記の微粉炭燃焼施設1を用いて説明する。
【0065】
石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制する方法は、石炭を供給する石炭供給工程S10と、供給された石炭を粉砕して微粉炭を生成する微粉炭生成工程S20と、この微粉炭を燃焼して石炭灰を生成する微粉炭燃焼工程S30と、この石炭灰を収容する石炭灰処理工程S40と、石炭灰を石炭灰封入容器201に供給する石炭灰供給処理を行う石炭灰供給処理工程S50と、熱交換ユニットから集塵装置182までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に移入する排ガス移入処理を行う排ガス移入処理工程S60と、前記石炭灰供給処理及び前記排ガス移入処理後に、前記石炭灰封入容器201を、所定時間、密閉状態にする密閉処理を行う密閉処理工程S70と、石炭灰封入容器201内の排ガスを系内に戻す排ガスリターン処理を行う排ガスリターン処理工程S80と、石炭灰封入容器201内の石炭灰を石炭灰回収サイロ183に排出する石炭灰排出処理を行う石炭灰排出処理工程S90とを含む。
【0066】
ここで、石炭供給工程S10は微粉炭燃焼施設1の石炭供給部12において行われる。微粉炭生成工程S20は微粉炭生成部14において行われる。微粉炭燃焼工程S30は微粉炭燃焼部16において行われる。石炭灰処理工程S40は石炭灰処理部18において行われる。石炭灰供給処理工程S50、排ガス移入処理工程S60、密閉処理工程S70、排ガスリターン処理工程S80、及び、石炭灰排出処理工程S90は還元処理部20において行われる。以下、各工程について説明する。
【0067】
<石炭供給工程S10>
まず、石炭供給工程S10では、石炭バンカ121に貯蔵された石炭が、給炭機122により、石炭微粉炭機141に供給される。なお、この石炭微粉炭機141に供給される石炭は、具体的には瀝青炭、亜瀝青炭、又は褐炭等であるが、これらの石炭に限定されるものではなく微粉炭燃焼が行える石炭であればよい。
【0068】
<微粉炭生成工程S20>
次に、微粉炭生成工程S20では、給炭機122から供給された石炭が石炭微粉炭機141により粉砕されて、これにより、微粉炭が生成される。生成された微粉炭は、火炉161に供給される。このとき、この微粉炭生成工程で粉状に形成された微粉炭の平均の粒度は、微粉炭燃焼で一般的に用いられる粒径範囲であればよく、一般的には、74μmアンダー80wt%以上の粉砕度である。なお、この範囲は石炭添加用溶出防止剤が添加された場合にも適用できる。
【0069】
<微粉炭燃焼工程S30>
次に、微粉炭燃焼工程S30では、石炭微粉炭機141で生成された微粉炭が、火炉161により燃焼される。図2に示すように、バーナーゾーン161a’においては微粉炭が燃焼されるが、このときの温度は1300℃から1500℃に及び、燃焼によって生成される石炭灰は、矢印の方向に沿って上昇して排ガスとともに火炉上部分割壁161b、最終過熱器161b’、第1の再熱器161f、第2の再熱器161f’、横置き1次過熱器161c(いずれも熱交換ユニット)を通過し、1次節炭器161d(熱交換ユニット)、2次節炭器161e(熱交換ユニット)を順次通過する。上記のように、この熱交換ユニット付近は、450℃から900℃前後が維持されている領域であり、この燃焼ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群を通過することによって熱交換され、温度が低下する。排ガスがバーナーゾーン161a’から節炭器付近まで到達するまでに要する時間は、おおむね5秒から10秒である。そして、その後、後段の脱硝装置181、集塵装置182に送られる。この微粉炭燃焼工程で生成される石炭灰は、通常、その平均の粒度が1μmから100μmの範囲内の粉末状である。
【0070】
<石炭灰処理工程S40>
その後、微粉炭を燃焼することにより生成された石炭灰は、排ガスとともに脱硝装置181に排出され、集塵装置182に送られる。集塵装置182で排ガス中から捕集されたフライアッシュは、図示しないホッパに堆積された後、石炭灰回収サイロ183に搬送される他、石炭灰供給手段202によって石炭灰封入容器201に供給される。また、フライアッシュが除去された排ガスは、図示しない脱硫装置を介した後に煙突から排出される。
【0071】
<石炭灰供給処理工程S50>
本発明の特徴の一つである石炭灰供給処理工程S50は、集塵装置182によって集塵されたフライアッシュを、石炭灰供給手段202によって石炭灰封入容器201に供給する石炭灰供給処理を行う工程である。石炭灰供給処理工程S50は、図1に示すように、石炭灰処理部18の一部と重複する還元処理部20で行われる。
【0072】
石炭灰供給手段202によって供給されるフライアッシュの平均粒径は、1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。平均粒径が1μm未満である場合には、平均粒径を調整することによる効果を殆ど得ることができない。平均粒径が100μmを超える場合は、フライアッシュの内部まで排ガスが侵入しないため、六価クロムから三価クロムへの還元反応が進行しない。
【0073】
<排ガス移入処理工程S60>
本発明の特徴の一つである排ガス移入処理工程S60は、石炭灰供給処理工程S50の後、排ガス移入手段203が熱交換ユニットである1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から脱硝装置181までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に移入する排ガス移入処理を行う工程である。
【0074】
なお、本実施形態においては、排ガス移入処理工程S60は、1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から脱硝装置181までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に移入するが、脱硝装置181から集塵装置182までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に移入するようにしてもよい。
【0075】
また、本実施形態において、排ガス移入処理工程S60では、1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から脱硝装置181までの系内を移動する排ガスを石炭灰封入容器201に移入する処理を行っているが、排ガスの他にも有害微量元素の溶出防止を可能とする燃料添加剤を石炭灰封入容器201に添加する溶出抑制添加剤処理(工程)を行うようにしてもよい。この処理によって、フライアッシュからの六価クロムの溶出を抑制するばかりでなく、例えば、フライアッシュからのフッ素、ホウ素等の有害微量元素の溶出を防止することができる。
【0076】
更に、本実施形態において、石炭灰供給処理工程S50の後に排ガス移入処理工程S60を行っているが、石炭灰供給処理工程S50と排ガス移入処理工程S60とは同時に行われてもよく、また、排ガス移入処理工程S60を行ってから石炭灰供給処理工程S50を行うようにしてもよい。
【0077】
<密閉処理工程S70>
密閉処理工程S70は、石炭灰供給処理工程S50及び排ガス移入処理工程S60の後に、石炭灰封入容器201を所定時間、密閉状態に封入する処理を行う工程である。即ち、密閉処理工程S70は、石炭灰供給手段202によって供給されたフライアッシュ、及び、排ガス移入手段203によって移入された排ガスを石炭灰封入容器201に封入した後、所定時間、石炭灰封入容器201を密閉状態に封入する処理を行う工程である。
【0078】
なお、本実施形態において、密閉処理工程S70は、石炭灰供給処理工程S50及び排ガス移入処理工程S60の後に行われるが、密閉処理工程S70は、石炭灰供給処理工程S50及び排ガス移入処理工程S60と同時に行うようにしてもよい。
【0079】
熱交換ユニットである1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から集塵装置182までの系内の排ガスの酸素濃度は2%〜3%の還元雰囲気下であり、系内の排ガスの温度は200℃〜600℃である。したがって、上記系内の排ガスは六価クロムを三価クロムに還元させやすい条件を備えている。したがって、密閉処理工程S70によって、フライアッシュ中に六価クロムが存在する場合、六価クロムは容易に三価クロムに還元される。
【0080】
このように、本発明は、石炭火力発電システムで排出されるフライアッシュを、石炭火力発電システムに設けられている既存の設備の軽微な改良で処理することにより、フライアッシュからの六価クロムの溶出を容易に防止することができるので、既存設備を有効利用することができ、コスト的にも有利である。
【0081】
石炭灰封入容器201を密閉状態に封入する時間は、5分以上60分以下の範囲内であることが好ましい。5分未満では、フライアッシュ中の六価クロムが三価クロムに十分に還元されない。60分以上では、六価クロムから三価クロムの還元反応が完全に進行して、それ以上還元処理が行われないため、それ以上の効果を得ることができず、経済的に不利となる。
【0082】
<排ガスリターン処理工程S80>
排ガスリターン処理工程S80は、密閉処理工程S70の後に、石炭灰封入容器201内の排ガスを1次節炭器161d又は2次節炭器161e付近から脱硝装置181までの系内に戻す処理を行う工程である。
【0083】
なお、排ガス移入処理工程S60において、脱硝装置181から集塵装置182までの系内を移動する排ガスが石炭灰封入容器201に移入された場合、排ガスリターン処理工程S80は、石炭灰封入容器201内の排ガスを、脱硝装置181から集塵装置182までの系内に戻す処理を行うようにしてもよい。
【0084】
<石炭灰排出処理工程S90>
石炭灰排出処理工程S90は、密閉処理工程S70の後に、石炭灰封入容器201内のフライアッシュを石炭灰回収サイロ183に排出する処理を行う工程である。
【0085】
なお、本実施形態においては、排ガスのみを用いて石炭灰中の六価クロムを還元する方法を示したが、これに限定されない。即ち、例えば、密閉処理工程S70の後に、石炭灰封入容器201に還元性ガスを封入し、5分以上60分以下の範囲内で反応させ、六価クロムを還元してもよい。
【0086】
また、石炭灰が酸化カルシウム等を含有し、アルカリ性を示す場合には排ガスにより石炭灰中の六価クロムが十分に還元されない場合もある。このような場合には、石炭灰を予め、炭酸ガス等で中和した後、石炭灰と排ガスとを反応させるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態を示す石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施態様を示す石炭火力発電システムにおける微粉炭燃焼施設の一部を示す概略構成図である。
【図3】石炭灰封入容器の一例を示す図面である。
【符号の説明】
【0088】
1 微粉炭燃焼施設
12 石炭供給部
121 石炭バンカ
122 給炭機
14 微粉炭生成部
141 石炭微粉炭機
142 空気供給機
16 微粉炭燃焼部
161 火炉
162 加熱器
163 空気供給機
18 石炭灰処理部
181 脱硝装置
182 集塵装置
183 石炭灰回収サイロ
20 還元処理部
201 石炭灰封入容器
202 石炭灰供給手段
203 排ガス移入手段
204 排ガスリターン手段
205 石炭灰排出手段
S10 石炭供給工程
S20 微粉炭生成工程
S30 微粉炭燃焼工程
S40 石炭灰処理工程
S50 石炭灰供給処理工程
S60 排ガス移入処理工程
S70 密閉処理工程
S80 排ガスリターン処理工程
S90 石炭灰排出工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に設けられ前記石炭の燃焼によって生成する排ガス中から前記石炭の燃焼によって生成する石炭灰を捕集する集塵装置とを備え、前記燃焼ボイラは熱交換ユニットを前記燃焼ボイラの下流に有する石炭火力発電システムであって、
前記石炭灰を密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器と、
前記石炭灰を前記石炭灰封入容器に供給する石炭灰供給手段と、
前記熱交換ユニットから前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する排ガス移入手段とを備える石炭火力発電システム。
【請求項2】
更に、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、
前記排ガス移入手段は、前記熱交換ユニットから前記脱硝装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する請求項1記載の石炭火力発電システム。
【請求項3】
更に、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、
前記排ガス移入手段は、前記脱硝装置から前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する請求項1記載の石炭火力発電システム。
【請求項4】
更に、前記石炭灰封入容器に接続しており、前記石炭灰封入容器中の前記排ガスを前記熱交換ユニットから前記集塵装置までの系内に戻す排ガスリターン手段を備える請求項1から3のいずれか記載の石炭火力発電システム。
【請求項5】
前記石炭灰封入容器は、前記排ガス移入手段に接続されており、前記石炭灰封入容器内に前記排ガスを噴出させる噴出口が形成された螺旋状の排ガス噴出管を有する請求項1から4のいずれか記載の石炭火力発電システム。
【請求項6】
前記石炭灰封入容器は、前記排ガス移入手段に接続されており、前記石炭灰封入容器内に前記排ガスを噴出させる複数の噴出口が形成された排ガス噴出管を有し、
前記排ガス噴出管は前記石炭灰封入容器内において複数回屈曲し、
前記排ガス噴出管において隣接する屈曲部に挟まれる部位は、隣接する屈曲部に挟まれる他の部位と垂直又は水平方向に互いに略平行になるように形成されている請求項1から4のいずれか記載の石炭火力発電システム。
【請求項7】
石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に設けられ前記石炭の燃焼によって生成する排ガス中から前記石炭の燃焼によって生成する石炭灰を捕集する集塵装置と、前記石炭灰を密閉状態に封入することが可能な石炭灰封入容器とを備え、前記燃焼ボイラは熱交換ユニットを前記燃焼ボイラの下流に有する石炭火力発電システムにおいて、
前記石炭灰を前記石炭灰封入容器に供給する石炭灰供給処理と、
前記熱交換ユニットから前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する排ガス移入処理と、
前記石炭灰供給処理及び前記排ガス移入処理後に、前記石炭灰封入容器を所定時間密閉状態にする密閉処理とを行うことにより、前記石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制する六価クロム溶出抑制方法。
【請求項8】
前記石炭火力発電システムは、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、前記排ガス移入処理は、前記熱交換ユニットから前記脱硝装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する処理である請求項7記載の六価クロム溶出抑制方法。
【請求項9】
前記石炭火力発電システムは、前記排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を備え、前記排ガス移入処理は、前記脱硝装置から前記集塵装置までの系内を移動する前記排ガスを前記石炭灰封入容器に移入する処理である請求項7記載の六価クロム溶出抑制方法。
【請求項10】
前記石炭灰供給処理によって前記石炭灰封入容器に供給される石炭灰の平均粒径は、1μm〜100μmである請求項7から9のいずれか記載の六価クロム溶出抑制方法。
【請求項11】
前記密閉処理は、石炭灰供給処理及び前記排ガス移入処理後から、前記石炭灰封入容器を5分以上60分以下の範囲内で密閉状態にする請求項7から10のいずれか記載の六価クロム溶出抑制方法。
【請求項12】
更に、前記密閉処理の後に、前記石炭灰封入容器に還元性ガスを封入して、5分以上60分以下反応させる、請求項7から11に記載の六価クロム溶出抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−72732(P2009−72732A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246077(P2007−246077)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】