説明

石英製試料収容容器の製造方法及び石英製試料収容容器の製造装置

【課題】 環境雰囲気下において、石英を素早く溶解し、石英チューブの密閉を確実かつ短時間で行うことを目的とする。
【解決手段】この発明の石英製試料収容容器の製造方法は、石英製の収容容器1の開口部に石英ピン2のピン部22を挿入して、開口部の上端に石英ピン2を配置させ、この石英ピン2の上にキャップ箔4を介して導電体からなるキャップ3を被せる。このキャップ3の周囲に誘電体コイル51を配置させ、高周波誘導加熱により、キャップ3を加熱して、石英ピン2と収容容器1の石英を溶解させ、収容容器1を密閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料中の成分などの分析を行う場合に、試料を外部に暴露することなく、搬送、保管する際に試料を収容容器に密閉収容する石英製試料収容容器の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空あるいは不活性雰囲気下で試料(サンプル)を作成するグローブボックス等の試料作成装置から試料をオージェ電子分析装置やX線電子分光装置等の分析装置に搬送して、分析を行うことがある。この場合、試料作成装置から一旦試料を取り出して、分析装置に試料を移動してセットしている。
【0003】
試料作成装置から試料を一旦大気中に取り出して、分析装置に試料を移動すると、試料が大気中の酸素やゴミ等に曝されることになり、試料の表面が酸化や汚染されて、正確な分析が行えなくなる。
【0004】
一方、試料が有害物質などの場合、大気汚染等などの問題が発生する。
【0005】
そこで、グローブボックス内でトランスファーベッセルなどの密閉容器に試料を入れた後、グローブボックスから取り出し、そして、分析装置内に大気に触れることなく試料をセットするなどの対策がとられている。
【0006】
しかし、トランスファーベッセルは、ステンレスなどの金属製容器で構成されているため、スペクトルの解析分析などを行うためには、試料をトランスファーベッセルから取り出す必要がある。
【0007】
そこで、岩石粉末などの試料の場合には、石英チューブに試料を封入し、封入された状態で保存するものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このように、石英チューブに試料を封入することで、大気に曝されることなく、保存搬送でき、分析等は、石英チューブを介して行うことができる。
【0008】
上記非特許文献1には、岩石粉末の試料を石英チューブに封入する方法が示されている。この方法は、石英チューブとして、内径3mm、外径約4.5mmの東芝セラミック製合成石英管T−4040を用い、この石英管を10cmの長さに切断し、その中央部を酸素・ガスバーナーで切断して、封じ切り、5cmの片封じ管を形成する。そして、試料を片封じ管の中に入れた後、酸素・ガスバーナーで開口部を熔解して閉じることにより、試料を石英チューブの内部に封入している。
【非特許文献1】「放射化分析用放射線自動計測・解析システムの開発と岩石標準試料の分析」地質調査所月報、第39巻 第8号、p537−557,1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
石英チューブによる封入を不活性雰囲気や真空状態などの環境雰囲気で、石英を溶解して行うには、酸素・ガスバーナーを使用することが困難であり、抵抗加熱やトーチなどを用いることになる。しかし、これらを用いた方法においては、加熱時間、冷却時間ともに長くかかり、生産性が悪いという問題があった。
【0010】
そこで、この発明は、不活性雰囲気や真空状態などの環境雰囲気下において、石英を素早く溶解し、石英チューブの密閉を確実かつ短時間で行うことができる石英製試料収容容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の石英製試料収容容器の製造方法は、石英製の収容容器の開口部に石英ピンのピン部を挿入して、前記開口部の上端に石英ピンを配置させ、この石英ピンの上にキャップ箔を介して導電体からなるキャップを被せ、このキャップの周囲に誘電体コイルを配置させ、高周波誘導加熱により、前記キャップを加熱して、前記石英ピンと収容容器の石英を溶解させ、収容容器を密閉することを特徴とする。
【0012】
また、前記収容容器は、有底筒状の本体と、本体より小さく形成されたくびれ部と、くびれ部の先端に設けられた開口部とで構成することができる。
【0013】
また、前記石英ピンは、前記開口部内に挿入されるピン部とキャップ部で構成することができる。さらに、前記石英ピンは、前記ピン部と前記キャップ部との間にテーパ部が設けるとよい。
【0014】
また、前記キャップには、前記くびれ部上部に被せられ、前記くびれ部の開口部に挿入された石英ピンのキャップ部を収容する凹部が設けられている。
【0015】
また、前記キャップの凹部と前記キャップ箔との間にキャップ箔と同材料からなる板箔を配置するとよい。
【0016】
さらに、前記キャップ箔は、前記石英ピン上に被せた時に、前記くびれ部に1mm〜2mm程度被さる大きさに形成するとよい。
【0017】
この発明の石英製試料収容容器の製造方法は、内部を真空又は不活性雰囲気下に密閉保持できる石英製外部収容ケースを備え、この石英製外部収容ケース内に、石英製の収容容器を配置し、この石英製の収容容器の開口部に石英ピンのピン部を挿入して、前記開口部の上端に石英ピンを配置させ、この石英ピンの上にキャップ箔を介して導電体からなるキャップを被せた後、前記石英製外部収容ケースを密閉保持し、前記キャップに対向する石英製外部収容ケースの外周に誘電体コイルを配置させ、高周波誘導加熱により、前記キャップを加熱して、前記石英ピンと収容容器の石英を溶解させ、収容容器を密閉することを特徴とする。
【0018】
この発明の石英製試料収容容器の製造装置は、内部を真空又は不活性雰囲気下に密閉保持できる石英製外部収容ケースと、この石英製外部収容ケース内に、石英製の収容容器を保持する保持手段と、前記石英製の収容容器の開口部に挿入された石英ピン上にキャップ箔を介して被せられる導電体からなるキャップと、前記キャップに対向する前記石英製外部収容ケースの外周に配置させた誘電体コイルとを備え、高周波誘導加熱により、前記キャップを加熱して、前記石英ピンと収容容器の石英を溶解させ、収容容器を密閉することを特徴とする。
【0019】
また、前記キャップには、前記収容容器の開口部に挿入された石英ピンのキャップ部を収容する凹部が設けられている。
【0020】
さらに、前記キャップの凹部と前記キャップ箔との間にキャップ箔と同材料からなる板箔を配置するとよい。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、導電体からなるキャップを石英ピンの上に被せることにより、このキャップを介して高周波誘導加熱による石英の溶解による封止を行うことができる。さらに、キャップ箔をキャップと石英ピンとの間に配置させることで、キャップと石英ピンとが溶着することなく、石英ピンからキャップを簡単に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0023】
図1は、この発明の製造方法の第1の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための分解斜視図、図2は、この発明の製造方法の第1の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造するために各部品を取り付けた状態を示す斜視図、図3は、この発明の製造方法の第1の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造するために各部品を取り付けた状態を示す断面図、図4は、この発明の製造方法の第1の実施形態により製造された石英製試料収容容器を示す断面図、図5は、この発明の製造方法の第1の実施形態の他の石英製試料収容容器の製造方法を説明するための分解斜視図である。
【0024】
図1ないし図4に示すように、有底筒状の石英製の収容容器1は、本体10と、本体10より小さく形成されたくびれ部11と、くびれ部11の先端に設けられた開口部12とで構成されている。収容容器1は、例えば、合成石英管を所定の長さに切断し、一端を溶解させて底が形成されている。他端は、本体部10よりも小径のくびれ部11が形成されている。本体部10の内径は約3.4mm、外径約4.5mmである。くびれ部11は外径3.0mm、内径1.2mm、長さは5mmである。このくびれ部11の長さは、この外径及び内径に対しては、5mmが後述する封止作業において密閉状態並びに破損などが生じなくてよいことがわかった。
【0025】
上記した開口部12に石英ピン2が挿入される。この石英ピン2は、開口部12内に挿入されるピン部22とキャップ部21で構成されている。このキャップ部21は、外径2.5mm、厚さ1mmである。ピン部22は外径1.1mm、長さ4mmである。そして、このピン部22は、くびれ部11に設けられている開口部12の内径より僅かに小さく形成されているが、くびれ部11内にスムーズに挿入される大きさに形成されている。
【0026】
石英ピン2を収容するように形成された導電体からなるキャップ3を備える。キャップ3には、くびれ部11上部に被せられ、くびれ部11の開口部12に挿入された石英ピン2のキャップ部21を収容する凹部31が設けられている。このキャップ3は、誘導加熱により加熱され、内部に収容された石英ピン2を加熱する。キャップ3は、高融点金属、例えば、タングステン(W)やタンタル(Ta)を用いて構成され、キャップ3は外径6mm、長さ6mm、上記のように、内部に石英ピン2を収容するための凹部31が設けられている。この凹部31は、内径3.4mm、深さが5mmに形成している。
【0027】
このキャップ3と石英ピン2との間には、タングステンまたはタンタルの薄膜で形成されたキャップ状のキャップ箔4が配置される。このキャップ箔4は、厚みが0.03mm〜0.05mm、長さが5mm〜7mmであり、このキャップ箔4を石英ピン2上に被せた時に、くびれ部11に1mm〜2mm程度被さる大きさに形成されている。後述する実施例においては、厚さ0.03mmのものを用いた。
【0028】
図2及び図3に示すように、試料を収容容器1の本体部10内に入れた後、開口部12を石英ピン2を用いて密閉封止する。このため、収容容器1のくびれ部11の開口部12に石英ピン2のピン部22を挿入し、開口部12の上端に石英ピン2を配置させる。そして、この石英ピン2の上にキャップ箔4を介してキャップ3を被せる。
【0029】
高周波誘導加熱装置5の誘導加熱コイル51内にキャップ3を配置させる。高周波誘導加熱装置5としては、例えば、セキスイメディカル電子株式会社製のMU−1700,MU−2000を用いることができる。
【0030】
高周波誘導加熱装置5を高周波出力4.4kW、周波数350〜450KHz、LC直列共振により、15秒駆動させた。この高周波誘導加熱装置5による駆動によりキャップ3が急激に高温に加熱され、図4に示すように、石英ピン2とくびれ部11の間の石英が短時間で溶解し、両者が溶着し、石英ピン2により、くびれ部11の開口部12が封止され、収容容器1が密閉される。また、キャップ3を外すことにより、素早く冷却される。
【0031】
このように、導電体からなるキャップ3を石英ピン2の上に被せることにより、このキャップ3を介して高周波誘導加熱による石英の溶解による封止を行うことができる。
【0032】
そして、キャップ箔4をキャップ3と石英ピン2との間に配置させることで、キャップ3と石英ピン2とが溶着することなく、石英ピン2からキャップ3を簡単に取り外しが行える。すなわち、キャップ箔4を設けていない場合には、キャップ3と石英ピン2とが溶着して、両者がうまく外れない場合があった。しかし、キャップ箔4を配置することで、キャップ3と石英ピン2との溶着を防止することができる。
【0033】
また、高周波誘導加熱による石英封止であるので、不活性雰囲気や真空状態などの環境雰囲気下にかかわらず短時間で封止することができ、生産性が向上する。
【0034】
なお、上記した実施形態においては、キャップ箔4をキャップ状に形成したものを用いたが、これにかかわらず、キャップ箔4がキャップ3と石英ピン2との間に配置させるようなものあれば良い。例えば、図5に示すように、円形の箔4を用いて、キャップ3の凹部31内にキャップ箔4が配置されるように構成しても良い。
【0035】
次に、この発明の石英製試料収容容器の製造装置ならびにその装置を用いたこの発明の第2の実施形態につき図6を参照して説明する。図6は、この発明の石英製試料収容容器の製造装置およびそれを用いた第2の実施形態にかかる製造方法を説明するための断面図である。
【0036】
上記した実施形態においては、キャップ3の回りに高周波誘導加熱装置5の誘導加熱コイル51を配置しているが、図6に示す実施形態においては、石英製外部収容ケース7の外周に高周波誘導加熱装置5の誘導加熱コイル51を配置してものである。すなわち、キャップ3の回りに誘導加熱コイル51を配置した場合、誘導加熱コイル5の表面に付着した不純物が収容容器1を密閉作業中に収容容器1内に入り込む恐れがある。そこで、より確実に収容容器1内に試料以外の不純物の入り込みを防ぐように、石英製外部収容ケース7の中に収容容器1、石英ピン2、キャップ箔4、キャップ3をセットし、石英製外部収容ケース7のキャップ3と対向する箇所に誘導加熱コイル51を配置したものである。高周波誘導加熱装置5を高周波出力4.4kW、周波数350〜450KHz、LC直列共振により駆動させる。この高周波誘導加熱装置5による駆動により、石英製外部収容ケース7内に収容されているキャップ3が高温に加熱される。このキャップ3を誘導加熱することで石英ピン2と収容容器1とを溶着して密閉するものである。
【0037】
石英製外部収容ケース7は、上部にフランジ部71が設けられ、蓋8を石英製外部収容ケース7の上部に取り付け、フランジ部71にて密閉金具9により、石英製外部収容ケース7を蓋8により密閉する。石英製外部収容ケース7内は蓋9及び密閉金具9により、不活性雰囲気や真空状態などの環境雰囲気下に維持される。この石英製外部収容ケース7内には、収容容器1を保持する収容容器保持装置72が設けられている。
【0038】
この石英製外部収容ケース7内に試料を収容した収容容器1をセットする方法につき簡単に説明する。
【0039】
真空あるいは不活性雰囲気下に設定したグローブボックス内に、石英製外部収容ケース7を入れる。そして、この石英製外部収容ケース7内に、収容容器1を入れ、収容容器保持装置72に収容容器1を保持させる。そして、試料を収容容器1の本体部10内に入れた後、収容容器1のくびれ部11の開口部12に石英ピン2のピン部22を挿入し、開口部12の上端に石英ピン2を配置させる。そして、この石英ピン2の上にキャップ箔4を介してキャップ3を被せる。
【0040】
この後、蓋8を石英製外部収容ケース7の上部に取り付け、フランジ部71にて密閉金具9により、石英製外部収容ケース7を蓋8により密閉する。
【0041】
上記の作業をグローブボックスの真空あるいは不活性雰囲気下で行うため、石英製外部収容ケース7内及び収容容器1内は真空あるいは不活性雰囲気下に保たれている。
【0042】
石英製外部収容ケース7を蓋8により密閉した後、グローブボックスより取り出す。そして、石英製外部収容ケース7のキャップ3と対向する箇所に誘導加熱コイル51を配置し、高周波誘導加熱装置5を高周波出力4.4kW、周波数350〜450KHz、LC直列共振により90秒間駆動させる。高周波出力4.4kW、周波数350〜450KHz、LC直列共振により90秒間駆動させることで、キャップ3と誘導加熱コイル51とは距離が離れているが、キャップ3が高温に加熱される。石英ピン2とくびれ部11の間の石英が短時間で溶解し、両者が溶着し、石英ピン2により、くびれ部11の開口部12が封止され、収容容器1が密閉される。この加熱処理における収容容器1の密閉は、石英製外部収容ケース7の外に誘導加熱コイル51が配置され、石英製外部収容ケース7内は真空あるいは不活性雰囲気下で保たれているため、不純物が収容容器1を密閉作業中に収容容器1内に入り込むこと無く、収容容器1内は、真空あるいは不活性雰囲気下に保持された状態で密閉封止することができる。そして、収容容器1が密閉後、石英製外部収容ケース7から蓋8を取り外し、石英製外部収容ケース7から石英ピン2により密閉封止された収容容器1をキャップ3とともに取り出し、キャップ3を取り外して、試料を内部に真空又は不活性ガスが封入された収容容器1が得られる。
【0043】
次に、不活性ガス雰囲気下で上記した方法により、石英ピン2により、くびれ部11の開口部12が封止して密閉した収容容器1を湯と冷水とに交互に入れ、不活性ガスのリークの有無を確認したところ、リークの発生が無いことが確認できた。
【0044】
次に、この発明の製造方法の第3の実施形態につき図7ないし図9を参照して説明する。図7は、この発明の第3の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための分解斜視図、図8は、この発明の第3の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造するために各部品を取り付けた状態を示す断面図、図9は、この発明の第3の実施形態により製造された石英製試料収容容器を示す断面図である。
【0045】
この第3の実施形態が第1の実施形態と相違するところは、石英ピン2aの形態と、キャップ箔4とキャップ3との間に、キャップ箔4と同じ材料の板箔6を設けたものである。
【0046】
石英ピン2aは、開口部12内に挿入されるピン部22とキャップ部21との間にテーパ部24が設けられている。第1の実施形態と同様に、このキャップ部21は、外径2.5mm、厚さ1mmである。ピン部22は外径1.1mm、長さ4mmである。そして、キャップ部21とピン部22とをつなぐテーパ部24の角度は、この実施形態においては、45度に設定している。このテーパ部24を設けることで、くびれ部11に設けられている開口部12の加工精度が悪い場合や、石英ピン2aが斜めに挿入された場合にも、開口部12と石英ピン2aとが確実に溶着して密閉封止することができる。
【0047】
板箔6は、例えば、タングステン箔で、厚さ0.01mm、幅2.2mm長さ5mmのものが用いられる。キャップ箔4とキャップ3との間に板箔6を配置することで、板箔6の板ばねの作用で、石英ピン2aを開口部12の方へ抑える。そして、石英ピン2がキャップ3の凹所の天井部分への溶着をより確実に防止している。
【0048】
図7及び図8に示すように、試料を収容容器1の本体部10内に入れた後、開口部12を石英ピン2aを用いて密閉封止する。このため、収容容器1のくびれ部11の開口部12に石英ピン2aのピン部22を挿入し、開口部12の上端に石英ピン2aを配置させる。そして、この石英ピン2aの上にキャップ箔4を被せ、このキャップ箔4の上に板箔6を置いた後キャップ3を被せる。板箔6の板ばねの作用で、石英ピン2aが開口部12の方へ抑えられる。
【0049】
高周波誘導加熱装置5の誘導加熱コイル51内にキャップ3を配置させる。
【0050】
高周波誘導加熱装置5を高周波出力4.4kW、周波数350〜450KHz、LC直列共振により、15秒駆動させた。この高周波誘導加熱装置5による駆動により、キャップ3が急激に高温に加熱され、図8、図9に示すように、石英ピン2aとくびれ部11の間の石英が短時間で溶解し、両者が溶着し、石英ピン2aにより、くびれ部11の開口部12が封止され、収容容器1が密閉される。また、キャップ3を外すことにより、素早く冷却される。
【0051】
このように、導電体からなるキャップ3を石英ピン2aの上に被せることにより、このキャップ3を介して高周波誘導加熱による石英の溶解による封止を行うことができる。
【0052】
そして、キャップ箔4並びに板箔6をキャップ3と石英ピン2との間に配置させることで、キャップ3と石英ピン2とが溶着することなく、石英ピン2からキャップ3を簡単に取り外しが行える。すなわち、キャップ箔4を設けていない場合には、キャップ3と石英ピン2とが溶着して、両者がうまく外れない場合があった。しかし、キャップ箔4を配置することで、キャップ3と石英ピン2との溶着を防止することができる。さらに、板箔6により石英ピン2がキャップ3の凹所の天井部分への溶着をより確実に防止される。
【0053】
次に、この発明の製造方法の第4の実施形態並びにこの発明の製造装置の他の実施形態につき図10を参照して説明する。図10は、この発明の製造装置の他の実施形態並びにこの発明の製造方法の第4の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための断面図である。
【0054】
図10に示す第4の実施形態においては、図6に示す第2の実施形態と同様に、石英製外部収容ケース7の外周に高周波誘導加熱装置5の誘導加熱コイル51を配置してものである。第3の実施形態に示すように、キャップ3の回りに誘導加熱コイル51を配置した場合、誘導加熱コイル5の表面に付着した不純物が収容容器1を密閉作業中に収容容器1内に入り込む恐れがある。そこで、より確実に収容容器1内に試料以外の不純物の入り込みを防ぐように、石英製外部収容ケース7内の収容容器保持装置72に収容容器1を保持させ、石英製外部収容ケース7の中に収容容器1、石英ピン2a、キャップ箔4、板箔6、キャップ3をセットし、石英製外部収容ケース7のキャップ3と対向する箇所に誘導加熱コイル51を配置したものである。そして、高周波誘導加熱装置5を高周波出力4.4kW、周波数350〜450KHz、LC直列共振により駆動させる。この高周波誘導加熱装置5による駆動により、キャップ3が高温に加熱されて石英ピン2aと収容容器1とを溶着して密閉するものである。他の構成は、第2及び第3の実施形態と同様であるので、ここでは説明を割愛する。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の製造方法の第1の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための分解斜視図である。
【図2】この発明の製造方法の第1の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造するために各部品を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の製造方法の第1の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造をするために各部品を取り付けた状態を示す断面図である。
【図4】この発明の製造方法の第1の実施形態により製造された石英製試料収容容器を示す断面図である。
【図5】この発明の製造方法の第1の実施形態の他の例にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための分解斜視図である。
【図6】この発明の製造装置並びにこの発明の製造方法の第2の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】この発明の製造方法の第3の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための分解斜視図である。
【図8】この発明の製造方法の第3の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造するために各部品を取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】この発明の製造方法の第3の実施形態により製造された石英製試料収容容器を示す断面図である。
【図10】この発明の製造装置の他の実施形態並びにこの発明の製造方法の第4の実施形態にかかる石英製試料収容容器の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 収容容器、10 本体、11 くびれ部、 12 開口部、2 石英ピン、21 キャップ部、22 ピン部、3 キャップ、4 キャップ、5 高周波誘導加熱装置、51 誘導加熱コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英製の収容容器の開口部に石英ピンのピン部を挿入して、前記開口部の上端に石英ピンを配置させ、この石英ピンの上にキャップ箔を介して導電体からなるキャップを被せ、このキャップの周囲に誘電体コイルを配置させ、高周波誘導加熱により、前記キャップを加熱して、前記石英ピンと収容容器の石英を溶解させ、収容容器を密閉することを特徴とする石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項2】
前記収容容器は、有底筒状の本体と、本体より小さく形成されたくびれ部と、くびれ部の先端に設けられた開口部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項3】
前記石英ピンは、前記開口部内に挿入されるピン部とキャップ部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項4】
前記石英ピンは、前記ピン部と前記キャップ部との間にテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項5】
前記キャップには、前記くびれ部上部に被せられ、前記くびれ部の開口部に挿入された石英ピンのキャップ部を収容する凹部が設けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項6】
前記キャップの凹部と前記キャップ箔との間にキャップ箔と同材料からなる板箔を配置したことを特徴とする請求項5に記載の石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項7】
前記キャップ箔は、前記石英ピン上に被せた時に、前記くびれ部に1mm〜2mm程度被さる大きさに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項8】
内部を真空又は不活性雰囲気下に密閉保持できる石英製外部収容ケースを備え、この石英製外部収容ケース内に、石英製の収容容器を配置し、この石英製の収容容器の開口部に石英ピンのピン部を挿入して、前記開口部の上端に石英ピンを配置させ、この石英ピンの上にキャップ箔を介して導電体からなるキャップを被せた後、前記石英製外部収容ケースを密閉保持し、前記キャップに対向する前記石英製外部収容ケースの外周に誘電体コイルを配置させ、高周波誘導加熱により、前記キャップを加熱して、前記石英ピンと収容容器の石英を溶解させ、収容容器を密閉することを特徴とする石英製試料収容容器の製造方法。
【請求項9】
内部を真空又は不活性雰囲気下に密閉保持できる石英製外部収容ケースと、この石英製外部収容ケース内に、石英製の収容容器を保持する保持手段と、前記石英製の収容容器の開口部に挿入された石英ピン上にキャップ箔を介して被せられる導電体からなるキャップと、前記キャップに対向する前記石英製外部収容ケースの外周に配置させた誘電体コイルとを備え、高周波誘導加熱により、前記キャップを加熱して、前記石英ピンと収容容器の石英を溶解させ、収容容器を密閉することを特徴とする石英製試料収容容器の製造装置。
【請求項10】
前記キャップには、前記収容容器の開口部に挿入された石英ピンのキャップ部を収容する凹部が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の石英製試料収容容器の製造装置。
【請求項11】
前記キャップの凹部と前記キャップ箔との間にキャップ箔と同材料からなる板箔を配置したことを特徴とする請求項10に記載の石英製試料収容容器の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−38719(P2010−38719A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201677(P2008−201677)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(592041306)株式会社美和製作所 (5)
【Fターム(参考)】