説明

石詰籠および仕切パネル

【課題】低コストで十分な強度を有する石詰籠を提供する。
【解決手段】石詰籠の正面パネル3には、上辺32と下辺31の間に、正面補強棒材35が設けられている。この正面補強棒材35は上辺32および下辺31と平行であり、両端は側辺33,33に溶接されている。そして、正面パネル3にはひし形金網8が張られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石詰籠及び仕切パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
土留工事および地滑り防止工事等の地盤補強工事や、護岸根固め工事および流路工事等の治水工事等には、可撓性を有し、施工が容易等の特徴を有する蛇籠、ふとん籠工法が多く用いられてきている。これらの石を詰める籠を簡単に、かつ低コストで製作する方法として、パネルを組み立てて籠を製作する方法がある。この方法は、主筋と呼ばれる棒鋼で作られた矩形や台形の枠に金網を張ったパネルを複数結合して箱型にする方法で、その中に割栗石や玉石等をいれて、蓋のパネルを上に被せて石詰籠とする。
【0003】
図1に土留工事の例を示す。道路102の右側の山側斜面には、断面が矩形の石詰籠103が三段積まれて土留101となっている。上段側の石詰籠103は、下段の石詰籠103より右側にずらされて、全体が斜面に沿うように階段状に積まれている。一方、左側の谷側の斜面には、断面が台形であって、その斜辺が斜面に沿っている石詰籠104が三段積まれて土留101となっている。これら二つの土留101に挟まれた地盤105の上に道路102が作られている。なお、131は詰められた石である。
【0004】
石詰籠103、104の背面パネル107は、斜面側の地山106に全面が接しているが、背面パネル107に向かい合っている正面パネル108は、一般に表面がむき出しの状態である。そのため、背面側からの土圧や籠を多段に積んだときの上からの圧力で、正面パネル108が外側に膨張変形したり主筋の座屈変形が生じる等の問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、従来は石詰籠の内側に棒鋼で形成した中枠を入れて、背面パネルと正面パネルとを中枠で繋ぎ、かつ中枠の縦側の棒鋼を正面パネルに結合していたが、正面パネルの膨張変形を防止するためには、中枠を多数用いる必要があり、そのように中枠を多数用いると、ショベルカー等で籠の中に石を入れるときに、中枠が邪魔になってバケットが籠の中に入らないこと等により、作業効率が悪化していた。
【0006】
そこで、パネルを構成する枠の棒鋼の径を大きくするという方法や、矩形の正面パネルの枠に縦方向の補強棒材を設ける(枠の上辺と下辺とを繋ぐ)という方法が行われている。
【0007】
また、正面パネルの補強のため特許文献1には、正面パネルの外面側に縦横に棒を備えた補強部材を結合させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−302955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、枠の棒鋼の径を大きくしたり縦方向の補強棒材を設ける方法では、石詰籠が重くなって作業効率が悪くなるとともに、コストが高くなってしまう。
【0009】
また、特許文献1に記載の技術は、補強部材をわざわざ石詰籠に結合させるための手間がかかり、作業効率が悪くなるとともに、コストが高くなってしまう。
【0010】
さらに、これまでは石詰籠のパネルの膨張変形を防止するためのパネルのスペック、例えば枠の棒鋼の径や枠の大きさなどは、経験的に定められたものであり、その妥当性については検証されたことがなかった。けれども、最近は低コストで十分な強度の石詰籠を供給することが求められており、パネルのスペックに科学的な裏付けが求められるようになった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで十分な強度を有する石詰籠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の石詰籠は、棒材からなる枠にひし形金網を張った金網パネルを複数枚結合させて構成された石詰籠であって、前記金網パネルは、少なくとも底面パネルと正面パネルと背面パネルと側面パネルとを含み、前記正面パネルは、上辺と下辺とが平行な台形または矩形の枠を有し、前記正面パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた正面補強棒材を有し、前記正面補強棒材の両端は、前記正面パネルの前記枠の両側辺に固定されている。
【0013】
躯体強度計算により前記正面パネルの座屈強度が所定強度以上となるよう前記枠および前記正面補強棒材の径を設定していることが好ましい。
【0014】
前記正面補強棒材は、前記ひし形金網の1本の列線が形成する螺旋形状の中を延びていることが好ましい。
【0015】
前記背面パネルは、上辺と下辺とが平行な台形または矩形の枠を有し、前記背面パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた背面補強棒材を有し、前記背面補強棒材の両端は、前記背面パネルの前記枠の両側辺に固定されていることが好ましい。
【0016】
前記側面パネルは、上辺と下辺とが平行な台形または矩形の枠を有し、前記側面パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた側面補強棒材を有し、前記側面補強棒材の両端は、前記側面パネルの前記枠の両側辺に固定されていることが好ましい。
【0017】
本発明の仕切パネルは、棒材からなる枠にひし形金網を張った金網パネルを複数枚結合させて構成された石詰籠の内部に配置される仕切パネルであって、上辺と下辺とが平行な台形又は矩形であって棒材からなる枠を有し、該枠の少なくとも一部にひし形金網が張られており、前記仕切パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた仕切パネル補強棒材を有し、前記仕切パネル補強棒材の両端は、前記側面パネルの前記枠の両側辺に固定されている。
【0018】
前記仕切パネルの前記枠は、上辺と下辺とが平行な台形の枠であり、該枠の斜辺近傍に該上辺及び該下辺とを連結し且つ当該上辺及び当該下辺と略垂直な縦棒を有し、前記上辺と前記下辺と前記縦棒とを含む矩形の網張り枠にひし形金網が張られていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、正面パネルの枠に水平の補強棒材が設けられているので、この補強棒材が無い場合に比べて座屈強度が大きく向上し、低コストで石詰籠の強度を大幅に上げることができる。また、仕切パネルに係る本発明では、仕切パネルの枠に水平の補強棒材が設けられているので、仕切パネルの強度が大幅に向上し、低コストで仕切パネルの強度を大きく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
実施形態1に係る石詰籠は、6枚の矩形の金網パネルを組み合わせて形成した直方体の籠である。
【0022】
図2は、組み立てられた石詰籠1の模式的な斜視図である。この石詰籠1は底面パネル2、正面パネル3、背面パネル6、側面パネル4,4および上面パネル5からなっている。正面パネル3と背面パネル6とは同じ構造のパネルであり、また、底面パネル2と上面パネル5とは同じ構造のパネルである。正面パネル3の構造については詳細に後述するが、各パネル2,3,4,5,6の構造を簡単に言うと、金属棒材で矩形の枠を形成し、その枠に列線を並べて金網を張ったものである。なお、枠の水平方向の中間部には補強のための補強縦筋が2つの長辺(上辺と下辺)に接続されている。各パネル2,3,4,5間の連結はUボルトを利用した連結具7,7,…を用いて、枠の金属棒材同士を連結固定して行う。なお、図2では連結具7,7,…を極めて模式化し一部部品を省略して描いている。この石詰籠1の内部には、割栗石や玉石、コンクリート破砕物、土砂などを詰め込む。
【0023】
図3に正面パネル3の構造を示す。正面パネル3は、棒鋼からなる上辺32と下辺31とを長辺とし、棒鋼からなる2本の側辺33,33を短辺とする矩形の枠を有していて、この枠に複数の列線9からなるひし形金網8が張られている。上辺32と側辺33,33および下辺31と側辺33,33とは溶接により接続されている。ひし形金網8の各列線9は、その端部が側辺33,33に巻き付けられて固定され、長辺である上辺32と下辺31とに平行に並んでいる。
【0024】
ここでひし形金網8とは、図4,5に示すように、線材をジグザグに形成した列線9を複数本用意し、一本の列線9のジグザグの複数の山部を、もう一本の列線9のジグザグの複数の谷部に引っ掛けて、列線9同士を組み合わせて形成した金網のことで、網目がひし形の金網のことである。2本の列線9の山部と谷部がうまく引っかかって網となるように、列線9のジグザグは、列線9の延びる方向に螺旋状に形成されている。
【0025】
また、パネルの補強のために、側辺33,33と平行に3本の補強縦筋34が2本の側辺33,33の間に等間隔に設けられている。そして、補強縦筋34と上辺32及び下辺31とは溶接により接続及び固定されている。
【0026】
さらに正面パネル3には、上辺32及び下辺31との中間位置にこれらと略平行に、棒鋼からなる正面補強棒材35設けられている。正面補強棒材35は側辺33,33と溶接されて固定されているとともに、補強縦筋34とも溶接により固定されている。また、正面補強棒材35は、図5に示すように、列線9のジグザグを縫うようにしてひし形金網8の中を通っており、これはちょうど、正面補強棒材35に列線9の螺旋が巻き付いている状態であり、列線9が形成する螺旋形状の中を正面補強棒材35が延びている状態である。このようにすることにより、正面補強棒材35と金網8とが協力しあって正面パネル3の強度を向上させている。
【0027】
上述の構造を有する正面パネル3には、上からの力と内側からの力とがかかる。上からの力は、この石詰籠1の上に積み上げられた別の石詰籠1の荷重と土圧の鉛直方向荷重とによるものであり、この力によりパネルの枠が座屈してしまう虞がある。また、内側からの力は、背面からの土圧により籠内部の石などがパネルを外側に押す力であり、この力がひし形金網8を介して枠に作用することにより枠が曲がってしまう虞がある。一般に金網パネルは、枠が曲がってしまう内側からの力よりも小さな上からの力で座屈を生じる場合が多いので、十分な座屈強度を有するように正面パネル3の構造を設計する必要がある。
【0028】
発明者らは、種々検討を重ねた結果、下記の式(1)により金網パネルの座屈強度を計算することができ評価できることを見出した。
【0029】
P=EI(nπ/l)2+k(l/nπ)2 (N/m)・・・(1)
E:枠部の曲げ剛性、k:金網のバネ定数、I:断面2次モーメント
l:近接する2本の水平棒間距離、n:座屈の分岐モードを決定する値=1,2or3
上記のEは棒材の材料によって決まる値であり、Iは棒材の径によって決まり、kは金網の線径と列線のジグザグの形状とによって決まる値である。
【0030】
式(1)を用いて、図3の正面パネル3の座屈強度および正面補強棒材を用いないで棒鋼の径を大きくしたり補強縦筋を増やす等の変更をしたパネルの座屈強度を表1に示す。なお、パネルの水平方向長さ(上辺及び下辺の長さ)は4m、パネルの高さ(上辺と下辺間の距離)は1mである。
【0031】
【表1】

【0032】
従来タイプは、枠および3本の補強縦筋が全て13mm径の棒鋼であり正面補強棒材の無いパネルである。補強Aタイプは、枠および3本の補強縦筋が全て16mm径の棒鋼であり正面補強棒材の無いパネルである(即ち、従来タイプの棒鋼の径を大きくしたもの)。補強Bタイプは、枠および補強縦筋が全て13mm径の棒鋼であり正面補強棒材が無く且つ補強縦筋が50cmピッチで7本あるパネルである(即ち、従来タイプに補強縦筋を増やしたもの)。実施形態1のパネルは、枠および補強縦筋が全て13mm径の棒鋼であり、13mm径の正面補強棒材が下辺から50cmの高さにあるパネルである(即ち、従来タイプに正面補強棒材を加えたもの)。全てのパネルに、8mm径の線材を用いた150mm目のひし形金網が用いられている。
【0033】
また、強度割合は、実施形態1のパネルの座屈強度を1としたときの相対値を表しており、重量割合は実施形態1のパネルの重量を1としたときの相対値を表している。
【0034】
表1から判るように、上からの力に抗するため補強縦筋を増やして縦方向の棒材の設置ピッチを1/2としても(補強Bタイプ)、強度割合は0.4から0.52と従来タイプに対して1.3倍しか増さない。この時の重量増加は1.13倍である。また、棒材の径を13から16mmにすると(補強Aタイプ)、強度は従来タイプの1.77倍、重量は1.19倍となる。ところが、驚くべきことに従来タイプに水平の正面補強棒材を加えるだけで(実施形態1)、従来タイプに比べて強度が2.5倍と大幅に増し、重量は1.13倍という小さな増加となる。
【0035】
従来は、座屈強度を向上させるには上からの力に対向するため、補強縦筋の本数を増やしたり棒径を大きくしたりすることだけを考えていた。しかし、本願発明者らは金網パネルの座屈強度を躯体強度計算によって算出することを初めて行い、それによって補強縦筋の本数を増やしたり棒径を大きくしたりすることなく、水平の補強棒材を設けることで大幅な強度アップを図ることができることを初めて見出したのである。また、従来は水平方向の棒材を金網の列線を縫うように、即ち列線が形成する螺旋形状の中を棒材が延びている状態とすることは困難であると考えられていたことからも、水平の補強棒材を設けるという考えはなかったが、列線のジグザグのピッチ(目)を調整することにより、列線が形成する螺旋形状の中を棒材が延びている状態とすることが可能となった。
【0036】
このように躯体強度計算を用いることにより、最小限の補強材の追加(つまり最小限の重量増、材料費増)で座屈強度の大幅増を達成することができ、またオーバースペックとならない適正な強度の石詰籠を作成することができる。具体的には、矩形の枠に水平な補強棒材を加えることにより座屈強度が大幅に向上するので、必要とされる座屈強度(所定強度)を満たすように、枠及び補強棒材の径を躯体強度計算から求めて設定する。ここでは、材料の棒鋼の径を13mmとした。オーバースペックとならない適正な強度の石詰籠を作成することで、工事コストを最小にすることができる。
【0037】
本実施形態においては、背面パネル6にも正面パネル3と同様に水平の背面補強棒材を設けており、側面パネル4,4にも水平の側面補強棒材を設けている。従って、背面パネル6および側面パネル4,4も座屈強度が大きく向上している。背面パネル6は背面の土壁に接触しているため、内部の石がパネルを外側に押す力は土壁が押し返す力とバランスして、正面パネル3よりは低い強度に設定しても良いが、座屈強度に関しては正面パネル3と同程度の強度が必要であると考えられるので、このように背面補強棒材を設けることがコスト的に好ましい。背面パネル6や側面パネル4,4においても枠を構成する棒材及び各補強棒材の径は、、躯体強度計算により所定強度以上となるように設定されている。
【0038】
本実施形態においては、補強縦筋34と正面補強棒材35,背面補強棒材、側面補強棒材とは溶接により固定をしているが、その他の固定方法、例えばUボルトを2本と2つの貫通孔が設けられた平板2枚とを用いた固定方法により固定を行っても良い。
【0039】
(実施形態2)
実施形態2の石詰籠は、図6に示すように、側面パネル14が台形で他のパネルは矩形である石詰籠11である。この石詰籠11は、図1の道路102よりも下側に設けられている石詰籠104と同じ形状のもので、正面パネル13が斜面である法面となる。なお、図6では連結具を極めて模式化し一部部品を省略して描いている。
【0040】
このように正面パネル13が斜面をなしていても躯体強度計算をしたところ、水平な正面補強棒材35を設けることで実施形態1と同様に座屈強度が大幅にアップした。台形の側面パネル14についても、水平な側面補強棒材45を設けることで、同じように座屈強度が大幅に向上している。なお、背面パネルにも同様に水平な背面補強棒材が設けられている。これらの補強棒材およびパネルの枠を構成する棒材は、躯体強度計算により所定強度以上となるように径を設定している。
【0041】
本実施形態の石詰籠11は、さらにその内部に図8に示す仕切パネル61を有している。仕切パネル61は側面パネル14と同じ台形の棒材からなる枠を有している。そして、石詰籠11の内部であって、仕切パネル61の斜辺56が正面パネル13の補強縦筋34に、仕切パネル61の上辺52が上面パネルの補強縦筋24に、仕切パネル61の側辺53が背面パネルの補強縦筋に、仕切パネル61の下辺51が底面パネルの補強縦筋に、それぞれ沿うように隣接しておかれるとともに、仕切パネル61の各辺と各パネルの補強縦筋とがUボルトなどで固定される。このように固定されることで、仕切パネル61は正面パネル13、上面パネルおよび背面パネルを支えることになり、正面パネル13および背面パネルの座屈強度を向上させることができ、水平荷重に対する強度を向上させる。
【0042】
本実施形態の仕切パネル61を図7に示す従来の仕切パネル60と比較して説明する。
【0043】
従来の仕切パネル60は、棒鋼で構成された台形の枠にひし形金網を張り、斜辺56と側辺53の略中間に補強縦筋54を設けている。補強縦筋54の両端は、上辺52及び下辺51と溶接されている。一方本実施形態の仕切パネル61は、棒鋼で構成された台形の枠に、さらに斜辺56の近傍であって上辺52および下辺51と略垂直な縦枠筋58(縦棒)を有しており、ひし形金網8は上辺52、下辺51、側辺53および縦枠筋58が構成する矩形の網張り枠に張られている。縦枠筋58の両端は、それぞれ上辺52、下辺51に溶接されている。それから、本実施形態の仕切パネル61は、上辺52と下辺51の間に、側辺53と斜辺56とを結び、上辺52および下辺51と略水平な仕切パネル補強棒材55を有している。仕切パネル補強棒材55の両端はそれぞれ側辺53、斜辺56に溶接されている。また、仕切パネル補強棒材55と補強縦筋54および縦枠筋58とは溶接されている。そして、列線9が形成する螺旋形状の中を仕切パネル補強棒材55が延びている。
【0044】
このように本実施形態の仕切パネル61は、仕切パネル補強棒材55を有しているので、従来の仕切パネル60に比べて座屈強度が向上し、また水平荷重に対抗する強度も向上している。本実施形態の仕切パネル61の枠を構成する棒材および仕切パネル補強棒材55の径は、躯体強度計算により所定強度以上となるように設定されている。
【0045】
本実施形態の石詰籠11は、また、縦枠筋58を設けて矩形枠にひし形金網8を張っているので従来よりも金網が張りやすいのとともに、正面パネル13と連結させる斜辺56に列線のカール部分(からみつき部分)がないため、連結金具の取付位置を自由に選ぶことができる。さらに、斜辺56近辺に金網8が張られていないため、正面パネル13と仕切パネル61の連結部近傍(特に底面パネルに近い部分)に石を詰める作業が容易になる。これらの効果を発揮させるため、上辺52における斜辺56と縦枠筋58との距離Lは、1cm以上20cm以下が好ましいが、Lは0cmでも構わない。
【0046】
これまで説明した実施形態は本発明の例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されない。上記の実施形態では、正面パネル、側面パネルおよび背面パネルの全てに水平の補強棒材を設置しているが、少なくとも正面パネルに補強棒材が設置されていれば他のパネルには補強棒材が無くても構わない。
【0047】
正面パネルおよび背面パネルは、上辺と下辺とが水平な台形の枠にひし形金網を張ったものでもよい。
【0048】
また、正面パネルの下辺を底面パネルの長辺として共通とすることにより、正面パネルと底面パネルを一体化しても構わないし、同様に背面パネルと底面パネルを一体化してもよい。さらに、側面パネルと底面パネルとを一体化しても良い。
【0049】
実施形態2において、側面パネルは斜辺が一つのみの台形であるが、斜辺が2つの台形であっても構わない。この場合には背面パネルも剥き出しとなって正面パネルの役割を果たすことがある。
【0050】
各パネルの大きさは、特に限定されない。例えば実施形態1の正面パネルは4m×1mのものであるが、幅は4mよりも短くても良いし、4mよりも長くてもよい。高さも1mよりも短くても良いし、1mよりも長くても良い。補強縦筋の本数や、設置位置も特に限定されない。また、水平な各補強棒材も2本以上設置しても構わない。さらに各辺同士の接続や補強棒材との接続固定方法は溶接に限定されない。パネルの枠を棒鋼を曲げて作成してもよい。
【0051】
各棒材やひし形金網には防錆加工が施されていることが好ましい。防錆加工としては例えば亜鉛メッキを挙げることができる。
【0052】
また、実施形態1において石詰籠の中に仕切パネルを入れてもよい。この時仕切パネルは矩形の枠に金網を張ったパネルであっても良いし、金網を張っていない枠のみでも構わない。また、矩形の枠に水平な仕切パネル補強棒材を設置することが好ましい。
【0053】
なお、上面パネルは無くても良く、石詰籠を何段も重ねていく場合には、上の籠の底面パネルを下の籠の上面パネルと兼用させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明に係る石詰籠は、低コストで座屈強度が大きく増しており、地盤補強用や治水工事用等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】石詰籠を用いた土留工事現場の模式的な断面図である。
【図2】実施形態1に係る石詰籠の斜視図である。
【図3】実施形態1に係る正面パネルを示す図である。
【図4】列線を示す図である。
【図5】列線および補強棒材を示す図である。
【図6】実施形態2に係る石詰籠の斜視図である。
【図7】従来の仕切パネルを示す図である。
【図8】実施形態2に係る仕切パネルを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1,11,103,104 石詰籠
2 底面パネル
3,13,108 正面パネル
4,14 側面パネル
5 上面パネル
6 背面パネル
8 ひし形金網
9 列線
31 正面パネルの下辺
32 正面パネルの上辺
33 正面パネルの側辺
35 正面補強棒材
45 側面補強棒材
51 仕切パネルの下辺
52 仕切パネルの上辺
53 仕切パネルの側辺
55 仕切パネル補強棒材
56 仕切パネルの斜辺
58 縦枠筋
61 仕切パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材からなる枠にひし形金網を張った金網パネルを複数枚結合させて構成された石詰籠であって、
前記金網パネルは、少なくとも底面パネルと正面パネルと背面パネルと側面パネルとを含み、
前記正面パネルは、上辺と下辺とが平行な台形または矩形の枠を有し、
前記正面パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた正面補強棒材を有し、
前記正面補強棒材の両端は、前記正面パネルの前記枠の両側辺に固定されている、石詰籠。
【請求項2】
躯体強度計算により前記正面パネルの座屈強度が所定強度以上となるよう前記枠および前記正面補強棒材の径を設定している、請求項1に記載の石詰籠。
【請求項3】
前記正面補強棒材は、前記ひし形金網の1本の列線が形成する螺旋形状の中を延びている、請求項1または2に記載の石詰籠。
【請求項4】
前記背面パネルは、上辺と下辺とが平行な台形または矩形の枠を有し、
前記背面パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた背面補強棒材を有し、
前記背面補強棒材の両端は、前記背面パネルの前記枠の両側辺に固定されている、請求項1から3のいずれか一つに記載の石詰籠。
【請求項5】
前記側面パネルは、上辺と下辺とが平行な台形または矩形の枠を有し、
前記側面パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた側面補強棒材を有し、
前記側面補強棒材の両端は、前記側面パネルの前記枠の両側辺に固定されている、請求項1から4のいずれか一つに記載の石詰籠。
【請求項6】
棒材からなる枠にひし形金網を張った金網パネルを複数枚結合させて構成された石詰籠の内部に配置される仕切パネルであって、
上辺と下辺とが平行な台形又は矩形であって棒材からなる枠を有し、該枠の少なくとも一部にひし形金網が張られており、
前記仕切パネルの前記枠は、上辺と下辺との間に該上辺および該下辺と略平行に設けられた仕切パネル補強棒材を有し、
前記仕切パネル補強棒材の両端は、前記側面パネルの前記枠の両側辺に固定されている、仕切パネル。
【請求項7】
前記仕切パネルの前記枠は、上辺と下辺とが平行な台形の枠であり、該枠の斜辺近傍に該上辺及び該下辺とを連結し且つ当該上辺及び当該下辺と略垂直な縦棒を有し、
前記上辺と前記下辺と前記縦棒とを含む矩形の網張り枠にひし形金網が張られている、請求項6に記載の仕切パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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