説明

砂入り人工芝の回収、再利用方法

【課題】敷設された砂入り人工芝を効率よく回収し、再利用可能なように処理することができる新規な回収、再利用方法を提供する。
【解決手段】敷設された砂入り人工芝Aを、砂入り状態のままでロール状に巻回、回収(101)して破砕機aに投入(102)することで、破砕機aによる破砕工程において、人工芝を所定の大きさに裁断する工程と、該裁断状人工芝シート1から砂2を払い落とす工程とを同時に行って、ロール状の砂入り人工芝A’を、砂抜きの裁断状人工芝シート1と、砂2とに分別することができる。裁断状人工芝シート1は再生合成樹脂製品の原料として再製品化(103)したり、燃料化(104)するなどして再利用できる。分別後の砂2は、セメント原料等として再利用(105)できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスコート、野球場、陸上競技場、その他の各種運動競技場などに敷設された砂入りの人工芝を回収し再利用する方法に関し、詳しくは、敷設された砂入り人工芝を効率よく回収して再利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パイル面に天然砂を充填した所謂砂入り人工芝が知られている。この種人工芝は、天然芝に近い感触を得られる為、テニスコートや野球場等の各種運動競技場に敷設されている。
【0003】
ところで、この種人工芝は、5〜10年程度の使用でパイルが磨耗するため定期的に張り替える必要があり、従来においては、フォークリフトなどを用いて人工芝を剥した後、これを作業者がロール状に巻き上げ、トラックに積んで産業廃棄物処理場へ運搬し、砂が充填されたままの状態で埋設処理していた。
しかし、近年における廃棄物処理に対する厳格化などにより、このような処理が困難になりつつあり、人工芝シートや砂を有効に再利用する方法が要望されている。
【0004】
このような要望に対して、例えば、特許文献1,2などには、敷設された砂入り人工芝から砂を除去し、その後、砂除去後の人工芝を回収して処理することが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−8314号公報
【特許文献2】特開2001−336111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、敷設された砂入り人工芝から砂を除去するには、前記した特許文献1,2などに記載されるように、まず、締まった状態にある砂を解し、その後、その砂を叩き落としたり吸引しなければならず、その為の叩打装置、振動装置、吸引装置などが必要であると共に、その作業を行うための人員を確保しなければならず、回収コストが高くなるという問題があった。
敷設済みの砂入り人工芝を砂入り状態のままで回収して裁断することも考えられなくはないが、締まった状態の砂が充填された人工芝を裁断することは容易ではなく、このような方法は、未だ提案されていない。
【0007】
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、敷設された砂入り人工芝を効率よく回収し、再利用可能なように処理することができる、新規な回収、再利用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明に係る砂入り人工芝の回収、再利用方法は、敷設済みの砂入り人工芝を敷設面から剥離し、該剥離後の人工芝を砂入り状態のままでパイル面が内側になるようロール状に巻回し、該ロール状の砂入り人工芝を破砕機に投入して、50cm×50cm以下の大きさの裁断状人工芝シートと砂とに分別し、該裁断状人工芝シートを再生合成樹脂製品の原料又は燃料として再利用することを特徴とする。
【0009】
このような方法によれば、敷設された砂入り人工芝を、砂入り状態のままでロール状に巻回、回収して破砕機に投入することで、該破砕機による破砕工程において、人工芝を所定の大きさに裁断する工程と、該裁断状人工芝シートから砂を払い落とす工程とを同時に行って、前記ロール状の砂入り人工芝を、砂抜きの裁断状人工芝シートと、砂とに分別することができ、該裁断状人工芝シートは再生合成樹脂製品の原料又は燃料として、分別後の砂はセメント原料等として、それぞれ再利用することができる。
【0010】
本発明において、砂入り人工芝は、必ずしも限定されるものではないが、通常、厚さ0.1〜2mmの合成樹脂製基布の表面に高さ10〜80mmのパイルが植設され、前記合成樹脂製基布の裏面に厚さ0.1〜3mmのゴム層がコーティングされると共に、パイル面に10〜30kg/mの範囲で砂が充填された砂入り人工芝が対象となる。
【0011】
また、本発明は、厚さ0.1〜2mmの合成樹脂製基布の表面に高さ10〜80mmのパイルが植設され、前記合成樹脂製基布の裏面に厚さ0.1〜3mmのゴム層がコーティングされると共に、パイル面に20〜35kg/mの範囲で砂が充填され、且つ、粒径0.5〜3mmのゴムチップが5〜15kg/mの範囲で充填された、ゴムチップと砂入りの人工芝も対象とすることができる。
ここで、砂とゴムチップの関係は、砂層の上にゴムチップ層が積層されたり、ゴムチップ層の上に砂層が積層されたり、砂層とゴムチップ層が交互に積層されたり、砂とゴムチップの混合層とする等、各種の態様が考えられる。
【0012】
これら砂入り人工芝は、ロール状に巻回した状態で裁断しようとしても、パイル面に充填され締まった状態にある砂やゴムチップの強度により、裁断が困難であり、よって、本発明では、砂又は砂とゴムチップが充填されたままの状態でロール状に巻回した後、破砕機に投入して破砕することを特徴とする。
【0013】
本発明で用いる破砕機は、互いに平行となるよう設置され各々正回転駆動、逆回転駆動を可能とした少なくとも二本の破砕軸を備え、該それぞれの破砕軸には、複数の破砕刃が適宜間隔毎に設けられ、且つ、各破砕軸の破砕刃が、隣接する破砕軸の破砕刃と噛み合うように配設されたものであることが好ましい。
このような破砕機を用いることで、砂又は砂とゴムチップが充填されたままの状態でロール状に巻回した砂入り人工芝を、50cm×50cm以下の大きさの裁断状人工芝シートと、砂とに、確実に分別することができる。
裁断状人工芝シートは、合成樹脂製基布の表面にパイルが植設され、裏面にゴム層がコーティングされたものであることは言うまでもなく、再生合成樹脂製品の原料又は燃料として好適に再利用可能である。
【0014】
尚、本発明は、砂入り人工芝をロール状に巻回、回収する前の砂除去作業を不要とするものであるが、本発明において、砂入り人工芝の回収前に、砂を叩き落としたり吸引して砂を除去しても良く、回収前の砂除去作業を排除するものではない。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、敷設面から剥離した砂入り人工芝を、砂入り状態のままで効率良く回収し、回収された人工芝を、砂入り状態のままで破砕機に投入して、所定サイズの砂抜き人工芝シートと、砂とに分別し、各々再利用可能な状態にすることができる。よって、廃棄処理にかかる手間、コストが大幅に低減されると共に、地球環境の保護にも寄与し得るなど、多くの効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は、ゴムチップ無しの通常の砂入り人工芝Aを回収して再利用する方法の概略を示す。この方法においては、まず、敷設済みの砂入り人工芝Aを、フォークリフトなどを用いて敷設面から剥離し、該剥離後の人工芝Aを砂2が充填された状態のままで、パイル面が内側になるよう、作業者がロール状に巻回して回収し(101)、このロール状の砂入り人工芝A’を破砕場などに搬送して破砕機aに投入し(102)、該破砕機aによる破砕作業により、所定サイズの裁断状人工芝シート1を得ると共に、該人工芝シート1から払い落とされる砂2を人工芝から分離させることを特徴とする。
裁断状人工芝シート1は、破砕機aの破砕軸21,22(破砕刃23,24)の下方に設置された網状コンベヤ25で搬出され、砂2は、該コンベヤ25の網目を通って、コンベヤ下方に設置された容器26に収容される。
【0017】
砂入り人工芝Aは、図2に示すように、ポリプロピレンやナイロンなどの合成樹脂からなる厚さ0.5〜1mm程度の基布11の表面に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどの合成樹脂からなる高さ10〜80mm程度のパイル12を植設し、基布11の裏面には、SBRなどの合成ゴムからなる厚さ0.1〜3mm程度のゴム層13をコーティングし、パイル面に10〜30kg/mの範囲で砂2が充填されたものである。
基布11は、布状に編んだものやシート状に成形されたものなど、各種の態様を含む。
砂2としては、砂、珪砂、高分子材料の粒状物或いはこれらの混合物を含み、基布11から所定の厚さ(高さ)に充填される。
【0018】
このような砂入り人工芝Aは、砂入りのままでロール状に巻回した状態で裁断しようとしても、パイル面に充填され締まった状態にある砂2の強度により、裁断が極めて困難である。よって、本発明ではこのロール状砂入り人工芝A’を破砕機aで破砕することで、50cm×50cm以下の大きさの裁断状人工芝シート1に裁断すると同時に、砂2を払い落として分別する。
裁断状人工芝シート1は、再生合成樹脂製品の原料として再製品化(103)したり、燃料化(104)などして再利用をすることができる。分別された砂2は、セメント原料等の各種用途に再利用(105)することができる。
【0019】
本例で用いる破砕機aは、図3,図4に示すように、互いに平行となるよう設置され各々正回転駆動、逆回転駆動を可能とした二本の破砕軸21,22を備え、それぞれの破砕軸21,22には、複数の破砕刃23,24が適宜間隔毎に設けられている。また、各破砕軸21,22の破砕刃23,24は、隣接する破砕軸22,21の破砕刃24,23と噛み合うように配設されており、このような噛み合わせ状態の各破砕刃23,24が、各破砕軸21,22を独立して回転駆動させることで、正方向又は逆方向に適宜回転して、前述した所定サイズの裁断状人工芝シート1を得ると共に、砂2を払い落とすことができる。尚、各破砕軸21,22(各破砕刃23,24)は、図3に示すように、通常は相反する方向に回転駆動して破砕作業を行い、各破砕刃23,24間に人工芝シート1などが目詰まりした時は、いずれか一方又は双方の破砕軸21,22が逆方向に回転駆動して、その目詰まりを解消するよう構成されており、これら回転駆動手動又は自動的に制御することができる。
【0020】
図5〜図7には、ゴムチップをさらに充填した砂入り人工芝Bを回収して再利用する方法の概略を示す。この方法においても、まず、敷設済みの砂入り人工芝Bを、フォークリフトなどを用いて敷設面から剥離し、該剥離後の人工芝Bをゴムチップ3と砂2が充填された状態のままで、パイル面が内側になるよう、作業者がロール状に巻回して回収し(101)、このロール状の砂入り人工芝B’を破砕場などに搬送して破砕機aに投入し(102)、該破砕機aによる破砕作業により、所定サイズの裁断状人工芝シート1を得ると共に、該人工芝シート1から払い落とされる砂2とゴムチップ3を人工芝から分離させることを特徴とする。
【0021】
またこの例では、裁断状人工芝シート1は、破砕機aの破砕軸21,22(破砕刃23,24)の下方に設置された網状コンベヤ25で搬出され、砂2とゴムチップ3は、該コンベヤ25の網目を通って下方に落下する。ゴムチップ3は網目状容器27に収容され、砂2は、該容器27の網目を通って、その下方に設置された容器28に収容される。砂2を容器28に向けて効率良く落下させるために、網目状容器27を振動させる振動手段(不図示)を設置することが好ましい。
【0022】
ゴムチップ3が充填された砂入り人工芝Bは、図6に示すように、ポリプロピレンやナイロンなどの合成樹脂からなる厚さ0.5〜1mm程度の基布11の表面に、ポリプロピレンやナイロンなどの合成樹脂からなる高さ10〜80mm程度のパイル12を植設し、基布11の裏面には、SBRなどの合成ゴムからなる厚さ0.1〜3mm程度のゴム層13をコーティングし、パイル面に20〜35kg/mの範囲で砂2が充填され、さらに粒径0.5〜3mmのゴムチップ3が5〜15kg/mの範囲で充填されたものである。
【0023】
以上、本発明の実施形態の例を図面に基づき説明したが、本発明に係る砂入り人工芝の回収、再利用方法及び本発明が対象とする砂入り人工芝は図示例のものに限定されず、各請求項に記載された技術的思想の範疇において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る砂入り人工芝の回収、再利用方法の一例を示す概略ブロック図。
【図2】図1に係る方法が対象とする砂入り人工芝の一例を示す拡大断面図。
【図3】図1に係る方法で用いる破砕機の一例を示す概略模式図。
【図4】図4に示す破砕機の概略平面図。
【図5】本発明に係る砂入り人工芝の回収、再利用方法の他例を示す概略ブロック図。
【図6】図5に係る方法が対象とする砂入り人工芝の一例を示す拡大断面図。
【図7】図5に係る方法で用いる破砕機の一例を示す概略模式図。
【符号の説明】
【0025】
A,B:砂入り人工芝
1:破砕状人工芝シート
2:砂
3:ゴムチップ
11:基布
12:パイル
13:ゴム層
a:破砕機
21,22:破砕軸
23,24:破砕刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設済みの砂入り人工芝を敷設面から剥離し、該剥離後の人工芝を砂入り状態のままでパイル面が内側になるようロール状に巻回し、該ロール状の砂入り人工芝を破砕機に投入して、50cm×50cm以下の大きさの裁断状人工芝シートと砂とに分別し、該裁断状人工芝シートを再生合成樹脂製品の原料又は燃料として再利用することを特徴とする砂入り人工芝の回収、再利用方法。
【請求項2】
前記砂入り人工芝は、厚さ0.1〜2mmの合成樹脂製基布の表面に高さ10〜80mmのパイルが植設され、前記合成樹脂製基布の裏面に厚さ0.1〜3mmのゴム層がコーティングされると共に、パイル面に10〜30kg/mの範囲で砂が充填されたものであることを特徴とする請求項1記載の砂入り人工芝の回収、再利用方法。
【請求項3】
前記砂入り人工芝は、厚さ0.1〜2mmの合成樹脂製基布の表面に高さ10〜80mmのパイルが植設され、前記合成樹脂製基布の裏面に厚さ0.1〜3mmのゴム層がコーティングされると共に、パイル面に20〜35kg/mの範囲で砂が充填され、且つ、粒径0.5〜3mmのゴムチップが5〜15kg/mの範囲で充填されたものであることを特徴とする請求項1記載の砂入り人工芝の回収、再利用方法。
【請求項4】
前記破砕機は、互いに平行となるよう設置され各々正回転駆動、逆回転駆動を可能とした少なくとも二本の破砕軸を備え、該それぞれの破砕軸には、複数の破砕刃が適宜間隔毎に設けられ、且つ、各破砕軸の破砕刃が、隣接する破砕軸の破砕刃と噛み合うように配設されていることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の砂入り人工芝の回収、再利用方法。
【請求項5】
前記分別後の砂をセメント原料等として再利用することを特徴とする請求項1又は2又は3又は4記載の砂入り人工芝の回収、再利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−132116(P2007−132116A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327367(P2005−327367)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(501406912)アシストインターナショナル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】