説明

研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法

【課題】 簡単な方法でブリケットの長さを監視し、研削スラッジの供給量を制御して装置の効率よい稼動を実現することができる研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】 研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジmを、圧搾室4a内で加圧パンチ5の進入による圧搾によって固形化して固形化物を製造する。加圧圧力を検出する加圧圧力検出センサ15と、加圧パンチ5の位置を検出する位置検出センサ10,11と、研削スラッジmの供給量を調整可能なスラッジ供給手段2とを備える。研削スラッジmの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサ15で検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチ5の位置を前記位置検出センサ10,11で検出する。供給制御手段16は、検出結果に応じて、前記スラッジ供給手段2に、次のサイクルでの研削スラッジmの供給量を設定規則16aに従って調整させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研削ラインで発生した研削スラッジ、例えば、転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品、その他の軸受用鋼材の研削スラッジをブリケットに固形化する研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品は、焼入れの後、転走面等に研削が施される。研削により生じた粉状の切削屑は、クーラントと共にスラッジとして機外に流して排出し、ろ過の後、クーラントを研削に再利用する。ろ過により残った研削スラッジは、汚泥として埋め立て処理される。
しかし、研削スラッジの埋め立ては、環境の面から好ましくないばかりでなく、産廃処理場の行き詰まりから、今後、埋め立て処理ができなくなることは明白である。研削で生じた研削屑の量は、切削等に比べて少ないが、軸受等のような量産ラインでは、その発生量は多量となる。
【0003】
このため、研削スラッジを圧搾することにより固形化し、絞り出されたクーラントを再利用すると共に、その固形化物(以下、「ブリケット」という)を製鋼材として再利用することが検討されている。特許文献1および特許文献2には、研削スラッジを固形化する装置ないしは方法について開示されている。特許文献1では、温度、クーラントの含有率、加圧速度の変化および加圧圧力の変化を検出して、加圧速度を制御することが述べられている。また、特許文献2では、一定昇圧速度での圧搾の方法が述べられている。
【特許文献1】特許第3907975号公報
【特許文献2】特許第3979137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなブリケットの製造においては、研削スラッジの含水率や嵩密度などの性状が変化すると、成形されたブリケットの長さが変化する。過度に短いブリケットができると成形処理能力が低下したり、その後の搬送過程等においてブリケットがスムースに流れないといった支障を来たしたりすることがある。また、過度に長いブリケットができると、同じく搬送過程で支障を来たし、処理装置の正常な稼動が妨げられる場合がある。研削スラッジの性状は、例えばろ過などの前処理工程での仕上がり状況により変動するが、その変動に応じて成形条件を調整することは煩雑で、この調整を怠れば、良好な稼動が妨げられ、本来の処理能力が発揮されないことにもなっていた。
特許文献1および特許文献2は、いずれも加圧状態を検出して仕上がり状態よく成形するよう加圧速度を制御するものであるが、成形されたブリケットの長さを検出して、その検出値の変動に応じて原材料(研削スラッジ)の供給を制御するものではない。また、このような制御を行う技術は、他にも見当たらない。
【0005】
この発明の目的は、簡単な方法でブリケットの長さを監視し、研削スラッジの供給量を制御して装置の効率よい稼動を実現することができる研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置は、研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾室内で加圧パンチの進入による圧搾によって固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、加圧圧力を検出する加圧圧力検出センサと、加圧パンチの位置を検出する位置検出センサと、研削スラッジの供給量を調整可能なスラッジ供給手段とを備え、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を前記位置検出センサで検出し、検出結果に応じて、前記スラッジ供給手段に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整させる供給制御手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
この構成によると、研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジはろ過されて濃縮スラッジとされ、圧搾室内で加圧パンチの進入による圧搾によって固形化物とされる。この時、研削スラッジの圧搾時に、圧搾室内での加圧パンチの加圧圧力が加圧圧力検出センサによって検出され、この検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの進入位置が位置検出センサによって検出される。供給制御手段は、この検出結果に応じて、スラッジ供給手段に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整させる。したがって、研削スラッジの性状が変化することにより成形されるブリケットの長さが変動しても、次のサイクルではスラッジ供給手段により供給される研削スラッジの量が設定規則に従って調整されるから、長過ぎたりあるいは短過ぎたりするような不適正な長さのブリケットが成形されることを未然に防止することができる。これにより、成形処理装置を効率良く、安定して稼動させることができる。
【0008】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの上限および下限位置をそれぞれ検出する上限センサおよび下限センサを備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの上・下限位置を前記上限センサおよび下限センサで検出し、上・下限位置を外れている場合に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとしても良い。
この構成の場合、研削スラッジの圧搾時に、加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの上・下限位置が、前記上限センサおよび下限センサの間にあると検出されれば正常と判断する。センサの上・下限位置を外れている場合には、成形されるブリケットの長さが長過ぎるあるいは短過ぎると判断し、この判断結果に基づき、供給制御手段は、設定規則に従ってスラッジ供給手段によるスラッジの供給量を少なくしあるいは増加させて、次のサイクルでのブリケットの成形長さの適正化を図ることができる。
【0009】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの基準位置を検出するセンサを備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記位置検出サンサが検出してから、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時までの時間が、設定上限時間または設定下限時間を外れていた場合に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとしても良い。
この構成の場合、研削スラッジの圧搾時に、前記位置検出サンサが検出してから、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時までの時間が、設定時間内(上・下限時間内)にあると検出されれば正常と判断する。設定時間を外れている場合には、成形されるブリケットの長さが長が過ぎるか、または短か過ぎると判断し、この判断結果に基づき、供給制御手段は、設定規則に従ってスラッジ供給手段によるスラッジの供給量を少なくしあるいは増加させて、次のサイクルでのブリケットの成形長さの適正化を図ることができる。
【0010】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの基準位置を検出するセンサを備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記位置検出センサが検出してから、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達する時までの時間を計測し、その計測結果に基づいて次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとしても良い。
この構成の場合、研削スラッジの圧搾時に、前記位置検出サンサが検出してから、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達する時までの計測時間の基準時間とのずれ量に基づき、ずれ量が正常か否かを判断し、正常でない場合は、供給制御手段は、設定規則に従ってスラッジ供給手段によるスラッジの供給量を少なくしあるいは増加させて、次のサイクルでのブリケットの成形長さの適正化を図ることができる。
【0011】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの位置を検出する位置検出用変位計を備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を計測し、その計測結果に基づいて次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとしても良い。
この構成の場合、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置が位置検出用変位計によって計測される。これにより、ブリケットの長さが上・下限位置を外れるか否かだけではなく、ブリケットの長さ計測も可能となる。したがって、スラッジ供給手段によるスラッジの供給量の調整および次のサイクルでのブリケットの成形長さの調整がより的確になされる。
【0012】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置において、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時において、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時に、加圧パンチが下限位置を外れていた場合に、加圧パンチの駆動源に対して加圧パンチを一旦後退させ、前記スラッジ供給手段に再度研削スラッジを追加供給させ、前記加圧パンチ駆動手段に再度成形のための加圧パンチの進入動作を行わせるものとしても良い。
この構成によれば、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時において、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時に、加圧パンチが下限位置を外れていた場合に、加圧パンチを一旦後退させ、再度研削スラッジを追加供給させ、前記加圧パンチの進入動作を再度行わせるようにしている。このため、短か過ぎる成形ブリケットをそのまま排出させることなく、適正長さに成形した上で排出させることができ、短か過ぎる成形ブリケットの発生が抑えられ、歩留まりが向上して装置の稼動効率をより高めることができる。
【0013】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置において、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時において、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時に、加圧パンチが上・下限位置を上限もしくは下限の同じ側に外れることが連続してn回(n:任意の自然数)、もしくは、連続m回(m:任意の自然数)のうちk回(k:m以下の任意の自然数)発生した場合には、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとしても良い。
得られるブリケットの長さが短時間でばらつくような場合、毎回の位置検出センサによる加圧パンチの位置検出結果で、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を自動調整すると、過剰な調整となり、却ってブリケットの長さが不安定となる場合がある。そこで、この構成によれば、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整させる際に、研削スラッジの供給量の増加側もしくは減少側の同じ側に外れることが連続してn回(n:任意の自然数)、もしくは、連続m回(m:任意の自然数)のうち予め定められたk回(k:m以下の任意の自然数)発生した場合に、研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるようにしている。そのため、過剰な調整とならず、ブリケットの長さが不安定となることを抑えることができる。
【0014】
この発明に係る研削スラッジの固形化物製造方法は、研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾室内で加圧パンチの進入による圧搾によって固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造方法であって、加圧圧力を検出する加圧圧力検出センサと、加圧パンチの位置を検出する位置検出センサと、研削スラッジの供給量を調整可能なスラッジ供給手段とを備え、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を前記位置検出センサで検出し、検出結果に応じて、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整することを特徴とする。
この方法によれば、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置が前記位置検出センサで検出される。そして、この検出結果に応じて、次のサイクルでの研削スラッジの供給量が設定規則に従って調整される。したがって、異常な長さのブリケットが成形されることを未然に防止することができ、これにより、装置を効率良く、安定して稼動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る研削スラッジの固形化物製造装置は、研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾室内で加圧パンチの進入による圧搾によって固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、加圧圧力を検出する加圧圧力検出センサと、加圧パンチの位置を検出する位置検出センサと、研削スラッジの供給量を調整可能なスラッジ供給手段とを備え、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を前記位置検出センサで検出し、検出結果に応じて、前記スラッジ供給手段に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整させる供給制御手段を設けたため、簡易な方法で、成形されるブリケットの長さを監視し、研削スラッジの供給量を自動調整することができ、これにより、ブリケットの長さの変動を抑え、装置の効率の良い稼動および安定した稼動を実現させることができる。
【0016】
この発明に係る研削スラッジの固形化物製造方法は、研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾室内で加圧パンチの進入による圧搾によって固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造方法であって、加圧圧力を検出する加圧圧力検出センサと、加圧パンチの位置を検出する位置検出センサと、研削スラッジの供給量を調整可能なスラッジ供給手段とを備え、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を前記位置検出センサで検出し、検出結果に応じて、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整することとしたため、上記と同様に、簡易な方法で、成形されるブリケットの長さを監視し、研削スラッジの供給量を自動調整することができ、これにより、ブリケットの長さの変動を抑え、装置の効率の良い稼動および安定した稼動を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明に係る研削スラッジの固形化物製造装置の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1および図2に示す固形化物製造装置Aおいて、ホッパー1には、図示しない研削ラインで発生したクーラントを含有する研削スラッジを濾過した濃縮スラッジmが貯蔵される。ホッパー1の下端には、モータ2aを駆動源とするスクリューフィーダ2が設置されており、このスクリューフィーダ2の給送側先端は、垂直に設置された筒状の投入部3の筒内に臨んでいる。このスクリューフィーダ2を有するホッパー1により、スラッジ供給手段が構成される。投入部3内には、投入シリンダ3aのロッドの先端に固定されたプッシャー3bが配置され、ロッドの伸縮動作に伴うプッシャー3bの投入部3内の軸心方向に沿った上下動により、スクリューフィーダ2から給送される濃縮スラッジmを下方に押しやるように構成されている。投入部3の下方には、内部が圧搾室4aとなるシリンダ4が水平姿勢に設置され、その周胴部の上部には上記投入部3の下端部と連通する投入口4bが設けられている。
【0018】
上記圧搾室4aは両端が開口しており、この両端開口部より、加圧パンチ5および受圧パンチ7が対向関係で挿入されている。加圧パンチ5および受圧パンチ7は、それぞれ、油圧で作動する加圧シリンダ6,8の伸縮ロッド6a,8aの先端に連結されている。上記投入口4bから圧搾室4a内に投入された濃縮スラッジmは、圧搾室4a内で、加圧パンチ5の進入により加圧パンチ5および受圧パンチ7の間で挟圧されて、後記するブリケット(固形化物)bに成形される。加圧パンチ5を連結保持する加圧シリンダ6のロッド6aには、ドグ9が固定され、ロッド6aの伸縮に伴うドグ9の移動経路に近接して、位置検出センサを構成する下限センサ10および上限センサ11が並設されている。加圧シリンダ6は、油圧ポンプ12および油圧制御装置13に油圧管路14を介して接続されており、これらの油圧制御系によってその作動制御がなされる。油圧管路14の途中には、加圧圧力検出センサ15が配設されている。受圧パンチ7側の加圧シリンダ8は、油圧供給系(図示せず)に接続されていて、受圧パンチ7は、圧搾室4aの一端から出入りさせられるが、図1および図2ではその油圧系の図示を省略している。
【0019】
上記下限センサ10および上限センサ11ではドグ9の位置を監視し、加圧圧力検出センサ15で油圧管路14中の油圧力(加圧パンチ5の加圧圧力)を監視している。これらの監視情報(検出結果)は供給制御手段16に入力され、供給制御手段16では、この検出結果に応じ、設定規則16aに従いモータ2aを駆動制御してスクリューフィーダ2による濃縮スラッジmの供給量の調整を行うようにしている。供給制御手段16は、電子回路やマイクロコンピュータ等により構成される。設定規則16aは、設定値やシーケンス制御プログラム等により構成される。設定規則16aの内容は適宜に設定すれば良いが、例えば、後述するいずれかの制御動作を行わせる内容とされる。
【0020】
上記構成の固形化物製造装置Aによる研削スラッジの固形化物(以下「ブリケット」と称す)bの成形要領について説明する。図1において、受圧パンチ7を圧搾室4aの先側開口部内に位置させ、また加圧パンチ5を圧搾室4aの後側開口部内に位置させた状態で、スクリューフィーダ2を所定時間作動させてホッパー1内の濃縮スラッジmを投入部3に投入する。こののち、投入シリンダ3aを作動させ、プッシャー3bの上下往復動作により、濃縮スラッジmを投入口4bを経て圧搾室4a内の両パンチ5,7間に押し込むように投入する。またこのときドグ9は、待機位置(図1では上限センサ11より右側)に位置している。
【0021】
所定量の濃縮スラッジmが圧搾室4a内に投入されると、受圧パンチ7を静止させた状態で、加圧シリンダ6を作動させてロッド6aを伸張させ、加圧パンチ5を圧搾室4a内に進入駆動させることによって、両パンチ5,7間で濃縮スラッジmを圧搾してブリケットbに成形する。成形されたブリケットbは、その後、加圧シリンダ8が作動して、図3に示すように受圧パンチ7が後退し、加圧パンチ5がさらに前進することにより、圧搾室4aより排出される。ブリケットbを排出後、両パンチ5,7は元の位置に戻って待機する。
【0022】
図2に示す濃縮スラッジmの圧搾時において、加圧パンチ5と連動するドグ9の位置を2個のセンサ、すなわち、下限センサ10および上限センサ11によって監視している。また、加圧シリンダ6の加圧圧力を加圧圧力検出センサ15で監視している。圧搾時の加圧圧力検出センサ15の出力の例を図5のグラフで示す。圧搾が完了した時点での圧力をP0(油圧系の最大出力圧)とし、それより少し低い圧力Psに閾値を設定している。上記圧搾時において、成形圧力が閾値Psに到達した時点でドグ9の位置がセンサ10,11によって検出され、両センサ10,11間にドグ9があれば、すなわち、ドグ9が上限センサ11を通過したが下限センサ10を通過していないとする検出情報が供給制御手段16に入力されると、供給制御手段16は加圧成形が正常と判断する。
【0023】
また、図4(A)に示すように、成形圧力が閾値Psに到達した時点のドグ9の位置が、下限センサ10より前(ロッド6aの伸張方向前方)にあれば、すなわち、両センサ10,11をドグ9が通過したとする検出情報が供給制御手段16に入力されると、供給制御手段16は成形されるブリケットbの長さが短いと判断する。さらに、図4(B)に示すように、成形圧力が閾値Psに到達した時点のドグ9の位置が、上限センサ11より後ろにあれば、すなわち、ドグ9が両センサ10,11のいずれをも通過していないとする検出情報が供給制御手段16に入力されると、供給制御手段16は成形されるブリケットbの長さが長いと判断する。
【0024】
供給制御手段16は、ブリケットbの長さが短いと判断した場合、成形動作を中断し、ブリケットbの排出動作を行わずに加圧パンチ5を一旦後退させる。そして、設定規則16aに基づき、スクリューフィーダ2の駆動源としてのモータ2aに駆動信号を送出し、スクリューフィーダ2を作動させて濃縮スラッジmを追加供給する。その後、中断している成形動作を再開して、正常な長さのブリケットbとした上で排出させる。次のサイクルでは、追加供給した時間をプラスさせた供給時間に設定してブリケットbの成形を行う。また、供給制御手段16は、ブリケットbの長さが長いと判断した場合、成形されたブリケットbはそのまま排出させた上で、設定規則16aに基づき、次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給時間を短く設定する。
【0025】
加圧シリンダ6の加圧圧力、ドグ9を介した加圧パンチ5の位置を監視しながら、この監視検出情報に基づき、スクリューフィーダ2からの濃縮スラッジmの供給量を調整して上記成形が繰り返されるから、長過ぎたり短過ぎたりするブリケットbの発生を抑え、装置の効率よい稼動を実現することができる。そして、成形されたブリケットbが短い場合に、一旦成形動作を中断して濃縮スラッジmを追加供給した後成形を再開するようにしているので、短過ぎるブリケットbの発生が抑えられ、正常な長さのブリケットbの歩留まりが向上し、装置の稼動効率がより高められる。しかし、このような成形動作の中断および再開を経ず、ブリケットbを排出させた後、次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給時間を長く設定するようにしても良い。この場合は、制御シーケンスが簡略化される利点があり、これらは要求に応じてその仕様が定められる。
【0026】
図6はこの発明の固形化物製造装置の第2の実施形態を示している。図示の固形化物製造装置Bは、前記位置検出センサとして加圧パンチ5(ドグ9)の基準位置を検出する1個のセンサ17を備え、供給制御手段16は、濃縮スラッジmの圧搾時に、基準位置検出サンサ17が検出してから、前記加圧圧力検出センサ15で検出される加圧圧力が所定の圧力(閾値Ps)に達した時までの時間が、設定時間を外れていた場合に、次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量をスクリューフィーダ2に調整させるものである。
【0027】
図7は、この実施形態の固形化物製造装置Bにおいて、成形動作を開始してから基準位置検出サンサ17によるドグ9の検出および加圧圧力検出センサ15が閾値Psに達するまでのタイムチャートを示す。基準位置検出サンサ17の設置位置が基準位置とされ、成形動作の開始と共に、ドグ9は待機位置から図6の左方向に移行し、基準位置検出サンサ17を通過する際に検出される。成形動作の開始からこの検出時間t0が基準時間とされ、引き続く成形動作の後加圧圧力検出センサ15が閾値Psを検出すると、基準時間t0より閾値Psを検出するまでの時間が計時される。予め、時間下限(ブリケットbの長さ:上限)としてtmin が、時間上限(ブリケットbの長さ:下限)としてtmax が設定されている。図7におけるTaはt0からtmin までの経過時間を、Tbはt0からtmax までの経過時間を示し、T(Tb−Ta)が前記設定時間とされる。
【0028】
図7における検出信号S1,S2,S3は、加圧圧力検出センサ15が閾値Psを検出した時を示し、これらの検出信号S1,S2,S3の内、S1は上記設定時間T内に検出されたことを、S2は設定時間Tを下限時間(長さ上限)側に外れたことを、S3は設定時間Tを上限時間(長さ下限)側に外れたことを、それぞれ示す。従って、S1の場合は成形されるブリケットbの長さを正常とし、S2の場合はブリケットbが長いと判断して次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量を少なくし、S3の場合はブリケットbが短いと判断して次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量を多くするよう、供給制御手段16は設定規則16aに従いスクリューフィーダ2のモータ2aの駆動制御を行う。
なお、この実施形態において、ブリケットbが短いと判断した場合に、成形動作を中断して濃縮スラッジmを追加供給して成形動作を再開するよう構成しても良い。
また、この実施形態の変形例として、位置検出センサ17がドグ9を検出してから、加圧圧力が閾値Psに達するまでの時間が上・下限位置(設定時間T)を外れるか否かではなく、時間のずれ量で判定するようにしても良い。
また、基準位置検出センサ17を使う代わりに加圧シリンダ6の後退端を基準として成形動作の開始から加圧圧力検出センサ15が閾値Psを検出するまでの時間を計測し、時間下限tmin 、時間上限tmaxとの比較を直接行ってもよいが、この場合シリンダーの工程が長くなり、長さ判断の精度が低下する。
その他の構成は上記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
図8はこの発明の固形化物製造装置の第3の実施形態を示している。図示の固形化物製造装置Cは、前記位置検出センサとして加圧パンチ5(ドグ9)の位置を検出する位置検出用変位計18を備え、供給制御手段16は、濃縮スラッジmの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサ15で検出される加圧圧力が所定の圧力(閾値)Psに達した時の加圧パンチ5の位置を計測し、その計測結果に基づいて次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量をスクリューフィーダ2に調整させるものである。
【0030】
位置検出用変位計18には予め加圧パンチ5の上限および下限位置が設定されており、加圧パンチ5の加圧圧力が閾値Psに達した時の加圧パンチ5(ドグ9)の位置がこの上限および下限位置内にある時は正常と判断し、外れる時には、供給制御手段16は、上記と同様に設定規則16aに従い、上記と同様に次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量を調整すべく、スクリューフィーダ2のモータ2aの駆動制御を行う。この場合、受圧パンチ7が静止しており、加圧パンチ5のストローク長さが位置検出用変位計18によって検出されるから、受圧パンチ7の位置情報とこのストローク長さの検出情報とにより、成形されるブリケットbの長さが算出されることになる。したがって、この長さの計測結果に基づき濃縮スラッジmの自動供給制御がより精度良くなされる。
なお、この実施形態においても、ブリケットbが短いと判断した場合に、成形動作を中断して濃縮スラッジmを追加供給して成形動作を再開するよう構成しても良い。
その他の構成は上記実施形態と同様であるから、ここでも共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
上記各実施形態において、スクリューフィーダ2による濃縮スラッジmの供給時間FTの調整は、より具体的には、例えば、平均的な狙いの供給時間を標準の供給時間FT0、一回あたりの調整時間をΔFTとして、供給時間FT0で運転を開始し、第1の実施形態の場合、ドグ9の停止位置が下限センサ10および上限センサ11間の範囲を外れたら、その都度次の供給時間をΔFTずつ調整するようにする。第2の実施形態では設定時間Tを外れた場合、第3の実施形態では位置検出用変位計18に設定される上限および下限位置を外れた場合に、上記と同様の調整を行うようにする。なお、ドグ9の停止位置が、ブリケットbの長さが下限を超えて前側(第1の実施形態では、下限センサ10より前)となり、再度濃縮スラッジmを追加供給する場合は、その時点での供給時間FT´に対し、再供給時間をαFT´(係数0<α≦1)としても良い。また、供給時間には、最大時間FTmax および最小時間FTmin を設定し、この範囲を外れたら、例えば供給に異常が生じたと判断し、機械を停止するよう構成しても良い。
【0032】
また、上記各実施形態において、成形されたブリケットbの長さが短時間でばら付いている時、毎回の長さの判定で次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量を自動調整すると、過剰な調整となり、却って長さが不安定となることがある。そこで、前記供給制御手段16は、濃縮スラッジmの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサ15で検出される加圧圧力が閾値Psに達した時の前記位置検出センサ10,11(17,18)による加圧パンチ5の位置検出結果に応じて、次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量を設定規則16aに従って調整させる際に、濃縮スラッジmの供給量の増加側もしくは減少側の同じ側に外れることが連続してn回(n:任意の自然数)、もしくは、連続m回(m:任意の自然数)のうちk回(k:m以下の任意の自然数)発生した場合には、次のサイクルでの濃縮スラッジmの供給量を前記スクリューフィーダ2に調整させるものとすることができる。このような調整制御を行うようにすれば、過剰な調整とならず、ブリケットbの長さが不安定となることを抑えることができる。
【0033】
なお、研削ラインで発生する研削スラッジに含有するクーラントとしては、水溶性クーラントおよび油性クーラントがあるが、この発明の固形化物製造装置および製造方法は、いずれのクーラントを含有する研削スラッジの固形化にも適用される。また、転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品、その他の軸受用鋼材の研削スラッジをブリケットに固形化する場合に好ましく採用される。さらに、位置検出センサとしては、例示のものに限定されず、例えばリミットスイッチやフィラー型光電センサであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る固形化物製造装置の研削スラッジを供給する過程を示す構成説明図である。
【図2】同固形化物製造装置における研削スラッジの圧搾過程を示す構成説明図である。
【図3】同固形化物製造装置において成形されたブリケットを排出する過程でのシリンダに対する加圧パンチおよび受圧パンチ動作状態を示す図である。
【図4】(A)(B)は、加圧パンチによる成形動作を示す図であり、(A)は成形されたブリケットが短い場合を、(B)は長い場合を示している。
【図5】圧搾時の加圧圧力検出センサの出力の例示すグラフである。
【図6】第2の実施形態に係る固形化物製造装置における研削スラッジの圧搾過程を示す構成説明図である。
【図7】同固形化物製造装置における成形動作の開始後の動作のタイムチャートである。
【図8】第3の実施形態に係る固形化物製造装置における研削スラッジの圧搾過程を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1…ホッパー(スラッジ供給手段)
2…スクリューフィーダ
2a…モータ(駆動源)
4…シリンダ
4a…圧搾室
5…加圧パンチ
10…下限センサ(位置検出センサ)
11…上限センサ(位置検出センサ)
15…加圧圧力検出センサ
16…供給制御手段
16a…設定規則
17…基準位置検出センサ(位置検出センサ)
18…位置検出用変位計(位置検出センサ)
m…濃縮スラッジ(研削スラッジ)
Ps…閾値(所定の圧力)
T…設定時間
A…固形化物製造装置
B…固形化物製造装置
C…固形化物製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾室内で加圧パンチの進入による圧搾によって固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、
加圧圧力を検出する加圧圧力検出センサと、加圧パンチの位置を検出する位置検出センサと、研削スラッジの供給量を調整可能なスラッジ供給手段とを備え、
研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を前記位置検出センサで検出し、検出結果に応じて、前記スラッジ供給手段に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整させる供給制御手段を設けたことを特徴とする研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの上限および下限位置をそれぞれ検出する上限センサおよび下限センサを備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの上・下限位置を前記上限センサおよび下限センサで検出し、上・下限位置を外れている場合に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項3】
請求項1において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの基準位置を検出するセンサを備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記位置検出サンサが検出してから、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時までの時間が、設定上限時間または設定下限時間を外れていた場合に、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項4】
請求項1において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの基準位置を検出するセンサを備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記位置検出センサが検出してから、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達する時までの時間を計測し、その計測結果に基づいて次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項5】
請求項1において、前記位置検出センサとして、加圧パンチの位置を検出する位置検出用変位計を備え、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を計測し、その計測結果に基づいて次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時において、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時に、加圧パンチが下限位置を外れていた場合に、加圧パンチの駆動源に対して加圧パンチを一旦後退させ、前記スラッジ供給手段に再度研削スラッジを追加供給させ、前記加圧パンチ駆動手段に再度の成形のための加圧パンチの進入動作を行わせる研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記供給制御手段は、研削スラッジの圧搾時において、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時に、加圧パンチが上・下限位置を上限もしくは下限の同じ側に外れることが連続してn回(n:任意の自然数)、もしくは、連続m回(m:任意の自然数)のうちk回(k:m以下の任意の自然数)発生した場合には、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を前記スラッジ供給手段に調整させるものとした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項8】
研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾室内で加圧パンチの進入による圧搾によって固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造方法であって、
加圧圧力を検出する加圧圧力検出センサと、加圧パンチの位置を検出する位置検出センサと、研削スラッジの供給量を調整可能なスラッジ供給手段とを備え、
研削スラッジの圧搾時に、前記加圧圧力検出センサで検出される加圧圧力が所定の圧力に達した時の加圧パンチの位置を前記位置検出センサで検出し、検出結果に応じて、次のサイクルでの研削スラッジの供給量を設定規則に従って調整することを特徴とする研削スラッジの固形化物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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