説明

研磨材

【課題】研磨処理時に粉砕しにくく、粉の発生が少なく、かつ樹脂同士のブロッキングが生じにくく、長期間安定して研磨処理を行うことができ、さらには使用後の廃棄にも問題が少ない研磨材を提供する。
【解決手段】ポリグリセリン酢酸エステルを3〜30質量%含有している熱可塑性ポリマーからなり、かつ柱状の形状を有しており、長さ方向に対して垂直に切断した断面の長径が10〜3000μm、長さが0.1〜3mmであることを特徴とする研磨材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速流体中に分散させて、成型物の成型工程で生じたバリの除去および表面研磨に用いる研磨材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型のキャビティの内部に樹脂を充填して成型する射出成型やトランスファ成型でできる樹脂成型物、あるいは溶融金属を型に流し込んで成型される鋳物には不要なバリが付着するので、これを取り除くためのいわゆるバリ取りが行なわれる。このバリ取り方法としてはガラスビーズを始め、各種の無機物粒子、プラスチックビーズなどの研磨材(投射材)を流体中に分散させ、バリ取りすべき成型物に高圧噴射する方法がある。この流体としては、通常、水や空気が用いられる。
【0003】
研磨材として無機物粒子を用いる場合、あまりに硬度が高いものであると成型物の表面がきずつく場合がある。また、無機物粒子の場合、脆いものが多いので、研磨作業中に粉砕され、粉砕された粉が成型物の表面に付着するため、これを洗浄する手間が必要となる場合も生じる。
【0004】
研磨材としてポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステルなどの汎用のプラスチックビーズを用いると、無機物粒子より研磨材の粉砕を多少軽減することができる。しかしながら、プラスチックビーズは循環使用される際、やはり次第に摩耗され、定期的に新しいものに入れ換える必要がある。そして、使用後のプラスチックビーズは産業廃棄物として処理する必要があり、廃棄が問題になるものであった。
【0005】
また、研磨材を圧縮空気とともに噴射する場合、研磨対象物に吹き付けた後、それをパイプを通してポンプ部に戻し、再度研磨対象物に吹き付けるという閉鎖系で研磨処理されるが、従来のプラスチックビーズを用いた場合、摩擦によって帯電し、パイプ内壁など、研磨処理装置各所にプラスチックビーズが付着して、研磨できなくなることがある。これは、通常の汎用ポリマーの多くが非常に高い電気抵抗値を有するためである。
【0006】
そこで、引用文献1には、廃棄の問題のない研磨材として、ドライアイスなどの気体を固化した材料が提案されている。しかしながら、このような研磨材は、一般的にどこでも使える材料であるとは言いがたい。また、ドライアイスなどの気体を固化した材料はごく短時間で気体に昇華するため、研磨材自体の大きさが常に大きく変化するという問題もあった。
【0007】
また、一方、近年では脂肪族ポリエステル等、様々なプラスチックや繊維の研究・開発が活発化しており、その中でも微生物により分解されるプラスチック、すなわち、生分解性プラスチックに注目が集まっている。
【0008】
生分解性プラスチックとして、ポリ乳酸がよく知られているが、ポリ乳酸を研磨材として用いた場合、ポリ乳酸の電気抵抗はポリエステルやナイロンなどの汎用ポリマーに比して2〜3桁小さい値となるため、帯電しにくく、研磨材が内壁に付着しにくくなり、長時間に亘って研磨処理をすることが可能となる。
【0009】
特許文献2にはポリ乳酸を用いた研磨材が提案されており、柔軟性成分として脂肪族ジカルボン酸や長鎖の脂肪族ジオール成分からなるポリエステルを共重合することで柔軟性を向上させたものが記載されている。しかしながらこの研磨材は十分に柔らかくなく、やはり研磨作業中に粉砕され、粉砕された粉が成型物の表面に付着するという問題があった。さらには、樹脂同士がブロッキングしやすいものであったため、研磨処理装置のホッパー内で固まってしまい、使用が困難になるという問題もあった。
【特許文献1】特開平11−330345号公報
【特許文献2】特開2002−129145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、研磨処理時に粉砕しにくく、粉砕による粉の発生が少なく、かつ樹脂同士のブロッキングが生じにくく、長期間安定して研磨処理を行うことができ、さらには使用後の廃棄にも問題が少ない研磨材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、このような課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリグリセリン酢酸エステルを3〜30質量%含有している熱可塑性ポリマーからなり、かつ柱状の形状を有しており、長さ方向に対して垂直に切断した断面の長径が10〜3000μm、長さが0.1〜3mmであることを特徴とする研磨材を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の研磨材は、可塑剤としてポリグリセリン酢酸エステルを含有する熱可塑性ポリマーからなるものであるため、研磨処理時に粉砕が生じにくく、かつ樹脂同士のブロッキングも生じにくいものであり、長期間安定して研磨処理を行うことができる。さらには熱可塑性ポリマーにポリ乳酸を用いることにより、使用後の廃棄にも問題が少なく、地球環境に優しいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の研磨材を構成する熱可塑性ポリマーとしては、生分解性を有するものが好ましく、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリ−α−ヒドロキシ酸、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリ−(β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸)などのポリ−β−ヒドロキシアルカノエート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−ε−カプロラクトンなどのポリ−ω−ヒドロキシアルカノエートなど、酵素分解あるいは加水分解に引き続く酵素分解を受けやすい熱可塑性生分解性ポリマーを用いることが好ましい。
【0014】
中でも熱可塑性ポリマーとして、生分解性や耐熱性等の観点からポリ乳酸を用いることが好ましく、ポリ乳酸を65質量%以上含有しているものが好ましい。
【0015】
本発明におけるポリ乳酸としては、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体等を採用することができる。
【0016】
ポリ乳酸のホモポリマーであるL−乳酸やD−乳酸の融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると、融点はおよそ130℃程度となる。さらに、いずれかの成分の割合を18モル%以上とすると、融点は120℃未満、融解熱は10J/g未満となって、ほぼ完全に非晶性の性質となる。このような非晶性のポリマーとなると、製造工程において繊維が得られ難くなるという問題が生じたり、繊維が得られたとしても、耐熱性、耐摩耗性に劣ったものとなりやすいため、本発明におけるポリ乳酸としては、融点が120℃以上、融解熱が10J/g以上のものを用いることが好ましい。
【0017】
研磨材を構成するポリマーが脆いと、研磨処理時に研磨材が粉砕されたり、削られたり、割れて小さくなり、バリ取りの効果が乏しくなる。これを防ぐために、本発明の研磨材においては、熱可塑性ポリマー中に可塑剤として、可塑化効率が高く、ブリードアウトが起きにくいポリグリセリン酢酸エステルを含有させるものである。
【0018】
熱可塑性ポリマー中のポリグリセリン酢酸エステルの含有量は、最終製品(研磨材)の結晶化度、柔軟性、耐熱性等に影響を及ぼす。そこで、本発明においては、熱可塑性ポリマー中のポリグリセリン酢酸エステルの含有量を3〜30質量%とするものであり、中でも10〜25質量%とすることが好ましい。
【0019】
熱可塑性ポリマー中のポリグリセリン酢酸エステルの含有量が3質量%未満であると、柔軟性を付与することができず、一方、30質量%を超えると、成型後の研磨材からポリグリセリン酢酸エステルがブリードアウトしたり、結晶化度及び耐熱性が低下し、製品として使用が困難となる。
【0020】
ここでポリグリセリンとしては、グリセリンの平均重合度2〜12のものが好ましく、中でも2〜6が好ましく、さらに好ましくは2〜4である。具体的にはジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン等が挙げられ、これらは単独もしくは任意の組み合わせの混合物として使用できる。なお、グリセリンの平均重合度が13を超えると、得られたポリマーの柔軟性が劣るものとなりやすい。
【0021】
ポリグリセリン酢酸エステルの製法は特に限定されないが、例えば無水酢酸を用いる方法、酢酸を用いるエステル化反応等が挙げられる。ポリグリセリンの水酸基に対する酢酸のエステル化の度合い(以下「アセチル化率」と略す。)は50%以上が好ましく、より好ましくは75〜100%である。アセチル化率が50%未満であれば、可塑剤としての効果が弱まり、ポリマーが可塑化されず、やはり柔軟性に劣るものとなりやすい。
【0022】
さらに本発明においては、熱可塑性ポリマーがポリ乳酸とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを含有しているものであることが好ましい。これにより、さらにポリマーの柔軟性を向上させることができ、樹脂同士のブロッキングも防ぐことができる。
【0023】
ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルとしては、以下に挙げる脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸からなるポリエステルを用いることが好ましい。
【0024】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−クロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
【0025】
中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコ−ル及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等が好ましく、さらにはエチレングリコール及び1,4−ブタンジオ−ルが特に好ましい。
【0026】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びスベリン酸等、またこれら無水物が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。このうち、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸及びコハク酸が好ましい。
【0027】
このようなポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリエチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートおよびこれらを主たる繰り返し単位として含むポリアルキレンアルカノエート共重合体などが挙げられる。
【0028】
熱可塑性ポリマー中のポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルの含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、中でも1〜12質量%であることが好ましく、さらには1〜5質量%であることが好ましい。
【0029】
つまり、本発明の研磨材は、熱可塑性ポリマーを溶融紡糸してフィラメントを得た後、次にこれを数十万〜数百万dtexに引き揃えてこれをカットして製造することが好ましいものであるが、熱可塑性ポリマー中のポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルの含有量が20質量%を超えると、溶融紡糸した際にフィラメントの径にばらつきが生じ、その結果、得られる研磨材は径が不均一なものとなりやすい。一方、熱可塑性ポリマー中のポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルの含有量が1質量%未満であると、ポリマーの柔軟性の向上効果や樹脂同士のブロッキングを防ぐ効果が不十分となる。
【0030】
また、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、他に共重合成分を含有していてもよい。このような共重合成分の具体的な例としては、生分解性能を向上させるために、グリコール酸や乳酸などのオキシカルボン酸及びカプロラクトンなどのラクトン類が、また、分岐構造を形成するためには、グリセリンのような多価アルコール成分、エポキシ化合物、分岐構造を有する末端ヒドロキシポリエーテル、3官能以上のヒドロキシ化合物、3官能以上のオキシカルボン酸、及び、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸のような3官能以上の酸無水物やカルボン酸が挙げられる。
【0031】
また、ジイソシアネート、ジフェニルカーボネート及びジオキサゾリンなどの鎖延長剤も挙げられる。更に、溶融テンションを高めるためにパーオキサイドを、親水性を高めるために、スルホン基、リン酸基、アミノ基、硝酸基などの親水性基を有する化合物、具体的には4−スルホン化−2,6−イソフタル酸等を使用することができる。これら共重合成分としては、25モル%未満、好ましくは20モル%未満、更に好ましくは10モル%未満、特に好ましくは5モル%未満の範囲で使用することが好ましい。
【0032】
熱可塑性ポリマー中にポリグリセリン酢酸エステルを含有させる方法としては、特に限定されるものではないが、ポリマーの重合段階で添加する方法や、ポリグリセリン酢酸エステルを予め高濃度に添加したポリマー(マスターチップ)を作製しておき、ポリグリセリン酢酸エステルを含有しないポリマー中にマスターチップを添加して溶融混練する方法がある。
【0033】
また、熱可塑性ポリマーとしてポリ乳酸とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを用いる場合には、ポリグリセリン酢酸エステル、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステルの三者を同時に溶融混練する方法や、いずれかのポリマーに予めポリグリセリン酢酸エステルを高濃度に含有させたマスターチップを作製しておき、溶融紡糸前にマスターチップとともに両方のポリマーを混合して溶融混練する方法がある。
【0034】
そして、本発明の研磨材は、柱状の形状を有しており、長さ方向に対して垂直に切断した断面の長径が10〜3000μm、長さが0.1〜3mmである。柱状の形状であると、球状のものにはない角があることから、効果的にバリ取り研磨を行なうことができる。
【0035】
その断面形状としては、円形の他に楕円、偏平、三角以上の多角形などの異型断面が挙げられる。本発明でいう断面の長径とは、断面が円の場合は直径、偏平、楕円の場合は長径、三角以上の多角形の場合は、外接円の直径をいうものである。
【0036】
断面の長径は、中でも100〜1000μmがより好ましい。研磨対象物が小さい場合はバリも小さいので小さいサイズの研磨材を使用する。研磨材の長径が10μmに満たない場合、サイズが小さすぎてバリ取りの効果が乏しくなる。また、研磨材の長径が3000μmを超える場合、単位容量当たりの研磨材の個数が少なく、小さなバリが取れにくくなる。
【0037】
本発明の研磨材において、断面の長径が小さなものは、長さを短くし、一方、断面の長径が大きなものは、長さを長くすることが好ましい。研磨材の長さが0.1mm未満であると、このような長さにカットすることが困難となる、一方、研磨材の長さが3mmを超える場合、研磨処理において研磨材同士の絡み合いが生じ、好ましくない。
【0038】
なお、研磨材の長さと長径との寸法比、いわゆるアスペクト比〔(長さ)/(長径)〕は、長径が100μm未満のときはアスペクト比を1〜50、長径が100μm以上のときはアスペクト比を0.5〜3とすることが好ましい。
【0039】
さらに、本発明の研磨材は、ヤング率が15cN/dtex以下の柱状物を切断して得られたものであることが好ましい。つまり、本発明の研磨材の可撓性を示す目安として、ヤング率を測定したいところであるが、以下の方法でヤング率を測定するには、研磨材では長さが足りないため、カットして研磨材とする前の柱状物のヤング率を測定するものである。
【0040】
カットして研磨材とする前の柱状物のヤング率は15cN/dtex以下であることが好ましく。中でも10cN/dtex以下、さらには3cN/dtex以下であることが好ましい。柱状物のヤング率が15cN/dtex以下であることで、研磨材の耐久性が向上し、好ましい。
【0041】
ヤング率は、島津製作所製のオートグラフAGS−500Aを用い、試料長250mm、引っ張り速度300mm/minの条件で測定するものである。本発明における柱状物とは、ヤング率の測定ができる形状のものであればよく、フィラメント形状のものが好ましいが、ストランド状に成型された成型体であってもよい。
【0042】
また、熱可塑性ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、顔料、耐光剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、その他類似の添加剤を添加することができる。
【0043】
次に、本発明の研磨材の製造方法について一例を用いて説明する。熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、冷却固化した後、ローラ間で延伸を行い、モノフィラメントを得る。これを500本引き揃えてギロチンカッターで所望の長さにカットすることにより、柱状の研磨材を得る。なお、研磨材の断面の長径は、ノズル孔径を変更したり、延伸倍率を調整するなどして、モノフィラメントの繊度を変更することにより所望の長さのものとすることができる。
また、本発明の研磨材は、研磨処理する際の流体は大気圧以上に加圧して用いられるが、概ね数気圧〜数十気圧(数百キロパスカル〜数メガパスカル)の範囲に加圧するのが好ましい。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例における各種物性値の測定と評価は以下のとおりに行った。
(1)相対粘度:フェノールと四塩化エタンの混合物(質量比:1/1)を溶媒とし、試料濃度0.5g/dl、温度20℃で測定した。
(2)融点:パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−2型を使用し、昇温速度20℃/分の条件で測定した。
(3)ポリ乳酸のL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比):超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichir AL 0A 6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(4)ヤング率:カットする前のモノフィラメントを用い、島津製作所製のオートグラフAGS−500Aを用い、試料長250mm、引っ張り速度300mm/minの条件で測定を行った。
(5)研磨効果(バリの残存、白粉の有無):得られた研磨材をICリードフレームのパッケージのバリ取りに使用してその研磨効果を以下のように評価した。なお、バリ取りとしてブラスト研磨を行い、研磨対象(ICリードフレームのパッケージ幅20mm 長さ140mm)に対して、100cmの距離から8mmの直径を有する円形ノズルを用いて噴射圧力0.4MPaのエアーとともに研磨材を17g/秒の割合で、投射時間180秒間吹きつけて研磨材の投射を行った。なお、このとき0.5kgの研磨材を交換することなく繰り返し利用した。
(バリの残存):投射後の研磨対象のバリの残存量を目視にて観察し、以下のように4段階で評価した。
×・・・バリがほとんど取れていない
△・・・バリがやや残っている
○・・・バリがほとんど残っていない
◎・・・バリがまったく残っていない
(白粉の有無):投射後の研磨材について、割れによって生じる粉の有無を目視にて観察し、以下のように4段階で評価した。
×・・・白粉が多く付着している
△・・・やや白粉が見られる
○・・・ほとんど白粉が見られない
◎・・・白粉はまったく見られない
(6)粒径ムラ:得られた研磨材(測定数:200個)の断面の長径を測定し、その平均値を算出し、以下のように3段階で評価した。
×・・・得られた研磨材の長径(平均値)が設定値に対して±30%以上
△・・・得られた研磨材の長径(平均値)が設定値に対して±15%〜±30%未満
○・・・得られた研磨材の長径(平均値)が設定値に対して±5%〜±15%未満
◎・・・得られた研磨材の長径(平均値)が設定値に対して±5%未満
【0045】
実施例1
熱可塑性ポリマーとして、L体とD体の比率(L/D比)が98.5/1.5であるポリ乳酸(PLA)(融点170℃、相対粘度1.85)を用い、可塑剤としてジグリセロールテトラアセテート(理研ビタミン社製、PL−710、平均重合度2)を加えてマスターチップを作製した。このマスターチップとPLAをエクストルーダー型溶融押出機に供給し、溶融混練して紡糸温度225℃で溶融紡糸した。このとき、熱可塑性ポリマー(PLA)中のジグリセロールテトラアセテートの含有量は20質量%であった。
紡出したモノフィラメントを冷却、固化した後、延伸速度40m/分で延伸して、直径700μm(設定値)、強度0.8cN/dtex、伸度109%、ヤング率20.4cN/dtex のモノフィラメントを得た。
さらにこれを500本引き揃えてギロチンカッターで長さ0.7mmにカットすることにより、円柱状の研磨材を得た。
【0046】
実施例2〜3、比較例1〜2
PLA中のジグリセロールテトラアセテートの含有量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で研磨材を得た。
【0047】
実施例4〜5
紡糸時に細繊度用の紡糸ノズルを用い、カット長を変更することにより、研磨材の長径、長さを表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様の方法で研磨材を得た。
【0048】
実施例6〜7、比較例3〜5
紡糸時に太繊度用の紡糸ノズルを用い、カット長を変更することにより、研磨材の長径、長さを表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様の方法で研磨材を得た。
【0049】
実施例8
実施例1で使用したPLAとポリブチレンサクシネート(PBS)(三菱化学社製、GSpla AZ81T)を熱可塑性ポリマーとして用いた。まず、PLAに実施例1で用いたジグリセロールテトラアセテートを予め高濃度に添加させたマスターチップと、PLA、PBSをエクストルーダー型溶融押出機に供給し、溶融混練して、紡糸温度225℃で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。このとき、熱可塑性ポリマー中のPLAの含有量は78質量%、PBSの含有量は2質量%、ジグリセロールテトラアセテートの含有量は20質量%であった。また、得られたモノフィラメントは、直径700μm(設定値)、強度0.8cN/dtex、伸度109%、ヤング率3.4cN/dtex であった。これを500本引き揃えてギロチンカッターで長さ0.7mmにカットすることにより、円柱状の研磨材を得た。
【0050】
実施例9〜13
熱可塑性ポリマー中のジグリセロールテトラアセテートの含有量とPBSの含有量とを表1に示す値に変更した以外は、実施例8と同様の方法で研磨材を得た。
【0051】
実施例14〜15
ジグリセロールテトラアセテートに変えて、アセチル化率85%のヘキサグリセロール酢酸エステル(平均重合度6)を用い、熱可塑性ポリマー中の含有量を表1に示す値にした以外は、実施例9と同様の方法で研磨材を得た。
【0052】
実施例16
ジグリセロールテトラアセテートに変えて、アセチル化率85%のデカグリセロール酢酸エステル、(平均重合度10)を用い、熱可塑性ポリマー中の含有量を表1に示す値にした以外は、実施例9と同様の方法で研磨材を得た。
【0053】
実施例17
ジグリセロールテトラアセテートに変えて、アセチル化率85%のヘキサデカグリセロール酢酸エステル、(平均重合度16)を用い、熱可塑性ポリマー中の含有量を表1に示す値にした以外は、実施例9と同様の方法で研磨材を得た。
【0054】
実施例18〜21
PBSに変えて、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)(三菱化学社製、AD82W)を用い、その熱可塑性ポリマー中の含有量及びジグリセロールテトラアセテートの熱可塑性ポリマー中の含有量を表1に示す値に変更した以外は、実施例8と同様の方法で研磨材を得た。
【0055】
実施例22
L体とD体の比率(L/D比)が98.5/1.5であるポリ乳酸(PLLA)(融点170℃、相対粘度1.85)80重量部と、L/D比が88/12であるポリ乳酸(PDLLA)(融点無し、相対粘度2.85)20重量部の混合物とポリブチレンサクシネート(PBS)(三菱化学社製、GSpla AZ81T)を熱可塑性ポリマーとして用いた。まず、PLLAとPDLLAとの混合物に可塑剤として実施例1で用いたジグリセロールテトラアセテートを予め高濃度に添加させたマスターチップを作製し、マスターチップ、PLLAとPDLLAとの混合物、PBSをエクストルーダー型溶融押出機に供給し、溶融混練して、紡糸温度225℃で溶融紡糸した以外は、実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。このとき、熱可塑性ポリマー中のPLLAとPDLLAとの混合物の含有量は75質量%、PBSの含有量は5質量%、ジグリセロールテトラアセテートの含有量は20質量%であった
得られたモノフィラメントは、直径700μm(設定値)、強度0.8cN/dtex、伸度109%、ヤング率1.8cN/dtexであった。これを500本引き揃えてギロチンカッターで長さ0.7mmにカットすることにより、円柱状の研磨材を得た。
【0056】
実施例23〜24
PLLAとPDLLAとの混合物における2種類のポリ乳酸(PLLAとPDLLA)の混合比を表2に示す値に変更した以外は、実施例22と同様の方法で研磨材を得た。
【0057】
実施例1〜24、比較例1〜5で得られた研磨材の特性値と評価結果を表1、2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表1、2から明らかなように、実施例1〜24の研磨材は、研磨効果に優れており、白粉の発生が少なく、さらには粒径ムラもほとんどなく、バリ取り効果に優れるものであった。
一方、比較例1の研磨材はポリグリセリン酢酸エステルを含有しないものであるため、柔軟性に乏しいものであり、研磨効果はあるものの、耐久性がなく、白粉が多量に発生、付着していた。比較例2の研磨材は、ジグリセロールテトラアセテートの含有量が多すぎるものであったため、研磨材からブリードアウトしてくるものであり、研磨効果に劣るものであった。比較例3の研磨材は、断面の長径が大きすぎるものであったため、比較例4の研磨材は長さが長すぎるものであったため、比較例5の研磨材は断面の長径、長さともに大きすぎるものであったため、いずれも研磨効果に劣るものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン酢酸エステルを3〜30質量%含有している熱可塑性ポリマーからなり、かつ柱状の形状を有しており、長さ方向に対して垂直に切断した断面の長径が10〜3000μm、長さが0.1〜3mmであることを特徴とする研磨材。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーは、ポリ乳酸を含有しているものである請求項1記載の研磨材。
【請求項3】
熱可塑性ポリマーは、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを含有しているものである請求項1又は2記載の研磨材。
【請求項4】
ヤング率が15cN/dtex以下の柱状物を切断して得られたものである請求項1〜3いずれかに記載の研磨材。


【公開番号】特開2009−160717(P2009−160717A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3192(P2008−3192)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)