説明

破封防止剤

【課題】排水トラップの封水部の蒸発による破封を効果的に防止することのできる破封防止剤を提供する。
【解決手段】排水トラップ11における封水部13に使用する破封防止剤であって、1)比重:1.04以上で、水と混和可能な液状(20℃)の第一水溶性成分、2)飽和溶解度:30g/水100g(20℃)以上で、固状(20℃)の第二水溶性成分、3)比重:0.73〜0.95、蒸気圧(20℃):0.15kPa以下で、動粘性率:16.0×10-6m2/s以上の水不溶性成分、4)界面活性剤の、以上4つを必須成分とし、剤全体の比重が1.01以上になるように調整する。封水部13に破封防止剤Pを投入すると、破封防止剤Pは一旦沈降後、水不溶性成分が浮上して、封水部13の両水面13a、13bに均一な蒸発保護皮膜17を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口に取り付けられている排水トラップの封水の蒸発による破封を防止させるために使用する破封防止剤に関し、さらに詳しくは、排水トラップの封水部の両水面に均一な蒸発保護皮膜を形成させる破封防止剤に関する。
【0002】
ここで、「破封」とは、排水トラップの封水が減少して、封水の作用を奏し難くなることをいう。通常、排水設備の排水経路の途中には、下水道の悪臭やガスが屋内に侵入するのを防ぐ目的で、更には、害虫や小動物の進入を防ぐ目的で、水を常時保持可能な構造(封水)とした排水トラップを備えている。
【0003】
ここでは、排水トラップとして、図1に示すようなSトラップを例に採り説明するが、本発明の破封防止剤(封水保護剤)は、Pトラップ、Uトラップ、ベルトラップ(椀トラップ)等の他の排水トラップにも適用できる。
【背景技術】
【0004】
従来から、排水トラップの封水の蒸発を防止する目的で、油脂や、炭化水素(流動パラフィン)、シリコーンオイルなどの非水系油状物で封水水面に蒸発保護皮膜を形成させる方法が知られ、実用化されている。
【0005】
特に、賃貸住宅や分譲住宅が空き状態で長期間水を使用しない等の理由により、封水の蒸発による破封が生じ、封水の作用が無くなり、下水道の悪臭やガスが屋内に侵入したり、更には、害虫や小動物が進入したりする。それらを防止するために、破封が発生する前に、定期的に、水を流して封水を形成する必要がある。しかし、これらの封水管理は、面倒であるとともに、水の無駄遣いにつながる。
【0006】
このため、特許文献1では、比重が水よりも小さく、蒸気圧が水よりも低い油系成分を、所定量の水と混合して、得られたエマルション(破封防止剤:封水蒸発防止剤組成物)を排水口へ流し入れることによって、封水部の封水の蒸発を効果的に防止する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4390831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献に記載の破封防止剤(封水蒸発防止剤組成物)では、下記のような問題点があることが分かった。
【0009】
即ち、Sトラップ型などの排水トラップ11の封水部13には2つの水面13a、13bがある(図1参照)。このため、破封防止剤を排水口の一方から流し入れる方法では、水/油エマルションが封水部13で均一に行き渡らず、両水面13a、13bに、特に、投入口側とは反対の水面13bに蒸発保護皮膜を形成させることは困難であると考えられる。そのため、蒸発保護皮膜が形成されていない水面13bから封水が蒸発して破封する場合がある。図例中15は、水抜きプラグである。
【0010】
封水部13の両水面13a、13bに均一な蒸発保護皮膜を形成させるためには、封水部13を、一旦、均一な水/油エマルションとする必要がある。しかしながら排水トラップ11内で、破封防止剤を添加した封水部13において攪拌混合させることは実質的に不可能である。また、破封防止剤は、水成分を含むことにより、油水分離が生じるため、攪拌後の破封防止剤(水/油エマルション)を、速やかに投入することを強いられていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは、破封防止剤を一時的に封水部の底に沈ませた後に、水不溶性成分を分離浮遊させれば、上記課題を解決できるのではないかと着想して、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の破封防止剤に想到した。
【0012】
水を必須成分としない破封防止剤であって、
1)比重:1.04以上で、水と混和可能な液状(20℃)の第一水溶性成分、
2)飽和溶解度:30g/水100g(20℃)以上で、固状(20℃)の第二水溶性成分、
3)比重:0.73〜0.95、蒸気圧(20℃):0.15kPa以下で、動粘性率:16.0×10−6/s以上の水不溶性成分、及び、
4)界面活性剤を、必須成分として、
剤全体の比重が1.01以上になるように調整されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により得られた破封防止剤Pは、排水トラップ11に形成された封水部13に投入した場合、一時的に、封水部13の底部に沈降し(図2(A))、所定時間経過後、水不溶性成分が浮上分離して、封水部の2つの水面13a、13bに均一且つ安定な蒸発保護皮膜17を形成させることができる(図2(B))。すなわち、排水トラップの封水部の両水面の蒸発による破封を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の破封防止剤を適用するS字形の排水トラップの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の破封防止剤を排水トラップに適用した場合の作用説明図であり、(A)は投入直後の、(B)は蒸発保護皮膜形成後の各概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
以下の説明で、組成比(率)を示す「%」および「部」は、特に断らない限り質量単位である。また、各成分の特性を示す「液状」、「固状」、「溶解度」および「蒸気圧」は、特に表示しない限り何れも20℃基準である。
【0017】
本発明は、水を必須成分としない破封防止剤であって、前記の通り、(1)第一水溶性成分、(2)第二水溶性成分、(3)水不溶性成分、及び、(4)界面活性剤とを必須成分とし、剤全体の見掛け比重が1.01(望ましくは、1.02)以上になるように調整されてなるものである。見掛け比重が小さいと、本発明の作用(破封防止剤の一時沈降)を得難い。上限は、剤全体が沈降後、水不溶性成分が分離浮上して蒸発保護皮膜形成可能であれば、特に限定されない。剤調製(各剤成分の選定の容易さ、混合安定性)の見地から、通常、1.20(望ましくは1.10)以下となるものとする。
【0018】
(1)第一水溶性成分:
比重:1.04以上で、水と混和可能な液状のものである。第一水溶性成分の比重が1.04未満の場合は、剤全体の比重を1.01以上に調整し難くなる。また、水不溶性成分を用いると封水部で三層分離が生じる等して、本発明の効果に問題が発生し易くなる。
【0019】
好適には、多価アルコール類から1種又は2種以上選択して使用可能である。具体的には、下記例示の炭素数2〜6の化合物およびそれらの会合体を使用することが好ましい。化合物名の後に、適宜、炭素数(C)及び比重を示す。
【0020】
プロピレングリコール(PG)・・・C3、1.04
グリセリン・・・C3,1.26
ジグリセリン・・・グリセリン二量体、1.28
ポリグリセリン・・・グリセリン会合体、1.26
エチレングリコール(EG)・・・C2、1.12
ジエチレングリコール・・・C4、1.12
トリエチレングリコール・・・C6、1.12
ポリエチレングリコール(PEG:分子量200〜600)・・・エチレングリコール会合体、1.13
【0021】
第一水溶性成分の配合率は、10〜98%、望ましくは20〜80%の範囲から選定する。当該配合率が少ないと、剤全体の比重を1.01以上に調整し難くなる。他方、同配合率が高いと、水不溶性成分の相対比率が低下して、蒸発保護皮膜を形成するのに必要な投入量が多くなり、コスト的に望ましくない。
【0022】
(2)第二水溶性成分:
飽和溶解度30g/水100g(20℃)以上で、固状(20℃)のものである。第二水溶性成分は、その飽和溶解度が低いと、第一水溶性成分(水と自由混和する。)との相溶性(混和性)が充分でなくなり、全体の比重を1.01以上に調整し難くなるとともに、使用雰囲気温度の変化に伴い、第二水溶性成分が析出し易くなり望ましくない。
【0023】
例えば、単糖類、二糖類、固状の糖アルコール、尿素およびヒドロキシ多価カルボン酸(望ましくは、炭素数4〜6)からなる有機化合物群、並びに、アルカリ・アルカリ土類・アンモニウム塩、炭酸塩及び水酸化アルカリからなる無機化合物群から1又は2以上を選択して使用できる。
【0024】
下記にそれぞれの群の具体例を、溶解度とともに示す。
【0025】
1)有機化合物群
・単糖類:ブドウ糖(グルコース無水)・・・47g/水100g、
ブドウ糖(グルコース一水和物)・・・100g/水100g、
果糖(フルクトース)・・・79g/水100g、
・二糖類:ショ糖(スクロース)・・・211.5g/水100g、
麦芽糖(マルトース一水和物)・・・108g/水100g、
・ヒドロキシ酸類:クエン酸無水・・・145g/水100g、
クエン酸一水和物・・・207g/水100g、
リンゴ酸・・・125g/水100g、
・その他:ソルビトール(固状糖アルコール)・・・220g/水100g、
尿素・・・59g/水100g、
【0026】
2)無機化合物群
・アルカリ・アルカリ土類・アンモニウム塩
塩化カリウム・・・74g/水100g、
塩化ナトリウム・・・74g/水100g、
塩化カルシウム・・・74g/水100g、
塩化マグネシウム・・・54g/水100g、
塩化アンモニウム・・・37.2g/水100g、
炭酸カリウム・・・112g/水100g、
・水酸化アルカリ類
水酸化ナトリウム・・・109g/水100g
水酸化カリウム・・・113g/水100g
これらの内で、単糖類、二糖類、尿素の場合は、液性が中性であるとともに、トラップ素材及び人体に対する影響もほとんど無いため、特に望ましい。
【0027】
この第二水溶性成分の配合率は、1〜50%、望ましくは3〜20%の範囲から選定する。
【0028】
そして、第一・第二水溶性成分の合計配合率は、20〜99%、望ましくは30〜90%の範囲から選定する。当該配合率が少ないと、剤全体の比重を1.01以上に調整することが困難となり、配合率が高いと、水不溶性成分の相対的比率が小さくなり、使用に適した蒸発保護皮膜を形成させるための必要使用量を確保し難い。なお、第一・二水溶性成分の合計配合率は、第二水溶性成分の第一水溶性成分に対する相溶性(混和性)により変動する。
【0029】
(3)水不溶性成分:
比重:0.73〜0.95、蒸気圧:0.15kPa以下で、動粘性率:16×10−6/s以上のものである。なお、20℃の水は、蒸気圧:2.33kPa(17.5mmHg)、動粘性率:1.0038×10−6/sである。
【0030】
水不溶性成分の何れの特性が欠けても、蒸発保護皮膜の形成能・維持能が不十分で、蒸発保護皮膜が早期に消滅して、破封防止作用を長期間維持し難くなる。
【0031】
具体的には、流動パラフィン、パラフィン系炭化水素、シリコーンオイル等を挙げることができる。下記にそれぞれの具体例を、比重、蒸気圧及び動粘性率とともに示す。
【0032】
流動パラフィン・・・比重:0.85〜0.94、蒸気圧:0.01Pa以下、動粘性率:16×10−6/s以上
炭化水素(C5〜C15)・・・比重:0.73〜0.90、蒸気圧:0.1Pa以下、動粘性率:16×10−6/s以上
シリコーンオイル・・・比重0.85〜0.98、蒸気圧(25℃):133 Pa 以下、動粘性率:20×10−6/s以上
水不溶性成分の配合率は、1〜80%、望ましくは10〜70%とする。当該配合率が小さいと、蒸発保護皮膜を形成させるための剤必要使用量が増加する。また、当該配合率が大きいと、剤全体比重を封水中に沈降させるのに必要な大きさ(例えば、1.01以上)を確保し難くなる。
【0033】
(4)界面活性剤:
上記水溶性成分(第一・第二の双方)と水不溶性成分の両成分の均一混合状態を所定時間(望ましくは、約5〜10分)以上維持させるものである。
【0034】
非イオン、両性、カチオン、アニオンのいずれの界面活性剤でも使用可能である。これらのうちで、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が、他の種類の界面活性剤に比して剤の均一混合状態を維持し易くて望ましい。
【0035】
非イオンおよび両性の界面活性剤の具体例を下記する。なお、「POE」および「POP」は、「ポリオキシエチレン」および「ポリオキシプロピレン」を意味する。
【0036】
・非イオン界面活性剤・・・POEソルビタン脂肪酸エステル、POE−POP共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル。
【0037】
・両性界面活性剤・・・ベタイン型(例えば、ラウリルジメチルベタイン)、脂肪酸アミドプロピルベタイン型(例えば、ラウリン酸アミノプロピルベタイン)、カルボキシメチルアミン型(例えば、ラウリルアミノジ酢酸塩)。
【0038】
上記の各界面活性剤の内で、特に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやカルボキシメチルアミン型が、剤の均一状態をより維持し易くて好ましい。
【0039】
これら界面活性剤の配合率は、水溶性成分および水不溶性成分の組合わせ及び合計配合率により、異なる。即ち、水溶性成分および水不溶性成分の合計量100部に対して、0.1〜2部、望ましくは0.3〜1.0部とする。
【0040】
破封防止剤の使用に際して、界面活性剤の配合率が少ないと、剤の均一混合状態が維持し難くなる(水不溶成分の水溶性成分からの分離が早くなる)。逆に、界面活性剤の配合率が多くなると、均一混合状態の解除(水不溶成分の水溶性成分からの分離)が困難となり、蒸発保護皮膜が形成し難くなる。
【0041】
また、上記必須成分に加えて、イソプロピルアルコール(IPA)、エチルアルコール等の低級アルコールを分散補助剤として添加することも可能である。
【0042】
低級アルコールの配合率は、水溶性成分と水不溶性成分の合計量100部に対して、0.2〜10部、望ましくは0.3〜6部とする。
【0043】
更に、必要に応じて、本発明の目的を妨げない範囲で、殺菌剤(防腐剤)、色素、香料などを含有することができる。
【0044】
特に、長期間水を流さないことを想定するため、殺菌剤を配合させることが望ましく、具体的には、殺菌剤としては、トリクロサン、パラオキシ安息香酸エステル、グルタルアルデヒド等を挙げることができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(1)破封防止剤の調製
各実施例・比較例の破封防止剤は、下記の如く調製し、参照例は下記のものを使用した。それらの組成を纏めたものを、表1に参考として示す。なお、実施例における加温は、45〜65℃の範囲で行った。
【0047】
【表1】

【0048】
<実施例1>
グリセリン50%、尿素10%、水5%、カルボキシメチルアミン型両性界面活性剤0.55%、イソプロピルアルコール(IPA)0.65%、流動パラフィン33.8%を加温・攪拌しながら順次配合して、比重1.07の破封防止剤を得た。
【0049】
<実施例2>
グリセリン35%、エチレングリコール20%、水2%、ショ糖5%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤0.3%、エチルアルコール1%、ドデカン36.7%を加温・攪拌しながら順次配合して、比重1.04の破封防止剤を得た。
【0050】
<実施例3>
グリセリン50%、尿素10%、イソプロピルアルコール(IPA)5%、カルボキシメチルアミン型両性界面活性剤0.5%、トリクロサン0.3%、流動パラフィン34.2%を加温・攪拌しながら順次配合して、比重1.06の破封防止剤を得た。
【0051】
<比較例1>
水65%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤1.5%、流動パラフィン33.5%を攪拌(加温せず)しながら順次配合して、比重0.89の破封防止剤を得た。
【0052】
<比較例2>
グリセリン50%、尿素10%、水5%、流動パラフィン35%を加温・攪拌しながら順次配合して、比重1.07の破封防止剤を得た。
【0053】
<参照例1>
破封防止剤の代わりに水道水を参照例1とした。
【0054】
<参照例2>
破封防止剤の代わりに流動パラフィン(比重0.86)を参照例2とした。
【0055】
(2)評価試験の方法
破封防止剤の評価試験は、下記各項目についてそれぞれに記載の方法に従って行なった。
【0056】
<蒸発防止効果>
水道水を60g入れた内径50mmのビーカーに、前記各例の破封防止剤を10mL投入し、60℃に設定した恒温装置内で15時間放置した。直後の重量と15時間後の重量を測定することで、蒸発量(重量変化率)により評価した。
【0057】
評価基準は下記の通りとした。
○:重量変化率 0.5%未満
△:重量変化率 0.5%以上2.0%未満
×:重量変化率 2.0%以上
【0058】
<沈降性>
水道水を100g入れたU字状に折り曲げた内径15mmの蛇腹ホースの片方の口から、前記各例の破封防止剤を10mL投入した。投入直後の組成物の状態について目視観察により比較した。
【0059】
評価基準は下記の通りとした。
○:投入した組成物の全てがU字管下層に沈降
△:投入した組成物の一部がU字管下層に沈降
×:沈降を確認できない
【0060】
<蒸発保護皮膜形成能>
水道水を100g入れたU字状に折り曲げた内径15mmの蛇腹ホースの片方の口から、前記各例の破封防止剤を10mL投入した。投入から1時間放置後の蒸発保護皮膜の形成状態について目視観察により比較した。
【0061】
評価基準は下記の通りとした。
○:U字管両方の水面に均等に蒸発保護皮膜を形成
△:U字管両方の水面に蒸発保護皮膜を形成するが、不均一
×:U字管片方の水面のみに蒸発保護皮膜を形成
【0062】
<混合安定性>
100mLのガラス製サンプル管に前記各例の破封防止剤を80mL入れ、良く振り混ぜた。その後1時間室温(20〜25℃)で静置しておいた状態を目視観察により比較した。
【0063】
評価基準は下記の通りとした。
○:均一な状態
△:一部分離がはじまっている状態
×:完全に二層分離している状態
【0064】
(3)評価試験の結果及び考察
各評価試験の結果を、纏めて、表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例1〜3では、水の配合の有無に関わらず、いずれも蒸発防止効果、沈降性、蒸発保護皮膜形成能、混合安定性の項目において満足のいく機能を有していた。
【0067】
比較例1では、組成物の比重が水よりも軽いため沈降性がなく、蒸発保護皮膜形成能の項目において、U字管の片側(組成物を投入した水面)のみに蒸発保護皮膜が形成された。このような状態になると、皮膜形成がされていない側の水面から、水の蒸発が進んで行くため、封水部の破封を防止する上で効果的であるとは言えない。
【0068】
比較例2では、蒸発防止効果の項目では満足のいくものであったが、界面活性剤を配合していないことで、使用時に流動パラフィンの分離が早くなり、組成物全ての沈降が確認できなかった。そのため、U字管の両水面に均等な蒸発保護皮膜を形成することができなかった。このような状態になると、U字管の組成物を投入した反対側の水面全体を蒸発保護皮膜で覆うことができなくなり、隙間から水の蒸発が進んで行くため、封水部の破封を防止する上で効果的であるとは言えない。また投入量を多くすることで、U字管の両方の水面に蒸発保護皮膜を形成させることは可能であるが、経済的負担を考えた場合、投入量は少ない方が好ましい。
【符号の説明】
【0069】
11 排水トラップ
13 封水部
13a、13b 封水部の水面
17 蒸発保護皮膜(蒸発防止皮膜)
P 破封防止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を必須成分としない破封防止剤であって、
1)比重:1.04以上で、水と混和可能な液状(20℃)の第一水溶性成分、
2)飽和溶解度:30g/水100g(20℃)以上で、固状(20℃)の第二水溶性成分、
3)比重:0.73〜0.95、蒸気圧(20℃):0.15kPa以下で、動粘性率:16.0×10−6/s以上の水不溶性成分、及び、
4)界面活性剤を、必須成分として、
剤全体の比重が1.01以上になるように調整されてなることを特徴とする破封防止剤。
【請求項2】
前記第一水溶性成分が、多価アルコール類から1又は2以上選択され、前記第二水溶性成分が、単糖類、二糖類、固状糖アルコール、尿素及びヒドロキシ多価カルボン酸からなる有機化合物群、並びに、アルカリ・アルカリ土類・アンモニウム塩、炭酸塩及び水酸化アルカリからなる無機化合物群から1又は2以上選択されることを特徴とする請求項1記載の破封防止剤。
【請求項3】
前記水不溶性成分が、流動パラフィン、パラフィン系炭化水素およびシリコーンオイルの群から1又は2以上選択されることを特徴とする請求項1又は2記載の破封防止剤。
【請求項4】
前記界面活性剤が、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤の群から1又は2以上選択されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の破封防止剤。
【請求項5】
使用時に破封防止剤を攪拌混合したとき、5〜10分以上、均一状態を維持可能であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一記載の破封防止剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか一記載の破封防止剤による破封防止法であって、前記破封防止剤を攪拌後、封水部が形成された排水トラップの一方から投入して、前記破封防止剤を一時的に沈降させた後、水不溶性成分を浮上させて、封水部の両水面に蒸発保護皮膜を形成することを特徴とする破封防止法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82572(P2012−82572A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226922(P2010−226922)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(592193410)株式会社ヘルスカンパニー (4)
【Fターム(参考)】