説明

破砕機

【課題】破砕機において、供給側から投入される原石ないし、破砕途中にある原石がスムーズに排出側に送り込まれるようにすること。
【解決手段】原石Saの供給口12が設けられた供給側端面11aのドラム11内部側に複数の送り突条1を設け、その送り突条1は、その表面が、そこに前記供給口12から投入された原石Saが衝突した際、それを排出側斜め上方に弾き飛ばすような傾斜方向の傾斜面を有した形状のものにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドミルやボールミルなどの破砕機に係り、詳しくは、その破砕機によって破砕される被破砕物(原石)のドラム内での送り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した破砕機の内、ロッドミルの一従来例として、図4に示すようなものがある。(a)はロッドミル20全体の断面図、(b)は(a)の線IV―IVによる断面図である。図に示すように、このロッドミル20は、両端面が閉じられた円筒の回転ドラム11を備えている。回転ドラム11(以下、単にドラム11ともいう)の図の左側の端面(供給側端面11a)が原石Sa(例えば、岩石、鉱石類)の供給側であり、その供給口12として、供給側端面11aには筒軸を中心とした真円の開口が設けてある。原石Saは、図示しないホッパからシュータ21を経て、この供給口12からドラム11内に投入される。なお、この供給側端面11aのドラム11内部側には、それを補強するための補強板13が装着されている。
【0003】
ドラム11は、筒軸を水平にした状態で、図示しない回転駆動機構によって、その水平軸周りに回転し、そのドラム11の中に原石Saとともに破砕媒体として、図示しない複数のロッド(丸棒の鉄材など)を投入して、そのロッドをドラム11の内面で転動および転落させて原石Saに衝突させることにより、また、原石Saをドラム11内面に配設されたライナLに直接衝突させることにより、その際の剪断、摩擦、圧縮作用によって原石Saを破砕する。なお、ボールミルの場合は、ロッドミルにおける破砕媒体のロッドに代わって、ボール(鉄球)が投入されるが、以下の説明にあたってはロッドミルで代表させる。
【0004】
他方、ドラム11の図の右側端部が排出側であって、そこには、ドラム11周面の、ドラム11の一直径と交差する二箇所において排出口14が設けられている。砕石Sbはその排出口14からドラム11の回転による遠心力によってドラム11外に排出される。
【0005】
この砕石Sbの排出口については、上記のようにドラム11の周面に設けるのではなく、その排出側端面11b(図の右側端面)に供給側の供給口12と同じような、ドラム11の軸を中心とする真円の開口(図に二点鎖線で示し、排出口15とする)を設けた形態のものもある。この場合、その排出口15の直径は、供給口12の直径よりも大きなものとなっている。
【0006】
これは、そのようにすることにより、砕石Sbの排出を促すとともに、そのことによって破砕途中の原石Saが供給側から排出側に向かって下りの傾斜面16をなすように堆積し、供給側の原石Saがその傾斜面16に沿って排出側に誘導されるようにもなるからである。この傾斜面16が形成されるのは、先述したドラム11の周面に排出口14が形成された形態のものにおいても同様である。
【0007】
排出口14(あるいは排出口15)が形成されたドラム11の図の右側端部では、その周面に沿ってドラム11を覆う形で図のようなフードカバー17が取り付けられている。排出口14からドラム11外に飛び出した砕石Sbは、このフードカバー17に衝突し、遠心力による勢いが弱められた状態でフードカバー17内に落下する。
【0008】
フードカバー17の砕石Sbの落下位置には、フードカバー17の外部に開口した排出口18が大きく形成されており、その排出口18の直下にベルトコンベア19が配設されている。フードカバー17外に排出された砕石Sbは、このベルトコンベア19によって、ロッドミル20から完全に離れた砕石Sbの回収位置まで運ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記供給口12から投入された原石Saが破砕作用を受けながら排出側に移動していくのは、上記した供給口12と排出口15の直径の大きさの違い、あるいは、排出口14がドラム11周面に設けられていることに基づいて、原石Saならびに破砕途中にある原石Saが供給側から排出側に向かって下りの傾斜面16を成すように堆積し、その傾斜面16に沿って移動してゆくことによるものであるが、そのことだけでは、原石Saならびに破砕途中にある原石Saの排出側への移動の強さは非常に弱いものである。
【0010】
そこで、湿式の破砕機では、その原石Saならびに破砕途中にある原石Saが形成する傾斜面16に沿う移動に加えて、供給口12から、原石Saとともに強い圧力で水を流し込み、その水圧で原石Saを排出側に移動させるような形を採っている。しかしながら、そのようにすると、破砕機とは別に水流発生装置を付設しなければならず、破砕機を含めたシステム全体が大掛かりなものとなり、設備投資も増大する。また、当然のことながら、乾式の破砕機では、この方法を採ることはできない。
【0011】
そこで、この発明の課題は、供給口から投入された原石が、簡単な装置構成によって、ドラムの排出側に効率良く送り込まれるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の破砕機は、原石の供給口が設けられた回転ドラム端面のドラム内部側に、複数の、スクリュー形状や突条などの「送り突起」が設けられており、各送り突起は、前記供給口から投入された原石がその送り突起に衝突した際、原石を排出側に弾き飛ばすような形状に形成されている構成を採用したのである。
【0013】
このようにしたので、供給口から投入された原石は、その送り突起によって排出口側斜め上方に弾き飛ばされ、排出側に強制的に誘導される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のように構成したので、供給口から供給された原石が上記送り突起によって強制的に排出側に送り込まれるので、破砕効率が向上する、といった効果がある。
【0015】
また、そのための装置構成として、上記送り突起を供給側ドラム端面の内側に設けるだけであるので、上記した湿式の破砕機のように、ドラム本体とは別に水流を発生させる装置を付設して、全体として大掛かりな装置となるようなことがない、という利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、(a)に本実施形態の破砕機10(ロッドミル10)の断面図を示し、(b)に(a)の線I―Iによる断面図を示したものである。本実施形態の破砕機10の基本的な構造は、前記背景技術の項の図4で示した従来例(ロッドミル20)のものと変わりはない。従って、同じ要素については、同じ符号を付してその説明は省略する。本実施形態の破砕機10が従来例のものと異なるのは、その回転ドラム11の供給側端面11aの部分である。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施形態のドラム11の供給側端面11aには、そのドラム内部側において、従来例で設けられていた補強板13に代わって、供給口12から投入された原石Saを排出側に強制的に送り込むための「送り突条1」が設けられていることである。
【0018】
そして、図2は、本実施形態の破砕機10のドラム11の、その送り突条1が設けられた供給側端面11aを抜き出して、その送り突条1が設けられた側を斜めから眺めた斜視図である。この送り突条1が設けられた側がドラム11の内部側に対応する。また、図3は、そのドラム11の供給側端面11aをドラム11の軸に垂直な面に投影した平面図である。原石Saの排出の向きは紙面の背後から手前に向かう向き、ドラム11の回転の向きは、図の時計回りの向きとなっている。
【0019】
図2および図3に示すように、供給側端面11aの中心に設けられた真円の(原石Saの)供給口12の周縁と端面外周との間において、その周方向に沿った四等分の各領域に、送り突条1と、原石Saの通過用の空間とが設けられている。
【0020】
各送り突条1は、図2および、ドラム11の供給側端面11aに投影した平面図の図3に示すように、三つの区画(面)に分けられている。それぞれの面に2、3、4の符号を付して、単位の各送り突条1全体の立体形状を説明する。なお、以下の説明においては、その送り突条1が設けられた上記ドラム11の供給側端面のドラム11内部側を「基準面」と言う。
【0021】
先ず、2の符号を付した面(以下、2の面、という。3、4の面についても同様)は、基準面に平行な面になっている。その2の面の3、4の面との境界から、3、4の面が前記基準面に向かって下がってゆく傾斜面を成している。すなわち、2の面がこの送り突条1において、基準面から最も高い位置にある。
【0022】
その内、3の面は、全体としては、今述べた2の面を基準として下りの傾斜面を成すが、その表面は曲率の小さな上向き凸の曲面を成し、4の面は、これも、今述べたように、2の面を基準として下りの傾斜面を成すが、その表面は曲率の小さな下向き凸の曲面を成している。
【0023】
各送り突条1がこのような形状になっているので、供給口12から投入された原石Saは、送り突条1に衝突すると、3、4の傾斜面によって、ドラム11の排出側斜め上方に弾き飛ばされるようになっている。
【0024】
各領域の送り突条1が形成されている部分の隣の区域、すなわち、隣接する送り突条1に挟まれた領域では、そこに投入された原石Saは、瞬間的には送り突条1に衝突せず、真下に落下するが、真下に落下した原石Saも、あるいは、真下に落下しつつある原石Saも、ドラム11の回転により各送り突条1が次々に巡ってくるので、それらの原石Saも、送り突条1の3、4の傾斜面でかき上げられ、同時に、排出側斜め上方に弾き飛ばされる。なお、前記基準面の、この送り突条1が隣接する間の領域には、従来と同じように補強板5が装着されている。
【0025】
このように、本実施形態の破砕機10は上記のような送り突条1を供給側端面11aのドラム11内部側に備えているので、ドラム11内に投入された原石Saは、その送り突条1に衝突して排出側斜め上方に弾き飛ばされ、原石Saが供給側に滞留することなく、スムーズに排出側に送り込まれる。従って、破砕効率が向上する。
【0026】
また、「送り突条1」をドラム11の供給側端面11a上に設けるだけであるので、湿式の破砕機のように、水流発生装置を付設して装置が大型化する、といったこともない。
【0027】
なお、本実施形態では請求項で総称した「送り突起」の中から、図2に示した「突条」ものを採用したが、「送り突起」の形態としては上記のような突条のものに限らず、船舶のスクリューのような「羽根形状」のものであってもよい。要するに、原石Saが「送り突起」に衝突した際に、それを排出側に弾き飛ばすような傾斜面(スクリューのような曲面も含む)を備えている形態のものであればよいのである。本実施形態で「突条」のものを採用したのは、従来、この「送り突条1」がなかった破砕機20の場合には、背景技術の項の従来例の構成でも述べたように、そのドラム11の供給側端面11aを補強するために補強板13を設けているが、スクリューのような形状のものを厚みのある突条の形にして補強板13の機能を兼ねさせたからである。従って、本発明で言うところの「送り突起」とは、本実施形態のような「突条」やスクリューのような「羽根形状」のものも含む。
【0028】
また、本実施形態では、発明をロッドミルに適用したが、ボールミルにも適用できるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、破砕機一般に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)に本実施形態の破砕機の断面図を示し、(b)に(a)の線I―Iによる断面図を示したものである。
【図2】本実施形態の破砕機のドラムの、送り突条が設けられた供給側端面を抜き出して、斜めから眺めた斜視図である。
【図3】本実施形態のドラムの供給側端面の内側をドラムの軸に垂直な面に投影した平面図である。
【図4】(a)に破砕機の一従来例の断面図を示し、(b)に(a)の線IV―IVによる断面図を示したものである。
【符号の説明】
【0031】
1 送り突条
2、3、4 (送り突条の各構成面)
5 補強板
10 本実施形態の破砕機
11 (回転)ドラム
11a 供給側端面
11b 排出側端面
12 供給口
13 補強板
14、15 排出口
16 傾斜面
17 フードカバー
20 従来の破砕機(ロッドミル)
Sa 原石
Sb 砕石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原石の供給口が設けられた回転ドラム端面のドラム内部側に、複数の、スクリュー形状や突条などの送り突起が設けられており、各送り突起は、前記供給口から投入された原石がその送り突起に衝突した際、原石を排出側に弾き飛ばすような形状に形成されている破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−142658(P2008−142658A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334379(P2006−334379)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(506400742)株式会社伊藤興業 (3)
【Fターム(参考)】