説明

硫化水素の製造方法及びその使用、特に、重金属を含む排水の汚染除去方法

本発明は、水性培地中で実質的に可溶性である硫化水素を製造するための、デスルフォハロビアシアエ又はデスルフォナトロナム科の少なくとも1つの種ファミリー、あるいはリボソームPARN16Sをコードする遺伝子がデスルフォハロビアシアエ科又はデスルフォナトロナム属のいずれか1つの種の相当する遺伝子に97%以上の相同性を有する種から選択されるアルカリ親和性の硫酸還元細菌の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、硫化水素の製造方法及びその使用、特に、重金属を含む排水の汚染除去方法に関する。
重金属は、人間及び環境に対して毒性が高い可能性がある。これらの重金属は生分解性ではない。故に、それらは自然に蓄積する。従って、ますます限定的な排出基準が金属を排出する産業活動に課されてきている。
産業排水に含まれる重金属を分離するために最も一般的に用いられる方法は、金属水酸化物の形成を利用することである。しかし、これらの方法が、排水中に溶解している金属の許容レベルに関する現在の環境基準をいつも満足するわけではない。
【0002】
すでに使用されている別の技術は、金属硫化物の形成を含む。これは、高価な合成多硫化物の使用又は硫化ナトリウムへの塩酸の作用によるガス状の硫化水素の形成を必要とする。
ガス状の硫化水素の製造を更に必要とする、この処理方法の生物学的代替案が過去に提案されている。これらの生物学的代替案は、硫化水素の形成を引き起こすことが可能である生物学的メカニズムの2つの主なタイプに基づいている。
(1)同化型硫酸塩還元は、多数の細菌、真菌及び植物が硫黄をこれら生物の細胞内に存在するアミノ酸(システイン、メチオニン及びシスチン)、ビタミン(チアミン及びビオチン)及び他の硫黄分子(例えば、フェレドキシン)に取り込むことを可能にする同化作用である。この還元は、決して硫化水素の製造を直接には引き起こさない。それにもかかわらず、後者はタンパク性有機物を発酵している間に間接的に放出される。
(2)異化型硫酸塩還元は、硫酸塩還元菌により行われる。この嫌気呼吸プロセスにおいて、水素の酸化中又は還元型有機化合物、例えばアセテート及びプロピオネートの酸化中に、硫酸塩は最終電子受容体として使用される。この代謝中に基質は、ほとんどの場合アセテートに部分的に酸化されるか、場合によっては完全に酸化されCOが形成される。
【0003】
多くの特許又は特許出願は、鉱山排水又は廃水等の排水を汚染除去するために、金属硫化物として金属イオンを沈殿するための硫酸塩還元菌の使用に関する。
従って、国際公開第80/02281号パンフレット及び米国特許第4,522,723号明細書は、排水中の重金属のレベルを減少するためのデスルフォビブリオ(Desulfovibrio)又はデスルフォトマクラム(Desulfotomaculum)型細菌の使用に関する。米国特許第4,108,722号明細書は、汚染されている地下水のリザーバへのビブリオ(Vibrio)及びデスルフォビブリオ細菌の注入を想定する。より詳細には、米国特許第5,062,956号明細書は、六価クロムの処理に関する。米国特許第5,587,079号明細書、国際公開第97/29055号パンフレット及び国際公開第02/06540号パンフレットの3つは、例えば最初に銅、次に亜鉛等を沈殿させるために、pH(主に、2.5〜6.5)を変化させることにより、沈殿が連続して行われるという顕著な特徴を有する、金属の生物学的沈殿のための別の方法を提供する。炭素の唯一のソースとしてメタノールを使用することが可能であるメチロトローフ細菌の使用を開示する国際公開第97/05237号パンフレットもまた引用することがある。種々の株の細菌の共培養のシステムが、例えば米国特許第4,789,478号明細書又は欧州特許第0692458号明細書において想定されていることにも注意しなければならない。
【0004】
引用された前記方法の不利な点は、相当な量のガス状の硫化水素(HS)がこれらの方法中に産生されることがあるという事実に存在している。これは特に汚染除去すべき排水中に最初に溶解している金属の最大沈殿物を得ることが望まれる場合であり、この場合過剰な硫化水素の使用を必要とする。現在、ガス状の硫化水素は、環境に対して毒性があり、腐食性があり、有害であり、適切な追加の抑制処理を必要とする。
この不利な点を回避する1つの方法は、ガス状の硫化水素の代わりに、(HS状の)溶解している硫化水素を製造することにある。これを行うためには、硫化物を硫酸塩還元菌により産生される培養液のpHが可能な限り高い(塩基性)ことが望ましい。現在、硫酸塩還元菌の大部分において、高いpHの使用が硫化物の製造収率に悪影響を及ぼし、更に培養物に致死的となることさえある。
【0005】
本発明の1つの観点は、硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌を用いて、良好な収率で、実質上可溶な硫化水素を製造することである。
本発明の他の観点の1つは、ある種の硫酸塩還元菌のための、特に、それらのチオ硫酸塩還元特性を使用することを可能にする新しい培養条件を提案することである。
本発明の他の1つの観点は、硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の培養により製造される硫化水素を用いて、重金属を含む排水を汚染除去するための方法を提供することである。
更に、本発明の別の観点は、重金属を含む排水を汚染除去するための硫化水素を製造し、一方、ガス状の硫化水素の望ましくない存在を避けることである。
こうした種々の観点は、金属を含む排水を汚染除去するための硫化水素又はフォーティオリ(fortiori)を製造するために、今まで使用されていない、ある種の最近発見されたアルカリ親和性の硫酸塩還元菌(sulphate−reducing alkaliphilic bacteria)を使用することにより得られる。
【0006】
従って、本発明は、水性培地中で主として可溶性の形態の硫化水素を製造するための、デスルフォハロビアシアエ(Desulfohalobiaceae)科の種、又はデスルフォナトロナム(Desulfonatronum)属の種、又はリボソームRNA16Sをコードする遺伝子がデスルフォハロビアシアエ科又はデスルフォナトロナム属のいずれか1つの種の相当する遺伝子に少なくとも97%の相同性を示す種の少なくとも1つから選択されるアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の使用に関する。
【0007】
「アルカリ親和性の細菌(alkaliphilic bacteria)」は、生存、増殖、種々の代謝及び酵素活性が好ましくは塩基性pHで起こる細菌を意味する。
本発明で使用される細菌の分類学的、形態学的及び生理学的記載は下記の文献に示されている。
-Pikutaら,Desulfonatronum lacustre gen.nov.sp.nov.:a new alkaliphilic sulphate-reducing bacterium utilizing ethanol;Microbiology 67,105;
-Zhilinaら,Desulfonatronovibrio hydrogenovorans gen.nov.sp.nov.,an alkaliphilic,sulphate-reducing bacterium;Int.J.Syst.Bacteriol.Jan.1997,p.144;
-Pikutaら,Desulfonatronum thiodismutans sp. nov.,a novel alkaliphilic,sulphate-reducing bacterium capable of lithoautotrophic growth;Int.J.Syst.Evol.Microbiol.53,1327
【0008】
「相同性(Homology)」は、2つの核酸配列の間の同一性の割合を意味する。例えばAltschulら(Nucl.Acid Res.25:3389,1997)で定義されたアルゴリズムを使用して前記配列を並べるための探求により、又はThompsonら(Nucl.Acid Res.22:4673,1994)で記載された当業者で周知の例えばsoftware Clustal Wを使用することにより、この相同性を測定することは可能である。
「主として可溶性の形態」は、製造された可溶性硫化水素と製造されたガス状の硫化水素の比が1より大きい、特に100より大きいことを意味する。
以下に詳細に述べるように、本発明による硫酸塩還元菌を培養する条件に関し、新規な基質、すなわちホルメート(formate)及びチオサルフェートが、好ましくは使用される。ホルメートはエネルギー源として働き、一方チオサルフェートは電子受容体及び硫黄のソースとして働く。従って、本発明で使用される細菌の株は硫酸塩還元のみならず、チオ硫酸塩還元である。基質としてチオサルフェートを利用するある種の硫酸塩還元菌のこの特性は、金属を汚染除去するための前記方法で使用されていない。
【0009】
本発明の条件下におけるアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の使用によって、極めて主として可溶性の形態であり、そして例外的に高収率の硫化水素を製造することを可能にする。
本発明の別の明確な利点は、任意の滅菌を行わずに純粋培養で操作することの提供の可能であり、費用をかなり抑えることを可能にすることである。実際、使用されている特定の培養条件(高pH、ミネラル含有量、Oが無い、高濃度の硫化水素等)は、強い淘汰圧を保証する。
有利なことには、本発明のアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の使用は、pH9以上、特にpH9.5以上、特にpH10以上で行われる。
【0010】
実際、ガス状である本発明により製造された硫化水素の比率(すなわち、製造されるガス状の硫化水素と製造される溶解している硫化水素の比)は、硫化水素が製造されるpHに依存する。酸性のpHでは、硫化水素の主な形態はガス状である。pH7では、HSイオンとほぼ同じ量のHS分子である。pH9では、ガス状硫化水素の比率はわずか約1/100である。pH9.5では、ガス状硫化水素の比率はわずか約1/500である。pH10では、ガス状硫化水素の比率はわずか約1/1000である。
本発明の別の有利な実施態様によれば、アルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の使用は、電子供与体として提供する有機化合物、特にホルメートの存在下、及び電子受容体として提供する硫黄化合物、特にチオサルフェートの存在下での培養の形態で行われる。
【0011】
しかし、利用された細菌の菌株に応じて、他の基質を硫化物の製造に使うことができる(例えば、電子受容体としてサルフェート、サルファイト又は硫黄、電子供与体としてエタノール又は二水素)という点に注目することは重要である。
しかし、本発明において、硫黄化合物の還元を介して硫化水素の製造が行われるであろう。この硫黄化合物がチオサルフェート(S2-)である場合は、使用される酵素還元メカニズムは、特にチオ硫酸スルフルトランスフェラーゼ(又は、ロダネーゼ)及びチオ硫酸レダクターゼに基づくものを含む。
第1のケースでは、チオサルフェート還元反応の結果はチオサルフェートによるチオール基の酸化と同じであり、スルホニルの部分をサルファイトに還元する。
2-+2RS-+H→SO2-+R−SS−R+HS-
第2のケースでは、チオサルフェートはサルファイト及び硫化物に開裂され、その後、最終結果としてこのサルファイトは硫化物に還元される。
2-+4H→2HS-+3H
【0012】
更に、本発明の目的は、水性培地中で主として可溶性の形態の硫化水素を製造する方法であって、
硫化水素の形成を引き起こす、電子供与体として提供する有機化合物、特にホルメートの存在下、及び電子受容体として提供する硫黄化合物、特にチオサルフェートの存在下での、デスルフォハロビアシアエ科の種、又はデスルフォナトロナム属の種、又はリボソームRNA16Sをコードする遺伝子がデスルフォハロビアシアエ科又はデスルフォナトロナム属のいずれか1つの種の相当する遺伝子に少なくとも97%の相同性を示す種の少なくとも1つから選択されるアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌を培養する段階、
を含む。
【0013】
例えば、発酵の業界、パイロットスケール及び工業スケールを問わず入手することのできる標準の反応装置で、細菌培養段階を行うことができる。
有利なことには、本発明による硫化水素の製造方法では、約pH9以上、特には約pH9.5以上、特には約pH10以上でアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の培養を行う。
必要に応じて、pHを酸性及び/又は塩基性物質の添加により測定及び調整することができる。
【0014】
本発明による硫化水素の製造方法の好ましい実施態様によれば、硫化水素への耐性を示すように細菌を選択し、前記耐性は細菌が少なくとも20mMを超える硫化水素濃度に耐性であることを特徴とする。
「耐性(tolerance)」は、細菌の生存及び正常の代謝活性の維持を意味しており、エネルギー源の消費により観察することができる。
この培養物中の細菌の良好な耐性によって、高濃度の硫化水素を含む溶液を得ることが可能となる。
【0015】
有利には、本発明による硫化水素の製造方法で使用される細菌は、デスルフォナトロナム・ラクストレ(Desulfonatronum lacustre)種に属する。
有利なことには、本発明による硫化水素の製造方法で使用される細菌は、デスルフォナトロノビブリオ・ヒドロゲネボラン(Desulfonatronovibrio hydrogenevorans)種に属する。
本発明の有利な実施態様によれば、硫化水素の製造方法で使用される培養は細菌の増殖に適した支持体で行われ、バイオフィルムの形成を引き起こす。
「バイオフィルム」は、溶液中の細菌の単純な懸濁液の代わりに、例えばポゾレーン(pozzolane)、クロイソニル(Cloisonyl:商標)、バイオネット(Bio−Net:商標)、又はセシル(Sessil:商標)の適切な支持体に選択的に固定化された細菌を意味する。バイオフィルムでの培養によって、高濃度の細菌細胞を局所的に得ること及び硫化水素をより早く製造することが可能である。更に、懸濁液中に細菌がほとんどいないので、細菌細胞は硫化水素を含む培養溶液を取り出している間に反応装置からほとんど取り除かれない。
【0016】
本発明による硫化水素の製造方法の好ましい実施態様によれば、これは以下の連続する2つの段階、前記細菌の増殖及び硫化水素の同時の製造に適した条件下で細菌の培養を行う第1段階、及び前記細菌の増殖がない場合での、硫化水素の製造に適する条件下で細菌の培養を行う第2段階を含み、必要により、1つのサイクルを構成する前記段階の連続を数回繰り返すことが可能である。
「前記細菌の増殖」は、特に細胞分裂によるそれらの増殖を意味する。
「前記細菌の増殖がない場合における硫化水素の製造」は、一方では、
増殖(すなわち、細菌の増殖)の実質的な阻止又は著しい減速、他方では、これら細菌の生存又は少なくとも培地中での硫化水素の形成を引き起こす細菌源の酵素活性の維持を意味する。
【0017】
好ましくは、細菌の培養培地のpHの変化を引き起こす1種又は数種の酸性又は塩基性の化学物質の添加によって、特に一方の段階から他方の段階への移行が行われる。
特に好ましくは、前記第1段階は約9から約10の範囲のpHで行われ、前記第2段階は約10を超えるpHで行われる。
実際、本発明で使用される細菌は、特に極めてアルカリのpH、すなわち特に10を超えるpHでそれらの硫化水素生産活動を維持することが可能である。従って、初期期間は約9〜約10の最適な培養pHとし、細菌の最大限可能な数を得て、そして次の第2期間に約10を超えるpHとし、硫化水素を製造することを続けて、本発明の細菌を培養することには有利であるが、これは製造されたガス状の硫化水素と製造された硫化水素の比が可能な限り低い、特に1/100より小さいような培地の化学的条件下である。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によれば、10mM以上の濃度、特に20mM以上の濃度、特に30mM以上の濃度、40mM以上の濃度で、硫化水素を製造する。
本発明により達成することができる標準的な硫化水素の製造比速度は、少なくとも2.9mmolHS−1hr−1であり、5mmolHS−1hr−1まで変動することができる。
本発明の別の好ましい実施態様によれば、硫化水素は、デスルフォナトロナム・ラクストレ種に属する細菌、電子供与体として提供する有機化合物であるホルメート、及び電子受容体として提供する硫黄化合物であるチオサルフェートの培養により製造され、細菌は約10を超えるpHでバイオフィルムにおいて継続的に培養される。
【0019】
また、本発明の目的は、1種以上の溶解している金属を含む排水の汚染除去方法であって、
電子供与体として提供する有機化合物、特にホルメートの存在下、及び電子受容体として提供する硫黄化合物、特にチオサルフェートの存在下で、デスルフォハロビアシアエ科の種、又はデスルフォナトロナム属の種、又はリボソームRNA16Sをコードする遺伝子がデスルフォハロビアシアエ科又はデスルフォナトロナム属のいずれか1つの種の相当する遺伝子に少なくとも97%の相同性を示す種の少なくとも1つから選択されるアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の培養を用いる、水性培地中において主として可溶性の形態の硫化水素製造段階、及び
前記段階で得られた硫化水素と前記排水を接触させ、前記溶解された金属の減少及び/又は金属硫化物の形態で前記溶解された金属の沈殿を引き起こし、前記接触が約2から約12の範囲のpHで行われる段階を含む。
【0020】
「1種以上の溶解している金属を含む排水の汚染除去」は、排水中に溶解している1種以上の金属の濃度の顕著な減少、特に排水の種々の環境基準により課されている許容限界値未満の減少を意味する。
フランスの法律により現在課されている、液体排水中の金属濃度の許容限界値は、例えば、銅は0.5mg/L;亜鉛は0.5〜2mg/L;ヒ素は0.05〜0.5mg/L;カドミウムは0.05〜0.2mg/L;六価クロムは0.1mg/L;スズは0.5〜2mg/L;水銀は0.03〜0.05mg/L;ニッケルは0.5〜2mg/L、及び鉛は0.1〜0.5mg/Lである。許容限界値は関係する事業に応じて変化する可能性があり、条例は前記値よりも100倍まで低い許容限界値を地域的に設定することがあることに注意しなければならない。
【0021】
現在、クロムの特別な場合を除いて、ほとんどすべての金属を硫化水素の作用により金属硫化物として沈殿することができ、金属水酸化物の形態よりも金属硫化物の形態で低い溶解度を示す。
実際、種々のpHで、金属水酸化物及び硫化物について観測される最小溶解度は、以下の通りである。
硫化ヒ素5.2×10-2mg/L(水酸化ヒ素の形成なし);
硫化カドミウム6.7×10-10mg/Lに対し、水酸化カドミウム2.3×10-5mg/L;
硫化銅1.0×10-8mg/Lに対し、水酸化銅2.2×10-2mg/L;
硫化スズ3.8×10-8mg/Lに対し、水酸化スズ1.1×10-4mg/L;
硫化マンガン2.1×10-3mg/Lに対し、水酸化マンガン1.2mg/L;
硫化水銀9.0×10-20mg/Lに対し、水酸化水銀3.9×10-4mg/L;
硫化ニッケル6.9×10-8mg/Lに対し、水酸化ニッケル6.9×10-3mg/L;
硫化鉛3.8×10-9mg/Lに対し、水酸化鉛2.1mg/L;及び
硫化亜鉛2.3×10-7mg/Lに対し、水酸化亜鉛1.1mg/L;
六価形状のクロムの特殊な場合では、硫化物の形態の沈殿は可能ではないが、他方硫化水素はCr6+イオンをCr3+イオンに還元することを可能にし(Kimら.2001,Chromium VI reduction by hydrogen sulfide in aqueous media:stoichiometry and kinetics. Environ.Sci.Technol.35(11):2219-2225)、特に水酸化物の形態で、ほとんど毒性および可溶性はない。
【0022】
更に、金属水酸化物の溶解度は、一般的に特定の最適pH値について最小であるが、金属硫化物の溶解度は典型的には完全にpHの減少関数であり、これにより単に硫化物の溶解度の観点から、できるだけ塩基性のpHで作用することはいつも有利である。
従って、以上のことをまとめると、本発明による排水の汚染除去は、以下の水酸化物の形態で簡単なろ過を利用するのと比べて特に有利であり、
水銀は、水酸化物として不溶性とすることができず、硫化物としての不溶化は排出の許容可能値を観察することを可能にさせる;
六価クロムは、硫化水素により三価クロムにあらかじめ還元することなしに、水酸化物として効率的に沈殿することはできない;
マンガン、亜鉛及び鉛は、硫化物としての沈殿は排出の許容可能値を観察することを可能にし、水酸化物としてのそれらの沈殿と異なっている。
【0023】
本発明により処置することができる排水としては、例えば、化学工業、化学関連工業、石油産業、特に塗料及び顔料生産工業からの排水、鉱物産業、特にガラス工業(鉛を高排出)、エンジニアリング及び表面処理部門からの排水、製鉄及び冶金部門(特に、ヒ素、六価のクロム、鉛及びマンガン排出)からの排水、及び廃棄物処理部門からの排水である。
【0024】
本発明による1種以上の溶解している金属を含む排水の汚染除去方法では、硫化水素製造段階を前記のいずれかのやり方で行うことができる。
前記1種以上の溶解している金属を含む排水の汚染除去方法の好ましい実施態様によれば、排水を硫化水素と接触する段階は、中性又は塩基性pHで行われる。
本実施態様は、接触段階の間にいずれかのガス状硫化水素の放出を最小限にすることを可能にし、低いpHよりも高いpHで可溶しない、金属硫化物のより完全な沈殿を可能にする。
【0025】
有利なことには、前記1種以上の溶解している金属を含む排水の汚染除去方法では、硫化水素の製造及び排水と硫化水素との接触を別のタンク、特にそれぞれ培養タンク及び反応タンクで行い、前記方法は硫化水素製造段階と排水と硫化水素との接触段階との間に中間段階を含み、前記中間段階は培養タンクで製造されたすべて又は一部の硫化水素を反応タンクへ注入することにある。
汚染除去の段階(すなわち、反応タンクでの汚染排水と製造されたすべて又は一部の硫化水素との接触)において、又は前記段階の後で、不溶化金属硫化物の凝集を引き起こすためにFeCl等の凝固剤を添加し、その後必要に応じて、沈殿後の沈殿物を分離するために排水を層状デカンターに通すことができる。
【0026】
本発明による1種以上の溶解している金属を含む排水の汚染除去の特定の実施態様によれば、排水のフラクションを培養タンクに注入する。
この実施態様は、排水の「接触を含む」又は「部分接触を含む」製造として記載することができる。細菌を排水と接触して培養する際に、排水が細菌により硫化水素を製造する能力を顕著に減少しないような排水の組成物の場合に、この実施態様は経済的利点を示すことができる。
【0027】
本発明による1種以上の溶解している金属を含む排水を汚染除去する別の特定の好ましい実施態様によれば、排水のフラクションを培養タンクに注入しない。
この実施態様を、排水「と平行の」製造として記載することができる。硫化水素を製造する細菌は汚染排水と接触しないので、特に有利である。現在、培養培地中の溶解している金属の存在に対する細菌のより良い、又はより悪い抵抗性に依存している細菌の硫化水素を製造する能力を、前記の接触は予想が困難な割合で低下させることができるからである。
【0028】
有利なことには、本発明による1種以上の溶解している金属を含む排水を汚染除去する方法は、気相がない場合に反応タンク中で排水と硫化水素とを接触する段階を行うようなものであり、これによりガス状の硫化水素の放出はない。
「気相のない場合」は、空気又はいずれか他の気体との任意の接触が無いことを意味する。確立された用語によれば、この接触は、従って「あふれている培地(flooded medium)」中で行われる。この特性は、溶解している硫化水素とガス状の硫化水素の化学平衡が後者に片寄っている場合に、ガス状の硫化水素の放出が気相の存在下で予想され、そして更に、反応タンクのpHを塩基性だけでなく中性又は酸性とすることができるために、有利になっている。
【0029】
本発明による汚染除去方法の他の前記引用された実施態様において、気相の存在下の場合に、接触段階の間に放出されることが可能であるガス状の硫化水素の濃度は、好ましくは5mg/m未満である。
培養タンクに関しては、これは気相を含むことができる。その場合には、この気相中に存在することが可能であるガス状の硫化水素は、培地中に導入される酸化化合物を還元するために役立つ可能性がある。気体が加圧の場合、ガス状の硫化水素を苛性ソーダ(NaOH)で洗浄することにより中和することができる。いかなる場合でも、培養タンクで放出されるガス状の硫化水素の濃度は、好ましくは5mg/m未満である。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記一種以上の溶解している金属を含む排水の汚染除去方法は、
培養タンクで製造された硫化水素の濃度の測定、
汚染除去すべき排水中に溶解された異なる金属又は前記金属の濃度の見積り、
前記測定及び前記見積りに基づいて、反応タンクに注入しなければならない硫化水素を含む溶液の量の調整、の追加の段階を含む。
換言すれば、この実施態様によれば、本発明の方法の単純で迅速な適応により、種々の用途に本発明による排水の汚染除去を使用することが可能であり、すなわち、溶解された金属の濃度に関して、多様な特性を有する排水を汚染除去することが可能である。実際、硫化水素の十分な大量製造に利用することができ、その後排水と接触させるために、硫化水素の量を汚染除去すべき排水の性質に適応することを十分満足させる。
【0031】
金属又は本発明を用いて処理することができる汚染排水中に溶解されている金属の非限定的な例としては、銅、亜鉛、ヒ素、カドミウム、クロム(特に、六価のクロム)、スズ、マンガン、水銀、ニッケル及び鉛を挙げることができる。
再生利用の目的で、場合により選択できる、本発明による方法で得られた金属含有沈殿物の回収が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1a】種々の培養条件下でのデスルフォナトロナム・ラクストレの培養物の増殖を示す図である。x軸は時間(単位は時間)を示す。Y軸は580nmでの吸光度測定値を示す。図1aに関して、培養条件の構成は、下記のように変化する:F=ホルメートの存在;E=エタノールの存在;S=サルフェートの存在;T=チオサルフェートの存在;YE=酵母エキスの存在。下記の方式で、種々の一組の条件を両方の図において表す。記号×:E及びT;記号○:E及びS;記号+:E、T及びYE;記号□:E、S及びYE;太い実線:F及びT;破線:F及びS;点線:F、T及びYE;細い実線:F、S及びYE。
【図1b】種々の培養条件下でのデスルフォナトロナム・ラクストレを培養している間の溶解硫化水素の製造を示す図である。x軸は時間(単位は時間)を示す。y軸はHS濃度(単位はmM)を示す。図1bに関して、培養条件の構成は、下記のように変化する:F=ホルメートの存在;E=エタノールの存在;S=サルフェートの存在;T=チオサルフェートの存在;YE=酵母エキスの存在。下記の方式で、種々の一組の条件を両方の図において表す。記号×:E及びT;記号○:E及びS;記号+:E、T及びYE;記号□:E、S及びYE;太い実線:F及びT;破線:F及びS;点線:F、T及びYE;細い実線:F、S及びYE。
【0033】
【図2a】デスルフォナトロナム・ラクストレを「バッチ」型反応器中でpH9.5で培養した結果を示す図である。硫化水素濃度の変化を点線で表す。ホルメート濃度の変化は○記号を含む実線により表し、580nm(細菌濃度を表す)での光学密度の変化は□記号を含む実線により表す。x軸は時間(単位は時間)に相当する。左側のy軸は(硫化水素及びホルメートに関する)濃度(単位はmM)に相当する。右側のy軸は580nmでのODに相当する。
【0034】
【図2b】デスルフォナトロナム・ラクストレを「バッチ」型反応器中でpH10で培養した結果を示す図である。硫化水素濃度の変化を点線で示す。ホルメート濃度の変化は○記号を含む実線により示す、580nm(細菌濃度を表す)での光学密度の変化は□記号を含む実線により示す。x軸は時間(単位は時間)に相当する。左側のy軸は(硫化水素及びホルメートに関する)濃度(単位はmM)に相当する。右側のy軸は580nmでのODに相当する。t=92時間で、濃縮培地の注入を行う(以下の対応実施例を参照)。
【0035】
【図3】本発明による重金属の沈殿実験の結果を示す図である。写真Aは溶解された鉛を実質上含んでいる産業廃水150mlのサンプルを表す。写真Bは、50mMを超える硫化水素を含むデスルフォナトロナム・ラクストレの60日間の培地後に得られる培養培地5mlの注入直後の同一サンプルを表す。硫化鉛の黒い粒子が見える。
【実験】
【0036】
[細菌株及び培地]
2つの細菌株をここで研究する:デスルフォナトロナム・ラクストレ(pH:9.5)及びデスルフォナトロノビブリオ・ヒドロゲネボラン(pH:9.5)。両方の株を37℃で培養する。試験されるエネルギー源(電子供与体)はエタノール及びホルメートであり、試験された電子受容体はサルフェート及びチオサルフェートである。株は下記の実施例において詳細に記載する。株の選択はハンゲイト(Hungate)チューブ中で5ml培養物を使用して行う。
培地の組成(MLFと称する)は、以下の通りである(単位はg/L):
NHCl 1
HPO 0.3
KHPO 0.3
CaCl.2HO 0.1
KCl 0.1
MgCl.6HO 0.1
システイン 0.5
NaS 0.04%
ウィデル(Widdel)微量元素 1mL
酵母エキス 0.1
後者の接種直前に、下記で定義される、硫化ナトリウム、エネルギー源、電子受容体及びバッファーを培地に添加する。硫化水素によって、培地の酸化還元電位を著しく減少する可能性があり、従って、絶対嫌気性細菌の増殖に適した条件を作り出す。
pH9.5で行われる培養用のバッファーは1.6%NaCO.である。
【0037】
[発酵装置]
20L容量の「バッチ」型反応器(CHEMAP AG、Switzerland)中で懸濁液中の選択された株の培養により、硫化水素製造試験を行った。
発酵槽(反応器)に隣接する制御ボックス中で、pH、温度及び攪拌速度を制御する。pHは、培養培地中に浸されているpHプローブを用いて繰り返し調整する。規定点より低いpH値を検出する場合、蠕動ポンプを用いて、苛性ソーダ又は炭酸塩溶液の容量を発酵槽に注入する。
装置の金属体を介してサーモスタット水の循環により、発酵槽の温度(37℃)を調整する。
マリンタイププロペラにより、攪拌(15回転/分)を行う。
ボール流量計により、窒素の供給を調整する。入ってくる窒素流量により、及び1N苛性ソーダ溶液中のガス出力の浸漬により、発酵槽中のわずかな過圧を維持する。この苛性ソーダ溶液によっても、発酵中に放出することがあるHSのガス流出を中和することが可能である。
【0038】
反応槽の底に位置するタップによって、発酵中のサンプルを取ることが可能である。
これを開始するには、最初にMLF培養培地及びチオサルフェートの10リットルを含む反応器を蒸気で殺菌し、その後、窒素流の下で冷却する。そして、ホルメート及び指数増殖期の終わりの培養物2リットルの種菌を注入する。その後、無菌の脱炭素化された炭酸塩40mMの添加によりpHを調整する。
その後、培養物に添加された化合物(苛性ソーダ、炭酸塩、培養MLF培地)は滅菌しないか、又はあらかじめ脱気する。
【0039】
[増殖のモニター]
分光光度計を用いて、580nmの波長で培養物の光学的密度の測定により細菌の増殖をモニターする。あらかじめ行った実験によって、サーモトガ・エルフィー(Thermotoga elfii)細菌(チオ硫酸塩還元菌)の細胞濃度(乾燥重量g/リットル)と580nmでの光学的密度(0.8を超えない)との直線関係([細胞]=0.73×OD580nm)を確立することが可能である。従って、この方法をここで他の細菌に応用する。デスルフォナトロナム・ラクストレの培養物中の沈殿物の存在は、光学的密度の測定の前にこれらの必要な無機化を強いる。1M過硫酸400μLを細菌培養物4mLに添加することにより、この無機化を行う。攪拌後、580nmで光学的密度の読み取り前に混合物は2分間保持される。
【0040】
コードルウィシュ法(method of Cord Ruwish)(Cord Ruwish R.,J.Microbiol.Methods.4:33-36,1985)によって、溶解された硫化物の用量決定を行う。培養培地0.1mLをサンプリング後、ボルテックスにより、これを5mMCuSO、50mMHClの4mLと素早く混合する。480nmでの吸収を測定し、あらかじめ記録している標準曲線と比較することにより、こうして形成されたボルドーレッド色の硫化銅を滴定する。
培養培地のpH12への以前の塩基性化により、全硫化物の用量決定を行う。これが前記で滴定された、硫化物すべての溶解に帰着する。
【0041】
[チオサルフェートの比色分析]
Nor&Tabatabaiにより記載された方法(Nor Y.M§ and Tabatabai M.A.,Anal.Lett.8:537-547,1975)によって、チオサルフェートの用量決定を行う。サンプル1mLを0.1MKCN1mlと混合する。
2-→SO2-+CNS-
15分後、0.33MCuCl2mLを添加し、その後Fe(NO−HNO1mLを添加する。
CNS-+Fe3+→Fe−CNS
混合物を浸透水で25mLに調整し、攪拌後、2分間待ち、460nmでの鉄−チオシアネート錯体の吸収を測定し、あらかじめ記録している標準曲線と比較することにより、サンプルに存在する硫黄の量を決定する。
【0042】
[サルフェートの量]
Tabatabaiの方法(Tabatabai M.A.,Sulfur Institut Journal 10:11-13,1974)によって、サルフェートを滴定する。サンプル1mLを無菌状態で取り出し、その後、硫化物を取り除くために、エッペンドルフチューブ中の250mLの1NHClで酸性化する。細胞を遠心分離(14000rpm、3分間)により取り除き、上清0.5mLを蒸留水4.5mLで取り上げる。BaCl(1%重量/用量)−ゼラチン(0.3%重量/用量)250μLの添加によって、硫酸バリウムの形態でサルフェートを沈殿することは可能である。30分間置いた後、混合物をボルテックスでホモジナイズし、420nmでの吸収を測定する。
蒸留水5mL及びBaCl−ゼラチン溶液250μLで、下記と同じプロトコールにより標準化を行う。
前記プロトコールを応用し、サルフェート標準(1mM、5mM、10mM及び20mMNaSO)に基づいてキャリブレーションを行う。
【0043】
[砂糖、有機酸及びアルコールの量]
RID 6A示差屈折計(Shimadzu)の検出を備えたORH801カラム(Interaction chemicals)の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、可溶性代謝産物の用量の分離を行う。溶出液は、フィルター(0.65μmミリポア)処理した0.005NHSO溶液である。
注入前に、サンプルを遠心分離する(1300回転/分×15分間)。
【0044】
[ガスの量]
細菌代謝のガス状製造物の用量決定を気相クロマトグラフィー(GPC)により行う。クロマトグラフ(Chrompack CP9000)は、連続して装着された2つのカラム(Silicagel GC及びMolecular Sieve 5A)を備えている。カサロメータを使用する熱伝導率により、検出を実行する。キャリアガスは2バールのヘリウムであり、検出器のフィラメント電流は70mAである。サンプルの圧力をミニメルト(Minimert:商標)型のバルブを備えたシリンジを使用して、ガス圧入(0.1mL)を行う。
【実施例】
【0045】
[デスルフォナトロナム・ラクストレの種類]
これは、硫酸塩又はチオ硫酸塩還元、アルカリ親和性、塩耐性及び化学合成無機栄養菌である
形態:ビブリオ、0.7−0.9×2−3μm、分離、ペア又はスパイラルチェーン、極鞭毛を用いて移動、グラム陰性、二分裂により増殖、寒天コロニー:レンズ状、直径0.5−2mm、黄色っぽい、その後茶色、半透明、ホールエッジ
代謝:非発酵性
電子受容体:サルフェート、サルファイト、チオサルフェート
チオサルフェートの硫化物+サルフェートへの不均化
電子供与体:H−CO、ホルメート、エタノール→アセテート
アセテート、プロピオネート、ブチレート、ピルベート、ラクテート、マレート、フマレート、スクシネート、メタノール、グリセロール、コリン、ベタイン、カザミノ酸、酵母エキス、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース又はラムノースでは増殖しない
スピロシアエタ・アルカリカ(Spirochaeta alcalica)又はデスルフォナトロノビブリオ・ヒドロゲノボラン(Desulfonatronovibrio hydrogenovorans)で栄養共生
シトクロムC有り、デスルフォビリジン(desulphoviridine)無し
酵母エキス又はアセテートにより促進される増殖
生理機能:最適温度=37−40℃(20−45℃)
最適pH=9.5(8−10)
最適NaCl=0%重量/用量(0−10%重量/用量)
ナトリウムイオン及びカーボネートに依存
DNA:57.3mol% G+C
RNA16S配列:Y14594
代表株Z−7951(DSM 10312)
起源:カディン(Khadyn)湖からの堆積物
文献:Pikuta EV、Zhilina TN、Zavarzin GA、Kostrikina NA、Osipov GA、Rainey FA (1998)Desulfonatronum lacustre gen.nov.、sp.nov.、a new alkaliphilic sulphate-reducing bacterium utilizing ethanol.Microbiology(Engl.Tr.Mikrobiologiya)67、123-131
【0046】
[デスルフォナトロノビブリオ・ヒドロゲネボランの種類]
硫酸塩又はチオ硫酸塩還元、アルカリ親和性、弱好塩菌
形態:ビブリオ、0.5×1.5−2μm、1極毛、糸状付属肢、分離又はペア又は短連鎖、グラム陰性
代謝:無機従属栄養性
電子受容体:サルフェート、サルファイト、チオサルフェート
電子供与体:H+CO、ホルメート
炭素源:酵母エキス又はビタミンを含むアセテート
増殖を伴わないジメチル・スルホキシドの硫化物の形成
硫黄により阻害される増殖
サルフェート及びサルファイトへのチオサルフェートの不均化
デスルフォビリジン(desulphoviridine)無し
生理機能:アルカリ性弱好塩性
最適温度:37℃(15−43℃)
最適pH:9.5−9.7(8−10.2)
最適NaCl:3%(1−12%)
最適t1/2=26.5時間(サルフェート)、20.1時間(チオサルフェート)
Naに依存
DNA:48.6mol%G+C(Tm)
RNA16S配列:X99234
代表株:Z−7935T(DSM9292T)
起源:アルカリ性の湖の堆積物(赤道にあるMagadi湖)
文献:Zhilina TN, Zavarzin GA, Rainey FA, Pikuta EN, Osipov GA, Kostrikina NA (1997) Desulfonatronovibrio hydrogenovorans gen. nov., sp. nov., an alkaliphilic, sulphate-reducing bacterium. Int. J. Syst. Bacteriol. 47, 144-149
【0047】
[デスルフォナトロナム・ラクストレにより硫化水素を製造する最適培養条件の決定]
時間の関数として、細菌の濃度に直接関係する、時間の経過につれての光学密度の測定値を示す図1a及び時間の関数として、溶解された硫化水素の濃度の測定値を示す図1bについてここで言及する。
異なる培養条件を試験する。
F:ホルメートあり;E:エタノールあり;S:サルフェートあり;T:チオサルフェートあり;YE:酵母エキスあり(Panreac、スペイン)
実験は二回行った。図1a及び図1bは、580nmでのODの測定値から導き出される結果及び異なる培養物に関する硫化水素量を示す。
これら結果の考察を以下に示す。
ホルメートの使用によって、エタノールの使用より、高濃度の硫化水素を得ることが可能である。
チオサルフェートが存在する培養物によって、サルフェートが存在する場合よりも高濃度の硫化水素を得ることが可能である。
培養培地の酵母エキスの添加によって、添加をしないで得られたものと有意に異なる結果を得ることが可能である。この理由としては、酵母エキスが細菌の接種に微量に存在するからである。
デスルフォナトロナム・ラクストレは、高濃度(約22mM)の硫化水素を製造するホルメートの酸化によりチオサルフェートを還元する。
硫化水素の製造速度は0.122mM/時間である。
【0048】
従って、デスルフォナトロナム・ラクストレは、硫化水素を製造するのに適しており、以下の
高濃度の硫化水素を製造する能力、
硫化水素の製造速度、
硫化水素のより大きい溶解性及び培養物中の株を維持する淘汰圧を可能にするため、実験の継続のために保持された。高いpH値は外因性汚染問題を解消する。
【0049】
[「バッチ」反応器でのデスルフォナトロナム・ラクストレによる硫化水素の製造]
1.増殖のための炭酸塩の重要性
バッチ反応器でのデスルフォナトロナム・ラクストレの第1培養物の実施態様によって、この株の炭酸塩への依存性を確認することが可能である。実際、培養培地中の炭酸ナトリウムがない場合、細菌の増殖は1週間観察されなかった。16.6g/l未満の濃度の炭酸ナトリウムの添加では、いずれも増殖することができない。炭酸塩が気相のCO濃度を介するホルメートの解離平衡に関与すると仮定されている。
【0050】
2.pH9.5での増殖及び製造
指数増殖期の終わりの2リットルの培養物からなる接種材料を培地10リットルに接種することにより、まず最初に、デスルフォナトロナム・ラクストレの培養を行った。エネルギー源は、ホルメート(74mM)であり、最終電子受容体はチオサルフェート(20mM)である。pH9.5への調整は、炭酸ナトリウムで最初に行う。その後、4N苛性ソーダ溶液の注入により、pHを調整する。実験結果を図2aに示す。
デスルフォナトロナム・ラクストレの増殖は、典型的なS字状曲線に従う。潜伏期(t<50時間)後、細菌は指数増殖期に入り(50時間<t<200時間)、その後遅滞期が現れる(t>200時間)。定常期は、t=200時間から観察される。ホルメートはリアルタイムでモニターされ、その濃度が0mMに達した後、pH9.5での第2シリーズの実験の間、エネルギー源は補充される。
培養物の光学密度は非常に低く、ホルメートの添加でわずかに増加するのみである。増殖制限は実施中であると思われる。実験条件下で、デスルフォナトロナム・ラクストレの世代時間は、pH9.5で71.45時間である。この値は硫酸塩還元菌でさえも顕著である。比較すると、同じ実験条件(培地、ホルメート、チオサルフェート、酵母エキス、温度、pH)下であるが、ハンゲイトチューブ(5mL培地)中で培養している間のデスルフォナトロナム・ラクストレの世代時間は、84.52時間である。従って、攪拌及びpHの連続調整を維持している発酵槽及び液体体積/気体体積の比がより高い発酵槽中での培養によって、この細菌の世代時間を減少する可能性があるように思われる。
【0051】
ホルメートの消費量の観測結果は、これは細菌の増殖と相互に関係していることを示す。低い初期の潜伏期の間、ホルメートの消費量は指数増殖期において増加し、その後定常期においてゆっくりとなる。しかし、ホルメートの消費量が維持され、これは定常状態での細菌による硫化水素製造活動維持の観察と一致していることに注意されたい。
ホルメートの消費量と硫化水素の製造量との相関により、実験条件下で1モルの硫化水素の形成は、pH9.5で、2.83モルのホルメートの酸化を必要とすると推定される。
【0052】
反応器内部でのバイオマスの確立及びエネルギー源の消耗後、580nmでの培養物の光学密度とバイオマスとの相関関係が証明される。従って、OD580nm0.465に関して、67.6mg/Lの乾燥重量が決定される。バイオマス=ft(OD580nm)の関係が直線形であると仮定すると、以下の式となる。
バイオマス(mg/L)=145.37×OD580nm
硫化水素の製造比速度を決定することが可能であった。実験条件下における、pH9.5での硫化水素の製造比速度は、3.318mmol、HS−1hr−1である。
【0053】
3.pH10での増殖及び製造
次に、濃縮培養培地の反応器への添加及びpHについての規定値の変化により、pH10で、デスルフォナトロナム・ラクストレの増殖を行った。この実験結果を図2bに示す。t=92時間で、著しく減少するエネルギー源の濃度を補充するために、濃縮培養培地1リットル(標準培地8リットルと同じ)の添加により、培養培地をエンリッチした。この添加は、硫化水素濃度の減少及びOD580nmの減少を引き起こす。
デスルフォナトロナム・ラクストレの増殖が、pH10で維持されることを観察することができる。これは、エネルギー源、ホルメートの酸化と更に相関関係がある。しかし、pH9.5の2倍を超える遅さである。実際、実験条件下でのデスルフォナトロナム・ラクストレの世代時間はpH10で141.45時間である。
硫化水素の濃度が32mMの値を達成することができることに注意されたい。高い濃度の硫化物は、デスルフォナトロナム・ラクストレの増殖速度の減少の原因となることが可能である。しかし、この株は、培養培地中で生じる硫化水素の濃度を考慮すると、硫化物に対して非常に耐性であると考えることができる。
【0054】
ホルメート消費量と硫化水素製造量との相関関係により、培養培地のpH10の値への増加は硫化水素形成のエネルギー収量を変化させないとわれわれは推論する。実際、pH9.5及びpH10での値は、ほぼ同一である:硫化水素1モルの形成において、pH10で、ホルメート2.66モルの酸化を必要とする。
しかし、硫化水素製造の比速度は、pH9.5〜10の変化と共にわずかに(11%)減少する。実験条件下での、pH10での、硫化水素製造の比速度は2.974±0.635mmol、HS−1hr−1である。
pH9.5〜pH10の変化に伴うデスルフォナトロナム・ラクストレの活性のこの減少は、pH9.5〜pH10の変化に伴うこの株のサルファィドジェニック(sulphidogenic)活性の50%の減少を観測したピクタ(Pikuta)らの結果と一致していない。
【0055】
pH10で行われた培養の間、反応器に添加された培地は、殺菌も脱気もされていない。増殖制限条件(高pH、無機培地、高濃度の硫化物)下でデスルフォナトロナム・ラクストレのみで、それ自体を維持することができることを、顕微鏡検査によって確認することが可能である。更に、反応器中における高濃度の硫化物によって、その中に完全に酸素が無い状態を維持することが可能であり、それは高濃度の硫化水素の維持により示される。
【0056】
[培養培地の最適化]
標準培養培地MLF由来の異なる培養培地におけるハンゲイトチューブで培養を行った。培養シリーズに応じて、システイン、硫化ナトリウム、アセテート、酵母エキス又は微量元素を省いた。富栄養MLF培地上の前培養物から、デスルフォナトロナム・ラクストレの第1接種を行った。その後、第2(t=10日)及び第3(t=20日)サブカルチャーについて、同じ型の培地上であらかじめ行われた培養物により、接種材料を提供した。これら一連のサブカルチャーによって、希釈の効果を介して所望の化合物が無いことを確実にさせる。
MLF培地中に、デスルフォナトロナム・ラクストレ増殖に有利な低い酸化還元電位の安定を有利にすることを可能にさせる還元剤として、システイン及び硫化ナトリウムを添加する。細菌株にすぐに利用できる炭素の補足源を提供するためにアセテートを添加し、これは増殖を開始することを可能にする。酵母エキスは、従属栄養性株についてのアミノ酸源及び無機増殖因子源であり、Widdel微量元素の溶液は細菌代謝に関与することがある多くの金属を提供する。
【0057】
異なる代替培養培地の第3サブカルチャーから得られた結果を下記の表1に示す。これらの結果の比較から、1〜3番目に最も低い増殖及び最も低い1〜3番目に最も低い硫化水素製造レベルは、酵母エキスがない場合と相関関係がある(培地B、D及びI)。
低濃度の酵母エキス(0.1g/L)は、この株によるデスルフォナトロナム・ラクストレの良好な増殖及び高濃度の硫化水素にとって不可欠であることが明らかである。より少ない程度に、Widdel微量元素溶液の除外によって、デスルフォナトロナム・ラクストレによる硫化水素の製造を制限することが明らかである。硫酸塩還元菌中の硫酸塩呼吸に関与する、酵素のヘム中の金属の存在により、これら微量元素の役割を説明することができる。工業品質の製品中に生じる不純物及び研究室で使用される「分析」品質の製品において発見されない不純物により、これら元素を供給することができる。
【表1】

【0058】
[硫化水素による銅の沈殿]
溶解された硫化水素の用量決定は、硫酸銅への硫化水素の作用により形成されるボルドーレッド色の硫化銅の吸光度を測定することにより行う。この量に関与する反応は、排水中に溶解された金属を分離するための硫化水素の能力を例示するのに利用した。
硫化水素及び溶解された銅を攪拌により混合すると、硫化銅をすぐに形成する。従って、硫化銅はすぐに肉眼で見える沈殿物を形成した。混合物を5分間置いた場合、大部分の沈殿が試験管の底で見られる。
FeCl等の凝固剤の添加により、すべての銅を沈殿することが可能である。硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の培養物に存在する硫化水素の使用により硫化物の形態の金属の沈殿物が確認されている。
【0059】
[工業排水の汚染除去]
ボークリューズの中央にある会社Xにより提供される実際の工業廃水に含まれる重金属の沈殿及び蓄積する製造物の活性との関連で転換する鉛を含む排水汚染と向かい合っている実際の工業廃水に含まれる重金属の沈殿を行う。
MLF培地2リットル中で、2ヶ月を超えて、37℃でデスルフォナトロナム・ラクストレを培養する。培養の最初のpHは9.5である。利用されるエネルギー源はホルメートであり、硫黄源はチオサルフェートである。
汚染された排水を現在処理作業中の川上で取り出す。
【0060】
硫化水素の濃度の測定を最初に行う。培養培地を1/4に希釈後、測定値は4×12.9=51.6mMの濃度を示す。培養培地における、この硫化水素の例外的な濃度は、特に長い培養時間(60日を超える)のためである。
培地の最終pHの分析値は、8.8を示す。カーボネートバッファーの存在にもかかわらず9.5から8.8へのpHの減少は、デスルフォナトロナム・ラクストレを培養している間の大量の酸の発生を裏づけている。
培養培地中の50mMを超える硫化水素の濃度は、デスルフォナトロナム・ラクストレが特に高い濃度の硫化物に耐性能力があることを示す。
【0061】
硫化水素51.6mMを含む培養培地5mlをシリンジを用いて取り出し、汚染された排水150mlに注入する。注入前の排水を図3の写真Aに示し、注入直後の排水を図3の写真Bに示す。
排水への硫化水素の注入後に、特有の光沢のある黒色により特定される、硫化鉛の粒子が現れ、すぐに沈殿する。
従って、デスルフォナトロナム・ラクストレの代謝により製造された硫化水素を含む培養培地の注入によって、鉛の沈殿及び工業排水からの鉛の分離を行うことが瞬時に可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性培地中で主として可溶性の形態の硫化水素を製造するための、デスルフォハロビアシアエ科の種、又はデスルフォナトロナム属の種、又はリボソームRNA16Sをコードする遺伝子がデスルフォハロビアシアエ科又はデスルフォナトロナム属のいずれか1つの種の相当する遺伝子に少なくとも97%の相同性を示す種の少なくとも1つから選択されるアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の使用。
【請求項2】
約pH9以上、特に約pH9.5以上、特に約pH10以上における、請求項1に記載のアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の使用。
【請求項3】
電子供与体として提供する有機化合物、特にホルメートの存在下、及び電子受容体として提供する硫黄化合物、特にチオサルフェートの存在下での培養形式における、請求項1又は2に記載のアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の使用。
【請求項4】
水性培地中で主として可溶性の形態の硫化水素の製造方法であって、
硫化水素の形成を引き起こす、電子供与体として提供する有機化合物、特にホルメートの存在下、及び電子受容体として提供する硫黄化合物、特にチオサルフェートの存在下での、デスルフォハロビアシアエ科の種、又はデスルフォナトロナム属の種、又はリボソームRNA16Sをコードする遺伝子がデスルフォハロビアシアエ科又はデスルフォナトロナム属のいずれか1つの種の相当する遺伝子に少なくとも97%の相同性を示す種の少なくとも1つから選択されるアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌を培養する段階、を含む前記方法。
【請求項5】
約pH9以上、特には約pH9.5以上、特には約pH10以上でアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の培養を行う、請求項4に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項6】
前記細菌が硫化水素への耐性を有し、前記耐性は細菌が少なくとも20mMを超える硫化水素濃度に耐性であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項7】
前記細菌がデスルフォナトロナム・ラクストレ種に属する、請求項4〜6のいずれか一項に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項8】
前記細菌がデスルフォナトロノビブリオヒドロゲネボラン種に属する、請求項4〜6のいずれか一項に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項9】
前記培養が細菌を増殖するのに適した支持体で行われ、バイオフィルムの形成を引き起こす、請求項4〜8のいずれか一項に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項10】
硫化水素の製造方法であって、連続する下記の2つの段階、
前記細菌の増殖及び硫化水素の同時の製造に適した条件下で細菌の培養を行う第1段階、及び
前記細菌の増殖がない場合における、硫化水素の製造に適する条件下で細菌の培養を行う第2段階を含み、
必要により、1つのサイクルを構成する前記段階の連続を数回繰り返すことが可能である、請求項4〜9のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項11】
細菌の培養培地のpHの変化をもたらす1種又は数種の酸性又は塩基性の化学物質の添加によって、特に一方の段階から他方の段階への移行が行われる、請求項10に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項12】
前記第1段階は約9から約10の範囲のpHで行われ、前記第2段階は約10を超えるpHで行われる、請求項10又は11に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項13】
10mM以上の濃度、特に20mM以上の濃度、特に30mM以上の濃度で硫化水素を製造する、請求項4〜12のいずれか一項に記載の硫化水素の製造方法。
【請求項14】
前記細菌がデスルフォナトロナム・ラクストレ種に属し、電子供与体として提供する有機化合物がホルメートであり、電子受容体として提供する硫黄化合物がチオサルフェートであり、細菌がバイオフィルム上で継続的に培養され、pHが約10を超える、請求項4〜12のいずれか一項に記載の硫化水素の製造方法
【請求項15】
1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法であって、
電子供与体として提供する有機化合物、特にホルメートの存在下、及び電子受容体として提供する硫黄化合物、特にチオサルフェートの存在下で、デスルフォハロビアシアエ科の種、又はデスルフォナトロナム属の種、又はリボソームRNA16Sをコードする遺伝子がデスルフォハロビアシアエ科又はデスルフォナトロナム属のいずれか1つの種の相当する遺伝子に少なくとも97%の相同性を示す種の少なくとも1つから選択されるアルカリ親和性の硫酸塩還元細菌又はチオ硫酸塩還元細菌の培養を用いる、水性培地中で主として可溶性の形態である硫化水素の製造の段階、及び
前記段階で得られた硫化水素と前記排水を接触させ、前記溶解された金属の減少及び/又は金属硫化物の形態で前記溶解された金属の沈殿を引き起こし、前記接触が約2から約12の範囲のpHで行われる段階、
を含む、前記方法。
【請求項16】
前記硫化水素を製造する段階が、請求項4〜14のいずれか一項に記載の方法により行われる、請求項15に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法。
【請求項17】
排水を硫化水素と接触する段階が中性又は塩基性pHで行われる、請求項15又は16に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法。
【請求項18】
硫化水素の製造及び排水と硫化水素との接触を別のタンク、特にそれぞれ培養タンク及び反応タンクで行い、前記方法は硫化水素製造段階及び排水と硫化水素との接触段階との間に中間段階を含み、前記中間段階が培養タンクで製造されたすべて又は一部の硫化水素を反応タンクへ注入することにある、請求項16又は17に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法。
【請求項19】
排水のフラクションを培養タンクに注入しない、請求項18に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法。
【請求項20】
排水のフラクションを培養タンクに注入する、請求項18に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法
【請求項21】
気相が無い場合、ガス状の硫化水素の放出がされない方式において、反応タンク中で排水と硫化水素とを接触する段階を行う、請求項18〜20のいずれか一項に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法。
【請求項22】
培養タンクで製造された硫化水素の濃度の測定、
汚染除去される排水中に溶解した前記金属又は種々の金属の濃度の見積り、及び
前記測定及び前記見積りに基づいて、反応タンクに注入しなければならない硫化水素を含む溶液の量の調整、
の追加の段階を含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法。
【請求項23】
前記金属又は前記汚染排水中に溶解した複数の金属が、銅、亜鉛、ヒ素、カドミウム、クロム(特に、六価のクロム)、スズ、マンガン、水銀、ニッケル及び鉛から選択される、請求項15〜22のいずれか一項に記載の1種以上の溶解された金属を含む排水の汚染除去方法。


【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−538906(P2008−538906A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508262(P2008−508262)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000954
【国際公開番号】WO2006/117458
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507356888)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT DE RECHERCHE POUR LE DEVELOPPEMENT(IRD)
【Fターム(参考)】