説明

硫黄含有量が非常に少ない中間留分の製造を伴う沸騰床での重質石油フラクションの転化方法および装置

【課題】硫黄含有量が非常に少ない軽油フラクションの製造を伴う沸騰床での重質石油フラクションの転化の改善法および該方法の実施を可能にする装置を提供する。
【解決手段】 直列配置されたn(n≧2)個の圧縮段からなる単一の水素圧縮ゾーンI、液・ガス上昇流による沸騰床反応器からなり、ゾーンIの最後の圧縮段を介して水素が供給される接触水素化転化ゾーンII、分離器15と蒸留塔18とからなり、分離器15において水素リッチなガスと液相とを分離し、液相は、蒸留塔18において蒸留される分離ゾーンIII、中間圧縮段によって水素が供給される固定床水素化処理反応器からなる水素化処理ゾーンIVおよび水素の最後の圧縮段への排出を可能にする分離ゾーンVの反応ゾーンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含有量が非常に少ない軽油フラクションの製造を伴う沸騰床での重質石油フラクションの転化の改善法および該方法の実施を可能にする装置に関する。
【0002】
本発明は、硫黄性、窒素性および金属性の不純物を含有する重質炭化水素原料油の処理のための方法および装置に関する。本発明は、このような炭化水素原料油、例えば、原油の蒸留によって得られる常圧残油または減圧残油を、硫黄の規格に合う、すなわち、硫黄が50ppm未満、好ましくは20ppm未満、一層より好ましくは10ppm未満である軽油、および接触分解原料油(流動床接触分解等)、水素化分解原料油(高圧接触水素化分解等)、硫黄含有量が高いまたは低い燃料油、または炭素除去法のための原料油(コーカー等)として都合良く利用され得る1以上の重質生成物に少なくとも部分的に転化することを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2000年まで、ディーゼル燃料における認可された硫黄含有量は350ppmであった。はるかにより厳しい値が2005年までに課される。この最大含有量が50ppmを超えないこととされるからである。この最大値は、次には下方に見直されることになり、数年内に10ppmを超えるべきでなくなる。
【0004】
このため、製造コストを大幅に増加させることなくこれらの要求に合う方法を開発することが必要である。
【0005】
水素化転化等の転化法に由来するガソリンおよび軽油は、原油の常圧蒸留から直接的に得られた軽油と比較して水素化処理において非常に抵抗性が強い。
【0006】
非常に少ない硫黄含有量を得るために、大部分の抵抗性のタイプ、特に、ジ−およびトリアルキル化ジベンゾジベンゾチオフェンまたはより大きいアルキル化度を有し、アルキル基によって硫黄原子の触媒への接近が制限されるものを転化することが必要である。この族の化合物について、芳香族環を水素化してからCsp3−S結合を切断することにより脱硫するルートは、Csp2−S結合を切断することによる直接的な脱硫より速い。
【0007】
特に大部分の抵抗性タイプ、特にベンズアクリジンおよびベンゾカルバゾールの転化によって窒素含有量の大幅な低減を得ることが同様に必要である。アクリジンは抵抗性であるだけでなく、水素化反応の阻害もする。
【0008】
転化軽油は、それ故に、所望の硫黄規格を得るために非常に厳格な操作条件を必要とする。
【0009】
硫黄含有量が少ない中間留分を生じさせるための沸騰床を含む重質石油フラクションの転化方法は、特に、特許文献1に記載された。しかしながら、この方法は、非常に厳格な圧力条件の下でのみ、50ppm以下に硫黄レベルを低減させることを可能にし、最終的に得られる軽油のコストを大きく増加させる。
【0010】
それ故に、水素化処理触媒の妥当なサイクル継続期間を維持し、かつ、50ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満の硫黄含有量が得られることを可能にしながら、厳格性が低く、投資コストの低減を可能にする操作条件下に転化軽油を水素化処理することを可能にする方法について正真正銘の必要性がある。
【0011】
ppmの値は全て重量によって表される。
【特許文献1】欧州特許出願第1312661号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、硫黄含有量が非常に少ない軽油フラクションの製造を伴う沸騰床での重質石油フラクションの転化の改善法および該方法の実施を可能にする装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、制限された硫黄含有量を有する高品質の軽油を得る際に用いられる操作圧力を最適化することによって投資コストを最小にすることが可能であることを見出した。
【0014】
本発明は、80重量%が340℃超の沸点を有する重質石油原料油の処理方法であって、
(a)300〜500℃の温度、0.1〜10h−1の触媒に対する毎時液空間速度および原料油1m当たり50〜5000Nmの水素の存在下で液およびガスの上昇流で操作し、沸点が540℃超であるフラクションの転化率(重量%)が10〜98重量%である、沸騰床反応器における水素化転化、
(b)段階(a)から得られた流出物の、水素およびHSを含有するガス、軽油を含むフラクションおよび場合によっては軽油より重質であるフラクションおよびナフサフラクションへの分離、
(c)200〜500℃の温度および0.1〜10h−1触媒容積に対する毎時液空間速度、原料油1m当たり100〜5000Nmの水素の存在下に段階(b)において得られた軽油を含むフラクションを少なくとも、少なくとも1種の触媒と接触させることによる水素化処理、
(d)段階(c)の終了時に得られた流出物の、水素を含有するガスおよび50ppm未満の硫黄含有量を有する少なくとも1つの軽油フラクションへの分離
の段階を含み、
水素化転化段階(a)は圧力P1で行われ、水素化処理段階(c)は圧力P2で行われ、差ΔP=P1−P2は少なくとも3MPaであり、
水素化転化(a)および水素化処理(c)段階のための水素供給は、n段を有する単一の圧縮システムによって確保され、nは2以上であるものである。
【0015】
nは2〜6であることが好ましい。
【0016】
nは2〜5であることが好ましい。
【0017】
nは2〜4であることが好ましい。
【0018】
nは3であるという事実を特徴とすることが好ましい。
【0019】
硫黄含有量が20ppm未満である軽油が段階(d)において分離されることが好ましい。
【0020】
硫黄含有量が10ppm未満である軽油が段階(d)において分離されることが好ましい。
【0021】
ΔPは3〜17MPaであることが好ましい。
【0022】
ΔPは8〜13MPaであることが好ましい。
【0023】
ΔPは9.5〜10.5MPaであることが好ましい。
【0024】
沸騰床接触水素化転化段階(a)において実施される圧力P1は10〜25MPaであることが好ましい。
【0025】
圧力P1は13〜23MPaであることが好ましい。
【0026】
水素化処理段階(c)において実施される圧力P2は4.5〜13MPaであることが好ましい。
【0027】
圧力P2は9〜11MPaであることが好ましい。
【0028】
n=3であり、第1圧縮段の送達圧力は3〜6.5MPaであり、第2圧縮段の送達圧力は8〜14MPaであり、第3圧縮段の送達圧力は10〜26MPaであることが好ましい。
【0029】
n=3であり、第1圧縮段の送達圧力は4.5〜5.5MPaであり、第2圧縮段の送達圧力は9〜12MPaであり、第3圧縮段の送達圧力は13〜24MPaであることが好ましい。
【0030】
n=3であり、第2圧縮段からの送達水素は水素化処理反応器に供給することが好ましい。
【0031】
水素化処理反応器における水素分圧P2H2は4〜13MPaであることが好ましい。
【0032】
P2H2は7〜10.5MPaであることが好ましい。
【0033】
水素の純度は84〜100%であることが好ましい。
【0034】
水素の純度は95〜100%であることが好ましい。
【0035】
水素の純度は95〜100%であることが好ましい。
【0036】
最後の圧縮段に供給する水素は、分離段階(d)または分離段階(b)を起源とする再循環水素であることが好ましい。
【0037】
中間圧縮段からの送達水素は、さらに、3〜6.5MPaの圧力で、「直留軽油」と呼ばれる常圧留分から直接的に得られた軽油の水素化処理装置に供給し得ることが好ましい。
【0038】
直留軽油の水素化処理圧力は4.5〜5.5MPaであることが好ましい。
【0039】
中間圧縮段からの送達水素は、さらに、4.5〜16MPaの圧力でソフト水素化分解装置に供給し得ることが好ましい。
【0040】
ソフト水素化分解圧力は9〜13MPaであることが好ましい。
【0041】
中間圧縮段からの送達水素は、さらに、7〜20MPaの圧力で高圧水素化分解装置に供給し得ることが好ましい。
【0042】
高圧水素化分解圧力は9〜18MPaであることが好ましい。
【0043】
中間圧縮段からの送達水素は、ソフト水素化分解装置に供給し、ソフト水素化分解から得られた軽油フラクションは段階(c)に供給することが好ましい。
【0044】
また、本発明は、直列配置されたn個の圧縮段からなり、nは2以上である単一の水素圧縮ゾーン、
液およびガスの上昇流による少なくとも1つの触媒の沸騰床反応器からなり、最後の圧縮段を介して水素が供給され、パイプ(11)を介して次のゾーン(III)に接続される接触水素化転化ゾーン(II)、
少なくとも1つの分離器(15)と少なくとも1つの蒸留塔(18)とからなり、該分離器は、水素リッチなガスと液相との分離を可能にし、該水素リッチなガスはパイプ(16)を介して出され、該液相は、パイプ(17)を介して蒸留塔(18)に運ばれ、蒸留された軽油フラクションを抜き出すパイプ(21)は、次のゾーン(IV)に接続される、分離ゾーン(III)、
中間圧縮段によって水素が供給される固定床水素化処理反応器からなり、流出パイプ(25)は、次のゾーン(V)に接続される水素化処理ゾーン(IV)、および
水素の最後の圧縮段への排出を可能にする分離ゾーン(V)
の反応ゾーンを含む重質石油原料油の処理用装置である。
【0045】
nは好ましくは2〜6である。
【0046】
nは好ましくは2〜5である。
【0047】
nは好ましくは2〜4である。
【0048】
nは好ましくは3である。
【0049】
中間圧縮段からの送達は、直留軽油水素化処理反応器に供給することが好ましい。
【0050】
中間圧縮段からの送達は、ソフト水素化分解反応器(50)に供給することが好ましい。
【0051】
中間圧縮段からの送達は、高圧水素化分解反応器に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0052】
本発明は、少なくとも80重量%が340℃超の沸点を有する重質石油原料油の処理のための方法および装置に関し、ここで、該方法は、
(a)液およびガスの上昇流で操作し、540℃超の沸点を有するフラクションの転化率(重量%)は10〜98重量%である沸騰床反応器での水素化転化;
(b)段階(a)から得られた流出物の、水素およびHSを含有するガス、軽油を含むフラクションおよび場合による軽油より重質であるフラクションおよびナフサフラクションへの分離;
(c)段階(b)において得られた軽油を含むフラクションを少なくとも、少なくとも1種の触媒と接触させることによる水素化処理;
(d)段階(c)の終了時に得られた流出物の、水素を含有するガス、50ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満の硫黄含有量を有する少なくとも1つの軽油フラクション、への分離
の段階を含み、
水素化転化段階(a)は圧力P1行われ、水素化処理段階(c)は圧力P2で行われ、差ΔP=P1−P2は少なくとも3MPaであり、
水素化転化(a)および水素化処理(c)段階のための水素供給は、n段を有する単一の圧縮システムによって確保されるので、水素化転化および水素化処理段階のそれぞれで完全に異なる圧力が用いられ得、これは、特に、投資の大きな制限を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
このため、本発明の方法は、少なくとも80重量%が340℃より高い沸点を有する重質石油の原料油の処理方法であって、
(a)300〜500℃の温度、0.1〜10h−1の触媒容積に対する毎時液空間速度および原料油のm当たり50〜5000Nmの水素の存在下で液およびガスの上昇流で操作し、540℃より高い沸点を有するフラクションの重量%での転化が10〜98重量%である沸騰床反応器における水素化転化、
(b)段階(a)から得られた流出物の、水素およびHSを含有するガス、軽油を含むフラクションおよび場合による軽油より重質のフラクションおよびナフサフラクションへの分離、
(c)200〜500℃の温度、0.1〜10h−1の触媒容積に対する毎時液空間速度および原料油m当たり100〜5000Nmの水素の存在下で、段階(b)において得られた軽油を含有するフラクションを少なくとも、少なくとも1の触媒と接触させることによる水素化処理、
(d)段階(c)の終了時において得られた流出物の、水素を含有するガスと、硫黄含有量が50ppm未満、好ましくは20ppm未満、一層より好ましくは10ppm未満である少なくとも1つの軽油フラクションへの分離
の段階を包含し、
水素化転化段階(a)は圧力P1で行われ、水素化処理段階(c)は圧力P2で行われ、差ΔP=P1−P2は、少なくとも3MPa、一般的には3〜17MPa、好ましくは8〜13MPa、一層より好ましくは9.5〜10.5MPaであり、
水素化転化(a)および水素化処理(c)段階のための水素供給は、n段を有する単一の圧縮システムによって確保され、nは、2以上、一般的には2〜5、好ましくは2〜4、特に好ましくは3である、方法である。
【0054】
毎時液空間速度(liquid hourly space velocity:LHSV)は、触媒の容積(m)当たりの原料油の液体流量(m/h)の比に相当する。
【0055】
本発明の方法によると、接触水素化転化段階(a)において沸騰床中で実施される圧力P1は、10〜25MPa、好ましくは13〜23MPaである。
【0056】
水素化処理段階(c)において実施される圧力P2は、4.5〜13.5MPa、好ましくは9〜11MPaである。
【0057】
このため、本発明による方法では、水素化転化および水素化処理段階のそれぞれで完全に異なる圧力が用いられ得、これは、特に、投資の大きな制限を可能にする。
【0058】
本発明による方法では、それぞれの特定の段階に最適である圧力の使用は、単一の多段水素供給システムを実施することによって可能にされる。
【0059】
このため、水素化転化段階には、最後の圧縮段からの送達を起源とする水素が供給され、水素化処理段階には、中間圧縮段からの送達を起源とする水素(すなわち、より低い全圧)が供給される。
【0060】
一つの特定の実施形態によると、本発明の方法は、第1段の送達圧力が3〜6.5MPa、好ましくは4.5〜5.5MPaであり、第2段の送達圧力が8〜14MPa、好ましくは9〜12MPaであり、第3段の送達圧力が10〜26MPa、好ましくは13〜24MPaである、単一の3段水素コンプレッサーを実施する。
【0061】
一つの特定の実施形態において、第2の圧縮段からの送達を起源とする水素は、水素化処理反応器に搬送する。
【0062】
一つの特定の実施形態によると、水素化処理反応器における水素分圧P2H2は、4〜13MPa、好ましくは7〜10.5MPaである。
【0063】
これらの上昇した水素分圧値は、方法に必要な補給水素の全てが段階(c)に供給されるという事実によって可能にされる。本発明では、「補給水素」は、再循環水素と区別される。水素の純度は、一般的には84〜100%、好ましくは95〜100%である。
【0064】
別の実施形態によると、最後の圧縮段に供給する水素は、分離段階(d)および/または分離段階(b)を起源とする再循環水素であり得る。
【0065】
この再循環水素は、場合によっては、複数段を有するコンプレッサの中間段に供給し得る。この場合、前記水素は再循環前に精製されることが好ましい。
【0066】
別の実施形態によると、最初の圧縮段および/または中間段からの送達水素は、さらに、「直留(straight-run)軽油」と称される常圧残油を直接的な起源とする軽油の水素化処理のための装置に供給し得る。都合良くなされるように、直留軽油の水素化処理装置は、3〜6.5MPa、好ましくは4.5〜5.5MPaの圧力で操作される。
【0067】
別の実施形態によると、中間圧縮段からの送達水素は、さらに、ソフト水素化分解装置に供給し得る。都合良くなされるように、ソフト水素化分解装置は、4.5〜16MPa、好ましくは9〜13MPaの圧力で操作される。ソフト水素化分解を起源とする軽油フラクションは、次いで、水素化処理段階(c)に供給し得る。
【0068】
別の実施形態によると、中間圧縮段および/または最終圧縮段からの送達水素は、さらに、高圧水素化分解装置に供給し得る。都合よくなされるように、高圧水素化分解装置は、7〜20MPa、好ましくは9〜18MPaの圧力で操作される。
【0069】
これらの直留軽油水素化転化、ソフト水素化分解および高圧水素化分解の装置は、一緒にまたは別々に存在してもよい。
【0070】
段階のそれぞれの反応条件が以下により詳細に、特に、添付の図面と併せて記載されることになる。
【0071】
本発明による方法は、重質原料油、すなわち、少なくとも80重量%が340℃より高い沸点を有する原料油の処理に特に適している。それらの初留点は、一般的には少なくとも340℃、しばしば少なくとも370℃またはさらには少なくとも400℃で確立される。それらは、例えば、常圧または減圧残油または脱アスファルト油、高含有量の芳香族化合物を有する原料油、例えば、接触分解の方法を起源とするもの(ライトサイクルオイル(LCO)と呼ばれる接触分解からの軽質軽油、ヘビーサイクルオイル(HCO)と呼ばれる接触分解からの重質軽油、スラリーオイルと呼ばれる接触分解の残油等)である。原料油はまた、これらの種々のフラクションを混合することによって形成され得る。それらは、同様に、本発明の目的である方法を起源とするフラクションおよびそれらの供給材料のために再循環させられたものを含有し得る。原料油の硫黄含有量は変動性が大きく制限的ではない。ニッケル、バナジウム等の金属の含有量は、一般的には50〜1000ppmであるが、何らの技術的な制限があるわけではない。
【0072】
原料油は、まず、水素化転化セクション(II)において、水素圧縮ゾーン(I)を起源とする水素の存在下に処理される。次いで、処理された原料油は、
分離ゾーン(III)に送られる。この分離ゾーンでは、数あるフラクションの中でも特に、軽油フラクションが取り出され、これは、次いで、水素化処理ゾーン(IV)に供給される。この水素化処理ゾーン(IV)では、残留する硫黄がそこから取り除かれる。
【0073】
これらの反応ゾーンのそれぞれは、図1および2に示される。これらのゾーンのそれぞれにおいて行われる異なる物理的反応または変換は、以下に示されることになる。
【0074】
ゾーン(I)は、複数段(図では3)における水素の圧縮を示す。このゾーンでは、補給水素が処理され、必要であれば、精製された再循環水素の流れと混合され、段階(a)において必要とされる高さに昇圧させられる。前記単一の圧縮システムは、一般的には少なくとも2つの圧縮段を含み、該圧縮段は、一般的に、圧縮ガス冷却システム、液相・蒸気相分離装置および場合によっては精製された再循環水素流の入口によって分離される。それ故に、複数段への断絶によって、システムの入口の段と出口の段との間で1以上の中間圧力で水素が利用可能となる。この(これらの)中間圧力レベルは、少なくとも1つの接触水素化分解または水素化処理装置に水素を供給し得る。
【0075】
より正確には、ゾーン(II)および(IV)の操作に必要とされる補給水素は、1〜3.5MPa、好ましくは2〜2.5MPaの圧力で、パイプ(4)によって、ゾーン(I)内に着く。ゾーン(I)では、それは、場合によっては他の再循環水素流と共に、多段圧縮システムにおいて圧縮される。各圧縮段(1、2および3)(図においては3個)は、流れの順に、液−気分離および冷却システム(33)、(34)および(35)によって分離される。液−気分離および冷却システム(33)、(34)および(35)は、次の圧縮段に運ばれるガスの温度および液の量が低減させられることを可能にする。この液の排出を可能にするパイプは、図には示されていない。
【0076】
最初の段と最後の段との間、ほとんどの場合第2の段と第3の段との間には、一つのパイプ(7)が、少なくとも一部、好ましくは全部の圧縮水素を水素化処理ゾーン(IV)に送る。パイプ(8)を通ってゾーン(IV)を離れる水素は、次の圧縮段、ほとんどの場合には第3および最後の段に送られる。パイプ(14)は、水素をゾーン(II)に運ぶ。
【0077】
(上記規定のような)処理されるべき原料油は、パイプ(10)によって水素化転化ゾーン(II)の沸騰床内に入る。得られた流出物は、パイプ(11)を介して分離ゾーン(III)に送られる。
【0078】
ゾーン(II)は、触媒を抜き出すための少なくとも1つのパイプ(12)と、新鮮な触媒を送達するための少なくとも1つのパイプ(13)とを同様に含む。
【0079】
このゾーン(II)は、少なくとも1つの3相沸騰床反応器を含む。該3相沸騰床反応器は、上昇する液およびガスの流れで操作し、少なくとも1種の水素化転化触媒を含有する該水素化転化触媒の中で、鉱物担体は、少なくとも部分的気無定型であり、該反応器は、反応器の外側に触媒を抜き出す少なくとも1つの手段と、新鮮な触媒を該反応器に補給する少なくとも1つの手段を含む。反応器の外側に触媒を抜き出す手段は反応器底部の近くに、新鮮な触媒を該反応器に補給する手段は該反応器の頂部近くに配置される。
【0080】
操作を開始する際の圧力は、通常は10〜25MPa、多くの場合13〜23MPaであり、温度は、約300〜500℃、多くの場合約350〜450℃である。触媒容積に対する毎時液空間速度(LHSV)および水素分圧は、処理されるべき原料油の特徴および所望の転化に応じていかにして選ぶかを当業者が知る重要な因子である。触媒容積に対するLHSVは、ほとんどの場合約0.1〜10h−1、好ましくは約0.2〜2.5h−1である。原料油と混合される水素の量は、通常、液状原料油の1立方メートル(m)当たり約50〜5000標準立方メートル(Nm)、ほとんどの場合約20〜1500Nm/m、好ましくは約400〜1200Nm/mである。
【0081】
沸点が540℃を超えるフラクションの転化率(重量%)は、通常約10〜98重量%、ほとんどの場合30〜80重量%である。
【0082】
この水素化転化段階では、任意の標準的な触媒が用いられ得るが、特には、水素化脱水素機能を有する少なくとも1種の金属または金属化合物を無定型担体上に含む粒状触媒である。この触媒は、第VIII族からの金属、例えば、ニッケルおよび/またはコバルトを含む触媒であり得るが、ほとんどの場合、第VIB族の少なくとも1種の金属、例えば、モリブデンおよび/またはタングステンと組み合わされる。例えば、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%のニッケル(ニッケル酸化物NiOとして表される)と、1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%のモリブデン(モリブデン酸化物MoOとして表される)とを無定型金属担体上に含む触媒が用いられ得る。この担体は、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土およびこれら鉱物の少なくとも2つの混合物によって形成される群から選ばれることになる。この担体は、同様に、他の化合物、例えば、酸化ホウ素、ジルコニア、酸化チタンによって形成される群から選ばれる酸化物、無水リン酸を含有し得る。ほとんどの場合、アルミナ担体が用いられ、非常に多くの場合、リンおよび場合によってはホウ素がドーピングされたアルミナ担体が用いられる。無水リン酸Pの濃度は、通常約20重量%未満、ほとんどの場合約10重量%未満である。このP濃度は、通常少なくとも0.001重量%である。三酸化ホウ素Bの濃度は、通常約0〜10重量%である。用いられるアルミナは、通常、γ−またはη−アルミナである。この触媒は、ほとんどの場合、押出物の形態である。第VIおよび第VIII族の金属の酸化物の全含有量は、ほとんどの場合、約5〜40重量%、一般的には約7〜30重量%であり、第VIII族の金属(単数種または複数種)に対する第VI族の金属(単数種または複数種)間の金属酸化物に関して表される重量比は、一般的には約20〜1、ほとんどの場合約10〜2である。
【0083】
廃触媒は一部、規則的な時間間隔で、例えば、一挙にまたはほぼ連続的に反応器の底部で廃触媒を抜き出し、新鮮なまたは新しい触媒を頂部に導入することによって新鮮な触媒と置き換えられる。例えば、新鮮な触媒は、毎日導入され得る。使用済み触媒の新鮮な触媒との置換レベルは、例えば、原料油1立方メートル当たり約0.05〜10キログラムであり得る。この抜き出しおよびこの置換は、この水素化転化段階の連続操作を可能にする装置を用いてなされる。この装置は、通常、反応器を通じた再循環用ポンプを含む。該再循環用ポンプは、段階(a)から抜き出されかつ段階(a)のゾーンの底部に再注入される液体の少なくとも一部を連続的に再循環させることによって触媒が沸騰床中に維持されること可能にする。
【0084】
段階(a)から得られた流出物は、次いで、段階(b)において分離される。それは、パイプ(11)によって少なくとも1つの分離器(15)に導入される。分離器(15)は、一方において水素を含有するガス(気相)をパイプ(16)に、他方において液状流出物をパイプ(17)に分離する。熱分離器についで冷分離器が用いられ得る。中圧および低圧の一連の熱および冷分離器が、同様に、存在し得る。
【0085】
液状流出物は、分離器(18)に送られる。この分離器(18)は、好ましくは、少なくとも1つの蒸留塔からなり、液状流出物は、少なくとも1つの留出物フラクションに分離される。該留出物フラクションは、軽油フラクションを含み、パイプ(21)中に配される。液状流出物は同様に、軽油フラクションより重質である少なくとも1つのフラクションに分離される。該フラクションは、パイプ(23)によって排出される。
【0086】
分離器(18)のレベルで、酸ガスがパイプ(19)中に分離され得、ナフサは、追加パイプ(20)中に分離され得、軽油より重質であるフラクションは、減圧蒸留塔において、減圧残油に分離され得、これは、パイプ(23)および1以上のパイプ(22)によって排出される。減圧残油は、減圧軽油フラクションに相当する。
【0087】
パイプ(23)からのフラクションは、低硫黄含有量を有する工業燃料油として用いられ得るか、または、有利には、カーボン除去法、例えば、コーキングに送られ得る。
【0088】
単独で得られたナフサ(20)は、場合によっては、ゾーン(IV)において分離されたパイプ(29)からのナフサが加えられて、有利には、重質および軽質ガソリンに分離される。重質ガソリンは改質ゾーンに送られ、軽質ガソリンは、パラフィン異性化が行われるゾーン送られる。
【0089】
パイプ(22)からの減圧軽油は、場合によっては単独でまたは異なる起源の類似フラクションとの混合物で、接触分解プロセスに送られてよい。この接触分解プロセスにおいて、これらのフラクションは、有利には、ガスフラクション、ガソリンフラクション、軽油フラクションおよび軽油フラクションより重質であるフラクション(しばしば、当業者によってスラリーフラクションと呼ばれる)の製造を可能にする条件下に処理される。それらは同様に、接触水素化分解プロセスに送られ得る。該接触水素化分解プロセスでは、それらは、有利には、特にガス状フラクション、ガソリンフラクションまたは軽油フラクションの製造を可能にする条件下に処理される。
【0090】
図1および2において、分離器(15)および(18)によって形成された分離ゾーン(III)は、波線で示されている。
【0091】
蒸留のために、条件は、当然、最初の原料油に応じて選ばれる。最初の原料油が減圧軽油である場合、条件は、最初の原料油が常圧軽油である場合より厳格になるだろう。常圧軽油のために、条件は、一般的に、重質フラクションの初留点が約340〜400℃であるように選ばれ、減圧軽油のために、条件は、一般的に、重質フラクションの初留点が約540〜700℃であるように選ばれる。
【0092】
ナフサのために、終留点は約120〜180℃である。
【0093】
軽油は、ナフサと重質フラクションとの間である。
【0094】
ここで与えられる分別点(fraction point)は指標ではあるが、操作する者は、一般的に実施されるように、所望産物の質および量に応じて分別点を選ぶことになる。
【0095】
段階(b)の出口では、軽油フラクションの硫黄含有量は、ほとんどの場合100〜10,000ppmであり、ガソリンフラクションの硫黄含有量は、ほとんどの場合多くとも1000ppmである。それ故に、軽油フラクションは、2005年の硫黄規格に適合しない。軽油の他の特徴は、同様に、低レベルであり、例えば、セタン価は45程度、芳香族化合物含有量は20重量%超、窒素含有量は、ほとんどの場合500〜3000ppmである。
【0096】
軽油フラクションは、次いで、(単独でまたは場合によっては該プロセスに加えられる外部のナフサおよび/または軽油フラクションと共に)水素化処理ゾーン(IV)に送られる。この水素化処理ゾーン(IV)は、硫黄含有量を50ppm以下、好ましくは20ppm以下、一層より好ましくは10ppm以下に低減させるために水素化処理触媒の少なくとも1つの固定床を備えている。安定した色を有する脱硫産物を得るために軽油の窒素含有量を大幅に低減させることも同様に必要である。
【0097】
前記軽油フラクションに、本発明による方法の外側で生じさせられたフラクション(これは、通常、軽油プールに直接的に組み込まれ得ない)を加えることが可能である。この炭化水素フラクションは、例えば、流動床接触分解を起源とするLCO(ライトサイクルオイル)および減圧蒸留軽油の高圧水素化転化プロセスから得られる軽油によって形成される群から選ばれ得る。
【0098】
操作を開始する際の全圧は、通常約4.5〜13MPa、好ましくは約9〜11MPaである。この段階における温度は、通常約200〜500℃、好ましくは約330〜410℃である。この温度は、通常、水素化脱硫および/または芳香族化合物の飽和度の所望のレベルに応じて調整され、所望のサイクル期間に適合していなければならない。毎時液空間速度(LHSV)および水素分圧は、処理されるべき原料油の特徴および所望の転化率に応じて選ばれる。LHSVは、ほとんどの場合約0.1〜10h−1、好ましくは0.1〜5h−1、有利には約0.2〜2h−1である。
【0099】
原料油と混合される水素の全量は、大きくは、段階(b)からの水素消費量および工程a)に送られる再循環精製水素ガスによって決まる。しかしながら、それは、通常、液状原料油の1立方メートル(m)当たり約100〜5000標準立方メートル(Nm)、ほとんどの場合約150〜1000Nm/mである。
【0100】
大量の水素の存在下での段階d)の操作は、アンモニア分圧を通常に低減させることを可能にする。本発明の好ましい場合において、アンモニア分圧は、一般的に0.5MPa未満である。
【0101】
同様に操作は、通常、硫化触媒の安定性と両立する低減させられた硫化水素分圧により行われる。本発明の好ましい場合において、硫化水素分圧は、一般的に0.5MPa未満である。
【0102】
水素化脱硫ゾーンでは、理想的な触媒は、産物の完全な精製を達成し、かつ、硫黄および窒素の大幅な低減を得るように強い水素化能を有していなければならない。本発明の好ましい実施形態によると、水素化処理ゾーンは、比較的低温で操作する。これは、完全な水素化、それ故に、産物の芳香族化合物の含有量およびそのセタン価およびコーキングの制限の改良の方向に向く。水素化処理ゾーンにおいて単一種の触媒または複数種の異なる触媒を同時にまたは連続して用いることは本発明の枠組み内である。通常、この段階は、1以上の触媒床を有し液体流が下降する1以上の反応器において工業的に行われる。
【0103】
水素化処理ゾーンでは、水素化脱水素機能および無定型担体を含む水素化処理触媒の少なくとも1つの固定床が用いられる。好ましくは、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土およびこれら鉱物の少なくとも2つの混合物によって形成される群から担体が選ばれる触媒が用いられる。この担体は同様に、他の化合物、例えば、酸化ホウ素、ジルコニア、酸化チタンによって形成される群から選ばれる酸化物、無水リン酸等を含有し得る。ほとんどの場合、アルミナ担体が用いられるが、より良好には、η−またはγ−アルミナである。水素化機能は、第VIII族の少なくとも1種の金属、例えば、ニッケルおよび/またはコバルトによって確保されるが、場合によっては、第VIB族の金属、例えば、モリブデンおよび/またはタングステンと組み合わせられる。好ましくは、NiMoをベースとする触媒が用いられることになる。水素化処理することが難しい軽油および非常に高いレベルの水素化脱硫のために、当業者は、NiMoベースの触媒の脱硫がCoMo触媒の脱硫よりも優れていることを知っている。前者は、後者の水素化機能より大きい水素化機能を有するからである。例えば、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%のニッケル(ニッケル酸化物NiOとして表される)および1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%のモリブデン(モリブデン酸化物(MoO)として表される)を無定型鉱物担体上に含む触媒が用いられ得る。有利な場合、第VI族および第VIII族の金属の酸化物の全含有量は、しばしば約5〜40重量%、一般的には約7〜30重量%であり、第VIII族の金属(単数種または複数種)に対する第VI族の金属(単数種または複数種)の金属酸化物に関して表される重量比は、一般的には約20〜1、ほとんどの場合には約10〜2である。
【0104】
触媒は同様に、リンおよび/またはホウ素等の元素を含有し得る。この元素は、マトリクスに導入されてよく、または、担体上に担持されてもよい。ケイ素が同様に、単独でまたはリンおよび/ホウ素と共に、担体上に担持され得る。前記元素の濃度は、通常は約20重量%未満(算出酸化物)、ほとんどの場合約10重量%未満であり、それは、通常、少なくとも0.001重量%である。三酸化ホウ素Bの濃度は、通常、約0〜10重量%である。
【0105】
好ましい触媒は、ケイ素を担体(アルミナ等)上に担持されて含有し、場合によっては、Pおよび/またはBが同様に担持され、さらに、第VIII族の少なくとも1種の金属(Ni、Co)および第VIB族少なくとも1種の金属(W、Mo)を含有する。
【0106】
得られた水素化処理された流出物は、パイプ(25)によって出され、図1および2に波線によって図式的に示される分離ゾーン(V)に送られる。
【0107】
ここでは、それは、分離器(26)、好ましくは冷分離器を含み、ここで、気相と液相とが分離され、気相はパイプ(8)によって排出され、液相はパイプ(27)によって出される。
【0108】
液相は、分離器(31)、好ましくはストリッパに送られて、硫化水素が除去されパイプ(28)によって排出される。硫化水素にはほとんどの場合ナフサが混合される。軽油フラクションは、パイプ(30)によって抜き出され、これは、硫黄の規格に適合する、すなわち、硫黄が50ppm未満、一般的には20ppm未満、さらには10ppm未満であるフラクションである。次いで、HS−ナフサの混合物は、場合によっては、精製されたナフサフラクションを回収するように処理される。分離はまた、分離器(31)のレベルでなされ得、ナフサは、パイプ(29)によって抜き出され得る。
【0109】
本発明による方法は同様に、有利には、2つのゾーン(II)および(IV)のための水素再循環ループを含む。これは、2つのゾーンで別々であり得るが、好ましくは、共用され、これは、図1に基づいて記載されている。
【0110】
水素を含有するガス(ゾーン(III)において分離されるパイプ(16)からの気相)は、その硫黄含有量を低減させるように、かつ、場合によっては分離の間に通過し得る炭化水素化合物を除去するように処理される。
【0111】
有利には、および図1によると、パイプ(16)からの気相は、精製および冷却システム(36)に入る。それは、注入水によって洗浄され、かつ、空冷器から下流の低温セクションからの再循環炭化水素フラクションによって部分的に凝縮させられた後に空冷器に送られる。空冷器からの流出物は、分離ゾーンに送られ、ここで、炭化水素フラクションおよび気相は、水から分離される。
【0112】
再循環炭化水素フラクションの一部は、分離ゾーン(III)に、有利には、パイプ(37)に送られる。
【0113】
炭化水素化合物が除去された得られた気相は、必要であれば、硫黄含有量を低減させるための処理装置に送られる。有利には、それは、少なくとも1種のアミンにより処理される。
【0114】
所定の場合には、気相の一部のみが処理されるだけで十分である。他の場合には、気相の全てが処理される必要があるだろう。
【0115】
次いで、このように場合によっては精製された水素含有ガスは、補給水素に匹敵する純度を有する水素を得ることを可能にする精製システムに送られる。
【0116】
膜精製システムは、透過技術に基づいて他の軽質ガスから水素を分離する経済的手段を提供する。代替のシステムは、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption:PSA)の用語の下で知られる圧力変動による再生に伴う吸着による精製であり得る。第3の技術または複数の技術の組合せが同様に想定され得る。
【0117】
精製システムの出口において、1以上のパイプ(5)および(6)は、精製水素のゾーン(I)への再循環を、通常は1以上の圧力レベルで可能にする。ゾーン(II)の供給材料への直接的な再循環(38)も想定され得る。この場合、膜またはPSAによるこの流れの精製はもはや必要でない。
【0118】
1つの特定の実施形態が、エントレインメントされた炭化水素化合物の分離のためにここに記載されるが、当業者に知られる任意の他の実施形態も適している。
【0119】
図1の好ましい実施形態では、補給水素の全てがパイプ(7)によってゾーン(IV)のレベルに導入される。
【0120】
別の実施形態によると、単独で水素の幾分かをゾーン(IV)のレベルに運ぶパイプが提供され得る。
【0121】
図2に例示された別の実施形態によると、第1の圧縮段を起源とする圧縮水素は、パイプ(41)を介して直留軽油水素化処理装置(40)に運ばれ、第2の圧縮段を起源とする圧縮水素は、パイプ(54)を介してソフト水素化分解反応器(50)に運ばれる。
【0122】
高流速の高純度水素から恩恵を受け得るゾーン(IV)は、全圧に非常に近い水素分圧でおよび同一の理由で非常に低い硫化水素およびアンモニアの分圧で操作する。これは、製造された軽油の規格を得、かつ、全体的に出資を最小にするのに必要な全圧および触媒量を都合良く低減させることを可能にする。
【0123】
本発明の方法は、下記反応ゾーンを含む装置において実施される。
【0124】
単一の水素圧縮ゾーン。これは、直列配置されたn個の圧縮段からなる。nは、2〜6、好ましくは2〜5、より好ましくは2〜4であり、より一層好ましくは3である。
【0125】
接触水素化転化ゾーン(II)。これは、液およびガスの上昇流による少なくとも1つの沸騰床反応器からなる。これには、最後の圧縮段を介して水素が供給され、パイプ(11)を介して次のゾーン(III)に接続される。
【0126】
分離ゾーン(III)。これは、少なくとも1つの分離器(15)および少なくとも1つの蒸留塔(18)からなる。分離器は、水素リッチなガスと液相との分離を可能にし、水素リッチなガスはパイプ(16)を介して出され、液相は、パイプ(17)を介して蒸留塔(18)に運ばれる。パイプ(21)は、蒸留された軽油フラクションを抜き出し、次のゾーン(IV)に接続される。
【0127】
水素化処理ゾーン(IV)。これは、中間圧縮段によって水素が供給される固定床水素化反応器からなる。該固定床水素化反応器の流出パイプ(25)は、次のゾーン(V)に接続される。
【0128】
最後の圧縮段への水素の排出を可能にする分離ゾーン(V)。
【0129】
上に述べたように、本発明の一実施形態によると、装置は、図1の線図に示されたようになる。
【0130】
種々の反応ゾーンの詳細は、方法の記載と関連して上記に記載されたようになる。
【0131】
一つの特定の実施形態によると、本発明による装置において、中間圧縮段(図2において第1段)は、直留軽油水素化処理反応器(40)に接続される。
【0132】
別の実施形態によると、本発明による装置において、中間圧縮段(図2では第2段)は、ソフト水素化分解反応器(50)に接続される。
【0133】
これらの2つの実施形態は、図2に例示されるように組み合わされ得る。
【0134】
別の実施形態によると、本発明による装置において、中間圧縮段は、高圧水素化分解反応器(図示せず)に接続される。
【0135】
装置は、いずれか一方の、直留軽油水素化処理反応器(40)、ソフト水素化分解反応器(50)および高圧水素化分解装置のうちの2または3を含み得る。
【0136】
本発明はまた、単一の多段水素圧縮器の沸騰床での重質石油原料油の転化用の装置における使用に関する。
【0137】
本発明は、下記の実施例を用いて例示されることになるが、それらは、制限するものではない。
【0138】
(実施例)
(実施例1)
単一の3段圧縮システムを有する本発明による装置(図1に例示されるような)において、Ouralタイプ(Russian Export Blend)の減圧残油の転化は、沸騰床において固定床水素化処理を用いて硫黄含有量が10ppmである中間留分の製造を伴って行われる。
【0139】
水素化転化のために用いられた触媒は、高転化、低堆積物のNiMoタイプの触媒、例えば、AXENS社によって市販されている触媒HOC458である。
【0140】
水素化転化は、沸点が538℃超であるフラクションの70%容積の転化の範囲まで行われる。
【0141】
沸騰床には、第3圧縮段から送達水素が供給される。
【0142】
沸騰床の操作条件は次の通りである:
温度 425℃
圧力 17.7MPa
LHSV 0.315h−1
出口(11)でのH分圧 71kg/cm
次いで、NiMoタイプの触媒、例えば、AXENS社によって市販されている触媒HR458を用いて固定床水素化処理がなされる。
【0143】
固定床には、第2圧縮段から送達水素が供給される。
【0144】
固定床水素化処理反応器の操作条件は次の通りである:
温度 350℃
圧力 8.5MPa
出口でのH分圧 71kg/cm
/原料油 440Nm/m
LHSVは、出口において10ppmの硫黄含有量を得るように固定された。
【0145】
(実施例2:比較用)
特許出願EP 1 312 661において記載されたような装置において、実施例1において処理された残油と同一の残油の沸騰床における転化が、固体床水素化処理を用いて10ppmの硫黄含有量を有する中間留分の製造を伴って行われた。
【0146】
水素化転化および水素化処理のために用いられた触媒は、実施例1において用いられたものと同一である。それらは、実施例1と同一のライフサイクル長を有する。
【0147】
原料油の流速は、実施例1の流速と同一である。
【0148】
水素化転化は、実施例1と同一の条件下に行われる。
【0149】
固定床水素化処理は、次の条件下に行われる:
温度 350℃
圧力 17.2MPa
出口でのH分圧 143kg/cm
/原料油 440Nm/m
LHSVは、出口において10ppmの硫黄含有量を得るように固定された。LHSVは、実施例1のLHSVより低い。
【0150】
水素下処理反応器において使用された圧力の減少を考慮に入れると、特に、装置のゾーン(IV)および(V)のために用いられる設備の全てが低圧で操作するために、本発明は装置における投資を大幅に低減させることを可能にする。
【0151】
このため、実施例2のために用いられる装置が投資コストIを有するならば、実施例1の実施を可能にする本発明による装置のための投資コストは、0.72Iである。2実施例により得られた製品の質は同一である。
【0152】
本明細書において引用された全ての適用、特許および出版物の全体的な開示は、本明細書において参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、本発明による方法の一実施形態の実施を可能にする装置の線図を示す。
【図2】図2は、本発明による方法の別の実施形態の実施を可能にする装置の線図を示す。
【符号の説明】
【0154】
4 パイプ
5 パイプ
6 パイプ
10 パイプ
11 パイプ
12 パイプ
13 パイプ
14 パイプ
15 分離器
16 パイプ
17 パイプ
18 蒸留塔
19 パイプ
20 追加パイプ
21 パイプ
22 パイプ
23 パイプ
25 流出パイプ
26 分離器
27 パイプ
28 パイプ
29 パイプ
30 パイプ
31 分離器
33 液−気分離および冷却システム
34 液−気分離および冷却システム
35 液−気分離および冷却システム
36 精製および冷却システム
37 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
80重量%が340℃超の沸点を有する重質石油原料油の処理方法であって、
(a)300〜500℃の温度、0.1〜10h−1の触媒に対する毎時液空間速度および原料油1m当たり50〜5000Nmの水素の存在下で液およびガスの上昇流で操作し、沸点が540℃超であるフラクションの転化率(重量%)が10〜98重量%である、沸騰床反応器における水素化転化、
(b)段階(a)から得られた流出物の、水素およびHSを含有するガス、軽油を含むフラクションおよび場合によっては軽油より重質であるフラクションおよびナフサフラクションへの分離、
(c)200〜500℃の温度および0.1〜10h−1触媒容積に対する毎時液空間速度、原料油1m当たり100〜5000Nmの水素の存在下に段階(b)において得られた軽油を含むフラクションを少なくとも、少なくとも1種の触媒と接触させることによる水素化処理、
(d)段階(c)の終了時に得られた流出物の、水素を含有するガスおよび50ppm未満の硫黄含有量を有する少なくとも1つの軽油フラクションへの分離
の段階を含み、
水素化転化段階(a)は圧力P1で行われ、水素化処理段階(c)は圧力P2で行われ、差ΔP=P1−P2は少なくとも3MPaであり、
水素化転化(a)および水素化処理(c)段階のための水素供給は、n段を有する単一の圧縮システムによって確保され、nは2以上である、方法。
【請求項2】
nは2〜6である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
nは2〜5である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
nは2〜4である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
nは3であるという事実を特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
硫黄含有量が20ppm未満である軽油が段階(d)において分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
硫黄含有量が10ppm未満である軽油が段階(d)において分離される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ΔPは3〜17MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ΔPは8〜13MPaである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ΔPは9.5〜10.5MPaである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
沸騰床接触水素化転化段階(a)において実施される圧力P1は10〜25MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
圧力P1は13〜23MPaである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素化処理段階(c)において実施される圧力P2は4.5〜13MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
圧力P2は9〜11MPaである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
n=3であり、第1圧縮段の送達圧力は3〜6.5MPaであり、第2圧縮段の送達圧力は8〜14MPaであり、第3圧縮段の送達圧力は10〜26MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
n=3であり、第1圧縮段の送達圧力は4.5〜5.5MPaであり、第2圧縮段の送達圧力は9〜12MPaであり、第3圧縮段の送達圧力は13〜24MPaである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
n=3であり、第2圧縮段からの送達水素は水素化処理反応器に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
水素化処理反応器における水素分圧P2H2は4〜13MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
P2H2は7〜10.5MPaである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水素の純度は84〜100%である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
水素の純度は95〜100%である、請求項20に記載の方法。
【請求項21】
水素の純度は95〜100%である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
最後の圧縮段に供給する水素は、分離段階(d)または分離段階(b)を起源とする再循環水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
中間圧縮段からの送達水素は、さらに、3〜6.5MPaの圧力で、「直留軽油」と呼ばれる常圧留分から直接的に得られた軽油の水素化処理装置に供給し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
直留軽油の水素化処理圧力は4.5〜5.5MPaである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
中間圧縮段からの送達水素は、さらに、4.5〜16MPaの圧力でソフト水素化分解装置に供給し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ソフト水素化分解圧力は9〜13MPaである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
中間圧縮段からの送達水素は、さらに、7〜20MPaの圧力で高圧水素化分解装置に供給し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
高圧水素化分解圧力は9〜18MPaである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
中間圧縮段からの送達水素は、ソフト水素化分解装置に供給し、ソフト水素化分解から得られた軽油フラクションは段階(c)に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
直列配置されたn個の圧縮段からなり、nは2以上である単一の水素圧縮ゾーン、
液およびガスの上昇流による少なくとも1つの触媒の沸騰床反応器からなり、最後の圧縮段を介して水素が供給され、パイプ(11)を介して次のゾーン(III)に接続される接触水素化転化ゾーン(II)、
少なくとも1つの分離器(15)と少なくとも1つの蒸留塔(18)とからなり、該分離器は、水素リッチなガスと液相との分離を可能にし、該水素リッチなガスはパイプ(16)を介して出され、該液相は、パイプ(17)を介して蒸留塔(18)に運ばれ、蒸留された軽油フラクションを抜き出すパイプ(21)は、次のゾーン(IV)に接続される、分離ゾーン(III)、
中間圧縮段によって水素が供給される固定床水素化処理反応器からなり、流出パイプ(25)は、次のゾーン(V)に接続される水素化処理ゾーン(IV)、および
水素の最後の圧縮段への排出を可能にする分離ゾーン(V)
の反応ゾーンを含む重質石油原料油の処理用装置。
【請求項31】
nは好ましくは2〜6である、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
nは好ましくは2〜5である、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
nは好ましくは2〜4である、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
nは好ましくは3である、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
中間圧縮段からの送達は、直留軽油水素化処理反応器に供給する、請求項30に記載の装置。
【請求項36】
中間圧縮段からの送達は、ソフト水素化分解反応器(50)に供給する、請求項30に記載の装置。
【請求項37】
中間圧縮段からの送達は、高圧水素化分解反応器に供給する、請求項30に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238941(P2007−238941A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57929(P2007−57929)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)