説明

硬い材料によりコーティングされた接触表面を有する試験素子分析システム



本発明は、1個以上の測定ゾーンおよび試験素子上に位置する接触エリア、特に電極または導電経路を有する少なくとも1個の試験素子、分析に特徴的な測定される量を測定するための分析を実施するために測定ゾーンに運び入れられる試験されるサンプル、ならびに試験素子を測定位置に位置決めするための試験素子ホルダーおよび特徴的な変化を測定するための測定装置を有する評価装置であって、上記試験素子ホルダーが試験素子の接触エリアと試験素子ホルダーの接触エリアの間の電気的接触を可能にする接触表面を有する評価装置を含み、これらの接触エリアの一方が電気伝導性の硬い材料の表面を与えられていることを特徴とする、サンプル、特に体液の分析試験のための試験素子分析システムに関する。本発明の解決法は、特に、試験素子分析機の接触接続の接触エリアを電気伝導性の硬い材料によりコーティングすることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプルおよび特にヒトまたは動物の体液の分析試験のための試験素子分析システムに関する。上記システムは、少なくとも2つの構成要素、すなわち、分析に特徴的な測定可能な可変量を測定するための分析を実施するために試験されるサンプルを中に移動させるようになっている測定ゾーンを有する試験素子、ならびに測定を実施するために試験素子を測定位置に位置決めするための試験素子ホルダーおよび特徴的な測定可能な可変量を測定するための測定装置を有する評価装置を含む。
【背景技術】
【0002】
試験素子分析システムは、特に血液または尿などの体液を分析するための医療診断に広く使用される。試験されるサンプルはまず試験素子に適用される。ここでは、通常は化学、生化学、生物学または免疫学的検出反応または物理的相互作用である分析物を検出するために必要な工程の段階が起こり、その結果、特に測定ゾーンの領域内で試験素子の特徴的で測定可能な変化が生じる。この特徴的な変化を測定するために、試験素子を、試験素子の特徴的な変化を測定し、それを表示またはさらに処理するための測定値の形で提供する評価装置の中に挿入する。
【0003】
試験素子はしばしば、基本的に、通常プラスチック材料により作られた細長い支持層、ならびに検出試薬を含有する検出層および必要な場合には濾過層などの他の補助層を有する測定ゾーンを含むテストストリップとして設計される。本発明の試験素子はさらに、試験素子と評価装置を電気的に接触させるために使用することができる接触エリアを含む。電気化学的アッセイ法の場合には、導体経路および電極を試験素子上に搭載する。電気化学的分析法を使用しない試験素子でも、たとえば、試験素子に保存された較正データまたはバッチ情報を評価装置に転送するための電気伝導性の接触エリアを有してもよい。
【0004】
付随する評価装置は、試験素子と評価装置の測定および評価電子機器を電気的に導電接触させる特定の接触素子を有する試験素子ホルダーを有する。通常、これらの接触素子は通常金または白金の貴金属表面を与えられた金属バネ素子を有する電気プラグ接続の形である。測定のためにテストストリップを試験素子ホルダーに挿入すると、接触素子の接触エリアが試験素子の電極を横切って移動する。次いで最終的な位置において、評価装置の接触素子の接触エリアは試験素子の接触エリアと接触する。特に接触素子の形およびバネの力により決められる圧力により、試験素子と評価装置の間が電気的に導電接触する。これは、特に、正確で再現性のある信号伝達を可能にするために、評価装置の接触素子の接触エリアと試験素子の接触エリアの間の境界抵抗が可能な限り低く、一定であることを保証するものでなくてはならない。一定で再現性のある境界抵抗は、以前に試験素子を多数回差し込んだ後でさえも正確な測定結果を得るために、そして特に上記の試験素子分析システムがしばしば何年にもわたって使用され、または何万回も差し込み操作がおこなわれるものであるという事実を考慮して高度で再現性のある測定の正確さを得るために、特に重要である。これは、上記の試験システムが高い効率で処理されなければならないことの多い医療の分野において特に大きな重要性を有する。
【0005】
差し込み式接触装置の大きな利点は、電気的接続を簡単につないだりはずしたりすることができるので試験素子および評価装置を互いに独立して保存および使用することができる点である。接触エリアは、一方では可能な限り最適な電流の移動を確保しなければならないので一定の接触圧力が必要であるが、他方では接触接続をつなぐこと、特に繰り返し接触接続をつないだりはずしたりすることは接続に大きな緊張を与えるので、接触エリアにはしばしば、たとえば金、銀、白金またはパラジウムをメッキまたは亜鉛メッキすることにより貴金属の層を与える。信頼性のある電気的接触のためには一定の接触圧力が確保されなくてはならず、また、機械的な理由から、特に差し込む時の誘導および差し込まれた状態における機械的安定性を確保するために、試験素子の一定の挿入経路が必要であるので、特に接触エリアの摩滅、堆積または引っ掻きによる接触エリア上にしばしば見られる高度に機械的な緊張もまた問題である。電気的接触接続の接触エリア間の非常に確実な接触のために、また可能な限り最も低い接触抵抗を有することに関して、接触エリアが外部の影響に対して可能な限り耐性であることが非常に重要である。この接続において、外部の影響は化学的、物理的または機械的な形であり得る。そこで、特に差し込みプロセスにおいて、二つの接触エリアが互いにこすれあって非常に高い機械的緊張が生じる。浸食効果および時に隙間浸食もまた接触の確実性および接触抵抗に対して悪影響を与える。上記の試験素子分析装置のもう一つの問題は、使用される試験素子の支持材料がしばしば弾性の、比較的柔らかいプラスチック箔からなり、その上に接触エリアおよび電極を搭載してあるので、比較的柔らかい基板材料上のこの構造は正確な接触には不利であるという点である。
【0006】
上記のプラグイン接続の接触エリアの貴金属-貴金属の組合せの大きな欠点は、それらの幾何学的配置および/または圧力に関わりなく、接触エリアがつながる時に金属表面が非常にしばしば損傷を受け、それにより電気的接触に問題が発生することである。上記の接触の問題は、しばしばプラグと接触素子の間の境界抵抗が非常に高くなる、または極端な場合には接触接続の構成要素間に電気的接触が存在しなくなるという形で現れる。顕微鏡で観察すると、特に導体経路または電極などの平面接触の場合にしばしば得られる損傷の画像は、挿入後のこれらの接触エリアの金属層の厚さの大きな変化を特徴とする。そこでは、電極の金属層は、いくつかの領域において、そこを横切って移動する第2の接触エリアによって、特に溝、うねおよびひっかき傷の形で強く変形している。この損傷のパターンは、特に電極が比較的柔らかい基板材料の上に搭載してある場合に起こる。これらの変形は、非常に大きくなって、ある領域で金属層がそれを横切って移動する第2の接触エリアによって完全に剥がされる場合がある。この場合には、試験素子と評価装置の間の電気的接触はもはや不可能である。上記のような接触エリアとして機能する金属層の変形は、不明瞭でかなり増大した境界抵抗として、または電気的接触の完全な欠如として現れる。したがって、上記の接触素子は、長期間の使用に渡って分析物の再現性のある測定を保証することを目的とする分析システムへの使用には適していない。
【0007】
そこで、これらの欠点を克服するために、先行技術において以下の解決法が与えられた。
【0008】
特に高い機械的および/または化学的ストレス下でのプラグイン接続の非常に確実な接触を確保するために、DE 102 22 271 A1には、少なくとも一方の接触部品の接触エリアを溶射プロセスを用いてコーティングすることにより、二つの接触部品の間の電気的接触接続の機械的および/または化学的耐性を増大させる方法が記載されている。この出願の目的は、このコーティングにより接触エリアの摩耗を最小化することである。この文献にはコンダクター板および印刷回路板などの電気部品のプラグイン接続、またはたとえば上記の接触接続の適用の分野としてのモーターにおける滑り接触について記載されている。このような接触接続は特に、関係する接触エリアが一旦接触した後には、接触接続はたとえば振動または接触エリアとの絶え間ない摩擦などにより連続的に高い機械的緊張を受け、その結果、この領域の関係する接触エリアの大量の摩耗を生じることを特徴とする。この出願の目的は、特に接触接続を何度もつないだりはずしたりした後でも信頼性のある接触エリアの電気的接触を確保することよりも、接触エリアそのものの摩耗を最小にすることである。このように接触エリアそのものの摩耗を減少させるために、一方または両方の接触エリアに適用されるコーティング材料として、青銅などの耐摩耗性合金が挙げられている。コーティングそのものは溶射法を用いて実施される。高温を使用する上記の方法は、支持体として非常に頻繁に使用される薄いプラスチック箔が必要な熱耐久性を有していないため、支持体として上記のプラスチック箔を有する試験素子には適していない。コーティング層は、高い緊張下でも耐久力のある接続を可能にするため、またそれでも不可避の摩耗を可能にするために、10μm〜200μmの比較的大きい層の厚さを有さなくてはならない。上記の増大する摩耗現象は、特に両方の接触エリアが上記のような耐摩耗性コーティングを与えられている場合に生じる。
【0009】
欧州特許出願EP 0 082 070にも、特にスイッチおよび継電器における電気的接触接続を保護する方法が記載されている。この出願の目的は金属および特に金属接触をコーティングにより摩耗から保護することである。DE 102 22 271 A1と同様に、コーティングは接触エリアの摩耗に対する耐性を増大しなければならない。この目的のために、存在する金属接触に窒化チタンの層を適用する。これは以下の特徴:180 kg/cm2よりも大きい接着、高い化学的耐性、高い摩滅耐性およ約500μΩ*cmの比抵抗を有する。また、この場合に、コーティングは、接触接続を何度もつないだりはずしたりした後でも接触エリアの信頼性のある電気的接触を確保することよりも、接触エリアそのものの摩耗を最小にするために使用される。
【0010】
US 6,029,344には、硬い材料によりコーティングされた、特に電子部品を電気的に接続するためのスプリング接触素子が記載されている。その目的は、硬い材料のコーティングにより接触接続の機械的特性を修正することである。これは特に接触素子の弾性特性を改良することを目的としている。この場合、コーティングは主に接触エリアの摩耗を減少させるためまたはより確実な接触を可能にするために使用されるのではなく、スプリング接触の弾性特性を修正するために使用される。この目的のために、金などの比較的柔らかい基板材料から作られたスプリング接触を、少なくとも接触素子のバネ作用が可能になるように形作られた領域において、基板材料よりも降伏強度の高い材料によりコーティングする。記載された上記材料の例は、特に、ニッケル、銅、コバルト、鉄、金、銀、白金グループに属する元素、および他の貴金属、半貴金属、タングステン、モリブデン、スズ、鉛、ビスマスおよびインジウムおよびそれらの合金などの金属である。これらの材料は、US 6,029,344の意味では硬い材料として挙げられており、80,000 psiよりも大きい降伏強度を有する材料として定義されている。硬い材料は本出願の意味とは全く異なって定義されている。上記のUS 6,029,344による硬い材料は、非常に高い摩滅耐性および多数回の挿入に対しても高い接触信頼性を有するという点に関する要求を保証するのには適しておらず、スプリング接触の弾性特性を改良する働きをするものである。硬い材料のコーティングの層の厚さは、US 6,029,344によれば接触素子の機械的および特に弾性特性を改良するために、約6〜125μmの間でなくてはならず、少なくともスプリング接触の基板材料の層の厚さの5分の1から5倍でなくてはならない。
【0011】
上記の文献には、接触エリアそのものの摩滅および摩耗の減少または接触素子の弾性特性の改良のいずれかを目的とした電気的接触素子の表面をコーティングする方法が記載されている。上記の方法および装置によっては満足できる解決ができない基本的問題は、特に高い機械的緊張下で、多数回の接触操作の後にさえも、長期間にわたって接触素子の接触エリア間の信頼性のある明確な電気的接続を確保することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、先行技術の欠点をなくす、または少なくとも減らすことである。特に、本発明の目的は、使用が簡単で、試験素子を多数回評価装置に挿入した後であっても可能な限り誤りのない分析物の測定を保証するような試験素子分析システムを提供することである。特に、目的は、試験素子と評価装置の間の明確で再現性のある境界抵抗を確保する試験素子分析システムのための接触接続を提供し、それにより上記システムの使用期間全体に渡って何千回もの挿入に対して正確で再現性のある信号伝達および分析物の測定を提供することである。
【0013】
これは請求の範囲および明細書に特徴づけられる発明の対象により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも、1個以上の測定ゾーンおよび試験素子上に位置する接触エリア、特に電極または導体経路を有する試験素子、その分析に特徴的な測定可能な可変量を測定するための分析を実施するために測定ゾーンに運び入れられる試験されるサンプル、ならびに試験素子を測定位置に位置決めするための試験素子ホルダーおよび特徴的な変化を測定するための測定装置を有する評価装置であって、上記試験素子ホルダーが試験素子の接触エリアと試験素子ホルダーの接触エリアの間の電気的接触を可能にする接触エリアを有する評価装置を含み、これらの接触エリアの一つが電気伝導性の硬い材料の表面を与えられていることを特徴とする、サンプル、特に体液の分析試験のための試験素子分析システムに関する。本発明の解決法は、特に試験素子分析装置の接触接続の接触エリアを電気伝導性の硬い材料によりコーティングすることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
接触接続に関与する素子の硬い材料の表面は、素子全体またはこの素子の一部が硬い材料からなるものであってよい。純粋な硬い材料の素子はしばしば、もろさ、乏しい弾性特性、または特に硬い材料の厚さが厚い場合の比較的高い電気抵抗などの不利な機械的および化学的特性を有するので、好ましい実施形態において、硬い材料の表面は基板材料を電気伝導性の硬い材料によりコーティングすることにより形成される。したがって、本発明において、接触エリアとして主に薄い硬い材料の層について記載する。しかしながら、本発明においてこれらの硬い材料の層に関して記載される出願の特性および分野は、全体または大部分が硬い材料で構成される素子の表面にも適用される。
【0016】
驚くべきことに、接触エリアを電気伝導性の硬い材料によりコーティングすることにより、特に多数回の挿入の後でも、試験素子と評価装置の間の明確で再現性のある電気的接触が確保されることが明らかになった。驚くべきことに、接触エリアを電気伝導性の硬い材料によりコーティングすると、以前から広く使用されている接触接続と比較してかなり改善された接触特性を示す。以前から使用されている接触接続はしばしば両方の側が貴金属により作られた接触エリアを有するか、両方の接触エリアがしばしば接触エリアの摩耗を減少させることを目的とした材料によりコーティングされている。前者は通常一度のみ使用することを目的とした試験素子にしばしば使用され、後者は主に絶え間ない接触操作のために設計されている、および/または高度な機械的緊張がかかる接触接続に使用される。
【0017】
金属の接触エリアとは対照的に、硬い材料の表面を与えられた接触エリアは以下の特別な利点を有する。すなわち、それらは非常に高い硬度などのセラミックの特性を示し、それらは化学的作用に対して非常に耐性が高く、それらは非常に良い表面の滑り特性を有し、摩耗、堆積および摩滅による損失の速度が非常に低い。それらの金属溶融物に対するぬれ特性は非常に高いので、硬い材料の層およびその下の金属層は確実に非常に強く密着し、それにより複合システムへの適用に非常に適している。さらに、金属製の硬い材料は、高い電気伝導性などの非常に良い電気特性を有するので、それらは特に試験素子分析システムにおける電気接触接続のための表面材料として非常に適している。
【0018】
本出願の意味における硬い材料は、それらの特異的結合特性のために非常に硬く、特に1000 kp/mm2よりも大きいビッカーズ硬さを有する材料であると理解される。硬い材料の融点は通常2000℃よりも高く、その化学的および機械的安定性は優れており、セラミック材料のそれに匹敵する。本出願の意味における硬い材料という用語は、特に金属の硬い材料を包含する。これらは光沢および電気伝導性などの金属特性を特徴とする。金属の硬い材料には、特に、カーバイド、ホウ化物、窒化物およびケイ化物、クロム、ジルコニウム、チタン、タンタル、タングステンまたはモリブデンなどの高融点金属、ならびにそれらの混晶および錯化合物が含まれる。特に、それらには、それらの物理的および化学的特性を最適化するために、しばしば低濃度で、さらに他の金属または非金属物質を含有するような上記の硬い材料の修飾が含まれる。上記のより複雑な硬い材料の化合物は、特に、窒化アルミニウム、炭窒化物または上記の金属のカーバイド炭素であってよい。この硬い材料の定義は、大部分は“Rompp Lexikon Chemie” (Thieme Publisher Stuttgart, 第10 版、1996)の定義に対応している。本発明の範囲でコーティングに使用される硬い材料は、評価装置の試験素子ホルダーの接触エリアと試験素子の間の低い境界抵抗を確保し、正確で再現性のある信号伝達を可能にするために電気伝導特性を有さなくてはならない。特に、試験素子の接触エリアと試験素子ホルダーの接触エリアの間の境界抵抗は50オーム未満でなくてはならない。
【0019】
驚くべきことに、上記の金属の硬い材料は、それらがさらに、高い機械的硬度、高い化学的安定性、非常に良い滑り特性および低い程度の摩耗などの試験素子分析機の接触素子に使用するのに有利な特性を有するので、特に有利な本発明の表面材料として使用することができることが明らかになった。
【0020】
本発明の範囲に含まれる特に好ましい接触エリアの硬い材料の表面の材料は、金属窒化物および特に窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化クロムまたは窒化ジルコニウムである。
【0021】
本発明によれば、試験素子または評価装置の試験素子ホルダーの接触素子の接触エリアの一方が電気伝導性の硬い材料の表面を与えられる。接触エリアは、本発明の範囲内において、試験素子と評価装置の間を電気的に接触させるために直接接触する試験素子または接触素子の電気伝導性の構造であると理解される。試験担体の場合には、それらは、好ましくはそこに搭載された電極および導体経路であり、特に、電気的接触をおこなうように、たとえば平面に特別に形作られた構造を有するこれらの電極または導体経路の領域である。接触素子の接触エリアはまた、可能な限り大きい接触エリアを作り出し、それにより非常に確実な接触および低い境界抵抗を得るために、たとえば平面の素子に特別に形作ることもできる。これらの接触エリアはまた、たとえばスプリングまたはプラグイン接触の場合に、試験素子を可能な限り簡単かつ静かに挿入できるように、曲がった形を有してもよい。
【0022】
本発明の試験素子分析システムの好ましい実施形態において、試験素子ホルダーの接触素子の接触エリアが電気伝導性の硬い材料の表面を与えられる。
【0023】
評価装置の試験素子ホルダーの構成要素である接触素子は非常に多様な設計を有することができる。それらは、たとえば、滑り接触、転がり接触、プラグイン接触、スプリング接触、クリップ接触またはゼロ力接触として設計することができる。本発明の接触エリアの設計は、特に、接触接続に関与する二つの素子の接触エリアが、その最終的な位置に達するまで直接接触した状態で互いに横切って動くようなプラグイン接触、スプリング接触およびクリップ接触などのタイプの接触素子の接触信頼性に特に有利である。接触素子の特に好ましい実施形態は、プラグイン接触、スプリング接触およびクリップ接触である。上記の接触素子の種々の可能な実施形態は、US 6,029,344に記載されている。
【0024】
硬い材料の表面がコーティングとして形成される場合、硬い材料のコーティングの下の接触素子の基板材料は、原則としていかなる電気伝導性材料であってもよい。これに特に好適な金属または合金は、高い電気伝導性に加えて、さらに高い化学的および機械的安定性を有するものである。典型的に使用されるプラグイン接続の基板材料は、CuZnもしくはCuSn合金などの銅合金またはCuAg、CuCrSiTiまたはCuMgなどの低合金銅材料である。スプリング接触素子の場合には、基板材料は弾性特性も有していなければならない。
【0025】
硬い材料のコーティングは、原則として当業者に公知の種々のコーティング法を用いて基板材料に適用することができる。上記の方法は、たとえば、物質を液体の溶液から表面上に堆積させる方法、電気化学的メタライゼーションまたは亜鉛メッキ法、非電気化学的メタライゼーション法、化学気相堆積法(CVD)などの化学堆積法、特に蒸発法、溶射法またはレーザーアブレーション法による物理蒸着法(PVD)などの物理堆積法、または固体、液体もしくは気体物質の分解に基づく方法である。PVD溶射法が硬い材料のコーティングに特に好ましく使用される。
【0026】
接触素子の基板材料に硬い材料の層を適用する場合、まず1層以上の中間層、特に発芽または保護層を基板材料に適用し、次にこれらの層に硬い材料の層を適用するのが有利である。上記のような中間層の適用は、特に強い接着および異なる材料間の耐久性のある結合をもたらす。そこで、それに続く硬い材料のコーティングに特に適した表面を作り出す層をまず基板材料に適用するために、たとえば亜鉛メッキ法を使用することができる。さらに、硬い材料の表面が損傷を受けた場合に、浸食などの化学的および/または物理的損傷から下の基板材料を保護する保護層を適用することも可能である。さらに、上記のような中間層の材料を適切に選択することにより、境界抵抗などの接触素子の電気的特性に影響を与えることができる。上記の中間層は、たとえば、好適な材料から作られた粒子を適用することにより製造することができる。あるいは、基板材料と硬い材料の層の間の強く耐久性のある結合を得るために、コーティングの前に接触素子の基板材料の表面をコーティング特性を改良するような方法で処理して、さらに中間層を提供することも可能である。
【0027】
硬い材料の層の厚さおよび組成はコーティング方法、および温度、蒸発速度、溶射標的の組成またはコーティング方法に要する時間などの工程パラメーターの好適な選択に影響される。驚くべきことに、特に金属の硬い材料の非常に薄い層は、特に高い硬度および良い滑り特性という非常に良い機械的特性を有する一方で、優れた電気的特性および特に低い電気抵抗を有することが明らかになった。以前から表面をコーティングするために使用されている硬い材料は、通常ずっと大きい層の厚さで基板材料に適用される。したがって、DE 102 22 271 A1には厚さ10μm〜200μmのコーティング層が記載されており、US 6,029,344には厚さが約6μm〜125μmの間であるコーティング層が記載されている。
【0028】
これに対して、本発明の範囲では金属窒化物の非常に薄い硬い材料の層が非常に好ましいことが明らかになった。これに関して、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化クロムまたは窒化ジルコニウムの層が特に好ましく、とりわけ窒化チタンアルミニウムまたは窒化クロムの層が好ましい。これらの層は好ましくは2μm未満、好ましくは1μm未満、特に好ましくは500 nm未満の厚さを有する。
【0029】
驚くべきことに、電気的接触接続の構成要素としての電気伝導性の硬い材料の表面の有利な効果は、第2の接触エリアの特性を第1の接触エリアの硬い材料の表面の特性に適合させた場合に、特に多数回の接触操作の後の非常に確実で再現性のある接触という点で、さらに改善することができることが明らかになった。
【0030】
両方の接触エリアが貴金属表面を有する接触接続の場合に、特に何度かの挿入の後に、たとえば接触エリアへの物質の堆積により引き起こされる、試験素子と評価装置の間の境界抵抗が大きく増加する、または場合によっては電気的接触がもはや不可能になることが明らかになった。上記のような貴金属-貴金属接触接続は以前からの試験素子分析システムに広く使用されている。したがって、試験素子分析機において貴金属-貴金属接触エリアを有する接触接続を使用することは、特に分析物の測定の高い精度および再現性という点で、その適性は限られている。
【0031】
電気接触接続の接触エリアとして硬い材料の表面を使用することにより、上記のような貴金属-貴金属接触エリアを有する接触接続の欠点を回避することができる。
【0032】
驚くべきことに、特に多数回の接触操作の後の高く再現性のある接触の信頼性という点で、一方のみの接触エリアが硬い材料の表面を与えられ、第2の接触エリアは別の材料から作られている場合にさらに接触信頼性を改善することができることが明らかになった。
【0033】
特に、硬い材料の表面を与えられた接触エリアと向かい合う接触エリアが、もう一方の接触エリアの硬い材料の表面の材料よりも低い硬度を有する材料からなる場合に特に有利であることが明らかになった。これには好ましくは金属、特に金、パラジウムまたは白金などの貴金属が適している。上記の材料はすでに特に試験素子の電極および導体経路の接触エリアに広く使用されている。その結果、多くの場合、本発明の硬い材料の表面を有する接触素子を有する評価装置を提供すれば十分であり、そこに上記の従来の試験素子を挿入することができる。硬い材料の表面を有する接触エリアと硬い材料の表面の材料よりも低い硬度を有する材料から作られた接触エリアとの組合せにより、試験素子と評価装置の間の境界抵抗の高い再現性の達成が可能になる。驚くべきことに、窒化クロムによりコーティングされた、または窒化チタンアルミニウムによりコーティングされた接触エリアを有する本発明の接触素子に金でできた接触素子を有する毎回新しい試験素子を数百回または数千回挿入する耐久試験において、境界抵抗が安定した状態を維持し、多数回の挿入の後でさえも50オーム未満であったことが観察された。試験素子の表面の顕微鏡による観察によれば、貴金属-貴金属接触エリアを有する接触接続とは対照的に、試験素子の接触エリアが変形したにもかかわらず、大量の物質の堆積または層の厚さの変化は観察されないことが示された。特に、電極および導電経路上には連続的な金属層が維持された。特に非常に薄い層の厚さの上記電極、導電経路または接触エリアを有する接触エリアの最小の損傷でさえも、正確で再現性のある分析物の測定に決定的な重要性を有する。上記の試験素子は、たとえば電気的に絶縁されたプラスチック箔の上にナノメーターからマイクロメーターの範囲の層の厚さを有する非常に薄い金属層、たとえば貴金属接触を有する電気化学的テストストリップである。上記の金属層は、たとえば上記の支持体上にリソグラフ法(典型的には10〜100μmの層の厚さ)またはレーザー切断(典型的には10〜100 nmの層の厚さ)により製造することができる。上記の絶縁性で弾性の表面上の非常に薄い電気伝導性の金属層の場合には、この層の少しの浸食が境界抵抗をかなり増加させる、または極端な場合には電気的接触を完全に妨げる可能性がある。本発明の向かい合う接触エリアの硬い材料の表面は上記のような金属層への損傷を非常に少なくするので、試験素子分析機における正確で再現性のある分析物の測定を可能にする。
【0034】
たとえば試験素子の弾性で曲げられるプラスチック箔に比較的もろい硬い材料の層を適用することは、簡単で間違いのない取り扱いに関して試験素子の機械的特性に悪影響を及ぼし、またはコーティング法の方法条件が従来の試験素子に適していないために、硬い材料を従来の試験素子の接触エリアにコーティングすることには技術的な問題が存在する。したがって、特に好ましい実施形態において、試験素子の接触エリアは柔らかい材料により作られ、評価装置の接触素子の接触エリアは、上記のような固定されたプラグイン接続の場合には機械的な要求が硬い材料のコーティングにはるかに適しているので、硬い材料の表面を与えられる。
【0035】
評価装置の硬い材料によりコーティングされた接触エリアとより低い硬度の材料および特に貴金属からなる試験素子の接触エリアとの組合せの好ましい実施形態に加えて、硬い材料の表面とより低い硬度の材料を含む第2の接触エリアとの他のすべての組合せが可能である。特に、試験素子の接触エリアは硬い材料の表面を有してもよく、評価装置の接触素子の接触エリアがより低い硬度を有する材料から作られた表面を有してもよい。上記の組合せは同じ発明の利点を有する。
【0036】
試験素子分析システムは好ましくは分析および医療の研究室において使用される。しかしながら、本発明は、患者の健康状態を連続的にモニターするために分析が患者自身によって実施されるような適用の分野(ホームモニタリング)をも目的としている。これは、たとえば、1日に数回血中のグルコース濃度を測定しなければならない糖尿病のモニタリング、または抗凝血薬を服用しているため、一定の間隔で凝固の状態を測定しなければならない患者には特に医学的な重要性を有する。上記の目的のため、評価装置はできる限り軽くて小さくなくてはならず、電池により作動し、頑丈でなくてはならない。上記のような試験素子分析システムは、たとえばDE 43 05 058に記載されている。
【0037】
試験素子は、しばしば、通常プラスチック材料からなる細長い支持層、および検出試薬を含有する検出層および場合により濾過層などの他の補助層を有する測定ゾーンから基本的に構成されるテストストリップの形である。さらに、試験素子は他の構造素子、たとえば溝またはフリースなどの薬品注入および輸送装置、試験素子を正確に位置決めすることにより評価装置における正確な測定を確保する切り込みなどの位置決め装置、または較正データまたはバッチ情報などの試験素子の特定のパラメーターを評価装置に転送するために使用されるたとえばバーコードもしくは電子部品の形のコード素子を有してもよい。
【0038】
通常、試験素子は測定ゾーンに試薬を含有し、そのサンプルとの反応、特にサンプル中に含有される分析物との反応により特徴的で測定可能な試験素子の変化が生じ、それをシステムの一部である評価装置により測定する。測定ゾーンは場合により他の補助物質を含有することができる。測定ゾーンは試薬または補助物質の一部のみを含有してもよい。別の場合には、分析物を測定する検出反応が直接測定ゾーンで起こらずに、検出反応が完了した後に測定のために試薬混合物を測定ゾーンに単に移すことも可能である。分析試験素子または診断用試験担体の技術に精通した専門家は、分析物特異的検出反応を実施するための好適な試薬および補助剤について非常に良く精通している。分析により検出される分析物の場合には、測定ゾーンは、たとえば、酵素、酵素基質、インジケーター、緩衝塩、不活性添加物等を含有することができる。色の変化を起こす検出反応に加えて、電気化学的センサーまたは化学、生化学、分子生物学、免疫学、物理、蛍光または分光検出法などの記載された試験素子により実現できる他の検出原理も当業者に公知である。本発明の対象はこれらの検出法すべてに使用することができる。これは特に、分析物特異的検出反応の結果として、測定ゾーンに通常電圧または電流として電気化学的に測定することができる変化が生じる電気化学分析法に適用する。
【0039】
上記の試薬を使用する分析システムに加えて、本発明の対象は、試験素子をサンプルに接触した後に、サンプルの特徴的な特性を(たとえば、イオン選択的電極によりそのイオン組成を)それ以上の試薬を使用せずに直接測定するような、試薬を使用しない分析システムにも使用することができる。本発明は根本的に上記の分析システムにも使用することができる。
【0040】
本発明の試験素子は、さらに、電気伝導性であってそれにより試験素子と評価装置の間を電気的に接触することができる接触エリアを有する。電気化学分析法の場合には、サンプルにおける電気化学的変化を測定し、また測定されるサンプルに外部からの電圧および/または電流を適用するために使用することができる導電経路および電極を試験素子上に搭載する。試験素子上の電気化学的分析は、特別に設計された電極間の測定ゾーンで起こり、それらが発した電気的測定信号またはそれらに向けられた動作信号が導電経路を介して測定または適用される。これらの導電経路は、試験素子と評価装置の間を電気的に接触するために使用される接触エリアを形成する特別に設計された平らな領域を有する。導電経路および接触エリアは通常貴金属からなる。電気化学的分析法を使用しない試験素子もまた電気伝導性の接触エリアを有することができる。たとえば、較正データまたはバッチデータなどの試験素子の特定のパラメーターを保存し、また、それらを評価装置に転送するために使用される電子部品を試験素子上に搭載することが有利な場合がある。この目的のために、これらの特定のデータは試験素子上の電子部品または回路に保存される。試験素子を評価装置に導入すると、評価装置の特定の読み込みエレクトロニクスによりこれらのデータが読み込まれ、処理される。しかしながら、これには、試験素子に電気的に接触する必要があるので、ここでも上記の試験素子の電気伝導性の接触エリアが必須である。
【0041】
評価装置は、測定を実施するために試験素子を測定位置に位置決めするための試験素子ホルダーを有する。この試験素子ホルダーは、さらに前記の特定の接触エリアを有する接触素子を有する。分析物を測定するために、試験素子を評価装置の中に置き、評価装置が分析物により引き起こされた試験素子の特徴的な変化を測定し、それを測定値の形で提供して、表示または次の処理に使用する。分析物は機器分析の分野における当業者に公知の種々の検出法により測定することができる。特に、光学的および電気化学的検出法が使用できる。光学法には、たとえば吸収、透過、円二色性、旋光分散、屈折または蛍光を測定することによる測定ゾーンにおける特徴的な変化の測定が含まれる。電気化学的方法は、特に測定ゾーンにおける電荷、電位または電流の特徴的な変化の測定に基づく。
【0042】
本出願の意味において、本発明の方法または対応する装置により測定することができる分析物は、特に臨床診断において分析学的に興味あるすべての粒子である。特に、「分析物」という用語は、原子、イオン、分子および巨大分子、特に核酸、ペプチドおよびタンパク質、脂質、代謝物、細胞および細胞断片などの生物学的巨大分子を包含する。
【0043】
本出願の意味において、分析試験に使用されるサンプルは、分析物を含有する変化しない媒体ならびに分析物またはそれに由来する物質を含有する既に変化した媒体であると理解される。元の媒体の変化は、特にサンプルを溶菌するため、分析物を処理するため、または検出反応をおこなうために実施することができる。好ましいサンプルは液体である。液体は、純粋な液体、および分散物、乳液または懸濁液などの均一または不均一な混合物である。特に、液体は、原子、イオン、分子および巨大分子、特に核酸、ペプチドおよびタンパク質、脂質、代謝物または生物細胞もしくは細胞断片などの生物学的巨大分子を含有することができる。試験される好ましい液体は、血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液、涙壺液、細胞懸濁液、細胞上清、細胞抽出物、組織溶菌液等などの体液である。しかしながら、液体は較正溶液、参照溶液、試薬溶液または標準化された分析物濃度を含む溶液、いわゆる標準であってもよい。
【0044】
本出願において、分析試験または分析物の測定は、分析物の定性的および定量的検出であると理解される。特に、それはそれぞれの分析物の濃度または量の測定と理解され、そこにおいて分析物が存在しないか存在するかということのみの決定もまた分析試験であると見なされる。
【0045】
以下に本発明を図面および実施例に基づいてさらに説明する。記載される特性および特徴は、本発明の好ましい実施形態を作るために個々にまたは組み合わせて使用することができる。
【0046】
図1に示される試験素子分析システム1は、評価装置2および試験素子3からなる。
【0047】
評価装置2は、試験素子3を図1に示される測定位置に位置決めする試験素子ホルダー5を有する。試験素子3は、好適な手段、たとえばバネ素子6により、測定位置に固定される。
【0048】
測定を実施するために、サンプルの液体を試験素子3の測定ゾーン7に入れる。示された実施形態においては、これはサンプルの液滴8を試験素子3の末端に設けられたサンプル適用ゾーン9に適用し、それをこの位置から、たとえばキャピラリーギャップである輸送ゾーン10を通って、測定ゾーン7に輸送することによりおこなわれる。試薬層21が測定ゾーン7に置かれており、これがサンプルの液体により溶解されてその成分と反応する。
【0049】
上記反応の結果、測定ゾーン7に検出可能な変化が生じる、電気化学的試験素子の場合には、測定される電気的な量は、図2に示す測定ゾーンに設けられた電極により測定される。測定位置において、試験素子3と試験素子ホルダー5の接触素子14の間に電気的な接触がなされる。接触素子14は、非常に小型な構造および高度の信頼性を実現するために高度に集積された測定および評価電子機器15に接続されている。示された例では、それらは基本的にプリント基板16および特定のIC 17を含む。この範囲では、分析システムは従来の構造を有し、それ以上の説明は必要ない。
【0050】
図2には、電気化学的分析法のための試験素子3の一例の部分図を示す。
【0051】
測定ゾーン7の中で分析物測定の一部として分析物特異的な変化が検出される。示された電気化学的試験素子の例において、測定される電気的な量は測定ゾーンに設けられた電極4によって測定される。電気信号は導電経路13を通って接触エリア11に伝えられる。これらの接触エリアは、試験素子3が試験素子ホルダー5に差し込まれている場合には接触素子12の接触エリアと直接接触しており、それにより、試験素子と評価装置の間を電気的に接触させている。ここに示された試験素子は、一例にすぎず、テストストリップの最小限の実施形態である。他の電極および導電経路の配置を有する、ならびに数個の電極、たとえば参照電極、およびサンプル適用および輸送ゾーンまたは特別な反応領域などの付加的な構造を有する試験素子もまた本発明の範囲内で使用することができる。
【0052】
図3は、本発明の接触素子の詳細図である。
【0053】
試験素子3は挿入により試験素子ホルダー5の中に導入される。接触素子の接触エリア12と試験素子の接触エリア11の間が電気的に接触する。この例において、接触素子14は、弾性特性を有し、それにより試験素子3に決められた接触圧力を及ぼすように特に設計されている。これは接触素子14が電気的接触ならびに試験素子の位置決めおよび固定を確保するような特に好ましい実施形態により示されている。対照的に、電気的接触および位置決め/固定の機能は、図1においては2つの異なる部品、すなわち、バネ素子6および接触素子14に分かれている。
【0054】
図4は接触エリアの部分を硬い材料によりコーティングした接触素子の詳細な断面図である。硬い材料のコーティング20は、この場合には接触素子の基板材料18に適用され、この場合には特に結合または保護層として設計することができる中間層19が2つの層の間に存在する。硬い材料のコーティング20は接触素子の接触エリア12に機能的に対応する。
【実施例】
【0055】
試験素子分析システムの使用には、試験素子分析機による正確で再現性のある分析物の測定を確保するために、多数回の挿入の後でさえも依然として試験素子と分析装置の間の接触接続が明確で低い境界抵抗を保証することが重要である。
【0056】
実施例1:窒化クロムによりコーティングされた接触エリアを有する接触素子
a) 表面の顕微鏡的試験
試験素子分析システムの電気的接触接続における接触エリアとしての本発明の硬い材料の表面の有利な効果を証明するために、上記のようなプラグイン接続の接触エリアを窒化クロムによりコーティングした。PVD法を使用してプラグイン接続の接触エリアに厚さ480 nmの窒化クロム層を適用した。この方法でコーティングされたプラグイン接続に、毎回新しい試験素子を480回差し込んだ。これらの試験素子は、接触エリアとしてプラスチック箔上に適用された50 nmの厚さを有する金の層を有していた。480回挿入した後、プラグイン接続の接触エリアならびに個々の試験素子の接触エリアの損傷の像を顕微鏡的に評価した。比較として、電解研磨されたパラジウムにより作られた接触エリアを有する、硬い材料をコーティングされていない従来のプラグイン接続に、他の条件は同一にして480個の試験素子を挿入して同様に顕微鏡的に評価した。
【0057】
電解研磨されたパラジウムにより作られた接触エリアを有する従来のプラグイン接続に挿入された試験素子の接触エリアの損傷の像は、大量の材料の浸食および試験素子の金の層の変形を示した。これらは試験素子がプラグイン接続を横切って相対的に動いた結果である。そこで、試験素子の接触エリアおよび導電経路の金の層は、相対的にそれを横切って動くプラグイン接続の第2の接触エリアにより大きく変形される。この変形は、ある領域では、それを引っ掻いて横切る第2の接触エリアのために金の層がプラスチック箔まで削り落とされるほどである。その結果、これらの場合には電気的接触が妨げられ、そのため分析物の測定が不可能になる。
【0058】
対照的に、接触エリアを480 nmの窒化クロムによりコーティングされた本発明のプラグイン接続に挿入された試験素子の接触エリアはかなり少ない損傷を示した。試験素子の接触エリアの顕微鏡による観察により、試験素子の接触エリアは、硬い材料によりコーティングされていないプラグイン接続と比較してずっと少ない程度にしか変形していなかった。特に、比較的大きい材料の浸食または層の厚さの変化は観察されず、接触エリアおよび導電経路の金の層はすべての例において連続的な層として残っていた。損傷の顕微鏡による像は、特定の部位で材料が強くまたは完全に浸食されることなく、比較的一定で浅い深度を有する平らな溝の形で、金の層のより均一な変形を示した。
【0059】
硬い材料によりコーティングされていない従来のプラグイン接続の接触素子の接触エリアの480回挿入した後の損傷の顕微鏡による像もまた、480 nmの窒化クロムからなる本発明の硬い材料の表面を有する対応する接触エリアの損傷の顕微鏡による像と比較してはるかに悪いものであった。
【0060】
対照のプラグイン接続の接触素子の硬い層によりコーティングされていない接触エリアは、顕微鏡により観察するとかなりの金属層の摩耗を示し、その結果、ある部分では金属層の完全な摩滅が生じた。いくつかの場合においては、プラグイン接続の接触エリア上への挿入された試験素子の表面材料の堆積も観察された。
【0061】
それに対して、本発明の接触素子の窒化クロムによりコーティングされた接触エリアは、上記のような頻繁な挿入の後でさえも顕著な摩耗の兆候を示さなかった。特に、窒化クロムの層は損なわれていない連続的な表面を有することが観察され、テストストリップの電極材料の堆積はより少なかった。
【0062】
b) 電気的境界抵抗
試験素子とプラグイン接続の接触素子の間の電気的境界抵抗を測定すると、特に多数回の挿入の後に、硬い材料によりコーティングされた接触素子により、上記の硬い材料の表面を持たない従来の接触素子と比較して、より妨害を受けにくいかなり高い再現性のある電気的接触接続が可能になることが観察された。この目的で、毎回電極の材料として厚さ50 nmの金の層を有する上記のタイプの480個の新しい試験素子を、接触エリアを480 nmの窒化クロムによりコーティングされたプラグイン接続、または電解研磨されたパラジウムにより作られた、硬い材料によりコーティングされていない接触エリアを有するプラグイン接続(対照)のいずれかに挿入し、それぞれの場合に試験素子の8個の電極領域とプラグイン接続の間の境界抵抗を測定した。その結果、硬い材料によりコーティングされた接触エリアおよび硬い材料によりコーティングされていない対照の接触エリアについてそれぞれ3840個の境界抵抗の値が得られた。
【0063】
図5aは、電解研磨されたパラジウムにより作られた、硬い材料によりコーティングされていない接触エリアを有する接触素子についてこの方法により測定された境界抵抗の度数分布を示す。測定された境界抵抗Rを0.1オームの範囲で横軸にプロットし、測定された境界抵抗の頻度を最高頻度値(=100)に正規化して縦軸にプロットした。
【0064】
これにより、これらの対照における境界抵抗の大部分が0〜10オームの間の低い値の範囲に存在するが、わずかとは言えない数の測定された境界抵抗が「無限」の大きさになった。上記の「無限」として測定された境界抵抗は、それぞれのプラグイン接続の接触素子と試験素子の接触エリアの間に電気的接触が存在せず、抵抗を測定することができないことを意味する。これらの値は図5aの右側に矢印を付けて示した。個々に測定された境界抵抗の評価は、測定された境界抵抗のうちの32個が50オームよりも大きかったことを示している。50オームの境界値は、この方法により組み立てられた試験素子分析システムにおいてそれより下では測定に信頼性があると見なすことができるという閾値であると見なされる。しかしながら、試験された480個の試験素子のうちの16個が少なくとも1個の50オームを超える境界抵抗値を有していた。これは、測定された試験素子の3.3 %の高いエラー率となり、このような接触素子は試験素子分析システムにおける長期的で再現性のある使用にはあまり適していない。
【0065】
図5bは480 nmの窒化クロムの硬い材料によりコーティングされた本発明の接触素子について測定された境界抵抗の度数分布を示す。
【0066】
3840個の境界抵抗の測定値中に50オームよりも大きい値は観察されなかったことが明らかに見て取れる。10〜50オームの間により多くの抵抗値が存在するものの、測定された3840個の値の中に50オームの閾値を超えたものはなく、硬い材料をコーティングされていない接触エリアには存在した「無限」を示した境界抵抗値はなかった。したがって、上記の接触接続は多くのプラグイン操作において、再現性をもって、正確に電気信号を転送するために使用することができる。したがって、上記の本発明の接触接続の試験素子分析機への使用は、上記システムにおいては、特に多数回の挿入の後にさえも再現性のある正確な分析物の測定を実施することができるという利点を有する。
【0067】
実施例2:窒化チタンによりコーティングされた接触エリアを有する接触素子
その接触エリアが同様にPVD法により適用された120 nmの窒化チタンアルミニウムからなる、本発明の硬い材料の表面を有する接触素子を有するプラグイン接続を用いて同様の実験を実施した。
【0068】
a) 表面の顕微鏡的試験
この場合にも、本発明の窒化チタンアルミニウムによるプラグイン接続の接触エリアの硬い材料のコーティングが試験素子の接触エリアの損傷の像をかなり改善することが明らかになった。それぞれの試験素子の接触エリアの顕微鏡による観察により、試験素子の接触エリアは変形するが、硬い材料によりコーティングされていない対照と比較してはるかに少ない程度であったことが示された。特に、比較的大きい材料の浸食または層の厚さの変化は観察されず、接触エリアおよび導電経路の金の層は連続的な層として残っていた。損傷の顕微鏡による像は、窒化クロムをコーティングした接触エリアの場合と同様に、材料が特定の部位で強くまたは完全に浸食されることなく、比較的一定で浅い深度を有する平らな溝の形で、金の層のより均一な変形を示した。
【0069】
480回の挿入の後の窒化チタンアルミニウムコーティングそのものの損傷もまた、硬い材料によりコーティングされていない対照のプラグイン接続よりもずっと少なかった。本発明のプラグイン接続の窒化チタンアルミニウムによりコーティングされた接触エリアは、頻繁な挿入の後でさえも、摩耗または堆積の顕著な兆候を示さなかった。特に、窒化チタンの層の表面は依然として損なわれておらず、連続的であることが観察された。
【0070】
b) 電気的境界抵抗
境界抵抗の測定において、実施例1b)の測定と同様に、窒化チタンアルミニウムによりコーティングされたプラグイン接続の接触エリアは、このような硬い材料の表面を持たない従来のプラグイン接続と比べてかなり妨害を受けにくい、はるかに再現性のあるプラグイン接続と試験素子の間の電気的接触接続を可能にすることが明らかになった。この実施形態の特に有利な点は、実施例1の窒化クロムによりコーティングされた接触エリアと比較して非常に高い接触信頼性(50オームを超える値はなかった)に加えて、測定された境界抵抗の値がかなり低いことである。
【0071】
図5cは、120 nmの窒化チタンアルミニウムからなる硬い材料によりコーティングされた接触エリアを有する本発明の接触素子について測定された境界抵抗の度数分布を示す。
【0072】
境界抵抗の測定により、50オームよりも大きい値は観察されなかったことが明らかに示された。また、ほとんどすべての測定された抵抗値が1〜3オームの間であり、実施例1(図5a)の硬い材料によりコーティングされていない接触エリアと比較してかなり低い。したがって、上記の接触接続は多くのプラグイン操作において再現性のある正確な電気信号の転送のために使用することができる。したがって、試験素子分析機において上記の本発明の接触接続を使用することは、上記のシステムにおいて、特に多数回の挿入の後でさえも、再現性のある正確な分析物の測定を実施することができるという利点を有する。窒化チタンアルミニウムをコーティングされた接触エリアを有する接触素子の場合の非常に低い境界抵抗は、実際の測定信号が境界抵抗により影響されることがほとんどないので、低い測定信号によっても特に正確な分析物の測定を実施することが可能であるという別の利点を有する。
【0073】
実施例3:多数回のプラグインプロセスの後の実施例1および2の境界抵抗の変化
長期間にわたる、多くの測定サイクルに対する試験素子分析システムの再現性のある使用のために、境界抵抗が可能な限り一定で、最初は高く次いで減少する抵抗値または最初は低く次いで増加する抵抗値を特徴とする極端なランニングインまたは摩耗反応を示さないことも重要である。
【0074】
電解研磨されたパラジウムから作られた接触エリアを有する対照のプラグイン接続には、期間全体に渡って、毎回新しい試験素子を480回挿入した場合に「無限」の抵抗値を特徴とする散発するする接触の失敗が見られた。上記のランダムに散発する接触の失敗は、測定エラーが常にある確率で予想されるので、特に測定結果の再現性に不利である。
【0075】
480 nmの窒化クロムによりコーティングされた接触エリアを有するプラグイン接続では、挿入の回数が増加するにつれて境界抵抗の増大が見られた。したがって、上記の試験システムにおいて、測定の一定の高い精度を確保するために、ある回数の測定の後に硬い材料によりコーティングされた接触素子を取り替えるのが有利である。この目的から、本発明はさらに上記の硬い材料によりコーティングされた接触素子および接触接続、ならびに上記の接触素子および硬い材料によりコーティングされた接触接続を有する評価装置を包含する。
【0076】
120 nmの窒化チタンアルミニウムによりコーティングされた接触エリアを有するプラグイン接続は、まず比較的高い境界抵抗を示した後、挿入の回数が増加するにつれて非常に低い抵抗レベルに減少する。この観察は、窒化クロムコーティングとは対照的に、窒化チタンアルミニウムコーティングを使用することにより、特に多数回挿入した後でさえも非常に再現性が高く、低い境界抵抗を達成することができること、および上記接触エリアのコーティングは、非常に長期間にわたって、非常に多数の測定に使用しても正確な分析物の測定が可能でなくてはならない試験素子分析システムに特に適していることを示している。
【0077】
これは、硬い材料の表面の材料を選択することにより、試験素子分析システムを、特に使用期間および分析物の測定の正確さの点でそれぞれの適用分野の要求に適合させることが可能であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明の試験素子分析システムの部分的断面図である。
【図2】図2は、電気化学的分析法のための試験素子の例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の接触素子の詳細図である。
【図4】図4は、接触エリアの部分に硬い材料をコーティングした接触素子の詳細な断面図である。
【図5】図5は、硬い材料でコーティングされていない、電解研磨したパラジウムからなる接触エリアを有する接触素子(図5a)、窒化クロムによりコーティングされた接触エリアを有する接触素子(図5b)、または窒化チタンアルミニウムによりコーティングされた接触エリアを有する接触素子(図5c)と、それぞれに対して50 nmの金からなる接触エリアを有する新しい試験素子との間の実験的に測定された境界抵抗の度数分布を示す図である。
【0079】
図中の番号は、次のものを示す。
【0080】
1 分析システム
2 評価装置
3 試験素子
4 電極
5 試験素子ホルダー
6 バネ素子
7 測定ゾーン
8 サンプルの液滴
9 サンプル適用ゾーン
10 輸送ゾーン
11 試験素子の接触エリア
12 接触素子の接触エリア
13 導電経路
14 接触素子
15 測定および評価電子機器
16 プリント基板
17 特定のIC
18 基板材料
19 中間層
20 硬い材料の層
21 試薬層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1個の測定ゾーンおよび電気伝導性の接触エリア、特に電極および導電経路を有する試験素子、分析試験のために測定ゾーンに運び入れられる試験されるサンプル、および
- サンプルを含む試験素子を位置決めするための試験素子ホルダーおよび測定ゾーンにおける分析物に特徴的な変化を測定するための測定装置を有する評価装置、試験素子の接触エリアと試験素子ホルダーの接触エリアの間の電気的接触を可能にする接触エリアを有する接触素子を含む上記試験素子ホルダー
を含み、これらの接触エリアの一つが電気伝導性の硬い材料の表面を有することを特徴とする、サンプル、特に体液の分析試験のための試験素子分析システム。
【請求項2】
試験素子ホルダーの接触素子の接触エリアが電気伝導性の硬い材料の表面を与えられていることを特徴とする、請求項1に記載の試験素子分析システム。
【請求項3】
硬い材料の表面に向かい合う接触エリアが、硬い材料の表面の材料とは異なる材料からなることを特徴とする、前記の請求項のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。
【請求項4】
硬い材料の表面に向かい合う接触エリアが、硬い材料の表面の材料よりも低い硬度を有する材料、特に貴金属または貴金属を含有する合金からなることを特徴とする、前記の請求項のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。
【請求項5】
試験素子ホルダーの接触素子がプラグイン接触、スプリング接触またはクリップ接触の形であることを特徴とする、前記の請求項のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。
【請求項6】
硬い材料の表面が金属窒化物、特に窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化クロムまたは窒化ジルコニウムからなることを特徴とする、前記の請求項のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。
【請求項7】
硬い材料の表面が、基板材料を電気伝導性の硬い材料によりコーティングすることにより製造されることを特徴とする、前記の請求項のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。
【請求項8】
基板材料と硬い材料の表面の間に付加的な中間層、特に結合または保護層が存在することを特徴とする、請求項7に記載の試験素子分析システム。
【請求項9】
硬い材料のコーティングの層の厚さが2μm未満、好ましくは1μm未満、特に好ましくは500 nm未満であることを特徴とする、請求項7〜8のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。
【請求項10】
試験素子の接触エリアと試験素子ホルダーの接触エリアの間の電気的境界抵抗が50オーム未満であることを特徴とする、前記の請求項のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。
【請求項11】
分析物が電気的および特に電気化学的方法を使用して測定されることを特徴とする、前記の請求項のいずれか1項に記載の試験素子分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−535660(P2007−535660A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502256(P2007−502256)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002397
【国際公開番号】WO2005/088319
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT