説明

硬化性含フッ素共重合体組成物

【課題】フッ素樹脂塗膜の優れた特徴(耐薬品性、耐侯性等)を有し、加えて長期にわたる撥水撥油性や離型性、剥離性、保存安定性に優れる新規な含フッ素共重合体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の含フッ素共重合体組成物は、重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%、炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体を0.1〜30モル%、水酸基含有不飽和単量体を1〜50モル%、含み構成される含フッ素共重合体に、平均粒子径0.01〜10μmのシリカ微粉末が含有され、そのシリカ微粉末の量が該含フッ素共重合体100重量部に対して1〜100重量部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油性、離型性、剥離性、保存安定性に優れ、フッ素樹脂の特徴である耐薬品性、耐侯性等の優れた性質を兼備した新規な含フッ素共重合体、ならびにそれを主成分とする含フッ素共重合体組成物、フッ素樹脂塗料及びワニスに関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤可溶型のフッ素樹脂塗料は、一般的にヒドロキシルアルキルビニルエーテルと、フルオロオレフィン、または必要に応じてアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等を共重合させて得られる。かかる含フッ素共重合体をベースとする塗料は、一般的な有機溶剤への溶解性を得るために、炭化水素モノマーを50%以上含んでいる。そのためフッ素樹脂中のフッ素含有量が低下し、含フッ素樹脂に求められる撥水性、耐汚染性等の塗膜特性が充分に得られない。一方、撥水撥油剤としてパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体と、シリル基を含有する単量体との共重合体が同用途のために検討されているが、その共重合体の主骨格にフッ素原子を有していないために充分な耐侯性が達成されていない。
【0003】
また、該含フッ素共重合体に少量のシリコーンオイル等の有機珪素化合物を混合することにより、撥水撥油性、離型性、剥離性を向上させることが提案されているが、長期にわたり撥水撥油性を維持することは難しく、さらに用途によっては、シリコーンオイルが塗膜表面よりブリードアウトしてしまうため、シリコーンオイルの使用ができないものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点を解決する含フッ素共重合体を提供すること、つまりフッ素樹脂塗膜の優れた特徴(耐薬品性、耐侯性等)を有し、長期にわたる撥水撥油性や離型性、剥離性、保存安定性に優れる新規な含フッ素共重合体とその製造方法を提供し、さらにそのような含フッ素共重合体を主成分として使用するフッ素樹脂塗料、ワニス等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記のような問題点を解決し、本発明の目的を達成すべく鋭意研究、検討を重ねた結果、フルオロオレフィンと、炭素数1〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体と、水酸基含有不飽和単量体との共重合体が、長期にわたる撥水撥油性、離型性、剥離性に優れることを見出した。またそのような共重合体に対して共重合のための一成分としてシクロヘキシル基含有アクリレート系単量体をさらに加えることにより、保存安定性が増すことも見出した。本発明は、これらの発見事実を基礎として考案され、完成された。
【0006】
すなわち、本発明は、重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%;炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体を0.1〜30モル%;水酸基含有不飽和単量体を1〜50モル%;含むことを特徴とした長期にわたる撥水撥油性、離型性、剥離性、耐薬品性、耐侯性に優れた含フッ素共重合体に関するものである。
【0007】
さらに本発明は、重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%;炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体を0.1〜30モル%;水酸基含有不飽和単量体を1〜50モル%;シクロヘキシル基含有アルキルアクリレート系単量体を0.5〜20モル%;含むことを特徴とした長期にわたる撥水撥油性、離型性、保存安定性、耐薬品性、耐侯性に優れた含フッ素共重合体に関するものである。
【0008】
さらに本発明は、重合単位として、上記の3成分または4成分に加えて、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び不飽和カルボン酸の内から選択された1種以上の重合体単位を、さらに残部として含み構成されることを特徴とする含フッ素共重合体に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の共重合体を構成する重合単位としてのフルオロオレフィンとしては、分子中に1つ以上のフッ素原子を有するオレフィンであって、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0010】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としての、炭素原子数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体の具体例としては:
CH2=CHCOOCH2CH2(CF24
CH2=CHCOOCH2CH2(CF26
CH2=CHCOOCH2CH2(CF28
CH2=CHCOOCH2CH2(CF210
CH2=CHCOOCH2CH2(CF212
CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF24
CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF26
CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF28
CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF210
CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF212
CH2=CH(CF26
CH2=CH(CF28
CH2=CH(CF210
CH2=CH(CF212
等が挙げられる。特に、CH2=CHCOOCH2CH2(CF28F(2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート)、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF28F(2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート)が好ましい。これらのパーフルオロアルキル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせてもよい。
【0011】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としての水酸基含有不飽和単量体の具体例としては、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、グリセロールα−モノアリルエーテル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が好適である。これらの水酸基含有不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0012】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としてのシクロアルキル基含有アルキルアクリレート系単量体の具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられるが、特にメタクリル酸シクロヘキシルが好ましい。
【0013】
本発明の共重合体を構成する重合単位としてのアルキルビニルエーテルの具体例としては、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0014】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としてのアルキルアリルエーテルの具体例としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、n−プロピルアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0015】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としてのアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。
【0016】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としてのメタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0017】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としての不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、イタコン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸等が挙げられる。
【0018】
本発明の含フッ素共重合体は、長期における撥水撥油性、離型性、剥離性、耐薬品性、耐候性に優れた塗膜を形成することができるが、さらにこれらの重合単位に加えて、使用目的などに応じて20モル%を超えない範囲で他の共重合可能な単量体単位を含むこともできる。このような共重合可能な単量体として、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類;酢酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のアルカンカルボン酸とビニルアルコールとのエステル類;が挙げられる。
【0019】
本発明の含フッ素共重合体は、その一態様において必須成分として、フルオロオレンフィンが15〜85モル%、炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体が0.1〜30モル%、水酸基含有不飽和単量体が1〜50モル%含まれることを特徴とし、またさらなる態様において、それらに加えてシクロヘキシル基含有アルキルアクリレート系単量体が0.5〜20モル%含まれていることを特徴とする。
【0020】
本発明の含フッ素共重合体において、重合単位フルオロオレフィンが15モル%より少ない場合には、塗料ベースとして使用したときに、十分な耐汚染性が得られず好ましくない。またそれが85モル%より多い場合には、各種溶剤に対する溶解性が低下し好ましくない。より好ましくは、30〜80モル%である。
【0021】
また、炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体の割合が、0.1モル%より少ない場合には、長期における十分な撥水撥油性が得られず好ましくない。また30モル%より多い場合には、十分な耐薬品性、耐候性が得られず好ましくない。より好ましくは、0.5〜20モル%である。
【0022】
また水酸基含有不飽和単量体の割合が1モル%より少ない場合には、硬化塗膜の十分な耐薬品性が得られず好ましくない。それが50モル%より多い場合には、樹脂中のフッ素含量が低下し、十分な耐候性が得られず好ましくない。より好ましくは5〜40モル%である。
【0023】
そしてシクロヘキシル基含有アルキルアクリレート系単量体が0.5モル%より少ない場合には、良好な保存安定性が得られず好ましくない。またそれが20モル%より多い場合には、共重合が困難となり好ましくない。より好ましくは、1〜15モル%である。
【0024】
本発明の含フッ素共重合体は、所定割合の単量体混合物を重合開始剤をもちいて共重合させることにより製造することができる。
【0025】
このための重合開始剤としては、重合形式や所望に応じて使用される溶媒の種類に依存して、油溶性のものあるいは水溶性のものを適宜に選択、採用する。
【0026】
油溶性開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル型過酸化物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシジカーボネート;ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。
【0027】
水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤、さらにはこれらに少量の鉄、第一鉄塩、硝酸銀等を共存させた無機系開始剤やコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド等の二塩基酸塩の有機系開始剤等が用いられる。
【0028】
これらの重合開始剤の使用量は、その種類、共重合反応条件等に応じて適宜に選定されるが、通常は使用する単量体全量に対して、0.005〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲で選ばれる。
【0029】
また重合方法については特に制限はなく、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等を用いることができるが、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、キシレン等の芳香族炭化水素類、t−ブタノール等のアルコール類、フッ素原子を1個以上有する飽和ハロゲン化炭化水素類等を溶媒とする溶液重合法が好ましい。
【0030】
本発明の含フッ素共重合体を溶液重合法により得るための特に好ましい溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、n−ブタノール、t−ブタノール、メチルエチルケトンが挙げられる。
【0031】
水溶性溶媒中で共重合させる場合には、通常分散安定剤として懸濁剤や乳化剤を用い、かつ塩基性緩衝剤を添加して、重合中の反応液のpH値を4以上、好ましくは6以上にすることが望ましい。それぞれの共重合反応における反応温度は、通常−30℃〜150℃の範囲内で重合開始剤や重合媒体の種類に応じて、適宜選ばれる。例えば、溶媒中で共重合を行う場合には、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜90℃の範囲で選ばれる。また反応圧力については、特に制限はないが、通常0.1〜100kg/cm2、好ましくは1.0〜50kg/cm2の範囲で選ばれる。さらに該共重合反応は、適当な連鎖移動剤を添加して行うことができる。
【0032】
本発明の含フッ素共重合体は、硬化部位として水酸基を有するので、多価イソシアネート類を用いて常温で硬化させることができる。この目的のための多価イソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの無黄変性ジイソシアネートやその付加物、イソシアヌレート類を有する多価イソシアネートが好ましく挙げられるが、これらの中でイソシアヌレート類を有する多価イソシアネートが特に有効である。イソシアネート類を用いて常温硬化を行わせる場合には、ジブチル錫ジラウレート等の公知触媒の添加によって硬化を促進させることもできる。
【0033】
さらに、メラミン硬化剤、尿素樹脂硬化剤、多塩基酸硬化剤などを用いて加熱硬化させることもできる。そのようなメラミン硬化剤としては、例えば、ブチル化メラミン、メチル化メラミン、エポキシ変性メラミン等が挙げられ、用途に応じて各種変性度のものが適宜用いられ、また自己縮合度も適宜選ぶことができる。尿素樹脂硬化剤としては、例えば、メチル化尿素樹脂やブチル化尿素樹脂等が挙げられ、多塩基酸硬化剤としては、例えば、長鎖脂肪族ジカルボン酸、芳香族多価カルボン酸類及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0034】
さらに、ブロック化多価イソシアネート類も硬化剤として好適に用いることができる。また、メラミン硬化剤または尿素樹脂硬化剤の使用に際しては、酸性触媒の添加によって硬化を促進させることもできる。
【0035】
また、本発明の含フッ素共重合体が硬化部位としてエポキシ基を含有する場合、通常の硬化性エポキシ塗料に用いられている硬化剤、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のような脂肪族アミン類またはその変性物、メタフェニレンジアミン、p−p’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノフェニルスルフォン等のような芳香族アミン類またはその変性物、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水シュウ酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピメリン酸等の多価のカルボン酸またはそれらの無水物等が挙げられる。
【0036】
本発明の含フッ素共重合体を主成分とする硬化性フッ素樹脂塗料を製造する場合には、種々の溶剤が使用可能であり、例えば、キシレンやトルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチルや酢酸ブチル等の酢酸エステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、t−ブタノールやn−ブタノール等のアルコール類、市販の各種シンナー類等が挙げられるが、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、t−ブタノール、n−ブタノールが特に好ましい。また必要に応じてアクリル樹脂、エポキシ樹脂を添加することも可能であり、これら他樹脂に対して含フッ素共重合体を5〜80重量%、特に20〜60重量%含むように調節して使用するのが好ましい。
【0037】
また、本発明の含フッ素共重合体よりなる塗料に金属酸化物微粉末を添加することにより、著しく離型性や剥離性に優れた塗料組成物を得ることができる。使用する金属微粉末の平均粒子径は0.1〜10μmであることがより好ましい。平均粒子径が0.1μmよりも小さい場合には、充分な離型性や剥離性が得られず好ましくない。平均粒子径が10μmよりも大きい場合には、塗料組成物中で凝集が起こり易くなり好ましくない。
【0038】
また、金属酸化物微粉末が本発明の含フッ素共重合体100重量部に対して1重量部より少ない場合には、良好な離型性の改善が得られない。また100重量部よりも多い場合には塗膜の耐久性が低下し好ましくない。より好ましくは、含フッ素共重合体100重量部に対して金属酸化物微粉末が5〜90重量部である。
【0039】
本発明において使用し得る金属酸化物微粉末の具体例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化鉄、酸化珪素(シリカ)、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられるが、特に酸化珪素が好ましい。
【0040】
本発明のために使用し得る市販のシリカ微粉末としては、SYLYSIA 350、440、445、446[富士シリシア化学(株)製]、Nipsil E−150K、E−220、E−200A、K−300[日本シリカ工業(株)製]等が挙げられるが、これはそれぞれ単独でもちいてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
【0041】
本発明の含フッ素共重合体と溶剤との混合は、ボールミル、ペイントシェイカー、サンドミル、三本ロールミル、ニーダー等の通常の塗料化に用いられる種々の機器を用いて行うことができる。この際、必要に応じてアクリル樹脂、顔料、分散安定剤、粘度調節剤、レべリング剤、紫外線吸収剤等を添加し得る。また、該含フッ素共重合体溶液と金属酸化物微粉末の混合や、該含フッ素共重合体溶液とシリカ微粉末の混合においても、上記方法を用いることができる。
【実施例】
【0042】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
内容積1Lのステンレス製、攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、フッ化ビニリデン(以下VDFと略す)52g、テトラフルオロエチレン(以下TFEと略す)81g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(以下HBVEと略す)47.0g、エチルビニルエーテル(以下EVEと略す)28.2g、n−ブチルビニルエーテル(以下BVEと略す)27.1g、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF28F7.0g、酢酸ブチル400g、及びt−ブチルパーオキシピバレート1.2gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。
【0044】
その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体の収量は219g、共重合体収率は91%であった。無水酢酸によるアセチル化法によって測定したこの共重合体の水酸基価は104mgKOH/g樹脂、燃焼法によって測定したフッ素含有量は38wt%、GPCで測定した数平均分子量は1.9×104であった。
【0045】
得られた重合液を濃縮し、50%の酢酸ブチル溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を次の方法で調べた。これらの結果を[表1]に示す。
[基材との密着性]上記50%溶液に該共重合体の水酸基/NCO基比が1/1となるようにコロネートHX[日本ポリウレタン工業(株)製]を加え、JIS−G3141鋼板上にアプリケーターにより塗布し、80℃で24時間硬化した厚さ25μmの試験片を作成し、JIS−K5400 6.15(ゴバン目セロテープ(登録商標)試験)により測定した。
[鉛筆硬度]JIS−K5400 6.14(鉛筆引っかき試験)により試験した。
[耐酸性]10%HCl溶液による24時間スポットテスト後の塗膜外観を目視観察し、下記の評価をした。
【0046】
◎:異常なし
○:ほとんど変化なし
△:やや侵される
×:侵される
[耐アルカリ性]10%NaOH溶液による24時間スポットテスト後の塗膜外観を目視観察し、下記の評価をした。
【0047】
◎:異常なし
○:ほとんど変化なし
△:やや侵される
×:侵される
[撥水性]水の接触角度(単位:°)で評価した。
[撥油性]n−デカンの接触角度(単位:°)で評価した。
【0048】
[実施例2]
内容積1Lのステンレス製、攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF96g、TFE84g、メタクリル酸シクロヘキシル(以下CHMAと略す)15.1g、HBVE41.8g、BVE6.0g、CH2=CHCOOCH2CH2(CF28F77.7g、酢酸ブチル400g、及びt−ブチルパーオキシピバレート1.6gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体の収量は298g、共重合体収率は93%であった。無水酢酸によるアセチル化法によって測定したこの共重合体の水酸基価は68mgKOH/g樹脂、燃焼法によって測定したフッ素含有量は38wt%、GPCで測定した数平均分子量は2.1×104であった。
【0049】
得られた重合液を濃縮し、50%の酢酸エチル溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を実施例1と同様に調べた。これらの結果を[表1]に示す。
【0050】
[実施例3]
内容積1Lのステンレス製、攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF50g、TFE78g、アクリル酸メチル(以下MAと略す)9.4g、アクリル酸(以下AAと略す)9.4g、HBVE45.2g、EVE18.7g、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF28F41.9g、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF210F49.3g、t−ブタノール200g、n−ブタノール200g、及びt−ブチルパーオキシピバレート1.5gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体の収量は277g、共重合体収率は92%であった。得られた共重合体の水酸基価は79mgKOH/g樹脂、酸価は26mgKOH/g樹脂、フッ素含有量は30wt%、GPCで測定した数平均分子量は2.0×104であった。
【0051】
得られた重合液を濃縮し、50%のt−ブタノール/n−ブタノール溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を実施例1と同様に調べた。これらの結果を[表1]に示す。
【0052】
[実施例4]
[表1]に示す単量体成分を用いて前記実施例の操作に準拠して共重合体を製造し、その特性を同様に調べた。結果を[表1]に示す。
【0053】
[比較例1]
内容積1Lのステンレス製、攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF96g、TFE84g、HBVE52.2g、EVE15.1g、酢酸エチル400g、及びt−ブチルパーオキシピバレート1.2gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体の収量は230g、共重合体収率は93%であった。得られた共重合体の水酸基価は110mgKOH/g樹脂、フッ素含有量は49wt%、GPCで測定した数平均分子量は1.9×104であった。
【0054】
得られた重合液を濃縮し、50%の酢酸エチル溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を実施例1と同様に調べた。結果を[表1]に示す。
【0055】
[比較例2]
比較例1で得られた50%酢酸エチル溶液に該共重合体に対して5%のTSF410[東芝シリコーン(株)製]を加え、前記比較例と同様に試験片を作成し、これらの特性を調べた。結果を[表1]に示す。
【0056】
[実施例5]
内容積1Lのステンレス製、攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF50g、TFE78g、CHMA17.5g、AA9.4g、HBVE45.2g、EVE18.7g、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF28F41.9g、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF210F49.3g、t−ブタノール150g、n−ブタノール250g、及びt−ブチルパーオキシピバレート1.6gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体の収量は282g、共重合体収率は91%であった。得られた共重合体の水酸基価は78mgKOH/g樹脂、酸価は26mgKOH/g樹脂、フッ素含有量は29wt%、GPCで測定した数平均分子量は2.0×104であった。
【0057】
得られた重合液を濃縮し、50%のt−ブタノール/n−ブタノール溶液とした。上記共重合体の50%溶液の保存安定性を下記の方法で調べた。結果を[表2]に示す。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を実施例1と同様に調べた。これらの結果を[表2]に示す。
[保存安定性]上記50%溶液をガラス瓶に入れ、密栓した後50℃に保ち、溶液の粘度変化を経時的に調べたところ60日後も粘度の増加は見られず、初期粘度のままであった。
【0058】
[実施例6〜8]
[表2]に示す単量体成分を用いて前記実施例の操作に準拠して共重合体を製造し、これらの特性を同様に調べた。結果を[表2]に示す。
【0059】
[比較例3]
内容積1Lのステンレス製、攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF48g、TFE100g、CHMA12.6g、HBVE29.0g、EVE9.0g、BVE30.1g、酢酸エチル400g、及びt−ブチルパーオキシピバレート1.1gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体の収量は208g、共重合体収率は91%であった。得られた共重合体の水酸基価は67mgKOH/g樹脂、フッ素含有量は46wt%、GPCで測定した数平均分子量は1.8×104であった。
【0060】
得られた重合液を濃縮し、50%の酢酸エチル溶液とした。上記50%溶液の保存安定性、また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を前記実施例と同様に調べた。結果を[表2]に示す。
【0061】
[比較例4]
内容積1Lのステンレス製、攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF86g、TFE84g、HBVE52.2g、BVE21.0g、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF28F80.6g、酢酸ブチル400g、及びt−ブチルパーオキシピバレート1.6gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体の収量は298g、共重合体収率は92%であった。得られた共重合体の水酸基価は85mgKOH/g樹脂、フッ素含有量は36wt%、GPCで測定した数平均分子量は2.1×104であった。
【0062】
得られた重合液を濃縮し、50%の酢酸ブチル溶液とした。上記50%溶液の保存安定性を実施例5と同様に調べたところ、5日でゲル化した。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を実施例5と同様に調べた。これらの結果を[表2]に示す。
【0063】
[実施例9〜12]
容器に、[表3]に示す実施例1〜4で得られた含フッ素共重合体50%溶液とシリカ微粉末と酢酸エチルを秤量し、ペイントシェーカーにて15分攪拌を行い、含フッ素共重合体組成物溶液を得た。次に該含フッ素共重合体組成物溶液に該共重合体の水酸基/NCO基比が1/1となるようにコロネートHX[日本ポリウレタン工業(株)製]を加え、コロナ放電処理済みのPET上にアプリケーターにより塗布し、80℃で24時間硬化した厚さ5μmの試験片を作成した。塗膜特性を次の方法で調べた。結果を[表3]に示す。
[撥水性] 水の接触角度(単位:°)で評価した。
[撥油性]n−デカンの接触角度(単位:°)で評価した。
[剥離強力]塗布面に、ポリエステルテープ[No.31B:日東電工(株)製]を張り付けた試験片を用意する。該試験片の上方より20g/cm2の荷重を掛けて圧着させ、70℃で24時間放置した後の剥離強力(単位:g/50mm)を測定する。
【0064】
[比較例5〜6]
容器に、[表3]に示す比較例1で得られた含フッ素共重合体50%溶液とシリカ微粉末と酢酸エチルを秤量し、ペイントシェーカーにて15分攪拌を行い、含フッ素共重合体組成物溶液を得た。次に、上記実施例と同様な操作を行い、試験片の特性を調べた。結果を[表3]に示す。
【0065】
[実施例13〜16]
容器に、[表4]に示す実施例5〜8で得られた含フッ素共重合体50%溶液とシリカ微粉末と酢酸エチルを秤量し、ペイントシェーカーにて15分攪拌を行い、含フッ素共重合体組成物溶液を得た。次に該含フッ素共重合体組成物溶液に該共重合体の水酸基/NCO基比が1/1となるようにコロネートHX[日本ポリウレタン工業(株)製]を加え、コロナ放電処理済みのPET上にアプリケーターにより塗布し、80℃で24時間硬化した厚さ5μmの試験片を作成した。塗膜特性を実施例10〜14と同様に調べた。結果を[表4]に示す。
【0066】
[比較例7〜8]
容器に、[表4]に示す比較例3〜4で得られた含フッ素共重合体50%溶液とシリカ微粉末と酢酸エチルを秤量し、ペイントシェーカーにて15分攪拌を行い、含フッ素共重合体組成物溶液を得た。次に、上記実施例と同様な操作を行い、試験片の特性を調べた。結果を[表4]に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

本発明は以下の態様を含む。
1. 重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%;炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体を0.1〜30モル%;水酸基含有不飽和単量体を1〜50モル%;含み構成されることを特徴とする含フッ素共重合体。
2. 重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%;炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体を0.1〜30モル%;水酸基含有不飽和単量体を1〜50モル%;シクロヘキシル基含有アルキルアクリレート系単量体を0.5〜20モル%;含み構成されることを特徴とする含フッ素共重合体。
3. アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び不飽和カルボン酸の内から選択された1種以上の重合単位を、さらに残部として含み構成されることを特徴とする1または2記載の含フッ素共重合体。
4. 溶媒として、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、n−ブタノール、t−ブタノール、メチルエチルケトンの内から選択された1種以上を使用して、重合単位を溶液重合法で共重合させることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の含フッ素共重合体の製造方法。
5. 1〜3のいずれかに記載の含フッ素共重合体と、平均粒子径0.01〜10μmの金属酸化物の微粉末とが含有され、その金属酸化物の微粉末の量が該含フッ素共重合体100重量部に対して1〜100重量部であることを特徴とする含フッ素共重合体組成物。
6. 1〜3のいずれかに記載の含フッ素共重合体または5記載の含フッ素共重合体組成物よりなるワニスまたは塗料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%、炭素数4〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有単量体を0.1〜30モル%、水酸基含有不飽和単量体を1〜50モル%、含み構成される含フッ素共重合体に、平均粒子径0.01〜10μmのシリカ微粉末が含有され、そのシリカ微粉末の量が該含フッ素共重合体100重量部に対して1〜100重量部であることを特徴とする含フッ素共重合体組成物。
【請求項2】
請求項1記載の含フッ素共重合体組成物を構成する含フッ素共重合体が、さらにシクロヘキシル基含有アルキルアクリレート単量体を0.5〜20モル%含み構成される含フッ素共重合体である、含フッ素共重合体組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の含フッ素共重合体組成物を構成する含フッ素共重合体が、さらに残部としてアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び不飽和カルボン酸の内から選択された1種以上の重合単位を含み構成される含フッ素共重合体である、含フッ素共重合体組成物。

【公開番号】特開2011−84745(P2011−84745A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273799(P2010−273799)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【分割の表示】特願2000−119391(P2000−119391)の分割
【原出願日】平成12年4月20日(2000.4.20)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】