説明

硬化性樹脂組成物およびその製造方法

【課題】本発明は、フェノール化合物含有植物性油の酸化重合体を含有する、塗工性、効果膜の物性共に優れた硬化性樹脂組成物を提供することにある。さらに、本発明は、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、フォトレジストの原材料、成型材料、積層材の原材料、粘着材の原材料、結合材の原材料、注型用フェノール樹脂の原材料、繊維板用フェノール樹脂の原材料として利用可能な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合してなる樹脂組成物(A)と、反応性希釈剤(B)とを必須成分として含有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、硬化膜の物性に優れる硬化性樹脂組成物に関する。本発明の硬化性樹脂組成物は、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、フォトレジストの原材料、成型材料、積層材の原材料、粘着材の原材料、結合材の原材料、注型用フェノール樹脂の原材料、繊維板用フェノール樹脂の原材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
フェノール類を原材料に含んだ酸化重合体は種々の製造方法が知られているが、下記特許文献1には、フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物およびその製造方法が報告されている。しかし、この硬化性樹脂組成物から作製された硬化膜は低硬度であり、用途が制限されている。
【0003】
また、この硬化性樹脂組成物は、無溶剤の状態では流動性に乏しく、そのままでは塗液としての利用は困難である。流動性付与の為には有機溶剤を添加する方法が考えられるが、硬化の際に有機溶剤が大気中に拡散し、環境面で負荷がかかることとなる。
【特許文献1】WO01/000702A1号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フェノール化合物含有植物性油の酸化重合体を含有する、塗工性、硬化膜の物性共に優れた硬化性樹脂組成物を提供することにある。さらに、本発明は、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、フォトレジストの原材料、成型材料、積層材の原材料、粘着材の原材料、結合材の原材料、注型用フェノール樹脂の原材料、繊維板用フェノール樹脂の原材料として利用可能な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合してなる樹脂組成物(A)と、反応性希釈剤(B)とを必須成分として含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0006】
さらに本発明は、反応性希釈剤(B)が、動植物性油、動植物性油の誘導体、またはこれらの混合物であることを特徴とする上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0007】
さらに本発明は、反応性希釈剤(B)が、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステル、および不飽和脂肪族アミンからなる群から少なくとも1種類以上選択されたものであることを特徴とする上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0008】
さらに本発明は、樹脂組成物(A)と反応性希釈剤(B)との重量比が、1/9〜9/1であることを特徴とする上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
さらに本発明は、有機溶剤中で、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合して、樹脂組成物(A)を得た後、反応性希釈剤(B)を加えて攪拌し、次いで、ストリッピングにより有機溶剤を除くことを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0010】
さらに本発明は、有機溶剤中で、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合して、樹脂組成物(A)を得た後、ストリッピングにより有機溶剤を除き、次いで、反応性希釈剤(B)を加えて攪拌することを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を、反応性希釈剤(B)の存在下で酸化重合することを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、フェノール化合物含有植物性油の酸化重合体を含有する、塗工性、硬化膜の物性共に優れた硬化性樹脂組成物を提供することができた。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、フォトレジストの原材料、成型材料、積層材の原材料、粘着材の原材料、結合材の原材料、注型用フェノール樹脂の原材料、繊維板用フェノール樹脂の原材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合してなる樹脂組成物(A)と、反応性希釈剤(B)とを必須成分とする硬化性樹脂組成物である。
【0014】
不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油としては、種々のものが知られており[例えば、Chem.Soc.Rev.,8,499(1979)に示されているものを挙げることができる]、Anacardicae,Gymnospermae,Compositae, Lichens,Proteacaeの各属から得られるものを使用することができる。植物性油に含まれるフェノール化合物の具体例としては, アナカルド酸、アナギガン酸、ペランジュ酸、ギンクゴ酸、ギンクゴリン酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドール、ウルシオール、チチオール、レンゴール、ラッコール等を挙げることができる。中でも、ウルシオール、チチオール、ラッコールが好ましく、より好ましくはカルダノールである。本発明に用いられるこれらの植物油中の各種のフェノール化合物の含有量は合計で通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。このような植物性油としては、具体的にはカシュー樹(Anacardium occidentale)より得られるカシューナット殻液( Cashew Nut Shell Liquid)をあげることができる。
【0015】
このカシューナット殻液は、カシュー樹に結実するカシューナットから抽出される高粘度な液体全般が含まれる。カシューナット殻液成分としては、特に制限はなく、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドールのごとき化合物が挙げられるが、好ましくは、アナカルド酸を主成分とするカシュー油を高温処理して得られるカルダノールを主成分とするカシューナット殻液が挙げられる。これらの成分は、一価のフェノールのアルキルあるいはアルケニル誘導体であり、側鎖アルケニル基は、モノエン、ジエン、トリエンから成るが、本発明ではこれらの混合物として使用しても何ら差し支えはない。本発明では、カシューナットから抽出される高粘度な液体をそのまま使用しても良いし、精製または変性などの処理をして使用しても良い。
【0016】
また、本発明の製造方法において、フェノール化合物を含有する植物性油としてはカシューナット殻液のような天然由来の、フェノール化合物を含有する植物油を用いることが好ましい。
【0017】
さらに、上記の植物性油に加えて様々な酸化重合性化合物、例えば、フェノール類、ナフトール類、芳香族アミン類を含有させて共重合反応を行うことが可能である。共重合反応に使用されるフェノール類、ナフトール類、芳香族アミン類およびその使用量は、得られるフェノール化合物を含有する植物性油重合体の使用目的に応じて要求される様々な物性等において適宜選択することが可能であり、単独あるいは2種以上を使用することができる。このような共重合反応成分として使用する化合物の割合は任意であるが、フェノール化合物を含有する植物性油に対して、通常1000重量%以下、好ましくは500重量%以下であり、特に好ましくは100重量%以下である。
【0018】
このようなフェノール類の具体例としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、2,4,6−ジメチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノールなどのアルキルフェノール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ビロガロール、ウルシオール、チチオール、ラッコールなどの多価フェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−フッ化フェノール、m−フッ化フェノール、p−フッ化フェノール等のハロゲン化フェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール等のアミノフェノール、ビスフェノールA 、p−(α−クミル)フェノール、p−フェニルフェノール、グアヤコール、グエトール、フェノール等を挙げることができる。ナフトール類の具体例としては、α−ナフトール、β−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン等を挙げることができる。
【0019】
芳香族アミン類の具体例としては、アニリン、o−アニシジン、p−アニシジン、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、p−クレシジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、スルファニル酸等を挙げることができる。
【0020】
本発明における、樹脂組成物(A)は、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合して得られるが、この反応の実施の態様は特に限定されない。例えば、無溶媒重合、溶液重合の他に、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の方法を用いることができる。
【0021】
本発明におけるフェノール骨格の酸化重合においては、遷移金属錯体などの公知の酸化重合触媒を用いることができる。また、酸化重合は、酸化剤を添加することで行う。重合温度は、フェノール化合物を含有する植物性油の側鎖の脂肪族不飽和二重結合が熱による変成を受けない温度範囲で、かつ、反応媒体が液状を保つ範囲である。このような温度範囲は、フェノール化合物を含有する植物性油あるいは共重合モノマーが共存する場合は共重合モノマーの融点以上の温度が必要である。好ましい温度範囲は、0℃〜180℃であり、より好ましくは0℃〜150℃である。さらに、0〜40℃の範囲の低い温度条件でも重合反応を行うことができる。本発明で得られる重合体の分子量は、好ましくは数平均分子量350〜100,000の範囲、とくに好ましくは数平均分子量500〜30,000の範囲が挙げられる。
【0022】
本発明で使用する遷移金属錯体は、単独でまたは混合して用いることができる。これらは任意の量を使用することができ、用いる遷移金属錯体の触媒活性により適宜加減すればよいが、一般的にはフェノール化合物を含有する植物性油に対して0.1〜10.0重量% 、好ましくは0.2〜5.0重量% 、さらに好ましくは0.5〜3.0重量%を使用することができる。遷移金属錯体が、0.1重量%未満であると重合が進行しない場合があり、さらに安定性も悪化する場合がある。また、10.0重量%を超えると重合中にゲル化する場合がある。また、触媒としては、反応時に遷移金属化合物と対応する配位子を混合して用いることもできる。この場合配位子は任意の量を使用することができるが、一般的には遷移金属に対して0.1〜10モル当量程度使用することが好ましい。
【0023】
本発明の遷移金属錯体において、配位子と遷移金属原子以外の構造は、触媒能を失活させないならば特に限定されるものではない。例えば、配位子としてN,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン(サレン)を、遷移金属として鉄を用いた、N, N’−ジ(サリシリデン)エチレンジアミナト鉄(II)(鉄サレン)遷移金属錯体等を使用することができる。 遷移金属錯体は、例えば、鉄サレン、銅サレン、亜鉛サレン、ニッケルサレン、マンガンサレン、アセチルアセトナト鉄(III)、アセチルアセトナト銅(II)などが挙げられ、中でも、鉄サレンが好ましい。これら、遷移金属錯体は、酸化重合性化合物のフェノール骨格を優先的に酸化重合させることができ、重合せずに残った脂肪族不飽和二重結合を塗膜形成時の硬化反応に利用することができる。
【0024】
さらに、本発明の遷移金属錯体の活性を高めるため助触媒を用いても良い。助触媒としてはアミン、ジケトン錯体、ハロゲン化金属等が挙げられる。
【0025】
また、フェノール骨格の酸化重合においては、公知の酸化剤を用いることができる。酸化剤は任意のものが使用されるが、好ましくは酸素またはパーオキサイドが使用できる。酸素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよい。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。さらに好ましくはパーオキサイドが挙げられ、特に好ましくは過酸化水素である。これらパーオキサイドは、フェノール化合物を含有する植物性油に対して1.0〜50.0重量% 、好ましくは2.0〜30.0重量% 、さらに好ましくは5.0〜20.0重量%を使用することができる。パーオキサイドが1.0重量%未満であると重合が進行しない場合があり、さらに安定性も悪化する場合がある。また、50.0重量%を超えると重合中にゲル化する場合がある。
【0026】
過酸化水素を添加する場合は、フェノール化合物を含有する植物性油と遷移金属錯体の溶解液に過酸化物を徐々に添加する方法が好ましい。遷移金属錯体が不活性化するような方法でない限り、この他にも種々の組み合わせが可能である。本発明の硬化性樹脂組成物の製造において、酸化重合に用いた遷移金属錯体は反応終了後分離せずにそのまま樹脂組成物中に含有させても問題がない。
【0027】
次に、本発明を構成する反応性希釈剤(B)について説明する。
【0028】
本発明において、反応性希釈剤(B)は、酸化重合性を有する化合物であり、塗液の段階において粘度低減の効果をもたらし、なおかつ塗膜形成段階を経て塗膜の一部となる。反応性希釈剤(B)は混合物であっても構わない。
【0029】
反応性希釈剤(B)は、樹脂組成物(A)中の官能基と反応する化合物であれば特に限定されないが、硬化時に樹脂組成物(A)の有する不飽和二重結合性酸化重合部位と付加し得る化合物が好ましい。例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N−n−ブチル−o−(メタ)アクリロイルオキシエチルカーバメート、アクリロイルモルホリン、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリブロモベンジル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等の一官能(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロキシプロピルトリス(メトキシ)シラン等の珪素含有(メタ)アクリレート類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等の一官能のビニル化合物類、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノール−A、水素化ビスフェノール−A等のビスフェノール誘導体のアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類、
トリメリット酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有化合物、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、混合トリアルキル酢酸ビニル、及びラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、及びプロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、α−メチルスチレン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル系化合物、フマル酸ジアルキルエステル、及びイタコン酸ジアルキルエステル等のエステル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、及びアリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、不飽和結合を有する油脂類、その他オレフィン類、
アシルチオヒドロキサメート、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、フェニルメルカプトテトラゾール、ヘプチルメルカプトトリアゾール、ポリチオール類等のチオール類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、マイケル付加ポリアミン、及びマンニッヒ付加ポリアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0030】
また、反応性希釈剤(B)としては、生体への安全性の点から動植物性油、動植物性油の誘導体、またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0031】
動植物性油とは、動物油、植物油、水産動物油( 魚油、鯨油等)の総称である。動植物性油としては、亜麻仁油、サフラワー油、キリ油、大豆油、ヒマワリ種油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、オリーブ油、工業用イワシ油、スケソウダラ油、サメ油、鯨油などが挙げられる。
【0032】
動植物性油の誘導体としては、前記動植物性油の加熱変性物、脱水処理物、動植物油由来脂肪酸およびその変性物などが挙げられる。
【0033】
さらに、反応性希釈剤(B)としては、塗液の流動性および塗膜の硬化性の点から、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステル、および不飽和脂肪族アミンからなる群から少なくとも1種類以上選択されたものであることが好ましい。
【0034】
不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等、植物脂肪酸(亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、荏油脂肪酸、サフラワー脂肪酸、大豆油脂肪酸、菜種油脂肪酸、再生油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、米糖脂肪酸、綿実油脂肪酸、コーン油脂肪酸、落花生脂肪酸、ハイエルシン酸菜種油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、等)、魚油脂肪酸、各種高オレイン酸油脂肪酸、中鎖脂肪酸などが挙げられる。
【0035】
飽和脂肪酸エステルとしては、前記の不飽和脂肪酸のグリセリンモノエステル、グリセリンジエステル、グリセリントリエステルなどが挙げられる。
【0036】
不飽和脂肪族アミンとしては、RNH2、R2NH、R3N (ただし、Rは前記不飽和脂肪酸のアルキル基である)で表される化合物などが挙げられる。
【0037】
樹脂組成物(A)と反応性希釈剤(B)の重量比は1/9〜9/1であることが好ましく、2/8〜9/1がより好ましい。1/9より小さいと硬化塗膜の硬度が極端に低下する場合があり、9/1より大きいと高粘度となり過ぎて塗液としての利用が難しくなる場合がある。
【0038】
本発明は、フェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物を重合して得られる樹脂を含有する硬化性樹脂組成物である。製造方法としては、有機溶剤中でフェノール化合物含有植物性油を重合した後に反応性希釈剤を加えて攪拌し、ストリッピングにより有機溶剤を除く方法、有機溶剤中でフェノール化合物含有植物性油を重合した後に、有機溶剤をストリッピングにより除き、反応性希釈剤を加えて攪拌する方法、及び、反応性希釈剤中でフェノール化合物含有植物油を重合する方法がある。ストリッピングとは、溶剤を含む上記組成物を、加熱して溶剤を除去することであるが、常圧でも減圧でも行ってよい。組成物の安定性を考慮すると、減圧して低い温度で行う方が好ましい。また、フリーズドライ等の方法でも行うことが可能である。攪拌は、攪拌羽根、ディスパー、ホモジナイザー等による単独攪拌及びこれらを組み合わせた複合攪拌、サンドミル、多軸押出機の使用が可能である。
【0039】
反応性希釈剤中でフェノール化合物含有植物油を重合する場合、有機溶剤中で重合する場合と比較して、反応液の粘度が高くなるため、攪拌速度は500rpm以上、好ましくは700rpm以上が好ましい。攪拌速度が500rpm未満であると、攪拌が不十分となり、溶液内で反応速度差が生じ、部分的にゲルが生じる場合がある。
【0040】
本発明で使用する有機溶剤としては、特に限定される物ではない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素; ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水素; クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素; アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類; メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類; ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類; ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類が挙げられ、これらは単独あるいは混合物として使用される。また、反応媒体が液状を保つ条件下であれば必ずしも有機溶剤を使用しなくても良い。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤などの揮発成分を添加することが出来るが、環境負荷の点から揮発成分を含有しない形で使用することが好ましい。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するため、フェノール骨格の重合後にも、当該酸化重合部位を第2の酸化触媒の存在下でさらに架橋硬化させることができる。この硬化反応は塗料等に用いた場合の硬化反応として有効であり、第2の酸化触媒としては、いわゆる金属ドライヤーが用いられる。このような金属ドライヤーは、不飽和脂肪酸を酸化して架橋反応を引き起こす能力を備える化合物であれば特に制限はなく、種々の金属あるいはその塩を用いることができる。具体的には、コバルト、マンガン、鉛、カルシウム、セリウム、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅のナフテン酸、オクチル酸、オレイン酸塩を用いることができ、好ましくはナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸マンガンを用いることができる。また、本発明においてフェノール骨格の重合触媒に使用した各種金属錯体も金属ドライヤーとしての能力を有することから、これらを反応系から取り出すことなくそのまま使用しても良い。さらには、金属ドライヤーは1種類に限らず、2種以上を混合して用いても何ら問題はない。金属ドライヤーの添加量としては、金属ドライヤーの種類等によって異なるが、通常は硬化性樹脂組成物に対して金属含量で、0.1重量%〜10重量%使用するのが好ましい。
【0043】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、様々な方法で硬化させることができる。すなわち、これらの樹脂組成物は、ポリマー側鎖に不飽和二重結合(不飽和二重結合性酸化重合部位)を、または、芳香環部位(フェノール骨格)にはフェノール性水酸基を有していることから、これらの反応性部位に基づく公知の方法で架橋反応を進行させることにより硬化物を得ることができる。例えば、前記の酸素や有機過酸化物による架橋の他に、フェノール樹脂およびアミノ樹脂による架橋、ハロゲン化合物による架橋、イソシアナートによる架橋、エポキシ化合物による架橋、加熱による架橋、光による架橋、UV照射による架橋、電子線による架橋反応等を利用して硬化させることが可能である。
【0044】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤などの各種の添加剤を添加することもできる。さらに必要に応じて、充填剤、可塑剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤も併用することができる。これらを適宜添加し、漆類似塗料原材料、塗膜形成材料、記録材料用化合物、インキ原材料、塗料原材料、接着剤原材料、エポキシ樹脂原材料、フォトレジストの原材料、酸化防止剤の原材料、成形材料、積層材の原材料、粘着剤の原材料、結合剤の原材料、注型用フェノール樹脂の原材料、ゴム配合用フェノール樹脂の原材料、繊維板用フェノール樹脂の原材料等の種々の用途に使用することが出来る。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、文中、部、%は特に断らない限り、重量部、重量%を表す。
【0046】
樹脂組成物(A)の製造
<製造例1>
500ミリリットルの三口セパラブルフラスコに、カシューナット殻液30グラム、トルエン70グラムを加えて溶解した後、鉄サレン457ミリグラムを加えた。攪拌棒を装着して30℃の水浴に設置し、200rpmで攪拌した。その後、1.62ミリリットルの30%過酸化水素水を15分おきに10回添加した。はじめの過酸化水素水の添加から3時間後に反応を終了し、反応液を減圧下でストリッピング(60℃)により濃縮した後にトルエン7.5グラムを加えて攪拌し、不揮発分80.0%の硬化性樹脂組成物トルエンワニスを得た。
【0047】
<製造例2>
500ミリリットルの三口セパラブルフラスコに、カシューナット殻液30グラム、亜麻仁油6.0グラムを加えて溶解した後、鉄サレン457ミリグラムを加えた。攪拌棒を装着して30℃の水浴に設置し、700rpmで攪拌した。その後、1.62ミリリットルの30%過酸化水素水を15分おきに10回添加した。はじめの過酸化水素水の添加から3時間後に反応を終了し、減圧下でストリッピング(60℃)により濃縮して硬化性樹脂組成物を得た。(なお、ここでのストリッピングは、過酸化水素水由来の水を系外に除去するために行うものである。)
【0048】
<実施例1>
製造例1で得たトルエンワニス100部にオレイン酸20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0049】
<実施例2>
製造例1で得たトルエンワニス100部に亜麻仁油脂肪酸20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0050】
<実施例3>
製造例1で得たトルエンワニス100部にカルダノール20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0051】
<実施例4>
製造例1で得たトルエンワニス100部にオレイルアミン20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0052】
<実施例5>
製造例1で得たトルエンワニス100部に亜麻仁油20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0053】
<実施例6>
製造例1で得たトルエンワニス100部に大豆油20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0054】
<実施例7>
製造例1で得たトルエンワニス100部に蓖麻子油20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0055】
<実施例8>
製造例1で得たトルエンワニス100部に亜麻仁油脂肪酸10部及び亜麻仁油10部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0056】
<実施例9>
製造例2で得た塗液をそのまま後述の塗膜評価に供した。
【0057】
<比較例1>
製造例1で得たトルエンワニスをそのまま後述の塗膜評価に供した。
【0058】
<比較例2>
製造例1で得たトルエンワニスを減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いたが、流動性に乏しく、塗工することが出来なかった。
【0059】
<比較例3>
製造例1で得たトルエンワニス100部に酸化重合性を有しない椰子油20部を加え、全体が均一になるまで攪拌した後、減圧下でストリッピング(60℃)によりトルエンを除いて塗液を得た。
【0060】
(評価方法)
実施例1〜9、比較例1〜3で得られた塗液の粘度を以下の方法で評価した。
<塗膜評価>
得られた樹脂組成物をアプリケータ(4mil)によりアルミ板に塗布し、150℃のオーブンで3時間加熱して硬化させた。ただし、比較例1についてはトルエンが揮発して膜圧が小さくなるため、5milのアプリケータを用いた。
【0061】
得られた樹脂塗膜の鉛筆硬度をJIS規格「鉛筆引っ掻き試験」(JIS K5400)に準じて実施した。
【0062】
上記評価方法で得られた結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
上記結果より、実施例1〜9は、良好に塗工することができ、かつ得られた塗膜の硬度も高かった。一方、比較例1は、塗膜の硬度が低く、実用には適さないものであった。比較例2および3は、評価ができなかった。
【0065】
本発明により、フェノール化合物を含有する、植物性油を含む酸化重合性化合物を重合して形成した樹脂を含む硬化性樹脂組成物を得ることができ、流動性があり、環境負荷の小さい硬化性樹脂組成物を得ることができた。さらに、この硬化性樹脂組成物を用いることで、硬度の高い優れた塗膜を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合してなる樹脂組成物(A)と、反応性希釈剤(B)とを必須成分として含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
反応性希釈剤(B)が、動植物性油、動植物性油の誘導体、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
反応性希釈剤(B)が、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステル、および不飽和脂肪族アミンからなる群から少なくとも1種類以上選択されたものであることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物(A)と反応性希釈剤(B)との重量比が、1/9〜9/1であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
有機溶剤中で、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合して、樹脂組成物(A)を得た後、反応性希釈剤(B)を加えて攪拌し、次いで、ストリッピングにより有機溶剤を除くことを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
有機溶剤中で、不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を酸化重合して、樹脂組成物(A)を得た後、ストリッピングにより有機溶剤を除き、次いで、反応性希釈剤(B)を加えて攪拌することを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
不飽和二重結合性酸化重合部位を有するフェノール化合物を含有する植物性油を含む酸化重合性化合物中のフェノール骨格を、反応性希釈剤(B)の存在下で酸化重合することを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−217657(P2007−217657A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304898(P2006−304898)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】