説明

硬化性樹脂組成物

【課題】 従来用いられてきたような重金属含有触媒を用いなくても硬化する、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する湿気硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性樹脂(A)100質量部あたり、フッ素化剤(B)を0.001〜20質量部含有することを特徴とする湿気硬化性樹脂組成物。さらに、硬化性樹脂(A)100質量部あたり、分子内にアミノ基及び架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(C)を0.1〜50質量部含有することが好ましい。これまで反応性珪素基に対して触媒的作用を有さないと考えられてきたフッ素化合物を用いることによって、従来用いられてきたような重金属含有触媒を用いなくても速硬化性を有する湿気硬化性樹脂組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来用いられてきた重金属含有触媒を用いなくても硬化する、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する湿気硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性有機重合体は、変成シリコーン樹脂やシリル化ウレタン樹脂等と呼ばれ、常温湿気硬化型の硬化性樹脂組成物として広く用いられている。
従来、これらの硬化性有機重合体の硬化触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、オクチル酸鉛等の有機鉛化合物等が汎用されている。特に、硬化性有機重合体として特許文献1などに記載のシリル化ウレタン系樹脂を用いた場合には、有機錫化合物を配合することにより硬化速度の比較的速い硬化性有機重合体組成物を得ることができる。また、特許文献2及び3などに記載の特定の有機錫化合物系硬化触媒を用いると、さらに硬化速度の速い硬化性有機重合体組成物を得ることができる。
しかし、有機錫化合物、有機鉛化合物等の重金属を中心元素とする硬化触媒は、環境への負荷が大きいことから、使用に際してその取り扱いや使用量などに充分な注意が必要であった。
一方で、環境負荷の少ない硬化触媒としては、アミン化合物やカルボン酸化合物、あるいは、安全性の問題の少ないビスマス化合物を使用することが提案されているが、硬化速度が実用的に満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特許第3030020号公報
【特許文献2】特開2001−139820号公報
【特許文献3】特開2001−172515号公報
【特許文献4】特開平8−41358号公報
【特許文献5】特開平5−39428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような背景から、中心元素が重金属ではない硬化触媒の開発が求められていた。本発明は、従来用いられてきたような重金属含有触媒を用いなくても硬化する、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する湿気硬化性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく研究を続け、これまで反応性珪素基に対して触媒的作用を有さないと考えられてきた、フッ素含有化合物が、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する樹脂の湿気硬化性硬化触媒として作用し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜第5の発明から構成される。
【0006】
すなわち、第1の発明は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性樹脂(A)100質量部あたり、フッ素化剤(B)を0.001〜20質量部含有することを特徴とする湿気硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0007】
また、第2の発明は、さらに上記硬化性樹脂(A)100質量部あたり、分子内にアミノ基及び架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(C)を0.1〜50質量部含有することを特徴とする第1の発明に係る湿気硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0008】
また、第3の発明は、フッ素化剤(B)が、N−フルオロピリジニウム塩系化合物、1,1,2,3,3,3−ヘキサフロオロ−1−ジエチルアミノプロパン系化合物、ビスアルキルアミノサルファートリフルオライド系化合物、4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン系化合物、及び、N−フルオロビス(フェニルスルホニル)アミン系化合物から選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする第1又は第2の発明に係る湿気硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0009】
また、第4の発明は、硬化性樹脂(A)がその分子内に有する架橋可能な反応性珪素基が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする第1〜第3のいずれかの発明に係る湿気硬化性樹脂組成物に関するものである。
【化1】

・・・(1)
(但し、式中、Xは加水分解性基を示し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基又は置換基を有する炭化水素基を示し、nは0、1又は2を示す。)
【0010】
また、第5の発明は、上記一般式(1)において表される加水分解性基Xが、炭素数1〜4のアルコキシ基であることを特徴とする第1〜第4のいずれかの発明に係る湿気硬化性樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る湿気硬化性樹脂組成物は、フッ素化剤(B)が湿気硬化触媒的に作用するため、従来用いられてきた重金属含有触媒を用いなくても、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性樹脂組成物を素早く硬化させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0013】
[硬化性樹脂(A)について]
本発明でいう分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性樹脂(A)は、分子内に下記一般式(1)で表されるような加水分解性珪素基を持つ樹脂である。本発明で使用される硬化性樹脂(A)は、作業性などの面から、室温で液状であることが好ましい。
加水分解性珪素基は、珪素原子に加水分解性基が1〜3個結合すると共に、炭化水素基が2〜0個結合しているものである。そして、この珪素原子には、主鎖が結合している。ここで、加水分解性基(X)としては、ヒドロキシル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基が、一般的に用いられる。その他、ハロゲン基やメルカプト基等の従来公知の加水分解性基も用いることができる。炭化水素基(R1)としては、メチル基やエチル基等のアルキル基が一般的に用いられる。また、アルキル基等の炭化水素基には、ヒドロキシアルキル基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも加水分解性基Xとしては、取り扱いの容易さ、入手の容易さ等の観点から、炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、飽和炭化水素系重合体やビニル重合体等のいわゆる変成シリコーン樹脂に一般的に用いられているもの、シロキサン結合(Si−O−Si)よりなる重合体等のシリコーン樹脂に一般に用いられているものが採用される。
【0014】
【化2】

・・・(1)
但し、式中、Xは加水分解性基を示し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基又は置換基を有する炭化水素基を示し、nは0、1又は2を示す。
【0015】
硬化性樹脂(A)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、カネカ社製のサイリルシリーズ、カネカMSポリマーシリーズ、MAシリーズ、EPシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、旭硝子社製のエクセスターシリーズ、デグサジャパン社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ、東亜合成社製のXPRシリーズ、綜研化学社製のアクトフローシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0016】
また、本発明では、硬化性樹脂(A)として、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有し、かつ、分子内に特定の極性基を含有する硬化性樹脂を好適に用いることができる。ここで、特定の極性基とは、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、スルフィド結合基、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含有する結合基又は官能基等を指す。このような極性基を加水分解性珪素基の近傍に導入すると、硬化性樹脂自体の硬化能が高まるため好ましい。
【0017】
特に、これらの特定極性基の中では、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の含窒素極性基を有するものが好ましく、ウレタン結合基(−NHCOO−)、尿素結合基(−NHCONH−)、置換尿素結合基(−NHCONR−;R=有機基)を有するものであることが最も好ましい。硬化性樹脂自体の硬化能が高まる理由としては、硬化性樹脂の分子内に存在する特定極性基同士がドメインを形成し、その結果、硬化性樹脂の加水分解性珪素基同士のカップリング反応がさらに促進されるためであると考えられる。
【0018】
分子内に架橋可能な反応性珪素基を有し、かつ、分子内にこれらの特定極性基を含有する硬化性樹脂は、従来公知の方法で合成することができる。例えば、特許第3030020号公報記載の方法や、特開2005−54174公報記載の方法が挙げられる。
硬化性樹脂(A)の構造は特に限定されるものではないが、これらのうちでも、その分子内に特定極性基を含有する硬化性樹脂であることが本発明の触媒的作用が特に発揮されやすいため好ましい。また、反応性珪素基としては上記一般式(1)においてn=0であることが本発明の触媒的作用が特に発揮されやすいため好ましい。
【0019】
[フッ素化剤(B)について]
本発明に係るフッ素化剤には、フッ素アニオンを活性種とする求核的フッ素化剤と、電子欠乏性のフッ素原子を活性種とする求電子的フッ素化剤が含まれる。
【0020】
一般的に、上記求核的フッ素化剤及び求電子的フッ素化剤は、アニソールやナフトールなどのベンゼン環上の水素原子をフッ素置換する際や、アルキルアルコール類の水酸基をフッ素置換する際に用いられる化合物である。一方、本発明においては、フッ素化剤(B)は、架橋可能な反応性珪素基の加水分解縮合反応を促進させる化合物となり、本発明の湿気硬化性樹脂組成物において触媒的に作用する。フッ素化剤(B)が架橋可能な反応性珪素基の加水分解縮合反応を促進させる化合物となることは一般的には知られていないため、その作用機構については定かではないが、上記フッ素化剤がアルコキシシリル基等の架橋可能な反応性珪素基と何らかの相互作用をすることで、その縮合反応を加速化するものと想像される。
【0021】
上記フッ素化剤(B)の中でも特に好適に用いられる化合物としては、求核的フッ素化剤では、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン等の1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジアルキルアミノプロパン系化合物、トリエチルアミントリスヒドロフルオライド等のトリアルキルアミントリスヒドロフルオライド系化合物、ジエチルアミノサルファートリフルオライド等のジアルキルアミノサルファートリフルオライド系化合物等が、上記求電子的フッ素化剤では、ビス(テトラフルオロホウ酸)N,N’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウム塩化合物,トリフルオロメタンスルホン酸N−フルオロピリジニウム塩化合物等のN−フルオロピリジニウム塩系化合物、ビス(テトラフルオロホウ酸)4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩等の4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン系化合物、N−フルオロベンゼンスルホンイミド等のN−フルオロビス(スルホニル)アミン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0022】
フッ素化剤(B)は、所望の硬化速度を得るために適宜選択すればよく、上記化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。フッ素化剤(B)の配合量は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜20質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましく、0.1〜5.0質量部が特に好ましい。0.001質量部を下回ると、硬化触媒的機能が十分発現されず、20質量部を上回っても速硬化性は発現されるが経済上好ましくない。
【0023】
[アミノシラン化合物(C)について]
本発明におけるアミノシラン化合物(C)は、分子内にアミノ基と架橋可能な反応性珪素基を有する化合物である。本発明における硬化性樹脂組成物においては、アミノシラン化合物(C)はフッ素化剤(B)の助触媒的作用を有するため硬化性調整剤として利用される。アミノシラン化合物(C)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アミノシラン化合物、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)等のアミノシランのシリル基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させた化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、水と反応することによってアミノ基を生成するC=N結合を有するシラン化合物(いわゆるケチミンシラン化合物)も使用することができる。
【0024】
また、アミノシラン化合物(C)は、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミン化合物から合成することもできる。合成方法としては、(1)分子内にエポキシ基と架橋可能な反応性珪素基を有するエポキシシラン化合物と上記ポリアミン化合物を反応させる方法、(2)分子内にアクリロイル基と架橋可能な反応性珪素基を有するアクリルシラン化合物とポリアミン化合物を反応させる方法、(3)分子内にイソシアネート基と架橋可能な反応性珪素基を有するイソシアネートシラン化合物とポリアミン化合物を反応させる方法等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0025】
アミノシラン化合物(C)は、所望の硬化速度を得るために適宜選択すればよい。また、アミノシラン化合物(C)は1種又は2種以上使用してもよい。アミノシラン化合物(C)の配合量は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部がより好ましく、1.0〜20質量部が特に好ましい。0.1質量部を下回ると、硬化性調整剤としての機能が十分発現されず、50質量部を上回ると、相対的に硬化性樹脂(A)の量が減るため、硬化したとしても硬化性樹脂(A)の他の機能が損なわれてしまう。
【0026】
[その他の成分について]
本発明に係る湿気硬化性樹脂組成物中には、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば、親水性または疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム粉体、クレイ粉体、アクリル系等の有機系粉体、有機系・無機系のバルーン等の充填剤、フェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、機能性オリゴマー、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の老化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を配合することができる。また、フッ素化剤(B)以外の触媒作用を有する化合物(いわゆる硬化触媒)を配合することを妨げるものでもない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本発明は、これまで反応性珪素基に対して触媒的作用を有さないと考えられてきたフッ素化剤(B)が、硬化性樹脂(A)に対して触媒的作用を有するという知見に基づくものとして解釈されるべきである。
【0028】
[硬化性樹脂(A)の調製]
(合成例1)
反応容器内で、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(179.3g、1.0mol)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(86.1g、1.0mol)を1時間かけて滴下し、さらに40℃で3日間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基および第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。別の反応容器内で、「PMLS4012」(旭硝子ウレタン株式会社製、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000、1,000g)、イソホロンジイソシアネート(46.3g)およびジオクチルスズジバーサテート(25mg)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら90℃で1時間反応させた後、さらにジオクチルスズジバーサテート(25mg)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら90℃で2時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−1を得た。さらに上記シラン化合物SE−1(55.3g)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、90℃で1時間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基を有する硬化性樹脂A−1を得た。硬化性樹脂A−1のIR測定を行ったところ、イソシアネート基のピーク(2265cm−1)が消失していた。23℃における硬化性樹脂A−1の粘度は60,000mPa・s(BH型粘度計、No.7ローター、10回転)であった。
【0029】
(実施例1)
反応容器に、湿気硬化性樹脂A−1(200質量部)、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン(0.45質量部)および3−アミノプロピルトリメトキシシラン(10質量部)を投入し、減圧下10分間混合することで湿気硬化性樹脂組成物Z−1を調製した。
【0030】
(比較例1)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン(0.45質量部)を用いなかった以外は実施例1と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−2を調製した。
(比較例2)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン(0.45質量部)の代わりにn−オクチルアミン(2.6質量部)を用いた以外は実施例1と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−3を調製した。
(比較例3)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン(0.45質量部)の代わりにイソステアリン酸(5.7質量部)を用いた以外は実施例1と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−4を調製した。
【0031】
得られた湿気硬化性樹脂組成物Z−1〜Z−4は、それぞれ密閉容器に充填して50℃で3日間暴露した後23℃で1日以上静置し、硬化速度の評価のため、23℃相対湿度50%における皮張り時間を測定した。それぞれの皮張り時間を表1に示す。
【0032】
表1
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実施例1 比較例1 比較例2 比較例3
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湿気硬化性樹脂組成物 Z−1 Z−2 Z−3 Z−4
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皮張り時間 40秒 70分 50分 18分
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【0033】
表1に示すとおり、実施例1及び比較例1〜3の結果から、本発明にかかるフッ素化合物は、明らかに反応性珪素基に対して触媒的に作用しており、これを配合することにより速硬化性を有する湿気硬化性樹脂組成物が得られることが分かる。
【0034】
(実施例2)
反応容器に、湿気硬化性樹脂A−1(200質量部)、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン(0.45質量部)および3−アミノプロピルトリメトキシシラン(10質量部)を投入し、減圧下5分間混合することで湿気硬化性樹脂組成物Z−5を調製した。
(実施例3)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパンの代わりに1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(0.71質量部)を用いた以外は実施例2と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−6を調製した。
(実施例4)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパンの代わりにジエチルアミノサルファートリフルオライド(0.032質量部)を用いた以外は実施例2と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−7を調製した。
【0035】
(実施例5)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパンの代わりにN−フルオロ−2,6−ジクロロピリジウムテトラフルオロボレート(0.051質量部)を用いた以外は実施例2と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−8を調製した。
(実施例6)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパンの代わりにN−フルオロ−2,6−ジクロロピリジウムトリフラート(0.063質量部)を用いた以外は実施例2と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−9を調製した。
(実施例7)
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパンの代わりにN−フルオロ−2,6−ジクロロピリジウムテトラフルオロボレート(0.041質量部)及びN−フルオロベンゼンスルホンイミド(0.013質量部)を用いた以外は実施例2と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−10を調製した。
【0036】
得られた湿気硬化性樹脂組成物Z−5〜Z−10は、それぞれ密閉容器に充填して50℃で3日間暴露した後23℃で1日以上静置し、硬化速度の評価のため、23℃相対湿度50%における皮張り時間を測定した。それぞれの皮張り時間を表2及び3に示す。
【0037】
表2
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実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
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湿気硬化性樹脂組成物 Z−5 Z−6 Z−7 Z−8
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皮張り時間 40秒 15秒 1分20秒 3分30秒
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【0038】
表3
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実施例6 実施例7
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湿気硬化性樹脂組成物 Z−9 Z−10
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皮張り時間 5分30秒 3分
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【0039】
表2及び3に示すとおり、本発明にかかるフッ素化合物は、明らかに反応性珪素基に対して触媒的に作用しており、これを配合することにより速硬化性を有する湿気硬化性樹脂組成物が得られることが分かる。
【0040】
(実施例8)
反応容器に、ES−G3440ST(旭硝子株式会社製商品名、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性樹脂、200質量部)、ジエチルアミノサルファートリフルオライド(0.032質量部)および3−アミノプロピルトリメトキシシラン(10質量部)を投入し、減圧下5分間混合することで湿気硬化性樹脂組成物Z−11を調製した。
【0041】
(比較例4)
ジエチルアミノサルファートリフルオライドを用いなかった以外は実施例8と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−12を調製した。
(比較例5)
ジエチルアミノサルファートリフルオライドの代わりにジブチルスズジメトキシド(0.059質量部)を用いた以外は実施例8と同様に湿気硬化性樹脂組成物Z−13を調製した。
【0042】
得られた湿気硬化性樹脂組成物Z−11及びN−12は、それぞれ密閉容器に充填して50℃で3日間暴露した後23℃で1日以上静置し、硬化速度の評価のため、23℃相対湿度50%における皮張り時間を測定した。それぞれの皮張り時間を表4に示す。
【0043】
表4
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実施例8 比較例4 比較例5
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湿気硬化性樹脂組成物 Z−11 Z−12 Z−13
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皮張り時間 6分 10時間 2時間
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【0044】
表4に示されるように、市販の分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性樹脂であっても、本発明にかかるフッ素化合物は、明らかに反応性珪素基に対して触媒的に作用しており、これを配合することにより速硬化性を有する湿気硬化性樹脂組成物が得られることが分かる。
以上のことから、これまで反応性珪素基に対して触媒的作用を有さないと考えられてきたフッ素化剤を用いることによって、従来用いられてきたような重金属含有触媒を用いなくても速硬化性を有する湿気硬化性樹脂組成物を得ることができるため、本発明にかかるフッ素化合物は産業上の有用性が極めて高いといえる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、従来反応性珪素基の加水分解反応を利用した湿気硬化性樹脂組成物に用いられてきたような重金属含有触媒を用いなくても硬化することから、例えば、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性樹脂(A)100質量部あたり、フッ素化剤(B)を0.001〜20質量部含有することを特徴とする湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、硬化性樹脂(A)100質量部あたり、分子内にアミノ基及び架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(C)を0.1〜50質量部含有することを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
フッ素化剤(B)が、N−フルオロピリジニウム塩系化合物、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン系化合物、ビスアルキルアミノサルファートリフルオライド系化合物、4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン系化合物、及び、N−フルオロビス(フェニルスルホニル)アミン系化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂(A)がその分子内に有する架橋可能な反応性珪素基が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【化1】

・・・(1)
(但し、式中、Xは加水分解性基を示し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基又は置換基を有する炭化水素基を示し、nは0、1又は2を示す。)
【請求項5】
一般式(1)において表される加水分解性基Xが、炭素数1〜4のアルコキシ基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の湿気硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−260932(P2008−260932A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71517(P2008−71517)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】