説明

硬化性組成物及びその硬化物

【課題】 本発明の目的は耐熱性が良好で、硬化収縮の小さい硬化物を与え得る硬化性組成物およびその硬化物を提供することである。
【解決手段】 (A)ヒドロシリル化触媒、(B)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸誘導体、(C)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、を必須成分とし、
(B)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物(B1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B2)との反応物であり、
(C)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する有機化合物(C1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(C2)との反応物であることを特徴とする硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイソシアヌル酸誘導体を含有する硬化性組成物とその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素−炭素二重結合を含有する化合物と、SiH基を含有する化合物と、ヒドロシリル化触媒とからなる硬化性組成物が提案されている。例えば特許文献1では、トリアリルイソシアヌレートとトリアリルイソシアヌレートに当量以上のSiH基含有ポリシロキサンを反応させたSiH基含有化合物とを用いた硬化性組成物が提案されている。また、特許文献2では、SiH基含有ポリシロキサンに当量以上の炭素−炭素二重結合を含有する化合物を反応させた有機化合物とSiH基を含有する化合物とを用いた硬化性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−317048号公報
【特許文献2】特開2003−73551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の組成物は、硬化時の硬化収縮の抑制の点においてまだ改善の余地がある。また、特許文献2の組成物は、使用する炭素−炭素二重結合を含有する化合物とSiH基含有化合物の組み合わせによっては硬化物の耐熱性が低くなることがあった。
【0005】
本発明は耐熱性が良好で、硬化収縮の小さい硬化物を与え得る硬化性組成物およびその硬化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、特定の構造を有するイソシアヌル酸誘導体とSiH含有化合物との共重合体を炭素−炭素二重結合を含有する化合物として用いると耐熱性に優れた硬化物が得られ、また、硬化収縮が低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の構成を有するものである。
【0007】
1).
(A)ヒドロシリル化触媒、(B)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸誘導体、(C)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、を必須成分としてなる硬化性組成物であって、
(B)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物(B1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B2)との反応物であり、
(C)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する有機化合物(C1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(C2)との反応物であることを特徴とする硬化性組成物。
【0008】
2).
上記(B1)成分がトリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートの少なくとも一種であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0009】
3).
上記(B1)成分がジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレートの少なくとも一種であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0010】
4).
上記(B2)成分が下記一般式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R0は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表されることを特徴とする1)乃至3)のいずれか一に記載の硬化性組成物。
【0013】
5).
上記(C1)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であることを特徴とする1)乃至4)のいずれか一に記載の硬化性組成物。
【0014】
6).
上記(C1)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物であることを特徴とする1)乃至4)のいずれか一に記載の硬化性組成物。
【0015】
7).
上記(C1)成分がトリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテル、ノルボルネン、ノルボルナジエン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートの少なくとも一種であることを特徴とする1)乃至4)のいずれか一に記載の硬化性組成物。
【0016】
8).
上記(C2)成分が1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンであることを特徴とする1)乃至4)のいずれか一に記載の硬化性組成物。
【0017】
9).
1)乃至8)のいずれか一に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の効果】
【0018】
この発明により、耐熱性に優れた硬化物が得られる。また、硬化収縮が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
まず、本発明における(A)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
【0021】
成分(A)のヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)a、Pt[(MeViSiO)4b);白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;白金−炭化水素複合体(例えばアシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体);白金アルコラート触媒(例えばラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒)等が挙げられる。
【0022】
さらに、塩化白金−オレフィン複合体(例えばモディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体)も本発明において有用である。
【0023】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
【0024】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0025】
成分(A)の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、成分(C)のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は成分(C)のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0026】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒としては、例えば、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0027】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10-2モル、上限102モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10-1モル、上限10モルの範囲である。
【0028】
次に(B)成分について説明する。
【0029】
(B)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物(B1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B2)との反応物である。
【0030】
以下、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物(B1)について説明する。
【0031】
本発明においては(B1)成分として下記一般式(II)で表されるイソシアヌル酸骨格を有するものを用いることができる。
【0032】
【化2】

【0033】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)イソシアヌル酸骨格を有することにより、硬化物の耐熱性が向上する。具体的な例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0034】
(B1)成分の炭素−炭素二重結合としてはSiH基と反応性を有するものであれば特に制限されないが、下記一般式(III)で示される炭素−炭素二重結合が反応性の点から好適である。
【0035】
【化3】

【0036】
(式中R2は水素原子あるいはメチル基を表す。)また、原料の入手の容易さからは、R2は水素原子であることがより好ましい。
硬化物の耐熱性が高いという点からは一般式(IV)が好適である。
【0037】
【化4】

【0038】
(式中R3は水素原子あるいはメチル基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)
また、原料の入手の容易さからは、R3は水素原子であることがより好ましい。
炭素−炭素二重結合は置換基を介して(B1)成分の骨格部分に共有結合していても良く、置換基としては、構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲンから選ばれる原子のみを含むものが好ましい。置換基の例としては、次のものが挙げられる。
【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
また、これらの置換基の2つ以上が共有結合によりつながって置換基を構成していてもよい。
【0042】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記に示すものが挙げられる。
【0043】
【化7】

【0044】
上記した(B1)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点から、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(B1)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、さらに、1gあたり0.005mol以上含有するものが好ましく、0.007mol以上含有するものが特に好ましい。
【0045】
また、(B1)成分としては、複屈折率が低い、光弾性係数が低いという観点からは、芳香環の(B1)成分中の成分重量比が50wt%以下であるものが好ましく、40wt%以下のものがより好ましく、30%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香環を含まないものである。
【0046】
(B1)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、耐熱性をより向上し得るという観点から、2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。
【0047】
(B1)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、屈折率をより向上し得るという観点からは2個であることがより好ましい。具体的な例としては、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0048】
(B1)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには100℃以下の温度において流動性があるものが好ましく、線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はないが、50〜100,000の任意のものが好適に使用できる。分子量が100、000以上では一般に原料が高粘度となり作業性に劣るとともに、炭素−炭素二重結合とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
【0049】
次に、(B)成分のもう一方の反応物である1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B2)成分について説明する。
【0050】
(B2)については1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するケイ素化合物であればよく、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用でき、耐酸化劣化性の観点から、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する、鎖状、環状、分岐状またはかご型のポリオルガノシロキサン(B2)が好適である。
【0051】
これらのうち、硬化物に柔軟性が付与されるという点から、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。これらの化合物の例としては次のものが挙げられる。
【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
(式中、R4、R5は炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、lは、0〜50、nは2〜50、mは0〜10の数を表す。)
またR4、R5は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の強度が高くなるという観点より、特にフェニル基であるものが好ましい。
【0055】
これらのうち、硬化物の耐熱性が高いという点からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有し、分子中にTまたはQ構造を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。これらの化合物の例としては次のものが挙げられる。
【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
(式中、R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは0〜50の数を表す。)
またR6、R7は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましい。
【0059】
これらのうち、入手性、及び(B1)成分との反応性が良いという観点から、さらに、下記一般式(I)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0060】
【化12】

【0061】
(式中、R0は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
なお、一般式(I)で表される化合物中の置換基R0は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0062】
一般式(I)で表される化合物としては、入手容易性及び反応性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0063】
また、(B2)成分として炭素−炭素二重結合を有する有機化合物から選ばれた1種以上の化合物と鎖状、及び/又は、環状のポリオルガノシロキサンとの反応物(以降(D)成分と称する)も使用できる。この場合、反応物から未反応のシロキサン類などを脱揮などにより除去したものを用いることもできる。
【0064】
(D)成分の有機化合物は前記(B1)成分の具体例と同じものを使用でき、(D)成分の有機化合物は、単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。また、上記したような各種(B2)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0065】
(B)成分合成において、(B1)成分と(B2)成分の混合比率は1分子中に2個以上炭素−炭素二重結合が残る範囲であれば、特に限定されない。収率の観点から(B1)に含まれる炭素−炭素二重結合基と(B2)に含まれるSiH基のモル比(炭素−炭素二重結合/SiH基)は1〜100であることが好ましく、1.5〜50であることが好ましく、2〜20であることが特に好ましい。
【0066】
(B)成分合成においては本発明の(A)成分であるヒドロシリル化触媒を用いることができ、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、SiH基1モルに対して、10-1〜10-10モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10-3〜10-7モルの範囲である。
【0067】
(B)成分合成反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0068】
(B)成分合成において上記の組成比の(B1)成分と(B2)成分において、(B1)成分と(A)成分の混合液に、(B2)成分を滴下することにより実施可能である。反応は室温以上であれば特に支障はないが、より反応を効果的に進行させるため50℃以上が好ましく、70℃以上が好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
【0069】
(B)成分合成時の反応後に溶媒及び/又は未反応の化合物を除去してもよい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは80℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。また、貯蔵安定性を向上させるためには窒素、アルゴンの様な不活性ガス雰囲気下、10℃以下での保存が好ましく、0℃以下の保存が特に好ましく、−10℃以下の保存がさらに好ましい。
【0070】
(B)成分としては、硬化物の耐熱性が高いという点から(B1)成分としてトリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートから選ばれる化合物、(B2)成分として1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンを用いた反応物であることが好ましい。
【0071】
本発明における(C)成分について説明する。
【0072】
(C)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する有機化合物(C1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(C2)との反応物である。
【0073】
以下、(C)成分の一方の反応物であるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する有機化合物(C1)成分について説明する。(C1)成分の骨格としては特に限定はなく、有機重合体骨格、または有機単量体骨格を用いればよい。
【0074】
有機重合体骨格の例としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系、ポリイミド系の骨格を用いることができる。また単量体骨格としては例えばフェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系およびこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
(C1)成分の炭素―炭素二重結合としては上記(B1)成分で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0076】
(C1)成分の具体的な例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテル、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどが挙げられる。
【0077】
硬化物の耐熱性がより高いという点からイソシアヌル酸骨格を有するものが好ましく、具体的にはトリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0078】
また、(C1)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、屈折率をより向上し得るという観点からは2個以下であることがより好ましい。具体的な例としては、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテル、ノルボルナジエンなどが挙げられる。さらにはイソシアヌル酸骨格を有するものが好ましい。
【0079】
前記(B1)成分においてもSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、屈折率をより向上し得るという観点からは2個であることがより好ましいが、(C1)成分において炭素−炭素二重結合の数が2個であることが屈折率をより向上し得ると言う点で好ましい。屈折率をより向上し得ると言う点では、(B1)、(C1)成分共に炭素−炭素二重結合の数が2個である化合物を用いる等、屈折率をより向上し得る前記手段を併用して用いることが最も好ましい。
【0080】
それら(B1)成分に用いることができる化合物としては、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0081】
(C2)成分は上記で説明した(B2)成分から選択して好適に用いることが出来る。好ましい化合物、具体的化合物も上記で説明した(B2)成分の説明を適用できる。なお、(C2)成分は(B2)成分と同じものを用いることが更に好ましい。
【0082】
(C)成分合成において、(C1)成分と(C2)成分の混合比率は1分子中に2個以上SiH基が残る範囲であれば、特に限定されない。収率の観点から(C1)に含まれる炭素−炭素二重結合基と(C2)に含まれるSiH基のモル比(炭素−炭素二重結合/SiH基)は0.01〜1であることが好ましく、0.03〜0.8であることが好ましく、0.05〜0.5であることが特に好ましい。
【0083】
(C)成分合成においては本発明の(A)成分であるヒドロシリル化触媒を用いることができ、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合1モルに対して、10-1〜10-10モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10-3〜10-7モルの範囲である。
【0084】
(C)成分合成反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤は(B)成分合成反応の際に使用できるものとして例示したものと同じである。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0085】
(C)成分合成において上記の組成比の(C1)成分と(C2)成分において、(C2)成分に(C1)成分と(A)成分をそれぞれ、又は混合して滴下することにより実施可能である。
【0086】
反応は室温以上であれば特に支障はないが、より反応を効果的に進行させるため50℃以上が好ましく、70℃以上が好ましく、90℃以上がさらに好ましい。
【0087】
(C)成分合成時の反応後に溶媒及び/又は未反応の化合物を除去してもよい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは90℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。また、貯蔵安定性を向上させるためには窒素、アルゴンの様な不活性ガス雰囲気下、10℃以下での保存が好ましく、0℃以下の保存が特に好ましく、−10℃以下の保存がさらに好ましい。
【0088】
(C)成分としては、硬化物の耐熱性が高いという点から(C1)成分としてトリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートから選ばれる化合物、(B2)成分として1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンを用いた反応物であることが好ましい。
【0089】
本発明の硬化性組成物の貯蔵安定性を改良する目的で貯蔵安定剤を添加することもできる。貯蔵安定剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。
【0090】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。
【0091】
窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが例示される。
【0092】
これらの貯蔵安定剤のうち、貯蔵安定性が良好で原料入手性がよいという観点からは、1−エチニルシクロヘキサノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、ジメチルマレート、が好ましい。
【0093】
貯蔵安定剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1molに対し、10-1〜103モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜100モルの範囲である。
【0094】
本発明の硬化性組成物には消泡剤を添加してもよい。消泡剤としては各種のものが用いられるが、例えばシリコーン系、ビニル系、アクリル系等が挙げられる。これらの消泡剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0095】
本発明の硬化性組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、接着性改良剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0096】
硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。全成分を混合した後、反応制御条件や官能基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応(Bステージ化)させてもよい。変性ポリオルガノシロキサン化合物の他に、物性改良の目的で熱可塑性樹脂等の添加剤を使用する場合は、これらの添加剤と硬化触媒である白金化合物を予め混合して貯蔵しておき、硬化直前にそれぞれの所定量を混合して調製してもよい。
【0097】
成分(B)と成分(C)の比率は[(B)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数/(C)成分のSiH基のモル数]の値が、下限0.05、上限10の範囲となる比率であることが好ましく、下限0.1、上限5の範囲となる比率であることがより好ましく、下限0.5、上限2であることが特に好ましい。下限値が0.05より小さい場合は炭素−炭素二重結合とSiH基との反応による架橋の効果が不十分になる傾向にあり、上限値が10より大きい場合は硬化物から未反応の(B)成分がブリードしてくる場合がある。
【0098】
また、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物(以降(E)成分と称する)を本発明の硬化性組成物に用いることもできる。具体的には(A1)に使用できるものとして例示したものと同じである。
【0099】
成分(E)を用いた場合、[(B)成分と(E)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数/(C)成分のSiH基のモル数]の値が、下限0.05、上限10の範囲となる比率であることが好ましく、下限0.1、上限5の範囲となる比率であることがより好ましく、下限0.5、上限2であることが特に好ましい。
【0100】
熱硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは90℃である。好ましい温度の上限は250℃、より好ましくは200℃、さらに好ましくは190℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる。反応温度が高いと着色や隆起することがある。
【0101】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、着色が少なく、歪の少ない硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0102】
反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で反応させることもできる。
【0103】
硬化させて得られる硬化物の形状も用途に応じて種々とりうるので特に限定されないが、例えばレンズ状、フィルム状、シート状、チューブ状、ロッド状、塗膜状、バルク状などの形状とすることができる。
【0104】
成形する方法も従来の熱硬化性樹脂の成形方法をはじめとして種々の方法をとることができる。例えば、キャスト法、プレス法、注型法、トランスファー成形法、コーティング法、RIM法、LIM法などの成形方法を適用することができる。成形型は研磨ガラス、硬質ステンレス研磨板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリメチルメタクリレート板等を適用することができる。
【0105】
また、成形型との離型性を向上させるためポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素又はめっきにより表面処理された金型等を適用することができる。
【0106】
成形時に必要に応じ各種処理を施すこともできる。例えば、成形時に発生するボイドの抑制のために組成物あるいは一部反応させた組成物を遠心、減圧などにより脱泡する処理、プレス時に一旦圧力を開放する処理などを適用することもできる。
【0107】
本発明で得られる硬化物は各種用途に使用できる。例えば光学材料が挙げられる。
【0108】
ここでいう光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料であり、具体的には下記のようなものが例示される。
【0109】
例えば、(デジタル)カメラや携帯電話や車載カメラ等のカメラ用レンズ、プロジェクションレンズ、f−θレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、絶縁被覆材、高放熱性接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用材料、光造形、太陽電池用材料、表示材料、記録材料、複写機用感光ドラムに応用できる。
【実施例】
【0110】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0111】
(合成例1)
1Lの四ツ口フラスコに、磁気攪拌子、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトリアリルイソシアヌレート(分子内二重結合数3)150g、トルエン450g及び白金ジビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)1gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温90℃で加熱、攪拌した。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子内SiH数4)20gを1.5時間かけて滴下した。その後、内温を105℃まで上げ、6.5時間加熱攪拌した後、冷却により反応を終了した。
【0112】
トルエンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものはトリアリルイソシアヌレートのアリル基の一部が1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと反応したもの((β1)と称す。(β1)は混合物であるが、主成分として1分子中に8個の炭素−炭素二重結合基を含有する以下の化合物を含有する)とトリアリルイソシアヌレートの混合物であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRにより炭素−炭素二重結合基の含有量を求めたところ、9.5mmol/g含有していることがわかった。
【0113】
【化13】

【0114】
(合成例2)
1Lの四ツ口フラスコに、磁気攪拌子、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(分子内二重結合数2)300g、トルエン300g及び白金ジビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)1.2gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温90℃で加熱、攪拌した。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子内SiH数4)75gを1.5時間かけて滴下した。その後、内温を105℃まで上げ、14時間加熱攪拌した後、冷却により反応を終了した。
【0115】
トルエンを60℃で2時間、80℃2時間減圧で脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものはアリル基の一部が1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと反応したもの((β2)と称す。(β2)は混合物であるが、主成分として1分子中に4個の炭素−炭素二重結合基を含有する以下の化合物を含有する)とジアリルモノグリシジルイソシアヌレートの混合物であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRにより炭素−炭素二重結合基の含有量を求めたところ、6.5mmol/g含有していることがわかった。
【0116】
【化14】

【0117】
(合成例3)
1Lの四ツ口フラスコに、磁気攪拌子、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコに1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(分子内二重結合数3)200g、トルエン400g及び白金ジビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)2gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温90℃で加熱、攪拌した。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子内SiH数4)40gを1時間かけて滴下した。その後、内温を105℃まで上げ、6.5時間加熱攪拌した後、冷却により反応を終了した。
【0118】
トルエンを60℃で2時間、80℃2時間減圧で脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものはアリル基の一部が1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと反応したもの((β3)と称す。(β3)は混合物であるが、主成分として1分子中に8個の炭素−炭素二重結合基を含有する以下の化合物を含有する)と1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの混合物であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRにより炭素−炭素二重結合基の含有量を求めたところ、10.7mmol/g含有していることがわかった。
【0119】
【化15】

【0120】
(合成例4)
2Lオートクレーブに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子内SiH数4)650g、トルエン600gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート(分子内二重結合数3)90g、トルエン110g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)3.5gの混合溶液を10回に分けて分割添加した。滴下終了から6時間加熱撹拌した後、冷却により反応を終了した。
【0121】
トルエン及び未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とトリアリルイソシアヌレートのアリル基が反応したもの((γ1)と称す。(γ1)は混合物であるが、主成分として1分子中に9個のSiH基を含有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、9.0mmol/g含有していることがわかった。
【0122】
【化16】

【0123】
(合成例5)
2Lの四ツ口フラスコに、磁気攪拌子、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子内SiH数4)590g、トルエン550gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温100℃で加熱、攪拌した。ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(分子内二重結合数2)130g、トルエン130g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)0.5gの混合溶液を10回に分けて分割添加した。滴下終了から3時間加熱撹拌した後、冷却により反応を終了した。
【0124】
トルエン及び未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とジアリルモノグリシジルイソシアヌレートのアリル基が反応したもの((γ2)と称す。(γ2)は混合物であるが、主成分として1分子中に6個のSiH基を含有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、7.7mmol/g含有していることがわかった。
【0125】
【化17】

【0126】
(合成例6)
2Lの四ツ口フラスコに、磁気攪拌子、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子内SiH数4)550g、トルエン300gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温100℃で加熱、攪拌した。1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(分子内二重結合数3)50g、トルエン40g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)3gの混合溶液を10回に分けて分割添加した。滴下終了から3時間加熱撹拌した後に、冷却により反応を終了した。
【0127】
トルエン及び未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部と1,2,4−トリビニルシクロヘキサンのビニル基が反応したもの((γ3)と称す。(γ3)は混合物であるが、主成分として1分子中に9個のSiH基を含有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、10.0mmol/g含有していることがわかった。
【0128】
【化18】

【0129】
(合成例7)
2Lの四ツ口フラスコに、磁気攪拌子、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子内SiH数4)420g、ジオキサン421gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温110℃で加熱還流、攪拌した。ジアリルイソシアヌレート(分子内二重結合数2)75g、ジオキサン525g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)16gの混合溶液を10回に分けて分割添加した。滴下終了から3時間後に冷却により反応を終了した。
【0130】
トルエン及び未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とジアリルイソシアヌレートのアリル基が反応したもの((γ4)と称す。(γ4)は混合物であるが、主成分として1分子中に6個のSiH基を含有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、6.9mmol/g含有していることがわかった。
【0131】
【化19】

【0132】
(実施例1〜6、比較例1、2)
表1に示される配合組成(配合量は重量部である)で硬化性組成物を調製した。さらに、硬化性組成物を2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに、硬化性組成物を流し込み、60℃で6時間、続いて70℃で1時間、80℃で1時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃30分間空気中にて加熱を行い、それぞれ透明硬質な硬化物を得た。
【0133】
(測定、試験)
(耐熱性)
硬化物を200℃のオーブンで24時間加熱し、室温に冷却後クラックの発生を目視で観察し、発生しなかったものを○、発生したものを×とした。
【0134】
(屈折率)
Metricon社製プリズムカプラー 2010/Mを用い、404、594、825nmの波長での屈折率を測定し、これらの値から概算される589nmでの屈折率を屈折率とした。
【0135】
(硬化収縮率)
下記計算式から算出した。(1−(樹脂の密度)/(硬化物の密度))×100
樹脂の密度は23℃にて10mLメスフラスコに樹脂を入れ、重量を測定して求めた。また、硬化物の密度はMIRAGE社製ED−120Tで測定した23℃での空気中重量と水中重量から算出した。
【0136】
(炭素−炭素二重結合基価、SiH基価)
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた。(B)成分、(C)成分合成での反応追跡は、反応液を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものをNMR用チューブに加えて測定し、未反応SiH基のピークまたは未反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークと、反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークから求めた。(B)成分、(C)成分の官能基価は、ジブロモエタン換算での炭素−炭素二重結合基価(mmol/g)、SiH基価(mmol/g)を求めた。
【0137】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロシリル化触媒、(B)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸誘導体、(C)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、を必須成分としてなる硬化性組成物であって、
(B)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物(B1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B2)との反応物であり、
(C)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する有機化合物(C1)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(C2)との反応物であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
上記(B1)成分がトリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記(B1)成分がジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレートの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記(B2)成分が下記一般式(I)
【化1】

(式中、R0は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
上記(C1)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
上記(C1)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するイソシアヌル酸骨格からなる有機化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
上記(C1)成分がトリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテル、ノルボルネン、ノルボルナジエン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
上記(C2)成分が1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。

【公開番号】特開2010−275365(P2010−275365A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126825(P2009−126825)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】