説明

硬化性組成物

【課題】硬化性コポリマー組成物を提供する。
【解決手段】カルボン酸または無水物、およびヒドロキシル官能基を同じ主鎖上に有する、熱硬化性バインダーとして有用なコポリマー組成物。(i)コポリマー組成物の重量基準で、55〜90重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および(ii)コポリマー組成物の重量基準で、10〜30重量%のβ−ヒドロキシアルキルアミド:をモノマー単位として含む硬化性コポリマー組成物であって、前記β−ヒドロキシアルキルアミドが、エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーとアルカノールアミンの反応により形成され、β−ヒドロキシアルキルアミドヒドロキシ官能基のカルボン酸官能基に対する当量の比が0.05:1〜1:1である、硬化性コポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その場でエチレン性不飽和カルボン酸を、エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーとヒドロキシ官能性化合物の反応生成物と反応させることによる、熱硬化性バインダーとして有用な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドに一般的に関連する健康上および環境上の問題、ならびにホルムアルデヒドの削減または排除に向けた現行の法律および法案から、ホルムアルデヒドをほとんどまたは全く含有しない硬化性組成物が、様々な製品の製造における使用に非常に望ましい。現在、カルボン酸ポリマーをヒドロキシル含有化合物と反応させる、このようなホルムアルデヒドを含まないシステムが存在する。改善された硬化効率を有するシステムも存在し、これは、ヒドロキシ官能性モノマーをカルボン酸モノマーと共重合させることにより、同じポリマー主鎖上にカルボン酸およびヒドロキシル官能基を組み入れる。しかしながら、ヒドロキシ官能性アクリルモノマーの使用は、これらがしばしば高価な原材料から製造され、その合成が典型的には時間のかかる精製工程を含み、高温の適用がしばしば必要であるので、高レベルのエネルギーの入力を必要とし得るので、コストがかかる傾向にある。従って、ヒドロキシ官能性モノマーの精製を必要とせず、安価な原材料を使用でき、その結果、製造費用を低くできる、カルボン酸とヒドロキシ官能基の両方を同じポリマー主鎖上に含有する硬化性組成物を製造する代替法を提供することが望ましい。
【0003】
米国特許第5,143,582号は、特定の式を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド、およびカルボキシ含有モノマーを含有するコポリマーを調製して、自己硬化性ポリマーを提供することを開示しているが、かかるポリマーの調製法を提供しない。
【0004】
米国特許出願番号2004/0254290は、少なくとも1種の酸官能性モノマー単位および少なくとも1種の置換アミド、シラノール、またはアミンオキシドコモノマー単位を含有する、ガラス接着において有用なコポリマーの調製を開示している。
【特許文献1】米国特許第5,143,582号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0254290号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人らは、前記問題の少なくとも1つを解決する、エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーおよびヒドロキシ官能性化合物と、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーを有する実質的にホルムアルデヒドを含まない熱硬化性樹脂を見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、
(i)コポリマー組成物の重量基準で、55〜90重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(ii)コポリマー組成物の重量基準で、10〜30重量%のβ−ヒドロキシアルキルアミド:
をモノマー単位として含む硬化性コポリマー組成物であって、
β−ヒドロキシアルキルアミドヒドロキシ官能基のカルボン酸官能基に対する当量の比が0.05:1〜1:1である、硬化性コポリマー組成物である。
【0007】
本発明の第二の態様は、β−ヒドロキシアルキルアミドをその場で前記エチレン性不飽和カルボン酸モノマーと反応させた場合である。
【0008】
本発明の第三の態様は、アルカノールアミンが、第一アルカノールアミン、第二アルカノールアミン、およびポリオールからなる群から選択される場合である。
【0009】
本発明の第四の態様は、組成物が少なくとも1種のヒドロキシ官能性化合物をさらに含む場合である。
【0010】
本発明の第五の態様は、無水物および前記アルカノールアミンを補助塩基の存在下で反応させた場合である。
【0011】
本発明の第六の態様は、アルカノールアミンが1000以下の分子量を有する場合である。
【0012】
本発明の第七の態様は、アルカノールアミン化合物がエチレン性不飽和でない場合である。
【0013】
本発明の第八の態様は、組成物が、米国特許第6,136,916号に開示されているようなリン含有促進剤をさらに含む場合である。
【0014】
本発明の第九の態様は、C以上のアルキル基を含むエチレン性不飽和アクリル酸モノマーをエマルジョンポリマー固形分の重量基準で、重合単位として、30%を超えて含むエマルジョンポリマーを、組成物がさらに含む場合である。
【0015】
本発明の第十の態様は、コポリマー組成物が、全カルボン酸の当量に対して、0.01〜0.2当量の強酸を含む場合である。
【0016】
本発明のもう一つ別の態様は:
(1)(i)コポリマー組成物の重量基準で55〜90重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(ii)コポリマー組成物の重量基準で10〜30重量%のβ−ヒドロキシアルキルアミド:をモノマー単位として含むコポリマー(ここにおいて、β−ヒドロキシアルキルアミドヒドロキシ官能基とカルボン酸官能基の当量の比は0.05:1〜1:1である);および
(2)全カルボン酸の当量に対して0.01〜0.2当量の強酸:
を含む硬化性組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の硬化性コポリマー組成物を調製するための好ましい方法は:(i)エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーおよびヒドロキシ官能性化合物を反応させて、反応生成物を形成する工程(ここにおいて、前記反応生成物は、ラジカル重合により重合可能なエチレン性不飽和モノマーである);(ii)前記反応性生成物を、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーとその場で反応させる工程を含む。
【0018】
本発明の方法における第一工程は、エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーおよびヒドロキシ官能性化合物を反応させることである。好適なエチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水エタクリル酸、無水クロトン酸、無水桂皮酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水ムコン酸、無水グルタコン酸など、およびその混合物が挙げられる。
【0019】
エチレン性不飽和カルボン酸無水物と反応されるヒドロキシ官能性化合物は、エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーと反応できる任意のヒドロキシ官能性化合物であってよい。好ましくは、ヒドロキシ官能性化合物はポリオールまたはアルカノールアミンである。「ポリオール」とは、多価アルコール、すなわち、2以上のヒドロキシル基を含有するものを意味する。ヒドロキシ官能性化合物がアルカノールアミンである場合、好ましくは、第一または第二アルカノールアミン、またはポリオールである。好適なヒドロキシ官能性化合物の例としては、例えば、第一アルカノールアミン、例えば、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール、および4−アミノ−1−ブタノールなど;第二アルカノールアミン、例えばジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、ジ−n−ブタノールアミンなど;ポリオール、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース、グルコース、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール化尿素、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルアミノエタノールなどのホモポリマーまたはコポリマー;およびその組み合わせが挙げられる。ヒドロキシ官能性化合物は、好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、なお一層好ましくは300以下の分子量を有する。好ましい具体例において、ヒドロキシ官能性化合物は非エチレン性不飽和化合物である。
【0020】
無水カルボン酸をヒドロキシ官能性化合物と反応させて、反応生成物を形成する。反応生成物は、ラジカル重合により重合可能なエチレン性不飽和モノマーである。本発明の好ましい具体例において、反応生成物はβ−ヒドロキシアルキルアミドである。反応生成物は好ましくは1当量の無水物に対して5当量のヒドロキシ官能性化合物、さらに好ましくは1当量の無水物に対して2当量のヒドロキシ官能性化合物、なおいっそう好ましくは1当量の無水物に対して1当量のヒドロキシ官能性化合物を含有する。好ましくは、コポリマー組成物は重合単位として5〜55重量%、さらに好ましくは10〜40重量%、いっそう好ましくは10〜30重量%、なおいっそう好ましくは15〜30重量%の反応生成物を含有する。
【0021】
β−ヒドロキシアルキルアミド反応生成物の利点は、高温で環化反応を受けてイミドを形成することである。イミドの存在により、バインダーは水を吸収しにくくなることが判明している。その結果、硬化性コーティングの結合性は、水または高い大気湿度にさらされた場合に、より良好に維持される。
【0022】
無水カルボン酸およびヒドロキシ官能性化合物は、反応生成物を調製するために好適な任意の条件下で反応させることができる。反応成分は、反応容器にニートで添加することができるか、または非反応性溶媒、例えば芳香族、例えばトルエン又はキシレン;ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン;脂肪族、例えばヘプタンまたはオクタンなど、およびその組み合わせの存在下で添加することができる。好ましくは、反応は穏やかな加熱条件下、例えば100℃以下の温度で行われる。
【0023】
本発明の一具体例において、無水カルボン酸のヒドロキシ官能性化合物との反応は、補助塩基(auxiliary base)、例えば、ターシャリーアルカノールアミン、例えばトリエタノールアミン;固定塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなど;アンモニアを除く揮発性塩基、例えば揮発性低級アルキルアミンなど;およびその組み合わせの存在下で行われる。「補助塩基」とは、反応生成物を形成するために反応において用いられる任意の塩基性ヒドロキシ官能性化合物以外の塩基を意味する。任意の塩基を用いることができるが;無水カルボン酸と反応しない塩基が好ましい。塩基とともに添加される水の量は、好ましくは無水カルボン酸の加水分解を防止するために最小限に抑えられる。
【0024】
反応生成物をさらにエチレン性不飽和カルボン酸モノマーと反応させる。好適なモノマーの例としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸など、およびその組み合わせが挙げられる。好ましくは、コポリマー組成物は重合単位として、40〜95重量%、好ましくは55〜90重量%、さらに好ましくは60〜85重量%のカルボン酸モノマーを含有する。
【0025】
本発明において用いられる方法の一具体例において、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーに加えて、反応生成物を、25℃で水100gあたり2g未満の水溶性を有する少なくとも一種のエチレン性不飽和モノマーと反応させる。25℃で水100gあたり2g未満の水中溶解度を有する好適なモノマーの例としては、例えば、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、モノ−アルキルメタクリルアミド、モノ−アルキルアクリルアミド、ジ−アルキルメタクリルアミド、ジ−アルキルアクリルアミドなど、およびその組み合わせが挙げられる。エチレン性不飽和モノマーは好ましくは、コポリマー組成物中のモノマーの合計重量基準で、約3〜約25重量%、さらに好ましくは約3〜約20重量%、なおいっそう好ましくは約3〜約15重量%の量で存在する。エチレン性不飽和モノマーのそれぞれの好ましい量は次の通りである:約10〜約25重量%のエチルメタクリレートまたはエチルアクリレート;約10〜約20重量%のメチルメタクリレート;約3〜約15重量%のブチルメタクリレートまたはブチルアクリレート;約3〜約15重量%のスチレン;約3〜約15重量%のα−メチルスチレン;約3〜約8重量%のt−オクチルアクリルアミド;および約5〜約15重量%のt−ブチルアクリルアミド。エチレン性不飽和モノマーが25℃で水100gあたり1g未満の水中溶解度を有する本発明の具体例において、コポリマー組成物中のモノマーの合計重量基準で約3〜約15重量%のエチレン性不飽和モノマーを用いるのが好ましい。エチレン性不飽和モノマーが25℃で水100gあたり1gから2gの水中溶解度を有する本発明の具体例において、コポリマー組成物中のモノマーの合計重量基準で約10〜約25重量%のエチレン性不飽和モノマーを使用するのが好ましい。本発明の一具体例において、コポリマー組成物を異なるポリマー組成物とブレンドすることにより3〜25重量%のエチレン性不飽和モノマーが得られる。
【0026】
前記方法は、1000〜10000000の重量平均分子量を有するコポリマーを提供する。好ましいのは、100000未満の重量平均分子量;さらに好ましいのは10000未満の重量平均分子量;なおいっそう好ましいのは5000未満の重量平均分子量である。
【0027】
本発明のコポリマーを調製するために用いられる方法の好ましい具体例において、コポリマー組成物は強酸を含有する。「強酸」とは、3以下の少なくとも1つのpKaを有する非カルボン酸を意味する。この具体例において、コポリマー組成物は好ましくは全カルボン酸の当量に対して0.01〜0.2当量、さらに好ましくは0.01〜0.18当量の強酸を含有する。「全カルボン酸」とは、コポリマー組成物中に存在するカルボン酸の全部の量を意味する。強酸は鉱酸、例えば硫酸、または有機酸、例えばスルホン酸である。鉱酸が好ましい。本発明のこの具体例において、コポリマーが好ましくは10000未満、さらに好ましくは5000未満、一層好ましくは3000付近またはそれ以下の低い分子量を有するのが好ましく、約2000が有利である。
【0028】
好ましくは、組成物のpHは3.5未満、さらに好ましくは2.5未満であり、このpHは、とりわけ、用いることができる補助ヒドロキシル化合物、および添加される任意の強酸または塩基の強度および量に依存するであろう。
【0029】
本発明の一具体例において、組成物はさらに、1000以下、好ましくは500以下、最も好ましくは200以下の分子量を有する少なくとも一種の低分子量多塩基性カルボン酸、無水物またはその塩を含有する。「多塩基性」とは、少なくとも2つの反応性酸または無水物官能基を有することを意味する。好適な低分子量多塩基性カルボン酸および無水物の例としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、クエン酸、グルタル酸、酒石酸、イタコン酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、カルボン酸のオリゴマーなどが挙げられる。任意に、低分子量多塩基性カルボン酸、無水物またはその塩を、多酸コポリマーと混合する前に、反応性条件下で、ヒドロキシル含有化合物と混合することができる。
【0030】
本発明の一具体例において、組成物はさらに少なくとも一種の補助ヒドロキシル含有化合物を含有する。「補助ヒドロキシル含有化合物」とは、コポリマーを形成するために反応後に組成物に添加されるヒドロキシル含有化合物を意味する。好適なヒドロキシル含有化合物には、反応生成物を形成するために反応に好適であると前項で記載されているものが含まれる。さらに、ターシャリーアルカノールアミンを使用できる。好ましくは、ヒドロキシル基(コポリマーおよび補助官能性化合物からのヒドロキシル基を包含する)の当量の合計数のカルボン酸基に対する比は、好ましくは0.05:1〜2:1、さらに好ましくは0.1:1〜0.7:1、なおいっそう好ましくは0.25:1〜0.6:1である。
【0031】
本発明の一具体例において、コポリマー組成物は、固体組成物、例えば、粉末またはフィルムである。固体組成物は、様々な乾燥法、例えば、噴霧乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥などにより得ることができる。好ましい具体例において、コポリマー組成物は硬化性水性組成物である。本明細書において用いられる「水性」とは、水、および水と水混和性溶媒の混合物を包含する。この具体例において、コポリマー組成物は水性媒体中コポリマー組成物の溶液の形態、例えば水性分散液の形態、例えば乳化重合した分散液;または水性懸濁液の形態であってもよい。
【0032】
コポリマー組成物はフリーラジカル付加重合により調製することができる。組成物が固体の形態である本発明の具体例において、コポリマーは、例えばホットチューブにおいて、溶媒の不在下、または粘度を低下させるための少量の溶媒を用いて調製することができる。本発明の他の具体例において、コポリマーは、当該分野において周知の、エチレン性不飽和モノマーを重合するための溶液重合、乳化重合、または懸濁重合技術により調製することができる。乳化重合を用いるのが望ましい場合、アニオン性または非イオン性界面活性剤、またはその混合物を使用することができる。前記のように、カルボン酸は、反応生成物、および25℃で水100gあたり2g未満の水中溶解度を有する任意のエチレン性不飽和モノマーと、インサイチュ反応において重合される。したがって、反応生成物は他のモノマーを添加する前に反応釜中に存在する。重合は、様々な手段により行うことができ、例えば、重合反応の開始前に反応釜に全てのモノマーを添加するか、重合反応開始時に反応釜中に任意のエチレン性不飽和モノマーの一部が乳化形態で存在しているか、あるいは重合反応の開始時に反応釜中に小粒子サイズのエマルジョンポリマーシードが存在している状態で、重合を行うことができる。
【0033】
コポリマー組成物を調製するための重合反応は、当該分野において公知の様々な方法、例えば開始剤の熱分解の使用により、また酸化還元反応(レドックス反応)の使用により、重合を行うためのフリーラジカルを生成させて開始することができる。もう一つ別の具体例において、コポリマー組成物は、米国特許第5,077,361号および第5,294,686号に開示されているように、リン含有種をポリマー主鎖中に組み入れるように、リン含有連鎖移動剤、例えば、次亜リン酸およびその塩の存在下で形成することができる。コポリマー組成物は、溶媒/水混合物、例えばi−プロパノール/水、テトラヒドロフラン/水、およびジオキサン/水中で調製することができる。
【0034】
ある具体例において、コポリマー組成物は促進剤を含むことができる。前記のように、促進剤は反応生成物のカルボン酸モノマーとのインサイチュ反応中に存在してもよい。あるいは、促進剤はインサイチュ反応の完了後にコポリマー組成物に添加することができる。好適な促進剤の例としては、リン含有化合物、例えばアルカリ金属次亜リン酸塩、次亜リン酸、アルカリ金属亜リン酸塩、アルカリ金属ポリリン酸塩、アルカリ金属二水素リン酸塩、ポリリン酸、およびアルキルホスフィン酸などであるリン含有種を含むか、またはリン含有基を有するオリゴマーまたはポリマー、例えば、次亜リン酸ナトリウムの存在下で形成されるアクリルおよび/またはマレイン酸の付加ポリマー、例えば、リン塩連鎖移動剤または停止剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーから調製される本発明のコポリマーなどの付加ポリマー、および酸官能性モノマー残基を含有する付加ポリマー、例えば共重合したホスホエチルメタクリレート、および類似のホスホン酸エステル、および共重合したビニルスルホン酸モノマー、およびその塩であり得る。リン含有種は、本発明のコポリマーの重量基準で、0重量%〜40重量%、好ましくは0重量%〜20重量%、さらに好ましくは0重量%〜15重量%、さらに好ましくは0重量%〜10重量%の量で用いることができる。
【0035】
コポリマー組成物の分子量を加減するために、連鎖移動剤、例えばメルカプタン、ポリメルカプタン、およびハロゲン化合物を重合混合物において用いることができる。一般に、ポリマーバインダーの重量基準で0重量%〜10重量%のC−C20アルキルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、またはメルカプトプロピオン酸のエステルを用いることができる。
【0036】
コポリマー組成物のカルボキシル基を塩基で中和することができる。塩基は、コポリマー組成物を形成するためにカルボン酸を用いた反応生成物の重合前、重合中、または重合後に添加することができる。中和は、基体の処理前、または処理中に少なくとも部分的に起こり得る。
【0037】
本発明の一具体例において、コポリマー組成物のカルボキシル基は、固定塩基、つまり、処理条件下で実質的に不揮発性である塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、または水酸化t−ブチルアンモニウムで中和することができる。固定塩基は、加熱および硬化操作中に組成物中に実質的に残存するために十分不揮発性でなければならない。
【0038】
本発明の異なる具体例において、カルボキシ基は揮発性塩基、つまりコポリマー組成物での基体の処理の条件下で実質的に揮発性である塩基で中和することができる。中和のための好適な揮発性塩基としては、例えば、アンモニアまたは揮発性低級アルキルアミンが挙げられる。揮発性塩基は固定塩基に加えて使用できる。固定多価塩基、例えば、炭酸カルシウムは、コポリマー組成物が水性分散液の形態で使用されるならば、水性分散液を不安定化する傾向がありうるが、少量で用いることができる。
【0039】
コポリマー組成物が水性分散液または水性懸濁液の形態であり、少量のプレ架橋またはゲル含量が望ましい場合、少量の多エチレン性不飽和モノマー、例えばアリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどを、コポリマーの重量基準で0.01重量%〜5重量%の量で用いることができる。
【0040】
コポリマー組成物が水性分散液の形態である場合、コポリマー粒子の直径は、光散乱技術を用いるBrookhaven BI−90パーティクルサイザーを用いて測定すると、80ナノメートル〜1000ナノメートルでありうる。しかしながら、多峰性粒子サイズ分布、たとえば米国特許第4,384,056号および第4,539,361号(本発明の一部として参照される)において開示されているものを使用できる。
【0041】
コポリマー組成物が水性分散液の形態である場合、コポリマー粒子は、2以上の相互に不相溶性のコポリマーから構成されることができる。これらの互いに不相溶性のコポリマーは、例えば、コア/シェル粒子、シェル相がコアを不完全に封入するコア/シェル粒子、複数のコアを有するコア/シェル粒子、相互貫入ネットワーク粒子などの様々な形態で存在できる。
【0042】
本発明の一具体例において、疎水性空隙を有する巨大分子有機化合物が、コポリマー組成物を形成するために用いられる重合媒体中に存在する。疎水性空隙を有する巨大分子有機化合物を用いるための好適な技術は、例えば、米国特許第5,521,266号に開示されている。本発明において有用な疎水性空隙を有する巨大分子有機化合物には、例えば、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体;疎水性空隙を有する環状オリゴ糖、例えば、シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトース、またはシクロイヌロクトース;カリックスアレーン(calyxarene);キャビタンド(cavitand);またはその組み合わせが含まれる。好ましくは、巨大分子有機化合物は、β−シクロデキストリン、さらに好ましくはメチル−β−シクロデキストリンである。
【0043】
本発明の一具体例において、バインダー組成物は、重合単位として、少なくとも1種の共重合したエチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーを含むエマルジョンポリマーとブレンドされる。「エマルジョンポリマー」とは、当該分野において公知の乳化重合技術により調製された水性媒体中に分散されたポリマーを意味する。「非イオン性モノマー」とは、本発明においては、共重合したモノマー残基が、pH=1〜14の間でイオン性電荷を有さないことを意味する。
【0044】
エチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートをはじめとする(メタ)アクリルエステルモノマー;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。ポリマー中に組み入れることができる他のエチレン性不飽和非イオン性モノマーとしては、ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルキシレン、ビニルトルエンなど;酢酸ビニル、酪酸ビニルおよび他のビニルエステル;ビニルモノマー、例えばビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルトルエン、ビニルベンゾフェノン、および塩化ビニリデンが挙げられる。
【0045】
さらなるエチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーとしては、アクリルアミドおよびアルキル置換アクリルアミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミドおよびN−メチル(メタ)アクリルアミド;ヒドロキシ置換アクリルアミド、例えば、メチロールアクリルアミドおよびベータ−ヒドロキシアルキルアミドが挙げられる。
【0046】
エマルジョンポリマーは、モノエチレン性不飽和酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキルアリルスルホコハク酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、およびホスホブチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、およびアリルホスフェートを含有することができる。
【0047】
本発明において用いられるエマルジョンポリマーは、共重合した多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ブタジエン、およびジビニルベンゼンを含有することができる。
【0048】
本発明のさらに別の具体例において、コポリマー組成物は、重合単位としてエマルジョンポリマー固形分の重量基準で30重量%超、好ましくは40重量%超、さらに好ましくは50重量%超、なおいっそう好ましくは60重量%超の、C以上のアルキル基を含むエチレン性不飽和アクリルモノマーを含む、主に疎水性のエマルジョンポリマーとブレンドされる。「C以上のアルキル基を含むアクリルモノマー」とは、5以上のC原子を有する脂肪族アルキル基を有するアクリルモノマーを意味し、アルキル基は、n−アルキル、s−アルキル、i−アルキル、およびt−アルキル基を包含する。C以上のアルキル基を含む好適なエチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリル酸の(C−C30)アルキルエステル、例えば、アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸の不飽和ビニルエステル、例えば、脂肪酸および脂肪族アルコールから誘導されるもの;長鎖アルコキシ−またはアルキルフェノキシ(ポリアルキレンオキシド)(メタ)アクリレートを含む界面活性剤モノマー、例えば、C1837−(エチレンオキシド)20メタクリレートおよびC1225−(エチレンオキシド)23メタクリレート;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、例えば、オクチルアクリルアミドなどを包含する。 C以上のアルキル基を含むモノマーは、アミド、アルデヒド、ウレイド、ポリエーテルなどの官能基を含有することもできるが、酸またはヒドロキシ基を含有しないのが好ましい。かかるモノマーを含有するエマルジョンポリマーは、乳化重合、好ましくは米国特許第5,521,266号のポリマーを形成する方法により調製することができる。界面活性剤は、エマルジョンポリマーをコポリマー組成物とブレンドする前またはブレンド中にエマルジョンポリマーに添加することができる。好ましくは、界面活性剤はエマルジョンポリマー固形分の重量基準で0.5重量%〜20重量%、好ましくは2重量%〜10重量%の量において添加される。好ましいのは、15より大きなHLB値を有する界面活性剤である。
【0049】
主に疎水性のエマルジョンポリマーは、共重合した単位として、エマルジョンポリマー固形分の重量基準で、0重量%〜10重量%、好ましくは0重量%〜5重量%の、カルボン酸基、無水物基、またはその塩、あるいはヒドロキシル基を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸も含むことができる。エマルジョンポリマーは、固形分基準で、コポリマー組成物の重量基準で、1重量%〜10重量%、好ましくは1.5重量%〜5重量%の量で存在することができる。
【0050】
モノマー反応生成物のヒドロキシ官能基の当量数の、カルボン酸モノマーの酸官能基に対する比は、好ましくは0.05:1〜2:1、さらに好ましくは0.1:1〜0.7:1、なおいっそう好ましくは0.25:1〜0.6:1である。
【0051】
コポリマー組成物は、加えて、従来の処理成分、例えば、乳化剤、顔料、充填剤または増量剤;移動防止剤;硬化剤;造膜助剤;界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤;展着剤;鉱油ダスト抑制剤;殺生剤;可塑剤;オルガノシラン;消泡剤、例えばジメチコン、シリコーン油およびエトキシル化非イオン体;腐食防止剤、特にpH<4で有効な腐食防止剤、例えば、チオ尿素、シュウ酸塩、およびクロム酸塩;着色剤;静電防止剤;潤滑剤;ワックス;酸化防止剤;カップリング剤、例えば、シラン、特にSilquest(商標)A−187(コネチカット州ウィルトンにあるGE Silicones−OSi Specialtiesにより製造);本発明のものでないポリマー;および防水剤、例えば、シリコーンおよびエマルジョンポリマー、特に共重合単位としてエマルジョンポリマー固形分の重量基準で30重量%を超える、C以上のアルキル基を含有するエチレン性不飽和アクリルモノマーを含有する疎水性エマルジョンポリマーを含有することができる。
【0052】
本発明のコポリマー組成物は、好ましくはホルムアルデヒドを含まないコポリマー組成物である。「ホルムアルデヒドを含まないコポリマー組成物」とは、組成物が実質的にホルムアルデヒドを含まず、また乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアルデヒドを放出しないことを意味する。コポリマー組成物のホルムアルデヒド含量を最小限に抑えるためには、本発明のポリマーを調製する場合、それ自体がホルムアルデヒドを含まず、重合プロセスの間にホルムアルデヒドを生成せず、基体処理の間にホルムアルデヒドを生成または放出しない重合補助剤、例えば、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、殺生剤、界面活性剤などを使用するのが好ましい。「実質的にホルムアルデヒドを含まない」とは、少量のホルムアルデヒドが水性組成物において許容される場合、またはホルムアルデヒドを生成または放出する補助剤の使用についてやむを得ない理由が存在する場合、実質的にホルムアルデヒドを含まない水性組成物を使用できる。
【0053】
本発明の方法により調製されるコポリマー組成物を基体の処理に使用できる。かかる処理は、通常、例えばコーティング、サイジング、含浸、接着、その組み合わせなどとして記載することができる。典型的な基体としては、例えば、木材、木材パーティクル、繊維、チップ、粉末、パルプ、およびフレークをはじめとする木材;金属;プラスチック;繊維、例えばガラス繊維;織布および不織布などが挙げられる。コポリマー組成物は、通常の技術、例えば、エアまたはエアレススプレー、パッディング、含浸、ロールコーティング、カーテンコーティング、ビーター堆積、凝固などにより基体に施用することができる。
【0054】
本発明の一具体例において、コポリマー組成物は、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、ある種のポリエステル繊維、レーヨン繊維、ロックウール、およびガラス繊維などの耐熱性繊維を含有する不織布などの耐熱性不織布のためのバインダーとして使用できる。「耐熱性繊維」とは、125℃より高い温度にさらされることにより実質的に影響を受けない繊維を意味する。耐熱性不織布は、基体の性能に実質的に悪影響を及ぼさない限り、それ自体が耐熱性でない繊維、例えば、ある種のポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、および超吸収繊維でも含有することができる。
【0055】
不織布は、純粋に機械的手段、例えば、ニードルパンチングにより生じる絡み合いにより、エアレイドプロセスにより、およびウェットレイドプロセスにより;ポリマーバインダーでの処理をはじめとする化学的手段により;あるいは不織布の形成前、形成中、または形成後に機械的および化学的手段の組み合わせにより強化することができる繊維から構成される。ある不織布、例えば、屋根板またはロール状屋根材を製造するのに従い熱アスファルト質組成物を含浸させたガラス繊維含有不織布は、実質的に周囲温度より高い温度で使用できる。不織布を、熱アスファルト質組成物と150℃〜250℃の温度で接触させる場合、不織布は、たわむか、収縮するか、またはねじれる可能性がある。従って、コポリマー組成物を組み入れる不織布は、実質的に硬化した水性組成物により寄与される性質、例えば、引っ張り強度を実質的に保持すべきである。加えて、硬化した組成物は、硬化した組成物が加工条件下で過度に硬質または脆性であるか、または粘着性である場合のように本質的な不織布特性を実質的に損なうものであってはならない。
【0056】
コポリマー水性組成物は、基体に施用された後、加熱されて、乾燥および硬化する。加熱の期間および温度は、乾燥速度、加工性、取扱適性;および処理された基体の特性発現に影響を及ぼすであろう。120℃〜400℃で3秒から15分の間の熱処理を行うことができ;175℃〜225℃での処理が好ましい。「硬化」とは、本発明において、例えば、共有化学反応、イオン相互作用またはクラスター形成、改善された基体への接着性、相変化または転相、水素結合などにより、ポリマーの性質を変更するために十分な化学的または形態学的変化を意味する。乾燥および硬化機能は、所望により2以上の異なる段階で行うことができる。例えば、組成物は、まず実質的に乾燥するのに十分であるが、組成物を実質的に硬化させない温度および時間で加熱され、次いで硬化を起こすためにより高い温度および/または長い時間で2回目の加熱を行うことができる。このような手順は、「B−ステージング」と称され、例えば後の段階で硬化し得るロール形態のバインダー処理不織布を提供するために使用でき、これは特定の形状に形成または成形するかどうかにかかわらず、また硬化プロセスと同時に硬化され得る。
【0057】
耐熱性不織布は、例えば、断熱芯またはロール、ルーフィングまたはフローリング用途の強化マットとして、ロービングとして、プリント回路基板または電池セパレーターのミクロガラスベース基体として、フィルターストックとして、テープストックとして、およびメーソンリーのためのセメント質および非セメント質コーティング、天井タイル、セルロース屋根タイル、ウィンドートリートメント、壁用カバーリング、成形品、カーリーパルプモディフィケーション、パウダーコーティングにおける強化スクリムとしてなどの用途に使用できる。
【0058】
次の実施例は、コポリマーおよびコポリマー組成物を調製する方法を説明することを意図する。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
反応生成物1溶液
凝縮器、熱電対、およびメカニカルスターラーを備えた3Lフラスコに、210グラム(2モル)のジエタノールアミンおよび298グラム(2モル)のトリエタノールアミンを添加した。窒素雰囲気をフラスコ中に確立し、初期内容物を撹拌しながら85℃に加熱した。次いで、196グラム(2モル)の無水マレイン酸粉末を少量ずつ1時間かけて添加した。無水マレイン酸の添加が完了した後、混合物を85℃でさらに1時間撹拌した。この期間の最後に、704グラムの脱イオン水を添加し、得られた生成物を室温に冷却した。
【0060】
(実施例2)
反応生成物2溶液
凝縮器、熱電対、およびメカニカルスターラーを備えた3Lフラスコに、210グラム(2モル)のジエタノールアミン、148グラム(1モル)のトリエタノールアミンおよび54グラム(0.5モル)の炭酸ナトリウムを添加した。窒素雰囲気をフラスコ中に確立し、初期内容物を撹拌しながら85℃に加熱した。次いで、196グラム(2モル)の無水マレイン酸粉末を少量ずつ1時間かけて添加した。無水マレイン酸の添加が完了した後、混合物を85℃でさらに1時間撹拌した。この期間の最後に、608グラムの脱イオン水を添加し、得られた生成物を室温に冷却した。
【0061】
(実施例3)
反応生成物3溶液
凝縮器、熱電対、およびメカニカルスターラーを備えた3Lフラスコに、210グラム(2モル)のジエタノールアミンおよび106グラム(1モル)の炭酸ナトリウムを添加した。窒素雰囲気をフラスコ中に確立し、初期内容物を撹拌しながら85℃に加熱した。次いで、196グラム(2モル)の無水マレイン酸粉末を少量ずつ1時間かけて添加した。無水マレイン酸の添加が完了した後、混合物を85℃でさらに1時間撹拌した。この期間の最後に、512グラムの脱イオン水を添加し、得られた生成物を室温に冷却した。
【0062】
(実施例4)
反応生成物4溶液
凝縮器、熱電対、およびメカニカルスターラーを備えた1Lフラスコに、105グラム(1モル)のジエタノールアミンを添加した。窒素雰囲気をフラスコ中に確立し、初期内容物を撹拌しながら55℃に加熱した。次いで、98グラム(1モル)の無水マレイン酸粉末を少量ずつ1時間かけて添加した。無水マレイン酸の添加が完了した後、混合物を55℃でさらに1時間撹拌した。この期間の最後に、203グラムの脱イオン水を添加し、得られた生成物を室温に冷却した。
【0063】
(実施例5)
73.5AA/26.4反応生成物1
凝縮器、熱電対、およびメカニカルスターラーを備えた2Lフラスコに、実施例1において調製した溶液のうち345グラム、271グラムの脱イオン水、および21.3グラムの次亜リン酸ナトリウムを添加した。窒素雰囲気をフラスコ中に確立し、初期内容物を撹拌しながら92℃に加熱した。一旦フラスコの内容物が92℃に達したら、0.7グラムの過硫酸ナトリウムの7.5グラムの脱イオン水中溶液を添加した。アクリル酸(276.7グラム)、および別の6.4グラムの過硫酸ナトリウムの11.8グラムの脱イオン水中溶液をゆっくりと反応フラスコに2時間かけて添加し、その間、温度を94℃に維持した。アクリル酸および過硫酸ナトリウム溶液をゆっくりと添加する間、別の21.3グラムの次亜リン酸ナトリウムの26グラムの脱イオン水中溶液もゆっくりと105分かけて添加した。アクリル酸および過硫酸ナトリウム溶液が完全に添加されたら、反応混合物を94℃で30分間保持し、次いで室温に冷却した。得られたコポリマー溶液は47.8%の固形分および4.2のpHを有していた。
【0064】
(実施例6〜11)
以下の表に示すように変更して、実施例5の手順を繰り返した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)コポリマー組成物の重量基準で、55〜90重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(ii)コポリマー組成物の重量基準で、10〜30重量%のβ−ヒドロキシアルキルアミド:
をモノマー単位として含む硬化性コポリマー組成物であって、
前記β−ヒドロキシアルキルアミドが、エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーとアルカノールアミンの反応により形成され、
β−ヒドロキシアルキルアミドヒドロキシ官能基のカルボン酸官能基に対する当量の比が0.05:1〜1:1である、硬化性コポリマー組成物。
【請求項2】
前記β−ヒドロキシアルキルアミドが、前記エチレン性不飽和カルボン酸モノマーとその場で反応された、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記アルカノールアミンが、第一アルカノールアミン、第二アルカノールアミン、およびポリオールからなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、少なくとも1種の補助ヒドロキシ官能性化合物をさらに含み、ヒドロキシル基(コポリマーおよび補助官能性化合物からのヒドロキシル基を包含する)の当量の合計数のカルボン酸基に対する比が0.05:1〜2:1である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ヒドロキシル基の当量の合計数の前記比が0.1:1〜0.7:1である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ヒドロキシル基の当量の合計数の前記比が好ましくは0.25:1〜0.6:1である請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記酸無水物および前記アルカノールアミンを補助塩基の存在下で反応させた請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記アルカノールアミンが1000以下の分子量を有する請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記アルカノールアミン化合物がエチレン性不飽和でない請求項1記載の組成物。
【請求項10】
25℃で水100gあたり2g未満の水中溶解度を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを、コポリマー組成物がさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項11】
組成物がリン含有種をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項12】
以上のアルキル基を含むエチレン性不飽和アクリルモノマーを、エマルジョンポリマー固形分の重量基準で、重合単位として30%を超えて含むエマルジョンポリマーを、組成物がさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性アクリルモノマーを重合単位として含むエマルジョンポリマーを、組成物がさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項14】
組成物が3.5以下のpHを有する請求項1記載の組成物。
【請求項15】
(1)(i)コポリマー組成物の重量基準で55〜90重量%のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、および
(ii)コポリマー組成物の重量基準で10〜30重量%のβ−ヒドロキシアルキルアミド:
をモノマー単位として含むコポリマー
ここにおいて、前記β−ヒドロキシアルキルアミドは、エチレン性不飽和カルボン酸無水物モノマーおよびヒドロキシ含有化合物の反応により形成され、
β−ヒドロキシアルキルアミドヒドロキシ官能基のカルボン酸官能基に対する当量の比は0.05:1〜1:1である;および
(2)全カルボン酸の当量に対して0.01〜0.2当量の強酸:
を含む硬化性組成物。

【公開番号】特開2007−9211(P2007−9211A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−180949(P2006−180949)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】